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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1332039
審判番号 不服2016-5207  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-08 
確定日 2017-09-07 
事件の表示 特願2013-55760号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成25年7月25日出願公開、特開2013-144136号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成22年6月8日に出願した特願2010-131522号の一部を平成25年3月18日に新たな特許出願としたものであって、平成26年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年7月17日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年4月27日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年6月25日に意見書が提出されたところ、同年10月6日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月4日に意見書が提出され、平成28年1月15日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月26日)、それに対し、同年4月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書及び特許請求の範囲に係る手続補正書が提出されたものである。
これに対して、当審にて同年11月7日付けで拒絶理由を通知したところ、同年12月5日に意見書及び手続補正書が提出され、当審にてさらに、平成29年2月27日付けで最後の拒絶理由を通知したところ、同年4月17日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
当審による平成29年2月27日付けの最後の拒絶理由は、平成28年12月5日付け手続補正書により追加された補正事項に関して、不明瞭、かつ、明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、特許法第36条第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものであると共に、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないというものであった。
しかしながら、同拒絶理由における指摘事項は、平成29年4月17日付け手続補正により解消された。
そして、本願の請求項1に係る発明は、同手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「A 遊技領域に設けられた第1始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて、各々が識別可能な複数種類の識別情報を可変表示する第1可変表示手段と、第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて、各々が識別可能な複数種類の識別情報を可変表示する第2可変表示手段とを備え、識別情報の表示結果に基づいて所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって、
B 前記第1始動領域を遊技媒体が通過したが未だ開始されていない可変表示について、前記所定の遊技価値を付与するか否かを特定するための情報を所定の上限記憶数の範囲内で保留記憶情報として記憶する第1保留記憶手段と、
C 前記第2始動領域を遊技媒体が通過したが未だ開始されていない可変表示について、前記所定の遊技価値を付与するか否かを特定するための情報を所定の上限記憶数の範囲内で保留記憶情報として記憶する第2保留記憶手段と、
D 前記第1保留記憶手段と前記第2保留記憶手段との双方に保留記憶情報が記憶されているときに、前記第2保留記憶手段に記憶された保留記憶情報に基づく可変表示を優先して実行する可変表示制御手段と、
E 保留記憶情報が前記第1保留記憶手段に記憶されており、かつ前記第2始動領域を遊技媒体が通過したときに、前記第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて実行される可変表示中に前記所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が前記第1保留記憶手段に記憶されている可能性が高いことを示唆する所定演出を実行する演出実行手段とを備え、
F 前記演出実行手段は、前記所定演出を実行した後の前記所定演出の実行契機となった前記第1保留記憶手段に記憶された保留記憶情報に基づいて実行される可変表示中において前記所定の遊技価値が付与される可能性を示唆する予告演出を実行し、
G 前記第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて実行される可変表示の後にさらに前記第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて可変表示が実行される場合、該可変表示中にも前記所定演出を実行し、
H 前記演出実行手段は、複数の演出態様のいずれかで前記所定演出を実行し、いずれの前記演出態様で前記所定演出が実行されるかによって前記所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が前記第1保留記憶手段に記憶されている可能性が異なるように前記所定演出を実行する、
ことを特徴とする遊技機。」(A?Hは、当審にて分説して付与した。)

3 刊行物の記載
当審における、進歩性に関する平成28年11月7日付け拒絶理由に引用文献2として提示した特開2010-22874号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の始動口に遊技球が入賞した場合に、図柄の変動表示を開始する図柄表示手段を複数有し、
複数の前記図柄表示手段のうちのいずれかの図柄表示手段が停止表示した図柄態様が特定の図柄態様である場合に、特別遊技状態を開始する特別遊技状態開始手段を備え、
複数の前記図柄表示手段のうちの第1の図柄表示手段が前記特定の図柄態様を停止表示する場合に、複数の前記図柄表示手段のうちの第2の図柄表示手段が図柄を変動表示中に、前記第1の図柄表示手段が前記特定の図柄態様を停止表示することを遊技者に予告報知する遊技台であって、
前記所定の始動口のうちの第1の始動口に遊技球が入賞し、かつ第1の変動開始禁止条件が成立していない場合に、前記第1の図柄表示手段による図柄の変動表示を開始し、
前記第1の変動開始禁止条件が成立している状態で前記第1の始動口に遊技球が入賞した場合に、該第1の変動開始禁止条件が未成立な状態に変化してから前記第1の図柄表示手段による図柄の変動表示を開始するための第1の始動情報を、所定個数まで記憶可能な第1の始動記憶手段と、
前記第2の変動開始禁止条件が成立している状態で前記所定の始動口のうちの第2の始動口に遊技球が入賞した場合に、該第2の変動開始禁止条件が未成立な状態に変化してから前記第2の図柄表示手段による図柄の変動表示を開始するための第2の始動情報を所定個数まで記憶可能な第2の始動記憶手段と、をさらに備え、
前記第1の始動記憶手段に前記第1の始動情報が記憶され、かつ第2の始動記憶手段に前記第2の始動情報が記憶されている場合には、前記第2の始動情報に基づいて前記第2の図柄表示手段による図柄の変動表示を優先して開始するように構成し、
また前記第1の始動記憶手段における前記第1の始動情報のうちの1部または全部を構成する図柄態様決定用情報が特定の図柄態様決定用情報である場合に、前記予告報知を、前記特定の図柄態様を停止表示することとなる前記第1の図柄表示手段による図柄の変動表示まで継続しておこなうように構成し、
前記予告報知を継続して行っている期間中に、前記第2の始動口に遊技球が入賞したことに基づいて開始した前記第2の図柄表示手段による図柄の変動表示中にも、前記予告報知をおこない、
前記第1の始動情報のうちの1部または全部を構成する図柄態様決定用情報が特定の図柄態様決定用情報ではなく、特定の条件が成立した場合にも、前記予告報知をおこなうことを特徴とする、
遊技台。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシンやパチンコ機などに代表される遊技台に関する。」

