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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F16H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1331932
審判番号 不服2016-7956  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-31 
確定日 2017-09-19 
事件の表示 特願2012-553216「歯車を備えた定量ポンプ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 8月25日国際公開、WO2011/101120、平成25年 5月30日国内公表、特表2013-519851、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年2月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年2月18日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月3日付けで拒絶理由が通知され、同年11月4日に手続補正され、平成27年5月14日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年8月14日に手続補正されたが、平成28年1月21日付けで平成27年8月14日の手続補正が決定をもって却下されるとともに、同日付け(発送日平成28年2月2日)で拒絶査定され、これに対し、同年5月31日に拒絶査定不服審判が請求され、この審判の請求と同時に手続補正され、同年11月22日に上申書が提出され、その後、当審において平成29年3月3日付けで拒絶理由が通知され、同年6月1日に手続補正されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成29年6月1日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、次のとおりの発明である。

「【請求項1】
駆動モータ(10)と歯車機構とを有する駆動部を備えた定量ポンプ装置において、
前記歯車機構が、歯(23)に特徴を有する歯車(16)であって、前記歯(23)のそれぞれは、前記歯(23)の少なくとも第1のセクション(24)が、溝(30)によって隣接する歯(23)の前記第1のセクション(24)と分離されており、該第1のセクション(24)自体が弾力的な舌状物として形成され、それぞれが互いに依存せずに回転軸(Y)に対して径方向で内側へ曲がることができ、横断面において、前記歯(23)の隣接する第2のセクション(26)に対して径方向に突出すると共に弾性的に形成され、及び/又は弾性的に取り付けられて構成されており、
複数の歯(23)の前記第1のセクション(24)が前記歯車(16)の共通の円周線上に位置して、各歯(23)の前記第1のセクション(24)は、前記歯車(16)の回転軸(Y)に対して径方向で外側へ斜めに延びる先端を有しており、
前記第1のセクション(24)は、径方向に弾性を有しつつ前記歯(23)の隣接する第2のセクション(26)と結合されている、
ことを特徴とする定量ポンプ装置。」

また、本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮した発明である。

第3 刊行物
刊行物1:特開平1-249967号公報
刊行物2:特開平6-156197号公報
刊行物3:特開2002-181162号公報
刊行物4:特開平1-135961号公報
刊行物5:特開平2-173457号公報
刊行物6:特開平10-246314号公報
刊行物7:特開昭53-97153号公報
刊行物8:特開2009-47084号公報
刊行物9:米国特許出願公開第2009/0038852号明細書

1 刊行物1について
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物1の第3ページ右下欄第3行ないし第4ページ右下欄第16行及び第1図ないし第4図には、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「可逆転モータ15と減速歯車機構15aとを有する駆動部を備えた定量ポンプ」

2 刊行物2について
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物2には、図面(特に【図3】及び【図4】参照。)とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付した。以下同様。)

