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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1331876
審判番号 不服2016-14599  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-29 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2015- 72404「出荷作業支援方法,出荷作業支援装置および出荷作業支援プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開,特開2016-192120,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年3月31日の出願であって,平成28年4月19日付けで拒絶理由通知がされ,平成28年6月8日付けで意見書が提出され,平成28年6月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年9月29日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成28年10月28日付けで前置報告がなされ,平成29年5月8日付けで拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,平成29年6月27日付けで意見書が提出されるとともに,手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年6月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-5に係る発明は,以下の引用文献A-Eに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2006-8374号公報
B.特開2004-99278号公報
C.特開2010-269858号公報
D.特開2011-6185号公報
E.特開2010-6595号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

本願請求項1-4に係る発明は,以下の引用文献1-3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開2010-6595号公報(拒絶査定時の引用文献E)
2.特開2004-99278号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2004-91148号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は,平成29年6月27日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-5は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
入荷日時と,商品コードと,場所コードとの組を含む,管理対象特定情報を記憶するステップと,
出荷に係る商品の種類を特定する商品コードを少なくとも1つ表す,商品コード画像の入力を受け付けるステップと,
前記商品コードを,前記商品コード画像に基づいて取得するステップと,
場所画像の入力を受け付けるステップと,
前記場所画像に基づいて起点場所コードを取得するステップと,
前記商品コードに関連付けられた目的地場所コードを取得するステップであって,
前記商品コードに関連付けられた目的地場所コードを取得する前記ステップは,
‐当該商品コードを含む1つ以上の管理対象特定情報を特定するステップと,
‐複数の前記管理対象特定情報が特定された場合に,特定された管理対象特定情報のそれぞれについて,前記起点場所コードと,当該管理対象特定情報に含まれる場所コードとに基づいて,距離を計算するステップと,
‐複数の前記管理対象特定情報が特定された場合に,特定された前記管理対象特定情報のうちから,前記入荷日時と,計算された前記距離とに基づいて,1つの前記管理対象特定情報を選択するステップと,
‐特定されまたは選択された1つの管理対象特定情報に含まれる場所コードを,前記目的地場所コードとして取得するステップと
を備える,前記商品コードに関連付けられた目的地場所コードを取得するステップと,
前記起点場所コードによって特定される場所と,前記目的地場所コードによって特定される場所との相対的位置関係を表す情報を出力するステップと,
を備える,出荷作業支援方法であって,
前記商品コード画像は,さらに各前記商品コードについて前記商品の出荷総数を表し,
前記出荷作業支援方法は,
前記出荷総数を,前記商品コード画像に基づいて取得するステップと,
出荷に係る商品を表す商品画像の入力を受け付けるステップと,
前記商品コードを前記商品画像に基づいて取得する,商品コード取得ステップと,
少なくとも1つの場所について,その場所に係る前記商品の出荷数を取得するステップと,
各場所に係る出荷数の総和と,前記出荷総数とを比較するステップと,
各場所に係る出荷数の総和と,前記出荷総数との比較結果に応じて異なる情報を出力するステップと
を備える,出荷作業支援方法。
【請求項2】
前記1つの前記管理対象特定情報を選択する前記ステップは,
所定の基準に基づき,入荷日時が古い前記管理対象特定情報を選択するステップと,
選択された入荷日時が古い前記管理対象特定情報のうち,計算された前記距離が最も小さいものを,前記1つの前記管理対象特定情報として選択するステップと,
を備える,
請求項1に記載の出荷作業支援方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記管理対象特定情報について,その管理対象特定情報に係る出荷数の入力を受け付けるステップと,
各前記管理対象特定情報に係る出荷数に基づき,各前記管理対象特定情報に関連付けられた在庫数を更新する情報を出力するステップと
をさらに備える,請求項1または2に記載の出荷作業支援方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載の各ステップを実行する,持ち運び可能な出荷作業支援端末。
【請求項5】
請求項1?4のいずれか一項に記載の各ステップをコンピュータに実行させる出荷作業支援プログラム。」

第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
平成29年5月8日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注;下線は,参考のため当審で付与した。)

