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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1331868 |
審判番号 | 不服2016-17147 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-16 |
確定日 | 2017-08-24 |
事件の表示 | 特願2013- 51798「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月25日出願公開、特開2014-176485〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は,平成25年3月14日の出願であって、平成28年1月28日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月4日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。また、平成29年1月11日付けで前置報告書が作成され、請求人から同年3月27日に、主として前記前置報告書への反論とさらなる補正の準備があることとを内容とする上申書が提出された。 第2.平成28年11月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年11月16日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について 本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正により、平成28年4月4日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項1における 「開始操作が行われることに基づいて複数列の図柄を変動させて行う遊技が図柄表示手段で開始され、前記開始操作に基づいて役抽選を行う役抽選手段を備え、遊技の開始に基づき各列の図柄の変動が開始された後、前記役抽選の抽選結果及び停止操作に基づき前記図柄表示手段に表示結果が導出される遊技機において、 所定の設定操作手段の操作に基づいて、遊技媒体の出率が異なる複数の段階のうち何れかの段階を示す設定値を設定する設定手段と、 特定条件の成立を契機に遊技の進行を停滞させる停滞制御を所定の単位期間に区切って制御する停滞制御手段と、 一の単位期間分の停滞制御が行われているときに演出表示手段に実行させる停滞中演出の演出態様を複数種類の演出態様の中から決定する演出態様決定手段と、 前記演出態様決定手段によって決定された演出態様の停滞中演出を前記演出表示手段に実行させる停滞中演出制御手段と、 前記停滞中演出の結果として、遊技者にとって有利な特典の付与を報知する特典付与報知手段と、を備え、 複数種類の演出態様には、前記設定値を示唆可能な演出態様があることを特徴とする遊技機。」 は、審判請求時に提出された手続補正書(平成28年11月16日付け)における 「A 開始操作が行われることに基づいて複数列の図柄を変動させて行う遊技が図柄表示手段で開始され、前記開始操作に基づいて役抽選を行う役抽選手段を備え、遊技の開始に基づき各列の図柄の変動が開始された後、前記役抽選の抽選結果及び停止操作に基づき前記図柄表示手段に表示結果が導出される遊技機において、 B 所定の設定操作手段の操作に基づいて、遊技媒体の出率が異なる複数の段階のうち何れかの段階を示す設定値を設定する設定手段と、 C 特定条件の成立を契機に遊技の進行を停滞させる停滞制御を所定の単位期間に区切って制御する停滞制御手段と、 D 単位期間分の停滞制御が行われているときに演出表示手段に実行させる停滞中演出の演出態様を複数種類の演出態様の中から決定する演出態様決定手段と、 E 前記演出態様決定手段によって決定された演出態様の停滞中演出を前記演出表示手段に実行させる停滞中演出制御手段と、 F 前記停滞中演出の結果として、遊技者にとって有利な特典の付与を報知する特典付与報知手段と、を備え、 G 複数種類の演出態様には、前記設定値を示唆可能な設定示唆演出態様があり、 H 前記演出態様決定手段が前記単位期間ごとの停滞中演出の演出態様を決定することにより、複数の前記単位期間で前記設定示唆演出態様の停滞中演出を実行可能であることを特徴とする遊技機。」 に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審にて付した。また、A?Hは、当審にて分説して付与した。以下、個々の分説事項を指して「構成A」などということがある。)。 また、平成28年4月4日付けの手続補正書における特許請求の範囲の請求項2は削除された。 2.補正の目的 上記補正は、請求項2の削除に加え、補正前の請求項1に記載した発明について、 a.補正後の構成Dに関し、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「一の単位期間分」から、「一の」を削除して「単位期間分」と変更することで、複数の単位期間の何れか一つである場合も含む補正前の記載から、すべての「単位期間」を指すように限定し、 b.補正後の構成Gに関し、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記設定値を示唆可能な演出態様」を、「前記設定値を示唆可能な設定示唆演出態様」と限定するとともに、 c.補正後の構成Hに関し、同じく補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「演出態様決定手段」の作用について「前記演出態様決定手段が前記単位期間ごとの停滞中演出の演出態様を決定することにより、複数の前記単位期間で前記設定示唆演出態様の停滞中演出を実行可能である」点に限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は新規事項を追加するものではない。 3.本件補正発明の独立特許要件についての検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (1)本件補正発明について ア.「停滞制御」「停滞中演出」について 上記構成Cの「停滞制御」は平成28年11月16日付け手続補正により補正された明細書(以下、「本件明細書」という。)【0002】において 「遊技の進行に関する制御処理を所定期間だけ待機状態とすることで、遊技の開始を停滞させるフリーズ制御(以下、「停滞制御」という)が行われる。」 なる言い換えの説明がなされている。 パチスロの分野において「フリーズ」といえば一般に、通常プレイ中に操作者の操作(スタートスイッチやベットボタンなど)を受け付けなくなる状態を指すが、前記説明の「遊技の進行に関する制御処理を所定期間だけ待機状態とする」も当該一般的な「フリーズ」の意味を逸脱するものではない。 本件明細書中には、「停滞制御」中の付加的な制御について種々の記載がある(たとえば同段落に「停滞制御中には、演出画像を表示させることで、その後の遊技の継続に関する情報を遊技者に報知している」との記載がある)が、明細書全体を通じ、「停滞制御」なる用語自体について、特段前記一般的な意味と矛盾する説明がなされてはいない。 また、上記本件明細書【0002】の説明では「停滞」が「フリーズ」に換えて用いられているといえるから、上記構成Dの「停滞中演出」についても、一般的な用語としての「フリーズ演出」と言い換えることができるといえる。 イ.「所定の単位期間」について 構成Cの「所定の単位期間」とは、「期間」なる語が時間を意味するとも、単に処理の「区間」を意味するとも解し得、全体として所定の、つまりある定まった単位時間を意味するとも、単にあるまとまった制御が行われる単位区間を意味するとも、文言上は解される。