ウ 「【図面の簡単な説明】
【0011】
・・・
【図13】入賞順変動の一例を示した図である。
【図14】優先変動(特図1優先)の一例を示した図である。
・・・」

エ 「【0023】
第1特図始動口126は、本実施例では遊技盤102の中央に1つだけ配設している。この第1特図始動口126への入球を所定の球検出センサが検出した場合、後述する払出装置552を駆動し、所定の個数(本実施例では3個)の球を賞球として貯留皿144に排出するとともに、第1特図表示装置198による第1特図変動遊技を開始する。なお、第1特図始動口126に入球した球は、パチンコ機100の裏側に誘導した後、遊技島側に排出する。
【0024】
第2特図始動口128は、電動チューリップ(電チュー)と呼ばれ、本実施例では第1特図始動口126の真下に1つだけ配設している。この第2特図始動口128は、左右に開閉自在な羽根を備え、羽根の閉鎖中は球の入球が不可能であり、普図変動遊技に当選し、普図表示装置112が当たり図柄を停止表示した場合に羽根が所定の時間間隔、所定の回数で開閉する。第2特図始動口128への入球を所定の球検出センサが検出した場合、後述する払出装置552を駆動し、所定の個数(本実施例では5個)の球を賞球として後述する貯留皿144に排出するとともに、第2特図表示装置114による第2特図変動遊技を開始する。なお、第2特図始動口128に入球した球は、パチンコ機100の裏側に誘導した後、遊技島側に排出する。」

オ 「【0036】
<制御部>
次に、図4を用いて、このパチンコ機100の制御部の回路構成について詳細に説明する。なお、同図は制御部の回路ブロック図を示したものである。
【0037】
パチンコ機100の制御部は、大別すると、遊技の中枢部分を制御する主制御部300と、主制御部300が送信するコマンド信号(以下、単に「コマンド」と呼ぶ)に応じて、主に演出の制御を行う副制御部400と、主制御部300が送信するコマンドに応じて、主に遊技球の払い出しに関する制御を行う払出制御部550と、遊技球の発射制御を行う発射制御部600と、パチンコ機100に供給される電源を制御する電源管理部650によって構成している。」

