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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1332082
審判番号 不服2016-11416  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-29 
確定日 2017-09-06 
事件の表示 特願2014-527752「ワイヤレス・ネットワークに対する端末のアクセスを制御するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日国際公開,WO2013/030659,平成26年11月13日国内公表,特表2014-529963〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年8月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年9月2日 中国)を国際出願日とする出願であって,平成27年4月9日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,同年10月8日付けで意見書が提出されたが,平成28年3月30日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年7月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項13に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,平成28年7月29日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項13に記載された以下のとおりのものと認める。なお,請求項13に係る発明は,補正前の請求項15に係る発明である。

「モバイル端末内にある,ワイヤレス・ネットワークに対する端末のアクセスを制御するための装置であって,
モバイルデバイス管理サーバーから,アプリケーションのアクセスステータスをその内部に包含している通知メッセージを受け取るように構成された第2の受信デバイスと,
受け取った通知メッセージ内に包含されたアプリケーションのアクセスステータスに基づいて,アプリケーションのローカル保存のアクセスステータスを更新するように構成された更新デバイスと,
モバイル端末上のアプリケーションがワイヤレス・ネットワークへのアクセス要求を開始したときに,アプリケーションのローカル保存のアクセスステータスに基づいてワイヤレス・ネットワークへのアクセスを拒絶するか許諾するかを決定するように構成された第2の決定デバイスと,
を備える装置。」

第3 引用発明及び周知技術
1 引用例と引用発明
原審の拒絶の理由に引用された特開2006-340294号公報(以下,「引用例」という。)には,その発明の名称を「発信規制システム」として図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は強調のため当審で付与した。)

ア 「【0001】
本発明は,携帯電話やモバイル端末でのパケット通信について利用制限を行う発信規制システムに関する。」

イ 「【0008】
以上,本発明の構成によれば,過剰利用を行ったユーザの通信を接続し,一定時間NWへのアクセスを規制することにより,NWリソースへの影響を軽減できる。
また,規制中のユーザからの発信を移動機で規制することにより,トラヒックの影響を軽減することが可能となる。
また,NWにてデータ量及び通信回数をカウントすることで移動機でカウントした場合に比べて移動機の負荷を軽減することが可能となる。
また,アプリケーション毎及び接続先毎に発信規制を行うことで柔軟な規制を行うことが可能である。
また,移動機での発信規制解除にて発信規制中であっても災害時等の際に移動機からの発信を許容することが可能である。」

ウ 「【0013】
図2は,本発明の第2の実施形態に係る発信規制システムの構成及び動作を示す概略図である。
第2の実施形態に係る発信規制方法は,以下の手順による。
(1)移動機1でのパケット通信時に,経由するネットワーク装置2にて通信データ量ならびに通信回数のカウントを行う。
(2)一定時間内に通信データ量もしくは通信回数が閾値を超過した場合に,通信を切断し,ショートメッセージサービス(SMS)にて「残り規制時間」「規制対象アプリケーション種別」を通知する。
(5)「残り規制時間」,「規制対象アプリケーション種別」が通知されると,移動機1にて残り規制時間の間,通知されたアプリケーションについて発信を非許容とする。
【0014】
以下,図2を参照して,上記手順について具体的に説明する。
まず,ステップS21において,移動機1からリクエストを送信する。
次に,ステップS22において,リクエストが規制対象アプリケーションからのパケット通信の場合に,通信回数及び通信データ量の監視を行う。規制対象アプリケーション情報は,図1と同様に,アプリケーションA,B,C等に分け,それぞれ規制対象として「対象・非対象」を情報として格納しておく。
【0015】
次に,ステップS23において,通信回数又は通信データ量が閾値を超過したかを判別する。
次に,ステップS24において,閾値を超過した場合,移動機1との通信を切断し,規制タイマを起動する。例えば,「ユーザAは規制中,規制タイマ28分」等とする。
次に,ステップS25において,SMSにて発信規制を通知する。
次に,ステップS26において,ネットワーク装置2から通知された規制対象アプリケーションでの通信のみ,移動機1での発信を規制する。」