この点について以下に検討する。 この「単位期間」については本件明細書【0140】で図11をもとに「1単位期間分の停滞制御とは、ステップS12にて待機時間を設定してからステップS16の判定結果が肯定となるまでの停滞制御をいう。」と説明されている。 図11の処理フロー図を参照すると、そこには、前記「単位期間」の中で、「待機時間を設定」(S12)なる処理に始まり、次いでここで設定された待機時間が経過するか(S13)、「スタートレバーの操作あり」(S14)の条件が満たされれば次の「演出時間を設定」(S15)に移り、ついで、ここで設定された演出時間の経過まで待つ「演出時間が経過?」(S16)なる、前記「単位期間」の最終処理に移る処理の流れが示されている。ここで、前記「次いでここで設定された待機時間が経過するか(S13)、「スタートレバーの操作あり」(S14)の条件が満たされれば次の「演出時間を設定」(S15)に移」る処理は、【0139】に、 「待機時間が設定されてから当該待機時間が経過するよりも前にスタートレバー22が操作された場合には、待機時間の経過を待つことなく演出時間が設定される。このため、演出時間が設定されるまでの時間を短縮する契機となるスタートレバー22が、本実施形態において短縮操作手段として機能する。そして、スタートレバー22が操作されたことを契機に待機時間の経過前に演出時間を設定する制御を行う主制御用CPU40aが、本実施形態において短縮制御手段として機能する。」 と説明されているとおり、遊技者によるスタートレバー22の操作により該処理の所要時間が変化し、結果として待機時間が短縮されうるものである。 そして、該「単位期間」には、前記短縮された分の時間を再度追加する機能を有する処理が存在するとの記述は明細書全体にも、図面にも見当たらない。 そうすると、本件補正発明における上記「所定の単位期間」には、遊技者の操作によりその所要時間が変化する態様が少なくとも含まれるのであるから、上記冒頭の解釈のうち「ある定まった単位時間を意味する」との解釈とは齟齬を生じるのであり、「あるまとまった制御が行われる単位区間を意味する」と解すべきであると言える。 (2)刊行物に記載された発明 ア.刊行物1に記載された発明 原査定の拒絶理由において提示された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-205893号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審にて付した。以下同じ。)。 (ア)「【請求項1】 遊技媒体を投入して、複数の図柄が表示された複数のリールを回転させて停止させるまでの工程を1回とする遊技を実施可能なスロットマシンであって、 抽選処理により複数の役の中から少なくとも1つの役またははずれを決定する役抽選を行なうための役抽選手段と、 複数の図柄が表示された複数のリールを回転させた後、遊技者のリール停止操作に基づく信号を受信したとき、前記役抽選の結果に応じて、回転させたリールの停止制御を行なうリール制御手段と、 前記役抽選で何れかの役に決定したとき当選フラグを設定し、該当選フラグが設定された状態で、前記リール停止制御により該役抽選で決定された役に対応した図柄の組み合わせが有効ライン上に表示されて入賞したと判断したとき、該入賞したと判断された役に対応した入賞処理を行なう入賞処理制御手段と、 遊技機の操作手段の機能を一時停止状態にするフリーズ演出を実施するフリーズ実施手段と、 遊技者がリール停止操作により前記役抽選で当選した役に対応した図柄を表示させるのに有用な情報を含む報知演出を実施する演出制御手段と、 前記フリーズ演出を実施する時間に対応させて、前記報知演出の実施回数を定める報知演出回数決定手段と、を備え、 前記フリーズ演出に、動作パターンの異なる第1の演出と第2の演出とが含まれることを特徴とするスロットマシン。」 (イ)「【0061】 (制御処理の説明) 以下に、上述した制御手段において行なわれる各種の制御について、フローチャートを用いながら詳細に説明する。 図5には、主制御回路100で行なわれる制御処理のメインルーチンを示す。図6から図20には、このメインルーチンで行なわれる制御処理である各サブルーチンを示す。」 (ウ)「【0064】 <メインルーチンの説明> まず、メインルーチンの制御処理の説明を、図5のフローチャートを用いながら説明する。このメインルーチンでは、遊技者が遊技媒体を投入して、複数の図柄が表示された複数のリールを回転させて停止させるまでの1工程を1回とする遊技を、1回行なうときの制御処理を示す。」 (エ)「【0078】 <役抽選処理サブルーチン> 次に、メインルーチンのステップS24で行なわれる役抽選処理サブルーチンについて、図6?図7に示したフローチャートを用いながら詳細に説明する。 まず、スタートスイッチONの信号を受信したか否か判断する(ステップS40)。このスタートスイッチONの信号は、遊技者によるスタートスイッチ50の操作をしたときに操作手段300により発信される信号であり、この信号に基づいてリール制御手段440は、リールの回転を開始する制御を行なう(図8のステップS104参照)。」 (オ)「【0104】 <リール変動、停止サブルーチンの説明> 次に、図5のメインルーチンにおいて、上述の役抽選処理サブルーチン(ステップS24)が終了すると、次に、リール変動、停止サブルーチン(ステップS26)を行なう。図8に示すフローチャートを用いて、リール変動、停止サブルーチンの詳細な説明を行なう。 まず、図7のステップS82で記憶した図柄番号と制御図柄データを読み出す(ステップS100)。次に、スタート時フリーズ制御サブルーチンを行なって(ステップS101)、ステップS102へ進む。」 (カ)「【0132】 <フリーズ判定サブルーチンの説明> 次に、図10を用いて、図8のリール変動、停止サブルーチンのステップS112の制御処理であるフリーズ判定サブルーチンの説明を行なう。本サブルーチンは、リール停止操作で特定図柄が表示されたとき、フリーズ抽選を行なって、抽選結果に応じたパラメータFRZの値を定める制御処理を行なう。図8に示すフローチャートにおいては、全リール停止後に特定図柄が表示されたか否か判断し、後述する図11に示すフローチャートにおいては、リール停止操作ごとに特定図柄が表示されたか否か判断する。 図10において、まず、特定図柄が表示されたか否か判断する(ステップS180)。ここで、特定図柄としては、全リールが停止した後に判断する場合であれば、一枚役に対応した図柄バー・ベル・リプレイを例示することができるが、これに限られるものではない。・・・ 【0133】 ステップS180の判断で、もし、特定図柄が表示された(YES)と判別したときには、次に、フリーズ抽選テーブルを読み出してフリーズ抽選処理を行なう(ステップS182)。 ここで、図34に、スタートスイッチ操作時に行なうフリーズ演出を定めるフリーズ抽選テーブルの実施例を示す。本抽選テーブルでは、パラメータFRZ=0、1、2、3が設定され、それぞれの当選確率が1/4となっている。FRZ=0の場合は、フリーズ演出を実施せず、実質的にはずれなっている。 【0134】 ・・・ フローチャートの説明に戻り、ステップS184でフリーズ抽選処理を行なった後、次に、フリーズ抽選処理で選択されたFRZの値をRAM110に記憶させ(ステップS184)、本サブルーチンを終了する。」 (キ)「【0208】 (副制御回路200により行なわれる制御処理の説明) 次に、主制御回路100から受信した信号に基づいて、副制御回路200で行なわれる制御処理を示す各サブルーチンの説明を、図22?図23のフローチャートを用いて行なう。・・・ <AT抽選サブルーチンの説明> まず、主制御回路100から受信した信号に基づいて、副制御回路200で行なわれる報知画像表示回数加算サブルーチンの説明を、図22のフローチャートを用いて行なう。