カ 「【0159】
<副制御部のデータテーブル>
次に、図12を用いて、パチンコ機100の副制御部400のROM406が記憶しているデータテーブルについて説明する。なお、同図(a)は連続予告登場キャラクタテーブルの一例を示した図であり、同図(b)は連続予告シナリオテーブルの一例を示した図であり、同図(c)は偽連続予告実行判定テーブルの一例を示した図である。
【0160】
同図(a)に示す連続予告登場キャラクタテーブルは、後述する残り図柄確定回数と、連続予告登場キャラクタを対応付けて記憶したデータテーブルである。詳細は後述するが、副制御部400の基本回路402は、この連続予告登場キャラクタテーブルを用いて、残り図柄確定回数に基づいて連続予告登場キャラクタを決定する。」
・・・
【0164】
<入賞順変動の一例>
次に、図13を用いて、主制御部300および副制御部400が実行する入賞順変動について説明する。なお、同図は入賞順変動の一例を示した図である。
・・・
【0170】
続いて、主制御部300は、同図(c)に示すように、第1特図表示装置198を用いて、特図1の変動表示を行うとともに、副制御部400に回転開始コマンドを送信する。これにより、副制御部400は、装飾表示装置110を用いて、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を行う。また、主制御部300は、第1特図保留ランプ199を用いて、保留していた第1特図変動遊技の回数(この例では1回)に対応する数のランプを消灯する。
【0171】
また、主制御部300は、特図1の変動表示中に、所定の球検出センサにより第2特図始動口128の入賞(入球)を検出した場合、保留している第2特図変動遊技の数が所定数(本実施例では4)未満であるため、上述の第2の特図当選乱数値と第2の特図乱数値を取得した後、これらの乱数値をRAM308に設けた第2の乱数値記憶領域のうちの第2特図変動遊技の保留数に基づいて決定される記憶領域に格納する(上記ステップS1121?S1126)。また、主制御部300は、同図(c)に示すように、第2特図保留ランプ118を用いて、保留している第2特図変動遊技の回数(この例では1回)に対応する数のランプを点灯する。
・・・
【0175】
続いて、主制御部300は、同図(d)に示すように、特図1の変動表示中に、所定の球検出センサにより第1特図始動口126の入賞(入球)を検出した場合、保留している第1特図変動遊技の数が所定数(本実施例では4)未満であるため、上述の第1の特図当選乱数値と第1の特図乱数値を取得した後、これらの乱数値をRAM308に設けた第1の乱数値記憶領域のうちの第1特図変動遊技の保留数に基づいて決定される記憶領域に格納する。また、主制御部300は、第1特図保留ランプ199を用いて、保留している第1特図変動遊技の回数(この例では1回)に対応する数のランプを点灯する。
・・・
【0181】
続いて、主制御部300は、同図(i)に示すように、第1特図表示装置198を用いて、保留していた第1特図変動遊技に基づく特図1の変動表示を行うとともに、副制御部400に回転開始コマンドを送信する。これにより、副制御部400は、同図(i)?(k)に示すように、装飾表示装置110を用いて、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を行うとともに、特図1用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、第1特図変動遊技の大当たりを示唆する大当たり演出を行う。この例では、大当たり演出として、装飾表示装置110に殿のキャラクタの画像と、「アタリか?」という文字を表示している。ここで表示している殿のキャラクタは、上述と同様に図12(a)の連続予告登場キャラクタテーブルにおける残り図柄確定回数として1を用いて殿のキャラクタ画像を事前予告報知に使用するキャラクタとして選択したものである。

キ 「【0183】
<優先変動(特図1優先)の一例>
次に、図14を用いて、主制御部300および副制御部400が実行する優先変動(特図1優先)について説明する。なお、同図は優先変動(特図1優先)の一例を示した図である。
【0184】
ここで、図14(a)?(e)は上記図13(a)?(e)と、また、図14(i)?(m)は上記図13(i)?(m)とほぼ同じであるため、以下、図14(f)?(h)についてのみ説明する。
【0185】
この例では、主制御部300は、同図(c)のタイミングで取得した第2の特図当選乱数値が第2特図始動口抽選データの数値範囲であり、かつ取得した第2の特図乱数値が移行判定乱数の数値範囲であり、かつ予告抽選乱数カウンタの値が所定の数値範囲(本実施例では0以上15以下)であるとして、事前予告情報を予告情報として格納する。これにより、副制御部400は、特図2用の保留情報記憶領域に、特図2保留情報を追加記憶するとともに、事前予告情報を追加記憶する。
【0186】
また、主制御部300は、保留している第1特図変動遊技(この例では1回)と、第2特図変動遊技(この例では1回)のうち、第1特図変動遊技を優先して(特図1優先で)第1特図変動遊技を開始する。具体的には、主制御部300は、同図(f)に示すように、第1特図表示装置198を用いて特図1の変動表示を行うとともに、副制御部400に回転開始コマンドを送信する。これにより、副制御部400は、装飾表示装置110を用いて、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を行う。また、主制御部300は、第1特図保留ランプ199を用いて、保留していた第1特図変動遊技の回数(この例では1回)に対応する数のランプを消灯する。
【0187】
また、副制御部400は、同図(f)?(g)に示すように、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示と同時に、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を行う(すなわち、第1特図変動遊技に基づく特図1および装飾図柄の変動表示中に、第2特図変動遊技の大当たりを示唆する予告を行う)。副制御部400は、同図(h)に示すように、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の停止表示を行うまで事前予告を継続して行う。」

ク 認定事項
刊行物に記載された、<優先変動(特図1優先)の一例>として図示された図14に関する説明のうち、「図14(a)?(e)は上記図13(a)?(e)と、また、図14(i)?(m)は上記図13(i)?(m)とほぼ同じである」(【0184】)ため、図14の(a)?(e)、(i)?(m)の内容を把握するに際して、<入賞順変動の一例>として図示された図13の(a)?(e)、(i)?(m)の説明を参酌して行う。

