• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D
管理番号 1331808
審判番号 不服2016-18951  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-16 
確定日 2017-09-19 
事件の表示 特願2014-553717号「動力車両およびその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年8月1日国際公開、WO2013/110708、平成27年2月16日国内公表、特表2015-505009号、請求項の数(28)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)1月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年1月25日 英国)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月24日に国内書面が提出され、平成26年9月19日に国際出願翻訳文提出書により明細書、特許請求の範囲及び図面の翻訳文が提出され、平成27年10月21日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年8月3日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年12月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(平成28年8月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1、25
・刊行物等1 又は 刊行物等1、5-6
・備考

刊行物1には、エンジンと、自動始動停止を判断するコントローラと、ドライバの動作を検出し、複数段階(例えば0?255の範囲。高い値は積極的な運転を示し、低い値は慎重な運転を示す)にドライバタイプを分類するドライバタイプ分類システムとを備え、ドライバタイプ分類の値が大きくなるほど、自動停止の際の停止遅延時間を長くすること、が記載されている(特に、段落【0026】-【0027】等参照)。そして、上述したように、刊行物1に記載の発明においてはドライバタイプを複数段階(例えば、0?255)に区分しているが、どの程度細かく区分するかは当業者が適宜選択し得る事項にすぎず、また、刊行物1には、ドライバタイプ分類は高い値は積極的な運転を示し、低い値は慎重な運転を示すことも記載されていることから、ドライバタイプを単に積極的な運転を示すドライバタイプと慎重な運転を示すドライバタイプに区分することに格段の困難性は認められない。

なお、請求項1、25に記載の「無効化」に関し、発明の詳細な説明には「無効化(中断)」(段落【0007】等)、「エンジンのストップ/スタート機能を一時停止(無効化)させる」(段落【0141】)等の記載があり、発明の詳細な説明を参酌すると、請求項1、25に記載の「無効化」とは、エンジンのストップ/スタート機能を完全に停止させることのみに限定されるものではなく、中断や一時停止を含む意味であると認められる。
なお、仮に請求項1、25に記載の「無効化」が、中断や一時停止を含まない完全な停止のみに限定されると仮定しても、刊行物1に記載の発明においては、上述したように、ドライバタイプ分類の値が大きくなるほど、自動停止の際の停止遅延時間が長くされることから、積極的な運転を示すドライブタイプであればエンジンの自動停止を極力回避しようとしていることは明らかであり、また、スポーツモード(積極的な運転を示すモード)が選択されている際に、エンジンの自動停止を無効化することは従来周知の技術であって(必要であれば、刊行物5の段落【0039】、刊行物6の段落【0083】等参照)、刊行物1に記載された発明と刊行物5-6に例示される周知技術は共にエンジンの自動停止に関する発明であり共通の技術分野に属する発明であることから、刊行物1に記載の発明に上記周知の技術を適用し、ドライバタイプ分類が高い値を示し、積極的な運転を示すドライバタイプであると判断された際に、エンジンの自動停止を無効化させることは当業者が容易に想到し得るものである。

・請求項2-6、26-28
・刊行物等1-2 又は 刊行物等1-2、5-6
・備考
刊行物1は上述のとおりである。
刊行物2には、車両に関連する複数のパラメータのそれぞれに基づいて、ドライバを「穏やか(1)」、「普通(2)」、「積極的(3)」に分類する中間運転行動DB(DB1-DB22)と、個々の中間行動DBに基づいてカウンタをインクリメントすることにより総合的にドライバを「穏やか」、「普通」、「積極的」に分類する総合運転行動DBを備え(特に段落【0044】には、カウンタが閾値TH3よりも大きい場合に「積極的(3)」に分類されることが記載されている)、中間運転行動DB11は、縦方向加速度の最大値の絶対値が第1閾値以下のときに「穏やか(1)」とし、絶対値が第1閾値より大きく第2閾値以下のときに「普通(2)」とし、それ以外の場合に「積極的(3)」とすること、が記載されている(段落【0037】-【0044】、図2-4等参照)。
刊行物1-2はいずれもドライバの運転スタイルをパラメータに基づき判定するという共通の機能を有していることから、刊行物1に記載のドライバタイプの判定手法として、刊行物2に記載の判定手法を適用することは当業者が容易に想到し得るものである。

・請求項7-8
・刊行物等1-2 又は 刊行物等1-2、5-6
・備考

刊行物2には、さらに、中間運転行動DB13は、縦方向加速度と横方向加速度の差の最大値が第1閾値以下のときに「穏やか(1)」とし、最大値が第1閾値より大きく第2閾値以下のときに「普通(2)」とし、それ以外の場合に「積極的(3)」とすること、が記載されている(段落【0037】-【0044】、図2-4等参照)。


・請求項9-12
・刊行物等1-2 又は 刊行物等1-2、5-6
・備考

刊行物2には、さらに、中間運転行動DB2は、マスターシリンダー圧の最大値が第1閾値以下のときに「穏やか(1)」とし、最大値が第1閾値より大きく第2閾値以下のときに「普通(2)」とし、それ以外の場合に「積極的(3)」とすること、が記載されている(段落【0037】-【0044】、図2-4等参照)。また、中間運転行動DB3は、マスターシリンダー圧の変化率の最大値が第1閾値以下のときに「穏やか(1)」とし、最大値が第1閾値より大きく第2閾値以下のときに「普通(2)」とし、それ以外の場合に「積極的(3)」とすること、も記載されている(段落【0037】-【0044】、図2-4等参照)
中間運転行動DB2おけるパラメータとしてマスターシリンダー圧に代えて、ブレーキトルク量又はブレーキペダル位置とすること、及び、中間運転行動DB3おけるパラメータとしてマスターシリンダー圧の変化率に代えて、ブレーキペダル位置の変化率とすることに格段の困難性も認められない。

・請求項13
・刊行物等1-3 又は 刊行物等1-3、5-6
・備考

刊行物3には、運転活動特性値に基づいて燃費向き運転操作と出力向きスポーツ的運転操作を区別するものにおいて、運転活動特性値はキックダウン評価等に従って形成されること、が記載されている(特に段落【0006】等参照)。