本サブルーチンでは、主制御回路100から受信した有効フリーズ時間の情報に基づいて、フリーズ時間に応じた報知画像(AT)の表示回数を加える制御処理を行なう。 ・・・ 【0209】 図22において、はじめに、主制御回路100からフリーズ情報信号(図9のステップS160、図12のステップS218、図13のステップS256、図14のステップS288参照)を受信したか否か判断する(ステップS730)。・・・ 【0210】 ステップS802の判断で、もし、有効フリーズ時間の情報を受信した(YES)と判別したときには、次に、ROM208からAT抽選テーブルを読み出して、AT抽選処理を行う。 ・・・ 【0211】 次に、ステップS734のAT抽選処理で当選したか否か判断する(ステップS736)。・・・ ステップS736の判断で、もし、AT抽選処理で当選している(YES)と判別したとき、報知画像の追加表示回数を表わすADNの値として、ADN=有効フリーズ時間×10をインプットする(ステップS738)。次に、報知画像の表示回数を表わすカウンタNATの値に、ステップS738で算出されたADNの値を加える制御処理を行なって(ステップS740)、本サブルーチンを終了する。 ここで、カウンタNATは、報知画像を表示する回数(遊技数)をコントロールするためのカウンタであり、報知画像(AT)を表示するたびに、NATの値から1を減じる制御処理を行ない、NATの値が0となると報知画像(AT)の表示を終了する(図23参照)。つまり、カウンタNATの値で示される回数(遊技数)だけ報知画像(AT)を表示することができる。」 (ク)「【0234】 <実施時間の異なるフリーズ演出を実施するためのその他の実施形態における第2の実施形態の説明> <図41のスタート時フリーズ制御サブルーチンの説明> 次に、実施時間の異なるフリーズ演出を実施するための制御処理に関するその他の実施形態において、その第2の実施形態のスタート時フリーズ制御サブルーチンの説明を、図41のフローチャートを用いて行なう。 本サブルーチンも、図8のリール変動、停止サブルーチンのステップ101の制御処理に相当する。・・・本サブルーチンでは、フリーズ継続抽選処理で当選した場合に、同じ単位フリーズ演出を繰り返すのではなく、単位フリーズ選択抽選処理によって選択された実施態様の異なる単位フリーズ演出を実施できるようになっている。 【0235】 図41において、はじめに、パラメータFRZの値が0より大きいか否か判断する(ステップS1100)。この判断で、FRZの値が0以下である(NO)と判別したときには、そのまま本サブルーチンを終了する。 ステップS1100の判断で、もし、FRZの値が0より大きい(YES)と判別したときには、タイマーをオンにして(ステップS1102)、次に、ROM208から単位フリーズ選択抽選テーブルを読み出して、乱数発生器を用いて乱数を発生させて単位フリーズ選択抽選処理を行なう(ステップS1104)。・・・。 【0236】 ここで、単位フリーズ選択抽選テーブルの実施例を図47に示す。図47の単位フリーズ選択抽選テーブルでは、パラメータFRZ=1、2、3、4、5が設定され、それぞれの当選確率が1/5となっている。 ・・・ 【0238】 ステップS1104に引き続いて、ステップS1104の単位フリーズ選択抽選処理の結果に対応したFRZの値をRAM110に記憶し(ステップS1106)、次に、単位フリーズ演出信号を、その当選順とともに副制御回路200へ送信して(ステップS1108)、ステップS1110へ進む。なお、この単位フリーズ演出信号には、FRZの値に関する情報も含まれる。 ステップS1110では、フリーズ実施サブルーチンが行なわれ(ステップS1110)、単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出を行なう。なお、フリーズ実施サブルーチンの更に詳細な説明は、図42を用いて後述する。 【0239】 ステップS1110に引き続いて、単位フリーズ継続抽選処理を行なって(ステップS1112)、次に、タイマーをオフにして(ステップS1114)、ステップS1116へ進む。ここで、ステップS1112の単位フリーズ継続抽選処理は、図39のステップS1006に示す単位フリーズ継続抽選処理と同様であり、更なる説明は省略する。 ステップS1116では、ステップS1012のフリーズ継続抽選処理で当選したか否か判断する(ステップS1016)。この判断で、もし、フリーズ継続抽選処理で当選した(YES)と判別したときには、ステップS1102に戻り、ステップS1102からS1116の制御処理を繰り返す。この制御処理により、単位フリーズ選択抽選処理で定められたFRZに対応した単位フリーズ演出が行なわれる。この間に、単位フリーズ選択抽選処理及び単位フリーズ継続抽選処理が行なわれ、単位フリーズ継続抽選処理で当選した場合には、単位フリーズ選択抽選処理で定められたFRZに対応した単位フリーズ演出が行なわれる。このようにして、単位フリーズ継続抽選処理ではずれとなる、つまり、次の単位フリーズ演出を実施しないと決定するまで、FRZの値に対応した様々な態様の単位フリーズ演出を繰り返し行なうことができる。 ・・・ 【0241】 ステップS1122に引き続いて、有効フリーズ時間を検出する(ステップS1124)。この有効フリーズ時間は、報知画像の表示回数を定める時間であって、実際に操作手段の機能が停止した時間と一致する場合もあるし、実際のフリーズ時間の一部が有効フリーズ時間となる場合もある。そして、この有効フリーズ時間の情報を副制御回路200へ送信して(ステップS1126)、本サブルーチンを終了する。」 (ケ)「【0250】 <図43のフリーズ対応演出制御サブルーチンの説明> 次に、図41のステップS1108で副制御回路200へ送信した単位フリーズ演出信号に基づいて、副制御回路200の演出制御手段540により、単位フリーズ演出に対応した演出画像を表示する制御処理について、図43のフリーズ対応演出制御サブルーチンを用いて説明する。 図43において、まず、主制御回路100から単位フリーズ演出信号を受信したか否か判断する(ステップS1250)。・・・ 【0251】 ステップS1250の判断で、もし、単位フリーズ演出信号を受信した(YES)と判別したときには、次に、単位フリーズ演出信号に含まれるFRZの値の情報に基づいて、ROM208から画像データを読み出して、単位フリーズ演出のFRZの値に対応した演出画像を表示装置70に表示する(ステップS1252)。そして、次の単位フリーズ演出信号を受信したか否か判断する(ステップS1254)。この判断で、もし、単位フリーズ演出信号を受信していない(NO)と判別したときには、次に、主制御回路100からフリーズ終了信号を受信したか否か判断する(ステップS1256)。 この判断で、もし、フリーズ終了信号を受信していない(NO)と判別したときには、表示中の演出画像を継続して(ステップS1258)、ステップS1254へ戻り、ステップS1254からS1258の制御処理を繰り返す。」 (コ)「【0297】 なお、リールを用いたフリーズ演出は、上述の実施形態に限られるものではなく、例えば、フリーズ演出中のリールの停止により、あたかも所定の図柄が表示されたかのような印象を遊技者に与える制御処理も可能である。例えば、フリーズ演出中に、所定のリールであたかも図柄青7が表示されたかのような印象を遊技者に与えるには、下記のような制御処理が考えられる。 フリーズ演出を実施する前の遊技のリール停止制御で、所定のリールにおいて図柄青7を有効ライン上に停止させるリール停止制御を行なう。その後、フリーズ演出において、この停止位置から所定の回転角度だけ所定のリールを回数させる制御処理を行ない、その後、フリーズ演出開始時の角度に戻る(つまり回転角度0度となる)ようにリールを回転及び停止させることによって、遊技者にあたかも図柄青7が表示されたかのような印象を与えることができる。