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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1331806
審判番号 不服2016-10845  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-19 
確定日 2017-09-19 
事件の表示 特願2015-544737「信号処理システム、信号処理方法および信号処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月 7日国際公開、WO2015/063943、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年11月1日を国際出願日とする出願であって、平成28年1月22日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月28日付けで手続補正がなされたが、平成28年4月13日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成28年7月19日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成29年5月16日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年5月25日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成29年5月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
電源から複数の電気機器に供給される電流および電圧を測定する測定装置と、
前記測定装置に通信路を介して接続され、前記測定装置の測定結果から前記電気機器の各々の動作状況を推定する処理装置と
を備える信号処理システムであって、
前記測定装置は、
前記電気機器に供給される電流および電圧のアナログ波形データを検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記アナログ波形データを所定のサンプリング周波数によりサンプリングし、デジタル波形データに変換する変換部と、
前記デジタル波形データを前記処理装置へ送信する送信部と
を有し、
前記処理装置は、
前記送信部から送信された前記デジタル波形データを受信する受信部と、
前記受信部で受信された前記デジタル波形データを格納する格納部と、
前記格納部に格納された前記デジタル波形データを、前記電気機器毎のデジタル波形データに分離する分離部と、
前記分離部により分離された前記デジタル波形データを分析し、前記電気機器の各々の動作状況を推定する動作推定部と、
を有し、
前記変換部は、前記アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む所定のサンプル数だけ前記デジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止し、
前記変換部により変換された前記デジタル波形データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記デジタル波形データを正規化波形データに変換する正規化部と
前記デジタル波形データの隣接する各サンプリング点における電圧値の符号を比較し、前記電圧値が負から正に反転するゼロクロス点を波形起点とし、前記電圧値が負から正に反転し、前記波形起点に対して時間軸上で正方向に位置するゼロクロス点を波形終点とし、該波形起点と該波形終点の差分時間を波形周期とするとき、各サンプリング点における絶対時間をサンプリング周期の丸め誤差の累積が1マイクロ秒におさまるようにする判定部とを有し、
前記所定のサンプル数は、前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数である、
信号処理システム。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2013/136935号)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
a 「[0001]
本開示は、電力線の電流および電圧を非接触で測定することができるセンサ、センサ信号処理装置および電力線信号符号化装置に関する。」

b 「[0016]
分電盤3の手前の電圧線L1の電流・電圧を非接触で測定するために、センサ11aが取り付けられ、電圧線L2の電流・電圧を非接触で測定するために、センサ11bが取り付けられる。センサ11aおよび11b(以下、特に二つのセンサを区別する必要がない場合には、単にセンサ11と称する)によって検出された電圧および電流の測定信号がセンサ信号処理部12に供給される。センサ信号処理部12は、センサ11の出力信号を処理して通信部によって測定データを無線で伝送する。なお、各センサ毎にセンサ信号処理部を設けても良い。
[0017]
センサ信号処理部12から送信された測定データがセンサ信号処理部13によって受信される。センサ信号処理部13は、受信データから測定データを復号する。無線通信に限らず、PLC(Power Line Communications)のような有線通信を利用しても良い。センサ信号処理部13に対して図示しないが、表示装置等が接続されている。センサ信号処理部13は、例えば家庭内のゲートウェイに設けられている。家庭内で処理が完結しないでも良い。例えばセンサ信号処理部13がネットワーク上のサーバ(クラウド)によって実現されている。
[0018]
図示が省略されているが、センサ信号処理部13に対して表示部、制御部等が接続されている。表示部によって、現在の家庭内の電力使用状況、各電気機器の使用状況等が表示され、所謂電力の可視化がなされる。制御部によって、各電気機器の使用状況の履歴等が記憶され、例えば省電力化のための対策がユーザに提示される。」

