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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1331864
審判番号 不服2016-13613  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-12 
確定日 2017-08-24 
事件の表示 特願2012-126594「情報処理装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月12日出願公開、特開2013-250900〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月1日の出願であって、平成27年1月28日付けで手続補正がされ、平成27年12月8日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月15日付けで手続補正がされたが、平成28年6月10日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成28年9月12日に審判請求がされ、平成29年3月24日付けで当審により拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成29年5月29日付けで手続補正がされたものである。

第2 当審拒絶理由の概要
1.本件出願の請求項1-6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2012-93985号公報
引用文献2:特開2011-237945号公報

2.本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。


本願請求項1-5に記載された「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」、請求項6に記載された「前記表示領域及び前記非表示領域において操作可能なタッチパネル部」は、いずれも、発明の詳細な説明には記載されていない。
したがって、請求項1-6に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

3.本件出願の願書に添付した特許請求の範囲についてした平成28年2月15日付けの補正は下記の点で不備なため、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


本願請求項1-5に記載された「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」、請求項6に記載された「前記表示領域及び前記非表示領域において操作可能なタッチパネル部」は、いずれも、平成28年2月15日付けの補正により付加されたものである。
当該補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

第3 当審拒絶理由の2.特許法第36条第6項第1号について
1.請求人の主張
請求人は、平成29年5月29日付けで意見書及び手続補正書を提出し、その手続補正書により、特許請求の範囲を次のように補正した。

「【請求項1】
透明性及び機械的強度を有する2枚の基板を備え、画像を表示する表示領域を有する表示部と、
前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部と、
前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側の、前記タッチパネル部の前記対面領域に略対向する領域に配置されたバックライト部と、
前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側において前記バックライト部が占める領域を除く領域の少なくとも一部に配置された制御基板と、を具備し、
前記タッチパネル部が前記表示部に対して前記対面領域と前記外周領域を含む領域で接合される
情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記タッチパネル部の前記対面領域および前記外周領域が露出するように前記表示部及び前記タッチパネル部を収容する外装部を更に具備する
情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記制御基板が、前記外周領域に略対向する領域に配置される
情報処理装置。
【請求項4】
透明性及び機械的強度を有する2枚の基板を備え、画像を表示する表示領域と当該表示領域より外側の非表示領域とを含む面を有する表示部を形成し、
所定の電極パターンが形成された電極シートのロールラミネーションにより前記表示部の前記面に前記表示領域及び前記非表示領域において操作可能なタッチパネル部を形成し、
前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側の、前記タッチパネル部の前記対面領域に略対向する領域にバックライト部を配置し、
前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側において前記バックライト部が占める領域を除く領域の少なくとも一部に制御基板を配置する
情報処理装置の製造方法。」

そして、請求人の意見書による主張は次のとおりである。

「当業者であれば、本願明細書の段落[0019]、[0022]の記載に加え、図2A?2Cを参照すれば、「外周領域において操作可能」、「非表示領域において操作可能」との構成を当然に理解できます。特に、図2A?2Cに示されたタッチパネル部110が表示領域101及び非表示領域102に渡って設けられた構成は、「外周領域において操作可能」、「非表示領域において操作可能」を直接的、明示的に意味しております。
以上のとおり、本願の請求項1?4に記載された発明は発明の詳細な説明に記載されたものであり、かつ本願の特許請求の範囲についてした補正は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものです。」

2.判断
本件明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。

「【0019】
情報処理装置1は、第1の外装部2に収容されたタッチパネルディスプレイ100を備える。タッチパネルディスプレイ100は、画像を表示する表示領域101と常時黒色である非表示領域102とにより構成される。」

「【0022】
図1Aに示す開状態の情報処理装置1では、タッチパネルディスプレイ100がキーボードユニット8に対して立った姿勢で保持されている。この状態で、ユーザは、タッチパネルディスプレイ100を見ながら、タッチパネルディスプレイ100やキーボードユニット8を操作することができる。タッチパネルディスプレイ100はユーザの指やスタイラスなどの操作子によって操作され、キーボードユニット8はユーザの指によって操作される。」

