• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 E04H
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 E04H
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 E04H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 E04H
管理番号 1331763
審判番号 不服2016-7384  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-28 
確定日 2017-08-25 
事件の表示 特願2011-109866「津波用シェルター。」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月22日出願公開、特開2012-229594〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月25日の出願であって、平成27年2月27日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年4月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月30日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、同年10月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月25日付けで平成27年10月30日付け手続補正書に係る補正の却下の決定とともに拒絶査定(謄本送達日:平成28年2月2日)がなされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

第2 平成28年4月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年4月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の記載を補正するものであり、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。なお、平成27年10月30日付け手続補正は却下されている。

補正前(平成27年4月27日付け手続補正書):
「【請求項1】
世界規模では、大津波はしばしば発生して居るが、特定の地点の住民に取っては、一生に一度も遭遇しない可能性が高いので、建物全体を津波に耐える津波シェルター設計にすると、日常の生産や生活が著しく不便になり、その累積損失は膨大となる為、主として1階の建屋の設計は、生産や生活の利便性を主とし、津波の通過を強くは阻止せず、上層階又は地下階に。津波の際、容易に避難する事が出来て、下側からは出入容易で、上方を気密に構成し、ドアの閉め忘れなど、日常の訓練や緊張感なしに生命の安全が得られる、フォーゲッティーな設計の津波用シェルターで有って、熟睡中の津波に備えて、図1の13に示す様に寝室をシェルター内に設ける場合、更に日常シェルターの閉塞感除去の為、図5のカメラ45で得た外の景色を、室内のモニター47に窓の様に表示し、津波来襲の時点の把握にも利用し、および又は、図7に示す様に、通常の車庫のフロアーは26dとし、津波の際は上方の津波用シェルター5dに、4柱リフト62、又は津波の浮力で収容する場合、又は、図8の様に津波の際のみリフトで地下シェルターに収容し、天板79に依り、瓦礫との衝突を避ける場合、および又は、人間が上層階、主として2階の津波シェルターに避難した後、図10の様に、1階に残して来た、商品や、機材を予めロープを付け、上端をシェルター内のフック100に係留し、順次電動ホイストや手動チェンブロック等で吊り上げ、津波で水没した後でも吊り上げやメンテを可能にする場合も含む事で、日常生活の利便性を疎外せず、建設費が安くで、且つ、津波の襲来時には確実に人命を保護
する事ができる、津波シェルター。
【請求項2】
津波用防波堤の高さは、国家経済的にも、10mが限度で有る為、大津波の場合は速度エネルギーが位置エネルギーに替わって、容易に堤防を乗り越え、再び速度エネルギーと成って内陸に侵入するので、自動車や冷蔵庫、コンテナーなど、重くても気密性の高い物は浮上して流れ出す。更に一般木造家屋も、布基礎を残して浮上して流出し、他の家屋と衝突して瓦礫と成るドミノ現象を起こし、今回の311津波の結果は、点在するコンクリート建屋を除き、広大な平地と化した。従って上層階や屋根裏を津波シェルターとするには津波本体や浮遊物との衝突破壊を回避、緩和させる必要が有る。従って図6の57の様に図示されていない地下の基礎杭上と建屋上部をケーブル・ワイヤーや棒で結び、先ず地震に依る倒壊を防ぎ、次に自身の伸びや、たわみで、津波に乗って、飛来する浮遊物との衝突エネルギーを吸収し転向させる等して主として木造の家屋の破損を防ぎ、各ケーブルの途中には、密着型コイルスプリングや油圧ダンパーなどの衝撃吸収機構を挿入する場合も有り、更に図7の69、70も同じで、図8の57eも、脱出塔82を衝突から守り、更に前庭や家屋の南面に斜めケーブルを設ける事は、日常の生活に不便や不快感を与えるので、柱48、基礎53に沿わせて格納し、津波に備える場合にのみ、電動ウインチ、又は手動荷締器等で締め上げて図の形状にする場合も有り、又は熟睡中で有っても、地震の振動、地震や津波の警報に連動し、図示されない機構に依り、自動的に引く場合も含む、衝突対応機能を設けた請求項1の津波シェルター。」

