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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1331831
審判番号 不服2015-21631  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-04 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2014- 54405「ゲームシステム、記憶制御装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 5日出願公開、特開2015-173930、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年3月18日付けの特許出願であって、原審において平成27年6月5日付けで拒絶理由が通知され、同年8月6日付けで手続補正がされ、同年同月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 同年9月8日。)がされ、これに対して、同年12月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成29年4月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対して指定期間内の同年6月14日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願の発明
本願の請求項1ないし9に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成29年6月14日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1のゲームを実行する第1のゲーム端末と、第2のゲームを実行する第2のゲーム端末と、サーバ装置と、を含むゲームシステムであって、
前記第1のゲーム端末に含まれる記憶手段に記憶された、前記第1のゲームのセーブデータを取得する手段と、
前記第2のゲーム端末において実行される前記第2のゲームが前記第1のゲーム端末のユーザによってプレイされたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記第2のゲームが前記ユーザによりプレイされたと判定されない場合、前記記憶手段に記憶された、前記ユーザによりプレイされた前記第1のゲームのセーブデータを前記サーバ装置に記憶させず、前記判定手段により前記第2のゲームが前記ユーザによりプレイされたと判定された場合、前記ユーザによりプレイされた前記第1のゲームのセーブデータを前記サーバ装置に記憶させるための制御を実行する記憶制御手段と、
を含むことを特徴とするゲームシステム。」

なお、本願発明2ないし7は、本願発明1を引用し、これを更に減縮した発明であり、本願発明8は、本願発明1に対応する「記憶制御装置」の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なる発明であり、本願発明9は、本願発明1ないし7、本願発明8を引用する「コンピュータを機能させるためのプログラム」に係る発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2014-45815号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(以下の下線は、いずれも審決で付した。なお、引用文献2以下の下線も同様である。)
「【0006】
本発明のゲームシステムは、第1のゲームを実行するゲーム装置(4)と、前記第1のゲームと連携する第2のゲームをプレイ可能なユーザ端末装置(3)と、前記ユーザ端末装置に対して前記第2のゲームに関するサービスを提供し、前記ゲーム装置及び前記ユーザ端末装置に対して前記第1及び第2のゲームの進行に必要なプレイデータを提供するサーバ装置(2)と、を備えたゲームシステム(1)であって、前記第1及び第2のゲームのうち少なくともいずれか一方のゲームをプレイする複数のユーザで構成されるユーザ群で共有するように設けられ、前記ユーザ群の各ユーザがプレイする前記第1及び第2のゲームのプレイ内容に応じて記述されるユーザ群共有プレイデータ(53)が記憶されるプレイデータ記憶手段(23)と、前記第2のゲームをプレイするユーザのプレイ内容に応じて、そのユーザが含まれているユーザ群の前記ユーザ群共有プレイデータを更新するデータ更新手段(21)と、前記ユーザ群共有プレイデータに応じて、前記ユーザ群に含まれるユーザがプレイする前記第1のゲームを制御する第1ゲーム制御手段(41)と、を備えたことにより上記課題を解決する。」
「【0018】
センターサーバ2は、ユーザ端末3、ゲーム機4、ユーザ及びオペレータに対し、ネットワーク5を介して各種のサービスを提供する。例えば、センターサーバ2は、ネットワーク5を介してアクセスするユーザ端末3に各種のWebサービスを提供する。Webサービスとしては、例えば、ユーザ端末3からのアクセスに対して所定のモバイルゲームをプレイさせるサービス、ユーザ端末3又はゲーム機4にて実行されるべきゲームに関する各種の情報をユーザに提供するゲーム情報サービス等がある。また、センターサーバ2は、ゲーム機4又はそのユーザに対して各種のゲーム機用サービスを提供する。ゲーム機用サービスとしては、例えば、ゲーム機4からユーザの識別情報を受け取ってそのユーザを認証し、所定のアーケードゲームをプレイさせるサービス、ネットワーク5を介してゲーム機4のプログラムあるいはデータを更新するサービス等がある。アーケードゲームが第1のゲームに相当し、モバイルゲームが第2のゲームに相当する。」
「【0028】
図4は、ゲームシステム1のセンターサーバ2、ユーザ端末3及びゲーム機4に関する制御系の主要部の構成を説明する機能ブロック図である。センターサーバ2には、モバイルゲーム管理部21、アーケードゲーム管理部22及び記憶部23が設けられる。管理部21、22は、センターサーバ2のコンピュータハードウエア(CPU及びその動作に必要な内部記憶装置としてのメモリを含む。)とソフトウエアとの組合せによって実現される論理的装置である。プレイデータ記憶手段としての記憶部23は、ハードディスクアレイ等の記憶ユニットによって実現される外部記憶装置である。記憶部23は、一の記憶ユニット上に全てのデータを保持するように構成されてもよいし、複数の記憶ユニットにデータを分散して記憶するように構成されてもよい。記憶部23には各種のデータが記憶されるが、図4ではモバイルプレイデータ51、アーケードプレイデータ52及びバンドプレイデータ53が示されている。モバイルプレイデータ51及びアーケードプレイデータ52は、ユーザがゲームを続きからプレイするためにゲームのプレイ内容を保存したデータである。プレイデータ51、52は、ユーザ毎に作成され、ユーザの識別情報と対応付けて記憶部23に記録される。バンドプレイデータ53は、バンドグループを構成する各ユーザが共有するデータとしてバンドグループ毎に設けられる。各プレイデータ51?53の詳細は後述する。モバイルプレイデータ51が第1プレイデータに相当し、アーケードプレイデータ52が第2プレイデータに相当し、バンドプレイデータ53がユーザ群共有プレイデータに相当する。」
「【0030】
ユーザ端末3には、モバイルゲーム処理部31及び記憶部32が設けられる。モバイルゲーム処理部31は、ユーザ端末3のコンピュータハードウエア(CPU及びその内部記憶装置としてのメモリを含む。)とソフトウエアとの組合せによって実現される論理的装置である。記憶部32は、ハードディスクアレイ等の記憶ユニットによって実現される外部記憶装置である。モバイルゲーム処理部31は、センターサーバ2のモバイルゲーム管理部21が提供するモバイルゲームとそれに付随するサービスを享受するために必要な処理を実行する。例えばモバイルゲーム処理部31は、モバイルゲーム管理部21と協働して、ユーザにモバイルゲームをプレイさせるために必要な処理を実行する。記憶部32は、モバイルゲーム処理部31にて実行されるべきモバイルゲーム用プログラム及びそのプログラムが参照すべき各種のデータを記憶する。一例として、モバイルゲームの実行時には、ユーザに対応付けられたモバイルプレイデータ51及びバンドプレイデータ53の少なくとも一部がセンターサーバ2からユーザ端末3に提供されて記憶部32に記録される。」