c 「[0034]
<3.センサ信号処理部>
「センサ信号処理部12」
センサ信号処理部12および13の一例を図10に示す。入力端子61aには、上述した容量結合の電圧センサからの電圧測定信号が入力され、入力端子61bには、上述したクランプ式交流電流センサからの電流測定信号が入力される。電圧測定信号が増幅器62aおよびフィルタ63aを通じてA/Dコンバータ64aに供給され、デジタル信号に変換される。フィルタ63aは、不要な信号成分を除去する。
[0035]
センサからの電流測定信号が電圧測定信号と同様に、増幅器62bおよびフィルタ63bを通じてA/Dコンバータ64bに供給され、デジタル信号に変換される。A/Dコンバータ64aおよび64bからのデジタル信号がDSP(Digital Signal Processor)65に供給される。なお、増幅器62a、62bおよびフィルタ63a、63bをセンサ側に設けて良い。
[0036]
DSP65は、後述するように、測定データに対して振幅正規化および位相調整を施す。さらに、DSP65は、デジタル電圧測定データおよびデジタル電流測定データに対して符号化を行う。符号化としては、オーディオデータに対する符号化と同様の符号化方式を使用できる。符号化は、伝送データ量を圧縮するものである。
[0037]
DSP65からの圧縮符号化された測定データが通信モジュール66に供給される。通信モジュール66の出力信号が無線伝送される。通信方式としては、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、Wi-Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth(登録商標)方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。」

d 「[0040]
「センサ信号処理部13」
センサ信号処理部13は、上述したセンサ信号処理部12からの無線信号を受信する通信モジュール70を有する。必要に応じて有線通信71を経由して受信した測定データをCPU(Central Processing Unit)72に供給する。CPU72は、図示しないが、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等と共にマイクロコンピュータを構成する。
[0041]
CPU72は、DSP65においてなされた符号化の復号処理を行う。さらに、測定電圧信号および測定電流信号から稼働している家電の種類・状態・消費電力を判別し、判定結果を出力する。例えば電力線に接続された電気機器の消費電力、または起動時・終了時・定常時の電流・電圧変化に基づいて、機器の種類を識別することができ、または機器の状態を識別することができる。」

e 「[0045]
「位相調整および振幅正規化」
上述したセンサ信号処理部12におけるDSP65によってなされる測定データに対する振幅正規化および位相調整について、図11および図12を参照して説明する。A/Dコンバータ64aから容量結合による電圧センサの測定信号に対応する電圧測定データが出力される。A/Dコンバータ64bからクランプ式交流電流センサの測定信号に対応する電流測定データが出力される。電流測定データが符号化部81に入力される。符号化部81は、オーディオデータに対する符号化と同様の圧縮符号化によって、電流データおよび電圧データを符号化する。」

f 「[0051]
<4.符号化/復号化の一例>
符号化部81の一例について図13を参照して説明する。電力線信号入力部91からの電力線信号が電力パラメータ算出部92に対して供給される。電力線信号は、電流の測定データ(電流波形と適宜称する)と、上述したように、位相調整および振幅正規化がなされた電圧の測定データ(電圧波形と適宜称する)である。
[0052]
電力パラメータ算出部92では、電力線信号を用いて電力パラメータを算出する。電力パラメータは、電流値、電圧値、電力、力率、高調波歪み等である。電流値、電圧値は、例えば振幅値である。電力は、交流電力(皮相電力)であって、電圧の実効値と電流の実効値との積で表される。負荷で実際に消費される電力が有効電力と称される。皮相電力と有効電力の位相差θのコサイン(cos θ)が力率と称される。位相差θが0の場合が理想的な状態である。高調波歪みは、基本波に対する全ての次数の高調波の和の比率である。さらに、これらの電力パラメータは、予め設定された所定期間に区分けされた電力線信号から計算される。所定期間は、例えば1秒間とされる。
[0053]
電圧波形および電流波形と、電力パラメータ算出部92によって算出された電力パラメータとが電力情報保存部93によって、メモリ94に保存される。例えば過去のN個の電力情報がメモリ94に保存される。電力情報の用語は、電力線信号(電圧波形および電流波形)と電力パラメータとを総称したものである。
[0054]
一致判定部95において、現在の電力情報が時間的に前の電力情報と略一致するか否かが判定される。閾値設定部96は、一致判定時の閾値を設定するために設けられている。一致判定は、電力情報の全ての項目についてなされることは、必要でなく、例えば電圧、電流および力率のそれぞれについて一致しているか否かを判定しても良い。閾値は、例えば電圧および電流と力率とのそれぞれに関して設定される。なお、閾値を曜日、時間帯等に応じて適切な値に変更しても良い。」

