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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2018700984 審決 特許
異議2016700567 審決 特許
異議2018700985 審決 特許
異議2018700371 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C10M
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C10M
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C10M
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C10M
管理番号 1331816
審判番号 不服2016-4490  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-25 
確定日 2017-09-14 
事件の表示 特願2014-550451「後処理されたアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の硫化塩」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日国際公開、WO2013/151593、平成27年 2月 2日国内公表、特表2015-503567、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は2012年12月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年12月27日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、出願後の手続の経緯の概要は次のとおりである。

平成27年 2月23日付け 拒絶理由通知
同年 5月19日 意見書・手続補正書の提出
同年11月25日付け 拒絶査定
平成28年 3月25日 拒絶査定不服審判の請求
平成29年 2月23日付け 当審における拒絶理由通知
同年 4月28日 意見書・手続補正書の提出
同年 6月29日付け 当審における拒絶理由通知
同年 7月10日 意見書・手続補正書の提出

第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は次の理由1?3のとおりである。

[理由1]この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

そして、請求項として1-15が、引用文献として以下の1?9が挙げられている。
1.特開平6-299185号公報
2.特開平6-264080号公報
3.特開平5-295381号公報
4.特開昭54-144405号公報
5.特開昭54-10306号公報
6.特開昭54-52046号公報
7.特開昭53-84927号公報
8.特開昭52-123406号公報
9.米国特許第2750416号明細書

[理由2]この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(「下記の点」は以下で述べる。)

[理由3]この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(「下記の点」は以下で述べる。)

第3 当審において通知した拒絶理由
当審において通知した平成29年2月23日付け及び同年6月29日付けで通知した拒絶理由の概要はそれぞれ次のとおりである。

平成29年2月23日付けの拒絶理由通知
[理由1]本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第2号に適合しないため、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
(「下記の点」は以下で述べる。)

[理由2]本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合しないため、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
(「下記の点」は以下で述べる。)

平成29年6月29日付けの拒絶理由通知
[理由1]本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第2号に適合しないため、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
(「下記の点」は以下で述べる。)

[理由2]本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合しないため、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
(「下記の点」は以下で述べる。)

第4 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明(以下「本願発明1?13」という。)は、平成29年7月10日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項による特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物、(b)パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒド、並びに(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の反応生成物である、潤滑油組成物用の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物であって、
この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、
上記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物。
【請求項2】
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物が、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその過塩基性塩を含有する組成物である、請求項1に記載の硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物。
【請求項3】
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、合算質量で少なくとも80%未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が低減された、請求項1又は2に記載の硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物。
【請求項4】
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも90%低減された、請求項1又は2に記載の硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物。
【請求項5】
未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が低減された、潤滑油組成物用の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、反応により後処理された組成物を調製するための方法であって、
(a)未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有し、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物であって、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC9?C18オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、前記硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物を得るステップ、並びに、
(b)硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物と、有効量の、パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒド並びに少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物とを、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減された、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物を得るのに十分な反応条件下で反応させるステップであって、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有するステップを含む方法。
【請求項6】
ステップ(a)において得られた硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物が、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその過塩基性塩を含有する組成物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アルデヒドの有効量が、ステップ(a)において得られた硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の当量当たり1モル当量から10モル当量までであり、モノアミン化合物の有効量が、ステップ(a)において得られた硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の当量当たり1モル当量から10モル当量までである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物が、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも80%低減された、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物が、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも90%低減された、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(a)潤滑油組成物中最大量の潤滑粘度のオイル、及び(b)請求項1乃至4のいずれか一項に記載の少なくとも一の硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物を含む、潤滑油組成物。
【請求項11】
少なくとも一の硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物が、潤滑油組成物の合計重量に基づいて0.01重量%から10重量%までの量で存在する、請求項10に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
抗酸化剤、摩耗防止剤、洗剤、錆止め剤、曇り除去剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ相溶化剤、腐食防止剤、無灰分散剤、染料、極圧剤及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも一の添加剤を更に含む、請求項10又は11に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか一項に記載の潤滑油組成物を用いてエンジンを稼働させることを含む、エンジンを潤滑するための方法。」

第5 引用文献の記載事項
1 引用文献1について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献1には、以下の記載がある。
「【請求項1】 (a)アルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体,(b)アミン化合物,(c)次の一般式(I)
【化1】

〔式中、R^(2a),R^(2b)はそれぞれ独立に炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、x1,x2はそれぞれ独立に1又は2の整数を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される硫化アルキルフェノール,及び(d)アルデヒドを反応させて得られるマンニッヒ反応生成物であって、かつ(a)成分であるアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体が、次の化合物(a)-1,(a)-2,又は(a)-3、化合物(a)-1.アルケニル基として炭素数2?30のオレフィンから誘導される異なった重合体基を有する2種以上のアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体からなる混合物,化合物(a)-2.アルケニル基として炭素数2?30のオレフィンから誘導される共重合体基を有するアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体からなる化合物又は混合物,化合物(a)-3.上記の(a)-1及び(a)-2からなる混合物、のいずれかの化合物であるマンニッヒ反応生成物。
【請求項2】 (a)アルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体,(b)アミン化合物,(c)次の一般式(I)
【化2】

〔式中、R^(2a),R^(2b),m,x1,x2及びzは前記と同じである。。〕で表される硫化アルキルフェノール,(d)アルデヒド及び(e)硼素含有化合物を反応させて得られるマンニッヒ反応生成物であって、かつ(a)成分であるアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体が、次の化合物(a)-1,(a)-2,又は(a)-3、化合物(a)-1.アルケニル基として炭素数2?30のオレフィンから誘導される異なった重合体基を有する2種以上のアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体からなる混合物,化合物(a)-2.アルケニル基として炭素数2?30のオレフィンから誘導される共重合体基を有するアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体からなる化合物又は混合物,化合物(a)-3.上記の(a)-1及び(a)-2からなる混合物、のいずれかの化合物であるマンニッヒ反応生成物。
【請求項3】 (a)アルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体,(b)アミン化合物,(c)次の一般式(I)
【化3】

〔式中、R^(2a),R^(2b),m,x1,x2及びzは前記と同じである。。〕で表される硫化アルキルフェノール,(d)アルデヒド及び(f)次の一般式(II), (III) 及び(IV)
【化4】

〔式中、R^(2a),R^(2b),m及びx1,x2は前記と同じである。〕で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種のアルキルヒドロキシ安息香酸又はその誘導体を反応させて得られるマンニッヒ反応生成物であって、かつ(a)成分であるアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体が、次の化合物(a)-1,(a)-2,又は(a)-3、化合物(a)-1.アルケニル基として炭素数2?30のオレフィンから誘導される異なった重合体基を有する2種以上のアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体からなる混合物,化合物(a)-2.アルケニル基として炭素数2?30のオレフィンから誘導される共重合体基を有するアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体からなる化合物又は混合物,化合物(a)-3.上記の(a)-1及び(a)-2からなる混合物、のいずれかの化合物であるマンニッヒ反応生成物。
【請求項4】 請求項1,2及び3記載のマンニッヒ反応生成物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物からなる清浄分散剤。
【請求項5】 請求項1及び2記載のマンニッヒ反応生成物よりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物,及び(f)次の一般式(II), (III) 及び(IV)
【化5】

〔式中、R^(2a),R^(2b),m及びx1,x2は前記と同じである。〕で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種のアルキルヒドロキシ安息香酸又はその誘導体からなる清浄分散剤。
【請求項6】 請求項4又は5記載の清浄分散剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項7】 鉱油及び/又は合成油からなる基油と請求項4又は5記載の清浄分散剤を含有する内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項8】 鉱油及び/又は合成油からなる基油と請求項4又は5記載の清浄分散剤を含有するディーゼルエンジン用潤滑油組成物。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献2には、以下の記載がある。
「【請求項1】 (a)ポリアルケニルコハク酸又はポリアルケニル無水コハク酸,(b)アミン化合物,(c)一般式(I)
【化1】

〔式中、R^(2)は炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、xは1又は2を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される硫化アルキルフェノール及び(d)アルデヒドを反応させて得られるマンニッヒ反応生成物に、(e)次の一般式(II), (III) 及び(IV)
【化2】

〔式中、R^(2),m及びxは前記と同じである。〕で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種のアルキルヒドロキシ安息香酸又はその誘導体を反応させて得られるマンニッヒ反応生成物誘導体。
【請求項2】 請求項1記載のマンニッヒ反応生成物誘導体からなる清浄分散剤。
【請求項3】 請求項1記載のマンニッヒ反応生成物及び請求項1記載の一般式(II), (III) 及び(IV)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも一種のアルキルヒドロキシ安息香酸又はその誘導体からなる清浄分散剤。
【請求項4】 鉱油及び/又は合成油からなる基油と請求項2記載の清浄分散剤を含有する内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項5】 鉱油及び/又は合成油からなる基油と請求項3記載の清浄分散剤を含有する内燃機関用潤滑油組成物。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献3には、以下の記載がある。
「【請求項1】 ポリアルケニルコハク酸あるいはポリアルケニル無水コハク酸とポリアミン,アルデヒドおよび一般式(I)
【化1】

〔式中、R^(2)は炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、xは1又は2を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される硫化アルキルフェノールを反応させて得られるマンニッヒ反応生成物。
【請求項2】 ポリアルケニルコハク酸あるいはポリアルケニル無水コハク酸とポリアミン,アルデヒド,一般式(I)
【化2】

〔式中、R^(2)は炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、xは1又は2を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される硫化アルキルフェノールおよび硼素含有化合物を反応させて得られるマンニッヒ反応生成物。
【請求項3】 請求項1または2記載のマンニッヒ反応生成物を製造するにあたり、ポリアミン1モルに対し、一般式(I)
【化3】

