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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1331803
審判番号 不服2016-18183  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-05 
確定日 2017-08-21 
事件の表示 特願2012-233288「発光装置用レンズ及び照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月12日出願公開、特開2014- 86513〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月22日の出願であって、平成28年5月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月8日に手続補正がなされたが、同年9月1日付けで拒絶査定がなされ、同年12月5日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成29年4月18日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年6月19日に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成29年6月19日の手続補正により補正された請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「レンズ本体及び板状固定部材を含み、
前記レンズ本体が、入射面及び出射面を含み、
前記レンズ本体において、前記入射面及び前記出射面が、互いに一定の距離をおいて対面する状態で位置し、発光素子からの光が入射面に入射し、かつ、前記入射した光が前記出射面から出射し、
前記板状固定部材が、前記板状固定部材の一面に前記レンズ本体から出射される光を入射する入射面を含み、かつ、前記板状固定部材の他面に入射した光を出射する出射面を含み、
さらに、前記板状固定部材が、前記板状固定部材の縁部から形成されたツバ部を含み、
前記板状固定部材の入射面が前記レンズ本体の前記出射面と対面する状態で、かつ、前記板状固定部材の前記ツバ部が前記レンズ本体の前記出射面の外側に位置する状態で、前記板状固定部材が前記レンズ本体の前記出射面の上に配置され、
前記板状固定部材の内部が、光拡散性であり、
前記板状固定部材の前記出射面の全体及び前記ツバ部の前記出射面の全体に、断面形状が円弧状の複数の同心円状の凹凸が形成されていることを特徴とする発光装置用レンズ。」(なお、下線は、請求人が手続補正書において付したものである。)

第3 引用文献の記載
1 当審拒絶理由に引用した、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/152038号(以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。

(1)引用文献1の記載事項
ア 「請求の範囲
[請求項1] 発光素子からなる光源と、
有底筒状を有すると共にその底壁内面に前記光源が配置されたケースと、 前記ケースよりも小さく且つ光出射面が前記ケースの開口側に位置する状態で前記ケース内に配されたレンズと、
少なくとも前記レンズと前記ケースとの間の空間を覆うカバーと、
前記ケースの底壁外面に外方へと突出する状態で装着された中空状の口金部材と、
前記口金部材によって受電して前記光源を発光させる回路と
を備え、
前記回路を構成する電子部品は、前記ケースと前記口金部材のそれぞれの内部の空間に配されている
ことを特徴とするランプ。
[請求項2]
……
[請求項4] 前記カバーと前記レンズが一体に成形され、前記ケースの開口を塞ぐ蓋体を構成していることを特徴とする請求項1に記載のランプ。
[請求項5]
……
[請求項8] 前記蓋体の正面側全体に光拡散加工が施されていることを特徴とする請求項4に記載のランプ。」(第59ないし60頁)