上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認定できる。
「第1のゲーム(アーケードゲーム)を実行するゲーム装置4と、第2のゲーム(モバイルゲーム)をプレイ可能なユーザ端末装置3と、前記ユーザ端末装置3に対して前記第2のゲームに関するサービスを提供し、前記ゲーム装置4及び前記ユーザ端末装置3に対して前記第1及び第2のゲームの進行に必要なプレイデータを提供するサーバ装置(センターサーバ)2と、を備えたゲームシステム1であって、
センターサーバ2には、プレイデータ記憶手段としての記憶部23が設けられて各種のデータが記憶され、当該記憶されるデータにはユーザがモバイルゲームを続きからプレイするためにゲームのプレイ内容を保存したデータであるモバイルププレイデータ51が含まれており、
ユーザ端末装置3には、ユーザにモバイルゲームをプレイさせるために必要な処理を実行するモバイルゲーム処理部31、及びモバイルゲーム処理部31にて実行されるべきモバイルゲーム用プログラム及びそのプログラムが参照すべき各種のデータを記憶する記憶部32が設けられる
ゲームシステム1。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2012-217861号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0138】
図24に、インフォメーションサービスプロバイダ(Information Service Provider)アーキテクチャの実施形態を示す。インフォメーションサービスプロバイダ(ISP)1370は、地理的に分散しており、かつ、ネットワーク1386を介して接続されているユーザ1382に大量の情報を提供する。・・・」
「【0144】
ストレージサービスプロバイダ(Storage Service Provider;SSP)1378は、コンピュータストレージスペースおよび関連する管理サービスを提供する。SSPはさらに、定期的なバックアップと保存を行う。サービスとしてストレージを提供することで、必要に応じてユーザはより多くのストレージをオーダーすることができる。別の主な利点としては、各SSPにおいてバックアップサービスが行われることであり、コンピュータのハードドライブが故障した場合であってもユーザは全てのデータを失うことはない。さらに、複数のSSPによりユーザデータの全体あるいは一部のコピーが保有されるので、ユーザは居場所に関係なく、あるいは、データのアクセスに使用されるデバイスに関係なく、効率的にデータにアクセスすることができる。例えば、ユーザは家庭用コンピュータの個人ファイルにアクセスできるほか、移動中に携帯電話にアクセスできる。」
図24の記載から、「インフォメーションサービスプロバイダには、ストレージサービスプロバイダが包含されている」と看取できる。
また、上記段落【0144】の記載から、「定期的なバックアップと保存を行うものは、コンピュータのデータである」ことは、明らかである。