補正後(平成28年4月28日付け手続補正書):
「【請求項1】
下側からは出入容易で、上方を気密に構成した、津波シェルターで有って、屋外用カメラを設け、シェルター内にモニターを設けて海岸を監視し、更に、特定の地域に住む、個人に取っては、大津波の体験や記憶が無い可能性が大きい為、大津波が来れば健常者を含む多くの犠牲者を出して居る過去の実態の記録のデジタルアルバムをモニターに示す事に依り、待ちくたびれたり、油断したりして、海岸に出て様子を見る様な危険行為を防止する、フォーゲッティーな設計と成って居る事を特徴とする、津波シェルター。
」(下線は補正箇所を示すものである。)

2 補正の適否の判断
(1)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の補正であるか否か(新規事項の追加か否か)について
本件補正により、請求項1に「大津波が来れば健常者を含む多くの犠牲者を出して居る過去の実態の記録のデジタルアルバムをモニターに示す」との事項(以下「本件補正事項」という。)が付加された。
そこで、本件補正事項について検討すると、「デジタルアルバム」に関しては、願書に最初に添付した明細書の段落【0017】に「14はパソコンで、バックアップメモリー15に、デジタルアルバムなどの重要資料を送る。」という記載があるだけで、また、「モニター」に関しては、同段落【0025】に「津波は来ない場合、小さく済む場合もあるため、海岸に出て様子を見る事は危険であり、又津波や浮遊物が衝突し、扉4bが破られる瞬間は、頭から布団を被るなど、身構える必要もある為、ワイパー付き屋外用カメラボックス46を設け、シェルター内のモニター47で監視する。」という記載があるだけで、「デジタルアルバム」の内容として「大津波が来れば健常者を含む多くの犠牲者を出して居る過去の実態の記録」が含まれていること、バックアップメモリーに保管された「デジタルアルバムをモニターに示す」ということは何ら記載されておらず、示唆もされていないから、本件補正事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に明示的に記載された事項とはいえず、また、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の記載から自明な事項ともいえない。
よって、本件補正事項を付加する本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内で補正されたものではないから(新規事項を追加するものであるから)、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2)補正の目的の適否について
補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により、補正前の請求項1に係る発明(及び請求項1を引用するものであって請求項1に係る発明の発明特定事項をすべて含む請求項2に係る発明)を特定するために必要な事項である「主として1階の建屋の設計は、生産や生活の利便性を主とし、津波の通過を強くは阻止せず」、「日常シェルターの閉塞感除去の為、図5のカメラ45で得た外の景色を、室内のモニター47に窓の様に表示し」という各事項が削除されている。
そして、そのような発明を特定するために必要な事項を削除することは、特許請求の範囲を減縮しているとはいえず、また、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明でないことも明らかである。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とする補正には該当しないので、特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれの事項を目的とするものでもない。

(3)独立特許要件の検討
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。上記1の補正後の請求項1を参照。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、予備的に検討する。

ア 刊行物
(ア)平成27年2月27日付け拒絶理由通知書において引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開平10-37525号公報(以下「刊行物1」という。)には、次の記載がある(下線は審決で付した。以下同様。)。

a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、震災の発生時に短時間に避難が可能な、身近で強固なしかも安全な避難場所に係るものであり、狭い場所においても、発生を想定される地震と津波の衝撃を避ける事と、発災時の消火用水の準備と活用による消火活動の拠点として、出水と大火災に対応が可能な身近な避難設備として、又、事後の飲料可能な水の確保ができる場所として開発したものであって、震災により文明社会より原始の社会に陥る危険を未然に防止し、しかも、災害の拡大を回避する目的で開発した、震災時の津波と火災の避難壕に関するものである。」

b 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】阪神淡路大震災では、津波の被害は問題にならなかったが、今後、発生するであろう海洋型の震災では、地震の衝撃波と、同時に、短時間に襲来が予想される、津波等の出水による、二重の被害の発生は無視できない。
・・・(省略)・・・
【0008】本発明は、住宅密集地域の身近な狭い場所で、多量の水の比熱を有効に利用する事で安全に避難できる場所として、又、発災後の飲料水の確保を可能にする所として、震災時の火災と津波の避難壕を提供するものである。
【0009】さらにまた、本発明は地域住民が協力しあって災害の発生の初期の防止に努める拠点として開発した、震災の被害を最小にする効果が期待できる震災時の津波と火災の避難壕を提供することを目的とする。」