イ 「[0090] 以下、第3および第4の実施形態に係るランプの一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、各図において矢印Xで指す方向がランプの照明方向であって、照明方向側から見た面がランプの正面である。
[0091](第3の実施形態に係るランプの概略構成)
図13は、第3の実施形態に係るランプを示す斜視図である。図14は、第3の実施形態に係るランプを示す断面図である。図13に示すように、第3の実施形態に係るランプ1100は、JIS C 7527に定義されているハロゲン電球の規格に準じた外観形状を有するハロゲン電球の代替品であって、図14に示すように、ケース1110、LEDモジュール1120、蓋体1130、口金部材1140、回路(点灯回路)1150および絶縁部材1160を備える。
[0092](ケース)
ケース1110は、正面側に開口部1111を有する椀状であって、円筒状の筒部1112と、筒部1112の背面側を閉塞する円板状の底部1113とを有し、LEDモジュール1120、点灯回路1150を構成する電子部品の一部、および絶縁部材1160を内部に収納している。開口部1111は、LEDモジュール1120からの出射光をケース1110の外部へ取り出すために設けられたものであって、前記出射光を透過させる蓋体1130で塞がれている。なお、ケース1110の材料としては、樹脂、金属等が採用できるが、耐熱性、放熱性、軽量性等を考慮するとアルミが好適である。
[0093](LEDモジュール)
LEDモジュール1120は、ランプ1100の光源であって、モジュール基板1121と、モジュール基板1121の略中央に実装されたLEDユニット1122とを備え、ケース1110の底部1113上に搭載されている。LEDユニット1122は、例えば、ユニット基板1123と、ユニット基板1123に実装された発光色が青色のInGaN系のLEDチップ1124と、LEDチップ1124を封止する黄緑色発光の蛍光体を含んだ半球状の封止部1125とを有し、前記LEDチップ1124から発せられた青色光の一部を蛍光体によって黄緑色に色変換し、青色と黄緑色との混色により生じた白色光を出射する。
[0094]
……
[0099] 蓋体1130は、例えば透明アクリル樹脂製であり、LEDモジュール1120からの出射光は蓋体1130を透過してケース1110の外部へ取り出される。
[0100] 出射光は、主に、凹部1134からレンズ1132内に入射し、レンズ1132を透過した後、さらにカバー1131を透過して、カバー1131の正面1135における光拡散加工領域1135aで拡散されて、ケース1110の外部へ取り出される。レンズ1132が出射光を集束させるレンズ部として機能するため、出射光はレンズ1132を透過することによってスポット光となる。光拡散加工領域1135aは、カバー1131の正面1135(蓋体1130の正面でもある)の略中央に、レンズ1132の位置に合わせて略円形に形成されており、光を拡散するための複数の凹凸が設けられている。
[0101] 一方、レンズ1132から後述する第1空間1101内に漏れ出た出射光は、カバー1131を透過して、カバー1131の正面1135における非加工領域1135bからケース1110の外部へ取り出される。非加工領域1135bは、凹凸のない平面であって、カバー1131の正面1135に光拡散加工領域1135aを取り囲むように略円環状に形成されている。このように、光拡散加工領域1135aからだけでなく、非加工領域1135bからも出射光が取り出すことができるため、カバー1131の正面1135の略全体を光らせることができる。
[0102] 蓋体1130を構成する材料は、透明アクリル樹脂に限定されないが、アクリル以外の透光性樹脂、透光性セラミックス、ガラスなどの透光性材料であることが好ましい。
[0103] また、蓋体1130は、同じ材料で形成されている必要はなく、2種類以上の異なる材料で形成されていても良い。例えば、カバー1131とレンズ1132とが別の材料で形成されていても良いし、カバー1131において光拡散加工領域1135aと非加工領域1135bとが別の材料で構成されていても良い。但し、蓋体1130が2種類以上の異なる材料で形成されている場合であっても、カバー1131とレンズ1132とが一体に成形されている必要がある。」

ウ 「[0119] (変形例2)
図20は、第3の実施形態の変形例2に係るランプを示す断面図である。図20に示すように、第3の実施形態の変形例2に係るランプ1400は、蓋体1430の態様が第3の実施形態に係るランプ1100とは大きく相違する。以下では、相違点のみを説明し、第3の実施形態に係るランプ1100と同様の点ついては重複を避けるため説明を省略する。なお、第3の実施形態と同じ構成要素については同符号を付する。
[0120] 図20に示すように、第3の実施形態の変形例2に係るランプ1400の蓋体1430は、外周縁部1436が肉厚になった略円板状でケース1110の開口部1111の外周を覆うカバー1431と、円錐の頂点より上を水平にカットした裁頭円錐状で凹部1434を有しカバー1431の背面1433に延設されたレンズ1432とを有し、それらカバー1431とレンズ1432とが一体に成形されている。蓋体1430は、ケース1110の筒部1112の正面側端部1112aに、ケース1110の正面全体を覆うようにして取り付けられており、レンズ1432は、カバー1431とLEDモジュール1120との間に配置される。
[0121] 蓋体1430は、例えば透明アクリル樹脂製であり、カバー1431の正面1435の全体にグレアを防止するための光拡散加工が施されている。したがって、LEDモジュール1120からの出射光を、ランプ1400の正面全体から、より反射鏡付き白熱電球に近い配光パターンで取り出し可能になっている。さらに、カバー1431の正面1435には光拡散加工が施されていない領域が存在しないため、ケース1110の内部に収納された点灯回路1150などが蓋体1430越しに見え難くなっている。[0122] 図21は、図20における二点鎖線で囲んだ部分Bを示す拡大断面図である。図21に示すように、蓋体1430は、カバー1431の背面1433に嵌合部としての嵌合溝1433aが設けられている。嵌合溝1433aはケース1110の筒部1112の正面側端部1112aに合わせて円環状に形成されており、その溝幅は筒部1112の厚みよりやや幅広になっている。
[0123] 蓋体1430は、嵌合溝1433aにケース1110の正面側端部1112aを嵌合させることで容易にケース1110に対して位置決めすることができる。蓋体1430をケース1110に取り付ける際には、予め嵌合溝1433a内に接着剤1490を充填しておくことで蓋体1430とケース1110とを接着することができる。
[0124] 絶縁部材1460は、正面側に開口1461を有する椀状であって、筒部1462と筒部1462の背面側を閉塞する円板状の底部1463とを有し、ケース1110よりも一回り小さく、ケース1110の内面に沿うように配置されている。絶縁部材1460の筒部1462の正面側端部1462aは、ケース1110の筒部1112の正面側端部1112aよりもやや背面側に位置しており、絶縁部材1460の正面側端部1462aは、ケース1110の正面側端部1112aを嵌合溝1433aに嵌合させた状態においてカバー1431の背面1433に当接され、ケース1110と蓋体1430とを接着する接着剤1190により背面1433と接着されている。」