g 「[0056]
一致判定部95において、略一致しない判定結果が得られる場合には、現在の電力情報が符号化/識別信号重畳部97に対して供給され、現在の電力情報が符号化される。数値データである電力パラメータは、特に符号化をしないで、そのままデジタルデータとして伝送しても良い。一方、電力線信号の電圧波形および電流波形は、区分けされた波形で表されるので、波形符号化によって符号化される。さらに、符号化は、データ量を圧縮することができる圧縮符号化であることが好ましい。
[0057]
一致判定部95において、略一致するとの判定結果が得られる場合には、現在の電力情報の伝送が省略される。すなわち、現在の電力情報に代えて、略一致するとされた電力情報を特定する情報(識別信号と適宜称する)が伝送データに対して重畳される。例えば略一致すると判定される電力情報が何回前のデータかを表す情報、その電力情報のタイムスタンプ、電力パラメータ等を識別信号として使用できる。例えば電力情報がメモリ94に保存される場合に、電力情報が識別信号と関連付けされて保存されている。したがって、識別信号は、例えばメモリ94から供給される。符号化/識別信号重畳部97の出力データが無線通信、有線通信等の通信モジュールに対して供給されて送信される。」

h 「[0059]
受信側は、図14に示すように、通信モジュール(図示しない)によって受信された受信データが識別信号処理部101に供給される。識別信号処理部101は、受信データに重畳されている識別信号を分離する。識別信号処理部101から出力される電力情報の符号化データおよび識別信号が復号化部103に供給される。
[0060]
復号化部103は、電力線信号(電圧波形および電流波形)の符号化データを復号する。復号化部103によって復号された電力線信号および電力パラメータがメモリ102に対して保存される。電力情報は、メモリ102上では、識別信号と関連付けられて記憶されている。電力情報の伝送が省略されている区間には、識別信号のみが存在する。」

上記a?hより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「分電盤3の手前の電圧線L1の電流・電圧を非接触で測定するために、センサ11aが取り付けられ、電圧線L2の電流・電圧を非接触で測定するために、センサ11bが取り付けられ、センサ11aおよび11bによって検出された電圧および電流の測定信号が供給されるセンサ信号処理部12と([0016])、
センサ信号処理部12から無線で伝送された([0016])測定データが受信され、受信データから測定データを復号し([0017])、各電気機器の使用状況等が表示される表示部が接続されたセンサ信号処理部13と([0018])
を備えるセンサ信号処理装置であって([0001])、
センサ信号処理部12は、
電圧測定信号が供給され、デジタル信号に変換されるA/Dコンバータ64aと([0034])、
電流測定信号が供給され、デジタル信号に変換されるA/Dコンバータ64bと([0035])、
A/Dコンバータ64aおよび64bからのデジタル信号が供給され、符号化を行う符号化部81を有するDSP65と([0035][0036][0045])、
DSP65からの圧縮符号化された測定データが供給され、出力信号が無線伝送される通信モジュール66と([0037])、
を有し、
センサ信号処理部13は、
センサ信号処理部12からの無線信号を受信する通信モジュール70と([0040])、
通信モジュールによって受信された受信データが供給され、受信データに重畳されている識別信号を分離する識別信号処理部101と([0059])、
識別信号処理部101から出力される電力情報の符号化データおよび識別信号が供給され([0059])、電力線信号(電圧波形および電流波形)の符号化データを復号する復号化部103と([0060])、
復号化部103によって復号された電力線信号および電力パラメータが保存されるメモリ102と([0060])、
DSP65においてなされた符号化の復号処理を行い、測定電圧信号および測定電流信号から稼働している家電の種類・状態・消費電力を判別するCPUと([0041])、
を有し、
符号化部81は、
電流の測定データ(電流波形と適宜称する)と、電圧の測定データ(電圧波形と適宜称する)である電力線信号([0051])を用いて、電流値、電圧値、電力、力率、高調波歪み等である電力パラメータを、予め設定された所定期間(例えば1秒間)に区分けされた電力線信号から計算される電力パラメータ算出部92と([0052])、
電力線信号(電圧波形および電流波形)と、電力パラメータとの総称である電力情報が保存されるメモリ94と([0053])、
現在の電力情報が時間的に前の電力情報と略一致するか否かが判定される一致判定部95と([0054])、
一致判定部95において、略一致しない判定結果が得られる場合には、現在の電力情報が供給され、電力線信号の電圧波形および電流波形は、区分けされた波形で表されるので、波形符号化によって符号化され([0056])、
一致判定部95において、略一致するとの判定結果が得られる場合には、現在の電力情報の伝送が省略され、略一致するとされた電力情報を特定する情報(識別信号と適宜称する)が伝送データに対して重畳され、出力データが通信モジュールに対して供給される符号化/識別信号重畳部97とを有する([0057])、
センサ信号処理装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2013-213825号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0035】
本技術を適用した監視システムは、配電盤の、家庭内に電力を供給している、いわば根元等の1箇所において、家庭内の1以上の家電で消費されている電流の総和を計測し、その電流の総和の系列(電流波形系列)から、家庭内の、例えば、エアコンや掃除機等の個々の家電で消費されている電力(電流)を分離する家電分離を行う。」