【0019】には、「タッチパネルディスプレイ100は、画像を表示する表示領域101と常時黒色である非表示領域102とにより構成される。」と記載され、図1A、図2A-図2Cも参照すると、この記載の「表示領域101」、「非表示領域102」は、請求項1-3の「表示領域に対面する対面領域」、「当該対面領域より外側の外周領域」に、また、請求項4の「表示領域」、「当該表示領域より外側の非表示領域」に対応するものであると認められる。また、【0022】には、「タッチパネルディスプレイ100はユーザの指やスタイラスなどの操作子によって操作され、キーボードユニット8はユーザの指によって操作される。」と記載され、タッチパネルディスプレイ100は、最上面にタッチパネル110を備えるから、請求項1-4における「操作可能なタッチパネル部」に対応する記載があると認められる。
しかしながら、これらの記載は、「タッチパネル部」(「タッチパネル110」)の「操作可能な」領域が、請求項4でいう「表示領域」及び「非表示領域領域」(あるいは、請求項1-3でいう「対面領域」及び「外周領域」)の両方の構成であることを示すものではない。タッチパネルディスプレイはディスプレイの表面がタッチパネルになっているものであり、ディスプレイに表示された画像に対してタッチ操作を行うものであるから、画像を表示する表示領域に対する操作が可能というのは自明といえるかもしれないが、表示領域の外側の非表示領域に対する操作が可能であることは自明であるとはいえない。
また、図2A-図2Cには、本件発明の実施形態であるタッチパネルディスプレイ100の平面図、断面図が記載されており、「タッチパネル110が表示領域101及び非表示領域102にわたって設けられた構成」が示されているが、図2Bの断面A-A’及び図2Cの断面B-B’のいずれにおいても、タッチパネルディスプレイ100の表示領域101では、第1の電極116aと第2の電極114aが形成され、非表示領域102では、第1の引き出しパターン116bと第2の引き出しパターン114bのみが形成されている。したがって、表示領域101では、第1の電極116aと第2の電極114aを用いてタッチ位置の検出ができる、すなわち、操作が可能であることが記載されているが、非表示領域102では、第1の引き出しパターン116bと第2の引き出しパターン114bが形成されていることが看てとれるのみであって、タッチ位置を検出するための電極は記載されていないから、図2A-図2Cを参照しても、非表示領域102において操作が可能であることが記載されているとはいえない。
さらに、発明の詳細な説明のその他の部分にも、請求項1-3の「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」、及び、請求項4の「前記表示領域及び前記非表示領域において操作可能なタッチパネル部」は記載されていない。

なお、発明の詳細な説明の【0028】、【0029】には、次の記載がある。
「【0028】
この要請に応じ、タッチパネルディスプレイ100では、表示領域101の外側の非表示領域102がベゼル部2aから所定の離間距離をもって露出する構成とされる。表示領域101と非表示領域102との間が平滑である。
【0029】
この構成により、ユーザが表示領域101の端部においてスワイプ操作をする際に、非表示領域102と表示領域101との間をシームレスに指を移動させることができる。すなわち、スワイプ操作の際に、指がベゼル部に当たり、引っかかりのような違和感を覚えることがなく、操作感を向上させることができる。なお、非表示領域102のベゼルからの離間距離を大きくするために、第1の外装部2のベゼル部2aの幅を狭くする構成としてもよい。」
この記載により、請求項4の「前記表示領域及び前記非表示領域において操作可能な」こと(あるいは、請求項1-3の「前記対面領域及び前記外周領域において操作可能な」こと)は、上記【0029】の「非表示領域102と表示領域101との間をシームレスに指を移動させることができる」こと、すなわち、「操作可能」とは、タッチパネル上のタッチ位置を検出して機器等を操作可能であることではなく、単に、指をシームレスに移動させることが可能であることを意味するか否かについて検討する。
「タッチパネル」とは、一般的に、画面上の表示にタッチすることで機器を操作するものを指し、発明の詳細な説明のタッチパネルも同様の意味で用いられている。よって、「タッチパネル」を「操作可能」とは、タッチパネル上のタッチ位置を検出して機器等を操作可能であることを意味していると理解するのは当業者にとって自然なことであり、単に、指をシームレスに移動させることが可能であることを意味しているとするのは特段の事情がない限り自然ではない。
請求人も、審判請求書(第3頁)により、この点について以下のように同様の主張をしている。
「(1)「操作可能」の意味について
・・・(中略)・・・
しかしながら、タッチパネルは、操作子の接触により入力を行う装置であることが広く知られております。したがいまして、「前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」における「操作可能」が、前者(単に、タッチパネル部のタッチ面における外周領域に指で触れることができること)の意味に解釈されることは、社会通念上、有り得ないものと思料いたします。つまり、「前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」における「操作可能」が、後者(タッチパネル部が外周領域においてタッチされた位置を検出できること)を意味することは自明であるものと思料いたします。」
したがって、請求項1-4に記載の「操作可能」とは、タッチパネル上のタッチ位置を検出して機器等を操作可能であることを意味しているといえる。

