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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1332073
審判番号 不服2015-21832  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-09 
確定日 2017-09-06 
事件の表示 特願2014- 97784「リレー方式の通信システムにおける信号送信方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 9日出願公開、特開2014-195285〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)4月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2009年4月9日 アメリカ合衆国、2009年5月12日 アメリカ合衆国、2009年10月13日 アメリカ合衆国、2009年10月14日 アメリカ合衆国、2009年12月1日 アメリカ合衆国、2010年3月11日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2012-504612号の一部を平成26年5月9日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 2月16日付け 拒絶理由の通知
平成27年 7月 1日 意見書の提出
平成27年 8月18日付け 拒絶査定
(謄本送達日平成27年8月25日)
平成27年12月 9日 審判請求書、手続補正書の提出
平成28年 1月 7日 前置報告書
平成28年 8月10日 当審による拒絶理由の通知
平成28年11月16日 意見書、手続補正書の提出
平成28年12月 7日 当審による拒絶理由の通知
平成29年 3月13日 意見書提出

第2 本願発明
本件特許出願の請求項に係る発明は、平成28年11月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1から8までに記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された、次の事項により特定されるものである。

「【請求項1】
無線通信システムにおける信号受信方法であって、
第1のタイプの制御チャネルと区別される第2のタイプの制御チャネルを介して制御情報を受信することであって、前記第1のタイプの制御チャネルのリソース領域は、PCFICHによって決定されることを有し、
前記第2のタイプの制御チャネルのリソース領域の開始位置は、上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報によって決定され、前記上位層は物理層の上位の層であり、
前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる、方法。」

第3 当審の平成28年12月7日付け拒絶理由
当審が平成28年12月7日付けで通知した拒絶理由は、次のとおりである。

「<優先権主張について>
請求項1及び5に係る発明の「前記第2のタイプの制御チャネルのリソース領域の開始位置は、上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報によって決定され」、「前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる」との技術事項は、請求人が平成28年11月16日付け意見書において主張するように、明細書の「バックホール送受信のための構成メッセージは、R-PDCCHやPDCCHなどの制御チャネルと、R-PDSCHやPDSCHなどのデータチャネルのどちらにも適用することができる。・・・(中略)・・・R-PDCCHとR-PDSCHとは、時分割多重化(TDM)して異なるOFDMシンボルを割り当てるか、又は周波数分割多重化(FDM)して異なるサブキャリアを割り当てることにより、分離することができる。」(段落78)との記載を根拠とするものである。
しかしながら、当該技術事項は、優先権主張の基礎となる米国出願である優先権主張番号61/251271(優先日:2009年10月13日)に係る出願の明細書等に開示されたものであって、上記優先日より前の優先日である優先権主張番号に係る出願の明細書等には開示されていないから、請求項1及び5に係る発明の優先日は2009年10月13日である。
請求項1を引用する請求項2-4に係る発明、及び、請求項5を引用する請求項6-8に係る発明についても、同様に、優先日は2009年10月13日である。

進歩性について>
本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1-8について、引用文献1-2
備考:
引用文献1(原査定の引用文献5。特に、“1 Introduction”及び“2 DL backhaul design”の欄、並びにFigure2参照。以下、「引用例」という。)参照。

上記引用例の
「新しい物理制御チャネル(ここでは、“R-PDCCH”という。)が、半静的に割り当てられるサブフレーム内で、動的又は“半持続的に”、ダウンリンクバックホールデータ(“R-PDSCH”物理チャネルに対応)のためのリソースを割り当てるために使用される。」(第1ページ第9行?第11行)、
「上記半静的に割り当てられたPRBのうちR-PDCCHとして使用されないリソースは、R-PDSCH又はPDSCHを運ぶために使用されてよい。」(第1ページ第21行?22行)、
「RNのPDCCHサイズを取得後、ドナーeNBは、自身のPDCCHサイズに基づいて、R-PDSCHバックホール送信のOFDMシンボルの開始を決定することができる。」(第1ページ第31行?第33行)、
「R-PDCCHを送信するために、通常PDSCHに配分されるリソースのごく一部が区分けされる。このR-PDCCH区画は図2に示されるように、2つのパラメータp1及びp2によって定義される。加えて、R-PDCCHの開始位置は既知でなければならず、上位層シグナリングでシグナルされることができる。」(第2ページ第6行?第8行)
との記載、及び図2(グループ化されたR-PDCCHを有するサブフレーム)の記載によれば、
引用例に記載された発明(以下、「引用発明」という。)の「PDCCH」、「R-PDCCH」及び「R-PDSCH」は、それぞれ請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)にいう「第1のタイプの制御チャネル」、「第2のタイプの制御チャネル」、「データチャネル」に相当する。