b 「【0038】
また、家電分離では、総和データから、個々の家電で消費されている電力の他、個々の家電で消費されている電流に関する情報を分離することができる。具体的には、家電分離では、総和データから、例えば、個々の家電で消費されている電流や、その周波数成分を分離することができる。」

c 「【0040】
図2は、家電分離で行われる波形分離学習の概要を説明する図である。
【0041】
波形分離学習では、各時刻tの総和データとしての電流波形Ytが、各家電#mで消費されている電流の電流波形W(m)の加算値(総和)であるとして、電流波形Ytから、個々の家電#mで消費されている電流波形W(m)が求められる。」

d 「【0114】
例えば、図3のデータ取得部11は、電圧が、負の値から正の値に変化するときのゼロ交差のあるタイミングを、電流の位相が0になっているタイミングとして、所定のサンプリング間隔で、1周期分(日本では、1/50又は1/60秒)の電流をサンプリングし、そのサンプリング値をコンポーネントとする列ベクトルを、1時刻分の電流波形Ytとして出力する。
【0115】
データ取得部11が1周期分の電流をサンプリングするサンプリングの回数がD回であるとすると、電流波形Ytは、D行の列ベクトルである。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2011-58921号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0051】
このように、この電気特性測定装置1および電気特性測定方法では、一の表示更新周期T1において最初に入力した検出信号S3に対応するゼロクロス点から開始する取得期間内に取得されたサンプリング値D1の数がこの一の表示更新周期T1の終期までに、交流信号S1の1波長分(ゼロクロス点に同期した1周期分)に達しないときには、予め決められた条件を満たすまで、予め決められた上限時間を延長の最大時間としてサンプリング値D1の取得期間が延長される。」

b 「【0053】
また、この電気特性測定装置1および電気特性測定方法では、取得期間の延長に際して、予め決められた長さの延長時間T2ずつ、1回の延長の最大時間をこの延長時間T2として延長する。したがって、この電気特性測定装置1および電気特性測定方法によれば、例えば、延長時間T2を表示更新周期T1以下の短時間に規定することにより、取得期間を徐々に延長することができる。また、この場合には、取得期間の延長時間T2単位での延長に際して、サンプリング値D1のサンプリングレートを低下させる構成とすることができるため、取得期間の延長に起因して増加するサンプリング値D1の総数の増加率を低下させることができ、より少ない記憶容量でサンプリング値D1を記憶させることができる。
【0054】
また、この電気特性測定装置1および電気特性測定方法では、新たな検出信号S3が入力することを予め決められた条件として、この条件を満たしたときに、サンプリング値D1の取得を停止して取得期間を終了させると共に、この取得した1波長分のサンプリング値D1に基づいて電気特性を算出して表示部7に表示させる。したがって、この電気特性測定装置1および電気特性測定方法によれば、取得期間を延長した場合においても、取得した1波長分のサンプリング値D1に基づいて電気特性を正確に算出して表示させることができるため、電気特性の表示更新が遅れる事態を回避することができる。
【0055】
また、この電気特性測定装置1および電気特性測定方法では、取得期間の長さが予め決められた上限時間に達したときに、サンプリング値D1の取得を停止して取得期間を終了させると共に、予め決められた警告処理(表示部7への警告表示の表示)を実行する。したがって、この電気特性測定装置1および電気特性測定方法によれば、1周期(1サイクル)分のサンプリング値D1の取得が長時間に亘って取得できずに、古い電気特性が表示部7に表示され続ける事態を回避することができるため、電気特性の測定の信頼性を向上させることができる。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2013-53861号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0045】
実線上のプロットされた点が非同期サンプリングされた実際のサンプリングデータである。測定周波数が想定周波数より低い場合には、想定周波数では1周期が終わっても、測定周波数ではまだ1周期分を満たしていない。そのため、1周期分のサンプリングデータを集めるために、2周期目のサンプリングデータを利用する。同図(a)の場合、2周期目の最初のサンプリングデータを追加し、(N+1)個のサンプリングデータで離散フーリエ変換を行う。測定周波数が想定周波数より高い場合には、想定周波数の1周期の中に測定周波数の1周期分のサンプリングデータが含まれているため、余分なサンプリングデータを削除する。同図(b)の場合、N個のサンプリングデータでちょうど1周期分のサンプリングデータとなるため、削除せずそのまま利用している。」