A 「【0018】
以下に添付図面を参照して,この発明に係るピッキング支援システム及びピッキング支援方法の実施の形態を詳細に説明する。
…(中略)…
【0019】
(概要)
図1は,本実施の形態に係るピッキング支援システムの概要を説明するための模式図,図2は,ハンディ・ターミナルによるピッキング用伝票の読取り状態を示す模式図である。図1に示すように,ピッキング支援システムは,物流センターにおける商品のピッキング作業を支援するものであり,ハンディ・ターミナル110とタッチタグ120とを備えた構成となっている。ハンディ・ターミナル110は,作業者が身体に装着して携行する携帯端末である。タッチタグ120は,商品棚500の引き出し501の前面に貼付されている。すなわち,商品棚500には前面に向けて引き出し可能な複数の引き出し501が設けられており,各引き出し501にはそれぞれ異なる商品が収容されており,これら各引き出し501の前面にタッチタグ120が貼付されている。これら受信側のハンディ・ターミナル110と発振側のタッチタグ120は,いずれも人体を媒介とした人体通信の機能を有している。
【0020】
タッチタグ120は,貼付された引き出しに収納されている商品を一意に識別するための商品コードを記憶すると共に,この商品コードを人体通信によって送信するもので,特許請求の範囲における記憶媒体に対応する。
【0021】
ハンディ・ターミナル110は,ピッキング対象の商品の商品コード及びピッキングすべき所要の数量を記憶するもので,特許請求の範囲における照合装置に対応する。これら情報のハンディ・ターミナル110への入力方法は任意であるが,例えば,図2に示すように,ピッキング用伝票1に記載された2次元バーコード2をハンディ・ターミナル110にてスキャンし,この2次元バーコード2をハンディ・ターミナル110にて解析することで,これらの情報を入力する。
【0022】
また図1に示すように,ハンディ・ターミナル110は,各商品コード毎に,当該商品コードに対応する商品の収納先の商品棚500の識別情報である棚番号を記憶しており,読み取った商品コードの商品が収納されている商品棚500の棚番号やその位置と商品コードを,当該ハンディ・ターミナル110に設けた表示部114に表示する。作業者は表示部114に表示された商品棚500を確認して,その商品棚500へ向かうので,作業者はピッキング対象の商品が収納された商品棚500を正確に把握することができる。
【0023】
そして,作業者は,表示部114に表示された商品コードの商品を,商品棚500の引き出しからピッキングする。商品棚500の各引き出し501にはタッチタグ120が貼付されているので,作業者が商品をピッキングしようとする際に引き出し501を開けることによりタッチタグ120に手をかざして近接すると,タッチタグ120に記憶されている商品コードが,作業者の人体を媒介として,当該作業者が保持するハンディ・ターミナル110に送信される。
【0024】
ハンディ・ターミナル110は,タッチタグ120から人体通信により送信された商品コードを受信し,受信した商品コードとピッキング用伝票1から読み取った商品コードとを照合する。そして,ハンディ・ターミナル110は,受信した商品コードとピッキング用伝票1から読み取った商品コードとが一致しない場合には,作業者がピッキングした商品に誤りがあると判断して,その旨の音声出力及び表示を行う。また,受信した商品コードとピッキング用伝票1から読み取った商品コードとが一致する場合には,先にピッキング用伝票1から読み取った所要の数量を音声出力部115から音声出力するようにしてもよい。
【0025】
また,作業者が商品をピッキングする毎に,タッチタグ120に近接することになるため,そのたびにタッチタグ120から商品コードが作業者の人体を介した人体通信により送信される。ハンディ・ターミナル110は,タッチタグ120からの送信毎に商品コードを受信し,作業者により完了ボタンが押下されるまで商品コードの受信回数をカウントし,カウント数がピッキング用伝票1から読み取った商品の数を超えていないか否かを判断する。そして,超えた場合には,ピッキング対象の商品のピッキング数に誤りがある旨を音声出力する。」

B 「【0029】
メモリ117は,バーコードリーダ111により読み取った商品コードと,商品の所要のピッキング数である数量とを対応付けて一時的に記憶する記憶手段である。
…(中略)…
【0032】
カウンタ113は,人体通信部116によってタッチタグ120から受信した商品コードとメモリ117に一時的に記憶された商品コードとが一致すると判断する毎にその回数,すなわち,人体通信による商品コードの受信回数をカウントするもので,特許請求の範囲における計数手段に対応する。
【0033】
不揮発性メモリ118は,例えばフラッシュメモリなどの記憶媒体であり,商品配置テーブル119を記憶するもので,特許請求の範囲における商品配置情報記憶手段に対応する。商品配置テーブル119を記憶するもので,特許請求の範囲における商品配置情報記憶手段に対応する。商品配置テーブル119は,商品コードと,商品コードに対応する商品が収納されている商品棚500を一意に識別するための棚番号とを対応付けたテーブルである。図4は,商品配置テーブル119のデータの内容の一例を示す説明図である。図4に示すように,商品配置テーブル119には,商品コード毎に棚番号が対応して登録されている。」

C 「【0043】
まず,作業者は,ハンディ・ターミナル110のバーコードリーダ111により,ピッキング用伝票1に記載された2次元バーコード2をスキャンする(ステップS11)。バーコードリーダ111は,スキャン入力されたバーコードから商品コードと数量を読み取り,両者を対応付けてメモリ117に保存する(ステップS12)。
【0044】
次に,棚検索部131は,メモリ117に保存された商品コードに対応する商品棚500の棚番号を商品配置テーブル119から検索し,検索された棚番号に対応する商品棚500の配置位置を表示部114に表示する(ステップS13)。これにより,作業者は,ピッキング対象の商品が収納されている商品棚500の場所を,表示部114に表示された商品棚500の配置位置によって把握することができるので,ピッキング対象以外の商品の商品棚500に誤って移動して,誤った商品をピッキングすることを防止することができる。また,表示部114による表示と共に,商品棚500の場所を,音声出力部115にて音声出力してもよい。」

