• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1331750
審判番号 不服2016-7412  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-20 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2014- 48623「光学物品及び作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月 3日出願公開,特開2014-123152,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,2008年3月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年4月16日,米国)を国際出願日とする特願2010-504147号の一部を平成26年3月12日に新たな特許出願とした外国語書面出願であって,平成26年3月24日に外国語書面の翻訳文(特許法36条の2第8項の規定により,願書に添付して提出した明細書,特許請求の範囲及び図面とみなす。以下,単に「翻訳文」という。)及び手続補正書が提出され,平成27年2月12日付けで拒絶理由が通知され,同年8月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成28年1月19日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,平成28年5月20日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され,当審において,平成29年4月19日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年7月20日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1ないし5に係る発明は,平成29年7月20日提出の手続補正書によって補正された外国語書面の翻訳文の請求項1ないし5に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ,そのうちの請求項1の記載は次のとおりである。なお,請求項2ないし5は,いずれも,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものである。

「光学物品を通り抜ける垂直でない方向に伝播する光を,前記物品により垂直な方向に変えるように光をコリメートする構造化上面を有する上層と,
前記構造化上面の反対側で前記上層に固定されたコア層と,
前記上層の反対側で前記コア層に固定された下層と,
を含む光学物品であって,
前記上層が,ASTM D790に従って測定した場合において2.5GPaを超える曲げ弾性率を有する第1の押出可能なポリマーの層であり,前記コア層が第2の押出可能なポリマーの層であり,前記第2の押出可能なポリマーが,ASTM D790に従って測定した場合において2.5GPa以下の曲げ弾性率と,ASTM D256に従って測定した場合において40J/mを超える衝撃強度と,ASTM D638に従って測定した場合において5%を超える引張破断伸度とを有し,
前記下層が第3の押出可能なポリマーを含み,
前記下層が,前記コア層の反対側に構造化下面を含む,光学物品。」(以下,「本願発明」という。)


第3 原査定の拒絶の理由について
1 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,概略,次のとおりである。

本願の請求項1ないし5(平成27年8月17日提出の手続補正書による補正後の請求項1ないし5)に係る発明は,その優先権主張の日より前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2006/051783号
引用文献2:特開2005-107020号公報

引用文献1に記載された発明において,引用文献2に記載された構造化上面を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。

2 原査定の拒絶の理由に対する判断
(1)引用例
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
引用文献1は,本願の優先権主張の日(以下,「優先日」という。)より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。なお,段落番号は全角で表示した。)
a 「技術分野
[0001] 本発明は,強靭で表面硬度の高い偏光板,及びこの偏光板と液晶セルとを備える液晶表示装置に関する。
背景技術
[0002] 従来,偏光子の耐久性向上のために,偏光子の両側に偏光板用保護フィルムを貼り合わせることが行われている。このような偏光板用保護フィルムには,強靭で表面硬度の高いことが求められている。偏光板用保護フィルムの材質として表面硬度の高いポリマーを用いると,通常表面硬度の高いポリマーは曲げ弾性率は高いが脆いために,偏光板を作製する際に割れが発生しやすいという欠点がある。また,偏光板用保護フィルムの材質として強靭なポリマーを用いると,強靭なポリマーでは表面硬度が不十分になるという欠点がある。従って,従来の偏光板用保護フィルムは,弾性率が低いポリマーからなるフィルムをベースフィルムに用い,表面硬度を向上させるために,該フィルム表面にハードコート層を形成するのが一般的であった。
・・・(中略)・・・
[0005] 本発明は,このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり,強靭で表面硬度の高い偏光板,及びこの偏光板と液晶セルとを備える液晶表示装置を提供することを課題とする。
発明の開示
[0006] 本発明者らは,上記課題を解決すべく鋭意研究した結果,偏光子の一方の面に,曲げ弾性率が相対的に小さい熱可塑性樹脂を主成分とする層と,曲げ弾性率が相対的に大きい熱可塑性樹脂を主成分とする層を積層し,該偏光子の他方の面に保護層を配置すると,靭性と表面硬度がともに優れた偏光子保護機能を有する偏光板が得られることを見出し,本発明を完成するに至った。
[0007] かくして本発明の第1によれば,下記(1)?(7)の偏光板が提供される。
(1)保護層A,偏光子及び保護層Bをこの順に少なくとも有し,前記保護層Aが,熱可塑性樹脂を主たる成分とする,a層及びb層を,少なくとも含んでなり,前記a層の曲げ弾性率が前記b層の曲げ弾性率より大きいことを特徴とする偏光板。
(2)前記保護層Aの透湿度が,10g/day・m^(2)以下であることを特徴とする(1)に記載の偏光板。
(3)前記保護層Aが,共押出法により得られたものであることを特徴とする(1)に記載の偏光板。
(4)前記a層の曲げ弾性率が3GPa?4GPaであることを特徴とする(1)に記載の偏光板。
(5)前記b層の曲げ弾性率が0.lGPa?3GPaであることを特徴とする(1)に記載の偏光板。
(6)前記a層とb層の曲げ弾性率の差力0.2GPa?2.5GPaであることを特徴とする(1)に記載の偏光板。
(7)前記保護層Bが,複屈折性を有する層であることを特徴とする(1)に記載の偏光板。」