「【0011】特に図4に示したように、ピニオン42はその回転軸線に対して横方向に分割されている。この場合、一方の部分ピニオン54は、例えばポリアミドのような比較的変形不能な材料から成っており、これに対して他方の部分ピニオン56は弾性変位可能な材料、例えばポリウレタンから成っている。さらに図3および図4に示したように、歯付きセグメント50は、この実施例では、内歯52を有している。これら両部分ピニオン54,56はこの実施例では、軸線平行に配置されたリベット58によって互いに固く結合されている。しかしながらこれらのリベット自体は、回動不能な結合を説明するのに用いたにすぎない。いかなる手段によって両部分ピニオンを互いに結合するかは、目的に応じて選択される。図3および図4に明示したように、両部分ピニオン54,56の輪郭は、ピニオン軸として形成されたクランク軸60の回転軸線方向で見ると、同一ではない。明らかに、比較的変形不能な材料から成る部分ピニオン54は、弾性変位可能な材料から製造された他方の部分ピニオン56よりも若干小さい。さらに、図3から極めて明らかに分かるように、両部分ピニオンの歯62,64は、回転軸線方向で見て、互いに前後に位置している。このことは、弾性変位可能な材料から成る部分ピニオン56の輪郭が、全体の外輪郭に沿って、比較的変形不能な材料から成る部分ピニオン54の外輪郭を少しだけ超えて突出していることを意味している。図3から明らかなように、行程伝動装置の僅かな負荷段階ではピニオン42の弾性変位可能な部分ピニオン56の歯のみが、歯付きセグメント50の歯52と噛み合う。これにより、行程伝動装置の極めて静かで衝撃のない運転が達成される。しかしながら、行程伝動装置の負荷が高まると、部分ピニオン56の歯の側面が徐々に変形し、やがて、比較的変形不能な材料から成る部分ピニオン54の歯側面が歯付きセグメントの歯52に当接し、モーメントの伝達を共に行う。部分ピニオン56の歯側面の、このように徐々に生じる変形は、ノイズ発生なしに行なわれる。図3には、少しだけ大きな部分ピニオン56が、部分ピニオン54の輪郭を超えて突出した突出部分は符号66で示されている。この突出部分66は、通常では回避できない歯の遊びが存在しないように選択されている。すなわち、行程伝動装置20は、常に歯の遊び無しで作動するので、揺動反転位置においても、従来では大きな手間をかけずには、軽減できなかったノックが確実に回避される。」

3 刊行物3について
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物3には、図面(特に【図5】及び【図6】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0022】(実施例4)図5は本発明の噛み合い音低減ギヤの実施例4の説明図で、図5Aは実施例1の図1Aに対応する図、図5Bは前記図5Aの矢印VB方向から見た図である。図6は前記図5Bの要部拡大図である。なお、この実施例4の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例4は、下記の点で前記実施例2と相違しているが、他の点では前記実施例2と同様に構成されている。前記実施例2では、2枚のメイン従動ギヤG2aの間に、このメイン従動ギヤG2aに略同一形状のサブ従動ギヤG2bを回転方向上流側にずらして挟んで重ね合わせて一体成形するようにしたが、この実施例4では、2枚のメイン従動ギヤG2aの間に、メイン従動ギヤG2aに対してプラス転位したサブ従動ギヤG2bを挟んで重ね合わせて一体的に構成されている。前記2枚のメイン従動ギヤG2aは、略同一形状で、同時に噛み合えるように歯の位置が揃えられている。サブ従動ギヤG2bは、メイン従動ギヤG2aに対して正(プラス)転位され、メイン従動ギヤG2aに比べて、歯先円(外径)と歯底円とがそれぞれ大きく、且つ先端側の歯厚も厚くなっている。前記サブ従動ギヤG2bの歯形の中心がメイン従動ギヤG2aの歯形の中心に略一致させて重ね合わせた状態で一体的に構成されている。
【0023】(実施例4の作用)駆動ギヤG1が矢印A方向に回転すると、駆動ギヤG1の歯の回転方向下流側歯面が弾性を有するサブ従動ギヤG2bの歯の回転方向上流側歯面を押圧する。さらに、駆動ギヤG1の歯の回転方向下流側歯面がメイン従動ギヤG2aの歯の回転方向上流側歯面に当たって、押圧して、メイン従動ギヤG2aを矢印B方向に回転させる。一方、駆動ギヤG1が矢印A方向の反対方向に回転しても、駆動ギヤG1の歯の回転方向下流側歯面がサブ従動ギヤG2bの歯の回転方向上流側歯面を押圧する。さらに、駆動ギヤG1の歯の回転方向下流側歯面がメイン従動ギヤG2aの歯の回転方向上流側歯面に当たって、押圧して、メイン従動ギヤG2aを矢印B方向の反対方向に回転させる。したがって、駆動ギヤG1が所定の回転方向、あるいは逆の回転方向に回転しても、駆動ギヤG1がメイン従動ギヤG2aに噛み合う際に発生する噛み合い音を低減できる。」