・認定事項1
刊行物の【0170】、【0171】、【0175】には、<入賞順変動の一例>を示した図13の(c)、(d)に関して、「続いて、主制御部300は、同図(c)に示すように、第1特図表示装置198を用いて、特図1の変動表示を行うとともに、副制御部400に回転開始コマンドを送信する。これにより、副制御部400は、装飾表示装置110を用いて、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を行う。」(【0170】)こと、
「主制御部300は、特図1の変動表示中に、所定の球検出センサにより第2特図始動口128の入賞(入球)を検出した場合、保留している第2特図変動遊技の数が所定数(本実施例では4)未満であるため、上述の第2の特図当選乱数値と第2の特図乱数値を取得した後、これらの乱数値をRAM308に設けた第2の乱数値記憶領域のうちの第2特図変動遊技の保留数に基づいて決定される記憶領域に格納する(上記ステップS1121?S1126)。」(【0171】)こと、
「続いて、主制御部300は、同図(d)に示すように、特図1の変動表示中に、所定の球検出センサにより第1特図始動口126の入賞(入球)を検出した場合、・・・これらの乱数値をRAM308に設けた第1の乱数値記憶領域のうちの第1特図変動遊技の保留数に基づいて決定される記憶領域に格納する。」(【0175】)ことが記載されている。
これら記載内容によれば、刊行物には、図14の(c)、(d)に関し、「副制御部400は、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を実行し、主制御部300は、特図1の変動表示中に、第2特図始動口128の入球を検出し、続いて、第1特図始動口126の入球を検出する。」ことが記載されていると認められる。

また、【0183】を参酌すると、【0187】には、<優先変動(特図1優先)の一例>を示した図14の(f)?(h)に関して、「副制御部400は、同図(f)?(g)に示すように、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示と同時に、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を行う(すなわち、第1特図変動遊技に基づく特図1および装飾図柄の変動表示中に、第2特図変動遊技の大当たりを示唆する予告を行う)。副制御部400は、同図(h)に示すように、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の停止表示を行うまで事前予告を継続して行う。」(【0187】)ことが記載されている。
この記載に基づくと、刊行物には、図14の(f)?(h)に関し、「副制御部400は、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示と同時に、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の停止表示を行うまで継続して行う。」ことが記載されていると認められる。

したがって、刊行物には、図14の(c)、(d)、(f)?(h)に関し、
「副制御部400は、
特図1の変動表示中に、第2特図始動口128の入球を検出し、第2の特図当選乱数値を第2の乱数値記憶領域に格納し、続いて、第1特図始動口126の入球を検出した場合、その後の第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示と同時に、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の停止表示を行うまで継続して行うこと。」が記載されていると認められる。

・認定事項2
上記【0187】の記載によると、図14の(h)は、第1特図変動遊技を図示するものであるといえる。
さらに、刊行物の【0164】を参酌すると、【0181】には、<入賞順変動の一例>として図示された図13の(i)?(k)に関して、「続いて、主制御部300は、同図(i)に示すように、第1特図表示装置198を用いて、保留していた第1特図変動遊技に基づく特図1の変動表示を行うとともに、副制御部400に回転開始コマンドを送信する。これにより、副制御部400は、同図(i)?(k)に示すように、装飾表示装置110を用いて、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を行うとともに、特図1用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、第1特図変動遊技の大当たりを示唆する大当たり演出を行う。この例では、大当たり演出として、装飾表示装置110に殿のキャラクタの画像と、「アタリか?」という文字を表示している。」(【0181】)ことが記載されている。
また、図14の(i)には、第2特図変動遊技について図示されている。
そうすると、図14の(i)に図示された第2特図変動遊技は、図14の(h)に図示された第1特図変動遊技に続いて実行される処理であるから、第2特図変動遊技は、第1特図変動遊技の後に実行されるものであるといえる。
また、図14の(i)には、装飾表示装置110を用いて、特図2に基づく変動表示中に、殿のキャラクタの画像と、「アタリか?」という文字を表示することが図示されている。
さらに、図13の(i)は、特図1に基づく変動表示を表しているのに対して、図14の(i)は、特図2に基づく変動表示を表しており、この点で図13の(i)と図14の(i)とは、異なっている。
これらのことを考慮すると、刊行物には、図14の(i)に関し、「副制御部400が、第1特図変動遊技の後に、保留していた第2特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を行うとともに、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、第2特図変動遊技の大当たりを示唆する大当たり演出を行うこと。」が図示されていると認められる。