c 「【0010】
【課題を解決するための手段】 本発明は、以下の構成を備えることにより、前述の課題を解決できたものである。
【0011】
(1)源水槽と浄水槽の2つの水槽の下半部と集水槽を埋設した構成で基礎部を作り、此の基礎部の上部にL型鋼材の骨組みの箱状体の避難室ユニットと機械室ユニットを、上下に組み合わせて連結し、外周に耐火外壁材を貼接し、下階部を構成する機械室ユニットは、外部防火戸と、長い耐火のれんと、スプリンクラーを設置した入口室と、源水槽と浄化槽の2つの貯水槽とを備え、各槽の上部に冷却と消火用の各種の送水ポンプと、駆動用の電源のバッテリー等を設置すると共に、内部防火戸を介して、上階部の、避難室ユニットは、密閉した避難室を設置し、この避難室の外壁面には前記耐火外壁材の内側に外部冷却導水装置を介して、下部の源水槽から上部のスプリンクラー迄に送水するものと、下部の浄水槽から、各所に設置した散水ヘッドで散水冷却する2種類の耐熱冷却構造のものと、耐火断熱材を挟んで、下部の浄水槽から内部冷却導水管で浄水槽に還流する循環冷却の構成の耐熱構造が設置されていることを特徴とする震災時の津波と火災の避難壕。」

d 「【0018】図1,図8ないし図11に示す通り、震災時の津波と火災の避難壕1は、地下基礎部26の上に、機械室ユニット16、避難室ユニット2を乗せて、互いに固着して取り付けた構造であって、工場であらかじめ規格化された部材を設置現場で組み立てて、内部の機器を取り付けるもので、規格生産することで施工のミス防ぐ効果があると共に、大量生産による販売価格の低下を期待できる。」

e 「【0027】以上の構造の外周部の壁の最内側に耐火断熱材10を挟んで、内部冷却導水管11が取り付けられて、配管により他の送水ポンプ38で浄水槽28の水を常時循環する構造になっている。そして、この内部冷却導水管11の内側の内壁材とで合わされて壁面が作られ、震災時の津波と火災の避難壕1の上階部の避難ユニット2の避難室3を構成している。
【0028】この避難室3は、震災時に発生を予想される大火災の高熱を、水を有効に使って冷蔵庫の様な保冷の為の設備であると同時に、津波に対する避難設備であって、高波により、一時水没する危険がある場合、上部が密閉構造が確保できるように下部との出入口に内部防火戸13を設けて、接続される機械室ユニット16と遮断して津波等の出水に備えている。
【0029】通常の換気は、防火ダンバー付きの下部への通風換気扇15を取り付けた構造で換気している。下部の機械室ユニット16の上部で外気を出し入れすることで、通常の無知による事故の発生に備える。
・・・(省略)・・・
【0032】本発明は、災害の発生時に備えたもので、避難室3は、密閉を想定しているので、緊急時に備えて空気ボンベ14を設置して置き、災害発生時には、少量づつ使用するものとする。
【0033】ところで、このような避難壕1の上階部の避難室3に窓や緊急脱出扉を留保した理由は、下記による。
【0034】すなわち、
(イ)緊急事態の発生した時に使用するものであって開口部を設けた為に、より以上の危険をもたらすことと、避難する時間は数時間を想定したものであること。
【0035】(ロ)通常の安全対策としては、下部への既設の通風換気扇15を利用できること。
【0036】(ハ)緊急事態の時には、周囲は火や海であり、事前の安全対策が考慮された避難壕がより安全である。
・・・(省略)・・・
【0038】(ホ)異常な出水の場合には、一時水中でも安全な密閉構造の空気室を構成しているが、開口部を設けると不完全となり、外部への避難はより危険である。」

f 上記aないしeによると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認められる。なお、上記e段落【0027】の「避難ユニット2」は「避難室ユニット2」の誤記と認める。
「地下基礎部26の上に、下階部の機械室ユニット16、上階部の避難室ユニット2を乗せて、互いに固着して取り付けた構造の震災時の津波と火災の避難壕1における、上階部の避難室ユニット2の密閉した避難室3であって、高波により、一時水没する危険がある場合、上部が密閉構造が確保できるように下部との出入口に内部防火戸13を設けて、接続される下階部の機械室ユニット16と遮断して津波等の出水に備えている、津波に対する避難設備である避難室ユニット2の避難室3。」