D 「【0048】
一方,ステップS16において,人体通信部116が受信した商品コードとメモリ117に記憶された商品コードが一致する場合には(ステップS16,Yes),作業者がピッキングした商品は,ピッキング用伝票1から読み取った商品コードの商品と同じであると判断して,カウンタ113はピッキングした商品の数をカウントアップする(ステップS17)。なお,この場合にも,ピッキングした商品がピッキング対象の商品と同じである旨の音声出力や表示出力を行うようにしてもよい。
【0049】
次に,作業者がピッキング作業を完了してハンディ・ターミナル110の完了ボタンを押下したか否かを判断し(ステップS19),完了ボタンが押下されるまで(ステップS19,No),ステップS15からS18の処理を繰り返し実行する。
【0050】
一方,作業者がハンディ・ターミナル110の完了ボタンを押下した場合には(ステップS19,Yes),カウンタ113によるカウント数が,メモリ117に記憶された商品の数量を超えていないか否かを判断する(ステップS20)。そして,超えている場合には(ステップS20,No),音声出力部115は,作業者がピッキングした商品の数がピッキング用伝票1の商品の数量より多い可能性がある旨の警告の音声出力を行う(ステップS21)。このとき,同様の警告メッセージが表示部114に表示される。」

(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記Aの段落【0018】の「ピッキング支援方法」との記載,同じく上記Aの段落【0022】の「ハンディ・ターミナル110は,各商品コード毎に,当該商品コードに対応する商品の収納先の商品棚500の識別情報である棚番号を記憶して」いるとの記載,また,上記Bの段落【0033】の「不揮発性メモリ118は」「商品配置テーブル119を記憶するもので,」「商品配置テーブル119は,商品コードと,商品コードに対応する商品が収納されている商品棚500を一意に識別するための棚番号とを対応付けたテーブルである」との記載から,“商品コードと,商品コードに対応する商品が収納されている商品棚の棚番号とを対応付けたテーブルである,商品配置テーブルを記憶するステップ”を備える“ピッキング支援方法”を読み取ることができる。

イ 上記Aの段落【0020】の「商品を一意に識別するための商品コード」,同じく上記Aの【0021】の「ハンディ・ターミナル110は,ピッキング対象の商品の商品コード及びピッキングすべき所要の数量を記憶するもので,」「これら情報のハンディ・ターミナル110への入力方法は任意であるが,例えば,図2に示すように,ピッキング用伝票1に記載された2次元バーコード2をハンディ・ターミナル110にてスキャンし,この2次元バーコード2をハンディ・ターミナル110にて解析することで,これらの情報を入力する」との記載から,2次元バーコードをスキャンし,解析することによって,ピッキング対象の商品の商品コードが得られること,すなわち,2次元バーコードは,ピッキング対象の商品の商品コードを表すものであることが読み取れる。
また,上記Cの段落【0043】の「ハンディ・ターミナル110のバーコードリーダ111により,ピッキング用伝票1に記載された2次元バーコード2をスキャンする」,「バーコードリーダ111は,スキャン入力されたバーコードから商品コードと数量を読み取り,両者を対応付けてメモリ117に保存する」との記載から,2次元バーコードをスキャン入力し,スキャン入力された2次元バーコードから,ピッキング対象の商品を一意に識別する商品コードを読み取ることが読み取れる。
そうすると,上記記載から,“ピッキング対象の商品を一意に識別する商品コードを表す2次元バーコードをスキャン入力するステップと,上記商品コードを,スキャン入力された2次元バーコードに基づいて読み取るステップ”が読み取れる。

ウ 上記Cの段落【0044】の「棚検索部131は,メモリ117に保存された商品コードに対応する商品棚500の棚番号を商品配置テーブル119から検索し,検索された棚番号に対応する商品棚500の配置位置を表示部114に表示する」との記載から,“商品配置テーブルから,当該商品コードに対応する商品棚の棚番号を検索することにより,当該商品コードに対応する商品棚の棚番号を取得するステップ”と,“取得した棚番号に対応する商品棚の配置位置を表示するステップ”が読み取れる。

エ 上記Aの段落【0021】の「ハンディ・ターミナル110は,ピッキング対象の商品の商品コード及びピッキングすべき所要の数量を記憶する」との記載,上記Bの段落【0029】の「メモリ117は,バーコードリーダ111により読み取った商品コードと,商品の所要のピッキング数である数量とを対応付けて一時的に記憶する」との記載,上記Cの段落【0043】の「バーコードリーダ111は,スキャン入力されたバーコードから商品コードと数量を読み取り,両者を対応付けてメモリ117に保存する」との記載から,“2次元バーコードは,さらに商品コードについて当該商品のピッキングすべき数量を表し,ピッキングすべき数量を,2次元バーコードに基づいて取得するステップ”が読み取れる。