・請求項14
・刊行物等1-3 又は 刊行物等1-3、5-6
・備考

刊行物2には、さらに、中間運転行動DB9は、車速の最大値が第1閾値以下のときに「穏やか(1)」とし、最大値が第1閾値より大きく第2閾値以下のときに「普通(2)」とし、それ以外の場合に「積極的(3)」とすること、が記載されている(段落【0037】-【0044】、図2-4等参照)。

・請求項15
・刊行物等1-3 又は 刊行物等1-3、5-6
・備考

刊行物2には、さらに、中間運転行動DB20は、ギアボックスのモードに基づいて、「穏やか(1)」、「普通(2)」、「積極的(3)」に分類すること、が記載されている(段落【0037】-【0044】、図2-4等参照)。

・請求項16
・刊行物等1-3 又は 刊行物等1-3、5-6
・備考

刊行物1には、ドライバタイプ分類の値が大きくなるほど、自動停止の際の停止遅延時間を長くすること、が記載されているから(特に、段落【0026】-【0027】等参照)、ドライバタイプ分類の値が積極的な運転を示す値となっているときに、停止遅延時間を最大限に大きく(無限大)とすることにより、エンジンの回転動作状態を維持するように制御することは当業者が容易に想到し得るものである。

・請求項17
・刊行物等1-3 又は 刊行物等1-3、5-6
・備考

刊行物2には、個々の中間行動DBに基づいてカウンタをインクリメントすることにより総合的にドライバを「穏やか」、「普通」、「積極的」に分類する総合運転行動DBを備えること、が記載されている(段落【0037】-【0044】、図2-4等参照)。

・請求項18
・刊行物等1-3 又は 刊行物等1-3、5-6
・備考

刊行物2には、上述したように、車速やギアボックのモードに基づき、「穏やか(1)」、「普通(2)」、「積極的(3)」に分類すること、が記載されている(段落【0037】-【0044】、図2-4等参照)。
また、刊行物2には、従来例として、エンジンの回転速度に基づいて運転行動を決定していたことも記載されている(段落【0015】等参照)。

・請求項19-21
・刊行物等1-3 又は 刊行物等1-3、5-6
・備考

刊行物1には、上述したように、ドライバタイプ分類は高い値は積極的な運転を示し、低い値は慎重な運転を示すことが記載されている(特に、段落【0026】-【0027】等参照)。

・請求項22
・刊行物等1-3 又は 刊行物等1-3、5-6
・備考

ドライバの運転スタイルを表示、音声等によりドライバにフィードバックさせることは文献を提示するまでもなく従来周知の技術である。

・請求項23-24
・刊行物等1-4 又は 刊行物等1-6
・備考

刊行物4には、エンジン停止の不成立をドライバに音声案内すること、が記載されている(段落【0083】-【0084】等参照)。
また、運転者へのフィードバックとして、表示、音声、触覚を用いることはいずれも文献を提示するまでもなく従来周知の技術にすぎない。


<刊行物等一覧>
1.米国特許出願公開第2005/0143901号明細書
2.欧州特許出願公開第2407356号明細書
3.特表2002-528685号公報
4.特開2011-131883号公報
5.特開2008-267266号公報(新たに提示された周知技術を示す文献)
6.特開2011-157857号公報(新たに提示された周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし28に係る発明は、平成26年9月19日提出の国際出願翻訳文提出書に添付された明細書及び図面の翻訳文並びに平成28年3月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし28に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、「本願発明1」ないし「本願発明28」という。)