(2)「【0025】(変更例)以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更実施例を下記に例示する。
(H01)メイン従動ギヤをPOM等の硬質樹脂、サブ従動ギヤをポリウレタン等の軟質樹脂により構成する代わりに、メイン従動ギヤをSUS等の金属などの剛性材料、サブ従動ギヤをポリウレタン等の軟質樹脂などの弾性材料でそれぞれ形成することも可能である。また、前記メイン従動ギヤとサブ従動ギヤとは、接着による接合、ボルトによる連結等で一体に構成することが可能である。
(H02)本発明は、駆動ギヤおよびメイン従動ギヤを形成する材料の材質を変えて組み合わせることも可能である。これによって、ギヤの噛み合い音の音質を変えて官能的にギヤの噛み合い音が小さく聞こえるようにしてもよい。
(H03)従動ギヤを回転力伝達ギヤとしてのメイン従動ギヤと衝撃緩和ギヤとしてのサブ従動ギヤとで構成する代わりに、駆動ギヤを回転力伝達ギヤと衝撃緩和ギヤとで構成することも可能である。
(H04)本発明の噛み合い音低減ギヤは、画像形成装置の用紙搬送系や定着装置の駆動系等に使用可能であり、また、情報機器の各種の搬送系、あるいは駆動系等にも使用可能である。」

4 刊行物4について
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物4には、図面(特に第1図ないし第3図参照。)とともに、次の事項が記載されている。

「以下、本発明の実施例を第1図から第3図に基づいて説明する。
第1図で示すように、駆動軸1に取り付けたバックラッシ除去機能付き歯車2に第1伝動歯車4と第2伝動歯車5がそれぞれ咬合わされ、これら伝動歯車4・5を介して第1被駆動軸6と第2被駆動軸7が駆動される。
バックラッシ除去機能付き歯車2は、第2図に示すように、駆動軸1に固定した動力伝達用歯車10と、この動力伝達用歯車10の端面に付設した円環状のバックラッシ除去用歯車11とからなり、これら両歯車10・11が共に伝動歯車4・5に咬合わされる。上記バックラッシ除去用歯車11は、転位や歯形修正により、その歯先円の直径が動力伝達用歯車10の歯先円の直径よりも大きい寸法に形成されるとともに、歯の咬合部の厚さT及び直径Dが動力伝達用歯車10の歯の咬合部の厚さt及び直径dよりも大きい寸法に形成されている。このバックラッシ除去用歯車11の内周面と内筒13の外周面との間に筒状のゴム製弾性部材14が装着される。このゴム製弾性部材14の外周面と内周面とは、それぞれ、バックラッシ除去用歯車11の内周面と内筒13の外周面に接着されている。上記の内筒13の内周面が動力伝達用歯車10のボス15の外周面に圧入される。
上記バックラッシ除去用歯車11は、第2図で示す自由状態では、弾性部材14を介して動力伝達用歯車10に同心状に支持されている。これに対して、第1図及び第3図で示す咬合い状態では、各伝動歯車4・5からバックラッシ除去用歯車11に加わる反力で弾性部材14が弾性変形し、バックラッシ除去用歯車11の軸心11aが動力伝達用歯車10の軸心10aから変位する。そして、弾性部材14の弾性復元力でバックラッシ除去用歯車11を伝動歯車4・5へ弾圧するようになっている。
なお、バックラッシ除去用歯車11の歯先円の直径は動力伝達用歯車10の歯先円の直径と同じ寸法であってもよい。
また、上記の弾性部材14は、ゴムで構成することに代えて、複数の圧縮コイルばねで構成してもよい。この場合、バックラッシ除去用歯車11と内筒13との間の環状空間に、歯車の径方向へ伸縮する圧縮コイルばねが周方向にほぼ等間隔で配置される。」(第2ページ右下欄第18行ないし第3ページ左下欄第2行)

5 刊行物5について
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物5には、図面(特にFig.7参照。)とともに、次の事項が記載されている。