このとき、副制御回路200によって、図柄青7が表示されたという印象を与える演出を行なうことも有効である。 更に、この図柄青7の疑似表示に対応するように、報知演出(AT)の加算処理の結果を報知すれば、フリーズ演出における図柄青7の表示によって、特典を得ることができたという印象を遊技者に与えることができるので、遊技者のフリーズ演出に対する関心を高めることが期待できる。」 (サ)図5には、上記(ウ)(【0064】)の記載を参照すると、「遊技者が遊技媒体を投入して、複数の図柄が表示された複数のリールを回転させて停止させるまでの1工程を1回とする遊技を、1回行なうときの制御処理を示す」「メインルーチン」の処理フローが示され、ここから、メインルーチン開始後、すなわち遊技開始後、遊技媒体投入・ベット操作・ベット数に関する処理(S10?S22)を経て、「役抽選処理サブルーチン(S24)」、「リール変動・停止サブルーチン(S26)」、「入賞判定、フラグオフ、処理サブルーチン(S28)」、「払い出し処理(S30)」を経てメインルーチンが終了するという処理の流れを読み取ることができる。 (シ)図8には、上記【0104】(オ)の記載を参照すると、「図5のメインルーチンにおいて、上述の役抽選処理サブルーチン(ステップS24)が終了すると、次に」「ステップS26」として行われる「リール変動、停止サブルーチン」の処理フローが示され、開始後まず「図7のステップS82で記憶した図柄番号と制御図柄データ」を読み出す「図柄番号・制御図柄読み出し(S100)」処理を行い、次いで「スタート時フリーズ制御サブルーチン(S101)」を経てリールの回転・停止・図柄組み合わせ制御を行い(S102?S111)、次いで「フリーズ判定サブルーチン(S112)」「全リール停止信号を副制御回路へ送信(S113)」を順次行って終了する処理フローを読み取ることができる。 (ス)図41は、「スタート時フリーズ制御サブルーチン」の処理フロー例に関する。 そして、上記【0234】に「図41のスタート時フリーズ制御サブルーチンの説明」として「本サブルーチンも、図8のリール変動、停止サブルーチンのステップ101の制御処理に相当する」と記載されていることから、図41の「スタート時フリーズ制御サブルーチン」が、図8の「スタート時フリーズ制御サブルーチン(S101)」として実行される処理の一態様であることが明らかである。 図41の処理フローからは、開始後まずS1100で「FRZ」が0より大きいか否か判断し、0以下であれば「リターン」すなわちこのサブルーチンの処理を終了し、0より大きければ、「単位フリーズ選択抽選処理」(S1104)、「フリーズ実施サブルーチン」(S1110)、「単位フリーズ継続抽選処理」(S1112)を順に含む処理群を、S1116の「単位フリーズ選択抽選で単位フリーズ選択」の判断が「YES」、すなわち該選択が行われている限り、前記処理群を繰り返し実行し、S1116で「FRZ」を0とし、S1120?S1126の各処理を経て「リターン」すなわちこのサブルーチンの処理が終了される、という処理の流れを読み取ることができる。 上記記載事項(ア)?(ス)から、以下の(あ)?(え)の事項が導かれる。 (あ)上記(ア)の【請求項1】には、 「遊技媒体を投入して、複数の図柄が表示された複数のリールを回転させて停止させるまでの工程を1回とする遊技を実施可能なスロットマシンであって、 抽選処理により複数の役の中から少なくとも1つの役またははずれを決定する役抽選を行なうための役抽選手段と、 複数の図柄が表示された複数のリールを回転させた後、遊技者のリール停止操作に基づく信号を受信したとき、前記役抽選の結果に応じて、回転させたリールの停止制御を行なうリール制御手段と、」 と記載され、上記(エ)の【0078】には 「スタートスイッチONの信号を受信したか否か判断する(ステップS40)。このスタートスイッチONの信号は、遊技者によるスタートスイッチ50の操作をしたときに操作手段300により発信される信号であり、この信号に基づいてリール制御手段440は、リールの回転を開始する制御を行なう」 と記載されているから、刊行物1には、 「遊技者がスタートスイッチを操作したことに基づいて複数のリールが回転され、抽選処理により複数の役の中から少なくとも1つの役またははずれを決定する役抽選を行なうための役抽選手段を備え、遊技者がスタートスイッチを操作したことに基づいて複数の図柄が表示された複数のリールを回転させた後、遊技者のリール停止操作に基づく信号を受信したとき、前記役抽選の結果に応じて、回転させたリールの停止制御が行われる、スロットマシン」 が記載されているといえる。 (い)上記(イ)(ク)(サ)(シ)(ス)から、 主制御回路100で行なわれる図5のメインルーチンで、(イ) 遊技開始後、遊技媒体投入・ベット操作・ベット数に関する処理、「役抽選処理サブルーチン」を経て実行される「リール変動・停止サブルーチン」では、(サ) 開始後まず「図柄番号・制御図柄読み出し(S100)」処理を行い、次いで「スタート時フリーズ制御サブルーチン(S101)」を行い、((シ)) 該「スタート時フリーズ制御サブルーチン」の処理では、開始後まず「FRZ」が0より大きいか否か判断し、0以下であればこのサブルーチンの処理を終了し、0より大きければ、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を繰り返し実行する((ス))、のであり、 前記「フリーズ実施サブルーチン」は、単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出を行なう(【0238】)処理であり、((ク)) フリーズ演出とは「遊技機の操作手段の機能を一時停止状態にする」ものである、(請求項1) ということがいえる。 そうすると、単位フリーズ演出を行なう「フリーズ実施サブルーチン」は、「FRZ」が0より大きいと判断したことを条件として実行されるといえる。 また、前記「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群は、単位フリーズ継続抽選処理ではずれとなる、つまり、次の単位フリーズ演出を実施しないと決定するまで繰り返し行われる(【0239】、(ス))といえる。 以上から、刊行物1には、 「「FRZ」が0より大きいと判断したことを条件として、「遊技機の操作手段の機能を一時停止状態にする」フリーズ演出を実行する「フリーズ実施サブルーチン」の処理として、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を繰り返すように実行する主制御回路100」 の構成が記載されているといえる。 (う)上記「スタート時フリーズ制御サブルーチン」における、「繰り返し実行」される「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群((い))における「単位フリーズ選択抽選処理」は、上記【0235】・【0236】・【0238】によれば、「パラメータFRZ=1、2、3、4、5が設定され」た「単位フリーズ選択抽選テーブル」「を読み出して」「単位フリーズ選択抽選処理を行な」い、「単位フリーズ選択抽選処理の結果に対応したFRZの値を」「記憶」する処理と説明されている。 また、【0238】では、続く「フリーズ実施サブルーチン」では「単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出を行なう」と説明されている。 また、前記処理群が実行される「スタート時フリーズ制御サブルーチン」は、主制御回路100で行なわれる「メインルーチン」で実行される「リール変動・停止サブルーチン」((サ))の中で行われる処理であるから((オ))、同じく主制御回路100で行なわれる処理であることが明らかである。 