b 「図面の簡単な説明
[0009][図1]本発明の偏光板の保護層Aの層構成を示す図である。
・・・(中略)・・・
発明を実施するための最良の形態
[0010] 以下,本発明を詳細に説明する。
1)偏光板
本発明の偏光板は,保護層A,偏光子及び保護層Bをこの順に少なくとも有し,前記保護層Aが,熱可塑性樹脂を主たる成分とする,a層及びb層を,少なくとも含んでなり,前記a層の曲げ弾性率が前記b層の曲げ弾性率より大きいことを特徴とする。
[0011] (1)保護層A
本発明の偏光板の保護層Aは,熱可塑性樹脂を主たる成分とする,a層及びb層を,少なくとも含む層である。ここで,「熱可塑性樹脂を主たる成分とする」とは,a層及びb層を構成する樹脂成分が熱可塑性樹脂であって,所望により配合剤等が含まれていてもよいという意味である。
[0012] (i)a層
a層に含まれる熱可塑性樹脂としては,透明性の高い熱可塑性樹脂であれば,特に制限されないが,光線透過率が80%以上,ヘイズが0.5%以下であるものが好ましい。
[0013] a層に含まれる熱可塑性樹脂の好ましい具体例としては,ビニル芳香族重合体,ポリ(メタ)アクリレート重合体,ポリアクリロニトリル重合体,ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素化物等が挙げられる。これらは1種単独で,あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお,(メタ)アクリレートとは,アクリレート及び/又はメタクリレートの意味である。以下も同様である。
・・・(中略)・・・
[0019] a層の好ましい樹脂としては,・・・(中略)・・・ポリメチルメタクリレート・・・(中略)・・・がさらに好ましい。
[0020] (ii)b層
b層を構成する熱可塑性樹脂としては,透明性の高い熱可塑性樹脂で,曲げ弾性率がa層の曲げ弾性率よりも小さいものであれば,特に制限されないが,光線透過率力80%以上,ヘイズが0.5%以下であるものが好ましい。
[0021] b層を構成する樹脂の好ましい具体例としては,脂環式構造含有重合体,セルロース重合体,ポリエステル重合体,ポリカーボネート重合体,ポリスルホン重合体,ポリエーテルスルホン重合体,ビニル芳香族重合体,ポリオレフィン重合体,ポリビニルアルコール重合体,ポリ塩化ビニル重合体,ポリ(メタ)アクリレート重合体等が挙げられる。これらの重合体は一種単独で,あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
・・・(中略)・・・
[0038] (曲げ弾性率)
本発明の偏光板の保護層Aはa層及びb層を少なくとも含み,前記a層の曲げ弾性率がb層の曲げ弾性率より大きいことを特徴とする。
[0039] 曲げ弾性率は,物体に曲げ荷重をかけた場合の荷重とたわみの比をいい,より詳しくは,規定された2点のひずみをε1,ε2とし,これらに対応する応力をρ1,ρ2とするとき,応力差(ρ2-p1)をひずみ差(ε2-ε1)で除した値である。
[0040]一般的に強靭なポリマーは曲げ弾性率が低く,表面硬度の高いポリマーは曲げ弾性率が高い。本発明は,保護層Αを,曲げ弾性率が相対的に高く表面硬度の高いa層と,相対的に曲げ弾性率が低く靭性に優れるb層とを組み合わせて形成することにより,強靭で,表面硬度が高い偏光板を提供するものである。この際,必要に応じて,前記a層が前記b層よりも視認側に配置される。
[0041] 前記a層の曲げ弾性率は,b層の曲げ弾性率より相対的に高いものであればよいが,より強靭で,表面硬度が高い偏光板を得る上では,a層の曲げ弾性率が3GPa以上,好ましくは3?4GPaであり,b層の曲げ弾性率が3GPa未満,好ましくは0.1?3GPaであるのが好ましい。a層の曲げ弾性率が4GPaをこえると,不透明または溶融粘度が高くなり,フィルム成形が困難になるおそれがある。また,b層の曲げ弾性率が0.lGPa未満となると,溶融時の粘度が低くなり,フィルム成形が困難になるおそれがある。
[0042] 前記a層とb層の曲げ弾性率の差は,a層の曲げ弾性率がb層の曲げ弾性率より相対的に大きいものであれば特に制限されないが,好ましくは0.2?2.5GPa,より好ましくは,0.5?2.0GPaである。a層とb層の曲げ弾性率の差が過度に小さいと,得られる偏光板の強靭性と表面硬度とのバランスが悪くなるおそれがある。一方,曲げ弾性率の差が大きくなると,保護層Aの成形時に均一な成膜が困難となるおそれがある。
・・・(中略)・・・
[0044] 前記保護層Aは,少なくともa層とb層を含む積層体であればよいが,前記b層を介してa層の反対側に第三層としてのc層をさらに有するものや,a層とb層の間に所望により中間層としてのx層を介して積層されたものであってもよい。
・・・(中略)・・・
[0050] 保護層Aを製造する方法は特に制限されず,例えば,
(i)a層とb層とを別々に成膜し,x層を介してドライラミネーションにより積層して積層体とする方法,
(ii)共押出法により成膜して積層体を得る方法,等が挙げられる。
なかでも,層間剥離強度が大きい積層体を得ることができ,かつ,生産効率が優れることから,(ii)の共押出法が好ましい。共押出法により保護層Aを得る方法は,具体的には,複数の押出機を用い,a層を構成する樹脂材料とb層を構成する樹脂材料とを多層ダイから押出すことにより成膜するものである。
・・・(中略)・・・
[0056] 本発明の偏光板においては,前記保護層Aの透湿度は低いことが好ましい。保護層Aの透湿度は,好ましくは10g/day・m^(2)以下,より好ましくは8g/day・m^(2)以下,特に好ましくは6g/day・m^(2)以下である。偏光子は,空気中の水分を吸収して偏光度が徐々に低下する性質があるので,偏光子に透湿度の低い保護層Aを貼り合わせることにより,耐久性に優れる偏光板を得ることができる。透湿度は,JIS K 7209に準拠した方法で測定することができる。
[0057] 保護層Aの層構成の具体例を図1(a)?(f)に示す。図l(a)?(f)中,laはa層を,lbはb層を,lcはc層を,lxは接着層(X層)をそれぞれ示す。
図1(a)に示すものは,a層-b層の2層構造からなる保護層A(10A),図1(b)に示すものは,a層-b層-a層の3層構造からなる保護層(10B),図1(c)に示すものは,a層-b層-c層の3層構造からなる保護層A(10C),図1(d)に示すものは,a層-X層-b層の3層構造からなる保護層A(10D),図1(e)に示すものは,a層-x層-b層-X層-a層の5層構造からなる保護層A(10E),また,図1(f)に示すものは,a層-x層-b層-X層-c層の5層構造からなる保護層A(10F)である。本発明の偏光板を構成する保護層Aは,図1(a)?(f)に示すものに限定されず,少なくともa層とb層を有するものであればよい。」