〔式中、R^(2)は炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、xは1又は2を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される硫化アルキルフェノールを1モル以上反応させることを特徴とするマンニッヒ反応生成物の製造方法。
【請求項4】 請求項1または2記載の反応生成物からなる清浄分散剤。
【請求項5】 請求項4記載の清浄分散剤を含有する潤滑油組成物。
【請求項6】 鉱油および/または合成油からなる基油に請求項4記載の清浄分散剤を含有する内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項7】 鉱油および/または合成油からなる基油に請求項4記載の清浄分散剤を含有するディーゼルエンジン用潤滑油組成物。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献4には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
(1) フオルムアルデヒドとポリアミンとを、(1)硫化アルキルフエノール5ないし40%、および(2)炭素原子16ないし128個のポリイソブテンでアルキル化されたフエノール、またはポリイソブテンでアルキル化された前記フエノールとプロピレン四量体でアルキル化されたフエノールとの混合物95ないし60%からなる硫黄含有フエノール性混合物と縮合することによりマンニツヒ塩基が造られていることを特徴とする、マンニツヒ塩基縮合生成物およびそのアルカリ土類金属塩から選択される潤滑油添加剤。
(2) 上記ポリイソブテンが32ないし100個の炭素原子を含む上記第1項のマンニツヒ縮合生成物のカルシウム塩。
(3) 上記ポリイソブテンが32ないし100個の炭素原子を含む上記第1項のマンニツヒ縮合生成物のマグネシウム塩。
(4) 成分(2)が、プロピレン四量体でアルキル化されたフエノール95ないし30%と、炭素原子約16ないし128個のポリイソブチレンでアルキル化されたフエノール5ないし70%とからなる上記第1項の添加剤。
(5) 潤滑粘度の油と、上記第1、第2、第3もしくは第4項の潤滑油添加剤0.1ないし40重量%とからなる潤滑油組成物。
(6) 潤滑粘度の油15ないし60重量%と上記第1、第2、第3もしくは第4項に従う潤滑油添加剤85重量%から40重量%とを含む潤滑油濃厚物。
(7) フオルムアルデヒド0.5ないし0.85モルとポリアミン少くとも0.3モルとを、(1)硫化アルキルフエノール;5ないし40%および(2)炭素原子16ないし128個のポリイソブテンでアルキル化されたフエノール、またはポリイソブテンでアルキル化された前記フエノールとプロピレン四量体でアルキル化されたフエノールとの混合物95ないし60%からなる硫黄含有フエノール混合物1モルと縮合させ、そしてもし塩が所望であるならば、アルカリ土類金属酸化物もしくは水酸化物で中和することによりアルカリ土類金属塩を生成することを特徴とする上記第1項の潤滑油添加剤を製造する方法。
(8) 上記第7項の方法によって製造される製品。」(1?2頁、特許請求の範囲)

5 引用文献5について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献5には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
(1) 硫黄を少なくとも4重量%含有する硫化アルキルフエノールを、窒素を少なくとも2重量%含有し、且つ少なくとも600の分子量を有する、アルキルフエノール、ホルムアルデヒド及び構造式(I)

(式中、nは1?10の整数であり、そしてアルキレン基は炭素原子を2?8個有する)
を有するアルキレンポリアミン又はポリアルキレンポリアミンから合成されるマンニツヒ塩基と混合してヒドロキシル系溶媒の存在下及び昇温下においてアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物により中和することによって得られる反応生成物から成る潤滑油用添加剤としての使用に適した化合物において、硫化アルキルフエノールが中和前に二酸化炭素と反応させられていることを特徴とする上記化合物。
(2) 硫化アルキルフエノールの少なくとも90%が構造式(II)

(式中、R^(2)は炭素原子を8?36個含有するアルキル基であり、
y^(1)は1?9の範囲の整数であり、そして
n^(1)は1?5の範囲の整数である)
を有する硫化アルキルフエノールから成る上記特許請求の範囲第(1)項に記載の化合物。
(3) 式(II)の硫化アルキルフエノールにおいて、R^(2)は炭素原子を10?30個含有し、且つ炭素原子の平均数が約10?26個範囲にあるアルキル基であり;y^(1)は1?5の範囲の整数であり、且つ全組成物について平均すると約2?4の範囲に入り;そしてn^(1)は1?3の整数である上記特許請求の範囲第(2)項に記載の化合物。
(4) 硫化アルキルフエノールが硫黄を4?20重量%含有している上記特許請求の範囲第(1)?(3)項のいずれか一に記載の化合物。
(5) 式(II)の硫化アルキルフエノールの組成物において、R^(2)が主としてパラ位に存在している上記特許請求の範囲第(2)?(4)項のいずれか一に記載の化合物。
(6) 硫化アルキルフエノールを昇温化において二酸化炭素と反応させる上記特許請求の範囲第(1)?(5)項のいずれか一に記載の化合物。
(7) 二酸化炭素を硫化アルキルフエノールの重量に基づいて1?25重量%の量で硫化アルキルフエノールと反応させる上記特許請求の範囲第(6)項に記載の化合物。
(8) 二酸化炭素を1?15重量%の量で硫化アルキルフエノールと反応させる上記特許請求の範囲第(7)項に記載の化合物。
(9) 二酸化炭素を固体として添加する上記特許請求の範囲第(6)?(8)項のいずれか一に記載の化合物。
(10) アルキルフエノール、硫黄、酸化カルシウム又は水酸化カルシウム及びグリコールを140?150℃の温度範囲で化合させ、水及び硫化水素を駆出し、二酸化炭素を反応混合物に導入し、最後に溶媒のグリコールを除去する上記特許請求の範囲第(1)?(9)項のいずれか一に記載の化合物。
(11) マンニツヒ塩基がアルキル基中に炭素原子を9?25個含有しているアルキルフエノールから合成されている上記特許請求の範囲第(1)?(10)項のいずれか一に記載の化合物。
(12) マンニツヒ塩基が窒素を2?10重量%含有し、そして浸透圧法によって測定して600?5,000の範囲の分子量を有している上記特許請求の範囲第(1)?(11)項のいずれか一に記載の化合物。
(13) 式(I)を有するアルキレンポリアミンがエチレンポリアミンである上記特許請求の範囲第(1)?(12)項のいずれか一に記載の化合物。
(14) エチレンポリアミンがジエチレントリアミンである上記特許請求の範囲第(13)項に記載の化合物。
(15) エチレンポリアミンがエチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン又はトリエチレンテトラミンである上記特許請求の範囲第(13)項に記載の化合物。
(16) アルカリ土類金属がカルシウム又はバリウムである上記特許請求の範囲第(1)?(15)項のいずれか一に記載の化合物。
(17) アルカリ土類金属水酸化物が水酸化カルシウムである上記特許請求の範囲第(16)項に記載の化合物。
(18) ヒドロキシル系溶媒が全反応混合物の5?35重量%の範囲の量のエチレングリコールである上記特許請求の範囲第(1)?(17)項のいずれか一に記載の化合物。
(19) 反応生成物がマンニツヒ塩基及び硫化アルキルフエノールを0.2?5:1の範囲の当量比(フエノールに基いて)で混合して中和することによって得られる上記特許請求の範囲第(1)?(18)項のいずれか一に記載の化合物。
(20) 反応生成物が最終生成物中に存在するアルキルフエノール1当量当り全体で1当量までのアルカリ土類金属を与える量のアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物を添加することによって得られる上記特許請求の範囲第(1)?(19)項のいずれか一に記載の化合物。
(21) 反応生成物が最終生成物中に存在するアルキルフエノール1当量当り全体で1.75当量より少ない量のアルカリ土類金属を与える量のアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物を添加することによって得られる上記特許請求の範囲第(1)?(19)項のいずれか一に記載の化合物。
(22) 不活性溶媒が潤滑性粘度の鉱油であって、反応混合物中に全反応混合物の3?65重量%の範囲の量で存在している上記特許請求の範囲第(1)?(21)項のいずれか一に記載の化合物。
(23) 反応生成物が硫化アルキルフエノール、マンニツヒ塩基及びアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物を混合し、そしてヒドロキシル系溶媒としてのエチレングリコールの添加に先き立って90?140℃の温度まで加熱することによって得られる上記特許請求の範囲第(1)?(22)項のいずれか一に記載の化合物。
(24) エチレングリコールの添加後、温度を125?160℃の範囲の値まで昇温して反応水を除去する上記特許請求の範囲第(23)項に記載の化合物。
(25) 反応生成物がカルボネート化された硫化アルキルフエノールをマンニツヒ塩基の前駆物質と反応させてカルボネート化された硫化アルキルフエノールとマンニツヒ塩基を含有する生成物を形成し、次いでこの生成物をヒドロキシル系溶媒の存在下でアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物で中和することによって得られる上記特許請求の範囲第(1)?(22)項のいずれか一に記載の化合物。
(26) カルボネート化された硫化アルキルフエノールをアルキルフエノールと0.2?5:1の範囲の当量比(フエノールに基づく)で反応させ、その場合反応混合物中に存在するアルキルフエノール1?3モル毎にアルキレンポリアミン又はポリアルキレンポリアミンが1?3モルの量で、又ホルムアルデヒドが0.75?1.25モルの量で存在している上記特許請求の範囲第(25)項に記載の化合物。
(27) 反応を50?200℃の範囲内で沸とうし、反応混合物の総重量に基いて1?50重量%の量の炭化水素系溶媒の存在下で行う上記特許請求の範囲第(25)項又は第(26)項に記載の化合物。
(28) 反応生成物が反応混合物中に存在するアルキルフエノール1モル当り0.001?0.5モルの量のC_(1)?C_(10)カルボン酸の存在下で、カルボネート化硫化アルキルフエノールをマンニツヒ塩基又はその前駆物質と混合して中和することによって得られる上記特許請求の範囲第(1)?(27)項のいずれか一に記載の化合物。
(29) カルボン酸が酢酸である上記特許請求の範囲第(28)項に記載の化合物。
(30) 中和生成物を更にヒドロキシル系溶媒の存在下で追加量の二酸化炭素と反応させる上記特許請求の範囲第(1)?(29)項のいずれか一に記載の化合物。
(31) 添加される追加量の二酸化炭素が反応混合物の総重量に基いて1?15重量%の範囲である上記特許請求の範囲第(30)項に記載の化合物。
(32) ヒドロキシル系溶媒が反応生成物から除去される上記特許請求の範囲第(1)?(31)項のいずれか一に記載の化合物。
(33) ヒドロキシル系溶媒の除去後、炭化水素系潤滑油の形の不活性希釈剤を反応生成物に添加する上記特許請求の範囲第(32)項に記載の化合物。
(34) ヒドロキシル系溶媒の除去後、所望としない不溶性の化合物をろ(原文はさんずいに戸)別する上記特許請求の範囲第(32)項又は第(33)項に記載の化合物。
(35) 少割合の炭化水素系潤滑油、及び主割合の上記特許請求の範囲第(32)?(34)項のいずれか一に記載のヒドロキシル系溶媒を含まない化合物から成る、又は該化合物を含有する添加剤パツケージから成ることを特徴とする最終潤滑油の調合に適した濃厚組成物。
(36) 添加剤パツケージが組成物の総重量に基いて95%W/Wまでの量のヒドロキシル系溶媒を含まない化合物から成る上記特許請求の範囲第(36)項に記載の濃厚組成物。
(37) 添加剤パツケージがヒドロキシル系溶媒を含まない化合物を少なくとも5%W/W及び他の添加剤を90%W/Wまで含有している上記特許請求の範囲第(36)項に記載の濃厚組成物。
(38) 主割合の潤滑性ベース油及び少割合の上記特許請求の範囲第(35)?(37)項のいずれか一に記載の濃厚組成物から成ることを特徴とする最終潤滑組成物。」(1?3頁、特許請求の範囲)