エ 上記イで引用する「第3の実施形態に係るランプ」を示す断面図(図14)は、以下のものであ。


オ 上記ウで引用する「第3の実施形態の変形例2に係るランプ」を示す断面図(図20)は、以下のものである。


(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記(1)アより、引用文献1には、
「発光素子からなる光源と、
有底筒状を有すると共にその底壁内面に前記光源が配置されたケースと、
前記ケースよりも小さく且つ光出射面が前記ケースの開口側に位置する状態で前記ケース内に配されたレンズと、
前記レンズと一体に成形されるとともに、正面側全体に光拡散加工が施された、前記ケースの開口を塞ぐ蓋体と、
前記ケースの底壁外面に外方へと突出する状態で装着された中空状の口金部材と、
前記口金部材によって受電して前記光源を発光させる回路と
を備え、
前記回路を構成する電子部品は、前記ケースと前記口金部材のそれぞれの内部の空間に配されている、ランプ。」が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)イ及びウの記載によれば、
上記アの「発光素子からなる光源」は、
青色のInGaN系のLEDチップと、該LEDチップを封止する黄緑色発光の蛍光体を含んだ半球状の封止部とを有するLEDモジュールであってもよいものと認められる。

ウ 上記(1)イ及びウの記載を踏まえて、図20を見ると、
上記アの「光拡散加工」とは、蓋体の正面側全体に光を拡散するための複数の凹凸を設けることである。

エ 上記(1)ウの記載によれば、図20に示されたランプは、
LEDモジュールからの出射光をランプの正面全体から反射鏡付き白熱電球に近い配光パターンで取り出し可能なものである。

オ 以上のことから、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「青色のInGaN系のLEDチップと、該LEDチップを封止する黄緑色発光の蛍光体を含んだ半球状の封止部とを有するLEDモジュールと、
有底筒状を有すると共にその底壁内面に前記LEDモジュールが配置されたケースと、
前記ケースよりも小さく且つ光出射面が前記ケースの開口側に位置する状態で前記ケース内に配されたレンズと、
前記レンズと一体に成形されるとともに、正面側全体に光を拡散するための複数の凹凸が設けられた、前記ケースの開口を塞ぐ蓋体と、
前記ケースの底壁外面に外方へと突出する状態で装着された中空状の口金部材と、
前記口金部材によって受電して前記光源を発光させる回路と
を備え、
前記回路を構成する電子部品は、前記ケースと前記口金部材のそれぞれの内部の空間に配され、
前記LEDモジュールからの出射光をランプの正面全体から反射鏡付き白熱電球に近い配光パターンで取り出し可能な、ランプ。」

2 当審拒絶理由に引用した、本願出願前に頒布された刊行物である特開2011-114086号公報(以下「引用文献2」という。)には、図とともに以下の記載がある。

(1)引用文献2の記載事項
ア 「【請求項1】
第1の分光分布を有する光を発光する固体発光素子と、前記固体発光素子から発せられる光が入射され、その一部の光を第2の分光分布を有する光に波長変換して出射する波長変換素子と、前記固体発光素子及び波長変換素子を収容し、それらの素子から出射される光を照射するための開口を有する筺体と、前記筺体の開口に設けられ、照射する光を透過する透過材と、を備えた発光装置であって、
前記第1の分光分布は、波長λにおいてピークを有し、
前記透過材は、粒子径dの微粒子を含有し、この微粒子は、πd/λにより規定される粒径パラメータを0.5以下、又は粒子径dを100nm以下としたことを特徴とする発光装置。」