c 「実施例
[0111] 次に,実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。但し,本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
(1)使用材料
樹脂a:
ポリメチルメタクリレート(以下,「PMMA」と略記する。商品名:アクリペットVH001,三菱レーヨン社製)
ポリスチレン(以下,「PS」と略記する。商品名:トーヨースチロールGP.G320C,東洋スチレン社製)
[0112]樹脂b:
ノルボルネン系樹脂(以下,「NB」と略記する。商品名:ゼオノア1060,日本ゼオン社製)
ポリカーボネート樹脂(以下,「PC」と略記する。商品名:パンライトK?1300Y,帝人化成社製)
トリアセチルセルロース(以下,「TAC」と略記する。厚さ40μm,商品名:KC40X2Μ,コニカミノルタ社製)
[0113]接着層:
エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下,「EVA1」と略記する。商品名:EVAFLEX,三井デュポンケミカル社製)
変性エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下,「EVA2」と略記する。商品名:三菱モディックAP543,三菱化学社製)
[0114](2)曲げ弾性率の測定
保護層Aのa層とb層の曲げ弾性率は,JIS K 7171に準じて,引っ張り試験機(オートグラフAG?100kNIS,島津製作所社製)を使用して測定した。・・・(中略)・・・
[0115](実施例1)
(1)保護層Aを構成する透明フィルム(A1)の製造
PMMAを,目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型50mmの一軸押出機(スクリュー有効長さLとスクリュー径Dとの比L/D=28)に装填されたホッパーへ投入し,押出機出口温度260℃,押出機のギヤポンプの回転数12rpmで溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイに供給した。
[0116] 一方,NBを,目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型50mmの一軸押出機(L/D=30)に導入し,押出機出口温度260℃,押出機のギヤポンプの回転数6rpmで溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイに供給した。
[0117] そして,溶融状態のPMMA(a層),NB(b層),EVA(接着層=x層)のそれぞれをマルチホールドダイから260°Cで吐出させ,130°Cに温度調整された冷却ロールにキャストし,その後,50°Cに温度調整された冷却ロールに通して,a層(20μm)-x層(4μm)-b層(32μm)-x層(4μm)-a層(20μm)の3種5層からなる幅600mm,厚さ80μmの透明フィルム(A1)を共押出成形により得た。
・・・(中略)・・・
[0130](実施例4)
実施例1において,樹脂bとしてNBの代わりにPCを使用した以外は実施例1と同様にして,a層(20μm)-x層(4μm)-b層(32μm)-x層(4μm)-a層(20μm)の3種5層からなる幅600mm,厚さ80μmの透明フィルム(A4)を共押出成形により得た。その後は実施例1と同様にして,偏光板を作製し,得られた偏光板を液晶モ二ターに取りつけた。
・・・(中略)・・・
[0136] 実施例1?5で得られた透明フィルム(A1)?(A5),比較例1,2で得られた透明フイルム(A6),(A7)のa層を構成する樹脂a,bの種類,a層,b層の曲げ弾性率,接着層(x層)を構成する接着樹脂の種類,層構成(厚み),透湿度を第1表にまとめて示す。また,上記傷つき視認性試験の評価結果,可とう性評価試験の結果も第1表に示す。
[0137][表1]