また、【0251】には、単位フリーズ演出が「単位フリーズ演出のFRZの値に対応した演出画像を表示装置70に表示する」ものであると記載されている。 以上から、刊行物1には、 「繰り返し実行される、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群実行中の「単位フリーズ選択抽選処理」では、表示装置に表示する単位フリーズ演出に対応するFRZの値が5種類の中から選択される処理を実行する主制御回路100」 の構成が記載されているといえる。 また、刊行物1には、 「主制御回路100は、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を実行するごとに実行される「単位フリーズ選択抽選処理」で5種類の中から「FRZの値」を「選択」することにより、「繰り返し実行される」前記処理群の「単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出を行なう」」 という構成が記載されているといえる。 (え)上記【0238】・【0250】・【0251】の記載および上記(う)の認定事項から、刊行物1には、 「主制御回路100から」「送信した」「単位フリーズ演出信号」(【0250】)に含まれる(【0251】)、 「主制御回路100」による「単位フリーズ選択抽選処理」(う) 「で選択されたFRZの値に対応した」(【0238】) 「単位フリーズ演出に対応した演出画像」(【0250】) 「を表示装置70に表示する」(【0251】) 「副制御回路200の演出制御手段540」(【0250】) が記載されているといえる。 (お)上記【0208】には、「副制御回路200」が「主制御回路100から受信した有効フリーズ時間の情報に基づいて、フリーズ時間に応じた報知画像(AT)の表示回数を加える制御処理を行なう」ことが記載されているといえる。(記載事項おー1) また、上記【0211】には、「AT抽選処理で当選している」「と判別したとき、報知画像の追加表示回数を表わすADNの値として、ADN=有効フリーズ時間×10をインプット」し、「次に、報知画像の表示回数」「すなわち「報知画像(AT)を表示することができる」「回数」「を表わすカウンタNATの値に、ステップS738で算出されたADNの値を加える制御処理を行な」うことが記載されているといえる。(記載事項おー2) また、上記【0241】には、「本サブルーチン」すなわち「スタート時フリーズ制御サブルーチン」(【0234】)の最後に、「実際のフリーズ時間の一部」からなる「有効フリーズ時間を検出」し、「この有効フリーズ時間の情報を副制御回路200へ送信」する処理が行われることが記載されているといえる。(記載事項お-3) また、【0297】には、「フリーズ演出において、」「図柄青7の疑似表示に対応するように、」「特典を得ることができたという印象を遊技者に与えることができる」「報知演出(AT)の加算処理の結果を報知」する演出を行うことが記載されているといえる。ここで、当該報知を行う何らかの報知手段が存在することは明らかである。(記載事項おー4) 前記記載事項おー4での「報知演出(AT)の加算処理の結果」とは、「実際のフリーズ時間の一部」からなる「有効フリーズ時間」の「検出」値(記載事項おー3)から求めた値(ADN)を加算した値(NAT;記載事項おー2)であるから、フリーズ演出の実行により付与された事項であるといえる。 以上から、刊行物1には、 「フリーズ演出において、フリーズ演出の実行により付与された、遊技者にとって有利な特典である報知演出(AT)の加算処理の結果を報知する報知手段」 が記載されているといえる。 (か)上記(ア)?(ス)の記載事項、及び上記(あ)?(お)の認定事項から、刊行物1には次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる(a?hは、本件補正発明のA?Hに対応させて付与した。また、行末の「(ア)」などは、各認定事項に対応する上記記載事項および認定事項の付番に対応する。)。 「a 遊技者がスタートスイッチを操作したことに基づいて複数のリールが回転され、抽選処理により複数の役の中から少なくとも1つの役またははずれを決定する役抽選を行なうための役抽選手段を備え、遊技者がスタートスイッチを操作したことに基づいて複数の図柄が表示された複数のリールを回転させた後、遊技者のリール停止操作に基づく信号を受信したとき、前記役抽選の結果に応じて、回転させたリールの停止制御が行われる、スロットマシンにおいて、(あ) c FRZが0より大きいと判断したことを条件として、遊技機の操作手段の機能を一時停止状態にするフリーズ演出を実行するフリーズ実施サブルーチンの処理として、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を繰り返すように実行する主制御回路100と、(い) d 繰り返し実行される、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群実行中の「単位フリーズ選択抽選処理」では、表示装置に表示する単位フリーズ演出に対応するFRZの値が5種類の中から選択される処理を実行する主制御回路100と、(う) e 主制御回路100から送信した単位フリーズ演出信号に含まれる、主制御回路100による単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出の演出画像を表示装置70に表示する副制御回路200の演出制御手段540と、(え) f フリーズ演出において、フリーズ演出の実行により付与された、遊技者にとって有利な特典である報知演出(AT)の加算処理の結果を報知する報知手段と、を備え、(お) h 主制御回路100は、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を実行するごとに実行される単位フリーズ選択抽選処理で5種類の中からFRZの値を選択することにより、繰り返し実行される前記処理群の単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出を行なう、(う) スロットマシン。(あ)」 (3)対比 本件補正発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。(以下、刊行物1発明の各構成については単に「構成a」などといい、本件補正発明の各構成は単に「構成A」などということがある。) ア.刊行物1発明における構成aの、 「遊技者がスタートスイッチを操作したこと」、 「複数のリールが回転され」ること、 「遊技者のリール停止操作に基づく信号を受信したとき、前記役抽選の結果に応じて」おこなうこと、 「回転させたリールの停止制御が行われる」こと、 は、それぞれ本件補正発明における構成Aの 「開始操作が行われる」こと、 「複数列の図柄を変動させて行う遊技が図柄表示手段で開始され」、 「役抽選の抽選結果及び停止操作に基づき」おこなうこと、 「図柄表示手段に表示結果が導出される」こと、 に相当する。 したがって、刊行物1発明における構成aの 「遊技者がスタートスイッチを操作したことに基づいて複数のリールが回転され、抽選処理により複数の役の中から少なくとも1つの役またははずれを決定する役抽選を行なうための役抽選手段を備え、遊技者がスタートスイッチを操作したことに基づいて複数の図柄が表示された複数のリールを回転させた後、遊技者のリール停止操作に基づく信号を受信したとき、前記役抽選の結果に応じて、回転させたリールの停止制御が行われる、スロットマシンにおいて、」は、本件補正発明における構成Aの 「開始操作が行われることに基づいて複数列の図柄を変動させて行う遊技が図柄表示手段で開始され、前記開始操作に基づいて役抽選を行う役抽選手段を備え、遊技の開始に基づき各列の図柄の変動が開始された後、前記役抽選の抽選結果及び停止操作に基づき前記図柄表示手段に表示結果が導出される遊技機において、」 に相当する。 