イ 「【背景技術】
【0002】
近年、多くの照明器具に、固体発光素子である発光ダイオード(LED)が光源として用いられており、シーリングライト、ベースライト等、光を拡散させるタイプや、ダウンライト、スポットライト等、光を集光させるタイプなど多種多様な照明器具にLEDが用いられている。
【0003】
……
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題を解決するものであり、固体発光素子と波長変換素子とを有する発光装置において、照射面の色むらを低減すると共に、色むら低減に伴う照射効率の低下を防ぐことを目的とする。」

ウ 「【0022】
発光装置1は、照明器具として、又は照明器具の一部等として用いられる。固体発光素子21aは、青色発光ダイオード素子であり、1つ又は複数のLEDチップと、LEDチップに電力を供給する電子基板から成る(図示せず)。波長変換素子21bは、蛍光体から成り、青色光の一部により励起され、蛍光を放射する素子である。放射される蛍光は、波長変換におけるエネルギー損失及びエネルギー保存則によって、励起光である青色光よりもエネルギーの低い、すなわち波長の長い黄色光となる。……
【0023】
図2は、白色LED21の発光スペクトル、すなわち白色LED21から空気中に出射される白色光の分光分布を示す。図2の横軸は光の波長(nm)、縦軸は相対発光強度(a.u.)である。この分光分布は、固体発光素子21aから出射される青色光が有する第1の分光分布と、波長変換素子21bから出射される黄色光が有する第2の分光分布が重ね合わされている。第1の分光分布は、波長約450nmに比較的鋭いピークP1を有する。第2の分光分布は、波長約550nmにピークP2を有し、約480nmから750nmの波長域に広がっている。」

エ 「【0030】
伝搬媒質中の微粒子によって生じる散乱は、レイリー散乱の他にミー散乱がある。ミー散乱は、レイリー散乱とは波長依存性が異なり、青色光だけを散乱することはない。πd/λで規定される粒径パラメータαがあり、αが0.1以下ではレイリー散乱が支配的となり、αが1以上ではミー散乱が支配的となり、それ以外ではレイリー散乱とミー散乱が共に起こる。本実施形態では、青色光を効果的にレイリー散乱させるために、微粒子の粒径パラメータαを0.5以下とした。」

オ 「【0044】
(第3の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る発光装置を図11を参照して説明する。本実施形態の発光装置11は、第1の実施形態と同様の構成に加えて、筺体3に、固体発光素子21a及び波長変換素子21bから出射される光を集光するレンズ6を設置した。
【0045】
レンズ6は、白色LED21から出射される白色光の光制御に用いるものであり、透明なプラスチック等を成型したものである。レンズ6は、例えば、白色LED21の光軸を対称軸とする回転体形状を有し、波長変換素子21bの前方を取り囲むように凹部61が形成され、対称軸に略直交して凹部61の底面に位置する第1の入射面62と、凹部61の側面に位置する第2の入射面63と、第2の入射面63よりレンズ内部に入射された光を反射する反射面64と、第1の入射面62よりレンズ内部に入射された光、及び、反射面64で反射された光を出射する出射面65とを有する。透過材4とレンズ6は、別体であっても一体であってもよい。透過材4とレンズ6が一体をなす場合、レンズ6にレイリー散乱を起こす材料を用いてもよい。
【0046】
上記のように構成された発光装置11において、レンズ6は、光路L5で示されるように、白色LED21から出射される白色光を透過材4に向けて出射する。白色光は、透過材4に入射され、透過材4内を透過し、空気中に照射される。透過材4に含有された微粒子は、第1の実施形態と同様に、白色光に含まれる青色光を黄色光よりも効果的にレイリー散乱により拡散する。
【0047】
このように、発光装置11は、レンズ6が固体発光素子21a及び波長変換素子21bから出射される光を集光し、透過材4が集光された光を透過するので、集光を可能にしつつ、透過材4に含有された微粒子によって照射面の色むらを低減することができる。」