(イ)平成28年1月25日付け補正の却下の決定において引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2007/0251159号明細書(以下「周知例1」という。)には、次の記載がある(仮訳は当審による。)。

a 「[0021] Turning now to the drawings, FIG. 1 is an isometric view of a survival shelter 100 according to one embodiment of the invention.The survival shelter 100, as shown, includes a body 105 having a generally elongated shape and a protective outer shell structure, a sealable entrance (or hatch) 110 on the top of the body 105, and a base 115 upon which the body 105 is formed. The body 105 defines a sealable survival chamber that is both large enough to hold one or more persons and strong enough to withstand the impact of falling tree limbs, flying debris, or the like. Further, because the survival chamber is sealable, the survival shelter 100 is particularly well suited for protecting one or more occupants from life threatening flood waters which may be associated with, for example, a storm surge or a tsunami. 」
(仮訳)
「図面を参照すると、図1は、本発明の一実施形態による生存シェルター100の等角図である。図示されているように、生存シェルター100は、全体的に細長い形状および保護外殻構造を有する本体105と、本体105の上部のシール可能な入口(又はハッチ)110と、本体105がその上にあるベース115とを含んで形成されている。本体105は、1人以上の人を収容するのに十分な大きさであり、落下する樹枝、飛散した破片などの衝撃に耐えるのに十分強く、密閉可能な生存室を画成する。さらに、生存室は密閉可能であるため、生存シェルター100は、例えば、高潮や津波に関連している生命を脅かす洪水から1人以上の乗員を保護するのに特に適している。」

b 「[0031] Other features illustrated in simplified form in FIG. 1 include: one or more periscope or video cameras 160 (shown retracted/ inoperative) and 165 (shown deployed/operative) for viewing outside the survival shelter 100 from within the survival chamber;・・・」
(仮訳)
「図1に概略的に示される他の特徴は、1つ又は複数の潜望鏡又はビデオカメラ160(引っ込められた/不作動状態で示されている)及び165(展開された/作動した状態で示されている)が含まれ、生存室内から生存シェルター100の外側を見る。・・・」

c 「[0039] The survival shelter 100 may include a television receiver and radio communications station 285 (which may also include monitors and controls for other equipment, such as video camera 160). ・・・」
(仮訳)
「生存シェルター100は、(ビデオカメラ160のような他の装置のためのモニター及び制御装置も含む)テレビジョン受信機及び無線通信局285を含むことができる。・・・」

(ウ) 本願出願前に頒布された刊行物である、特開昭62-215779号公報(以下「周知例2」という。)には、次の記載がある。

a 「耐火性材料により密閉された前室と避難室とからなり、前記前室に入室用の気密、耐火性を有する扉を設けると共に、前室と避難室間に気密、耐火性を有する扉を設け、これらの扉の錠装置に一方の扉が開状態である時、他方の扉の錠をロックするロック制御装置を設け、火災信号により作動され、前記前室及び避難室に加圧空気を供給する加圧空気供給装置を付設すると共に避難室に酸素供給装置、炭酸ガス除去装置、通信装置、外部監視装置等の安全確保装置を備えたことを特徴とする火災避難用シェルター。」(特許請求の範囲)

b 「そして、避難室内に、外部に設置したカメラにて、シェルター外部状況を知ることができるモニターテレビを設置すれば、火災状況をシェルタ-内で知ることができ、適切な時期にシェルタ-より出て避難することができる。」(3頁左下欄19行?右下欄4行)

c 「発明の効果
以上の説明より明らかなように、この発明のシェルタ-は、火災発生時、シェルタ-の前室及び避難室内に加圧空気が送入され、しかも前室の扉と避難室の扉は、そのうち一方しか開とならないために、避難室へ火災による煙等が侵入することはなく、又、避難室には、酸素供給装置や炭酸ガス除去装置を装備したため、避難者が多数でも長時間シェルタ-内で避難することができ、更に通信装置も設けられているため、外部との連絡もできて、避難者の状況を外部に伝えることができ、シェルタ-から出る際の適切な指示を受けることができると共に、火災状況も的確に知ることができて避難者の心理的な不安を除くことができるという優れた効果も有するものである。」(3頁右下欄5?19行)