[0138] 第1表より,曲げ弾性率が相対的に大きいa層と,曲げ弾性率が相対的に小さいb層の積層フィルム(透明フィルム(A1)?(A5))が保護層Aである偏光板を備える液晶表示装置(実施例:1?5)では,傷つき視認性試験及び可とう性評価試験ともに良好な結果が得られ,強靭で表面硬度が高い偏光板を備えていることが分かった。
[0139] 一方,表面硬度が高いPMMAのみからなる透明フィルム(A6)が保護層Aである偏光板を備える液晶表示装置(比較例1)では,傷つき視認性試験の結果は良好であつたが,可とう性評価試験の結果が悪く,靭性に劣る偏光板を備えたものであった。また,表面硬度が低いNBのみからなる透明フィルム(A7)が保護層Aである偏光板を備える液晶表示装置(比較例2)では,可とう性評価試験の結果は良好であったが,傷つき視認性試験の結果が悪く,表面硬度が低い偏光板を備えたものであった。」

d 「[図1]



(イ) 引用文献1に記載された発明
前記(ア)aないしdの記載から,引用文献1に,実施例4の偏光板の保護層Aとして用いられる透明フィルム(A4)として,次の発明が記載されていると認められる。

「溶融状態のポリメチルメタクリレート(a層),ポリカーボネート樹脂(b層),エチレン-酢酸ビニル共重合体(接着層=x層)のそれぞれをマルチホールドダイから260°Cで吐出させ,130°Cに温度調整された冷却ロールにキャストし,その後,50°Cに温度調整された冷却ロールに通すことによって得られ,a層(20μm)-x層(4μm)-b層(32μm)-x層(4μm)-a層(20μm)の3種5層からなる幅600mm,厚さ80μmの透明フィルム(A4)であって,
前記ポリメチルメタクリレートは三菱レーヨン社製のアクリペットVH001,前記ポリカーボネート樹脂は帝人化成社製のパンライトK?1300Y,前記エチレン-酢酸ビニル共重合体は三井デュポンケミカル社製のEVAFLEXであり,
a層の曲げ弾性率は3.3GPa,b層の曲げ弾性率は2.4GPaであり,
偏光板の保護層として用いられる透明フィルム(A4)。」(以下,「引用発明」という。)