「延長部の歯は変形する適当な材料であり、そこにおいて、歯は歯車歯に関して適当に変形可能な中実のエラストマ材料である。しかしながら、もしエラストマ材料が延長部の歯の過度の表面摩耗を阻止するために硬かったら、歯は捩り振動を十分吸収できない。第7図は歯車歯37のある延長部36の一部を示し、その歯の各々は変形し易いように貫通する穴すなわち開口38を有している。」(第4ページ右上欄第20行ないし左下欄第7行)

6 刊行物6について
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物6には、図面(特に【図1】、【図2】及び【図12】参照。)とともに、次の事項が記載されている。

「【0032】したがって、本実施の形態によれば、図12に示すようなサブギヤ8の倒れによって生ずるリード誤差を補正するべく、図1,2に示すようにそのリード誤差に応じたリード修正量aを予めサブギヤ8の歯形9に施してあることから、図2に示すようにドライブギヤ2およびドリブンギヤ3の静止時にはドライブギヤ2に対するサブギヤ8の噛み合いが適切でなくとも、図3に示すように、ドライブギヤ2およびドリブンギヤ3の回転運動に伴ってサブギヤ8が倒れを生じた場合には、上記のリード修正のためにドライブギヤ2とサブギヤ8との噛み合いが良好なものとなって、そのドライブギヤ2とサブギヤ8との噛み合い騒音が低減することになる。」

7 刊行物7について
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物7には、図面(特に第1図ないし第3図参照)とともに、次の事項が記載されている。
「以下、本発明を実施例の図面によって説明する。本発明の歯車10は本体1の外周部に歯部2を一体に設けてなり、該歯部2は本体1の厚さ方向に延長して延長部3に歯面4を形成させている。即ち噛合面4は本体1からその厚さ方向に突出した部分に形成され、従って噛合面4に外力が作用すると、延長部3が本体1の厚さ方向に弾性変形するように構成している。この弾性変形の度合いは延長部の突出量、歯形あるいは材質等によって適宜決定すればよい。
第3図は噛合状態を示し、対応歯車20と噛合する歯車1はその噛合面4の点5で接触し、歯部のピッチの変動等によって接触点5に加えられる力が変動すると、その変動量に応じて延長部3が弾性変形し、噛合部における歯形は二点鎖線で示すように変形し、この変形によって変動を打消すように作用する。このため各歯部に対する負荷の急激な変動はなくなり、非常に静かな噛合がなされる。なお、歯車10は駆動側、従動側のいずれに用いてもよく、あるいは対応歯車にも本発明の歯車を用いてもよい。」(第2ページ左上欄第11行ないし右上欄第16行)

8 刊行物8について
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物8には、図面(特に【図1】及び【図5】参照。)とともに、次の事項が記載されている。
「【0039】
例えば以上の実施形態では、電動モータ32として直流ブラシレスモータを採用したが、これに限らず、例えばステッピングモータや交流モータを採用してもよい。また、ポンプケース45の内部とモータケース33の内部との間の連通を阻止できる構成であれば、ポンプケース45のみ密閉構造を採用してもよい。」

9 刊行物9
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された上記刊行物9には、次の事項が記載されている。

「【0011】The noise level produced by the gearbox can be furether reduced if-as is espesially preferred-the gears that make up the gearbox are helical gears.」

(当審仮訳:、特に好ましくは、ギアボックスを構成する歯車が、はすば歯車である場合、ギアボックスによって生成される騒音レベルをさらに低減することができる。)

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「可逆転モータ15」は本願発明1の「駆動モータ(10)」に相当し、以下同様に、「減速歯車機構15a」は「歯車機構」に、「定量ポンプ」は「定量ポンプ装置」に、それぞれ相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。

