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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1332036 |
審判番号 | 不服2016-2311 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-16 |
確定日 | 2017-09-07 |
事件の表示 | 特願2014- 91742「CABACにおける絶対値と正負記号の分離(SAVS)を使用したdQPの2値化」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月11日出願公開、特開2014-168281〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年 5月31日(パリ条約による優先権主張2011年 6月15日 米国、2011年 6月30日 米国、2012年 1月 6日 米国)に出願した特願2012-137298号の一部を平成26年 4月25日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は以下のとおりである。 手続補正 :平成26年 7月24日 拒絶理由(最初) :平成27年 7月 2日(起案日) 手続補正 :平成27年 9月 7日 拒絶査定 :平成27年11月10日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成28年 2月16日 手続補正 :平成28年 2月16日 第2 本件発明 本件出願の請求項1ないし16に係る発明は、平成28年 2月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものと認める。 そのうち、本件出願の請求項6に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりである。 符号化方法であって、 現在の符号化単位の量子化パラメータと現在の符号化単位の予測量子化パラメータとの差分である差分量子化パラメータを設定するステップと、 設定された前記差分量子化パラメータを、前記差分量子化パラメータの絶対値と前記差分量子化パラメータの正負を識別する識別値とに分離して、前記絶対値から前記識別値の順に符号化するステップと、 を備えることを特徴とする符号化方法。 第3 原査定の概要 原審の拒絶査定の概要は、次のとおりである。 (進歩性)平成27年 9月 7日付けの手続補正によって補正された、本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1-16 ・刊行物1、2 刊行物1.Thomas Wiegand, Woo-Jin Han, Benjamin Bross, Jens-Rainer Ohm, Gary J. Sullivan, WD3: Working Draft 3 of High-Efficiency Video Coding, Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 5th Meeting: Geneva, CH, 2011-6-13, [JCTVC-E603] (version 6) 刊行物2.特開2007-20141号公報(周知技術を示す文献) 第4 刊行物の記載及び刊行物発明等 1.刊行物1の記載及び刊行物1発明 (1)刊行物1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1には、「WD3: Working Draft 3 of High-Efficiency Video Coding」(タイトル)(和訳「WD3:高効率ビデオ符号化のワーキングドラフト3」)(以下、「刊行物1」という。)として、以下の事項が記載されている。なお、強調のために当審にて囲みを付与した。 i.「9.3.2 Binarization process Input to this process is a request for a syntax element. Output of this process is the binarization of the syntax element, maxBinIdxCtx, ctxIdxOffset, and bypassFlag. Table 9-31 specifies the type of binarization process, maxBinIdxCtx, ctxIdxTable, and ctxIdxOffset associated with each syntax element.(当審注:上記の「Table 9-31」は、「Table 9-44」の誤記である。)(略) 」(第174頁-第175頁) (当審訳 「9.3.2 2値化プロセス このプロセスの入力は、シンタックスエレメントの要求である。 このプロセスの出力は、2値化されたシンタックスエレメント、maxBinIdxCtx、ctxIdxOffset及びbypassFlagである。 表9-44は、各シンタックスエレメントに関連づけられた2値化プロセスのタイプ、maxBinIdxCtx、ctxIdxTablec及びtxIdxOffsetを指定する。(略)」) また、上記の表9-44のcu_qp_deltaの行のType of Binarizationの列には、2値化の方法が9.3.2.7節で指定されることが記載されている。 ii.「9.3.2.7 Binarization process for cu_qp_delta」(第180頁) (当審訳 「9.3.2.7 cu_qp_deltaの2値化プロセス」) (2)刊行物1発明 上記のi.及びii.の記載及びこの分野における技術常識を考慮して、刊行物1に開示された発明(以下、「刊行物1発明」という。)を認定する。 刊行物1は、そのタイトルに示されるように、ビデオの符号化に関する技術である。 そして、上記のi.には、符号化(2値化)を行うこと及びcu_qp_deltaが符号化(2値化)の対象であることが記載されている。さらに、ii.に記載される9.3.2.7節において、cu_qp_deltaを符号化(2値化)する方法が指定されることが示されている。 ここで、刊行物1において開示されたcu_qp_deltaが、現在の符号化単位の量子化パラメータと現在の符号化単位の予測量子化パラメータとの差分である差分量子化パラメータを表すことは、当業者において技術常識である。 なお、符号化の対象である差分量子化パラメータは、符号化の以前に設定がされていることは、明らかである。 以上より、刊行物1に開示された発明を方法の発明として認定すると、刊行物1には、以下の刊行物1発明が開示されている。 (刊行物1発明) 符号化方法であって、 現在の符号化単位の量子化パラメータと現在の符号化単位の予測量子化パラメータとの差分である差分量子化パラメータを設定するステップと、 設定された前記差分量子化パラメータを、符号化(2値化)するステップと、 を備える符号化方法。 2.刊行物2の記載及び刊行物2に開示された技術事項 (1)刊行物2の記載 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物2(特開2007-20141号公報)には、「画像符号化装置」(発明の名称)(以下、「刊行物2」という。)として、以下の事項が記載されている。