ケ 上記ア?キの記載事項、及び、上記クの認定事項を総合すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物発明」という。)。
「a 第2特図始動口128への入球を所定の球検出センサが検出した場合、第2特図変動遊技を開始する第2特図表示装置114(【0024】)と、
第1特図始動口126への入球を所定の球検出センサが検出した場合、第1特図変動遊技を開始する第1特図表示装置198(【0023】)と、
複数の図柄表示手段のうちのいずれかの図柄表示手段が停止表示した図柄態様が特定の図柄態様である場合に、特別遊技状態を開始する特別遊技状態開始手段(【請求項1】)と、
主制御部300と副制御部400とを備えた遊技台であって(【0037】、【0001】)、
b 主制御部300は、特図1の変動表示中に、
第2特図始動口128の入球を検出した場合、保留している第2特図変動遊技の数が所定数未満であると、第2の特図当選乱数値を取得した後、取得した乱数値を第2の乱数値記憶領域に格納し(【0171】)、
c 第1特図始動口126の入球を検出した場合、保留している第1特図変動遊技の数が所定数未満であると、第1の特図当選乱数値を取得した後、取得した乱数値を第1の乱数値記憶領域に格納し(【0175】)、
d 保留している第1特図変動遊技と、第2特図変動遊技のうち、第1特図変動遊技を優先して開始し(【0186】)、
e 副制御部400は、
特図1の変動表示中に、第2特図始動口128の入球を検出し、第2の特図当選乱数値を第2の乱数値記憶領域に格納し、続いて、第1特図始動口126の入球を検出した場合、その後の第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示と同時に、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の停止表示を行うまで継続して行い(認定事項1)、
f 当該第1特図変動遊技の後に、保留していた第2特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を行うとともに、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、第2特図変動遊技の大当たりを示唆する大当たり演出を行う(認定事項2)
遊技台(【0001】)。」

4 対比
本願発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。
ここで、刊行物発明において、「特図始動口」、「特図表示装置」、及び、「始動記憶手段」は、それぞれの構成が2つあることを区別するために、単に、「第1」、「第2」と番号が付されたものである。
そこで、本願発明と刊行物発明とを対比するに際し、刊行物発明における「第2特図始動口128」、「第1特図始動口126」、「第2特図表示装置114」、「第1特図表示装置198」、「第2の始動記憶手段」、「第1の始動記憶手段」を、それぞれ、本願発明における「第1始動領域」、「第2始動領域」、「第1可変表示手段」、「第2可変表示手段」、「第1保留記憶手段」、「第2保留記憶手段」と対応付けることもできる。

(a)刊行物発明における「第2特図始動口128への入球を所定の球検出センサが検出した」ことは、遊技球が第2特図始動口128を通過したことに基づくものであるから、本願発明における「遊技領域に設けられた第1始動領域を遊技媒体が通過した」ことを含む構成であるといえる。
そして、刊行物発明における「第2特図変動遊技を開始する」ことは、本願発明における「第1始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて、各々が識別可能な複数種類の識別情報を可変表示する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における「第2特図表示装置114」は、本願発明における「第1可変表示手段」に相当する。

同様にして、刊行物発明における「第1特図表示装置198」は、本願発明における「第2可変表示手段」に相当する。

また、刊行物発明における「複数の図柄表示手段のうちのいずれかの図柄表示手段が停止表示した図柄態様」は、本願発明における「識別情報の表示結果」に相当する。
さらに、刊行物発明における「停止表示した図柄態様が特定の図柄態様である場合に、特別遊技状態を開始する」ことは、条件が満たされた場合に、遊技球を多数獲得できる状態である大当たり遊技(特別遊技)を開始可能であることから、本願発明における「遊技価値が付与可能となる」ことに相当する。
したがって、刊行物発明における「複数の前記図柄表示手段のうちのいずれかの図柄表示手段が停止表示した図柄態様が特定の図柄態様である場合に、特別遊技状態を開始する特別遊技状態開始手段」「を備えた遊技台」は、本願発明における「識別情報の表示結果に基づいて所定の遊技価値が付与可能となる遊技機」に相当する。

よって、刊行物発明における構成aは、本願発明における構成Aに相当する。

(b)刊行物発明において、「特図1の変動表示中」に検出された「第2特図始動口128の入球」に基づく変動表示は、特図1の変動表示が終了した後に変動表示が開始されることから、「特図1の変動表示中」は、未だ変動表示が開始されていないことは明らかである。
そうすると、刊行物発明における「特図1の変動表示中に」「検出」された「第2特図始動口128の入球」に基づく変動表示は、本願発明における「第1始動領域を遊技媒体が通過したが未だ開始されていない可変表示」に相当する。
そして、上記(a)より、刊行物発明における「第2特図始動口128への入球を所定の球検出センサが検出した」ことは、本願発明における「遊技領域に設けられた第1始動領域を遊技媒体が通過した」ことを含む構成であるといえる。
また、刊行物発明における「第2の特図当選乱数値」は、「特別遊技状態を開始する」か否かの判定に用いられる情報であるから、本願発明における「所定の遊技価値を付与するか否かを特定するための情報」に相当する。
さらに、刊行物発明における「保留している第2特図変動遊技の数が所定数未満である」ことは、本願発明における「上限記憶数の範囲内で」あることに相当する。
したがって、刊行物発明における構成bの「第2特図始動口128の入球を検出した場合、保留している第2特図変動遊技の数が所定数未満であると、第2の特図当選乱数値を取得した後、取得した乱数値を」「格納」する「第2の乱数値記憶領域」は、本願発明における構成Bの「第1始動領域を遊技媒体が通過したが未だ開始されていない可変表示について、所定の遊技価値を付与するか否かを特定するための情報を所定の上限記憶数の範囲内で保留記憶情報として記憶する第1保留記憶手段」に相当する。