以上のとおり、平成29年5月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3の「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」、及び、請求項4の「前記表示領域及び前記非表示領域において操作可能なタッチパネル部」は、発明の詳細な説明に記載されていない。
したがって、請求項1-4に記載された発明は、依然として、発明の詳細な説明に記載したものではない。

第4 当審拒絶理由の3.特許法第17条の2第3項について
平成29年5月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3の「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」、及び、請求項4の「前記表示領域及び前記非表示領域において操作可能なタッチパネル部」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面にも記載されておらず、上記手続補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、依然として、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。

第5 当審拒絶理由の1.特許法第29条第2項について
1.本願発明
本願の請求項1-4に係る発明は、平成29年5月29日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

[本願発明]
「透明性及び機械的強度を有する2枚の基板を備え、画像を表示する表示領域を有する表示部と、
前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部と、
前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側の、前記タッチパネル部の前記対面領域に略対向する領域に配置されたバックライト部と、
前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側において前記バックライト部が占める領域を除く領域の少なくとも一部に配置された制御基板と、を具備し、
前記タッチパネル部が前記表示部に対して前記対面領域と前記外周領域を含む領域で接合される
情報処理装置。」

2.引用文献の記載事項
(1)引用文献1、引用発明
当審拒絶理由で引用した引用文献1には、図面(特に、図1)とともに次の技術事項が記載されている。(下線は、当審で付与したものである。)

「【0001】
本発明は、タッチ入力機能を有する表示パネル装置及び該表示パネル装置を構成するためのタッチ入力機能部を含む光学ユニット、並びに、その製造方法に関する。特に、本発明は、静電容量方式のタッチ入力機能を備えた、表示パネル装置及び光学ユニット、並びにその製造方法に関する。」

「【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、本発明の一実施形態による光学ユニット1は、タッチパネル積層体3と、偏光機能積層体5とを備える。タッチパネル積層体3は、光学的に透明な接着剤層31の両側の面に、光学的に透明な第1及び第2のオリゴマー防止層32、33をそれぞれ介して接着された光学的に透明な第1及び第2の基材層34、35を備える。オリゴマー防止層32とは反対側の第1の基材層34の面に、光学的に透明なアンダーコート層36が接合されており、該アンダーコート層36上に、光学的に透明な第1の導電性層37が例えばスパッタリングにより付着形成される。同様に、オリゴマー防止層33とは反対側の第2の基材層35の面に、光学的に透明なアンダーコート層38が接合されており、該アンダーコート層38上に、光学的に透明な第2の導電性層39が例えばスパッタリングにより付着形成される。このタッチパネル積層体3は、タッチ入力センサーユニットを構成する。この技術分野において周知のように、第1及び第2の導電性層37、38は、所望のパターンにパターン化される。
【0030】
タッチ入力センサーユニットを構成するタッチパネル積層体3の一方の面、すなわち第2の導電性層39を有する面には、光学的に透明な接着剤層7を介して上述の偏光機能積層体5が接合される。この偏光機能積層体5は、接着剤層7に面する側に位置する偏光子フィルム51と、該偏光子フィルム51に貼り合わされた1/4λ位相差フィルム52とから構成されて、円偏光素子を形成する。この1/4λ位相差フィルム52に加えて、特許文献3に教示されているように、1/2λ位相差フィルム(図示せず)を設けてもよい。
【0031】
タッチパネル積層体3の他方の面、すなわち第1の導電性層37を有する面には、光学的に透明な接着剤層9を介して剥離ライナー11が接合される。剥離ライナー11の接着剤層9に対する接着力は、該剥離ライナー11を剥がしたとき、接着剤層9がパターン化された第1の導電性層37及び該第1の導電性層37のパターンの間から露出する第1のアンダーコート層36の上に層状の残る程度のものとする。
【0032】
この図1に示す光学ユニット1の層配置では、偏光機能積層体5に、表示パネル板13が、図示しない光学的に透明な接着剤層を介して接合される。図示例では、表示パネル板13は、有機EL素子を含む構成であるが、液晶表示パネル板であってもよい。
【0033】
また、剥離ライナー11を剥がして、接着剤層9により、透明なウインドウ15をタッチパネル積層体3に接合する。すなわち、ウインドウ15は、その全面にわたり、接着剤層9によりタッチパネル積層体3に接合される。図1に示すように、ウインドウ15には、その内面の縁に沿って、縁取り印刷17が施されており、この縁取り印刷17は、図から分かるように段部を形成する。しかし、図1の構成によれば、ウインドウ15は接着剤層9を介して全面がタッチパネル積層体3に接合されるので、縁取り印刷17による段部は接着剤層9の接着剤により埋められることになる。したがって、図1に示す実施形態によれば、ウインドウ15とタッチパネル積層体3との間に空気間隙を生じることがなく、空気間隙に起因する内部反射を抑制することが可能になる。」