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開平11-83915号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0016】所定周期超過検出部5は、周期カウンタ部2のカウント値を監視し、同カウント値が予め定められた閾値Nthに達したときに所定周期超過検出信号を出力する。ここで、閾値Nthは、検出対象たるDTMF信号の周波数をfmin、周期カウンタ部2がカウントを行うクロックの周波数をfsとした場合にNth=fmin/fs+α(ただし、α>0)なる関係を満たすように定められる。」

6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開平9-5362号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0022】さらに、このゼロクロス周波数検出手段13で検出されサンプリングされたデータは、周波数変動などにより必ずしも512個ではなく、周波数が高くなっている場合にはサンプリング数が512より少なくなり、反対に周波数が低くなっている場合にはサンプリング数が512より多くなっているので、補間により正確に512のサンプリング数に再サンプリングして第2のサンプリングデータを算出する再サンプリング手段14を有している。
【0023】そして、再サンプリングに関してもニュートン補間を用い、図8に示すように、所定の前側のデータ1つと、後側のデータ2つとを用い、中間値を求めて、検出された交流電圧波形のサンプリングの時間t1,t2,t3……を、所定の時間T1,T2,T3……に変換する。
【0024】すなわち、この場合にも、データ0を(x0,y0)、データ1を(x1,y1)、データ2を(x3,y3)とし、求めたいデータnを(Xn,Yn)とすると、
C0=(y1-y0)/(x1-x0)
C1=(y2-y1)/(x2-x1)
D0=(C1-C0)/(x2-x0)
Xn=y0+(Xn-x0)×(C0+D0×(Xn-x1))
により算出する。なお、Xnは算出しようとする再サンプリングの時間Tnであるため、T1,T2,T3……より既知の値である。」

7 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開平4-16771号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「第2図は、この場合における「一周期N個のサンプリングデータ作成」のための処理手順の詳細を例示するものであり、まず、機器本体11に一旦取り込まれた波形1の実測データ(χ_(1)′,χ_(2)′,・・・,χ_(N)′)については、その周期Tを求める処理がトリガ部24を介してトリガをかけるなどして行なわれる。
かくして、取り込まれている当該波形1の周期Tが求められた後は、サンプリングポイント数がN′個である実測データ(χ_(1)′,χ_(2)′,・・・,χ_(N)′)に基づき、例えば線形補間法やスプライン補間法などの所定の補間法を用いることで、関数f(t)を求める処理が行なわる。
次いで、想定される一周期分の新たな全サンプリングポイント数Nで波形1の前記周期Tを除し、新たなサンプリングポイントのポイント間隔ΔTを得るための処理が行なわれる。
このようにして新たなサンプリングポイントのポイント間隔ΔTを得た後は、全てのサンプリングポイントにつき、対応する補間データを得るため、順次、第3図に1,2,・・・,Nとして示される各該当ポイントの順位(i)と前記ポイント間隔ΔTとの積算値を前記関数f(t)に代入することで、補間データ(χ_(1),χ_(2),・・・,χ_(N))が一周期に合致させて順次作成される。」(第3頁右上欄第12行?左下欄第16行)

8 引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8(特開2012-154764号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0018】
サンプリング部12は、1つのサンプリングクロック生成回路と複数(この例では3つ)のサンプリング回路(いずれも図示せず)とを備えた複数チャンネル(この例では、Ch1?Ch3までの3チャンネル)の構成となっている。サンプリングクロック生成回路は、予め決められたサンプリング周期Ts(図3参照)のサンプリングクロックを生成する。各サンプリング回路は、サンプリングクロックに同期して各交流信号Sをそれぞれサンプリングして各交流信号S1?S3の瞬時値Afを取得し、その瞬時値Afを示すデジタルデータ(サンプリングデータ)Df1,Df2,Df3(以下、区別しないときには「デジタルデータDf」ともいう)を出力するサンプリング処理をそれぞれ実行する。この場合、デジタルデータDfは、測定部16の実効値演算処理回路31によって実行される後述する実効値演算処理において交流信号Sについての物理量(例えば、電圧や電力)の実効値の測定に用いられると共に、処理部15の補間処理回路22によって行われる後述するラグランジュ補間式P(x)の特定に用いられる。
【0019】
記憶制御部13は、サンプリング部12の各サンプリング回路からそれぞれ出力されるデジタルデータDfを記憶部14に記憶させる。記憶部14は、記憶制御部13の制御に従ってデジタルデータDfを記憶する。この場合、記憶部14は、瞬時値Afを取得(サンプリング)したサンプリング時点Tz(例えば、図3に示すサンプリング時点Tz0?Tz32)を特定可能に(各サンプリング時点Tzと対応付けて)デジタルデータDfを記憶する。」