6 引用文献6について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献6には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
(1) マンニツヒ塩基縮合生成物及びそのアルカリ土類金属塩であって、該マンニツヒ塩基縮合物は、ホルムアルデヒド及びポリアミンを、式

(式中RはC_(8)-C_(36)アルキルであり、nは1ないし8の整数であり且つyは1ないし9の整数である)
で表わされる硫化アルキルフエノール5ないし35モル%(イ)、及びプロピレンテトラマーでアルキル化されたフエノール95ないし65モル%(ロ)、からなる硫黄含有フエノール性混合物と一緒に縮合することによつて製造されたものであるマンニツヒ塩基縮合生成物及びそのアルカリ土類金属塩。
(2) 硫化アルキルフエノール15ないし25モル%及びプロピレンテトラマーでアルキル化されたフエノール85ないし75モル%から製造された前記第(1)項に記載の縮合生成物のカルシウム塩。
(3) 硫化アルキルフエノール15ないし25モル%及びプロピレンテトラマーでアルキル化されたフエノール85ないし75モル%から製造された前記第(1)項に記載の縮合生成物のマグネシウム塩。
(4) 潤滑油粘度の油及び前記第(1)項に記載の縮合生成物又はそれのアルカリ土類金属塩0.1ないし50重量%を含む潤滑油組成物。
(5) 潤滑油粘度の油及び前記第(2)項に記載のカルシウム塩0.1ないし50重量%を含む前記第(4)項に記載の潤滑油組成物。
(6) 潤滑油粘度の油及び前記第(3)項に記載のマグネシウム塩0.1ないし50重量%を含む前記第(4)項に記載の潤滑油組成物。
(7) 潤滑油粘度の油15ないし50重量%及び前記第(1)項に記載の縮合生成物又はそのアルカリ土類金属塩85ないし50重量%を含む前記第(4)項に記載の潤滑油組成物濃厚液。
(8) 潤滑油粘度の油15ないし50重量%及び前記第(2)項記載の生成物85ないし50重量%を含む前記第(4)項に記載の潤滑油組成物濃厚液。
(9) ホルムアルデヒド0.5ないし0.85モル、ポリアミン少なくとも0.3モル、及び(イ)式

(式中RはC_(8)-C_(36)アルキルであり、nは1ないし8の整数であり、且つyは1ないし9の整数である)
で表わされる硫化アルキルフエノール5ないし35モル%、及び(ロ)プロピレンテトラマーでアルキル化されたフエノール95ないし65モル%からなる硫黄含有フエノール性混合物1.0モルを縮合させ、そして随意にそのアルカリ土類金属塩を形成させることを特徴とするマンニツヒ塩基縮合物又はそのアルカリ土類金属塩を製造する方法。」(1?2頁、特許請求の範囲)

7 引用文献7について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献7には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
(1) フオルムアルデヒドとポリアミンを、
(A)(a) プロピレン三元重合体でアルキル化された95%から30%のフエノールと
(b) 炭素原子16ないし約28個のオレフインまたはオレフインの炭素原子が16ないし約28個であるオレフインの混合物でアルキル化された5%から70%のフエノールとからなるフエノール混合物、または
(B)(1)式:

(ただしRはC_(8)?C_(36)であり、nは2から8の整数であり、またyは1ないし9の整数である)の5%から40%の硫化アルキルフエノールと、(2)(a)プロピレン三元重合体でアルキル化された95%から30%のフエノールと(b)炭素原子16ないし約28個のオレフインまたはオレフインの炭素原子が16ないし約28個であるオレフイン混合物でアルキル化された5%ないし70%のフエノールとからなる95%から60%のフエノール混合物とからなる硫黄含有フエノール混合物を縮合することによりマンニツヒ塩基が製造される、マンニツヒ塩基縮合生成物およびそのアルカリ土類金属塩。
(2) オレフインが、炭素原子が16ないし約28個であるオレフインの混合物である上記第1項の縮合生成物のカルシウム塩。
(3) オレフインが、炭素原子が16ないし約28個であるオレフインの混合物である上記第1項の縮合生成物のマグネシウム塩。
(4) 潤滑粘度の油と上記第1項の縮合生成物あるいはそのアルカリ土類金属塩0.1ないし40重量%とからなる潤滑油組成物。
(5) 潤滑粘度の油と上記第2項のカルシウム塩0.1ないし40重量%とからなる上記第4項の潤滑油組成物。
(6) 潤滑粘度の油と上記第3項のマグネシウム塩9.1ないし40重量%とからなる上記第4項の潤滑油組成物。
(7) 潤滑粘度の油15ないし60重量%と上記第1項の縮合生成物またはそのアルキル土類金属85から40重量%とを含む潤滑油濃厚物。
(8) 0.5ないし0.85モルのフオルムアルデヒド、少くとも0.3モルのポリアミン、および1.0モルの
(A)(1) プロピレン三元重合体でアルキル化された95%から30%のフエノールと
(2) 炭素原子16ないし約28個のオレフインまたはオレフインの炭素原子が16ないし約28個であるオレフインの混合物でアルキル化された5%から70%のフエノールとからなるフエノール混合物、または
(B)(1)式:

(ただしRはC_(8)?C_(36)であり、nは1から8の整数であり、またyは1ないし9の整数である)の5%から40%の硫化アルキルと、(2)(a)プロピレン三元重合体でアルキル化された95%から30%のフエノールと(b)炭素原子16ないし約28個のオレフインまたはオレフインの炭素原子が16ないし約28個であるオレフイン混合物でアルキル化された5%ないし70%のフエノールとからなる95%から60%のフエノール混合物とからなる硫黄含有フエノール混合物
を縮合し、かつ随意選択的に生成物のアルカリ土類金属塩を生成することからなるマンニツヒ塩基縮合生成物あるいはそのアルカリ土類金属塩を製造する方法。」(1?2頁、特許請求の範囲)

8 引用文献8について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献8には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
(1) 少くとも2重量%の窒素を含み、少くとも600の分子量を有し、そしてアルキルフエノール、ホルムアルデヒド及び構造式:

(式中nは1ないし10の整数であり、そしてアルキレン基は2ないし8炭素原子を有する)を有するアルキレン又はポリアルキレンポリアミンから製造されたマンニツヒ塩基と混合した、少くとも4重量%のイオウを含む硫化アルキルフエノールをアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物で中和することによって得られた反応生成物を含み、しかもこの中和がヒドロキシル溶媒の存在でかつ上昇温度で行なわれること、そしてその後にこの中和された生成物を二酸化炭素と反応させることを特徴とする潤滑油添加剤として使用に適した化合物。
(2) 硫化アルキルフエノールの少くとも90%が構造式:

(式中R^(2)は8ないし36炭素原子を含むアルキル基であり、y^(1)は1ないし9の範囲内の整数であり、そしてn^(1)は1ないし5の範囲内の整数である)を有する硫化アルキルフエノールからなる特許請求の範囲(1)による化合物。
(3) 式(II)の硫化アルキルフエノールにおいて、R^(2)は炭素原子の平均数が約10ないし26の範囲内である10ないし30炭素原子を含むアルキル基であり、全組成物にわたって約2ないし4の範囲内の平均数である1ないし5の範囲内の整数であり、そしてn^(1)が1ないし3の整数である特許請求の範囲(2)による化合物。
(4) 硫化アルキルフエノールが4ないし20重量%のイオウを含む特許請求の範囲(1)ないし(3)の何れかによる化合物。
(5) 式(II)の硫化アルキルフエノール組成物中のR^(2)が主としてパラ位置にある特許請求の範囲(2)ないし(4)の何れかによる化合物。
(6) アルキレンポリアミンがエチレンポリアミン、プロピレンポリアミン又はブチレンポリアミンである前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(7) エチレンポリアミンがジエチレントリアミンである特許請求の範囲(6)による化合物。
(8) ポリアルキレンポリアミンがエチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン又はトリエチレンテトラミンである特許請求の範囲(1)ないし(5)の何れかによる化合物。
(9) マンニツヒ塩基が2ないし10重量%の窒素を有し、そして浸透圧計で測定して、600ないし5,000の範囲内の分子量を有する前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(10) アルカリ土類金属がカルシウム又はバリウムである前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(11) アルカリ土類金属酸化物又は水酸化物が水酸化カルシウムである特許請求の範囲(10)による化合物。
(12) ヒドロキシル溶媒がエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール又はメタノールである前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(13) 反応生成物が0.2ないし5:1の範囲内の当量比で(フエノールに基づいて)混合したマンニツヒ塩基と硫化アルキルフエノールを中和することによって得られる前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(14) 反応生成物が最終生成物に存在するアルキルフエノールの当量当り存在する総計で1当量までのアルカリ土類金属を供する一定量のアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物を添加することによって得られる前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(15) 反応生成物が最終生成物に存在するアルキルフエノールの当量当り存在する総計1.75当量以下のアルカリ土類金属を供する一定量のアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物を添加することによって得られる前記の特許請求の範囲(1)ないし(13)による化合物。
(16) ヒドロキシル溶媒が全反応混合物の5ないし35重量%の量のエチレングリコールである前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(17) 反応生成物が全反応混合物の3ないし65重量%の量の不活性希釈剤の存在で得られる前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(18) 反応生成物が1×10^(-3)ないし1×10^(-5)%の量で発泡抑制剤の存在で得られる前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(19) 反応生成物が硫化アルキルフエノール、マンニツヒ塩基及びアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物を混合することそしてヒドロキシル溶媒としてエチレングリコールの添加の前に90ないし140℃の温度に加熱することによって得られる前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(20) エチレングリコールの添加後に、温度が125ないし160℃の範囲内の数値に上げられ、これによって反応の水を除去する特許請求の範囲(19)による化合物。
(21) 反応生成物が、マンニツヒ塩基の前駆体と硫化アルキルフエノールを反応させて硫化アルキルフエノールとマンニツヒ塩基を含有する生成物を形成すること、そしてその後にヒドロキシル溶媒の存在でアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物でこの生成物を中和することによって得られる特許請求の範囲(1)ないし(18)の何れかによる化合物。
(22) 硫化アルキルフエノールを0.2ないし5:1の範囲内の当量比で(フエノールに基づいて)アルキルフエノールと反応させ、アルキレン又はポリアルキレンポリアミンが1ないし3モルの量で存在し、そしてホルムアルデヒドが反応混合物に存在するアルキルフエノールの各1ないし3モルに対して0.75ないし1.25モルの量で存在する特許請求の範囲(21)による化合物。
(23) 反応が反応混合物の全量に基づいて1ないし50重量%の量で50ないし200℃の範囲内で沸騰する炭化水素溶媒の存在で行なわれる特許請求の範囲(21)又は(22)の何れかによる化合物。
(24) 溶媒がベンゼン、トルエン又はキシレンである特許請求の範囲(23)による化合物。
(25) 反応が50ないし130℃の範囲内の温度で行なわれる特許請求の範囲(22)ないし(24)の何れかによる化合物。
(26) 反応生成物がカルボン酸の存在でマンニツヒ塩基と混合した硫化アルキルフエノールを中和することによって得られる前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(27) カルボン酸がC_(1)ないしC_(10)カルボン酸である特許請求の範囲(26)による化合物。
(28) C_(1)ないしC_(10)カルボン酸が酢酸である特許請求の範囲(27)による化合物。
(29) カルボン酸が反応混合物に存在するアルキルフエノールのモル当り0.001ないし0.5モルの量で存在する特許請求の範囲(26)ないし(28)の何れかによる化合物。
(30) カルボン酸が反応混合物に存在するアルキルフエノールのモル当り0.02ないし0.1モルの量で存在する特許請求の範囲(29)による化合物。
(31) 反応生成物がヒドロキシル溶媒の存在で二酸化炭素と中和された生成物を反応させることによって得られる前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(32) 二酸化炭素が中和反応温度で中和生成物に吹込まれる特許請求の範囲(31)による化合物。
(33) 添加される二酸化炭素の量が反応混合物の全量に基づいて、1ないし15重量%の量である特許請求の範囲(31)又は(32)の何れかによる化合物。
(34) 添加される二酸化炭素の量が1ないし8重量%の範囲内にある特許請求の範囲(33)による化合物。
(35) 反応生成物が、二酸化炭素と反応後に反応生成物からヒドロキシル溶媒を除去することによって得られる前記の特許請求の範囲の何れかによる化合物。
(36) 反応の水を除去することそして蒸溜を許すのに十分に圧力を減じた後に200℃以下に温度を上げることによってヒドロキシル溶媒が除去される特許請求の範囲(35)による化合物。
(37) エチレングリコールが140ないし200℃の範囲内の数値に温度を上げることによって除去される特許請求の範囲(36)による化合物。
(38) エチレングリコールが0.01ないし0.8大気圧の範囲内の圧力で除去される特許請求の範囲(37)による化合物。
(39) 反応混合物が冷却されそしてエチレングリコールの除去後に不活性希釈剤が添加される特許請求の範囲(35)ないし(38)の何れかによる化合物。
(40) 不活性希釈剤の添加前に反応混合物が150℃以上の温度に冷却される特許請求の範囲(39)による化合物。
(41) 不活性希釈剤が炭化水素質潤滑油である特許請求の範囲(29)又は(40)の何れかによる化合物。
(42) 望ましくない不溶性化合物がヒドロキシル溶媒の除去後ろ別される特許請求の範囲(35)ないし(41)の何れかによる化合物。
(43) 実施例(1)ないし(17)に関して実質上前記の化合物。
(44) 小部分の炭化水素質潤滑油及び大部分の、特許請求の範囲(37)ないし(45)の何れかのヒドロキシル溶媒を含まない化合物からなる、又はこれを含有する添加剤包装品からなる完成された潤滑油を調合するために適した濃縮組成物。
(45) 添加剤包装品が組成物の全量に基づいて95%w/wまでの量のヒドロキシル溶媒を含まない化合物からなる特許請求の範囲(46)による濃縮組成物。
(46) 添加剤包装品が組成物の全量に基づいて、少くとも5%w/wのヒドロキシル溶媒を含まない化合物及び90%w/wまでの他の添加剤を含有する特許請求の範囲(44)による濃縮組成物。
(47) 実施例(1)ないし(17)に関して実質上前記の濃縮組成物。
(48) 大部分の潤滑ベース油及び小部分の、特許請求の範囲(44)ないし(47)の何れかの濃縮組成物からなる完成された潤滑剤組成物。」(1?3頁、特許請求の範囲)

9 引用文献9について
原査定の拒絶理由で引用された引用文献9には、以下の記載がある(訳文で示す。)。
「1.ターシャリアルキルアミノメチル置換フェノールを製造する方法であって、ターシャリアルキルアゾメチンと、フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位の少なくとも1つにおいて置換可能な水素を有し、酸性の置換基を有さず、1つのアリール核につきただ1つのフェノール性ヒドロキシル基を含むメチロール形成フェノールとを反応温度が約110℃を超えない温度で混合、反応させることを含む方法。
2.ターシャリアルキルアミノメチル置換フェノールを製造する方法であって、4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位の少なくとも1つにおいて置換可能な水素を有し、炭化水素基が12を超えない炭素原子を有する、炭化水素基置換の1価のフェノールとを反応温度が約110℃を超えない温度で混合、反応させることを含む方法。
3.ターシャリアルキルアミノメチル置換フェノールを製造する方法であって、4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位の少なくとも1つにおいて置換可能な水素を有するハロフェノールとを反応温度が約110℃を超えない温度で混合、反応させることを含む方法。
4.ターシャリアルキルアミノメチル置換2核フェノールを製造する方法であって、4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位の少なくとも1つにおいて置換可能な水素を有し、酸性の置換基を有さず、1つのフェニル核につきただ1つのフェノール性ヒドロキシル基を有するビス(ヒドロキシフェニル)化合物とを反応温度が約110℃を超えない温度で混合、反応させることを含む方法。
5.ターシャリアルキルアミノメチル置換基を有するビス(ヒドロキシフェニル)スルフィドを製造する方法であって、(1)4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、(2)フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位の少なくとも1つにおいて置換することが可能な水素を有し、酸性の置換基を有さず、1つのフェニル核につきただ1つのフェノール性ヒドロキシル基を有するビス(ヒドロキシフェニル)スルフィドとを反応温度が約110℃までの温度で混合、反応させることを含む方法。
6.ビス(2-ヒドロキシ-3-ターシャリアルキルアミノメチル-5-クロロフェニル)スルフィドを製造する方法であって、少なくとも2モルの、4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、1モルのビス(2-ヒドロキシ-5-クロロフェニル)スルフィドとを反応温度が約110℃までの温度で混合、反応させることを含む方法。
7.ターシャリアルキルアミノメチル置換基を有するビス(ヒドロキシフェニル)メタンを製造する方法であって、4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位の少なくとも1つにおいて置換することが可能な水素を有し、酸性の置換基を有さず、1つのフェニル核につきただ1つのフェノール性ヒドロキシル基を有するビス(ヒドロキシフェニル)メタンとを反応温度が約110℃までの温度で混合、反応させることを含む方法。
8.ビス(3-ターシャリアルキルアミノメチル-4-ヒドロキシフェニル)ジメチルメタンを製造する方法であって、少なくとも2モルの、4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、1モルのビス(ヒドロキシフェニル)ジメチルメタンとを反応温度が約110℃までの温度で混合、反応させることを含む方法。
9.2,4,5-トリクロロ-6-ターシャリアルキルアミノメチルフェノールを製造する方法であって、4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、2,4,5-トリクロロフェノールとを反応温度が約110℃までの温度で混合、反応させることを含む方法。
10.2-ターシャリアルキルアミノメチル-4-ジイソブチルフェノールを製造する方法であって、4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、4-ジイソブチルフェノールとを反応温度が約110℃までの温度で混合、反応させることを含む方法。
11.新規な化学物質としてのビス(ヒドロキシフェニル)化合物であって、フェニル核が(a)直接結合、(b)硫黄原子を通じた結合、(c)4つの炭素原子を超えないアルキレン基の1つの炭素原子を通じた結合、からなるクラスの1つの結合により結合され、1つのフェニル基について1つのヒドロキシ基を有し、酸性の置換基を有さず、フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位に存在する対応した位置にある1か2のターシャリアルキルアミノメチル基を有し、該ターシャリアルキル基が4?19の炭素原子を有し、その第3級炭素原子において窒素原子に結合している、化合物。
12.新規な化学物質としての次式のビス(ヒドロキシフェニル)化合物。

式中Arは酸性の置換基を有しないフェニル基であり、Rは第3級炭素原子で窒素原子に結合する4?19の炭素原子を有するアルキル基であり、RNHCH_(2)-基はフェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位に存在する1箇所の水素原子が置換されたものである。
13.新規な化学物質としての次式の化合物。