以上のとおり、上記引用文献2には、「インフォメーションサービスプロバイダに包含されるストレージサービスプロバイダが、コンピュータのデータの定期的なバックアップや保存等を行うことによって、コンピュータのハードドライブが故障した場合であってもユーザは全てのデータを失うことはない」という技術事項(以下「引用文献2の技術事項」という。)が記載されている。

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2009-207718号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、固定ビデオゲーム機のゲーム画面に表示されるべき各種参考情報を、携帯電話機を用いてWEBページ上で容易に閲覧できるようにしたゲームシステムに関する。
より具体的には、ゲームセンター等に設置された業務用の筐体型ビデオゲーム機や家庭用のビデオゲーム機(本願において「固定ビデオゲーム機」という。)で行われるゲームにおいて、操作方法や各場面における攻略情報、バックグラウンドストーリーの解説など、様々な付加的情報(本願において「参考情報」という。)を携帯電話機でWEBページへアクセスして閲覧することができるように、当該WEBページヘアクセスするためのコードパターンをゲーム機の画面に表示するようにし、携帯電話機でそのコードパターンを撮影してWEBページへアクセスすることにより目的とする参考情報を閲覧できるようにし、これにより、ゲーム画面での参考情報提供のための表示占有面積を最小限に抑えながら、十分な情報をプレイヤーや周囲の人々へ提供することが可能なビデオゲームシステムに関するものである。」
「【0040】
本発明は上記の如く構成されるので、本発明によるときは、固定ビデオゲーム機におけるゲームの諸場面で表示されるべき各種参考情報を、当該固定ビデオゲーム機のゲーム画面に表示することなく、プレイヤーが所持する携帯電話機のディスプレイ画面に表示できるようにしたゲームシステムを提供し得るものであるから、プレイヤーはゲームのプレイ中に各種参考情報を迅速に閲覧できると共に、ゲーム機の画面に多くの参考情報を表示しなくても済むためゲーム機画面の迫真力を保つことも可能となる等々、産業上多大の利用価値を有するものである。」

以上のとおり、上記引用文献3には、「業務用の筐体型ビデオゲーム機や家庭用のビデオゲーム機等の固定ビデオゲーム機で行われるゲームにおいて、操作方法や各場面における攻略情報、バックグラウンドストーリーの解説など、様々な付加的情報(参考情報)を携帯電話機のディスプレイ画面に表示することにより閲覧できるようにする」という技術事項(以下「引用文献3の技術事項」という。)が記載されている。

第4 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「第2のゲーム(モバイルゲーム)をプレイ可能なユーザ端末装置3」は前者の「第1のゲームを実行する第1のゲーム端末」に相当し、以下同様に、「第1のゲーム(アーケードゲーム)を実行するゲーム装置4」は「第2のゲームを実行する第2のゲーム端末」に、「サーバ装置(センターサーバ)2」は「サーバ装置」に、「(ユーザ端末装置3に設けられた)記憶部32」は「第1のゲーム端末に含まれる記憶手段」に、「ゲームシステム」は「ゲームシステム」に、それぞれ相当する。
また、後者では「センターサーバ2には、プレイデータ記憶手段としての記憶部23が設けられ、記憶部23には各種のデータが記憶され、当該記憶されるデータにはユーザがモバイルゲームを続きからプレイするためにゲームのプレイ内容を保存したデータであるモバイルププレイデータ51が含まれ」としているが、「ユーザがモバイルゲームを続きからプレイするためにゲームのプレイ内容を保存したデータであるモバイルププレイデータ51」は、前者における「第1のゲームのセーブデータ」に相当する。そして、「モバイルププレイデータ51」が、センターサーバ2に設けられた「記憶部23」に記憶されている以上、後者のゲームシステムも、前者における「第1のゲーム端末に含まれる記憶手段に記憶された、第1のゲームのセーブデータを取得する手段」と「ユーザによりプレイされた第1のゲームのセーブデータをサーバ装置に記憶させるための制御を実行する記憶制御手段」に相当するものを含んでいるといえる。