b 「【0021】
補間処理回路22は、図3に示すように、交流信号Sの一部の区間を測定対象Ujとして規定する。具体的には、補間処理回路22は、同図に示すように、ゼロクロス検出回路21から出力されたデジタルデータDfによって示される瞬時値Af0,Af33にそれぞれ対応するサンプリング時点Tz0,Tz33によって区分される交流信号Sのほぼ1周期Ta分に相当する区間を測定対象Ujとして規定する。
【0022】
また、補間処理回路22は、記憶部14に記憶されているデジタルデータDfを読み出して、その各デジタルデータDfによって示される瞬時値Af(サンプリング処理によって取得された瞬時値)に基づき、交流信号S(測定対象Uj)の波形を表すラグランジュ補間式P(x)を特定する。また、補間処理回路22は、図4,5に示すように、測定対象Ujの時間長TcをQ(Qは、予め決められた2以上の整数であって、一例として、2のべき乗数(例えば、16))個に均等に分割した各分割区間Udの先端(開始端)に相当する全部でQ(16)個の分割時点Td0?Td15(以下、区別しないときには「分割時点Td」ともいう)におけるQ個の瞬時値At0?At15(以下、区別しないときには「瞬時値At」ともいう)を、ラグランジュ補間式P(x)から求める補間処理を行うと共に、算出した瞬時値Atを示すデジタルデータDtを出力する。この場合、デジタルデータDtは、測定部16によって実行される後述するFFT処理および判定処理において用いられる。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「センサ信号処理装置」は、本願発明1の「信号処理システム」に相当する。

イ 引用発明の「分電盤3の手前の電圧線L1の電流・電圧を非接触で測定するために」電圧線L1に取り付けられた「センサ11a」、「電圧線L2の電流・電圧を非接触で測定するために」電圧線L2に取り付けられた「センサ11b」及び「センサ11aおよび11bによって検出された電圧および電流の測定信号が供給されるセンサ信号処理部12」は、本願発明1の「電源から複数の電気機器に供給される電流および電圧を測定する測定装置」に相当する。

ウ 引用発明の「センサ信号処理部12から無線で伝送された測定データが受信され、受信データから測定データを復号し、各電気機器の使用状況等が表示される表示部が接続されたセンサ信号処理部13」は、本願発明1の「前記測定装置に通信路を介して接続され、前記測定装置の測定結果から前記電気機器の各々の動作状況を推定する処理装置」に相当する。

エ 引用発明の「分電盤3の手前の電圧線L1の電流・電圧を非接触で測定するために」「取り付けられ」た「センサ11a」及び「電圧線L2の電流・電圧を非接触で測定するために」「取り付けられ」た「センサ11b」は、本願発明1の「前記電気機器に供給される電流および電圧のアナログ波形データを検知する検知部」に相当する。

オ 引用発明の「電圧測定信号が供給され、デジタル信号に変換されるA/Dコンバータ64aと、電流測定信号が供給され、デジタル信号に変換されるA/Dコンバータ64b」は、本願発明1の「前記検知部により検知された前記アナログ波形データを所定のサンプリング周波数によりサンプリングし、デジタル波形データに変換する変換部」に相当する。

カ 引用発明の「通信モジュール66」「に対して供給される符号化/識別信号重畳部97」の「出力データ」は、「波形符号化によって符号化」された「電圧波形および電流波形」であるので、本願発明1の「前記デジタル波形データ」に相当するといえる。
よって、引用発明の「A/Dコンバータ64aおよび64bからのデジタル信号が供給され、符号化を行う符号化部81を有するDSP65と、DSP65からの圧縮符号化された測定データが供給され、出力信号が無線伝送される通信モジュール66」は、本願発明1の「前記デジタル波形データを前記処理装置へ送信する送信部」に相当する。