イ 引用文献2
(ア) 引用文献2の記載
引用文献2は,本願の優先日より前に頒布された刊行物であって,当該引用文献2には次の記載がある。(下線は,後述する引用文献2記載事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,バックライトおよび拡散板の製造方法,並びに,液晶表示装置に関し,特に,部品点数を少なくしてコストダウンを図ることが可能な,バックライトおよび拡散板の製造方法,並びに,液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は,透明電極と配向膜等を積層した面がそれぞれ対向するように2枚の透明ガラス基板を重ね合わせ,両基板間に液晶が封止されている液晶表示素子(LCDパネルとも称される)と,液晶表示素子の下に配置され,液晶表示素子に光を供給するバックライトと,液晶表示素子の駆動回路を有するプリント基板と,これらの部材を収納し,液晶表示窓があけられた金属製フレームとで構成されている。
【0003】
なお,バックライトには,光を導くための透明な合成樹脂板から成る導光板の側面に沿って,冷陰極蛍光灯(CCFL)または発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)などの光源を近接して配置したタイプと,液晶表示素子の直下に複数本の冷陰極蛍光灯などの光源をそれぞれ平行に配列したタイプとがある。前者では導光板と液晶表示素子との間,後者では複数本の冷陰極蛍光灯と液晶表示素子との間に,光を拡散し,液晶表示素子に均一に光を照射するための拡散板が配置される。
【0004】
導光板の側面に沿って光源を近接して配置したタイプの液晶表示装置においては,光源から照射された光が,導光板(ライトガイドと称される場合もある)によって導光され,拡散板によって拡散されて,レンズフィルムによって,配光制御がなされて,液晶表示素子に照射されるようになされている。
【0005】
従来,液晶表示素子と,その下に配置した拡散板との間に,上面がプリズム面,下面が平滑面である透明なレンズフィルム(レンズシート,あるいは,プリズム板と称する場合もある)を配置することにより,表示装置における表示の輝度を増大させ,明るく輝度分布の均一な液晶表示画面を得ようとするようになされている。
【0006】
また,レンズフィルムの一種として,BEF(Brightness Enhancement Film)(商標)が広く用いられている。拡散板により拡散された光は,BEFにより,液晶表示素子表面方向へ集光されるので,明るく輝度分布の均一な液晶表示画面を得ることができる。レンズフィルムのプリズム面の断面形状には,例えば,鋸歯状やカマボコ状などがある。
【0007】
しかしながら,表示の輝度を増大させるためにレンズフィルムを用いることにより,液晶表示素子とレンズフィルムとの干渉に起因して,表示画面にモアレが発生する場合があり,また,斜めから表示画面を見たとき,鏡状のぎらつきが発生する場合があった。
【0008】
バックライトの輝度を増大させて,輝度分布が均一な明るい表示画面を得るとともに,表示画面におけるモアレやぎらつきの発生を防止するための技術として,例えば,上面が光拡散作用を有する面で下面がケミカルマット層をコーティングした面を有する第2の拡散板を,レンズフィルムと液晶表示素子との間に,更に配置する技術がある(例えば,特許文献1)。
【0009】
【特許文献1】特許3205393号公報
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
従来のバックライトにおいては,上述したように,導光性能および配光性能をみたすために,非常に多くの部品を必要とするため,組立てコストがかかってしまう。これに対して,バックライトの部品点数を減らすことにより,より一層のコストダウンを図ることが求められている。
・・・(中略)・・・
【0031】
また,近年の情報処理装置の小型化に伴い,液晶表示装置も薄型のものが求められているため,従来のライトガイドよりも,更に薄型のライトガイドの提供が望まれている。
【0032】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり,従来のバックライトよりも薄型で,高機能かつ低コストのバックライトを提供することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の第1のバックライトは,光を発生する光源と,光源と液晶表示素子との間に配置される拡散板とを備え,拡散板は,光源から発生した光を拡散する拡散層と,拡散層と一体で構成されるとともに,拡散層より液晶表示素子側に配置され,拡散層により拡散された光を液晶表示素子の方向に配光する配光層とで構成されることを特徴とする。すなわち,本発明の拡散板は,拡散層と配光層とが一体成形されて構成されている。また,光源としては,例えば,冷陰極蛍光灯またはLEDなどを用いるようにすることができる。
【0034】
配光層は,液晶表示素子側の面にプリズム形状を有しているものとすることができる。なお,配光層のプリズム形状は,三角形,正弦波状,半円状,楕円状断面の連なった形状であってもよい。また,配光層のプリズム形状は,三角形,正弦波状,半円状,楕円状,ピラミッド形状,半球状の単位が,それぞれ直交するX方向およびY方向に複数配置された形状であってもよい。
【0035】
拡散層は,拡散子を含むものとすることができ,拡散層の拡散子以外の部分,および,配光層を構成する第1の樹脂と,拡散子を構成する第2の樹脂とは,異なる樹脂であるものとすることができる。」