したがって、両者は、
「第1のゲームを実行する第1のゲーム端末と、第2のゲームを実行する第2のゲーム端末と、サーバ装置と、を含むゲームシステムであって、
前記第1のゲーム端末に含まれる記憶手段に記憶された、前記第1のゲームのセーブデータを取得する手段と、
前記ユーザによりプレイされた前記第1のゲームのセーブデータを前記サーバ装置に記憶させるための制御を実行する記憶制御手段と、
を含むゲームシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点] 本願発明は、「第2のゲーム端末において実行される第2のゲームが第1のゲーム端末のユーザによってプレイされたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記第2のゲームが前記ユーザによりプレイされたと判定されない場合、前記記憶手段に記憶された、前記ユーザによりプレイされた前記第1のゲームのセーブデータを前記サーバ装置に記憶させず、前記判定手段により前記第2のゲームが前記ユーザによりプレイされたと判定された場合、(前記ユーザによりプレイされた前記第1のゲームのセーブデータを前記サーバ装置に記憶させるための制御を実行する記憶制御手段)」とを、含むのに対し、引用発明は判定手段を含んでおらず、第1のゲーム端末のユーザによって第2のゲーム端末において第2のゲームがプレイされたか否かにかかわらず、第1のゲームのセーブデータをサーバ装置に記憶させるための制御が実行する記憶制御手段を含む点。

2.相違点についての判断
上記の相違点について検討すると、引用文献2及び3の技術事項には、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を開示、あるいは示唆するものが存在しない。また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項、特に、第2のゲームが(第1のゲーム端末のユーザにより)プレイされたと判定されない場合は、第1のゲームのセーブデータを「サーバ装置に記憶させず」、第2のゲームが前記ユーザによりプレイされたと判定された場合に、第1のゲームのセーブデータをサーバ装置に記憶させる制御を実行するとの事項が当業者にとって通常の設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は上記相違点に係る発明特定事項を備えることによって、「携帯型ゲーム端末100からセーブデータが消えてしまったり、ユーザが携帯型ゲーム端末100を新しく買い替えたりした場合に、それまでの続きからサブゲームをプレイさせることができ」、「第1のゲームを実行する第1のゲーム端末のユーザに第2のゲームもプレイするように誘導することが可能」になるという作用効果を奏しうるものである(段落【0120】【0005】参照。)。
したがって、本願発明1は、引用発明、並びに引用文献2及び3の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明2ないし7、8、9について
本願発明2ないし7も、本願発明1の上記相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1についてと同様の理由で、引用発明、並びに引用文献2及び3の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、本願発明8は「記憶制御装置」に係る発明であるが、上記相違点に係る本願発明1の「記憶制御手段」と実質的に同じ記憶制御手段を含む発明であり、本願発明9は、本願発明1ないし7、及び本願発明8を引用する「コンピュータを機能させるためのプログラム」に係る発明であるから、本願発明1についてと同様の理由で、引用発明、、並びに引用文献2及び3の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定に係る拒絶理由の概要は、原査定時における請求項1ないし6、8及び9に係る発明は、上記引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかし、平成29年6月14日付けの手続補正に係る本願発明は、上記のとおり、引用発明、並びに引用文献2及び3の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.当審で通知した拒絶理由の概要
当審では、平成29年4月12日付けで、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとして拒絶理由を通知したが、その概要は次のとおりである。
(1)発明(ゲームシステム、記憶制御装置)の全体的な構成について
・請求項1について
第1のゲーム端末、第2のゲーム端末、サーバ装置の関係が明りょうに示されておらず、「ゲームシステム」の全体的な構成が明確ではない。
・請求項8について
上記と同様に、請求項8に係る「記憶制御装置」の全体的な構成も明確ではない。
(2)発明の目的と効果について
本願の発明(特に、請求項1、8の発明)の発明特定事項と、発明の目的及び効果との対応関係が不明である。
発明の詳細な説明の記載によれば、本願の発明の目的は、「一人のユーザに複数のゲーム(第1のゲームと第2のゲーム)をプレイさせるゲームシステム」において、「第1のゲームをプレイするユーザに、第2のゲームもプレイさせること」にある(段落【0002】、【0005】参照。)とされている。
また、同じく発明の詳細な説明(段落【0118】参照。)の記載によれば、「本編ゲーム(第2のゲーム)が携帯型ゲーム端末100のユーザによってプレイされたか否かの判定結果に基づいてサブゲーム(第1のゲーム)のセーブデータを記憶させるための制御が実行されるので、サブゲーム(第1のゲーム)をプレイするユーザに、本編ゲームもプレイするように誘導することができる」とされている。
しかし、第1のゲームのセーブデータは、もともと、携帯型ゲーム端末100の記憶部102(データ記憶部10)に記憶されるのであるから(段落【0035】、【0097】参照。)、第1のゲームをプレイするユーザにとって、第1のゲームのセーブデータを「サーバ装置に記憶させる」べき格別の必要性は認められず、上記の発明特定事項が第2のゲームもプレイしようとする誘導要因になるとは考え難い。