オ 上記Aの段落【0019】,【0020】,【0025】の「商品棚500には前面に向けて引き出し可能な複数の引き出し501が設けられており,各引き出し501にはそれぞれ異なる商品が収容されており,これら各引き出し501の前面にタッチタグ120が貼付されている」,「タッチタグ120は,貼付された引き出しに収納されている商品を一意に識別するための商品コードを記憶する」,「作業者が商品をピッキングする毎に,・・・タッチタグ120から商品コードが作業者の人体を介した人体通信により送信される」との記載から,“ピッキングされた商品の商品コードを,商品棚の,当該商品が収納されている引き出しに貼付されたタッチタグに基づいて取得する,商品コード取得ステップ”が読み取れる。
加えて,上記Bの段落【0029】の「メモリ117は,バーコードリーダ111により読み取った商品コードと,商品の所要のピッキング数である数量とを対応付けて一時的に記憶する」との記載,上記Dの段落【0048】の「人体通信部116が受信した商品コードとメモリ117に記憶された商品コードが一致する場合には」「カウンタ113はピッキングした商品の数をカウントアップする」との記載,及び,上記イにおける検討から,“商品が収納されている引き出しに貼付されたタッチタグから取得した商品コードと,メモリ117に記憶された,ピッキング対象の商品の商品コードとが一致する場合に,ピッキングした商品の数をカウントするステップ”が読み取れる。
ここで,商品が収納されている引き出しに貼付されたタッチタグ120から取得した商品コードと,メモリ117に記憶された,ピッキング対象の商品の商品コードとが一致する場合とは,ピッキング対象の商品が収納されている商品棚の引き出しにおいてピッキングする場合であることは明らかであるから,上記ステップは,“ピッキング対象の商品が収納されている商品棚の引き出しにおいて,ピッキングした商品の数をカウントするステップ”と言い換えることができる。

カ 上記Dの段落【0050】の「作業者がハンディ・ターミナル110の完了ボタンを押下した場合には(ステップS19,Yes),カウンタ113によるカウント数が,メモリ117に記憶された商品の数量を超えていないか否かを判断」し,「超えている場合には(ステップS20,No),音声出力部115は,作業者がピッキングした商品の数がピッキング用伝票1の商品の数量より多い可能性がある旨の警告の音声出力を行う」との記載から,“カウントした商品の数が,ピッキングすべき商品の数量を超えていないかを判断するステップと,ピッキングすべき商品の数量を超えている場合には警告の音声出力を行うステップ”とが読み取れる。

キ 前記ア乃至カによれば,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が示されている。

「 商品コードと,商品コードに対応する商品が収納されている商品棚の棚番号とを対応付けたテーブルである,商品配置テーブルを記憶するステップと,
ピッキング対象の商品を一意に識別する商品コードを表す2次元バーコードをスキャン入力するステップと,
上記商品コードを,スキャン入力された2次元バーコードに基づいて読み取るステップと,
商品配置テーブルから,当該商品コードに対応する商品棚の棚番号を検索することにより,当該商品コードに対応する商品棚の棚番号を取得するステップと,
取得した棚番号に対応する商品棚の配置位置を表示するステップと,
を備える,ピッキング支援方法であって,
2次元バーコードは,さらに商品コードについて当該商品のピッキングすべき数量を表し,
前記ピッキングすべき数量を,2次元バーコードに基づいて取得するステップと,
ピッキングされた商品の商品コードを,商品棚の,当該商品が収納されている引き出しに貼付されたタッチタグに基づいて取得する,商品コード取得ステップと,
上記ピッキング対象の商品が収納されている商品棚の引き出しにおいて,ピッキングした商品の数をカウントするステップと,
カウントした商品の数が,ピッキングすべき商品の数量を超えていないかを判断するステップと,
ピッキングすべき商品の数量を超えている場合には警告の音声出力を行うステップと
を備える,ピッキング支援方法。」


2.引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
平成29年5月8日付けの拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注;下線は,参考のため当審で付与した。)

E 「【0006】
本発明の他の目的は,仕分け作業,検品作業等におけるヒューマンエラーを低減する荷管理システムを提供することである。
【0007】
本発明の更に他の目的は,業務経験が浅い者が仕分け作業,検品作業等を行うことを容易にする荷管理システムを提供することである。
…(中略)…
【0088】
[第5の実施の形態]
図14を参照して,本実施の形態における荷管理システムにおける集配場20は,棚21-1?21-Mを備えている。棚21-1?21-Mは,区画21-m-n(m=1,2,…,M;n=1,2,…,N)に分けられており,各々の区画21-m-n(m=1,2,…,M;n=1,2,…,N)は,RFIDのタグである区画タグ22-m-n(m=1,2,…,M;n=1,2,…,N)を備えている。
…(中略)…
【0090】
図15を参照して,ホストコンピュータ9は,作業テーブル40を備えている。作業テーブル40は,作業者ID1-1ID?1-IIDと,作業者1-1?1-Iのそれぞれが業務を行う予定の区画である移動先区画21-m-n(m=1,2,…,M;n=1,2,…,N)の移動先区画ID21-m-nID(m=1,2,…,M;n=1,2,…,N)との対応を記録している。
【0091】
このような構成を備える荷管理システムは,次のように動作する。
【0092】
ある作業者1-iに注目して,作業者1-iは,仕分け,検品等の作業を行う際,作業者ID1-iIDを携帯端末2-iに登録する。
【0093】
携帯端末2-iはリーダ201を備えている。リーダ201は,区画タグ22-m-nから区画ID21-m-nIDを読み取る。携帯端末2-iは,作業者ID1-iIDと区画ID21-m-nIDとをペアにして,ホストコンピュータ9に自動的に送信する。
【0094】
ホストコンピュータ9は,携帯端末2-iから受信したデータによって,作業者1-iが現在,区画21-m-nの近くにいることを知ることができる。
【0095】
ホストコンピュータ9は,作業者1-iがいる区画21-m-nを始点とし,作業テーブル40において作業者1-iの配置場所として予定されている移動先区画21-p-qを終点とする道筋を案内するナビゲーション情報を,携帯端末(2-i)に発信する。
…(中略)…
【0098】
作業者の現在位置を把握した上でなされるナビゲーションは分かりやすく,経験の浅い作業者でも必要とされる場所に移動することが容易になる。」

