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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65H
管理番号 1331854
審判番号 不服2016-3587  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-08 
確定日 2017-08-24 
事件の表示 特願2013-503580「回路接続用テープ、接着剤リール、積層テープの回路接続材料としての使用、積層テープの回路接続材料の製造のための使用及び回路接続体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年9月13日国際公開、WO2012/121292〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年3月7日(国内優先権主張 優先日:平成23年3月9日)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 1月 9日 審査請求
平成27年 7月17日 拒絶理由通知
平成27年 9月28日 意見書・手続補正
平成27年12月 2日 拒絶査定
平成28年 3月 8日 審判請求・手続補正
平成29年 1月20日 拒絶理由通知
平成29年 3月23日 意見書・手続補正

第2 当審の判断
1 補正内容
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成29年3月23日付けで補正された特許請求の範囲における,請求項1に記載された事項によって特定されるべきものであり,その記載は次のとおりである。
「テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと,前記回路接続用テープが巻かれた巻芯とを備える接着剤リールであって,
前記接着剤層の表面のみに形成され,滑り止め加工が施されたエンドマークが設けられており,
前記エンドマークと前記基材との最大静止摩擦力は,0.981N以上であることを特徴とする接着剤リール。」

2 刊行物に記載された事項
(1)刊行物1
平成29年1月20日付け拒絶の理由に引用し,本願の優先日前である平成13年10月12日に頒布された特開2001-284005号公報(以下「刊行物1」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。他の下線についても同じ。)
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,例えば液晶パネル,PDPパネル,ELパネル,ペアチップ実装などの電子部品と回路板,回路板同士を接着固定すると共に,両者の電極同士を電気的に接続する異方導電材テープに関し,特にリールに巻かれた異方導電材の巻き芯部付近に設けた自動検出のためのエンドマークに関する。」

イ「【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は,基材に塗布されたアクリル系接着剤からなる異方導電材テープにおいて,自動検出のためのエンドマークをアクリル系接着剤上に設けられたゴム系粘着テープとした異方導電材テープである。そして,エンドマークの厚みとして,ゴム系粘着テープの基材と粘着剤の総厚みを250μm未満とすると好ましい異方導電材テープである。異方導電材テープの基材a(3)に塗布されたアクリル系接着剤(2)を用いた異方導電材テープ(1)において,自動機において異方導電材テープの欠乏を知らせるためセンサーにより感知するエンドマーク(4)としてアクリル系接着剤(2)上にゴム系粘着材(5)と基材b(6)から構成されるゴム系粘着剤テープを設けることにより,異方導電材テープのアクリル系接着剤と相溶することなく,エンドテープの欠落や異方導電材テープの異方導電材の基材背面への転写を防止する事が可能となる。エンドマーク(4)の厚みは,ゴム系粘着テープの基材b(6)とゴム系粘着剤(5)の総厚みが250μm未満,好ましくは100μm以下,より好ましくは,70μm以下とすることにより,異方導電材テープの巻き締まりによる異方導電材と粘着剤の側面への流失を防ぎ,エンドテープの欠落及び異方導電材テープの異方導電材の基材背面への転写を防止する事が更に向上する。」

ウ「【0005】
【発明の実施の形態】本発明を図面を参照しながらさらに具体的に説明する。図1は本発明の一実施例を説明する断面模式図である。図2,図3は,図1の各部の拡大図である。本発明の異方導電材テープ(1)は,基材a(3)上に塗布された異方導電性のアクリル系接着剤(2)からなり,高精細化された電子部品の接続に用いられるため無機及び有機物の異物及び汚染を防ぐため,基材aが接着剤の外側となる構造を示している。本発明に用いられる異方導電材は,被接続体の反り及び伸びを防ぐために接続温度の低温化が可能で,また,接続時のタクトタイムの短時間化が可能である反応性の高いアクリル系接着剤を使用する。さらに,本発明の異方導電材テープに用いられる基材は,強度及び異方導電材を構成する接着剤の剥離性の面からOPP(延伸ポリプロピレン),ポリテトラフルオロエチレン,シリコン処理したPET(ポリエチレンテレフタレート)などを用いるが,これらに制限するものではない。異方導電材を用いた接続は用途及び需要拡大に伴い,オ-トメション化され,異方導電材の欠乏,すなわち異方導電材がなくなっていることを知らせるため,アクリル系接着剤(2)上にエンドマーク(4)を付けて検知するようにしている。」