キ 引用発明の「センサ信号処理部12からの無線信号を受信する通信モジュール70」は、本願発明1の「前記送信部から送信された前記デジタル波形データを受信する受信部」に相当する。

ク 引用発明のメモリ102に保存される「電力線信号」は、「電力線信号(電圧波形および電流波形)の符号化データを復号」したものであるから、本願発明1の「前記デジタル波形データ」に相当するものといえる。
よって、引用発明の「電力線信号および電力パラメータが保存されるメモリ102」は、本願発明1の「前記受信部で受信された前記デジタル波形データを格納する格納部」に相当する。

ケ 引用発明のCPUが家電の種類・状態・消費電力を判別する「測定電圧信号および測定電流信号」は、「電力線信号(電圧波形および電流波形)の符号化データを復号」したものであるから、本願発明1の「前記デジタル波形データ」に相当するものといえる。
よって、引用発明の「DSP65においてなされた符号化の復号処理を行い、測定電圧信号および測定電流信号から稼働している家電の種類・状態・消費電力を判別するCPU」は、本願発明1の「前記デジタル波形データを分析し、前記電気機器の各々の動作状況を推定する動作推定部」に相当する。

コ 引用発明の「電力線信号(電圧波形および電流波形)」「が保存されるメモリ94」は、本願発明1の「前記変換部により変換された前記デジタル波形データを記憶する記憶部」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「電源から複数の電気機器に供給される電流および電圧を測定する測定装置と、
前記測定装置に通信路を介して接続され、前記測定装置の測定結果から前記電気機器の各々の動作状況を推定する処理装置と
を備える信号処理システムであって、
前記測定装置は、
前記電気機器に供給される電流および電圧のアナログ波形データを検知する検知部と、
前記検知部により検知された前記アナログ波形データを所定のサンプリング周波数によりサンプリングし、デジタル波形データに変換する変換部と、
前記デジタル波形データを前記処理装置へ送信する送信部と
を有し、
前記処理装置は、
前記送信部から送信された前記デジタル波形データを受信する受信部と、
前記受信部で受信された前記デジタル波形データを格納する格納部と、
前記デジタル波形データを分析し、前記電気機器の各々の動作状況を推定する動作推定部と、
前記変換部により変換された前記デジタル波形データを記憶する記憶部とを有する、
信号処理システム。」

(相違点1)
本願発明1は、「前記格納部に格納された前記デジタル波形データを、前記電気機器毎のデジタル波形データに分離する分離部」を有しているに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(相違点2)
本願発明1は、「電気機器毎」に「分離された」デジタル波形データを分析し、電気機器の各々の動作状況を推定するのに対し、引用発明は、「測定電圧信号および測定電流信号」から稼働している家電の種類・状態・消費電力を判別しているが、「測定電圧信号および測定電流信号」が電気機器毎に分離された信号でない点。

(相違点3)
本願発明1は、「前記変換部は、前記アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む」「前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数」「だけ前記デジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止し」ているのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(相違点4)
本願発明は、「前記記憶部に記憶された前記デジタル波形データを正規化波形データに変換する正規化部」を有しているのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(相違点5)
本願発明は、「前記デジタル波形データの隣接する各サンプリング点における電圧値の符号を比較し、前記電圧値が負から正に反転するゼロクロス点を波形起点とし、前記電圧値が負から正に反転し、前記波形起点に対して時間軸上で正方向に位置するゼロクロス点を波形終点とし、該波形起点と該波形終点の差分時間を波形周期とするとき、各サンプリング点における絶対時間をサンプリング周期の丸め誤差の累積が1マイクロ秒におさまるようにする判定部」を有しているのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(2)判断
上記相違点3について検討する。
引用発明は、「電圧測定信号」、「電流測定信号」を、「デジタル信号に変換し」、電流の測定データ(電流波形と適宜称する)と、電圧の測定データ(電圧波形と適宜称する)である電力線信号を用いて、電流値、電圧値、電力、力率、高調波歪み等である電力パラメータを、予め設定された所定期間(例えば1秒間)に区分けされた電力線信号から計算するものであるから、「所定期間(例えば1秒間)」に渡って電圧測定信号及び電流測定信号(本願発明1の「電流および電圧のアナログ波形データ」に相当)をデジタル信号に変換していることは明らかであるが、
引用発明において、3個のゼロクロス点を含む、電圧測定信号(又は電流測定信号)の1周期分のサンプル数に該電圧測定信号(又は電流測定信号)の最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数だけ、電圧測定信号(又は電流測定信号)をデジタル信号に変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止することは記載されていない。
また、引用文献2-8においても、アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む、アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数だけデジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止しする変換部は記載されていない。