(2)引用文献2に記載された技術
上記Eの段落【0092】の「作業者1-iは,仕分け,検品等の作業を行う際,作業者ID1-iIDを携帯端末2-iに登録する」との記載,同じく上記Eの段落【0093】,【0094】,【0095】の「携帯端末2-i」の「リーダ201は,区画タグ22-m-nから区画ID21-m-nIDを読み取」り,「携帯端末2-iは,作業者ID1-iIDと区画ID21-m-nIDとをペアにして,ホストコンピュータ9に自動的に送信する」,「ホストコンピュータ9は,携帯端末2-iから受信したデータによって,作業者1-iが現在,区画21-m-nの近くにいることを知る」,「ホストコンピュータ9は,作業者1-iがいる区画21-m-nを始点とし,作業テーブル40において作業者1-iの配置場所として予定されている移動先区画21-p-qを終点とする道筋を案内するナビゲーション情報を,携帯端末(2-i)に発信する」との記載より,ホストコンピュータ9は,携帯端末2から,作業者が現在近くにいる区画21の区画タグ22を受信すると,当該区画タグ22が表す区画を始点とし,前記作業者の移動先区画を終点とするナビゲーション情報を出力する技術を読み取ることができる。
また,上記Eの段落【0007】,【0088】-【0098】には,「荷管理システム」における荷管理方法が示されている。

以上の記載から,引用文献2には,
“携帯端末によって作業者のいる棚の区画タグを読み取るステップと,
前記区画タグが表す区画を始点,移動先区画を終点とするナビゲーション情報を携帯端末に発信するステップ”とを備える,荷管理の技術が示されている。

3.引用文献3について
(1)引用文献3に記載された事項
平成29年5月8日付けの拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注;下線は,参考のため当審で付与した。)

F 「【0016】
倉庫から物品を出庫するときは,上記入力手段11から出庫指示として「品番」「出庫数」を入力する(図4 S1)。管理装置1は入力手段11からの入力をうけ,記憶手段12に記憶されている在庫情報に基づいて出庫対象となる物品を特定し,図3に示すような引当テーブル30を作成する(図4 S2)。このとき,出庫指示の「品番」に該当する物品が複数の「収納位置」にあるときは,「収納位置」の番号が一番小さい等の条件に基づき特定される。
…(中略)…
【0018】
図3は,「品番」として「A0001」,「出庫数」として「90」を入力したときに,図2の在庫情報である在庫テーブル20から「収納位置」が「03列」である物品が特定された様子を示している。…(中略)…
【0019】
…(中略)… 「推奨ロケーション」は,管理装置1が特定した出庫対象物品に対応する「収納位置」である。また,「引当数量」は,上記出庫指示の「出庫数」であり,「完了数量」は,作業完了数が0であるので「0」である。
【0020】
管理装置1は,作成した引当テーブル30の「品番」「ロット番号」「出庫数」(物品情報)及び「推奨ロケーション」(位置情報)を,ネットワーク10を通じて作業者用端末2に伝達し,表示手段5に各情報を表示する(図4 S3)。
…(中略)…
【0022】
作業者は作業者用端末2の表示手段5の表示に従い,「推奨ロケーション」が示す位置に移動し出庫作業を行う。物品を出庫する際に,作業者は,出庫作業を行う位置の位置情報を位置情報入力手段3から入力する(図4 S4)。例えば,倉庫内の各収納位置に位置情報が記録されているバーコードを設け,バーコードリーダで読み取ることで行えばよい。
…(中略)…
【0024】
出庫作業完了時に作業者は,作業者用端末2に設けられた作業完了ボタン21を押すとともに実際に出庫した数量を,作業者用端末2に備えた入力手段22により入力する(図4 S6)。このとき,管理装置1には作業終了と該出庫数が伝達され,管理装置1は引当テーブル30の「完了数量」に該出庫数を加算し,「引当数量」から該出庫数を減算する。また,在庫テーブル20の上記出庫位置情報に対応する「数量」から該出庫数を減算する(図4 S7)。
【0025】
次に,表示手段5に表示された「推奨ロケーション」の位置以外にある同一物品を出庫する場合を説明する。
【0026】
作業者は,出庫したい同一物品の収納位置に移動する。物品を出庫する際に,作業者は,出庫作業を行う位置の位置情報を位置情報入力手段3から入力する(図4 S4)。
【0027】
…(中略)… 合致しない場合,管理装置1に出庫作業位置の位置情報が伝達され,該位置情報に対応する物品情報(「品番」及び「ロット番号」)が在庫テーブル20から読み出される。そして,管理装置1に備えている比較手段4において,該物品情報と引当テーブル30の物品情報(管理装置1が特定した物品情報)を比較する(図4 S9)。例えば,図3の引当テーブル30に対し,図2の在庫テーブル20の「収納位置」が「05列」である物品を出庫しようとした場合は,同一物品であるため物品情報は合致する。合致した場合,管理装置1は,作業者用端末2に正常な作業であることを伝達し,作業者用端末2の表示手段5には正常な作業である旨が表示される。作業者は,該表示を確認した後出庫作業を行う。…(中略)…
【0028】
出庫作業完了時に作業者は,作業者用端末2に設けた作業完了ボタン21を押すとともに実際に出庫した数量を,作業者用端末2に備えた入力手段22により入力する(図4 S6)。このとき,管理装置1には作業終了と該出庫数が伝達され,管理装置1は引当テーブル30の「完了数量」に該出庫数を加算し,「引当数量」から該出庫数を減算する。また,在庫テーブル20の上記出庫位置情報に対応する「数量」から該出庫数を減算する(図4 S7)。
【0029】
上記の出庫作業は引当テーブル30の「引当数量」が「0」となるまで繰り返し行われる(図4 S8)。なお,上記比較手段4での比較結果が不一致である場合,作業者用端末2に誤作業である旨が伝達され,表示手段5に表示されることは勿論である。
【0030】
上記のように,本願発明の構成により,管理装置1が特定した物品の同一物品を作業者が任意の位置から出庫することができ,効率的な出庫作業を行うことができる。特に,倉庫内で列を1グループとして物品を管理し,同一物品が複数列にわたり配置されているときには,任意の列から物品を出庫することが可能となり,出庫作業を効率的に行うことができる。」