なお、強調のために当審にて囲みを付与した。 「【0045】 次に、2値化部30が動きベクトル検出部14からの信号(符号化された動きベクトルの値)に対して行なう2値化処理について、図3を用いて説明する。図3は、2値化部30が2値化処理を行なう前の動きベクトルの値である「元の符号値」と、2値化部30が「元の符号値」に対して2値化処理を行なった後の符号値である「2値化後の符号値」との関係を示す図である。」 【図3】 (2)刊行物2に開示された技術事項 上記の(1)の記載及びこの分野における技術常識を考慮して、刊行物2に開示された技術事項(以下、「刊行物2技術事項」という。)を認定する。 上記の(1)に示されるように、動きベクトルの元の符号値は、その絶対値を表す値(TU)とその正負の符号(Sign)とに分けられ、絶対値から正負の符号の順に並んだ値として2値化後の符号値として符号化(2値化)されている(例えば、元の符号値「1」については、絶対値を示す「10」と正負を表す符号「0」に分けられ、絶対値と正負を表す符号の順である「100」として、2値化後の符号値を得ている。また、元の符号値「-1」については、絶対値を示す「10」と正負を表す符号「1」に分けられ、絶対値と正負を表す符号の順である「101」として、2値化後の符号値を得ている。)。 すなわち、刊行物2には、『動きベクトルを絶対値に関する値と正負の符号とに分け、絶対値から正負の符号の順に符号化(2値化)を行う技術』が開示されている。 3.刊行物3の記載及び刊行物3に開示された技術事項 (1)刊行物3の記載 画像を符号化及び復号化する技術分野における、出願当時の一般的な技術水準を示す文献である、H.264の規格書(2003年5月発行)(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、強調のために当審にて囲みを付与した。 i.「7.3.5.3.2 Residual coding CABAC syntax 」(第46頁) (当審訳) 「7.3.5.3.2 残差符号化CABACシンタックス」 ii.「7.4.5.3.2 Residual coding CABAC semantics (略) coeff_abs_level_minus1[i] is the absolute value of a transform coefficient level minus 1. (略) coeff_sign_flag[i] specifies the sign of a transform coefficient level as follows.(略)」(第80頁) (当審訳 「7.4.5.3.2 残差符号化CABACセマンティクス coeff_abs_level_minus1[i] は、変換係数の絶対値から1を引いた値を示す。(略) coeff_sign_flag[i] は、変換係数のレベルの符号を次のように指定する。(略)」) iii. 「 」(第177頁) (当審訳 「表9-24 シンタックスエレメント及び関連する2値化タイプ、maxBinIdxCtx及びctxIdcOffset」) (2)刊行物3に開示された技術事項 上記のi.ないしiii.の記載及びこの分野における技術常識を考慮して、刊行物3に開示された技術事項(以下、「刊行物3技術事項」という。)を認定する。 上記のii.に示されるように、変換係数は、その絶対値に関する値であるcoeff_abs_level_minus1と、その正負の符号であるcoeff_sign_flagに分けられている。 そして、上記のiii.に示されるように、絶対値に関する値であるcoeff_abs_level_minus1と、正負の符号であるcoeff_sign_flagとは、異なるType of Binarizationが指定されているから、絶対値に関する値と正負の符号とは、個別に符号化(2値化)されている。 さらに、上記のi.には、シンタックスにおいて、絶対値に関する値であるcoeff_abs_level_minus1の次の行に正負の符号であるcoeff_sign_flagが示されているから、絶対値から正負の符号の順に符号化されている。 以上より、刊行物3には、『変換係数を絶対値に関する値と正負の符号とに分け、絶対値から正負の符号の順に符号化(2値化)を行う技術』が開示されている。 第5 当審の判断 1.本件発明と刊行物1発明との対比 本件発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致ないし相違している。 <一致点> 符号化方法であって、 現在の符号化単位の量子化パラメータと現在の符号化単位の予測量子化パラメータとの差分である差分量子化パラメータを設定するステップと、 設定された前記差分量子化パラメータを、符号化するステップと、 を備える符号化方法。 <相違点> 差分量子化パラメータを符号化する手法として、本件発明は、差分量子化パラメータを、前記差分量子化パラメータの絶対値と前記差分量子化パラメータの正負を識別する識別値とに分離して、前記絶対値から前記識別値の順に符号化するのに対し、刊行物1発明は、差分量子化パラメータを符号化する具体的な手順が特定されていない点 2.当審の判断 本件発明が属するビデオの符号化を行う技術分野において、ビデオの符号化に用いる情報を2値化するときに、効率のよい2値化を行おうとすることは、当業者が一般に追求し得る課題である。そして、その課題を解決するために、周知の2値化の手法の中から、いずれかの手法の採用を試みることは、当業者が、通常の創作能力の発揮として普通になし得ることである。 そして、ビデオの符号化に用いる情報の2値化の手法として、符号化の対象となる情報を、その絶対値と正負の符号とに分け、絶対値から正負の符号の順に2値化を行う手法は、上記第4の2.(2)、3.(2)の刊行物2技術事項や刊行物3技術事項に示されるように、当業者において、周知である。 よって、刊行物1発明における差分量子化パラメータの2値化において、周知の手法を採用して、差分量子化パラメータを絶対値と正負の符号とに分け、絶対値から正負の符号の順に符号化することで、相違点に係る構成のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、相違点は、格別のものではない。 よって、本件発明は、刊行物1発明及び刊行物2及び3記載の周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、刊行物1発明及び刊行物2及び3記載の周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明において検討するまでもなく、本件出願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-07-10 |
結審通知日 | 2017-07-11 |
審決日 | 2017-07-25 |
出願番号 | 特願2014-91742(P2014-91742) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂東 大五郎 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
冨田 高史 篠原 功一 |
発明の名称 | CABACにおける絶対値と正負記号の分離(SAVS)を使用したdQPの2値化 |
代理人 | 金本 哲男 |
代理人 | 松本 一騎 |
代理人 | 亀谷 美明 |
代理人 | 萩原 康司 |