刊行物1の上記記載事項を含め,刊行物1の全記載を総合すると,刊行物1には以下の事項(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「回路板同士を接着固定すると共に,両者の電極同士を電気的に接続する異方導電材テープであって,
該異方導電材テープは,基材a(3)上に塗布された異方導電性のアクリル系接着剤(2)からなり,
リールに巻かれた異方導電材の巻き芯部付近には,自動検出のためのエンドマークが設けられ,
該エンドマークは,前記アクリル系接着剤(2)上にゴム系粘着材(5)と基材b(6)から構成されるゴム系粘着剤テープを付けたものである異方導電材テープ」

(2)刊行物2
平成29年1月20日付け拒絶の理由に引用し,本願の優先日前である平成22年10月7日に頒布された特開2010-222144号公報(以下「刊行物2」という。)には,図面とともに,以下の事項が記載されている。
エ「【0001】
本発明は,テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと,この回路接続用テープが巻かれる巻芯とを備えた接着材リールに関する。」

オ「【0028】
次に,異方導電テープ5の終端部5aの構成について,図4を参照しながら説明する。図4に示すように,異方導電テープ5の終端部5aは,エンドテープ12,カバーテープ14及び粘着テープ16によって構成されている。
【0029】
エンドテープ12は,異方導電テープ5と巻芯1とを連結するテープであり,その終端部12aは巻芯1の外面1aに固定されている。終端部12aと外面1aの固定は,両面テープ(例えば,寺岡製作所のもの)を用いて行うことができる。他方,エンドテープ12の先端部12bは,カバーテープ14及び粘着テープ16によって,異方導電テープ5の終端部5aと接合されている。」

カ 「【0032】
エンドテープ12は,少なくとも一方の面に滑り止め加工が施されていることが好ましい。これにより,巻芯1上に巻かれた状態で互いに当接するエンドテープ12の外面と内面との間で滑りが生じにくくすることができる。その結果,所望の長さの異方導電テープ5を十分に高い精度で引き出すことが可能となる。滑り止め加工は,エンドテープ12の長さが1m以上である場合に特に有用である。なお,滑り止め加工の具体例として,エンドテープ12の表面に対するエンボス加工や当該表面へのゴムなどの塗布が挙げられる。」

キ「【0059】
例えば,上記実施形態では,異方導電テープ5の量が残り僅かであることを検知するため,カバーテープ14と接着剤層8との間に色相差を設ける場合を例示したが,エンドテープ12と基材6又は接着剤層8との間に色相差を設けてもよい。例えば,エンドテープ12として黒色のものを使用してもよい。あるいは,エンドテープ12の表面と裏面との間で色相差を設けるなどしてもよい。」

刊行物2の上記記載事項を含め,刊行物2の全記載を総合すると,刊行物2には以下の事項(以下,「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。
「テープ状の基材6及びその一方面上に形成された接着剤層8を有する回路接続用テープ5と,この回路接続用テープ5が巻かれる巻芯1とを備えた接着材リール10であって,
異方導電テープ5の終端部5aは,エンドテープ12,カバーテープ14及び粘着テープ16によって構成され,
該エンドテープ12は,少なくとも一方の面に滑り止め加工が施されて,所望の長さの異方導電テープ5を十分に高い精度で引き出すことが可能であり,
異方導電テープ5の量が残り僅かであることを検知するために,エンドテープ12と基材6又は接着剤層8との間に色相差を設けた接着材リール。」

3 対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
後者の「回路板同士を接着固定すると共に,両者の電極同士を電気的に接続」する「異方導電材テープ」は,「基材a(3)」上に塗布された「(異方導電性の)アクリル系接着剤(2)」からなるものであるから,後者の「異方導電材テープ」は,前者の「回路接続用テープ」に相当し,以下同様に「基材a(3)」は,「基材」に,「(異方導電性の)アクリル系接着剤(2)」は「接着剤層」に相当する。
後者の「エンドマーク」は,前者の「エンドマーク」に相当する。
後者の「異方導電材テープ」は,巻き芯部を有するリールに巻かれていることから,前者の「回路接続用テープが巻かれた巻芯とを備える接着剤リール」に相当する構成となっていることは自明である。
以上のことより,両者は,
〈一致点〉
「テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープと,前記回路接続用テープが巻かれた巻芯とを備える接着剤リールであって,
前記接着剤層の表面のみに形成されたエンドマークが設けられた接着剤リール。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
<相違点>
相違点1
エンドマークに関して,本願発明は「滑り止め加工が施」されているのに対して,刊行物1発明では,その点については明らかではない点。