イ.構成Cについて 上記3.(1)ア.で検討したとおり、構成cの「フリーズ」、「フリーズ演出」が構成Cの「停滞」、「停滞中演出」に相当することは、本件明細書【0002】の 「遊技の進行に関する制御処理を所定期間だけ待機状態とすることで、遊技の開始を停滞させるフリーズ制御(以下、「停滞制御」という)が行われる。」 なる言い換えの記載からも、技術常識からも明らかである。 また、本件明細書・図面の記載からみて、構成Cの「所定の単位期間」が、「所定の単位時間」、つまり、定まった長さの単位時間を意味するとは解せず、単に(時間の長さが一定か否かは定まらない)「あるまとまった制御が行われる単位区間」を意味すると解されることは、上記3.(1)イ.で検討したとおりである。 そうすると、構成cの、「「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群」が実行される期間は、該各処理が行われる区間、すなわち「あるまとまった制御が行われる単位区間」に該当するから、構成cの「「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を繰り返す」ことからなる一連の処理は、該処理群の制御が行われる「単位区間」に区切ることができるといえ、該一連の処理は、該単位区間に区切ってそれが繰り返されていると見做すことができるといえる。 そうすると、構成cの、 「FRZが0より大きいと判断したことを条件として」、 「遊技機の操作手段の機能を一時停止状態にするフリーズ演出」、 「「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を繰り返すように」、 「主制御回路100」、 はそれぞれ、構成Cの、 「特定条件の成立を契機に」、 「遊技の進行を停滞させる停滞制御」、 「所定の単位期間に区切って」 「停滞制御手段」、 に相当する。 したがって、刊行物1発明における構成cの、 「FRZが0より大きいと判断したことを条件として、遊技機の操作手段の機能を一時停止状態にするフリーズ演出を実行するフリーズ実施サブルーチンの処理として、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を繰り返すように実行する主制御回路100と、」 は、本件補正発明における構成Cの、 「特定条件の成立を契機に遊技の進行を停滞させる停滞制御を所定の単位期間に区切って制御する停滞制御手段と」 に相当する。 ウ.構成Dについて 構成dの、 「「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群実行中」、 「表示装置」、 「表示する単位フリーズ演出に対応するFRZの値が5種類の中から選択される」こと、 「主制御回路100」は、 それぞれ、構成Dの、 「単位期間分の停滞制御が行われているとき」、 「前記演出表示手段」、 「停滞中演出の演出態様を複数種類の演出態様の中から決定する」こと、 「演出態様決定手段」、 に相当する。 したがって、刊行物1発明における構成dの 「繰り返し実行される、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群実行中の「単位フリーズ選択抽選処理」では、表示装置に表示する単位フリーズ演出に対応するFRZの値が5種類の中から選択される処理を実行する主制御回路100と、」 は、本件補正発明における構成Dの 「単位期間分の停滞制御が行われているときに演出表示手段に実行させる停滞中演出の演出態様を複数種類の演出態様の中から決定する演出態様決定手段と、」 に相当する。 エ.構成Eについて 構成eの、 「主制御回路100による単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出」、 「表示装置70に表示する」、 「副制御回路200の演出制御手段540」、 はそれぞれ、構成Eの、 「前記演出態様決定手段によって決定された演出態様の停滞中演出」、 「前記演出表示手段に実行させる」 「停滞中演出制御手段」、 に相当する。 したがって、刊行物1発明における構成eの 「主制御回路100から送信した単位フリーズ演出信号に含まれる、主制御回路100による単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出の演出画像を表示装置70に表示する副制御回路200の演出制御手段540と、」は、 本件補正発明における構成Eの 「前記演出態様決定手段によって決定された演出態様の停滞中演出を前記演出表示手段に実行させる停滞中演出制御手段と、」 に相当する。 オ.構成Fについて 構成fの、 「フリーズ演出において」、 「遊技者ににとって有利な特典である報知演出(AT)の加算処理の結果」 はそれぞれ、構成Fの、 「前記停滞中演出の結果として」、 「遊技者にとって有利な特典」 に相当する。 また、構成fにおいて、前記「遊技者ににとって有利な特典である報知演出(AT)の加算処理の結果」は「フリーズ演出の実行により付与された」ものであるから、「遊技者にとって有利な特典である報知演出(AT)の加算処理の結果」を報知することは、該「遊技者にとって有利な特典である報知演出(AT)の加算処理の結果」が付与されたことを報知することといえる。 したがって、刊行物1発明における構成fの 「フリーズ演出において、フリーズ演出の実行により付与された、遊技者にとって有利な特典である報知演出(AT)の加算処理の結果を報知する報知手段と、を備え、」 は、本件補正発明の構成Fの、 「前記停滞中演出の結果として、遊技者にとって有利な特典の付与を報知する特典付与報知手段と、を備え、」 に相当する。 カ.構成Hについて 構成hの、 「「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を実行するごとに実行される単位フリーズ選択抽選処理で5種類の中からFRZの値を選択すること」、 における各「FRZの値」は、構成dで認定したとおり、「表示装置に表示する単位フリーズ演出に対応する」ものであるから、「FRZの値」を選択することは、「単位フリーズ演出」を選択することであるといえる。 よって、構成hの 「「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を実行するごとに実行される単位フリーズ選択抽選処理で5種類の中からFRZの値を選択すること」、は、構成Hの 「前記単位期間ごとの停滞中演出の演出態様を決定する」こと、に相当する。 また、上記イ.の検討結果から、構成hの 「繰り返し実行される前記処理群」 は、構成Hの、 「複数の前記単位期間」 に相当する。 また、構成hの「単位フリーズ演出を行なう」ことは、構成Hの「停滞中演出を実行可能であること」に含まれる。 また、構成hの「スロットマシン」は構成Hの「遊技機」に含まれる。 したがって、刊行物1発明における構成hの、 「「主制御回路100は、「単位フリーズ選択抽選処理」・「フリーズ実施サブルーチン」・「単位フリーズ継続抽選処理」の各処理を順に含む処理群を実行するごとに実行される単位フリーズ選択抽選処理で5種類の中からFRZの値を選択することにより、繰り返し実行される前記処理群の単位フリーズ選択抽選処理で選択されたFRZの値に対応した単位フリーズ演出を行なうスロットマシン」 は、本件補正発明における構成Fのうち、「設定示唆」を除く 「前記演出態様決定手段が前記単位期間ごとの停滞中演出の演出態様を決定することにより、複数の前記単位期間で前記」「演出態様の停滞中演出を実行可能であることを特徴とする遊技機」 である点で共通する。 キ.上記ア.?カ.