カ 上記オで引用する図11は、以下のものである。


(2)引用文献2に記載された技術事項
「青色発光ダイオード素子と、
前記青色発光ダイオード素子から発せられる光が入射され、その一部の光を黄色光に波長変換して出射する蛍光体からなる波長変換素子と、
前記青色発光ダイオード素子及び前記波長変換素子を収容し、それらの素子から出射される光を照射するための開口を有する筺体と、
前記筺体の開口に設けられ、照射する光を透過する透過材と、を備えた発光装置において、
前記透過材に、粒子径100nm以下の微粒子を含有させ、青色光を黄色光よりも効果的にレイリー散乱により拡散することで、照射面の色むらを低減すること。」(以下、「引用文献2に記載された技術事項」という。)

第4 対比・判断
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)ア 引用発明の「ケース内に配されたレンズ」及び「ケースの開口を塞ぐ蓋体」は、それぞれ、本願発明の「レンズ本体」及び「板状固定部材」に相当し、「ケース内に配されたレンズ」及び「ケースの開口を塞ぐ蓋体」を合わせたものが、本願発明の「発光装置用レンズ」に相当する。

イ 引用発明の「ケース内に配されたレンズ」は、「『光出射面』が『ケースの開口側に位置する状態で』『ケース内に配されたレンズ』」であることから、「ケース開口側」と反対側に「光入射面」が位置することは、明らかである。
また、引用発明の「青色のInGaN系のLEDチップ」は、本願発明の「発光素子」に相当する。

ウ してみると、引用発明と本願発明とは、
「レンズ本体及び板状固定部材を含み、前記レンズ本体が、入射面及び出射面を含み、前記レンズ本体において、前記入射面及び前記出射面が、互いに一定の距離をおいて対面する状態で位置し、発光素子からの光が入射面に入射し、かつ、前記入射した光が前記出射面から出射」する点で一致する。

(2)ア 引用発明の「『レンズと一体に成形され』た『ケースの開口を塞ぐ蓋体』」は、「ケース内に配されたレンズ」が「ケースよりも小さ」いことから、「(レンズの)光出射面」から外側に突出する部分を備え、その突出する部分により、ケースの開口を塞いでいることは、明らかである。

イ してみると、引用発明と本願発明とは、
「板状固定部材が、前記板状固定部材の一面にレンズ本体から出射される光を入射する入射面を含み、かつ、前記板状固定部材の他面に入射した光を出射する出射面を含み、
さらに、前記板状固定部材が、前記板状固定部材の縁部から形成されたツバ部を含み、
前記板状固定部材の入射面が前記レンズ本体の出射面と対面する状態で、かつ、前記板状固定部材の前記ツバ部が前記レンズ本体の前記出射面の外側に位置する状態で、前記板状固定部材が前記レンズ本体の前記出射面の上に配置され」ている点で一致する。

ウ 引用発明の「ケースの開口を塞ぐ蓋体」は、「正面側全体に光を拡散するための複数の凹凸が設けられた」ものである。
してみると、引用発明と本願発明とは、
「板状固定部材の出射面の全体及びツバ部の出射面の全体に、複数の凹凸が形成されている」点で一致する。

(3)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「レンズ本体及び板状固定部材を含み、
前記レンズ本体が、入射面及び出射面を含み、
前記レンズ本体において、前記入射面及び前記出射面が、互いに一定の距離をおいて対面する状態で位置し、発光素子からの光が入射面に入射し、かつ、前記入射した光が前記出射面から出射し、
前記板状固定部材が、前記板状固定部材の一面に前記レンズ本体から出射される光を入射する入射面を含み、かつ、前記板状固定部材の他面に入射した光を出射する出射面を含み、
さらに、前記板状固定部材が、前記板状固定部材の縁部から形成されたツバ部を含み、
前記板状固定部材の入射面が前記レンズ本体の前記出射面と対面する状態で、かつ、前記板状固定部材の前記ツバ部が前記レンズ本体の前記出射面の外側に位置する状態で、前記板状固定部材が前記レンズ本体の前記出射面の上に配置され、
前記板状固定部材の前記出射面の全体及び前記ツバ部の前記出射面の全体に、複数の凹凸が形成されている、発光装置用レンズ。」

(4)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
「板状固定部材の内部」に関して、
本願発明は、「光拡散性であ」るのに対して、
引用発明は、(ケースの開口を塞ぐ蓋体の)内部が、光拡散性ではない点。

<相違点2>
「複数の凹凸」に関して、
本願発明は、「断面形状が円弧状の複数の同心円状の凹凸」であるのに対して、
引用発明は、複数の凹凸が設けられてはいるものの、そのような形状であるか否か不明である点。