上記C_(8)H_(17)基はその第3級炭素原子で窒素原子に結合するアルキル基であり、次の構造を有する(CH_(3))_(3)CCH_(2)(CH_(3))_(2)C-。
14.新規な化学物質としての次式の化合物。

上記C_(8)H_(17)基はその第3級炭素原子で窒素原子に結合するアルキル基であり、次の構造を有する(CH_(3))_(3)CCH_(2)(CH_(3))_(2)C-。
15.新規な化学物質としての次式のビス(ヒドロキシフェニル)メタン。

式中Arは酸性の置換基を有しないフェニル基、Rは第3級炭素原子で窒素原子に結合する4?15の炭素原子を有するアルキル基であり、RNHCH_(2)-基はフェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位に存在する1箇所の水素原子が置換されたものであり、Zは1つの炭素原子を通じて2つのフェニル基を結合する4を超えない炭素原子を有するアルキレン基である。
16.新規な化学物質としての次式の化合物。

上記C_(8)H_(17)基はその第3級炭素原子で窒素原子に結合するアルキル基であり、次の構造を有する(CH_(3))_(3)CCH_(2)(CH_(3))_(2)C-。」(7?9欄、特許請求の範囲)

第6 当審の判断
1 原査定の拒絶理由について
(1)特許法第29条第1項第3号及び第2項について
ア 引用発明
上記第5において摘示した事項から、上記各引用文献には、以下の発明が記載されていると認める。
引用文献1には、その請求項1に記載された
「(a)アルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体,(b)アミン化合物,(c)次の一般式(I)

〔式中、R^(2a),R^(2b)はそれぞれ独立に炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、x1,x2はそれぞれ独立に1又は2の整数を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される硫化アルキルフェノール,及び(d)アルデヒドを反応させて得られるマンニッヒ反応生成物であって、かつ(a)成分であるアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体が、次の化合物(a)-1,(a)-2,又は(a)-3、化合物(a)-1.アルケニル基として炭素数2?30のオレフィンから誘導される異なった重合体基を有する2種以上のアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体からなる混合物,化合物(a)-2.アルケニル基として炭素数2?30のオレフィンから誘導される共重合体基を有するアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体からなる化合物又は混合物,化合物(a)-3.上記の(a)-1及び(a)-2からなる混合物、のいずれかの化合物であるマンニッヒ反応生成物。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

引用文献2には、その請求項1に記載されたマンニッヒ反応生成物誘導体の中間体のマンニッヒ反応生成物である
「(a)ポリアルケニルコハク酸又はポリアルケニル無水コハク酸,(b)アミン化合物,(c)一般式(I)

〔式中、R^(2)は炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、xは1又は2を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される硫化アルキルフェノール及び(d)アルデヒドを反応させて得られるマンニッヒ反応生成物」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

引用文献3には、その請求項1に記載された
「ポリアルケニルコハク酸あるいはポリアルケニル無水コハク酸とポリアミン,アルデヒドおよび一般式(I)

〔式中、R^(2)は炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、xは1又は2を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される硫化アルキルフェノールを反応させて得られるマンニッヒ反応生成物。」の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認める。

引用文献4には、その請求項1に記載された
「フォルムアルデヒドとポリアミンとを、(1)硫化アルキルフェノール5ないし40%、および(2)炭素原子16ないし128個のポリイソブテンでアルキル化されたフェノール、またはポリイソブテンでアルキル化された前記フェノールとプロピレン四量体でアルキル化されたフェノールとの混合物95ないし60%からなる硫黄含有フェノール性混合物と縮合することによりマンニッヒ塩基が造られていることを特徴とする、マンニッヒ塩基縮合生成物およびそのアルカリ土類金属塩から選択される潤滑油添加剤。」の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認める。

引用文献5には、その請求項1に記載された
「硫黄を少なくとも4重量%含有する硫化アルキルフェノールを、窒素を少なくとも2重量%含有し、且つ少なくとも600の分子量を有する、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド及び構造式(I)

(式中、nは1?10の整数であり、そしてアルキレン基は炭素原子を2?8個有する)
を有するアルキレンポリアミン又はポリアルキレンポリアミンから合成されるマンニッヒ塩基と混合してヒドロキシル系溶媒の存在下及び昇温下においてアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物により中和することによって得られる反応生成物から成る潤滑油用添加剤としての使用に適した化合物において、硫化アルキルフェノールが中和前に二酸化炭素と反応させられていることを特徴とする上記化合物。」の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認める。

引用文献6には、その請求項1に記載された
「マンニッヒ塩基縮合生成物及びそのアルカリ土類金属塩であって、該マンニッヒ塩基縮合物は、ホルムアルデヒド及びポリアミンを、式

(式中RはC_(8)-C_(36)アルキルであり、nは1ないし8の整数であり且つyは1ないし9の整数である)
で表わされる硫化アルキルフェノール5ないし35モル%(イ)、及びプロピレンテトラマーでアルキル化されたフェノール95ないし65モル%(ロ)、からなる硫黄含有フェノール性混合物と一緒に縮合することによつて製造されたものであるマンニッヒ塩基縮合生成物及びそのアルカリ土類金属塩。」の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されていると認める。

引用文献7には、その請求項1に記載された
「フォルムアルデヒドとポリアミンを、
(A)(a) プロピレン三元重合体でアルキル化された95%から30%のフェノールと
(b) 炭素原子16ないし約28個のオレフィンまたはオレフィンの炭素原子が16ないし約28個であるオレフィンの混合物でアルキル化された5%から70%のフェノールとからなるフェノール混合物、または
(B)(1)式:

(ただしRはC_(8)?C_(36)であり、nは2から8の整数であり、またyは1ないし9の整数である)の5%から40%の硫化アルキルフェノールと、(2)(a)プロピレン三元重合体でアルキル化された95%から30%のフェノールと(b)炭素原子16ないし約28個のオレフィンまたはオレフィンの炭素原子が16ないし約28個であるオレフィン混合物でアルキル化された5%ないし70%のフェノールとからなる95%から60%のフェノール混合物とからなる硫黄含有フェノール混合物を縮合することによりマンニッヒ塩基が製造される、マンニッヒ塩基縮合生成物およびそのアルカリ土類金属塩。」の発明(以下「引用発明7」という。)が記載されていると認める。

引用文献8には、その請求項1に記載された
「少くとも2重量%の窒素を含み、少くとも600の分子量を有し、そしてアルキルフェノール、ホルムアルデヒド及び構造式:

(式中nは1ないし10の整数であり、そしてアルキレン基は2ないし8炭素原子を有する)を有するアルキレン又はポリアルキレンポリアミンから製造されたマンニッヒ塩基と混合した、少くとも4重量%のイオウを含む硫化アルキルフェノールをアルカリ土類金属酸化物又は水酸化物で中和することによって得られた反応生成物を含み、しかもこの中和がヒドロキシル溶媒の存在でかつ上昇温度で行なわれること、そしてその後にこの中和された生成物を二酸化炭素と反応させることを特徴とする潤滑油添加剤として使用に適した化合物。」の発明(以下「引用発明8」という。)が記載されていると認める。

引用文献9には、その請求項5に記載された方法により製造された
「(1)4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、(2)フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位の少なくとも1つにおいて置換することが可能な水素を有し、酸性の置換基を有さず、1つのフェニル核につきただ1つのフェノール性ヒドロキシル基を有するビス(ヒドロキシフェニル)スルフィドとを反応温度が約110℃までの温度で混合、反応させることを含む方法により製造されるターシャリアルキルアミノメチル置換基を有するビス(ヒドロキシフェニル)スルフィド」の発明(以下「引用発明9」という。)が記載されていると認める。

イ 本願発明1について
(ア)引用発明1について
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の硫化アルキルフェノール、アルデヒド、アミン化合物はそれぞれ本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物に対応するものであり、引用発明1の反応生成物は、アルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体が混合物である場合を含んでおりその場合には組成物であるといえる。
したがって、両者は、
「反応の原料として硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミン化合物を用いる反応生成物である組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」としているのに対し、引用発明1では「次の一般式(I)

〔式中、R^(2a),R^(2b)はそれぞれ独立に炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、x1,x2はそれぞれ独立に1又は2の整数を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される」とされている点
<相違点2>原料の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は当該化合物のみではなく、その金属塩を含有する組成物であるのに対し、引用発明1では金属塩を含有する組成物とされていない点
<相違点3>アルデヒドについて、本願発明1は「パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種」であるとされているのに対し、引用発明1では、アルデヒドの種類が特定されていない点
<相違点4>アミン化合物について、本願発明1は「少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物」としているのに対し、引用発明1ではアミン化合物の種類が特定されていない点
<相違点5>組成物について、本願発明1は「潤滑油組成物用の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明1ではそのように特定されていない点
<相違点6>引用発明1では、アルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体を反応の原料として用いているのに対し、本願発明1ではかかる原料を用いない点

上記相違点について検討するに、少なくとも上記相違点5、6については実質的な相違点でないということはできず、引用発明1では相違点6に係るアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体を反応の原料として用いていることからみて、本願発明1の組成物が引用発明1のマンニッヒ反応生成物と同一であるということもできないから、本願発明1は引用文献1に記載された発明であるとはいえない。
また、相違点6について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明1において必須とされるアルケニル無水コハク酸及び/又はその誘導体を反応生成物の原料として用いないことは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献1に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(イ)引用発明2について
本願発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2の硫化アルキルフェノール、アルデヒド、アミン化合物はそれぞれ本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物に対応するものである。
したがって、両者は、
「反応の原料として硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミン化合物を用いる反応生成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点7>硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」としているのに対し、引用発明2では「一般式(I)

〔式中、R^(2)は炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、xは1又は2を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される」とされている点
<相違点8>原料の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は当該化合物のみではなく、その金属塩を含有する組成物であるのに対し、引用発明2では金属塩を含有する組成物とされていない点
<相違点9>アルデヒドについて、本願発明1は「パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種」であるとされているのに対し、引用発明1では、アルデヒドの種類が特定されていない点
<相違点10>アミン化合物について、本願発明1は「少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物」としているのに対し、引用発明2ではアミン化合物の種類が特定されていない点
<相違点11>反応生成物について、本願発明1が「組成物」であるのに対し、引用発明2はマンニッヒ反応生成物とされ、組成物であるとされていない点
<相違点12>反応生成物について、本願発明1が「潤滑油組成物用の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明2ではそのように特定されていない点
<相違点13>引用発明2では、ポリアルケニルコハク酸又はポリアルケニル無水コハク酸を反応の原料として用いているのに対し、本願発明1ではかかる原料を用いない点