(c)「特図1の変動表示中」に検出された「第1特図始動口126の入球」に基づく変動表示は、特図1の変動表示が終了した後に変動表示が開始されることは明らかであるから、「特図1の変動表示中」は、未だ変動表示が開始されていないことになる。
そうすると、刊行物発明における「特図1の変動表示中に」「検出」された「第1特図始動口126の入球」に基づく変動表示は、本願発明における「第1始動領域を遊技媒体が通過したが未だ開始されていない可変表示」に相当する。
そして、刊行物発明における「第1特図始動口126への入球を所定の球検出センサが検出した」ことは、遊技球が第1特図始動口126を通過したことに基づくものであるから、本願発明における「遊技領域に設けられた」「第2始動領域を遊技媒体が通過した」ことを含む構成であるといえる。
また、刊行物発明における「第1の特図当選乱数値」は、「特別遊技状態を開始する」か否かの判定に用いられる情報であるから、本願発明における「所定の遊技価値を付与するか否かを特定するための情報」に相当する。
さらに、刊行物発明における「保留している第1特図変動遊技の数が所定数未満である」ことは、本願発明における「上限記憶数の範囲内で」あることに相当する。
したがって、刊行物発明における構成cの「第1特図始動口126の入球を検出した場合、保留している第1特図変動遊技の数が所定数未満であると、第1の特図当選乱数値を取得した後、取得した乱数値を」「格納」する「第1の乱数値記憶領域」は、本願発明における構成Cの「第2始動領域を遊技媒体が通過したが未だ開始されていない可変表示について、所定の遊技価値を付与するか否かを特定するための情報を所定の上限記憶数の範囲内で保留記憶情報として記憶する第2保留記憶手段」に相当する。

(d)上記(b)、(c)によれば、刊行物発明において、「第2特図変動遊技」、「第1特図変動遊技」は、それぞれ、「第2の乱数値記憶領域」、「第1の乱数値記憶領域」に保留記憶されている情報に基づいて特図変動遊技が実行されることは明らかである。
したがって、刊行物発明における構成dの「保留している第1特図変動遊技と、第2特図変動遊技のうち、第1特図変動遊技を優先して開始」することは、本願発明における構成Dの「第1の始動記憶手段に第1の始動情報が記憶され、かつ第2の始動記憶手段に第2の始動情報が記憶されている場合には、第2の始動情報に基づいて第2の図柄表示手段による図柄の変動表示を優先して開始」することに相当する。

(e)上記(b)によれば、刊行物発明において、「特図1の変動表示中に第2特図始動口128の入球を検出」した場合、取得された「第2の特図当選乱数値」は「第2の乱数値記憶領域」に格納される。
そうすると、刊行物発明では、「特図1の変動表示中に、第2特図始動口128の入球」が「検出」されると、「第2の特図当選乱数値」が「第2の乱数値記憶領域に格納」されることから、「特図1の変動表示中に、第2特図始動口128の入球」が「検出」されることは、本願発明における「保留記憶情報が第1保留記憶手段に記憶され」ることに相当する。
そして、刊行物発明における「第1特図始動口126の入球を検出」することは、遊技球が第1特図始動口126を通過したことに基づくものであるから、本願発明における「第2始動領域を遊技媒体が通過」することを含む構成であるといえる。
また、刊行物発明における「第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示と同時に」「第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の停止表示を行うまで」は、装飾図柄が変動表示を開始してから、停止表示されるまでの間の変動表示中のことであるから、本願発明における「第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて実行される可変表示中」に相当する。
さらに、刊行物発明における「特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告」は、本願発明における「所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が第1保留記憶手段に記憶されている可能性が高いことを示唆する所定演出」に相当する。

したがって、刊行物発明における構成eの「特図1の変動表示中に、第2特図始動口128の入球を検出し、第2の特図当選乱数値を第2の乱数値記憶領域に格納し、続いて、第1特図始動口126の入球を検出した場合、その後の第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示と同時に、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を、第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の停止表示を行うまで継続して行」う「副制御部400」は、本願発明における構成Eの「保留記憶情報が第1保留記憶手段に記憶されており、かつ第2始動領域を遊技媒体が通過したときに、第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて実行される可変表示中に所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が第1保留記憶手段に記憶されている可能性が高いことを示唆する所定演出を実行する演出実行手段」に相当する。