[一致点]
「駆動モータと歯車機構とを有する駆動部を備えた定量ポンプ装置。」

[相違点]
本願発明1は、「前記歯車機構が、歯(23)に特徴を有する歯車(16)であって、前記歯(23)のそれぞれは、前記歯(23)の少なくとも第1のセクション(24)が、溝(30)によって隣接する歯(23)の前記第1のセクション(24)と分離されており、該第1のセクション(24)自体が弾力的な舌状物として形成され、それぞれが互いに依存せずに回転軸(Y)に対して径方向で内側へ曲がることができ、横断面において、前記歯(23)の隣接する第2のセクション(26)に対して径方向に突出すると共に弾性的に形成され、及び/又は弾性的に取り付けられて構成されており、
複数の歯(23)の前記第1のセクション(24)が前記歯車(16)の共通の円周線上に位置して、各歯(23)の前記第1のセクション(24)は、前記歯車(16)の回転軸(Y)に対して径方向で外側へ斜めに延びる先端を有しており、
前記第1のセクション(24)は、径方向に弾性を有しつつ前記歯(23)の隣接する第2のセクション(26)と結合されている」のに対し、引用発明の「減速歯車機構15a」は、かかる構成を備えているか不明である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点に係る本願発明1の構成について検討する。
相違点に係る本願発明1の構成のうち、「歯(23)の少なくとも第1のセクション(24)」が「横断面において、前記歯(23)の隣接する第2のセクション(26)に対して径方向に突出すると共に弾性的に形成され、及び/又は弾性的に取り付けられて構成されており」、「前記歯車(16)の回転軸(Y)に対して径方向で外側へ斜めに延びる先端を有して」いるとの構成は、刊行物2ないし刊行物9のいずれにも記載されていない。
また、「第1のセクション(24)」の上記構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項とも認められない。

そして、本願発明1は、上記相違点に係る本願発明1の構成、とりわけ「第1のセクション(24)」の上記構成により「歯車は、弾性の範囲が変形していない状態の第1のセクションにおいて、隣接する第2のセクションにおけるよりも大きなピッチ円直径を有する。噛合う歯車との係合時には、第1のセクションは、弾性的に径方向内側へと曲がり又は弾性的に圧縮され、それによってこの範囲での噛合う歯車との遊びのない係合が保証される。したがって、負荷変動もしくは負荷逆転の際にも、歯車間には望ましくない雑音が生じない。」(段落【0007】)との作用・効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点に係る本願発明1の構成は、当業者が引用発明及び刊行物2ないし9に記載された事項から容易に想到し得たとはいえない。

したがって、本願発明1は、当業者が引用発明及び刊行物2ないし9に記載された事項から容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2ないし本願発明9について
本願発明2ないし本願発明9は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明及び刊行物2ないし9に記載された事項から容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 原査定の概要
原査定は、平成26年11月4日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に係る発明について上記刊行物1ないし9に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年6月1日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9は、上記第4 1(1)の[相違点]に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、上記第4 1及び2のとおり、本願発明1ないし9は、引用発明及び刊行物2ないし9に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について(特許法第36条第6項第2号)
当審では、請求項1の「該第1のセクション(24)は弾力的な舌状物を形成して、横断面において、前記歯(23)の隣接する第2のセクション(26)に対して径方向に突出すると共に弾性的に形成され、及び/又は弾性的に取り付けられて構成されており、」との記載が不明確であるとの拒絶理由を通知している。
しかしながら、平成29年6月1日の手続補正により、「該第1のセクション(24)自体が弾力的な舌状物として形成され、それぞれが互いに依存せずに回転軸(Y)に対して径方向で内側へ曲がることができ、横断面において、前記歯(23)の隣接する第2のセクション(26)に対して径方向に突出すると共に弾性的に形成され、及び/又は弾性的に取り付けられて構成されており、」と補正されたため、当審の拒絶理由は解消された。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、当業者が引用発明及び刊行物2ないし9に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2012-553216(P2012-553216)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (F16H)
P 1 8・ 121- WY (F16H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 大輔  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
発明の名称 歯車を備えた定量ポンプ装置  
代理人 小川 護晃  
代理人 西山 春之  

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