相違点2
エンドマークに関して,本願発明は「エンドマークと基材との最大静止摩擦力は,0.981N以上」であるのに対して,刊行物1発明では,その点については明らかではない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
相違点1について
刊行物2発明には,テープ状の基材及びその一方面上に形成された接着剤層を有する回路接続用テープであって,異方導電テープ5の終端部5aには,少なくとも一方の面に滑り止め加工が施されたエンドテープ12が備えられている点が記載されている。
ここで,刊行物2発明の「エンドテープ12」は,「異方導電テープ5の終端部5a」であって、「異方導電テープ5の量が残り僅かであることを検知するため」に設けられるものであるから、本願発明の「エンドマーク」に相当する。
また、刊行物2の段落【0032】に「エンドテープ12は,少なくとも一方の面に滑り止め加工が施されていることが好ましい。これにより,巻芯1上に巻かれた状態で互いに当接するエンドテープ12の外面と内面との間で滑りが生じにくくすることができる。その結果,所望の長さの異方導電テープ5を十分に高い精度で引き出すことが可能となる。」と記載されているとおり,刊行物2発明のエンドテープに設けられた滑り止め加工は,回路接続用テープが巻回された状態において,エンドテープと,該エンドテープに接する次の巻層のエンドテープとの間に生じる摩擦力を大きくすることで,当該箇所での滑りを生じにくくするためのものである。
してみると、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、刊行物2発明に示されている。
そして,刊行物1発明のエンドマークも,刊行物2発明のエンドテープも,回路接続用テープの終端部(巻芯側)近傍に設けられること,回路接続用テープの終端を検出するために設けられたものであることで共通しており,刊行物2発明のエンドテープの滑り止め加工を刊行物1発明のエンドマークに適用して,相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることに,なんら技術的困難性はなく,その結果,格別な作用効果が生じているものでもない。

相違点2について
本願発明は,「エンドマーク」が設けられた接着剤リールに係るものであるから,「エンドマーク」に関して,本願の発明の詳細な説明に記載された実施例及び比較例は,【表1】の実施例1,実施例3及び実施例4,【表2】の比較例2となる。
そして,エンドマークと基材との間の摩擦力は,それぞれ150,600,900,150(単位は,gf)であって,特に,本願発明で限定された数値である「0.981N(100gf)以上」について,該数値の臨界的意義を示すものではない。
また,本願発明で限定された数値である「0.981N(100gf)以上」とするための根拠について,本願明細書に記載はなく,示唆もされない。
一般に,巻回されたテープ状物を引き出す際に,テープの背面と,その上に積層された次層のテープとの間で滑りが発生し,これによりリールが空回りする空回りという現象があることは広く知られた周知の技術的課題であり,その際,積層されたテープ間の摩擦力が大きいほど空回りが発生にくくなることは常識である。
したがって,本願発明において,「最大静止摩擦力は,0.981N」であると,その下限値を定めたことは,巻回されたテープ状物を引き出すにあたり,周知の技術的課題を解消するために,常識を踏まえて,当業者が適宜定める程度の数値範囲を限定したに過ぎない。
そして,「最大静止摩擦力は,0.981N」であれば,出願人が主張する効果が奏されるものであるかは,明細書を参酌しても不明であるし,「最大静止摩擦力は,0.981N」とすることに,格別の技術的困難性があったとも認められない。
したがって,相違点2に係る本願発明の発明特定事項については,刊行物1発明及び2発明から当業者が容易に想到し得たものである。
また,本願発明の発明特定事項全体によって奏される作用効果も,刊行物1及び2発明から,当業者が予測しうる程度のものである。

第3 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1及び2発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-20 
結審通知日 2017-06-27 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2013-503580(P2013-503580)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 眞吾  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 古田 敦浩
吉村 尚
発明の名称 回路接続用テープ、接着剤リール、積層テープの回路接続材料としての使用、積層テープの回路接続材料の製造のための使用及び回路接続体の製造方法  
代理人 清水 義憲  
代理人 平野 裕之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 阿部 寛  
代理人 中山 浩光  

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