(2)引用文献3に記載された技術
上記Fの段落【0016】,【0019】の「出庫指示の「品番」に該当する物品が複数の「収納位置」にあるときは,「収納位置」の番号が一番小さい等の条件に基づき特定される」,「「推奨ロケーション」は,管理装置1が特定した出庫対象物品に対応する「収納位置」である」との記載から,出庫指示の「品番」を含む複数の「収納位置」が特定された場合に,「収納位置」の番号が一番小さい等の条件に基づき「推奨ロケーション」を特定するステップが読み取れる。
また,上記Fの段落【0022】の「「推奨ロケーション」が示す位置に移動し出庫作業を行う」との記載,同じく上記Fの段落【0019】,段落【0024】の「「引当数量」は,上記出庫指示の「出庫数」であり」,「出庫作業完了時に作業者は,作業者用端末2に設けられた作業完了ボタン21を押すとともに実際に出庫した数量を,作業者用端末2に備えた入力手段22により入力する(図4 S6)。このとき,管理装置1には作業終了と該出庫数が伝達され,管理装置1は引当テーブル30の「完了数量」に該出庫数を加算し,「引当数量」から該出庫数を減算する。また,在庫テーブル20の上記出庫位置情報に対応する「数量」から該出庫数を減算する」との記載から,推奨ロケーションでの出庫作業が完了すると,そのロケーションに係る物品の出庫数を取得するステップと,出庫指示における出庫数である引当テーブル30の引当数量から,当該ロケーションに係る物品の出庫数を減算するステップが読み取れる。
さらに,上記Fの段落【0025】,【0026】の「次に,表示手段5に表示された「推奨ロケーション」の位置以外にある同一物品を出庫する場合を説明する」,「作業者は,出庫したい同一物品の収納位置に移動する」との記載,段落【0027】,【0028】の「同一物品であるため物品情報は合致する。合致した場合,・・・作業者は,該表示を確認した後出庫作業を行う」,「出庫作業完了時に作業者は,作業者用端末2に設けた作業完了ボタン21を押すとともに実際に出庫した数量を,作業者用端末2に備えた入力手段22により入力する(図4 S6)。このとき,管理装置1には作業終了と該出庫数が伝達され,管理装置1は引当テーブル30の・・・「引当数量」から該出庫数を減算する」との記載から,推奨ロケーション以外の同一物品の収納位置において,出庫に係る物品の出庫数を取得するステップと,出庫指示における出庫数である引当テーブル30の引当数量から,当該収納位置に係る物品の出庫数を減算するステップが読み取れる。

以上の記載から,引用文献3には,
“出庫指示の品番を含む複数の収納位置が特定された場合に,収納位置の番号が一番小さい等の条件に基づき推奨ロケーションを特定するステップと,
少なくとも推奨ロケーションにおいて,その位置に係る物品の出庫数を取得するステップと,
出庫指示における出庫数である引当テーブルの引当数量から,上記推奨ロケーションに係る物品の出庫数を減算するステップと,
推奨ロケーション以外の同一物品の収納位置において,出庫に係る物品の出庫数を取得するステップと,
出庫指示における出庫数である引当テーブルの引当数量から,当該収納位置に係る物品の出庫数を減算するステップ”を備える入出庫管理技術が示されている。


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「商品を一意に識別する商品コード」は,商品を一意に識別するものであって,当然商品の種類も識別,特定するものといえるから,本願発明1の「商品コード」に相当する。
また,引用発明の「商品コードに対応する商品が収納されている商品棚の棚番号」は,商品コードに対応付けられた収納場所情報,すなわち商品コードに関連付けられた場所情報といえるから,引用発明の「棚番号」は,本願発明1の「場所コード」に相当する。
加えて,引用発明の「商品コードと,商品コードに対応する商品が収納されている商品棚の棚番号とを対応付けたテーブルである,商品配置テーブル」は,「商品コード」と「場所コード」とを組にしたテーブルといえるから,本願発明1の「商品コードと,場所コードとの組を含む,管理対象特定情報」に対応し,両者は,商品コードと,場所コードとの組を含む情報である点で共通する。
そして,引用発明の「商品配置テーブルを記憶するステップ」は,本願発明1の「管理対象特定情報を記憶するステップ」に相当する。