イ 対比
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。
(ア)刊行物1発明の「津波に対する避難設備である避難室ユニット2の避難室3」は、補正発明の「津波シェルター」に相当し、刊行物1発明において、「避難室3」が「上階部の避難室ユニット2」にあって「密閉」されており、「上部が密閉構造が確保できるように下部との出入口に内部防火戸13を設けて」いることは、本願補正発明の「下側からは出入容易で、上方を気密に構成した」ことに相当する。

(イ)したがって、両者は、以下の点で一致する。
(一致点)
「下側からは出入容易で、上方を気密に構成した、津波シェルター。」

(ウ)そして、以下の点で相違する。
(相違点)
本願補正発明は、「屋外用カメラを設け、シェルター内にモニターを設けて海岸を監視し、更に、特定の地域に住む、個人に取っては、大津波の体験や記憶が無い可能性が大きい為、大津波が来れば健常者を含む多くの犠牲者を出して居る過去の実態の記録のデジタルアルバムをモニターに示す事に依り、待ちくたびれたり、油断したりして、海岸に出て様子を見る様な危険行為を防止する、フォーゲッティーな設計と成って居る」のに対し、
刊行物1発明は、そのようになっていない点。

ウ 判断
外部にカメラを設け、屋内にモニターを設けて外部の状況(例えば、人の侵入、河川の水位、道路の渋滞など)を監視することは、本願出願前において周知慣用であるところ、火災や津波等からの避難用の密閉されたシェルターにおいて、外部にカメラを設け、シェルター内にモニターを設けて外部の状況を監視することも、上記周知例1(上記ア(イ)を参照。)及び周知例2(上記ア(ウ)を参照。)に記載されているように、本願出願前において周知の技術にすぎないから、刊行物1発明の津波に対する避難設備である避難室ユニットの避難室に該周知の技術を採用して、海岸を監視することは、当業者が適宜なし得たことである。
そして、そのモニターに、大津波が来れば健常者を含む多くの犠牲者を出して居る過去の実態の記録のデジタルアルバムを示すことは、モニターの使用形態にすぎず、当業者が適宜なし得ることであり、それにより、特定の地域に住む、個人に取っては、大津波の体験や記憶が無い可能性が大きい人が、待ちくたびれたり、油断したりして、海岸に出て様子を見る様な危険行為を防止する、フォーゲッティーな設計とすることも、津波に対する避難設備である避難室ユニットの避難室の設計として、当業者が適宜なし得たことである。

エ まとめ
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が刊行物1発明及び周知の技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するとともに、同法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、拒絶査定時の平成27年4月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものである(上記第2の1の補正前の請求項1及び2を参照。)。

2 拒絶査定(原査定)の理由
平成28年1月25日付け拒絶査定の理由は、平成27年9月30日付け拒絶理由通知書において理由1及び理由2として示したものであって、以下のとおりである。
(1)理由1(新規事項)について
平成27年4月27日付けでした手続補正は、下記アないしウの点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
ア 補正後の請求項1には、「図5のカメラ45で得た外の景色を、室内のモニター47に窓の様に表示し、津波来襲の時点の把握にも利用し」と記載されているが、当該記載は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲にはなく、また、当該記載事項が、当初明細書等の記載から、自明であるとも認められない。
イ 補正後の請求項2には、「津波用防波堤の高さは、国家経済的にも、10mが限度で有る為、大津波の場合は速度エネルギーが位置エネルギーに替わって、容易に堤防を乗り越え、再び速度エネルギーと成って内陸に侵入するので、自動車や冷蔵庫、コンテナーなど、重くても気密性の高い物は浮上して流れ出す。更に一般木造家屋も、布基礎を残して浮上して流出し、他の家屋と衝突して瓦礫と成るドミノ現象を起こし、今回の311津波の結果は、点在するコンクリート建屋を除き、広大な平地と化した。」と記載されているが、当該記載は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲に、記載も示唆もされていない。
ウ 補正後の請求項2には、「更に前庭や家屋の南面に斜めケーブルを設ける事は、日常の生活に不便や不快感を与えるので、柱48、基礎53に沿わせて格納し、津波に備える場合にのみ、電動ウインチ、又は手動荷締器等で締め上げて図の形状にする場合も有り、又は熟睡中で有っても、地震の振動、地震や津波の警報に連動し、図示されない機構に依り、自動的に引く場合も含む」と記載されているが、当該記載は、出願当初の明細書及び特許請求の範囲にはなく、また、当該記載事項が、当初明細書等の記載から、自明であるとも認められない。
(2)理由2(明確性)について
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記アないしウの点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
ア 補正後の請求項1、2には、文章の途中に句点(。)があり、どの構成が、請求項1、2に係る発明を特定するための事項であるのかが明確でない。
イ 補正後の請求項1、2の記載は、図面の記載で代用されているため、発明の構成が不明確である。
ウ 補正後の請求項1、2には、図1-11でそれぞれ示される多数の実施例が、「および」、「又は」、「・・・する場合も含む」、「・・・場合も有り」等の記載で羅列されており、発明の構成が不明確となっている。