b 「【0112】
図10は,本発明を適用したバックライトを有する液晶表示装置の第2の構成例について説明するための断面図である。
【0113】
なお,図4を用いて説明した第1の構成例における場合と対応する部分には同一の符号を付してあり,その説明は適宜省略する。
【0114】
すなわち,本発明を適用した第2の構成例のバックライト151は,拡散板71に代わって,拡散板161を備えている以外は,図4を用いて説明したバックライト61と同様の構成を有するものである。
【0115】
拡散板161は,拡散板71と同様の配光層81および拡散層82に加えて,蛍光管31側に,例えば,鋸歯状の断面形状を有する多数のV字状ストライプ溝や,かまぼこ状の断面構造を有する凹凸部をそれぞれ平行に配列形成してなるプリズム面で構成されている入光制御層171が設けられている。入光制御層171は,配光層81や,拡散子91以外の部分の拡散層82と同一の樹脂(図7または図9における第1の樹脂101)により構成され,拡散子91のみ,異なる樹脂により構成される。したがって,入光制御層171と拡散層82との間で,光の反射または屈折は発生しない。また,入光制御層171のプリズムの形状は,配光層81のプリズムの形状と同一であっても,異なるものであっても良い。
【0116】
入光制御層171のプリズムの形状は,蛍光管31から出射される光,または,蛍光管31から出射されて反射シート34により反射される光を拡散層82に効率よく導光することができるような形状になされている。入光制御層171に到達した光のうち,入光制御層171内部に入射される光の比率は,入射角がランダムであると仮定した場合,空気と入光制御層171を構成する樹脂との屈折率の比によって決まる。入光制御層171にプリズムが成形されることにより,入光制御層171の表面に到達し,入光制御層171に入射されずに反射された光のうち,入光制御層171の他の部分の表面に再度照射される光の比率を高めることが可能となる。
【0117】
よって,第2の構成例における拡散板161は,第1の構成例における拡散板71と比較して,入光制御層171が構成されることにより,蛍光管31により発光された光のうち,拡散層82に到達せずに損失してしまう光の割合を減少させることができ,光の拡散,配光制御,および集光制御を,1つの拡散板で実現することができる。
【0118】
このような構成を有することにより,バックライト151においては,拡散層82以外に,拡散シートなどを用いることなく,必要な配光性能を実現するとともに,蛍光管31が発生した光の損失を抑えることができる。」

c 「【図10】



(イ)引用文献2に記載された技術事項
引用文献2の【0117】の「拡散層82に到達せずに損失してしまう」との記載が,「拡散板を透過せずに損失してしまう」ことを意味していることが明らかであるから,前記(ア)aないしcの記載から,引用例2に次の技術事項が記載されていると認められる。

「導光板の側面に沿って光源を近接して配置したタイプのバックライトにおける前記導光板と液晶表示素子との間や,液晶表示素子の直下に複数本の光源をそれぞれ平行に配列したタイプのバックライトにおける前記光源と液晶表示素子との間に配置される拡散板において,
両面にプリズム形状を形成することによって,片面のみにプリズム形状を形成したものと比べて,光源からの光のうち拡散板を透過せずに損失してしまう光の割合を減少させることができること。」(以下,「引用文献2記載事項」という。)

(2)本願発明について
ア 対比
(ア) 引用発明の「『a層』のうちの一方」,「b層」,「c層」及び「透明フィルム(A4)」は,本願発明の「上層」,「コア層」,「下層」及び「光学物品」に,それぞれ相当する。

(イ) 引用発明は,a層(20μm)-x層(4μm)-b層(32μm)-x層(4μm)-a層(20μm)の3種5層からなるところ,「b層」(本願発明の「コア層」に相当する。以下,「ア 対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()内の文言は,当該引用発明の構成に相当する本願発明の発明特定事項を表す。)は,「a層のうちの一方」(上層)に固定され,「a層のうちの他方」(下層)が,「a層のうちの一方」(上層)が固定されている側とは反対側で「b層」(コア層)に固定されているといえるから,引用発明は,本願発明と「上層と,前記上層に固定されたコア層と,前記上層の反対側で前記コア層に固定された下層と,を含む光学物品」である点で一致する。