「【請求項1】
エンジンおよびエンジン制御システムを備えた動力車両のためのコントローラであって、
エンジン制御システムは、車両を駆動するためにトルクを出力する必要がないと判断したことに基づいてエンジンを自動的に停止させるように動作可能であり、
コントローラは、
運転サイクル中の車両に関連する1つまたはそれ以上のパラメータをモニタし、
前記1つまたはそれ以上のパラメータの値に基づいてドライバ評価指標値を計算し、
前記ドライバ評価指標値に応じて、現時点でのドライバの運転スタイルが経済性を重視する第1の運転スタイルまたは機能性を重視する第2の運転スタイルに相当するかを判断し、
ドライバの運転スタイルが第2の運転スタイルに相当すると判断したとき、エンジン制御システムによるエンジン停止を無効化するように構成されたことを特徴とするコントローラ。
【請求項2】
エンジンおよびエンジン制御システムを備えた動力車両のためのコントローラであって、
エンジン制御システムは、車両を駆動するためにトルクを出力する必要がないと判断したことに基づいてエンジンを自動的に停止させるように動作可能であり、
コントローラは、
運転サイクル中の車両に関連する1つまたはそれ以上のパラメータをモニタし、
前記1つまたはそれ以上のパラメータの値に基づいてドライバ評価指標値を計算し、該ドライバ評価指標値は、経済性を重視する運転スタイルに相当する第1の値と機能性を重視する運転スタイルに相当する第2の値との間で変化し、該ドライバ評価指標値の第2の値と現時点のドライバ評価指標値との差異が所定値より小さいとき、エンジン停止の無効化を自動的に命令するように構成されたことを特徴とするコントローラ。
【請求項3】
ドライバが第1の運転スタイルを示したとき、ドライバ評価指標値を、経済性を重視する運転スタイルに相当する第1の値に向かって変更し、ドライバが第2の運転スタイルを示したとき、ドライバ評価指標値を、機能性を重視する運転スタイルに相当する第2の値に向かって変更するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項4】
車両の縦方向加速度値に基づいて、ドライバ評価指標値を第2の値に向かって変更するように構成されたことを特徴とする請求項3に記載のコントローラ。
【請求項5】
正の加速度値である正の指標増大閾値より正方向に大きいか、または負の加速度値である負の指標増大閾値より負方向に大きいとき、ドライバ評価指標値を第2の値に向かって変更するように構成されたことを特徴とする請求項4に記載のコントローラ。
【請求項6】
車両の縦方向加速度値が正の値である正の指標減少閾値と負の値である負の指標減少閾値との間にあるとき、ドライバ評価指標値を第1の値に向かって変更するように構成されたことを特徴とする請求項4または5に記載のコントローラ。
【請求項7】
縦方向加速度値に基づいたドライバ評価指標値の変更を、横方向加速度値に呼応して中止するように構成されたことを特徴とする請求項4?6のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項8】
横方向加速度値が所定値を超えた場合、縦方向加速度値に基づいたドライバ評価指標値の変更を中止するように構成されたことを特徴とする請求項7に記載のコントローラ。
【請求項9】
ドライバが要求するブレーキ圧およびドライバが要求する車両のブレーキトルク量のいずれか一方に基づいて、ドライバ評価指標値を変更するように構成されたことを特徴とする請求項2?8のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項10】
ドライバが要求するブレーキ圧およびドライバが要求する車両のブレーキトルク量のいずれか一方が所定値より小さいとき、ドライバ評価指標値を第1の値に向かって変更するように構成されたことを特徴とする請求項3を引用する請求項9に記載のコントローラ。
【請求項11】
ブレーキペダル圧、ブレーキペダル位置、ブレーキペダル圧の変化率、およびブレーキペダル位置の変化率の中から選択された少なくとも1つに基づいて、ドライバ評価指標値を変更するように構成されたことを特徴とする請求項2?10のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項12】
ブレーキペダル位置およびブレーキペダル位置の変化率の中から選択された少なくとも1つに基づいて、ドライバ評価指標値を変更するように構成されたことを特徴とする請求項2?11のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項13】
アクセルペダルのキックダウン検知器の起動に基づいて、ドライバ評価指標値を変更するように構成されたことを特徴とする請求項2?12のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項14】
車両の速度に基づいて、ドライバ評価指標値を変更するように構成されたことを特徴とする請求項2?13のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項15】
車両のトランスミッションギアおよび性能モードセレクタの状態の中から選択された少なくとも1つに基づいて、ドライバ評価指標値を変更するように構成されたことを特徴とする請求項2?14のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項16】
ドライバの運転スタイルに基づいて、エンジンを回転動作状態に維持するように動作可能であることを特徴とする請求項1?15のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項17】
ドライバ評価指標値の第2の値と現時点のドライバ評価指標値との差異が所定値より小さいとき、エンジン停止の無効化を命令するように構成されたことを特徴とする請求項3?16のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項18】
次のもののうち、時間とともに変わる少なくとも1つのものに基づいて現時点でのドライバの運転スタイルが第1の運転スタイルまたは第2の運転スタイルに相当するか判断するように構成されたことを特徴とする請求項1?17のいずれか1に記載のコントローラ。
(a)エンジンの回転速度、
(b)エンジンと車両の1つまたはそれ以上の車輪との間のギア比、および
(c)車両のドライブラインの少なくとも一部分の速度。
【請求項19】
第1の運転スタイルは、経済性重視の運転スタイルに相当することを特徴とする請求項1?18のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項20】
第2の運転スタイルは、機能性重視の運転スタイルに相当することを特徴とする請求項1?19のいずれか1に記載のコントローラ。
【請求項21】
請求項1?20のいずれか1に記載のコントローラを備えた車両。
【請求項22】
ドライバの運転スタイルが第1の運転スタイルまたは第2の運転スタイルに相当するか、コントローラによる判断結果に基づいて、ドライバにフィードバックするように動作可能であることを特徴とする請求項21に記載の車両。
【請求項23】
ドライバの運転スタイルに基づいて、エンジン停止が無効化されるか否かについて、ドライバにフィードバックするように動作可能であることを特徴とする請求項21または22に記載の車両。
【請求項24】
視覚的インジケータデバイス、聴覚的インジケータデバイス、および触覚的インジケータデバイスのうちから選択された1つを用いてフィードバックするように動作可能であることを特徴とする請求項22または23に記載の車両。
【請求項25】
ストップ/スタート動力車両を制御する方法であって、
コントローラを用いて、運転サイクル中の車両に関連する、時間とともに変わる1つまたはそれ以上のパラメータをモニタするステップと、
コントローラを用いて、前記1つまたはそれ以上のパラメータの値に基づいてドライバ評価指標値を計算するステップと、
現時点でのドライバの運転スタイルが経済性を重視する第1の運転スタイルまたは機能性を重視する第2の運転スタイルに相当するかを判断するステップと、
ドライバの運転スタイルが第2の運転スタイルに相当すると判断したとき、エンジン停止を無効化するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項26】
ストップ/スタート動力車両を制御する方法であって、
コントローラを用いて、運転サイクル中の車両に関連する、時間とともに変わる1つまたはそれ以上のパラメータをモニタするステップと、
コントローラを用いて、前記1つまたはそれ以上のパラメータの値に基づいてドライバ評価指標値を計算するステップと、
前記ドライバ評価指標値は、経済性を重視する運転スタイルに相当する第1の値と機能性を重視する運転スタイルに相当する第2の値との間で変化し、該ドライバ評価指標値の第2の値と現時点のドライバ評価指標値との差異が所定値より小さいとき、エンジン停止の無効化を自動的に命令するステップとを有することを特徴とする方法。
【請求項27】
ドライバが第1の運転スタイルを示したとき、ドライバ評価指標値を、経済性を重視する運転スタイルに相当する第1の値に向かって変更するステップと、
ドライバが第2の運転スタイルを示したとき、ドライバ評価指標値を、機能性を重視する運転スタイルに相当する第2の値に向かって変更するステップとを有することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ドライバ評価指標値の第2の値と現時点のドライバ評価指標値との差異が所定値より小さいとき、エンジン停止の無効化を命令するステップを有することを特徴とする請求項27に記載の方法。」

第4 刊行物等
1.刊行物1(米国特許出願公開第2005/0143901号明細書)について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)刊行物1の記載事項
1a)"[0002]The invention relates to a universal control and coordination of a vehicle having a power plant including an internal-combustion engine (a spark ignition engine or a diesel engine), an electric machine (a concentrically or laterally arranged starter generator) and a transmission. The control encompasses the integration of a reliable, convenient, automatic stopping and starting function, including a variable stopping delay for fuel economy. The invention is directed to the variable stopping delay. "(段落[0002])
(当審訳:[0002]本発明は、内燃機関(火花点火エンジンまたはディーゼルエンジン)、電気機械(同心円状または横方向に配置されたスタータジェネレータ)および変速機を含む動力源を有する車両の普遍的な制御および調整に関する。制御は、燃料経済のための可変である停止の遅延を含む、信頼性があり、便利な自動停止および始動機能を統合したものを包含する。本発明は、可変の停止遅延に関する。)