3 拒絶の理由1(新規事項の追加)の検討
(1)平成27年4月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2には、「津波用防波堤の高さは、国家経済的にも、10mが限度で有る為、大津波の場合は速度エネルギーが位置エネルギーに替わって、容易に堤防を乗り越え、再び速度エネルギーと成って内陸に侵入するので、自動車や冷蔵庫、コンテナーなど、重くても気密性の高い物は浮上して流れ出す。更に一般木造家屋も、布基礎を残して浮上して流出し、他の家屋と衝突して瓦礫と成るドミノ現象を起こし、今回の311津波の結果は、点在するコンクリート建屋を除き、広大な平地と化した。」と記載されているが、当該記載は、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に、記載も示唆もされていない。

(2)平成27年4月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2には、「更に前庭や家屋の南面に斜めケーブルを設ける事は、日常の生活に不便や不快感を与えるので、柱48、基礎53に沿わせて格納し、津波に備える場合にのみ、電動ウインチ、又は手動荷締器等で締め上げて図の形状にする場合も有り、又は熟睡中で有っても、地震の振動、地震や津波の警報に連動し、図示されない機構に依り、自動的に引く場合も含む」と記載されているが、願書に最初に添付した明細書の段落【0029】に「ケーブル57は、日常生活の邪魔になる場合は、柱48、基礎53に沿わせて格納し、津波に備える場合のみ、図示されない電動ウインチ、又は手動荷締器で締め上げて、図の状態にする場合もある。」という記載はあるが、「前庭や家屋の南面に斜めケーブルを設ける」、「熟睡中で有っても、地震の振動、地震や津波の警報に連動し、図示されない機構に依り、自動的に引く場合も含む」という事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面にはなく、また、当該記載事項が、願書に最初に添付した明細書等の記載から、自明であるとも認められないから、新たな技術事項を追加するものである。

(3)したがって、平成27年4月27日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4 拒絶の理由2(明確性要件違反)の検討
(1)平成27年4月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、図面の記載で代用されているため、請求項1及び2に係る発明の構成が不明確である。
例えば、請求項1において、
ア 「熟睡中の津波に備えて、図1の13に示す様に寝室をシェルター内に設ける場合」とあるが、「13」とは何であるか不明であるし、「図1」を参酌しても「13に示す様に」との構成が不明である。また、段落【0017】に「13」が「ベッド」であることが記載されているとしても、請求項1には「ベッド」との記載はなく、仮に「13」が「ベッド」であると解釈しても、単にベッドを備えていることを特定しているのか、より限定的な構成を特定しようとしているのかが不明であるから、「図1の13に示す様に」で特定される技術事項が明確であるとはいえない。言い換えると、「図1の13に示す様に」との特定があるか否かで発明の構成が異なるのか否かが不明である。
イ 「図5のカメラ45で得た外の景色を、室内のモニター47に窓の様に表示し」とあるが、カメラはシェルターのどこにどのように設けられるのか明確でない。言い換えると、「図5の」との特定があるか否かで「カメラ」に係る構成が異なるのか否かが不明である。なお、明細書の段落【0025】では、符号「45」の名称は「鉄格子」であり、「カメラ」に符号はついていない。
ウ 「図7に示す様に、通常の車庫のフロアーは26dとし、津波の際は上方の津波用シェルター5dに、4柱リフト62、又は津波の浮力で収容する場合」とあるが、4柱リフト62、又は津波の浮力で収容する場合、上方の津波用シェルター5dはどのような構成により、上方を気密に構成した津波用シェルターとできるのか明確でない。なお図7に符号「26d」はない。
エ 「図8の様に津波の際のみリフトで地下シェルターに収容し、天板79に依り、瓦礫との衝突を避ける場合」とあるが、「地下シェルター」の構成が不明で、「天板79」もどこにどのように設けられるのか不明である。また、「地下シェルター」が「津波用シェルター」になると解されるが、下側からは出入容易で、上方を気密に構成した津波用シェルターなのかも不明である。
オ 「津波シェルターに避難した後、図10の様に、1階に残して来た、商品や、機材を予めロープを付け、上端をシェルター内のフック100に係留し、順次電動ホイストや手動チェンブロック等で吊り上げ、津波で水没した後でも吊り上げやメンテを可能にする場合」とあるが、気密に構成した津波シェルターから、どのような構成により、津波で水没した後でも1階に残して来た、商品や、機材に予め付けておいたロープの上端をシェルター内のフック100に係留し、吊り上げやメンテを可能にするのか不明である。