(ウ) 引用発明の「a層のうちの一方」(上層)は,ポリメチルメタクリレートである三菱レーヨン社製のアクリペットVH001からなるところ,引用発明は共押出成形により形成されているから,当該三菱レーヨン社製のアクリペットVH001は「押出可能なポリマー」といえ,「a層のうちの一方」(上層)は「押出可能なポリマーの層」といえる。
また,「”シクロオレフィンポリマー ゼオネックス”,[online],日本ゼオン株式会社,[平成29年4月18日検索],インターネット<URL:http://www.zeon.co.jp/content/200133136.pdf>」(以下,「参考資料」という。)の8ページに掲載された表によれば,ASTM D790に準じて測定したポリメチルメタクリレートの曲げ弾性率は3.0GPaであるから,「a層のうちの一方」(上層)のASTM D790に従って測定した曲げ弾性率は,「2.5GPaを超える」と認められる。
したがって,引用発明の「a層のうちの一方」は,本願発明の「上層」と,「ASTM D790に従って測定した場合において2.5GPaを超える曲げ弾性率を有する第1の押出可能なポリマーの層」である点で一致する。

(エ) 引用発明の「b層」(コア層)は,ポリカーボネート樹脂である帝人化成社製のパンライトK?1300Yからなるところ,引用発明は共押出成形により形成されているから,当該帝人化成社製のパンライトK?1300Yは「押出可能なポリマー」といえ,「b層」(コア層)は「押出可能なポリマーの層」といえる。
また,「参考資料」の8ページに掲載された表によれば,ASTM D790に準じて測定したポリカーボネートの曲げ弾性率は通常のもので2.4GPa,光学グレードのもので2.1GPa,ASTM D256に準じて測定したポリカーボネートのアイゾット衝撃強度は通常のもので740ないし980J/m,光学グレードのもので59J/m,ASTM D638に準じて測定したポリカーボネートの引張伸びは通常のもので110%,光学グレードのもので90%(引張伸びとは引張破断伸度のことと推察される。なお,仮に引張降伏伸度を指しているのだとしても,その場合の引張破断伸度の値はそれ以上の値になるから,結論に変わりはない。)であるから,「b層」(コア層)のASTM D790に従って測定した曲げ弾性率は,「2.5GPa以下」であり,ASTM D256に従って測定した衝撃強度は「40J/mを超え」,ASTM D638に従って測定した引張破断伸度は「5%を超える」と認められる。
したがって,引用発明の「b層」は,本願発明の「コア層」と,「第2の押出可能なポリマーの層であり,前記第2の押出可能なポリマーが,ASTM D790に従って測定した場合において2.5GPa以下の曲げ弾性率と,ASTM D256に従って測定した場合において40J/mを超える衝撃強度と,ASTM D638に従って測定した場合において5%を超える引張破断伸度とを有」する点で一致する。

(オ) 引用発明の「a層のうちの他方」(下層)は,ポリメチルメタクリレートである三菱レーヨン社製のアクリペットVH001からなるところ,引用発明は共押出成形により形成されているから,当該三菱レーヨン社製のアクリペットVH001は「押出可能なポリマー」といえる。
したがって,引用発明の「a層のうちの他方」は,本願発明の「下層」と,「第3の押出可能なポリマーを含む」点で一致する。

(カ) 前記(ア)ないし(オ)に照らせば,本願発明と引用発明は,
「上層と,
前記上層に固定されたコア層と,
前記上層の反対側で前記コア層に固定された下層と,
を含む光学物品であって,
前記上層が,ASTM D790に従って測定した場合において2.5GPaを超える曲げ弾性率を有する第1の押出可能なポリマーの層であり,前記コア層が第2の押出可能なポリマーの層であり,前記第2の押出可能なポリマーが,ASTM D790に従って測定した場合において2.5GPa以下の曲げ弾性率と,ASTM D256に従って測定した場合において40J/mを超える衝撃強度と,ASTM D638に従って測定した場合において5%を超える引張破断伸度とを有し,
前記下層が第3の押出可能なポリマーを含む,光学物品。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本願発明では,上層が,コア層が固定された側とは反対側に,光学物品を通り抜ける垂直でない方向に伝播する光を,前記物品により垂直な方向に変えるように光をコリメートする構造化上面を有し,下層が,コア層の反対側に構造化下面を含むのに対して,
引用発明には,構造化上面及び構造化下面はいずれも設けられていない点。