イ 引用発明の「ピッキング対象の商品を一意に識別する商品コードを表す2次元バーコード」は,ピックキング対象の商品,すなわち出荷に係る商品,の種類を識別,特定するための商品コードを2次元画像として表示するものであるから,本願発明1の「商品コード画像」に相当する。
また,引用発明の「2次元バーコードをスキャン入力するステップ」は,商品コード画像の入力を受け付けるステップであるといえるから,本願発明1の「商品コード画像の入力を受け付けるステップ」に相当する。
加えて,引用発明の「商品コードを,スキャン入力された2次元バーコードに基づいて読み取るステップ」は,入力された2次元バーコードに基づいて商品コードを取得するステップであるから,本願発明1の「商品コードを,前記商品コード画像に基づいて取得するステップ」に相当する。

ウ 引用発明の「商品配置テーブルから,当該商品コードに対応する商品棚の棚番号を検索することにより,当該商品コードに対応する商品棚の棚番号を取得するステップ」は,商品配置テーブルの,商品コードと棚番号との組から,当該商品コードを含む組を検索し,当該商品コードを含む組を特定した後,特定した組に含まれる棚番号を取得すること,といえるから,本願発明1の「当該商品コードを含む1つ以上の管理対象特定情報を特定するステップ」,及び「特定されまたは選択された1つの管理対象特定情報に含まれる場所コードを」「取得するステップ」に相当する。
また,引用発明の「当該商品コードに対応する商品棚の棚番号を取得する」ことは,ピッキング対象の商品が配置されている場所を示すものであって,目的地場所を示すといえるから,本願発明1の「場所コードを,前記目的地場所コードとして取得するステップ」に相当し,かつ,管理対象特定情報を特定するステップと,特定されまたは選択された1つの管理対象特定情報に含まれる場所コードを目的地場所コードとして取得するステップとを備える点で,本願発明1の「前記商品コードに関連付けられた目的地場所コードを取得するステップ」に対応する。

エ 引用発明の「取得した棚番号に対応する商品棚の配置位置を表示するステップ」は,位置関係を表す情報を出力する点で,本願発明1の「相対的位置関係を表す情報を出力するステップ」と共通する。
また,引用発明の「ピッキング支援方法」は,出荷に係る商品の出荷作業を支援する方法である点で,本願発明1の「出荷作業支援方法」に対応する。

オ 引用発明は「2次元バーコードは,さらに商品コードについて当該商品のピッキングすべき数量を表し,」「前記ピッキングすべき数量を,2次元バーコードに基づいて取得するステップ」を有するところ,ピッキングすべき数量は,出荷総数といえるから,本願発明1の「商品コード画像は,さらに各前記商品コードについて前記商品の出荷総数を表し」,「前記出荷総数を,前記商品コード画像に基づいて取得するステップ」に相当する。

カ 引用発明の「ピッキングされた商品の商品コードを,商品棚の,当該商品が収納されている引き出しに貼付されたタッチタグに基づいて取得する,商品コード取得ステップ」は,出荷に係る商品の商品コードを取得するステップであるといえるから,その点で,本願発明1の「前記商品コードを」「取得する,商品コード取得ステップ」に対応する。
また,引用発明の「ピッキング対象の商品が収納されている商品棚の引き出しにおいて,ピッキングした商品の数をカウントするステップ」は,所定の商品棚の引き出しにおいて,その引き出しに収納されている商品のピッキング数,すなわち出荷数を取得するといえるから,本願発明1の「少なくとも1つの場所について,その場所に係る前記商品の出荷数を取得するステップ」に相当する。
さらに,引用発明の「カウントした商品の数が,ピッキングすべき商品の数量を超えていないかを判断するステップと,ピッキングすべき商品の数量を超えている場合には警告の音声出力を行うステップ」は,所定の棚番号における出荷数と,ピッキングすべき数量である出荷総数とを比較するステップと,出荷数が出荷総数より多いという比較結果であれば,警告情報を出力するステップといえる。
そうすると,引用発明の「カウントした商品の数が,ピッキングすべき商品の数量を超えていないかを判断するステップと,ピッキングすべき商品の数量を超えている場合には警告の音声出力を行うステップ」は,本願発明1の「各場所に係る出荷数の総和と,前記出荷総数とを比較するステップと,各場所に係る出荷数の総和と,前記出荷総数との比較結果に応じて異なる情報を出力するステップ」に対応し,両者は,所定の場所に係る出荷数と,出荷総数とを比較するステップと,所定の場所に係る出荷数と,出荷総数との比較結果に応じて異なる情報を出力するステップ,である点で共通する。