(f)刊行物発明において、構成eの「次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告」は、「その後の第1特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示と同時に」行われるものであるから、構成fの「第1特図変動遊技の後」は、本願発明における「所定演出を実行した後」に相当する。
そして、刊行物発明の構成eにおいて、「(次回の)第2特図変動遊技」は、「事前予告」の実行契機となるものであるから、構成fの「保留していた第2特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示」は、本願発明における「所定演出の実行契機となった第1保留記憶手段に記憶された保留記憶情報に基づいて実行される可変表示」に相当する。
また、刊行物発明における「第2特図変動遊技の大当たりを示唆する大当たり演出」は、本願発明における「所定の遊技価値が付与される可能性を示唆する予告演出」に相当する。
したがって、刊行物発明における構成fの「当該第1特図変動遊技の後に、保留していた第2特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示を行うとともに、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、第2特図変動遊技の大当たりを示唆する大当たり演出を行う」「副制御部400」は、本願発明における構成Fの「所定演出を実行した後の所定演出の実行契機となった第1保留記憶手段に記憶された保留記憶情報に基づいて実行される可変表示中において所定の遊技価値が付与される可能性を示唆する予告演出を実行」する「演出実行手段」に相当する。

上記(a)?(f)からみて、本願発明と刊行物発明とは、
「遊技領域に設けられた第1始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて、各々が識別可能な複数種類の識別情報を可変表示する第1可変表示手段と、第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて、各々が識別可能な複数種類の識別情報を可変表示する第2可変表示手段とを備え、識別情報の表示結果に基づいて所定の遊技価値が付与可能となる遊技機であって、
前記第1始動領域を遊技媒体が通過したが未だ開始されていない可変表示について、前記所定の遊技価値を付与するか否かを特定するための情報を所定の上限記憶数の範囲内で保留記憶情報として記憶する第1保留記憶手段と、
前記第2始動領域を遊技媒体が通過したが未だ開始されていない可変表示について、前記所定の遊技価値を付与するか否かを特定するための情報を所定の上限記憶数の範囲内で保留記憶情報として記憶する第2保留記憶手段と、
前記第1保留記憶手段と前記第2保留記憶手段との双方に保留記憶情報が記憶されているときに、前記第2保留記憶手段に記憶された保留記憶情報に基づく可変表示を優先して実行する可変表示制御手段と、
保留記憶情報が前記第1保留記憶手段に記憶されており、かつ前記第2始動領域を遊技媒体が通過したときに、前記第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて実行される可変表示中に前記所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が前記第1保留記憶手段に記憶されている可能性が高いことを示唆する所定演出を実行する演出実行手段とを備え、
前記演出実行手段は、前記所定演出を実行した後の前記所定演出の実行契機となった前記第1保留記憶手段に記憶された保留記憶情報に基づいて実行される可変表示中において前記所定の遊技価値が付与される可能性を示唆する予告演出を実行する
遊技機。」
の点で一致し、構成G、Hに関して次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明が、「第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて実行される可変表示の後にさらに第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて可変表示が実行される場合、該可変表示中にも所定演出を実行」するのに対して、
刊行物発明は、当該発明特定事項を有するか否か明らかでない点。

[相違点2]
演出実行手段に関し、本願発明が、「複数の演出態様のいずれかで所定演出を実行し、いずれの演出態様で所定演出が実行されるかによって所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が第1保留記憶手段に記憶されている可能性が異なるように前記所定演出を実行する」のに対して、
刊行物発明は、当該発明特定事項が特定されていない点。

5 当審の判断
(1)相違点1について
上記相違点1について検討する。
まず、刊行物に記載された技術事項について認定する。
刊行物には、【図17】に優先変動(特図1優先)の他の例として、次の記載がある。
「【0193】
<優先変動(特図1優先)の他の例>
次に、図16および図17を用いて、主制御部300および副制御部400が実行する優先変動(特図1優先)の他の例について説明する。なお、同図は優先変動(特図1優先)の他の例を示した図である。
・・・
【0195】
また、図17に示す例では、主制御部300は、特図1の変動表示中(最初の入賞に基づく変動とする)に、所定の球検出センサにより第2特図始動口128の入賞(入球)(2番目の入賞とする)を検出し、最初の入賞に基づく特図1の変動表示中に、2番目の入賞により特図2用の保留情報記憶領域に記憶した事前予告情報に基づいて、同図(c)?(e)に示すように、特図1の変動表示中に次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告(この例では、確定表示がなされていない図柄変動遊技の個数が2(最初の入賞に基づく図柄変動および2番目の入賞に基づく図柄変動)であることから、姫のキャラクタの画像を選択して表示)を行う例を示している。これまでは、事前予告情報を保留情報記憶領域に記憶した次の変動開始時から予告表示としてキャラクタ画像を表示する例を示してきたが、この例では、保留情報記憶領域に事前予告情報、偽事前予告情報を記憶したことを条件に、次の変動開始を待たずに、予告表示としてのキャラクタ画像の表示を開始している。
【0196】
さらに、所定の球検出センサにより第1特図始動口126の入賞(入球)(3番目の入賞とする)を検出した場合に、同図(f)?(h)に示すように、次回の特図1の変動表示中にも、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告(この例では、チビ姫のキャラクタの画像を表示)を行う。
・・・」