上記相違点について検討するに、少なくとも上記相違点12、13については実質的な相違点でないということはできず、引用発明2では相違点13に係るポリアルケニルコハク酸又はポリアルケニル無水コハク酸を反応の原料として用いていることからみて、本願発明1の組成物が引用発明2のマンニッヒ反応生成物と同一であるということもできないから、本願発明1は引用文献2に記載された発明であるとはいえない。
また、相違点13について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明2において必須とされるポリアルケニルコハク酸又はポリアルケニル無水コハク酸を反応生成物の原料として用いないことは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献2に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(ウ)引用発明3について
本願発明1と引用発明3とを対比する。
引用発明3の硫化アルキルフェノール、アルデヒド、ポリアミンはそれぞれ本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物に対応するものである。
したがって、両者は、
「反応の原料として硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、アミン化合物を用いる反応生成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点14>硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」としているのに対し、引用発明3では「一般式(I)

〔式中、R^(2)は炭素数4?25のアルキル基を示し、mは1?8の整数を示し、xは1又は2を示し、zは1?9の整数を示す。〕で表される」とされている点
<相違点15>原料の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は当該化合物のみではなく、その金属塩を含有する組成物であるのに対し、引用発明3では金属塩を含有する組成物とされていない点
<相違点16>アルデヒドについて、本願発明1は「パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種」であるとされているのに対し、引用発明3では、アルデヒドの種類が特定されていない点
<相違点17>アミン化合物について、本願発明1は「少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物」としているのに対し、引用発明3ではポリアミンとされている点
<相違点18>反応生成物について、本願発明1が「組成物」であるのに対し、引用発明3はマンニッヒ反応生成物とされ、組成物であるとされていない点
<相違点19>反応生成物について、本願発明1が「潤滑油組成物用の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明3ではそのように特定されていない点
<相違点20>引用発明3では、ポリアルケニルコハク酸あるいはポリアルケニル無水コハク酸を反応の原料として用いているのに対し、本願発明1ではかかる原料を用いない点

上記相違点について検討するに、少なくとも上記相違点17、19、20については実質的な相違点でないということはできず、引用発明3では相違点17に係るポリアミン、相違点20に係るポリアルケニルコハク酸又はポリアルケニル無水コハク酸を反応の原料として用いていることからみて、本願発明1の組成物が引用発明3のマンニッヒ反応生成物と同一であるということもできないから、本願発明1は引用文献3に記載された発明であるとはいえない。
また、相違点17、20について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明3において必須とされるポリアミン、ポリアルケニルコハク酸又はポリアルケニル無水コハク酸を反応生成物の原料として用いないことは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献3に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(エ)引用発明4について
本願発明1と引用発明4とを対比する。
引用発明4の(1)硫化アルキルフェノール5ないし40%、および(2)炭素原子16ないし128個のポリイソブテンでアルキル化されたフェノール、またはポリイソブテンでアルキル化された前記フェノールとプロピレン四量体でアルキル化されたフェノールとの混合物95ないし60%からなる硫黄含有フェノール性混合物、フォルムアルデヒド、ポリアミンはそれぞれ本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物、ホルムアルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物に対応するものであり、引用発明4の硫化アルキルフェノールは本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物に相当する。また、引用発明4の潤滑油添加剤は潤滑油組成物用の物といえ、引用発明4の縮合は本願発明1の反応に相当する。したがって、両者は、
「反応の原料として硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物、パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒドアルデヒド、アミン化合物を用いる反応生成物」である点、「潤滑油組成物用の物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点21>硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」としているのに対し、引用発明4ではそのように特定されていない点
<相違点22>原料の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物について、本願発明1は、その金属塩を含有する組成物であるのに対し、引用発明4では金属塩を含有する組成物とされていない点
<相違点23>アミン化合物について、本願発明1は「少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物」としているのに対し、引用発明4ではポリアミンとされている点
<相違点24>反応生成物について、本願発明1が「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明4ではそのように特定されていない点
<相違点25>引用発明4では、反応の原料として、硫化アルキルフェノール5ないし40%と混合される、硫黄含有フェノール性混合物中の炭素原子16ないし128個のポリイソブテンでアルキル化されたフェノール、またはポリイソブテンでアルキル化された前記フェノールとプロピレン四量体でアルキル化されたフェノールとの混合物95ないし60%を用いるのに対し、本願発明1ではかかる原料を用いない点

上記相違点について検討するに、少なくとも上記相違点23、24については実質的な相違点でないということはできず、引用発明4では相違点23に係るポリアミンを反応の原料として用いていることからみて、本願発明1の組成物が引用発明4の潤滑油添加剤と同一であるということもできないから、本願発明1は引用文献4に記載された発明であるとはいえない。
また、相違点23について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明4において必須とされるポリアミンを反応生成物の原料として用いないことは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献4に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(オ)引用発明5について
本願発明1と引用発明5とを対比する。
引用発明5の硫化アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、アルキレンポリアミン又はポリアルキレンポリアミンは、本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物に対応するものであり、引用発明5の潤滑油用添加剤は潤滑油組成物用の物であるといえる。
したがって、本願発明1と引用発明5とは、「反応の原料として硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒド、アミン化合物を用いる反応生成物」である点、「潤滑油組成物用の物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点26>硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」としているのに対し、引用発明5ではそのように特定されていない点
<相違点27>原料の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は当該化合物のみではなく、その金属塩を含有する組成物であるのに対し、引用発明5では金属塩を含有する組成物とされていない点
<相違点28>アミン化合物について、本願発明1は「少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物」としているのに対し、引用発明5ではアルキレンポリアミン又はポリアルキレンポリアミンとされている点
<相違点29>反応生成物について、本願発明1が「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明5ではそのように特定されていない点
<相違点30>本願発明1では、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物とアルデヒドと第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の3者を反応させるのに対し、引用発明5では、概要、アルキルフェノールとホルムアルデヒドとアルキレンポリアミン又はポリアルキレンポリアミンから合成されたマンニッヒ塩基を硫化アルキルフェノールと混合し、アルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物と反応させるものであって、反応させる物が異なる点

上記相違点について検討するに、少なくとも上記相違点28、29については実質的な相違点でないということはできず、引用発明5では相違点28に係るアルキレンポリアミン又はポリアルキレンポリアミンを反応の原料として用いていることからみて、本願発明1の組成物が引用発明5の化合物と同一であるということもできないから、本願発明1は引用文献5に記載された発明であるとはいえない。
また、相違点28について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明5において必須とされるアルキレンポリアミン又はポリアルキレンポリアミンを反応生成物の原料として用いないことは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献5に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(カ)引用発明6について
本願発明1と引用発明6とを対比する。
引用発明6の硫化アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、ポリアミンは、本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物に対応し、引用発明6の硫黄含有フェノール性混合物は本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物に対応し、引用発明6のマンニッヒ塩基縮合生成物は本願発明1の反応生成物に対応する。
したがって、本願発明1と引用発明6とは、「反応の原料として硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物、パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒド、アミン化合物を用いる反応生成物」である点である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点31>硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」としているのに対し、引用発明6では「式

(式中RはC_(8)-C_(36)アルキルであり、nは1ないし8の整数であり且つyは1ないし9の整数である)
で表わされる」とされている点
<相違点32>原料の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物について、本願発明1は、その金属塩を含有する組成物であるのに対し、引用発明6では金属塩を含有する組成物とされていない点
<相違点33>アミン化合物について、本願発明1は「少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物」としているのに対し、引用発明6ではポリアミンとされている点
<相違点34>反応生成物について、本願発明1が「潤滑油組成物用の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明6ではそのように特定されていない点
<相違点35>引用発明6では、原料としてプロピレンテトラマーでアルキル化されたフェノールを用いるのに対し、本願発明1では該成分を用いるとはされていない点

上記相違点について検討するに、少なくとも上記相違点33、34については実質的な相違点でないということはできず、引用発明6では相違点33に係るポリアミンを反応の原料として用いていることからみて、本願発明1の組成物が引用発明6の化合物と同一であるということもできないから、本願発明1は引用文献6に記載された発明であるとはいえない。
また、相違点33について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明6において必須とされるポリアミンを反応生成物の原料として用いないことは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献6に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(キ)引用発明7について
本願発明1と引用発明7とを対比する。
引用発明7の硫化アルキルフェノール、フォルムアルデヒド、ポリアミンは、本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物に対応し、引用発明7の硫黄含有フェノール混合物は本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物に対応し、引用発明7のマンニッヒ塩基縮合生成物は本願発明1の反応生成物に対応する。
したがって、本願発明1と引用発明7とは、「反応の原料として硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物、パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒド、アミン化合物を用いる反応生成物」である点である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点36>硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」としているのに対し、引用発明7では「式:

(ただしRはC_(8)?C_(36)であり、nは2から8の整数であり、またyは1ないし9の整数である)」の硫化アルキルフェノールとされている点
<相違点37>原料の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含有する組成物について、本願発明1は、その金属塩を含有する組成物であるのに対し、引用発明7では金属塩を含有する組成物とされていない点
<相違点38>アミン化合物について、本願発明1は「少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物」としているのに対し、引用発明7ではポリアミンとされている点
<相違点39>反応生成物について、本願発明1が「潤滑油組成物用の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明7ではそのように特定されていない点
<相違点40>引用発明7では、原料として、5%から40%の硫化アルキルフェノールと共に、プロピレン三元重合体でアルキル化された95%から30%のフェノールと炭素原子16ないし約28個のオレフィンまたはオレフィンの炭素原子が16ないし約28個であるオレフィン混合物でアルキル化された5%ないし70%のフェノールとからなる95%から60%のフェノールを用いるのに対し、本願発明1では該成分を用いるとはされていない点