1b)"[0003]・・・An automatic stopping step is initiated in case the vehicle speed is zero, the accelerator is off, the brake is applied, the battery charge exceeds a predetermined value and if all pre-set conditions during a predetermined maintenance period are fulfilled. "(段落[0003])
(当審訳:[0003]・・・車速がゼロであり、アクセルがオフであり、ブレーキが掛けられ、バッテリ充電が所定の値を超え、所定の保持期間中に全ての予め設定された条件が満たされている場合、自動停止ステップが開始される。)

1c)"[0004]Stopping delays operating with fixed, predetermined maintenance periods, until the internal-combustion engine is eventually stopped, have presently not met with wide acceptance. A reason therefore might be found in the unlike sense of time of the different drivers. Another reason resides in all probability in the fact that fixed predetermined maintenance periods can certainly not satisfy all possible driving conditions of an automotive vehicle. It is therefore an object of the invention to provide a remedy by means of an improved control process. "(段落[0004])
(当審訳:[0004]内燃機関が最終的に停止するまで、固定された所定の保持期間で動作する停止の遅延は、現在では広く受け入れられていない。その理由は、したがって、異なるドライバーによる違った時間の感覚のせいかもしれない。別の理由は、可能性として、固定された所定の保持期間が確実に自動車のすべての可能な運転条件を満足させることができないという事実にある。したがって、本発明の目的は、改良された制御プロセスを用いた解決を提供することである。)

1d)"[0005]The above object generally is accomplished according to the present invention by a process or method of automatically stopping an internal-combustion engine of an automotive vehicle, including the steps of evaluating, prior to engine-stopping, by means of a control unit and an application program, the communication signals relating to the actual operating conditions of the vehicle, and if predetermined stopping condition are present, automatically stopping the engine by the application program and the control device after a predetermined stopping delay, and wherein the period of the stopping delay is variable and is determined by an automatic condition controller dependent from actual communication signals relating to the operation of the vehicle.
[0006] Advantageous further features are contained in the dependent claims, the drawing and the description of the embodiments.
[0007] The object of the invention is achieved mostly by a control process which operates with a variable stopping delay affected primarily by the following parameters:
[0008] the operational mode selected for the internal-combustion engine;
[0009] the previous driving mode based on a driver-type classification;
[0010] the past speed profile;
[0011] the navigational data of GPS-systems, traffic guiding systems and digital street maps; and,
[0012] the actual braking pressure. "(段落[0005]ないし[0012])
(当審訳:[0005]上記の目的は、本発明により、自動車の内燃機関を自動的に停止させるプロセスまたは方法であって、エンジン停止前に、制御ユニットおよびアプリケーション及び実際の車両の動作に関連する通信信号によって評価するステップと、所定の停止条件が成立していれば、所定の停止の遅延後に前記アプリケーションプログラムおよび前記制御装置によりエンジンを自動的に停止させ、前記停止遅延期間は、実際の車両の動作に関連する通信信号に依存する自動状態コントローラによって決定される。
[0006]有利な更なる特徴は従属請求項、図面及び実施例の説明に含まれる。
[0007]本発明の目的は、主に以下のパラメータによって影響を受ける可変停止遅延で動作する制御プロセスによって主に達成される。
[0008]内燃機関のために選択された動作モード、
[0009]運転者タイプの分類に基づく以前の運転モード、
[0010]過去の速度プロファイル、
[0011]GPSシステムの航法データ、交通案内システム、デジタルストリートマップなど、
[0012]実際のブレーキ圧力)

1e)"[0019] FIG. 1 shows an overview of essential features of the invention. The central element is a condition automat or automatic condition controller 1 that is integrated as a software control program in a control device 2 . The automatic condition controller affects the control functions of an internal-combustion engine 3 . The control presupposes that the automatic condition controller is connected with all the relevant bus systems 4 in the vehicle and thus has access to all the necessary sensor and control magnitudes. The automatic condition controller may be the separate control device 2 or may be integrated with its functions, entirely or in part, in the already present control devices of the engine-electronics 5 . For obtaining a stopping and starting function having a variable engine-stopping delay, it is also feasible to communicate with, and actuate an electric starter 6 by means of the automatic condition controller. ・・・"(段落[0019])
(当審訳:[0019]図1は、本発明の本質的特徴の概要を示す。中心要素は、制御装置2内のソフトウェア制御プログラムとして統合された自動化された状態または自動状態コントローラ1である。自動状態コントローラは、内燃機関3の制御機能に影響を与える。制御は、自動状態コントローラが車両内の全ての関連するバスシステム4に接続されていることを前提としており、したがって、必要な全てのセンサ及び制御量にアクセスすることができる。
自動状態コントローラは、別個の制御装置2であってもよく、その機能と共に、エンジン電子装置5の既に存在する制御装置に全体的にまたは部分的に統合されてもよい。
可変エンジン停止遅延を有する停止および始動機能を得るために、自動状態コントローラによって電気スタータ6と通信し、電気始動装置6を作動させることも可能である。・・・)

1f)"[0026] Lastly, a driver-type classification system (designated as DTC in FIG. 1 ) 14 , if available, may be utilized by the automatic condition controller for influencing the variable stopping delay. Driver-type classifications are implemented in particular in connection with adaptive, automatic transmission controls in motor vehicles. The driver-type classification system detects driver behavior and classifies it according to vigorous or less vigorous driving criteria. A driver-type classification thus consists of a gradual division of, for example, 0-255. Conventionally, the high end of the range stands for a highly vigorous driver, while the low end represents a very cautious driver. For the automatic condition controller this means that the smaller the value of the driver-type classification, the shorter the selected variable stopping delay. "(段落[0026])
(当審訳:[0026]最後に、利用可能であれば、運転者タイプの分類システム(図1にDTCとして示されている)14が、可変の停止遅延に影響を及ぼすために自動状態コントローラによって利用されてもよい。運転者タイプの分類は、特に自動車の適応型自動変速機制御に関連して実施される。運転者タイプの分類システムは、運転者の行動を検出し、活発な、あるいは、あまり活発でないという運転基準に従って分類する。
したがって、運転者タイプの分類は、例えば0-255の漸進的な区分からなる。従来、この範囲の上部領域は非常に活発なドライバーを表し、下部領域は非常に慎重なドライバーを表わす。自動状態コントローラの場合、これはドライバタイプの分類の値が小さいほど、選択された変数の停止遅延が短くなることを意味する。)