2.当審拒絶理由についての検討
(1)上記の請求項1、8に係る発明の全体的な構成が明確ではないとの指摘に対して、平成29年6月14日付けの手続補正書によって、当該各請求項について次の補正がなされた。
・上記補正前の請求項1の冒頭に、「第1のゲームを実行する第1のゲーム端末と、第2のゲームを実行する第2のゲーム端末と、サーバ装置と、を含むゲームシステムであって、」という記載が加入された。
・上記補正前の請求項8の冒頭に、「第1のゲームを実行する第1のゲーム端末、及び、第2のゲームを実行する第2のゲーム端末とネットワークを介して通信可能な記憶制御装置であって、」という記載が加入されると共に、「サーバ装置」が「前記記憶制御装置に含まれる記憶手段又は外部のサーバ装置」であることを明確にするための記載が加入された。

上記の補正は発明の詳細な説明(段落【0011】、【0067】、【0143】ないし【0150】)、及び図1の記載等に基づいてなされたものであり、当該補正がなされた結果、請求項1に係る「ゲームシステム」、及び請求項8に係る「記憶制御装置」の全体的な構成は明確になったと認められる。

(2)また、本願の発明(特に、請求項1、8の発明)の発明特定事項と、発明の目的及び効果との対応関係が不明であるとの指摘に対しては、平成29年6月14日付けの意見書において、概略、次のような釈明がなされた。
「本願明細書の第[0120]段落に「例えば、携帯型ゲーム端末100からセーブデータが消えてしまったり、ユーザが携帯型ゲーム端末100を新しく買い替えたりした場合」と記載されているように、第1のゲーム端末に第1のゲームのセーブデータが記憶されていたとしても、何らかの原因でセーブデータが消えてしまったり、第1のゲーム端末を買い替えたりすることは、よくあることだと思料致します。このような場合であったとしても、例えばサーバ装置にセーブデータを記憶させておけば、当該セーブデータをダウンロードすることで、第1のゲームを続きからプレイすることができる(初めからやり直さなくて済む)ので、ユーザにとってメリットがあると思料致します。
本願発明によれば、請求項1,8に記載の記憶制御手段を採用したことにより、ユーザが第2のゲームをプレイすれば、その見返りとして上記メリットがユーザに提供されます。一方、ユーザが第2のゲームをプレイしなかったとしたら、上記メリットはユーザに提供されません。このため、ユーザは上記メリットを受けるべく第2のゲームをプレイすることになり、第2のゲームをプレイする動機付けをユーザに与えるので、第2のゲームをプレイするように誘導することができると思料致します。」(第1頁下から第2行(第2頁第12行)

そこであらためて検討すると、上記の「(本願の発明に係る発明特定事項は)ユーザにとってメリットがある」とする釈明を否定するべき格別の理由はなく、本願の発明に係る発明特定事項と目的・効果との対応関係は、上記の釈明により、一応は明らかにされたといえる。

(3)上記の手続補正と釈明がなされたことにより、当審において指摘した拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-28 
出願番号 特願2014-54405(P2014-54405)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 537- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 畑井 順一
黒瀬 雅一
発明の名称 ゲームシステム、記憶制御装置、及びプログラム  
代理人 特許業務法人はるか国際特許事務所  

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