上記相違点について検討するに、少なくとも上記相違点38、39については実質的な相違点でないということはできず、引用発明7では相違点38に係るポリアミンを反応の原料として用いていることからみて、本願発明1の組成物が引用発明7の化合物と同一であるということもできないから、本願発明1は引用文献7に記載された発明であるとはいえない。
また、相違点38について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明7において必須とされるポリアミンを反応生成物の原料として用いないことは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献7に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(ク)引用発明8について
本願発明1と引用発明8とを対比する。
引用発明8の硫化アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、アルキレンアミン(なお、このアミンはポリアミンである。)又はポリアルキレンポリアミンは、本願発明1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、アルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物に対応するものであり、引用発明8の潤滑油用添加剤は潤滑油組成物用の物であるといえる。
したがって、本願発明1と引用発明8とは、「反応の原料として硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物、パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒド、アミン化合物を用いる反応生成物」である点、「潤滑油組成物用の物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点41>硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」としているのに対し、引用発明8ではそのように特定されていない点
<相違点42>原料の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、本願発明1は当該化合物のみではなく、その金属塩を含有する組成物であるのに対し、引用発明8では金属塩を含有する組成物とされていない点
<相違点43>アミン化合物について、本願発明1は「少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物」としているのに対し、引用発明8ではアルキレンアミン又はポリアルキレンポリアミンとされている点
<相違点44>反応生成物について、本願発明1が「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明8ではそのように特定されていない点
<相違点45>本願発明1では、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物とアルデヒドと第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の3者を反応させるのに対し、引用発明8では、概要、アルキルフェノールとホルムアルデヒドとアルキレンアミン又はポリアルキレンポリアミンから合成されたマンニッヒ塩基を硫化アルキルフェノールと混合し、アルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物と反応させるものであって、反応させる物が異なる点

上記相違点について検討するに、少なくとも上記相違点43、44については実質的な相違点でないということはできず、引用発明8では相違点43に係るアルキレンアミン又はポリアルキレンポリアミンを反応の原料として用いていることからみて、本願発明1の組成物が引用発明8の化合物と同一であるということもできないから、本願発明1は引用文献8に記載された発明であるとはいえない。
また、相違点43について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明5において必須とされるアルキレンアミン又はポリアルキレンポリアミンを反応生成物の原料として用いないことは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献8に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(ケ)引用発明9について
本願発明1と引用発明9とを対比する。
引用発明9のターシャリアルキルアミノメチル置換基を有するビス(ヒドロキシフェニル)スルフィドは反応生成物であるといえる。
したがって、両者は、
「反応生成物」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点46>本願発明1では、反応の原料として(a)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物、(b)パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒド、並びに(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン、ジドデシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジメチルアミン、モノ-メチルアミン及びジデシルアミンから選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物を用いるのに対し、引用発明9は(1)4?18の炭素原子を有するアルキル基を有し、該アルキル基がその第3級炭素原子において窒素原子に結合しているアルキルアゾメチンと、(2)フェノール性ヒドロキシ基のオルト及びパラ位の少なくとも1つにおいて置換することが可能な水素を有し、酸性の置換基を有さず、1つのフェニル核につきただ1つのフェノール性ヒドロキシル基を有するビス(ヒドロキシフェニル)スルフィドを用いる点
<相違点47>反応生成物について、本願発明1が「潤滑油組成物用の、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、前記反応により後処理された組成物」とされ、「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理された組成物は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する、後処理されていない組成物の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されており、この後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する」とされているのに対し、引用発明9ではそのように特定されていない点

上記相違点について検討するに、上記相違点46、47のいずれについても実質的な相違点でないということはできず、引用発明9の生成物であるターシャリアルキルアミノメチル置換基を有するビス(ヒドロキシフェニル)スルフィドが本願発明1の組成物と同一であるとする根拠もない。
また、相違点43について、引用文献1?9の上記記載事項をみても、引用発明9の反応の原料を本願発明1のものとし、本願発明1の組成物を得ることが、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえないから、本願発明1が引用文献9に記載された発明及び引用文献1?9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(コ)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 本願発明2?4について
本願発明2?4は請求項1を直接的・間接的に引用し、本願発明1を技術的に限定するものであるところ、本願発明1が引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本願発明2?4も引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

エ 本願発明5について
本願発明5は実質的に本願発明1の組成物を調製するための方法であるといえるところ、本願発明1が引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本願発明5も引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

オ 本願発明6?9について
本願発明6?9は請求項5を直接的・間接的に引用し、本願発明5を技術的に限定するものであるところ、本願発明5が引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本願発明6?9も引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

カ 本願発明10?13について
本願発明10?12は、本願発明1の組成物を含む潤滑油組成物又は該潤滑油組成物を技術的に限定する潤滑油組成物についての発明であり、本願発明13は、本願発明10?12のいずれかの潤滑油組成物を用いる方法の発明であるところ、本願発明1が引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、本願発明10?13も引用文献1?9に記載された発明とはいえず、引用文献1?9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(2)特許法第36条第4項第1号について
原査定の拒絶理由は、請求項1?5に係る発明(現存の本願発明1?4に対応)は、多様な化学構造を含む化合物群がことごとく高性能の潤滑油として有効であると認定することは極めて困難であり、物の発明についてその物を使用できるとはいえないから、発明の詳細な説明に当業者が実施できるように記載されているとはいえず、また、請求項11?15に係る発明(現存の本願発明10?13に相当)について、潤滑油として有効であると認められるのは明細書で具体的に実証された特定の化合物及びそれに類似したものに対してのみであり、それ以外の化合物について有効であるか否かは明らかでないから、発明の詳細な説明に当業者が実施できるように記載されているとはいえないというものであるところ、本願発明1?4、10?13においては、アルデヒド、第一級及び/又は第二級モノアミン化合物が発明の詳細な説明の実施例に記載された特定の物質に限定されており、これらの物質を用いて製造された物が使用することができるものではないとする理由はないから、これらの発明について、発明の詳細な説明は、当業者が実施できるように記載されていないとはいえない。

(3)特許法第36条第6項第2号について
原査定の拒絶理由は、請求項1?5の発明(現存の本願発明1?4に対応)は化学物質発明であるが、化学物質としての構造の特定がなされていないというものであるところ、本願発明1?4は、潤滑油組成物用の組成物に関するものであって、化学物質発明ではないから、上記理由によって発明が明確でないということはできない。

2 当審において通知した拒絶理由について
(1)特許法第36条第6項第2号について
特許法第36条第6項第2号について、平成29年2月23日付けの拒絶理由通知において(1)?(8)の理由、平成29年6月29日付けの拒絶理由通知において(1)?(3)(以下「(1)’?(3)’」とする。)を指摘しているので、これらについて以下に述べる。