(2)刊行物1記載の発明
上記(1)及びFig.1ないし3の記載からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「内燃機関3および制御ユニットを備えた車両のための自動状態コントローラであって、
制御ユニットは、車速がゼロであり、アクセルがオフであり、ブレーキが掛けられ、バッテリ充電が所定の値を超え、所定の保持期間中に全ての予め設定された条件が満たされていることに基づいて、内燃機関3を自動停止させるように動作させるものであり、
自動状態コントローラは、
自動変速機の制御に関連したパラメータによって、運転者タイプを分類する値である0-255の値のいずれかに区分して、
0-255の数値範囲の区分において、数値の大きい領域の場合は非常に活発なドライバー、数値の小さい領域の場合は非常に慎重なドライバーであると判断し、
ドライバタイプを分類する値が小さいほど内燃機関を自動停止させるまでの遅延時間を短くするコントローラ。」

2.刊行物2(欧州特許出願公開第2407356号明細書)について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物2には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)刊行物2の記載事項
2a)"[0006] Autonomous braking is performed by means of the autonomous braking system upon a braking criterion in respect of a distance between the obstacle and the vehicle being fulfilled. At least one braking parameter is set for the autonomous braking. According to the invention, a driving behaviour of a driver of the vehicle is determined and considered by the autonomous braking system for the autonomous braking.
[0007] Thus, according to the present invention, the autonomous braking system determines the driving behaviour of the driver, and the driving behaviour is considered for the autonomous braking. For instance, the driving behaviour can be classified to be "sportive" or "calm" or "normal". The invention has the advantage that the classification of the driving behaviour allows to adapt the sensitivity of the autonomous braking system. In this way, the autonomous braking can be initiated later for a driver classified as "sportive", for example. On the other hand, the autonomous braking can be initiated earlier for a driver classified as "calm" or "normal". Thus, the reliability of the autonomous braking system can be improved over the prior art."(段落[0006]及び[0007])
(当審訳:[0006]自律制動は、障害物と車両との間の距離に関する制動基準が満たされると、自律制動システムによって実行される。少なくとも1つの制動パラメータが自律制動のために設定される。本発明によれば、車両の運転者の運転行動が決定され、自律制動のための自律制動システムによって考慮される。
[0007]このように、本発明によれば、自律制動システムが運転者の運転行動を決定し、自律制動のために運転行動が考慮される。例えば、運転行動は、「活動的」または「穏やか」または「正常」と分類することができる。 本発明は、運転行動の分類に自律ブレーキシステムの感度を適合させることができるという利点を有する。このようにして、自律制動は、例えば、後に「活動的」として分類された運転者に対して開始することができる。一方、自律制動は、「平静」または「正常」と分類された運転者に対してより早期に開始することができる。かくして、自律制動システムの信頼性は従来技術より向上することができる。)

2b)"[0014] Moreover, for the autonomous braking, a braking force exerted on a vehicle wheel as a braking parameter can be set in dependence on the determined driving behaviour. In this embodiment, a greater braking force can be applied to the vehicle wheel for a "sportive" driver than for a "normal" or "calm" one. The autonomous braking can be performed more smoothly for a "calm" driver. In this way, the activation of the ABS system can be avoided for a "normal" and "calm" driver. The relationship between the braking force exerted on the vehicle wheel and the driving behaviour can also be a linear relationship. This embodiment has the advantage that the braking force can be adapted to different driving styles and thus to different kinds of drivers."(段落[0014])
(当審訳:[0014]また、自律制動では、決定された運転挙動に応じて、制動パラメータとして車両の車輪に作用する制動力を設定することができる。この実施形態では、「活動的」な運転者の車輪には、「通常」または「穏やかな」運転者よりも、より大きな制動力を加えることができる。自律制動は、「穏やかな」運転者にとって、よりスムーズに動作することができる。このようにして、ABSシステムの起動が、「通常の」および「穏やかな」運転者にとって回避することができる。車輪に作用する制動力と駆動挙動との間の関係は、線形関係であってもよい。この実施形態は、制動力を異なる運転スタイルに、したがって異なる種類の運転者に適合させることができるという利点を有する。)