したがって、上記相違点3に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、上記相違点1、2、4、5について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-7について
本願発明2-7についても、上記相違点3に係る本願発明1の「前記変換部は、前記アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む所定のサンプル数だけ前記デジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止し」「前記所定のサンプル数は、前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数である」と同一の構成を備えるものであるから、 引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明8,9について
本願発明8,9は、本願発明1、4に対応する方法の発明であり、上記相違点3に係る本願発明1の「前記変換部は、前記アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む所定のサンプル数だけ前記デジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止し」「前記所定のサンプル数は、前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数である」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明10,11について
本願発明10,11は、本願発明1、4に対応するプログラムの発明であり、上記相違点3に係る本願発明1の「前記変換部は、前記アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む所定のサンプル数だけ前記デジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止し」「前記所定のサンプル数は、前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数である」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定の概要
原査定の概要は次の通りである。
(1)理由1
本願請求項1-15に係る発明は、上記引用文献1-8に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)理由2
請求項3、9における「さらに、・・・判定部を有し」なる記載は不明確であり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2 原査定についての判断
(1)理由1(特許法第29条第2項)について
平成29年5月25日付け手続補正により補正された請求項1、4、8-11は、「前記変換部は、前記アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む」「前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数」「だけ前記デジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止し」という事項、もしくはそれに対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり(上記「第4 1(2)」-「第4 4」)、本願発明1-11は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

(2)理由2(特許法36条第6項第2号)について
平成28年7月19日付け手続補正により、請求項3、9の「さらに、・・・判定部を有し」という記載は、削除されており、原査定の理由2を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
(1)当審では、請求項1、5、12?15の「前記電圧値が正から負に反転し、前記波形起点に対して時間軸上で正方向に隣接するゼロクロス点を前記波形終点とし」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年5月25日付けの補正において、上記の記載が「前記電圧値が負から正に反転し、前記波形起点に対して時間軸上で正方向に位置するゼロクロス点を波形終点とし」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項5には、「前記変換部は、前記アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む所定のサンプル数だけ前記デジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止すること」([請求項6])及び「前記所定のサンプル数は、前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数であること」([請求項8])の構成が記載されていないので、課題を解決するための手段が反映されていない、また、請求項13及び15の記載についても、同様に、発明の詳細な説明に記載された、課題を解決するための手段が反映されていないとの拒絶の理由を通知しているが、
平成29年5月25日付けの補正において、補正前の請求項5に対応する請求項4が「前記変換部は、前記アナログ波形データを、3個のゼロクロス点を含む所定のサンプル数だけ前記デジタル波形データに変換し、該変換が終了した場合、該変換を所定の時間が経過するまで停止し、前記所定のサンプル数は、前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数に該アナログ波形データの最大周波数変動に対応するサンプル数を加えたサンプル数である」と補正され、補正前の請求項13及び15に対応する請求項9及び11についても同様に補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第2号について
(1)当審では、請求項1の「前記波形起点に対して時間軸上で正方向に隣接するゼロクロス点を前記波形終点とし」、「該波形起点と該波形終点の差分時間を前記波形周期とするとき」という記載が不明確である、また、同様な不明確な記載は、請求項5,請求項12?15にも存在すると拒絶の理由を通知しているが、
平成29年5月25日付けの補正において、請求項1の上記記載が「前記波形起点に対して時間軸上で正方向に位置するゼロクロス点を波形終点とし」、「該波形起点と該波形終点の差分時間を波形周期とするとき」と補正され、補正前の請求項5、12?15に対応する請求項4、8?11についても同様に補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項2の「前記所定のサンプル数は、前記アナログ波形データの1周期分のサンプル数以上である」という記載が不明確であると拒絶の理由を通知しているが、平成29年5月25日付けの補正において、前記補正前の請求項2が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-11は、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2015-544737(P2015-544737)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01R)
P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 中塚 直樹
須原 宏光
発明の名称 信号処理システム、信号処理方法および信号処理プログラム  
代理人 特許業務法人白坂  
代理人 白坂 一  
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