理由(1)について
拒絶理由は、概要、請求項1は、「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩」という物の発明であるが、請求項1の「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、・・・アルキル化に由来するものである」、「(a)・・・硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩、(b)アルデヒドの供給源、並びに(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の反応生成物である、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩」との記載は、製造に関して経時的な要素の記載がある場合又は製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえるところ、本願明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えないから、請求項1に係る発明は明確でなく、請求項2?4、10?13についても同様である、というものである。
この理由はいわゆるプロダクト・バイ・プロセス(以下「PBP」という。)の形式で記載された請求項の明確性要件に関するものであるところ、PBPの形式で記載された特許請求の範囲の記載の明確性に関し、判例は、「物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)と判示する。
そこで、本件についてPBPの形式で請求項を記載することについて、上記不可能・非実際的事情が存在するかを検討する。
まず、平成29年2月23日付けの当審による拒絶理由に対し、審判請求人は、平成29年4月28日付けの意見書において、
「本願請求項1に係る硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩は、「(a)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩、(b)アルデヒド、並びに(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の反応」(後処理)という3種成分の反応工程を経て調製されるため、たとえ調製に用いられる材料に基づいて主要な生成物質の構造が合理的に把握され得るとしても、その最終的な生成物は、少量の副生成物を含む種々の生成物質を包含し、複雑な成分組成の混合物(組成物)を形成すると考えられます。
従って、そのような混合物は、それを調製するための方法を定義することによってはじめて精密に表現することが可能であるものと、当業者にとって自明に理解されます。
その混合物に含まれる諸成分を、化学的に分別可能な程度に精密に単離し、その諸成分について、GPC、NMR、質量分析、FT-IR等の複数かつ多数に渡る機器分析に処することによって、その化学的構造あるいは物理的特性を測定・解析することは、実質的に不可能であると考えられます。それがたとえ不可能とまではいえないとしても、少なくとも数ヶ月程度の時間と、人件費を含めると決して小さくはないコストを要するものと予想されます。
激しい技術競争に曝されている日進月歩の潤滑油添加剤の技術分野において、特許法による先願主義の法制下、数ヶ月の出願の遅延と膨大な機器分析コストを費やすことは、出願人にとって著しい不利益になり得ます。
従って、本願請求項1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩について、それを調製するための方法を用いて定義する以外に、実質的に可能な表現方法はなく、あるいは、それ以外の実際的な表現方法がありません。
このような事情が、上述の類型(i)「出願時において物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であった場合」、あるいは、類型(ii)「特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、物の構造又は特性を特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要する場合」に当て嵌まることは、明らかであると思料いたします。
なお、仮に、本願請求項1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩につき、それを調製するための方法を引用することなく、それ自体の化学的構造あるいは物理的特性のみをもって特定しようと試みることは、当業者にとって極めて困難であり、しかも、当該組成物の構造に関して非常に少ない情報を与えることになりかねず、著しく非現実的です。
従って、本願請求項1の硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩は、「不可能・非実際的事情」を有して出願時に起案・提出されたものであるから、平成27年6月5日言渡しの最高裁判決(平成24年(受)第1204号、同2658号)に含蓄される趣旨に合致するものであり、かつ特許庁の審査ハンドブックの運用に沿ったものであることは、明らかです。
よって、上述の補正後の本願請求項1及びこれを引用する各請求項に係る発明は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセスクレーム形式の表現による発明特定事項を有する形で、明確性要件を充足すると考えられます。」、
「請求項1、5における(a)成分の「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香
族組成物の塩」を構成する「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物」について、「プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」という特定を行うことなく、その構造を明確に規定することは、実際上困難であるという事実に留意すべきであると思慮いたします。
というのも、この原料オレフィンは、「プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上の」ものであり、2以上の種類のオレフィン類の混合物であり得ます。そのうえ、このようなオレフィン類は、その二重結合の存在に起因して、一般的に非常に高い反応性を有することが知られています。
従って、「プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来する」アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、C_(9)?C_(18)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含むだけではなく、さらに多様な種類の他の化合物群を含む混合物を構成し得るものです。
そのような混合物は、それを調製するための方法を定義することによってはじめて精密に表現することが可能であるものと、当業者にとって自明に理解されます。その混合物に含まれる諸成分を、化学的に分別可能な程度に精密に単離し、その諸成分について、GPC、NMR、質量分析、FT-IR等の複数かつ多数に渡る機器分析に処することによって、その化学的構造あるいは物理的特性を測定・解析することは、実質的に不可能であるか又は極めて困難であると考えられます。
このように、「プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来する」アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を、「C_(9)?C_(18)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物」と単純に言い換えることは、技術的な面から適当であるとは言えません。
従って、請求項1、5における(a)成分の「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩」を構成する「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物」について、それを得るための「プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」という特定を用いて定義する以外に、実質的に可能な表現方法はなく、あるいは、それ以外の実際的な表現方法がないと考えられます。
よって、請求項1、5に記載された「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」という表現によって、発明の不明確性が生じることはないと理解されます。」と主張する。
この点に関し、本願請求項1に係る硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物(後処理されたもの)は、「(a)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物、(b)パラホルムアルデヒド及びホルムアルデヒドから選択される少なくとも1種のアルデヒド、並びに(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物であって、ジエチルアミン等から選択される少なくとも1種の第一級及び/又は第二級モノアミン化合物の反応」という(a)?(c)の3種の成分の反応工程を経て調製されるため、その最終的な生成物は、少量の副生成物を含む種々の生成物質を包含し、複雑な成分組成の混合物(組成物)を形成すると考えられる。そして、その混合物に含まれる諸成分を、化学的に分別可能な程度に精密に単離し、その諸成分について、GPC、NMR等の機器分析によって、その化学的構造あるいは物理的特性を測定・解析することは、実質的に不可能である。また、仮に不可能ではないとしても、多大な時間とコストを要するものと考えられる。
したがって、本願請求項1に係る硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有する組成物(後処理されたもの)について、それを調製するための方法を用いて定義することは、上述の不可能・非実際的事情が存在するときにあたり、許容されるということができる。
また、本願請求項1に係るアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、原料であるオレフィンは、「プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上の」ものであり、2以上の種類のオレフィン類の混合物であり得るため、「プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来する」アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物は、C_(9)?C_(18)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物を含むだけではなく、さらに多様な種類の他の化合物群を含む混合物を構成し得ると考えられ、その混合物に含まれる諸成分を、化学的に分別可能な程度に精密に単離し、その諸成分について、GPC、NMR等の機器分析によって、その化学的構造あるいは物理的特性を測定・解析することは、実質的に不可能である。また、仮に不可能ではないとしても、多大な時間とコストを要するものと考えられる。
したがって、本願請求項1に係るアルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、それを調製するための方法を用いて定義することは、上述の不可能・非実際的事情が存在するときにあたり、許容されるということができる。
そうしてみると、審判請求人の主張は是認できるものであり、理由(1)で指摘したPBPの形式で記載された請求項に係る発明は明確である。
よって、この理由は解消している。

理由(2)について
拒絶理由は、概要、請求項1、5に「アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物が、プロピレン、ブチレン又はこれらの混合物から選択されるモノマーのC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンによるヒドロキシ芳香族化合物のアルキル化に由来するものである」と記載があるが、かかる記載では、当該アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物がアルキル化に由来することが特定されていないC_(9)?C_(18)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物と異なるものであるか否か不明であり、請求項1、5に係る発明は明確でなく、請求項2?4、6?14についても同様である、というものであるが、上記「理由(1)について」で述べたことと同様に、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物について、それを調製するための方法を用いて定義しても、特許を受けようとする発明は明確であり、アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の原料であるオレフィンがC_(9)?C_(18)オリゴマーを含む一以上のオレフィンとされていることから、アルキル化に由来することが特定されていないC_(9)?C_(18)アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物と異なることは明らかである。
したがって、この理由は解消している。

理由(3)について
拒絶理由は、請求項14に「請求項5に記載の方法によって製造された硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩」と記載があるが、請求項5に記載の方法によって製造される硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩の構成成分及びその量は明確でないから、それの「使用」であるとする請求項14に係る発明は明確でない、というものであるところ、当該請求項に対応する請求項は補正により削除されているので、この理由は解消している。

理由(4)について
拒絶理由は、概要、請求項1に「この硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩は、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩の中に存在する未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の合算質量による含量に比較して、未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の含量が合算質量で少なくとも70%低減されている」と記載があるが、硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩が未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩をどの程度含有するか不明であるから、かかる記載によって特定しようとする技術的事項が不明であり、請求項1に係る発明は明確でなく、請求項2?14についても同様である、というものであるところ、本願発明1?13では、後処理されていない硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその中性又は過塩基性塩である金属塩を含有する組成物が、合算質量で2重量%から10重量%までの未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその金属塩を含有することが特定されているから、この理由は解消している。

理由(5)及び理由(1)’について
拒絶理由は、概要、請求項1に「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩」、「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩」、「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理されていない塩」と、請求項2に「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩」、「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の過塩基性塩」、「硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の後処理された塩」と記載があるが、組成物の塩とはどのような物質を意味するか不明であるから、請求項1、2に係る発明は明確でなく、請求項3?14(理由(1)’については請求項3?16)についても同様である、というものであるところ、補正により上記の記載はいずれも存在しないので、この理由は解消している。

理由(6)について
拒絶理由は、概要、請求項1に「アルデヒドの供給源」と記載があるが、これがアルデヒドを意味するのか、アルデヒドを供給するアルデヒドではない他の物質を意味するのか不明であるから、請求項1に係る発明は明確でなく、請求項2?4、10?13についても同様である、というものであるところ、補正により上記の記載は存在しないので、この理由は解消している。

理由(7)について
拒絶理由は、概要、請求項1に「未硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩」と記載があるが、「その」とは何を指すか不明であるから、請求項1に係る発明は明確でなく、請求項2?14についても同様である、というものであるところ、補正により上記の記載は存在しないので、この理由は解消している。

理由(8)及び理由(2)’について
拒絶理由は、請求項14に記載の「哺乳類への曝露の際の潤滑油組成物の内分泌撹乱特性が低減された潤滑油組成物」について、「哺乳類への曝露の際の潤滑油組成物の内分泌撹乱特性が低減された」との記載は、潤滑油組成物の性質を特定するものであると認められるが、当該特定によって潤滑油組成物のどのような事項を限定するのか(当該特定の有無によって潤滑油組成物の構成成分及びその量が異なることになるのか)不明であるから、また、「低減」について、その比較対象が不明であるから、請求項14に係る発明は明確でないというものであり、さらに、概要、請求項14に哺乳類への曝露の際の潤滑油組成物の内分泌撹乱特性を低減する方法に関する発明が記載されているところ、請求項14に記載の方法により、哺乳類への曝露の際の潤滑油組成物の内分泌撹乱特性が低減するとは認められないから、請求項14に係る発明は明確でないというものであるところ、補正により当該請求項は削除されているので、この理由は解消している。

理由(3)’について
拒絶理由は、請求項16に記載された(B)及び(C)に関して、(C)のモル比は(B)の範囲外の比を含むから、当該記載により特定される発明は明確でないというものであるところ、補正により当該請求項は削除されているので、この理由は解消している。

(2)特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項第1号について、平成29年2月23日付けの拒絶理由通知においてア及びイの理由、平成29年6月29日付けの拒絶理由通知において(1)及び(2)の理由を指摘しているので、これらについて以下に述べる。
理由ア及び理由(1)について
拒絶理由は、概要、(b)アルデヒドの供給源(又はアルデヒド)、(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物について、 その種類及び使用量によっては、本願発明1の発明が解決しようとする課題を解決できないことは明らかであるから、本願発明1は、当業者が上記課題を解決することができると認識できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載したものということはできず、本願発明2?14(理由(1)については本願発明2?16)についても同様である、というものであるところ、補正により、(b)アルデヒドの供給源、(c)少なくとも一の活性水素を有する第一級及び/又は第二級モノアミン化合物について、発明の詳細な説明に具体的に記載された物質に特定され、また、それらの使用量について、発明の詳細な説明に、各種使用量において上記課題の解決に関連するといえるテトラプロペニルフェノールが低減されることが具体的に示されているから、本願発明1?14は、発明が解決しようとする課題を解決することができるといえ、この理由は解消している。

理由イ及び理由(2)について
拒絶理由は、概要、「組成物」に係る発明について、発明の詳細な説明には、専ら当該組成物について潤滑油組成物に使用することが記載されているのみであり、それ以外の用途についての記載はなく、潤滑油組成物以外のあらゆる用途に用いることができるという技術常識もないから、かかる発明は、当業者が発明が解決しようとする課題を解決することができると認識できる範囲を超えるものであり、発明の詳細な説明に記載したものということはできないというものであるところ、補正により、組成物について、潤滑油組成物用であることが特定されたから、発明が解決しようとする課題を解決することができるといえ、この理由は解消している。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1?13は、引用文献1?9に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえず、当業者が引用文献1?9に記載された発明及び引用文献1?9に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。また、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しないから同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえず、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないということもできない。
したがって、原査定の拒絶理由及び当審において通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2014-550451(P2014-550451)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (C10M)
P 1 8・ 113- WY (C10M)
P 1 8・ 121- WY (C10M)
P 1 8・ 537- WY (C10M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 憲彦  
特許庁審判長 守安 智
特許庁審判官 冨永 保
加藤 幹
発明の名称 後処理されたアルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の硫化塩  
代理人 特許業務法人浅村特許事務所  

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