2c)"[0044] Referring now to fig. 4 , the total driving behaviour DB is classified anew each time upon a change of any piece of information - i.e. of any of said parameters -, i.e. upon a change of any intermediate driving behaviour DB1 to DB22. The total driving behaviour DB is classified each time in a step S100. Then, the control unit 3 determines in steps S101 to S103 whether the classified total driving behaviour DB is equal to 1 ("calm") or 2 ("normal") or 3 ("sportive"). If the driving behaviour is equal to 1, a counter "CNT Calm" is incremented in step S104. If the driving behaviour DB is classified to be "normal" and thus is equal to 2, a counter "CNT Norm" is incremented in step S105. If the driving behaviour DB is equal to 3, a counter "CNT Aggress" is incremented in step S106. The control unit 3 determines in steps S107 to S109 whether said counters exceed a predetermined threshold value TH1 or TH2 or TH3. So, in step S107 the control unit 3 determines whether the counter "CNT Calm" is greater than the threshold value TH1. In step S108, the control unit 3 determines whether the counter "CNT Norm" is greater than TH2. Finally, in step S109, the control unit 3 determines whether the counter "CNT Aggress" is greater than the threshold value TH3. If one of said counters is greater than the associated threshold value TH1, TH2, TH3, the final driving behaviour DB F can be classified: If the counter "CNT Calm" is greater than the threshold value TH1, the DB F is classified to be "calm" (1). If the counter "CNT Norm" is greater than the second threshold value TH2, the DB F is set to 2 ("normal"). If the counter "CNT Aggress" is greater than the threshold value TH3, the DB F is set to "sportive" (3).
[0045] Referring now to fig. 5 , the initial state of the driving behaviour DB F is defined as unknown. This is the default state. Due to possible errors, only one transition between two different states of the driving behaviour DB F is allowed, i.e. only a transition between two neighbouring states is allowed - between "calm" and "normal" or between "normal" and "sportive" (aggressive). Otherwise, DB F is defined as unknown. Once the driver opens the vehicle door, said counters "CNT Calm", "CNT Norm", "CNT Aggress" are reset."(段落[0044]及び[0045])
(当審訳:[0044]ここで図4を参照する。全運転行動DBは、いずれかの情報の変化、すなわち前記パラメータの変化、すなわち中間運転行動DB1からDB22への変化に伴って毎回新たに分類される。ステップS100では、総運転行動DBを毎回分類する。そして、制御部3は、ステップS101?S103において、分類された総走行行動DBが1( "calm")または2( "normal")か3( "sportive")であるか否かを判定する。
運転行動が1であれば、ステップS104でカウンタ「CNT Calm」がインクリメントされる。走行挙動DBが「正常」に分類されて2に等しい場合、ステップS105において、カウンタ「CNT Norm」がインクリメントされる。運転行動DBが3であれば、ステップS106でカウンタ「CNT Aggress」がインクリメントされる。制御部3は、ステップS107からS109において、カウンタが所定の閾値TH1またはTH2またはTH3を超えているか否かを判定する。そこで、ステップS107において、制御部3は、カウンタ「CNT Calm」が閾値TH1よりも大きいか否かを判定する。
ステップS108において、制御部3は、カウンタCNT NormがTH2より大きいか否かを判定する。最後に、ステップS109において、制御部3は、カウンタ「CNT Aggress」が閾値TH3よりも大きいか否かを判定する。前記カウンタのうちの1つが関連する閾値TH1、TH2、TH3より大きい場合、最終的な運転行動DBFを分類することができる。カウンタ "CNT Calm"が閾値TH1より大きい場合、DBFは "calm "(1)。 カウンタ「CNT Norm」が第2の閾値TH2より大きい場合、DBFは2(「正常」)に設定される。カウンタ「CNT Aggress」が閾値TH3より大きい場合、DBFは「活動的」(3)に設定される。
[0045]ここで図5を参照する。運転行動DBFの初期状態は未知数として定義される。 これがデフォルトの状態である。起こり得るエラーのために、運転行動DBFの2つの異なる状態の間の1つの遷移、すなわち、2つの隣接状態間の遷移のみが許容される。「穏やか」と「正常」との間、または「正常」と「活動的」(攻撃的)との間。
それ以外の場合、DBFは未知数として定義される。運転手が車両ドアを開けると、前記カウンタ「CNT Calm」、「CNT Norm」、「CNT Aggress」がリセットされる。)

(2)刊行物2記載の技術
上記(1)及びFig.1ないし5の記載からみて、刊行物2には以下の技術(以下、「刊行物2技術」という。)が記載されている。

「車両の運転者の運転行動を制動力の制御に反映させる自律制動システムにおいて、
運転者の運転行動を分類するにあたり、運転者の運転行動を数値化して閾値により「活動的」、「正常」及び「穏やか」に分類する技術。」

3.刊行物3(特表2002-528685号公報)について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物3には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)刊行物3の記載事項
3a)「【0004】
そこで本発明の目的は、スポーツ的運転操作の場合、市街地運転に対して適用されるその他の基準よりも運転者の加速要求を優先させる市街地走行運転方法を提供することである。
【0005】
本発明によれば、この目的は請求項1の後段に記載の特徴を有する方法によって解決される。
【0006】
即ち走行速度特性値が所定の上限値範囲内にあり、また運転活動特性値も所定の上限値範囲内にあるならば、走行状態・市街地走行が推定される。運転活動特性値は例えば始動評価、ペダル操作評価、縦加速評価、横加速評価又はキックダウン評価に従って形成される。運転活動特性値に応じて燃費向き運転操作と出力向きスポーツ的運転操作が区別される。走行状態・市街地走行が推定される間だけ、即ち運転操作がむしろ燃費向きの場合だけ、走行状態・市街地走行のために最適化されたシフトプログラムがアクセスされる。種々の評価基準に基づき、スポーツ的傾向の強い転者が推定されるならば、運転活動特性値がより大きな値を取るから、走行状態・市街地走行はもはや推定されず、むしろ出力最適化の運転プログラムがアクセスされる。運転プログラムは変速制御のためのシフト特性曲線とコンバータ・ブリッジクラッチの制御のためのコンバータ・シフト特性曲線を包含する。」(段落【0004】ないし【0006】)

(2)刊行物3記載の技術
上記(1)の記載からみて、刊行物3には以下の技術(以下、「刊行物3技術」という。)が記載されている。

「運転活動特性値に応じて燃費向き運転操作と出力向きスポーツ的運転操作を区別するにあたり、運転活動特性値をキックダウン評価に従って形成する技術。」

4.刊行物4(特開2011-131883号公報)について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物4には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)刊行物4の記載事項
4a)「【0083】
ステップS33では、自車位置情報と、車両の状況(燃料の残量やウインカーの操作状況など)とを取得し、次のステップS34では、取得した情報に基づいて、車両が、エンジンを自動停止させる優先度が低い状況(例えば、車両が、交差点の右折レーンの先頭にいる状況等)にあるか否かを判断し、エンジンを停止させる優先度が低い状況にある、すなわちナビ機能を優先させても良い状況にあると判断すれば、ナビ機能を優先させて、不成立の停止条件に関連する情報の告知を行わずに処理を終える。一方、ステップS34において、エンジンを停止させる優先度が低い状況にはない、すなわちエコラン情報の告知機能を優先させた方がよい状況にあると判断すればステップS35に進む。
【0084】
ステップS35では、不成立の停止条件に関連する情報の告知制御情報A’を読み込み、続くステップS36では、告知制御情報A’に含まれる設定情報(告知内容の形式と告知方法の設定情報)と、不成立の停止条件に関連する情報とに基づいて、不成立の停止条件に関連する情報を利用者に告知する処理を行う。例えば、告知内容の形式の設定が、エンジン不停止の原因のみ告知する形式であり、告知方法の設定が画面表示及び音声による告知である場合、図11に示した表示形態でエンジン不停止の原因を表示部22に一定時間表示させるとともに音声出力部26を介して案内音声(例えば、「バッテリの蓄電量が低下しているのでエンジンを自動停止させることができません」というような音声)を出力する処理を行い、その後処理を終える。」(段落【0083】及び【0084】)