2 判断
(1)上記<相違点1>について検討する。
ア 上記<相違点1>について
(ア)引用文献2には、下記の「引用文献2に記載された技術事項」が記載されている。

「青色発光ダイオード素子と、
前記青色発光ダイオード素子から発せられる光が入射され、その一部の光を黄色光に波長変換して出射する蛍光体からなる波長変換素子と、
前記青色発光ダイオード素子及び前記波長変換素子を収容し、それらの素子から出射される光を照射するための開口を有する筺体と、
前記筺体の開口に設けられ、照射する光を透過する透過材と、を備えた発光装置において、
前記透過材に、粒子径100nm以下の微粒子を含有させ、青色光を黄色光よりも効果的にレイリー散乱により拡散することで、照射面の色むらを低減すること。」

(イ)引用発明の「反射鏡付き白熱電球に近い配光パターンで取り出し可能な、ランプ」は、「青色のInGaN系のLEDチップ」と「黄緑色発光の蛍光体」との組合せにより白色光を得るものであるから、「引用文献2に記載された技術事項」とは、「青色発光ダイオードと蛍光体とを組合わせて白色光を得る照明装置」である点で技術的に共通する。

(ウ)してみると、引用発明の「ケースの開口を塞ぐ蓋体」に、「粒子径100nm以下の微粒子」を含有させることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(エ)上記(ウ)のようにした引用発明の「ケースの開口を塞ぐ蓋体」の内部は、「光拡散性である」といえる。

(オ)よって、引用発明において、上記<相違点1>に係る本願発明の発明特定事項を備えることは、当業者が「引用文献2に記載された記載事項」に基づいて容易になし得たことである。

(2)上記<相違点2>について検討する。
ア 引用発明の「(ケースの開口を塞ぐ蓋体に形成された)複数の凹凸」は、「(ランプの)正面側全体に光を拡散するため」のものであるところ、光を拡散するための構造として、「環状溝を同心円状に複数形成した構造」は、当審拒絶理由で例示した、特開2011-198473号公報(【請求項5】、【0037】及び図6を参照。)に記載されているように、本願出願時点で周知である(以下、周知技術」という。)。

ちなみに、特開2011-198473号公報の【請求項5】には「出射面に、同一断面R形状の凹面を有する環状溝が、光中心軸を中心とする同心円状に連続的に複数形成されている」と記載され、図6は、以下のものである。



イ してみると、引用発明の「ケースの開口を塞ぐ蓋体」の光出射面に形成する「複数の凹凸」の形状として、「断面R形状の凹面を有する環状溝を同心円状に複数形成した構造」を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

ウ 上記イのようにした引用発明の「ケースの開口を塞ぐ蓋体」には、出射面の全体及びツバ部の出射面の全体に、断面形状が円弧状の複数の同心円状の凹凸が形成されていることになる。

エ よって、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。

(3)効果
本願発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。

3 平成29年6月19日提出の意見書について
(1)請求人は、意見書(第1頁下から6行目ないし末行)において、以下のように主張することから、この点について検討する。

「特開2011-198473号公報の【0037】及び図6に記載の、出射面に同心円状に複数形成された環状溝部は、同公報の図12に示されるように、近平行の光の拡散を目的としたものです。これに対し、請求項1に係る発明は、本願当初明細書の【0026】に記載のように、グラデーションに所望の分布を持たせることが可能となるという、同公報が有する効果とは異質な効果を有し、この効果は、出願時の技術水準から当業者が予測できたものではありません。」

(2)しかしながら、上記公報は、「光を拡散させる構造」として、「環状溝を同心円状に複数形成した構造」が、本願出願時点でよく知られていることを示すために例示したものにすぎない。また、光を拡散させた結果として得られる配光特性に格別の差異が生じるとは認められない。
本願発明の奏する効果は、引用発明が、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本願発明に係る発明特定事項を採用することにより、奏される効果として、当業者が予測し得ることである。

(3)よって、請求人の上記主張は、上記判断を左右するものではない。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-28 
結審通知日 2017-06-29 
審決日 2017-07-11 
出願番号 特願2012-233288(P2012-233288)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 近藤 幸浩
星野 浩一
発明の名称 発光装置用レンズ及び照明装置  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 中山 ゆみ  
代理人 伊佐治 創  

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