以上の記載のうち、特に下線部を参照すると、次のことがいえる。

・【0001】の記載によれば、引用文献1には、「タッチ入力機能を有する表示パネル装置」の発明が記載されている。

・【0032】の記載によれば、引用文献1に記載された「タッチ入力機能を有する表示パネル装置」は、「液晶表示パネル板13」を具備している。

・【0029】、【0030】の記載によれば、引用文献1に記載された「タッチ入力機能を有する表示パネル装置」は、「タッチパネル積層体3に接着剤層7を介して偏光機能積層体5が接合された光学ユニット1」を具備している。

・【0033】の記載によれば、引用文献1に記載された「タッチ入力機能を有する表示パネル装置」は、「前記光学ユニット1のタッチパネル積層体3に接着剤層9を介して接合されたウインドウ15」を具備している。

・【0032】の記載によれば、引用文献1に記載された「タッチ入力機能を有する表示パネル装置」は、「前記光学ユニット1の偏光機能積層体5が前記液晶表示パネル板13に接着剤層を介して接合される」ものである。

そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているといえる。

[引用発明]
「液晶表示パネル板13と、
タッチパネル積層体3に接着剤層7を介して偏光機能積層体5が接合された光学ユニット1と、
前記光学ユニット1のタッチパネル積層体3に接着剤層9を介して接合されたウインドウ15と、
を具備し、
前記光学ユニット1の偏光機能積層体5が前記液晶表示パネル板13に接着剤層を介して接合される
タッチ入力機能を有する表示パネル装置。」

(2)引用文献2
当審拒絶理由で引用した引用文献2には、図面とともに次の技術事項が記載されている。(下線は、当審で付与したものである。)

「【0004】
従来の携帯型電子機器では、ユーザの持ち方によっては、保持している手がタッチパネルに触れてしまい、操作として誤検出する場合があるという問題があった。
この発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、ユーザ操作の誤検出を防止可能な携帯型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明の実施形態の携帯型電子機器は、情報を視覚的に表示する表示手段と、この表示手段が情報を表示する表示領域上で、この表示領域よりも広い入力領域について接触を検出する接触検出手段と、この接触検出手段の検出結果に基づいて、入力領域の外縁部と、この外縁部よりも内側の内側部を区別して、接触があった位置を検出する接触位置検出手段と、この接触位置検出手段の検出結果に基づいて、接触があった位置に応じた処理を実行するものであって、接触が内側部と外縁部にあり、かつこれら内側部と外縁部が連結している場合には、処理を実行しない制御手段とを具備して構成するようにした。」