この記載から、刊行物には、他の例として、「優先変動する特図1の変動表示中(最初の入賞に基づく変動とする)に次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を行い、さらに、所定の球検出センサにより第1特図始動口126の入球(3番目の入賞とする)を検出した場合に、次回の特図1の変動表示中にも、特図2用の保留情報記憶領域に記憶しておいた事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を行う」という技術事項が記載されているものと認められる。

そして、刊行物に記載された技術事項の
「最初の入賞に基づく」「特図1の変動表示」、
「所定の球検出センサにより第1特図始動口126の入球(3番目の入賞とする)を検出した場合」、
「事前予告情報に基づいて、次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告」は、それぞれ、
本願発明における「第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて実行される可変表示」、
「さらに第2始動領域を遊技媒体が通過したこと」、
「(所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が第1保留記憶手段に記憶されている可能性が高いことを示唆する)所定演出」に対応する。

したがって、刊行物に記載された技術事項は上記相違点1に係る本願発明の構成に対応するものである。

そして、刊行物発明と刊行物に記載された技術事項とは、同じ刊行物に記載されたものであるから、組合せ、適用は当業者が適宜なし得ることである。

よって、刊行物発明に刊行物に記載された技術事項を適用して、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

(2)相違点2について
遊技機の技術分野において、遊技者の興趣や期待を高めるために先読み予告として複数の演出態様を設け、複数の演出態様のうち、いずれの演出態様で演出が実行されるかに応じて、所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が保留記憶手段に記憶されている可能性と異なるようにすることは、本願の出願遡及日前に周知の技術事項である(例えば、特開2009-273780号公報には、抽選値の先読みが可能な構成を備え、上限数の範囲内で保留された抽選値による当否結果を図柄変動に先行して取得し、その期待度の総和から大当たりが発生する確率を表示する変動パターンを選択し、選択された変動パターンを用いて変動表示を行う期待度示唆演出について記載され(【0006】、【0078】?【0079】、【図15】)、特開2009-273809号公報には、連続予告演出において、最終変動サイクルの表示結果が大当たり信頼度の高いことを、最初の変動サイクルにおける選択された背景画像の色により予告することが記載されている(【0009】、【0243】?【0247】、【図23】)。

そして、刊行物発明と上記周知の技術事項とは、遊技者の興趣や期待を高めるために、保留記憶手段に所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が記憶されている可能性が高いことを示唆する所定演出を実行する点で共通する技術である。

したがって、刊行物発明における「次回の第2特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告」に、上記周知の技術事項を適用して、事前予告に複数の演出態様を設け、いずれの演出態様で事前予告が実行されるかに応じて、大当たりとなる事前予告情報が保留情報記憶領域に記憶されている可能性が異なるように構成し、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

(3)請求人の主張について
請求人は、当審による平成28年11月7日付けの拒絶理由通知に対する平成28年12月5日付けの意見書において、審決における刊行物1に対応する引用文献2に関して、次の2点を主張する。

主張1:「引用文献2に記載された、第2特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示中に、次回の第1特図変動遊技の大当たりを示唆する事前予告を行う、という実施例は、入賞順に変動する場合であり(段落0164、0179)、第2特図変動表示優先の場合ではありません。つまり、第2特図変動遊技に基づく装飾図柄の変動表示中にさらに第2始動口への入賞があっても、事前予告の予定には関係しません。」(第4頁第12?16行)

主張2:「補正後の本願請求項1に係る発明は、第2特図変動表示優先の場合に、第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づく可変表示を契機とする所定演出の実行に関するものです。したがって、本願発明の特徴は引用文献2には何ら開示されていません。」(第4頁第26?28行)

そこで、上記主張について検討する。
ア 主張1に対して
刊行物には、特図変動遊技を入賞順に行う図13に基づく実施例以外にも、刊行物発明として認定した図14に基づく、第1特図変動遊技を優先して行う実施例が記載されているのであるから、請求人の上記主張1を採用することはできない。

イ 主張2に対して
刊行物発明は、上記「4 対比」において検討したように、本願発明の「保留記憶情報が第1保留記憶手段に記憶されており、かつ第2始動領域を遊技媒体が通過したときに、第2始動領域を遊技媒体が通過したことに基づいて実行される可変表示中に所定の遊技価値が付与される保留記憶情報が第1保留記憶手段に記憶されている可能性が高いことを示唆する所定演出を実行する演出実行手段」を備えるものである。

したがって、請求人の上記主張2を採用することはできない。

また、本願発明により奏される効果は、当業者が、刊行物発明、刊行物に記載された技術事項、及び、周知の技術事項から予測し得る範囲内のものであって、格別のものではない。

(4)小括
上記(1)?(3)において検討したように、本願発明は、当業者が刊行物発明、刊行物に記載された技術事項、及び、周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2017-07-05 
結審通知日 2017-07-11 
審決日 2017-07-24 
出願番号 特願2013-55760(P2013-55760)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 徹  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 石原 徹弥
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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