キ 前記ア乃至カの対比によれば,本願発明1と引用発明とは,次の点で一致し,そして,相違する。

<一致点>
「 商品コードと,場所コードとの組を含む,管理対象特定情報を記憶するステップと,
出荷に係る商品の種類を特定する商品コードを少なくとも1つ表す,商品コード画像の入力を受け付けるステップと,
前記商品コードを,前記商品コード画像に基づいて取得するステップと,
前記商品コードに関連付けられた目的地場所コードを取得するステップであって,
前記商品コードに関連づけられた目的地場所コードを取得する前記ステップは,
-当該商品コードを含む1つ以上の管理対象特定情報を特定するステップと,
-特定されまたは選択された1つの管理対象特定情報に含まれる場所コードを,前記目的地場所コードとして取得するステップと
を備える,前記商品コードに関連付けられた目的地場所コードを取得するステップと,
位置関係を表す情報を出力するステップと,
を備える,出荷作業支援方法であって,
前記商品コード画像は,さらに各前記商品コードについて前記商品の出荷総数を表し,
前記出荷作業支援方法は,
前記出荷総数を,前記商品コード画像に基づいて取得するステップと,
前記商品コードを取得する,商品コード取得ステップと,
少なくとも1つの場所について,その場所に係る前記商品の出荷数を取得するステップと,
所定の場所に係る出荷数と,前記出荷総数とを比較するステップと,
所定の場所に係る出荷数と,前記出荷総数との比較結果に応じて異なる情報を出力するステップと
を備える,出荷作業支援方法。」

<相違点1>
「管理対象特定情報」に関し,本願発明1では「入荷日時」を含むのに対し,引用発明の「商品配置テーブル」は入荷日時を含むことについて言及されていない点。

<相違点2>
本願発明1では,「場所画像の入力を受け付けるステップと,前記場所画像に基づいて起点場所コードを取得するステップ」,及び「前記起点場所コードによって特定される場所と,前記目的地場所コードによって特定される場所との相対的位置関係を表す情報を出力するステップ」を有するのに対し,引用発明では,起点場所コードを取得することについて言及されておらず,また,位置関係を表す情報は,単に,ピッキング対象の商品の「商品コード」から「取得した棚番号に対応する商品棚の配置位置」である点。

<相違点3>
「商品コードに関連付けられた目的地場所コードを取得するステップ」に関し,本願発明1では,「複数の前記管理対象特定情報が特定された場合に,特定された管理対象特定情報のそれぞれについて,前記起点場所コードと,当該管理対象特定情報に含まれる場所コードとに基づいて,距離を計算するステップと,」「複数の前記管理対象特定情報が特定された場合に,特定された前記管理対象特定情報のうちから,前記入荷日時と,計算された前記距離に基づいて,1つの前記管理対象特定情報を選択するステップ」とを備えるのに対して,引用発明では,複数の管理対象特定情報が特定される場合について言及されていない点。

<相違点4>
出荷に係る商品の「商品コード取得ステップ」に関し,本願発明1では,「出荷に係る商品を表す商品画像の入力を受け付けるステップと,前記商品コードを前記商品画像に基づいて取得する,商品コード取得ステップ」であるのに対して,引用発明では,当該商品が収納されている引き出しに貼付されたタッチタグから商品コードを取得する点。

<相違点5>
所定の場所に係る出荷数に関し,本願発明1では,「各場所に係る出荷数の総和」であるのに対して,引用発明では,各場所に係る出荷数を総和することについて言及されていない点。

(2)相違点に対する当審判断
事案に鑑みて,上記相違点3について先に検討する。
相違点3に係る,「複数の前記管理対象特定情報が特定された場合に,特定された前記管理対象特定情報のうちから,前記入荷日時と,計算された前記距離に基づいて,1つの前記管理対象特定情報を選択するステップ」について,上記引用文献1,2には,そもそも“複数の前記管理対象特定情報が特定された場合”を課題とする旨が記載されておらず,上記引用文献3には,出庫指示の品番を含む複数の収納位置が特定された場合について記載されているものの,どの収納位置を選択するかについては,収納位置の番号が一番小さい等の条件に基づいて決定するとしか記載されておらず,入荷日時や距離に基づいて決定することについて開示も示唆もされていない。
また,上記相違点3に係るステップは,本願出願前に当該技術分野において周知技術であったともいえない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2?5について
本願発明2,3は,本願発明1を更に限定したものであり,本願発明4,5は,本願発明1とカテゴリ表現上の差異があるだけの発明であるので,本願発明1と同様に,当業者が引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成29年6月27日付けの補正により,補正後の請求項1?5は,「複数の前記管理対象特定情報が特定された場合に,特定された管理対象特定情報のそれぞれについて,前記起点場所コードと,当該管理対象特定情報に含まれる場所コードとに基づいて,距離を計算するステップと,」「複数の前記管理対象特定情報が特定された場合に,特定された前記管理対象特定情報のうちから,前記入荷日時と,計算された前記距離に基づいて,1つの前記管理対象特定情報を選択するステップ」とを備える,「前記商品コードに関連付けられた目的地場所コードを取得するステップ」という技術的事項を有するものとなった。
上記技術的事項は,原査定における引用文献A-Eには記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1は,当業者であっても,原査定における引用文献A-Eに基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。更に,本願発明2?5も同様のことがいえるので,原審拒絶査定の理由が解消された。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-08-29 
出願番号 特願2015-72404(P2015-72404)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 月野 洋一郎  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 辻本 泰隆
佐久 聖子
発明の名称 出荷作業支援方法、出荷作業支援装置および出荷作業支援プログラム  
代理人 曾我 道治  
代理人 大井 一郎  

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