また、例えば、請求項2において、
ア 「図7の69、70も同じで、図8の57eも、脱出塔82を衝突から守り」とあるが、「69、70」は何で、何が同じなのか不明である。また、「57e」は何で、「脱出塔82」はどこにどのように設けられるもので、「57e」が、どのように衝突から守るのか不明である。
イ 「図の形状にする」とあるが、どのような形状にするのか不明である。

(2)平成27年4月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2には、図1?図11でそれぞれ示される多数の実施例が、「および」、「又は」、「・・・する場合も含む」、「・・・場合も有り」等の記載で羅列されているから、請求項1及び2に係る発明の構成が不明確である。
例えば、請求項1において、
ア 「寝室をシェルター内に設ける場合、更に日常シェルターの閉塞感除去の為、図5のカメラ45で得た外の景色を、室内のモニター47に窓の様に表示し、津波来襲の時点の把握にも利用し、および又は、図7に示す様に、通常の車庫のフロアーは26dとし、津波の際は上方の津波用シェルター5dに、4柱リフト62、又は津波の浮力で収容する場合、又は、図8の様に津波の際のみリフトで地下シェルターに収容し、天板79に依り、瓦礫との衝突を避ける場合」とあるが、「通常の車庫のフロアーは26dとし」、「上方の津波用シェルター5dに」、「収容する場合」、「又は」、「地下シェルターに収容」する「場合」と、どの事項とが「および又は」の関係になるのか不明である。「寝室をシェルター内に設ける場合」という事項か、「日常シェルターの閉塞感除去の為、図5のカメラ45で得た外の景色を、室内のモニター47に窓の様に表示し、津波来襲の時点の把握にも利用」するという事項のいずれかではないかと解されるが、いずれも、並列関係にあるとはいえず、「又は」で羅列される事項ではない。
イ 「・・・および又は、人間が上層階、主として2階の津波シェルターに避難した後、図10の様に、1階に残して来た、商品や、機材を予めロープを付け、上端をシェルター内のフック100に係留し、順次電動ホイストや手動チェンブロック等で吊り上げ、津波で水没した後でも吊り上げやメンテを可能にする場合も含む」とあるが、前記されているいずれの事項と「および又は」の関係になるのか不明である。また、「および又は」と、「する場合も含む」とで、どのような関係になるのかも不明である。

また、例えば、請求項2において、
ア 「・・・場合も有り」(2箇所)とあるが、いずれの事項も、津波シェルターの特定事項に含まれるのか否か不明である。

5 むすび
以上のとおり、平成27年4月27日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、また、本願の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は明確でなく、同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-13 
結審通知日 2017-06-20 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2011-109866(P2011-109866)
審決分類 P 1 8・ 55- Z (E04H)
P 1 8・ 561- Z (E04H)
P 1 8・ 121- Z (E04H)
P 1 8・ 537- Z (E04H)
P 1 8・ 57- Z (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 兼丸 弘道五十幡 直子渋谷 知子土屋 真理子  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 小野 忠悦
住田 秀弘
発明の名称 津波用シェルター。  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