上記記載からみて,引用例には,その第2の実施形態(図2)に関連して,以下の事項が記載されている。

a 上記イより,「移動機」は,「移動機」自身で「規制中のユーザからの発信を規制」するものであり,この「規制」には,「NW(ネットワーク)へのアクセスの規制」が含まれる。そうすると,前記「移動機」内に,「NWへのアクセスを規制するための装置」が備えられているといえる。
b 上記ウより,「ネットワーク装置」は前記「移動機」にSMSにて発信規制を通知するから,「移動機」は,「通知を受け取る受信手段」を備えるといえる。そして,上記ウより前記発信規制には「残り規制時間」,「規制対象アプリケーション種別」が含まれ,上記イより,「残り規制時間」は,「アプリケーション毎」に規制された時間であるといえるから,「移動機」は,ネットワーク装置から,アプリケーションの残り規制時間を含むSMSによる通知を受け取る受信手段を備えるといえる。
c 上記ウより,前記「移動機」は,上記通知を受け,残り規制時間の間,通知されたアプリケーションについての発信を非許容とするための規制手段を備えるといえる。
d 上記bのアプリケーションの残り規制時間を含むSMSによる通知は,ネットワーク装置から繰り返し送られてくるものではないから,前記「移動機」内に,前記アプリケーションの残り規制時間を保存する保存手段が備えられていることは明らかであり,上記cの規制手段は,前記保存手段に保存された残り規制時間を確認して発信の非許容を判断しているといえる。また,上記cのように規制手段が動作する場合には,規制されているか否かに関わらずアプリケーションによる発信に関して,前記保存手段に保存された残り規制時間を確認する必要があることが明らかであるから,前記通知を受けた場合に,前記保存手段により保存された残り規制時間を前記通知に含まれる残り規制時間により更新するものといえ,前記「移動機」は,前記残り規制時間を更新するための更新手段を備えるといえる。
e 上記b,c,dの「受信手段」,「更新手段」及び「規制手段」は,上記aの「NWへのアクセスを規制するための装置」に含まれることは明らかである。

上記aないしeを総合すると,引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「移動機内にある,ネットワークへのアクセスを規制するための装置であって,
ネットワーク装置から,アプリケーションの残り規制時間を含むSMSによる通知を受け取る受信手段と,
受け取った通知内に含まれるアプリケーションの残り規制時間に基づいて,保存手段に保存されたアプリケーションについての発信を非許容と判断するための残り規制時間を更新する更新手段と,
移動機上のアプリケーションについて,前記保存手段に保存されたアプリケーションの残り規制時間に基づいてアプリケーションについての発信を非許容と判断する規制手段と,
を備える装置。」

2 周知例と周知事項
本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2009-177262号公報(以下,「周知例」という。)には,その発明の名称を「携帯情報処理装置,携帯情報処理方法及び携帯情報処理プログラム」として以下の事項が記載されている。

ア 「【0004】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは,次の各項の発明に存する。
[1] 無線通信による通信負荷を制御する携帯情報処理装置であって,
通信を行うアプリケーションを一意に特定するアプリケーション識別子毎に,該アプリケーションの通信規制に関する情報を定義した制御基準を記憶する制御基準記憶手段と,
アプリケーションからの通信開始の要求を受け付けると,該通信開始の要求を行ったアプリケーション識別子に基づいて前記制御基準記憶手段内の該当する制御基準を取得し,該制御基準に応じて前記アプリケーションによる通信を行うか否かを判断する通信判断手段
を具備することを特徴とする携帯情報処理装置。」(3ページ)

イ 「【0019】
図4は,本実施の形態による処理例を示すフローチャートである。
ステップS402では,アプリケーションモジュール110は,携帯電話210からの利用者の指示に応じて,Webサーバー230との通信を行うための通信開始要求を通信開始可否判断モジュール120に対して行い,通信開始可否判断モジュール120は,その通信開始要求を受け取る。なお,通信開始要求とは,一連の通信を開始するにあたっての最初の通信開始であってもよいし,パケット通信のように個々のパケットを送受信するにあたっての通信開始要求であってもよい。したがって,後者の場合は,既に通信が発生している場合がある。
ステップS404では,通信開始可否判断モジュール120は,携帯電話210からの通信開始要求内にあるアプリケーションIDを用いて,制御ポリシー記憶モジュール130内に記憶されている制御ポリシーを検索する。そして,そのアプリケーションIDに該当する制御ポリシーを取得する。
【0020】-【0021】(略)
【0021】
ステップS412では,通信開始可否判断モジュール120は,ステップS404で取得した制御ポリシー内の基準と,ステップS406?ステップS410で取得したデータとの比較を行い,アプリケーションモジュール110による通信開始の可否を判断する。かかる判断で許可する場合はステップS414へ進み,拒否する場合はステップS416へ進む。
ステップS414では,通信開始可否判断モジュール120は通信を許可する旨を送受信モジュール140へ伝え,送受信モジュール140は外部のWebサーバー230との通信を開始する。
ステップS416では,通信開始可否判断モジュール120は通信拒否の旨を送受信モジュール140又はアプリケーションモジュール110へ伝え,アプリケーションモジュール110は通信できない旨を携帯電話210のディスプレイ301等に提示する。」(6?7ページ)