そして、引用発明においても、「R-PDCCH」のリソース領域の開始位置は、物理層より上位の層でシグナリングされる。
ここで、OFDMシンボルの位置は、OFDMシンボルインデックスによって特定することが当該技術分野の常套手段であるから、引用発明の上記「R-PDCCH」のリソース領域の開始位置に相当するOFDMシンボルの位置は、OFDMシンボルインデックスを有する情報としてシグナリングされるものと解することができ、引用発明においても、本願発明と同様、「前記第2のタイプの制御チャネルのリソース領域の開始位置は、上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報によって決定され、前記上位層は物理層の上位の層」であるといえる。

次に、請求項1の「前記第2のタイプの制御チャネルのリソース領域の開始位置は、上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報によって決定され」、「前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる」点に関し、請求人が平成28年11月16日付け意見書において、その根拠として主張する明細書の段落61には、「バックホールサブフレーム構造を示す構成メッセージは、バックホール信号の最初の位置及び最後の位置を示すOFDMシンボル位置情報#3及び#12を含んでもよく、場合によっては、バックホール信号の最初の位置を示すOFDMシンボル位置情報#3及びバックホール信号区間長情報(10個のシンボル)を含んでもよい。」との記載がある。
請求項1では、「第2のタイプの制御チャネルのリソース領域」の「最後の位置を示すOFDMシンボル位置情報」又は「バックホール信号区間長情報」については何ら特定されていないことからみて、請求項1にいう「データチャネルのリソース領域の開始位置」とは、PDCCHに引き続いてR-PDSCHが開始される場合のリソース領域の開始位置を意味するものと解することができる(なお、単に「前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報」だけを上位層でシグナリングしただけでは、R-PDCCHの後に引き続くR-PDSCHの開始位置についてまで、「他の情報を用いずに」決定することはできないと考えられる。)。
そして、引用例の図2によれば、引用発明において、PDCCHに引き続いて開始される「R-PDSCH」のリソース領域の開始位置は、「R-PDCCH」のリソース領域の開始位置と同じであるから、引用発明においても、上位層でシグナリングされた情報から、他の情報を用いずに、上記「R-PDSCH」のリソース領域の開始位置を決定しているものと解するのが自然であり、本願発明と同様、「前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる」ものといえる。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「無線通信システムにおける信号受信方法であって、
第1のタイプの制御チャネルと区別される第2のタイプの制御チャネルを介して制御情報を受信することであり、
前記第2のタイプの制御チャネルのリソース領域の開始位置は、上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報によって決定され、前記上位層は物理層の上位の層であり、
前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる、方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点] 本願発明では、「第1のタイプの制御チャネルのリソース領域は、PCFICHによって決定されることを有し」ているのに対し、引用発明においては、PCFICHによって決定されるか否か定かでない点。

そこで、上記相違点について検討するに、PDCCHのリソース領域をPCFICHによって決定することは周知技術(例えば、引用文献2(原査定の拒絶理由で通知した引用文献2。特に、段落62等)参照)であり、引用発明において、上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

なお、仮に、請求項1にいう「データチャネルのリソース領域の開始位置」が、R-PDCCHの後に引き続くR-PDSCHの開始位置まで含むとしても、引用例には、R-PDCCH区画を定義するp1及びp2が、半静的か動的かで4つの可能性が提示されており、オーバーヘッドとフレキシビリティの観点から比較考量によりいずれかを選択可能であること、半静的な場合には、RRCでシグナリングすることでオーバーヘッドを削減し得ることが示唆されており(引用例第2ページ下から第9行目?第3ページ第12行)、RRCが物理層の上位層であることは技術常識であるから、引用発明において、p1及びp2についても「上位層でシグナリング」して、「他の情報を用いずに、」R-PDCCHの後に引き続くR-PDSCHの開始位置まで含めて決定できるよう構成することも、当業者が容易に想到し得ることといえる。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