(2)刊行物4記載の技術
上記(1)の記載からみて、刊行物4には以下の技術(以下、「刊行物4技術」という。)が記載されている。

「エンジンを自動停止させる条件が不成立であるときに利用者に音声案内する技術。」

5.刊行物5(特開2008-267266号公報)
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物5には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)刊行物5の記載事項
5a)「【0002】
近年、燃費の低減、排気ガスの低減を目的として、エンジンの作動が不要の時(例えば、信号待ち、電車通過待ち、人待ち等をしている時の車両の停止時)にエンジンを自動的に停止させ、エンジンの作動が必要になった時に再びエンジンを自動的に始動(再始動)させるエコノミーランニングシステム(エコランシステム)が開発され、実用化もされている。」(段落【0002】)

5b)「【0039】
図2のテーブル情報の点滅優先度は、エコランプ41の点滅によりユーザに報知するエコラン禁止理由の優先順を示す。例えば、エコラン禁止理由が2つある場合には、優先度の高いエコラン禁止理由からエコランプ41の点滅が実行される。例えば、エコラン禁止理由が「スポーツドライブSWによるエコラン禁止」及び「ドア開によるエコラン禁止」の場合には、点滅優先度は前者の方が高いので(点滅優先度の数値が低い方が優先度は高い)、先に前者のエコラン禁止理由に対応するエコランプ41の点滅が実行される。」(段落【0039】)

(2)刊行物5記載の技術
上記(1)の記載からみて、刊行物5には以下の技術(以下、「刊行物5技術」という。)が記載されている。

「エンジンの作動が不要の時にエンジンを自動的に停止させるエコランシステムにおいて、スポーツドライブSWによるエコラン禁止を選択可能とする技術。」

6.刊行物6(特開2011-157857号公報)について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物6には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)刊行物6の記載事項
6a)「【0062】
以下、アイドルストップECU3により実行されるアイドルストップ制御を詳述する。
【0063】
図4に示すように、自動停止処理部は、所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させ(SA1,SA2)、再始動処理部は、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立するとエンジンを再始動する(SA3,SA4)。
【0064】
図5には、自動停止処理の手順が示されている。自動停止処理部は、車室内に設けられたアイドルストップモード禁止スイッチが操作されず、アイドルストップモードが許容されていること(SB1)、エンジンECU2等の他のECUからエンジンの自動停止処理を禁止するステータス信号が受信されていないこと(SB2)、車速が零(停車状態)であること(SB3)、傾斜センサにより検知された路面傾斜量が所定範囲内であること(SB4)、変速レバーがニュートラルレンジまたはパーキングレンジに操作されていること(SB5)等の条件を所定の停止条件として判定する。尚、ステップSB3の判定では、車速が零で完全に停車していなくとも、これから停止すると予測可能な条件を具備する場合に所定の停止条件に含めてもよい。例えば、車速が零に近い所定値以下でブレーキペダルが操作されている等の条件である。
【0065】
尚、アイドルストップモード禁止スイッチがオン操作されている場合には、アイドルストップ制御が禁止される。」(段落【0062】ないし【0065】)

(2)刊行物6の技術
上記(1)の記載からみて、刊行物6には以下の技術(以下、「刊行物6技術」という。)が記載されている。

「所定の停止条件が成立するとエンジンを停止するアイドルストップ制御において、アイドルストップモード禁止スイッチがオン操作されている場合には、アイドルストップ制御を禁止する技術。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「内燃機関3」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1の「エンジン」に相当し、以下同様に、「制御ユニット」は「エンジン制御システム」に、「車両」は「動力車両」に、「車速がゼロであり、アクセルがオフであり、ブレーキが掛けられ、バッテリ充電が所定の値を超え、所定の保持期間中に全ての予め設定された条件が満たされていることに基づいて」は「車両を駆動するためにトルクを出力する必要がないと判断したことに基づいて」に、「内燃機関3を自動停止させるように動作させる」は「エンジンを自動的に停止させるように動作可能であ(る)」ことに、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「エンジンおよびエンジン制御システムを備えた動力車両のためのコントローラであって、エンジン制御システムは、車両を駆動するためにトルクを出力する必要がないと判断したことに基づいてエンジンを自動的に停止させるように動作可能であるコントローラ。」

[相違点1]
本願発明1においては、「コントローラは、運転サイクル中の車両に関連する1つまたはそれ以上のパラメータをモニタし、1つまたはそれ以上のパラメータの値に基づいてドライバ評価指標値を計算し、ドライバ評価指標値に応じて、現時点でのドライバの運転スタイルが経済性を重視する第1の運転スタイルまたは機能性を重視する第2の運転スタイルに相当するかを判断し、ドライバの運転スタイルが第2の運転スタイルに相当すると判断したとき、エンジン制御システムによるエンジン停止を無効化するように構成された」ものであるのに対して、
引用発明においては、「自動状態コントローラは、自動変速機の制御に関連したパラメータによって、運転者タイプを分類する値である0-255の値のいずれかに区分して、0-255の数値範囲の区分において、数値の大きい領域の場合は非常に活発なドライバー、数値の小さい領域の場合は非常に慎重なドライバーであると判断し、ドライバタイプを分類する値が小さいほど内燃機関を自動停止させるまでの遅延時間を短くする」ものであって、内燃機関3の自動停止を無効とするものではない点。