イ 判断
(ア) 引用発明は,「偏光板の保護層として用いられる透明フィルム(A4)」である。
一方,引用文献2記載事項に係る「プリズム形状」は,「導光板の側面に沿って光源を近接して配置したタイプのバックライトにおける前記導光板と液晶表示素子との間や,液晶表示素子の直下に複数本の光源をそれぞれ平行に配列したタイプのバックライトにおける前記光源と液晶表示素子との間に配置される拡散板」の表面に形成されるものであって,「偏光板の保護膜」に形成されるものではない。そして,引用文献2には,偏光板の保護膜の表面に「プリズム形状」を形成することについて,記載も示唆もない。
したがって,「偏光板の保護層として用いられる透明フィルム(A4)」である引用発明において,「拡散板」の表面に形成される「プリズム形状」に係る引用文献2記載事項を適用する動機付けは存在しない。
(イ) また,そもそも,引用文献1の記載から明らかなように,「偏光板の保護層」は,偏光子の耐久性向上のために,偏光子の両側に貼り合わせられるものであって([0002]等),偏光子を保護するために透湿度が低い等の特性が要求されるものである([0056]等)。
しかるに,保護膜における偏光子側の表面に「プリズム形状」を形成したのでは,偏光子と保護膜を貼り合わせた際に,プリズムの谷部において偏光子との間に隙間が生じてしまい,保護膜の偏光子保護機能に支障を来すこととなってしまう。
したがって,技術的観点からみると,引用発明に引用文献2記載事項を適用することには阻害要因があるといわざるを得ない。
(ウ) 以上によれば,引用発明において,相違点に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備させることは,引用文献2記載事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(3)請求項2ないし5に係る発明について
請求項2ないし5は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,請求項2ないし5に係る発明は,いずれも,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに限定を付加したものに相当するところ,前記(2)で述べたとおり,本願発明は,引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,請求項2ないし5に係る発明も同様の理由により,引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)小括
前記(2)及び(3)のとおりであって,本願の請求項1ないし5に係る発明は,いずれも,引用発明及び引用文献2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。


第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
平成29年4月19日付けで通知された当審拒絶理由の概要は,次のとおりである。

理由1:
本願明細書の発明の詳細な説明には,各請求項(平成28年5月20日提出の手続補正書による補正後の請求項を指している。以下,「1 当審拒絶理由の概要」欄において同様。)に係る発明が解決しようとする課題が,光学物品において,環境温度の変化に伴う反りの発生や,打ち抜き時の亀裂の発生を抑制することにあり,2.5GPaを超える曲げ弾性率を有する「第1の押出可能なポリマー」からなる層を上層として採用し,2.5GPa以下の曲げ弾性率と40J/mを超える衝撃強度と5%を超える引張破断伸度とを有する「第2の押出可能なポリマー」からなる層をコア層として採用することで,前記課題を解決できることが記載されていると認められるのに対して,請求項1には,上層及びコア層が前記「第1の押出可能なポリマー」及び「第2の押出可能なポリマー」をそれぞれ含むことが特定されているのみであって,上層及びコア層全体の曲げ弾性率等は特定されず,このような請求項1ないし5に係る光学物品が,前記課題を解決できると当業者が認識するとはいえないから,請求項1ないし5に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではない。
また,請求項1に記載された「前記上面に固定されたコア層」なる記載は,その意味が特定できないから,請求項1ないし5に係る発明は明確でない。
したがって,本願は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1及び2号に規定する要件を満たしていない。

理由2:
本願の請求項1,4,5に係る発明は,引用文献1(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1)に記載された発明,及び引用文献2(特開2000-329940号公報),引用文献3(特開平8-94833号公報)等にみられる周知技術に基いて,その優先日より前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

2 当審拒絶理由に対する判断
(1)理由1について
平成29年7月20日提出の手続補正書による補正によって,理由1(サポート要件違反及び明確性要件違反)は解消した。

(2)理由2について
引用発明,及び本願発明との対比については,前記第3 2(1)ア(イ),及び前記第3 2(2)アのとおりである。
一方,当審拒絶理由で引用した周知技術(周知例:引用文献2,3)は,偏光板の保護層の外面に,輝度向上効果を奏する構造化表面を形成する技術であるところ,当該周知技術を引用発明に適用したとしても,上層及び下層のいずれか一方のみに構造化表面を形成したものが想到されるだけであって,上層及び下層の両面に構造化表面を形成したものには至らない。
また,そもそも,引用発明の両面に構造化表面を形成することに阻害要因があることは,前記第3 2(2)イ(イ)で述べたのと同様である。
したがって,本願の請求項1ないし5に係る発明は,いずれも,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 小括
以上のとおりであるから,当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。


第5 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-28 
出願番号 特願2014-48623(P2014-48623)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤岡 善行  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 清水 康司
中田 誠
発明の名称 光学物品及び作製方法  
代理人 胡田 尚則  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  
代理人 古賀 哲次  
代理人 明石 尚久  
代理人 石田 敬  
代理人 高橋 正俊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