によれば、本件補正発明と刊行物1発明とは、 [一致点] 「A 開始操作が行われることに基づいて複数列の図柄を変動させて行う遊技が図柄表示手段で開始され、前記開始操作に基づいて役抽選を行う役抽選手段を備え、遊技の開始に基づき各列の図柄の変動が開始された後、前記役抽選の抽選結果及び停止操作に基づき前記図柄表示手段に表示結果が導出される遊技機において、 C 特定条件の成立を契機に遊技の進行を停滞させる停滞制御を所定の単位期間に区切って制御する停滞制御手段と、 D 単位期間分の停滞制御が行われているときに演出表示手段に実行させる停滞中演出の演出態様を複数種類の演出態様の中から決定する演出態様決定手段と、 E 前記演出態様決定手段によって決定された演出態様の停滞中演出を前記演出表示手段に実行させる停滞中演出制御手段と、 F 前記停滞中演出の結果として、遊技者にとって有利な特典の付与を報知する特典付与報知手段と、を備え、 H’ 前記演出態様決定手段が前記単位期間ごとの停滞中演出の演出態様を決定することにより、複数の前記単位期間で停滞中演出を実行可能であることを特徴とする遊技機。」 の点で一致し、次の各点で相違する。 [相違点1](構成B) 本件補正発明は、「所定の設定操作手段の操作に基づいて、遊技媒体の出率が異なる複数の段階のうち何れかの段階を示す設定値を設定する設定手段」を明示的に備えるのに対し、刊行物1発明は当該構成を明示的に備えない点、 [相違点2](構成G) 本件補正発明は、「(停滞中演出における)複数種類の演出態様には、前記設定値を示唆可能な設定示唆演出態様があ」るとの特定事項を有するのに対し、刊行物1発明は当該特定事項に相当する構成を備えない点、 [相違点3](構成H) 演出態様決定手段が単位期間ごとの停滞中演出の演出態様を決定することにより複数の前記単位期間で実行可能な演出態様に関して、本件補正発明は、「設定示唆演出態様」を特定するのに対し、本件補正発明では当該演出態様を単位期間毎の停滞中演出の態様に「設定示唆演出態様」を含まない点。 (4)当審の判断 ア.相違点1について 刊行物1発明はスロットマシンに関する発明であるが、一般的なスロットマシンにおいて、各種役の当選確率(出率)が相互に相違する「設定値」が各遊技機毎に設定可能であり、各スロットマシンの遊技機には、該「設定値」をホール従業員等が操作することなどにより変更可能な手段が設けられていることは、本件出願前から、当業者のみならず遊技者にとっても周知な技術常識である。 この点についてはたとえば、以下の(ア)?(エ)に挙げる刊行物2?5の記載事項からも明らかである(下線部参照)。 (ア)刊行物2:特開2010-253086号公報(平成22年11月11日発行) スロットマシンに関する刊行物2には以下の事項が記載されている。 「【0067】 ・・・ また、例えば、フリーズ演出中に液晶ディスプレイや演出用ランプやスピーカなどの出力手段を用いて特定の演出を行うための特定演出制御手段を備えることができる。また、特定の演出として、例えば、当該スロットマシンの設定値を示唆する演出など、遊技に関する情報を報知する演出を行うように、特定演出制御手段を形成することができる。 そうすると、特定演出制御手段による特定の演出の長さがフリーズ演出におけるフリーズ時間に応じて変化するので、遊技者自身の技量に応じて特定の演出の長さを変化させることができ、遊技に関する情報を見るか否かを選択できる。」 この記載では、「スロットマシンの設定値」の存在を前提とし、該「設定値」を示唆する演出を実行するとの技術事項を読み取ることができ、「設定値」が演出上の示唆対象となるということは「設定値」が各スロットマシンにおいて複数の値をとりうることが前提となっているといえ、スロットマシンに該複数の設定値の値を設定するためのなんらかの手段が備わっていることが自明であるといえる。 (イ)刊行物3:パチスロ攻略マガジンドラゴン2012年10月号、株式会社双葉社、2012年8月21日発行、146?147ページ 刊行物3は雑誌に掲載された「パチスロ 海物語 ミラクルマリン」と称するスロットマシン機種の紹介記事であり、146ページ左下部分には、「フリーズ発生時の演出別・設定値期待度」と題した掲載枠があり、その中には、「フリーズ演出別・設定期待度」と題する複数のフリーズ演出の出現度と設定値(1?6)との関係についての表と、その下方に、「ポイント」と題し「サムで1・9揃いは設定6濃厚!!」、「サムで3・5・7揃いは設定4以上濃厚!」なる記載がある。 この記載からは、対象となるスロットマシンが「設定値」なるものが1?6の6値からなる複数値をとり得、それが示唆演出の対象となることを読み取ることができ、上記(ア)での検討と同様、該スロットマシンに該設定値を設定する何らかの手段が備わっていることは自明であるといえる。 また、ここでの演出で、「サム」、「3・5・7揃い」、「1・9揃い」は共に、フリーズ中にフリーズ演出として液晶表示画面中に表示されるキャラクターや数字列の態様を指すことが明らかである。 また、前記表では、設定値6である確率が、フリーズ演出が「魚群」かつ「1・9揃い」であれば50.84%、同じく「サム」かつ「3・5・7揃い」であれば57.67%、同じく「サム」かつ「1・9揃い」であれば92.54%であることが示されており、これら各フリーズ演出態様が出現して他の設定値(1?5)である場合の確率(たとえば「サム」かつ「1・9揃い」であれば設定1?4である確率は1%以下、設定5である確率は6.22%)とくらべ非常に大きい。この記事の数値がメーカーの公表値ではなく実証値を示すものであるとしても、前記確率の差は有意であり、前記各フリーズ演出が設定値6を示唆するものであるといえる。 以上から、刊行物3には、広く頒布されるパチスロ遊技機の特定機種が、フリーズ演出が特定の設定値を示唆する演出態様を備えることが記載されているといえる。 (ウ)刊行物4:特開2009-172033号公報(平成21年8月6日発行) スロットマシンに関する刊行物4には以下の事項が記載されている。 「【0184】 次いで、ステップS303において、特殊入賞処理手段440が、スロットマシン10の出玉率設定が「1?6」のいずれであるかを確認する。そして、ステップS304に進み、スロットマシン10の出玉率設定「1?6」に応じた当選確率の抽選を実行する。この抽選表の実施例を図18(a)に示す。」 「【0197】 また、図12のBB役当選報知制御処理サブルーチン及び図13の出玉率設定報知制御処理サブルーチンにおいて、特殊小役入賞時の上記フリーズ演出と、画像表示手段70による演出との組合せによって、BB役の当選や出玉率の高設定に関する期待度を報知するようにしてもよい。」 上記記載において設定対象となる「出玉率」とは当選確率を指し(【0184】)、「出玉率設定」とは、それに応じて当選確率が異なる、スロットマシンのいわゆる「設定値」を指すことは当業者にとって自明である。そして当該記載では該「出玉率」が設定の対象となるものであるとされていることから、該設定を行うための手段を当該スロットマシンが備えることも、上記(ア)(イ)での検討と同様に、自明であるといえる。 また、「期待度を報知」とは、どの程度の確度で「出玉率の高設定」がなされているかの報知、を意味することが当業者に明らかである。 そうすると、当該記載事項には、スロットマシンにおいて、フリーズ演出に画像表示手段による演出を組み合わせて、スロットマシンの設定値が高設定値であることの期待度を報知することが記載されているといえ、設定値をそのまま報知するのではなくその「期待度」(確度)により非直接的に報知するのであるから、当該報知はそのままではなくそれとなく知らせるものであるという点で「示唆」にあたるといえる。 (エ)刊行物5:特開2007-90038号公報(平成19年4月12日発行) 刊行物5には以下の事項が記載されている。 「【0007】 従って、遊技を連続して行なった場合、遊技の勝敗は内部抽選の結果に大きく依存することとなる。ここで、一般的なパチスロ遊技機においては、遊技者の有利さ度合いを定める設定値を設定する設定手段が備えられている。