上記周知例に記載されているように,次の事項(以下,「周知事項」という。)は周知である。

「携帯端末において,アプリケーションがワイヤレス・ネットワークへのアクセス要求を開始したときに,端末に記憶された情報に基づき発信を規制すること。」

第4 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを技術常識を勘案しつつ対比する。

a 引用発明の「移動機」は,本願発明の「モバイル端末」に相当し,引用発明の移動機がアクセスする「ネットワーク」は,当然ワイヤレスにより接続するネットワークであるから,「ワイヤレス・ネットワーク」といえ,引用発明の「アクセスを規制する」ことは,本願発明の「アクセスを制御する」ことに含まれる。
そうすると,引用発明の「移動機内にある,ネットワークへのアクセスを規制するための装置」は,本願が発明の「モバイル端末内にある,ワイヤレス・ネットワークに対する端末のアクセスを制御するための装置」に含まれる。
b 引用発明の「アプリケーションの残り規制時間」は,引用発明の「規制手段」がこの情報をもとにアプリケーションについての発信を非許容と判断するから,本願発明の「アプリケーションのアクセスステータス」に相当し,その内容を含む引用発明の「SMSによる通知」は,本願発明の「通知メッセージ」に相当する。そうすると,引用発明の「ネットワーク装置」は,前記「通知メッセージ」を通知する点で本願発明の「モバイルデバイス管理サーバー」に相当し,引用発明の「受信手段」は,前記「通知メッセージ」を受け取る点で本願発明の「第2の受信デバイス」に相当する。
c 上記bより,引用発明の「受け取った通知内に含まれるアプリケーションの残り規制時間」は,本願発明の「受け取った通知メッセージ内に包含されたアプリケーションのアクセスステータス」に相当し,また,引用発明の「保存手段に保存されたアプリケーションについての発信を非許容と判断するための残り規制時間」は,本願発明の「アプリケーションのローカル保存のアクセスステータス」に相当する。
そうすると,引用発明の「更新手段」は,「受け取った通知内に含まれるアプリケーションの残り規制時間」(受け取った通知メッセージ内に包含されたアプリケーションのアクセスステータス)に基づいて,「保存手段に保存されたアプリケーションについての発信を非許容と判断するための残り規制時間」(アプリケーションのローカル保存のアクセスステータス)を更新する点で本願発明の「更新デバイス」に相当する。
d 引用発明の「前記保存手段に保存されたアプリケーションの残り規制時間に基づいてアプリケーションについての発信を非許容と判断する」は,「非許容」と判断しない場合は,「許容」と判断することが明らかであり,「発信」は,ネットワークへアクセスするための発信であるから,本願発明の「アプリケーションのローカル保存のアクセスステータスに基づいてワイヤレス・ネットワークへのアクセスを拒絶するか許諾するかを決定する」ことに相当し,このように動作する点において,引用発明の「規制手段」は,本願発明の「第2の決定デバイス」に相当する。

以上を総合すると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,ないしは一応相違する。

<一致点>
「モバイル端末内にある,ワイヤレス・ネットワークに対する端末のアクセスを制御するための装置であって,
モバイルデバイス管理サーバーから,アプリケーションのアクセスステータスをその内部に包含している通知メッセージを受け取るように構成された第2の受信デバイスと,
受け取った通知メッセージ内に包含されたアプリケーションのアクセスステータスに基づいて,アプリケーションのローカル保存のアクセスステータスを更新するように構成された更新デバイスと,
アプリケーションのローカル保存のアクセスステータスに基づいてワイヤレス・ネットワークへのアクセスを拒絶するか許諾するかを決定するように構成された第2の決定デバイスと,
を備える装置。」

<一応の相違点>
一致点である「第2の決定デバイス」について,本願発明では,「モバイル端末上のアプリケーションがワイヤレス・ネットワークへのアクセス要求を開始したとき」に,「アプリケーションのローカル保存のアクセスステータスに基づいてワイヤレス・ネットワークへのアクセスを拒絶するか許諾するかを決定する」のに対し,引用発明では,どのタイミングで非許容の判断(決定)を行うかが明示されていない点。

2 判断
そこで,一応の相違点について検討すると,引用発明では,移動機において,アプリケーションの実行自体は非許容とされておらず,アプリケーションの実行と発信の規制は独立していることが明らかであるから,発信の非許容を判断するタイミングについて,アプリケーションが発信の要求をしたときに発信の非許容の判断をすると解すべきである。そうすると,前記一応の相違点に係る本願発明の構成は,引用例に記載されているに等しい事項といえる。
よって,本願発明と引用発明とは同一である。

また,仮に同一でないとしても,「携帯端末において,アプリケーションがワイヤレス・ネットワークへのアクセス要求を開始したときに,端末に記憶している情報に基づき発信を規制すること。」は周知事項(「第3」の項中の「2 周知例と周知事項」の項参照。)であって,前記周知事項を引用発明に適用することを阻害する要件はないから,引用発明においても,上記周知事項を勘案して前記一応の相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものである。

第5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,または,引用発明に基づいて周知事項も勘案することで当業者が容易に発明することができたものであるから,同法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-30 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-04-21 
出願番号 特願2014-527752(P2014-527752)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H04M)
P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松原 徳久石井 則之  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 吉田 隆之
中野 浩昌
発明の名称 ワイヤレス・ネットワークに対する端末のアクセスを制御するための方法および装置  
代理人 岡部 讓  
代理人 吉澤 弘司  
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