以下、上記相違点1について判断する。

[相違点1について]
上記刊行物5技術は、「エンジンの作動が不要の時にエンジンを自動的に停止させるエコランシステムにおいて、スポーツドライブSWによるエコラン禁止を選択可能とする技術。」であり、刊行物6技術は「所定の停止条件が成立するとエンジンを停止するアイドルストップ制御において、アイドルストップモード禁止スイッチがオン操作されている場合には、アイドルストップ制御を禁止する技術。」であって、運転者のスイッチ等による選択によりアイドルストップによるエンジンの自動停止を無効とすることは周知技術(以下、「周知技術」という。)であると認められる。
しかしながら、引用発明は、自動停止を自動状態コントローラによりドライバタイプを0-255の値のいずれかに分類して内燃機関を自動停止させるまでの遅延時間の制御を行うものであって、内燃機関の自動停止を行うことが自動状態コントローラによる制御の前提となるから、引用発明に、エンジンの自動停止自体を無効とする上記周知技術を適用する動機付けを見出すことはできない。
よって、引用発明に上記周知技術を適用して上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

また、上記刊行物2技術ないし刊行物4技術においては、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項についての開示や示唆を行うものではないから、引用発明に上記刊行物2技術ないし刊行物4技術及び周知技術を適用して上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

2.本願発明2について
本願発明2と引用発明とを対比する。
引用発明における「内燃機関3」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1の「エンジン」に相当し、以下同様に、「制御ユニット」は「エンジン制御システム」に、「車両」は「動力車両」に、「車速がゼロであり、アクセルがオフであり、ブレーキが掛けられ、バッテリ充電が所定の値を超え、所定の保持期間中に全ての予め設定された条件が満たされていることに基づいて」は「車両を駆動するためにトルクを出力する必要がないと判断したことに基づいて」に、「内燃機関3を自動停止させるように動作させる」は「エンジンを自動的に停止させるように動作可能であ(る)」ことに、それぞれ相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「エンジンおよびエンジン制御システムを備えた動力車両のためのコントローラであって、エンジン制御システムは、車両を駆動するためにトルクを出力する必要がないと判断したことに基づいてエンジンを自動的に停止させるように動作可能であるコントローラ。」

[相違点2]
本願発明2においては、「コントローラは、運転サイクル中の車両に関連する1つまたはそれ以上のパラメータをモニタし、1つまたはそれ以上のパラメータの値に基づいてドライバ評価指標値を計算し、該ドライバ評価指標値は、経済性を重視する運転スタイルに相当する第1の値と機能性を重視する運転スタイルに相当する第2の値との間で変化し、該ドライバ評価指標値の第2の値と現時点のドライバ評価指標値との差異が所定値より小さいとき、エンジン停止の無効化を自動的に命令するように構成された」ものであるのに対して、
引用発明においては、「自動状態コントローラは、自動変速機の制御に関連したパラメータによって、運転者タイプを分類する値である0-255の値のいずれかに区分して、0-255の数値範囲の区分において、数値の大きい領域の場合は非常に活発なドライバー、数値の小さい領域の場合は非常に慎重なドライバーであると判断し、ドライバタイプを分類する値が小さいほど内燃機関を自動停止させるまでの遅延時間を短くする」ものであって、内燃機関3の自動停止の無効化を自動的に命令するものではない点。

以下、上記相違点2について検討する。

[相違点2について]
上記刊行物技術2は、「車両の運転者の運転行動を制動力の制御に反映させる自律制動システムにおいて、運転者の運転行動を分類するにあたり、運転者の運転行動を数値化して閾値により『活動的』、『正常』及び『穏やか』に分類する技術。」であって、さらに、上記1.において述べたとおり、周知技術は、運転者のスイッチ等による選択によりアイドルストップによるエンジンの自動停止を無効とすることであると認められる。
しかしながら、引用発明は、自動停止をコントローラによりドライバタイプを0-255の値のいずれかに分類して内燃機関を自動停止させるまでの遅延時間の制御を行うものであって、内燃機関の自動停止を行うことがコントローラによる制御の前提となるから、引用発明に、エンジンの自動停止自体を無効とする上記周知技術を適用する動機付けを見出すことはできない。
また、上記刊行物2技術は、運転者の運転行動を数値化して閾値により分類することについて開示されているものの、上記相違点2に係る本願発明2の発明特定事項における「該ドライバ評価指標値の第2の値と現時点のドライバ評価指標値との差異が所定値より小さいとき」に制御を行うことの開示や示唆を行うものではない。

よって、引用発明に刊行物2技術及び上記周知技術を適用して上記相違点2に係る本願発明2の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

また、上記刊行物3技術及び刊行物4技術においては、上記相違点2に係る本願発明2の発明特定事項についての開示や示唆を行うものではないから、引用発明に上記刊行物2技術ないし刊行物4技術及び周知技術を適用して上記相違点2に係る本願発明2の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たとすることはできない。

3.本願発明3ないし24について
本願の特許請求の範囲における請求項3ないし24は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明3ないし24は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明3ないし24は、本願発明1と同様の理由で、引用発明及び周知技術に基いて、あるいは、引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術並びに周知技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。

4.本願発明9及び11ないし24について
本願の特許請求の範囲における請求項9及び11ないし24は、請求項2の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項2の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明9及び11ないし24は、本願発明2の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明9及び11ないし24は、本願発明2と同様の理由で、引用発明、刊行物2技術及び周知技術に基いて、あるいは、引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術並びに周知技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。

5.本願発明25について
本願発明25は、本願発明1に対応する方法の発明であるから、本願発明1と同様の理由で、引用発明及び周知技術に基いて、あるいは、引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術並びに周知技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。

6.本願発明26について
本願発明26は、本願発明2に対応する方法の発明であるから、本願発明2と同様の理由で、引用発明、刊行物2技術及び周知技術に基いて、あるいは、引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術並びに周知技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。

7.本願発明27及び28について
本願発明27及び28は、請求項25の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項25の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明27及び28は、本願発明25の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明27及び28は、本願発明25と同様の理由で、引用発明及び周知技術に基いて、あるいは、引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術並びに周知技術に基いて当業者が容易になし得たとすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし28に係る発明は、いずれも引用発明及び刊行物2技術ないし刊行物4技術並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2014-553717(P2014-553717)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山村 和人  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 松下 聡
槙原 進
発明の名称 動力車両およびその制御方法  
代理人 中野 晴夫  
代理人 鮫島 睦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