この設定値に対応して当選役決定テーブルが複数記憶されており、設定値が高いほど遊技媒体の払出数の期待値が高くなるようにテーブル設定がされている。 【0008】 それゆえ、遊技者にとっては設定値の高い遊技機を見分け、選んで遊技することが遊技の勝敗を高める上において重要な要素となると同時に、遊技している遊技機の設定を推測することそれ自体が遊技者にとっての遊技の興趣を向上する一因となっているという現状がある。」 この記載は、パチスロ遊技機(スロットマシン)に「遊技者の有利さ度合いを定める設定値を設定する設定手段」を設けることは一般的なことであることを示すものである。 (オ)以上(ア)?(ウ)のとおり、拒絶査定において周知文献として提示された刊行物2?4では、スロットマシンにおいて高低の異なる値として「設定」されうる「設定値」なるものの存在を前提とする記載がなされており、このことからスロットマシンに該「設定値」を設定するための何らかの手段が備わることも自明であるといえる。 また、このことは、上記(エ)のとおり、刊行物5において、スロットマシン各機に設定される「設定値」やその「設定手段」についての一般的な事項について説明されていることからも裏付けられる。 よって、刊行物1発明において相違点1の構成を備えることは自明、または、少なくとも本件出願前に周知であった技術から当業者が容易に想到できたことである。 イ.相違点2について スロットマシンにおいて、停滞中演出すなわちフリーズ演出において、当該スロットマシンに設定された前記設定値を示唆する演出を実行させることも、上記ア.(ア)?(ウ)に挙げた刊行物2?4に記載されるとおり(下線部参照)、本件出願前の周知技術である。 よって、刊行物1発明において、相違点2の構成を付加することは、周知技術にもとづいて当業者が容易に想到し得たことである。 ウ.相違点3について フリーズ演出において設定値を示唆する演出を行うことも、上記刊行物3?5にも記載されているとおり、本願出願前の周知技術であるといえる。 よって、刊行物1発明において、フリーズ演出において実行する演出として、設定値を示唆する演出を付加または置き換えることは、周知技術にもとづいて当業者が容易に想到することができたことである。 エ.そして、本件補正発明の作用効果も、刊行物1発明および周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。 (5)請求人の主張について ア.審判請求書における主張について 請求人は審判請求書3.(4)において、刊行物1と刊行物2?4とを組み合わせると、一回の単位フリーズ演出中に設定値を示唆する演出が想起されるが、一回のフリーズ演出で該示唆がされた場合、続く次のフリーズ演出では設定値が示唆されないことになる点で、本件補正発明と相違する旨主張している。 また、この相違に伴い、「一の単位期間で設定値がすでに示唆された場合においても、当該単位期間に続く次の単位期間で設定値が示唆されるか否かに注目させて遊技者を楽しませる」という、刊行物1と刊行物2?4とを組み合わせた発明からは奏し得ない効果が得られる旨主張している。 しかし、刊行物2?4では設定値そのものの報知ではなく「示唆」(すなわち「それとなく気づかせること。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])にとどまり、特に刊行物3においては、例えばもっとも確度の高い示唆演出でも設定値6となる確度は100%未満であるため、刊行物1発明の、繰り返し実行される単位フリーズ演出個々に適用しても、遊技者に同じ情報しか与えない単なる繰り返しの報知となることはないから、前記単位フリーズ演出個々に適用することに格別の阻害要因はない。 また、請求人が上記のとおり主張する本件補正発明の作用効果は、前記のとおり繰り返される個々の単位フリーズ演出に刊行物2?4に記載された技術事項を組み合わせることで自ずと得られるもので、格別なものではない。 よって、請求人の前記主張は採用できない。 イ.上申書における主張について 請求人は平成29年3月27日付け上申書において、本件補正発明における構成Gを、 「G’ 前記設定値には、第1設定値と、前記第1設定値に比して前記遊技媒体の出率が有利となる第2設定値と、があり、 複数種類の演出態様には、前記設定値を示唆可能な設定示唆演出態様が複数あり、 前記複数の設定示唆演出態様には、第1設定値が設定されているとき、及び前記第2設定値が設定されているときに決定可能な非特定設定示唆演出態様と、前記第1設定値が設定されているときに決定不能であって、且つ前記第2設定値が設定されているときに決定可能な特定設定示唆演出態様と、があり、」 と改める用意がある旨の主張をしている。 しかしながら、請求項1の補正を行う機会は、平成28年1月28日付け拒絶理由通知後、及び、平成28年11月16日の拒絶査定不服審判の請求時にあり、また、平成29年1月11日付けの前置報告書は平成28年8月4日付け拒絶査定で引用された刊行物を用いて、該拒絶査定と同様の判断を示すものであって、新たな判断を示すものではない。 そして、審査段階の手続に瑕疵があったわけでもない。 以上のことから、審理の公平性の観点から請求人の主張を受け入れることはできない。 (6)小括 したがって、上記(4)ア?エにおいて検討したように、本件補正発明は、刊行物1発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび 上記3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年4月4日付けの手続補正書により補正された、上記第2の1.で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 2.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、上記第2.の3.(2)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、本件補正発明の発明特定事項に対し、上記第2.2.で述べたとおり (1)構成Dの「単位期間分」に対し「一の」を付し、 (2)構成Gの「設定示唆演出態様」の下線部を省き、 (3)構成Hの「前記演出態様決定手段が前記単位期間ごとの停滞中演出の演出態様を決定することにより、複数の前記単位期間で前記設定示唆演出態様の停滞中演出を実行可能である」点を省いたものである。 本件補正発明と刊行物1発明の相違点は上記第2.の3.(3)で検討したとおりであり、そのうち相違点2及び3は前記(2)・(3)の省かれた構成についてのものであるから、本願発明と刊行物1発明との相違点は、上記相違点1のみである。 そして、上記相違点1が刊行物1発明及び周知技術にもとづいて当業者が容易に想到し得たものであることは上記第2.の3.(4)で述べたとおりである。 したがって、本願発明は、刊行物1発明及び周知技術にもとづいて当業者が容易に想到し得たものであるといえる。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1発明及び周知技術にもとづいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-06-23 |
結審通知日 | 2017-06-27 |
審決日 | 2017-07-13 |
出願番号 | 特願2013-51798(P2013-51798) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 範久、金子 和孝、鶴岡 直樹 |
特許庁審判長 |
瀬津 太朗 |
特許庁審判官 |
樋口 宗彦 長井 真一 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 恩田 誠 |
代理人 | 恩田 博宣 |