「【0007】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
この発明の一実施形態に係わる携帯端末装置は、例えば、携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)、携帯型ゲーム機などであって、以下の説明では、携帯電話機を例に挙げて説明する。
【0008】
図1は、この発明の一実施形態に係わる携帯電話機の外観を示すものである。すなわち、この携帯電話機は、平板状の筐体を有し、その1面にタッチパネル式の入力部を備えている。なお、タッチパネル式の入力部を備えるものであれば、折りたたみ構造やスライド機構を有する筐体であってもよい。
【0009】
図2は、図1に示した携帯電話機の構成を示すブロック図である。この図に示すように、主な構成要素として、無線通信部10と、表示入力部20と、通話部30と、操作部40と、カメラ部41と、記憶部50と、赤外線通信部60と、GPS受信部70と、モーションセンサ部80と、電源部90と、主制御部100とを備え、主な機能として基地局装置BSおよび移動通信網NWを介した移動無線通信を行う無線通信機能を備える。
【0010】
無線通信部10は、主制御部100の指示にしたがって、移動通信網NWに収容された基地局装置BSと無線通信を行うものであって、これにより、音声データや電子メールデータなどの送受信、Webデータやストリーミングデータなどの受信を行う。
【0011】
表示入力部20は、主制御部100の制御により、画像(静止画像および動画像)や文字情報などを表示して視覚的にユーザに情報を伝達するとともに、表示した情報に対するユーザ操作を検出する、いわゆるタッチパネルであって、表示パネル21と、操作パネル22を備える。
【0012】
表示パネル21は、LCD(Liquid Crystal Display)などを表示デバイスとして用いたものである。操作パネル22は、表示パネル21に表示される画像を視認可能な透明素材からなり、表示パネル21の表示面上に載置され、ユーザの指や尖筆によって操作された座標を検出するためのデバイスである。このデバイスによって検出された検出信号は、主制御部100に出力され、主制御部100は、上記検出信号に基づいて、表示パネル21上の操作された位置(座標)を検出する。
【0013】
操作パネル22は、図1に示すように、表示パネル21よりも広い面積を有し、表示パネル21を完全に覆っている。つまり、操作パネル22は、表示パネル21外の領域についても、ユーザ操作を検出する機能を備える。言い換えれば、操作パネル22は、表示パネル21に重なる重畳部分についての検出領域(以下、表示領域と称する)と、それ以外の表示パネル21に重ならない外縁部分についての検出領域(以下、非表示領域と称する)とを備える。
【0014】
なお、表示領域の大きさと表示パネル21の大きさは完全に一致する必要は無く、操作パネル22が、外縁部分と、それ以外の内側部分の2つの感応領域を備えていればよい。また、外縁部分の幅は、筐体の大きさなどにより適宜設計される。操作パネル22で採用される位置検出方式としては、マトリクススイッチ方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などがあり、いずれの方式であってもよい。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「液晶表示パネル板13」は、「表示部」といえるものであって、「画像を表示する表示領域を有する」ことは明らかである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「画像を表示する表示領域を有する表示部」を具備する点で共通する。

引用発明の「タッチパネル積層体3に接着剤層7を介して偏光機能積層体5が接合された光学ユニット1」は、その「偏光機能積層体5が前記液晶表示パネル板13に接着剤層を介して接合される」ものであるから、「前記表示領域に対面する対面領域を有し」ているといえ、「前記対面領域において操作可能なタッチパネル部」といえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記表示領域に対面する対面領域を有し、前記対面領域において操作可能なタッチパネル部」を具備する点で共通する。

引用発明では、「前記光学ユニット1の偏光機能積層体5が前記液晶表示パネル板13に接着剤層を介して接合される」から、引用発明は、「前記タッチパネル部が前記表示部に対して接合される」ものであるといえる。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記タッチパネル部が前記表示部に対して接合される」点で共通する。

引用発明の「タッチ入力機能を有する表示パネル装置」は、「情報処理装置」といえるから、本願発明と引用発明とは、「情報処理装置」である点で一致する。

よって、本願発明と引用発明との間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
画像を表示する表示領域を有する表示部と、
前記表示領域に対面する対面領域を有し、前記対面領域において操作可能なタッチパネル部と、
を具備し、
前記タッチパネル部が前記表示部に対して接合される
情報処理装置。

(相違点1)
「表示部」が、本願発明では、「透明性及び機械的強度を有する2枚の基板を備え」るのに対し、引用発明では、そのような特定はされていない点。

(相違点2)
「タッチパネル部」が、本願発明では、「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能な」ものであるのに対し、引用発明では、「前記表示領域に対面する対面領域を有し、前記対面領域において操作可能な」ものとはいえるものの、「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能な」ものではない点。

(相違点3)
本願発明は、「前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側の、前記タッチパネル部の前記対面領域に略対向する領域に配置されたバックライト部と、
前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側において前記バックライト部が占める領域を除く領域の少なくとも一部に配置された制御基板と」を具備するものであるのに対し、引用発明は、それらを具備することが特定されていない点。

(相違点4)
本願発明は、「前記タッチパネル部が前記表示部に対して前記対面領域と前記外周領域を含む領域で接合される」ものであるのに対し、引用発明は、「前記タッチパネル部が前記表示部に対して接合される」とはいえるものの、「前記タッチパネル部が前記表示部に対して前記対面領域と前記外周領域を含む領域で接合される」ものではない点。