請求項5に係る発明についても同様である。

請求項2-4及び請求項6-8に係る発明特定事項についても、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

<引用文献等一覧>
1.Huawei,R-PDCCH Design,3GPP TSG-RAN WG1#58 R1-093042,Shenzhen, China, August 24-28, 2009,2009年8月18日
2.国際公開第2009/041779号 」

第4 当審の判断
1 優先権主張について
請求項1及び5に係る発明の「前記第2のタイプの制御チャネルのリソース領域の開始位置は、上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報によって決定され」、「前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる」との技術事項は、請求人が平成28年11月16日付け意見書において主張するように、明細書の「バックホール送受信のための構成メッセージは、R-PDCCHやPDCCHなどの制御チャネルと、R-PDSCHやPDSCHなどのデータチャネルのどちらにも適用することができる。・・・(中略)・・・R-PDCCHとR-PDSCHとは、時分割多重化(TDM)して異なるOFDMシンボルを割り当てるか、又は周波数分割多重化(FDM)して異なるサブキャリアを割り当てることにより、分離することができる。」(段落78)との記載を根拠とするものである。
しかしながら、当該技術事項は、優先権主張の基礎となる米国出願である優先権主張番号61/251271(優先日:2009年10月13日)に係る出願の明細書等に開示されたものであって、上記優先日より前の優先日である優先権主張番号に係る出願の明細書等には開示されていないから、請求項1及び5に係る発明の優先日は2009年10月13日である。
請求項1を引用する請求項2-4に係る発明、及び、請求項5を引用する請求項6-8に係る発明についても、同様に、優先日は2009年10月13日である。

2 引用文献
(1)当審において拒絶の理由に引用された、Huawei,R-PDCCH Design,3GPP TSG-RAN WG1#58 R1-093042,Shenzhen, China, August 24-28, 2009(公知日:2009年8月18日。以下「引用例」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある(なお、下線は当審において付したものである。)。

ア 「A new physical control channel (here referred to as the “R-PDCCH”) is used to dynamically or “semi-persistently” assign resources, within the semi-statically assigned sub-frames, for the downlink backhaul data (corresponding to the “R-PDSCH” physical channel). 」(第1ページ第9行?第11行)
(当審訳:「新しい物理制御チャネル(ここでは、“R-PDCCH”という。)が、半静的に割り当てられるサブフレーム内で、動的又は“半持続的に”、ダウンリンクバックホールデータ(“R-PDSCH”物理チャネルに対応)のためのリソースを割り当てるために使用される。」)

イ 「The resources that are not used for R-PDCCH within the above mentioned semi-statically assigned PRBs may be used to carry R-PDSCH or PDSCH」(第1ページ第20行?21行)
(当審訳:「上記半静的に割り当てられたPRBのうちR-PDCCHとして使用されないリソースは、R-PDSCH又はPDSCHを運ぶために使用されてよい。」)

ウ 「After acquiring the PDCCH size of RN, the donor eNB could decide the start of the OFDM symbol of the R-PDSCH backhaul transmission based on its own PDCCH size.」(第1ページ第30行?第32行)
(当審訳:「RNのPDCCHサイズを取得後、ドナーeNBは、自身のPDCCHサイズに基づいて、R-PDSCHバックホール送信のOFDMシンボルの開始を決定することができる。」)

エ 「To transmit R-PDCCH, a fraction of the resources that would normally be assigned to the PDSCH is carved out. This R-PDCCH zone is defined by two parameters p1 and p2, as shown in Figure 2. In addition, the starting point for the R-PDCCH must be known and could be signalled by higher layer signalling.」(第2ページ第6行?第8行)
(当審訳:「R-PDCCHを送信するために、通常PDSCHに配分されるリソースのごく一部が区分けされる。このR-PDCCH区画は図2に示されるように、2つのパラメータp1及びp2によって定義される。加えて、R-PDCCHの開始位置は既知でなければならず、上位層シグナリングでシグナルされることができる。」)

オ 「Figure 2. Subframe with grouped R-PDCCH.

」(当審訳:図2 グループ化されたR-PDCCHを有するサブフレーム)

そうすると、引用例に記載された発明(以下、「引用発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「新しい物理制御チャネル(ここでは、“R-PDCCH”という。)が、半静的に割り当てられるサブフレーム内で、動的又は“半持続的に”、ダウンリンクバックホールデータ(“R-PDSCH”物理チャネルに対応)のためのリソースを割り当てるために使用され、
上記半静的に割り当てられたPRBのうちR-PDCCHとして使用されないリソースは、R-PDSCH又はPDSCHを運ぶために使用されてよく、
RNのPDCCHサイズを取得後、ドナーeNBは、自身のPDCCHサイズに基づいて、R-PDSCHバックホール送信のOFDMシンボルの開始位置を決定することができ、
R-PDCCHを送信するために、通常PDSCHに配分されるリソースのごく一部が区分けされ、このR-PDCCH区画は図2に示されるように、2つのパラメータp1及びp2によって定義され、
加えて、R-PDCCHの開始位置は既知でなければならず、上位層シグナリングでシグナルされることができる、方法。」

3 対比(一致点及び相違点)
(1)引用発明は、3GPPのRAN(Radio Access Network)における新しい物理制御チャネル(R-PDCCH)に関し、これを用いて信号が受信されるから、本願発明と同様に、「無線通信システムにおける信号受信方法」に関するものといえる。
そして、引用例の図2も参照すると、引用発明では、PDCCHとは別に、R-PDCCHを送信するための領域として、通常PDSCHに配分されるリソースの一部を区分けし、PDCCHとR-PDCCHを除く領域をR-PDSCHとしているから、引用発明の「PDCCH」、「R-PDCCH」及び「R-PDSCH」は、それぞれ本願発明にいう「第1のタイプの制御チャネル」、「第2のタイプの制御チャネル」及び「データチャネル」に相当し、引用発明は、本願発明と同様に、「第1のタイプの制御チャネルと区別される第2のタイプの制御チャネルを介して制御情報を受信すること」を有するといえる。

(2)引用発明では、R-PDSCHバックホール送信のOFDMシンボルの開始はドナーeNBによって決定され、R-PDCCHの開始位置は既知でなければならず、上位層シグナリングでシグナルされることができるとしている。
ここで、OFDMシンボルの位置は、OFDMシンボルインデックスによって特定することが当該技術分野の常套手段であるから、引用発明の上記「R-PDCCHの開始位置」に相当するOFDMシンボルの位置は、OFDMシンボルインデックスを有する情報としてシグナリングされるものと解することができ、引用発明においても、本願発明と同様、「前記第2のタイプの制御チャネルのリソース領域の開始位置は、上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報によって決定され、前記上位層は物理層の上位の層」であるといえる。

(3)本願発明は、「上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報」は、「他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる」との特定事項を含むものであるから、「他の情報を用いずに、」の根拠とした明細書の段落61及び段落78の記載も踏まえれば、本願発明は、R-PDCCHリソース領域とR-PDSCHリソース領域とを周波数分割多重化(FDM)したものを前提としているものと解することができる(平成28年11月16日付け意見書の3(1)及び参考図2参照)。