4.判断
(1)相違点1について
タッチ入力機能を有する表示パネル装置において、表示パネル装置を透明性及び機械的強度を有する2枚の基板を備えるものとすることは周知技術(例えば、特開2010-113490号公報(特に、段落【0032】)を参照)であるから、引用発明において、液晶表示パネル板13を、透明性及び機械的強度を有する2枚の基板を備えるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
引用文献2には、携帯型電子機器のタッチパネルに対するユーザ操作の誤検出を防止するために、情報を視覚的に表示する表示手段と、この表示手段が情報を表示する表示領域上で、この表示領域よりも広い入力領域について接触を検出する接触検出手段と、この接触検出手段の検出結果に基づいて、入力領域の外縁部と、この外縁部よりも内側の内側部を区別して、接触があった位置を検出する接触位置検出手段と、この接触位置検出手段の検出結果に基づいて、接触があった位置に応じた処理を実行する制御手段とを具備する構成とすることが記載されている。
引用発明のタッチ入力機能を有する表示パネル装置を、携帯型電子機器のタッチパネルとして使用することは普通に想定し得ることであり、そうした場合に、引用文献2に記載された「携帯型電子機器のタッチパネルに対するユーザ操作の誤検出を防止する技術」を適用することが有用であるのは当業者に明らかである。
したがって、引用発明において、携帯型電子機器のタッチパネルに対するユーザ操作の誤検出を防止するために、引用文献2に記載の技術を適用し、情報を視覚的に表示する表示手段と、この表示手段が情報を表示する表示領域上で、この表示領域よりも広い入力領域について接触を検出する接触検出手段と、この接触検出手段の検出結果に基づいて、入力領域の外縁部と、この外縁部よりも内側の内側部を区別して、接触があった位置を検出する接触位置検出手段と、この接触位置検出手段の検出結果に基づいて、接触があった位置に応じた処理を実行する制御手段とを具備する構成とすること、すなわち、本願発明でいう「タッチパネル」を「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

(3)相違点3について
引用発明は、光学ユニット(「タッチパネル部」)が接合された液晶表示パネル板13を具備したものであるが、そのような液晶表示パネル板において、光学ユニットと反対側の、表示領域に略対向する領域に、バックライト部を配置すること、また、前記バックライト部が占める領域を除く領域の少なくとも一部に制御基板を配置することは普通に行われていることである(例えば、特開2007-79133号公報(特に、段落【0050】)を参照)から、引用発明において、そのようにバックライト部や制御基板を配置すること、すなわち、本願発明でいう「前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側の、前記タッチパネル部の前記対面領域に略対向する領域に配置されたバックライト部と、
前記表示部の前記タッチパネル部が接合された面と反対面側において前記バックライト部が占める領域を除く領域の少なくとも一部に配置された制御基板と」を具備することは当業者が容易に想到し得ることである。

(4)相違点4について
引用発明は、光学ユニット1(「タッチパネル部」)が液晶表示パネル板13(「表示部」)に接合されているものであり、図1に図示された例では、「タッチパネル部」と「表示部」は、互いに全面で接合されているものである。
上記(2)で述べたように、引用発明において、「タッチパネル」を「前記表示領域に対面する対面領域と当該対面領域より外側の外周領域を有し、前記対面領域及び前記外周領域において操作可能なタッチパネル部」とすることは当業者が容易に想到し得ることであり、そのようにした場合には、互いに全面で接合されている「タッチパネル部」と「表示部」は、「前記タッチパネル部が前記表示部に対して前記対面領域と前記外周領域を含む領域で接合される」ようになることは明らかである。
したがって、引用発明において、「前記タッチパネル部が前記表示部に対して前記対面領域と前記外周領域を含む領域で接合される」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。

(5)まとめ
相違点1乃至相違点4とを併せて検討しても格別のものはなく、また、本願発明が奏する効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得た構成から予測し得るものである。
したがって、本願発明は引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1-4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。また、平成29年5月29日付けの手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。さらに、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-26 
結審通知日 2017-06-27 
審決日 2017-07-10 
出願番号 特願2012-126594(P2012-126594)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G06F)
P 1 8・ 55- WZ (G06F)
P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 稲葉 和生
千葉 輝久
発明の名称 情報処理装置及びその製造方法  
代理人 折居 章  
代理人 中村 哲平  
代理人 金子 彩子  
代理人 大森 純一  
代理人 金山 慎太郎  

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