参考図2


一方、引用発明は、R-PDCCHとして使用されないリソースをR-PDSCH又はPDSCHを運ぶために使用するものであって、引用例の図2によれば、周波数軸方向(上記参考図2の縦軸方向に相当)を「R-PDSCH」のリソース領域(上記参考図2の「データチャネルのリソース領域」に相当)と「R-PDCCH」のリソース領域(上記参考図2の「第2のタイプの制御チャネル」に相当)とに周波数分割多重化(FDM)するとともに、時間軸方向(上記参考図2の横軸方向)にも時分割多重化(TDM)することで、時間軸上でR-PDCCHに引き続くリソース領域もR-PDSCHとして使用したものである。
そして、少なくとも、周波数分割多重化によって分割されたR-PDSCHのリソース領域(PDCCHに引き続いて開始される「R-PDSCH」のリソース領域)の開始シンボル位置は、「R-PDCCH」のリソース領域の開始シンボル位置と同じであるから、引用発明においても、上位層でシグナリングされた「R-PDCCHの開始位置」に関する情報から、他の情報を用いずに、少なくともR-PDSCHの一部である周波数分割多重化によって分割された上記「R-PDSCH」の開始シンボル位置を決定し得るものと解することができ、本願発明にいう「前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる」ことの開示があるといえる。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「無線通信システムにおける信号受信方法であって、
第1のタイプの制御チャネルと区別される第2のタイプの制御チャネルを介して制御情報を受信することであり、
前記第2のタイプの制御チャネルのリソース領域の開始位置は、上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報によって決定され、前記上位層は物理層の上位の層であり、
前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、データチャネルのリソース領域の開始位置を決定するのに共通に用いられる、方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点] 本願発明では、「第1のタイプの制御チャネルのリソース領域は、PCFICHによって決定されることを有し」ているのに対し、引用発明においては、PCFICHによって決定されるか否か定かでない点。

4 判断
PDCCHのリソース領域をPCFICHによって決定することは周知技術(例えば、当審において周知例として引用した国際公開第2009/041779号(国際公開日:2009年4月2日)。特に、段落62参照。)であり、引用発明において、上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(参考:国際公開第2009/041779号の段落62
「[62] Referring to FIG. 10, showing the structure of a subframe, one subframe includes two consecutive slots. First three OFDM symbols of the first slot in the subframe correspond to a control region on which PDCCHs are allocated, and the rest of the OFDM symbols in the subframe correspond to a data region on which a PDSCH is allocated. A PCFICH in the first OFDM symbol of the subframe carries information on the number of OFDM symbols used for the control region.」(当審訳:「[62]サブフレーム構造を示す図10を参照すると、1つのサブフレームは、2つの連続的なスロットを含む。サブフレーム内の1番目のスロットの前の3つのOFDMシンボルは、PDCCHが割り当てられる制御領域であり、サブフレーム内の残りのOFDMシンボルは、PDSCHが割り当てられるデータ領域である。サブフレームの1番目のOFDMシンボルにあるPCFICHは、制御領域に用いるOFDMシンボルの数に関する情報を運ぶ。」)

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、請求人は、平成29年3月13日付け意見書において、「引用文献1の図2に示されるように、周波数領域p1以外の周波数領域におけるR-PDSCHの開始位置は「R-PDCCHの開始位置」であり、周波数領域p1におけるR-PDSCHの開始位置は「R-PDCCHの開始位置+p2」です。このため、引用文献1に記載された発明では、R-PDSCHが周波数領域p1に含まれるか否かを決定しなければ、R-PDSCHの開始位置を決定することはできません。すなわち、周波数領域p1に関する情報が提供されない限り、R-PDSCHの開始位置は決定できません。
これにより、引用文献1に記載された発明において、「R-PDSCH」のリソース領域の開始位置は、周波数領域p2に関する情報のみを用いて、周波数領域p1に関する他の情報を用いずに決定されることはありません。」と主張している。
請求人の主張は、要するに、「上位層でシグナリングされた、前記リソース領域の最初の位置を示すOFDMシンボルインデックスを有する情報」だけで、「他の情報を用いずに」、TDMによって分割されたリソース領域である、R-PDCCHに引き続くR-PDSCHのリソース領域の開始位置までは決定できないというものであるが、本願発明は、上記3(3)のとおり、FDMを前提としたものであって、少なくともR-PDSCHの一部である引用発明のうちFDMによって分割されたリソース領域に着目すれば、本願発明と同様、「前記上位層でシグナリングされた情報は、他の情報を用いずに、」開始位置を決定し得るのであるから、上記請求人の主張は失当である。

第5 むすび
以上のとおり、本件特許出願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-10 
結審通知日 2017-04-11 
審決日 2017-04-24 
出願番号 特願2014-97784(P2014-97784)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 古市 徹  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 北岡 浩
吉田 隆之
発明の名称 リレー方式の通信システムにおける信号送信方法及び装置  
代理人 青木 篤  
代理人 南山 知広  
代理人 河合 章  
代理人 鶴田 準一  
代理人 中村 健一  

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