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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1332085
審判番号 不服2016-16321  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-01 
確定日 2017-09-06 
事件の表示 特願2014-513677「温度補償型アレイ導波路回折格子アセンブリ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日国際公開,WO2012/166852,平成26年 6月30日国内公表,特表2014-515504〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,2012年5月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年6月3日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年8月31日付けで拒絶理由が通知され,同年12月7日に特許請求の範囲が補正され,平成28年6月30日付け(同年7月5日送達)で拒絶査定がされ,これに対して,同年11月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものであり,本願の請求項に係る発明は,請求項1ないし31に記載された事項により特定されるものであるところ,請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「合成信号導波路と,
分散信号導波路の集合と,
第一のスラブ導波路と,
前記第一のスラブ導波路に光学的に接続された第一のミラーと,
前記第一のミラーを支持するミラーアセンブリと,
導波路アレイと,
第二のスラブ導波路と,
を含むプレーナ光波回路において,
前記導波路アレイが,前記第一のスラブ導波路と前記第二のスラブ導波路を光学的に接続して,アレイ導波路回折格子を提供し,
前記合成信号導波路または前記分散信号導波路の集合が,アクセスエッジにおいて前記第一のスラブ導波路に光学的に接続され,前記合成信号導波路または前記分散信号導波路の集合のうちの他方が,前記第二のスラブ導波路に光学的に接続され,
前記アクセスエッジから前記第一のスラブ導波路を通る光路が,前記第一のミラーから,前記導波路アレイと,前記合成信号導波路または前記分散信号導波路の集合の適当な素子を接続するアレイエッジへの光反射を提供することによって折り返され,
前記第一のミラーで反射させる設計の構成では,反射角度が約80度以下であり,前記アクセスエッジから前記第一のミラーまでの光路の距離と前記導波路アレイから前記第一のミラーまでの光路の距離の比が約0.5:1?約2:1であり,前記ミラーアセンブリがアクチュエータを含み,これは,温度変化に応答して前記第一のミラーを旋回させることによって前記角度を変化させ,選択された温度範囲において,前記プレーナ光回路を通る光の伝送の有効な温度補償を行うプレーナ光波回路。」

2.引用例
本願の優先権主張の日前に日本国内において頒布され,原査定の拒絶理由に引用された特表2007-536567号公報(以下「引用例」という。)には,図とともに次の記載がある(下線は,当審による。)
ア 「【0001】
本発明は,光集積回路の分野,およびより詳細には,温度非依存の中心波長を有するアレイ導波路を提供する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光集積回路(OIC)は,1×N光スプリッタ,光スイッチ,波長分割マルチプレクサー(WDM),デマルチプレクサー,光加算/降下マルチプレクサー(OADM)などの多くの形態になる。このようなOICは,データを搬送するための光デバイス間で光シグナルを伝送する光ネットワークの構築に用いられる。例えば,導電性の電線経由の電気シグナルの伝送を用いる遠隔通信ネットワークおよびデータ通信ネットワーク内の伝統的なシグナル交換は,光学(例えば,光)シグナルが伝送される光ファイバーおよび回路に置き換えられている。このような光学シグナルは,光ネットワークによるこのような情報の伝送のために,調節技法によってデータまたは他の情報を搬送し得る。OICは,光学的および電気的媒体間の中間変換をすることなく,光学シグナルの分岐,結合,スイッチ,分離,マルチプレクシング,およびデマルチプレクシングを可能にする。
【0003】
このような光回路は,平坦な基板上に光導波路を有するプレーナ光波回路(PLC)を含み,これは,多くの入力光ファイバーの1つから多くの出力光ファイバーまたは光回路の任意の1つへ光学シグナルを経路制御するために用いられ得る。PLCは,代表的には半導体産業に関連する製造技法の採用によるファイバー構成部品とともに利用可能であるよりも,より高密度,より大きな生産量,およびより多様な機能を達成することを可能にする。例えば,PLCは,リソグラフ加工を用いるシリコンウエハ基板上に形成された導波路として知られる光学通路を含み,この導波路は,伝送可能な媒体から製造され,これらは,光学通路に沿って光を導くために,チップ基板または遠隔のクラッド層よりもより高い屈折率を有する。高度なフォトリソグラフィーおよび他の加工を用いることにより,PLCは,単一の光チップ中に多数の構成部品および機能性を集積するように作られている。
【0004】
PLCおよび特にOICの1つの重要な応用は,一般的には,重波長分割マルチプレクシング(DWDM)を含む波長分割マルチプレクシング(WDM)に関連する。DWDMは,それぞれ別々の情報を搬送する異なる波長の光学シグナルが光ネットワーク中の単一の光チャネルまたはファイバーを経由して伝送されることを可能にする。現在のマルチプレクス光学システムは,各光ファイバーにおいて160もの多くの波長を用いる。
【0005】
このようなネットワークにおいて高度なマルチプレクシングおよびデマルチプレクシング(例えば,DWDM)ならびに他の機能を提供するために,アレイ導波路回折格子(AWG)がPLCの形態で開発されている。AWGの存在により,80チャネルまでのマルチプレクシングまたはデマルチプレクシング,あるいは50GHzもの接近した間隔の波長を提供し得る。図1に示すように,従来のデマルチプレクシングAWG2は,単一の入力部3および多数の出力部4を含む。多波長光は,(図示しないが,例えば,ネットワークにおける光ファイバーから)入力部3で受け入れられ,そして入力光学通路または導波路6を経由して入力レンズ5に提供される。
【0006】
入力レンズ5は,ときどき導波路回折格子といわれる,導波路7のアレイ中に多波長光を広げる。導波路7のそれぞれは,入力レンズ5から出力レンズ8まで異なる光学通路長を有し,その結果,波長に依存して出力レンズ8への入力で異なる位相傾斜になる。この位相傾斜は,次に,出力レンズ8における建設的干渉による光の再結合の仕方に影響を与える。したがって,出力レンズ8は,個々の出力導波路9を経由して出力部4で異なる波長を提供し,それによってAWG2は,入力部6から入る光シグナルを,出力部4で2以上のデマルチプレクスしたシグナルにデマルチプレクスするために用いられ得る。あるいは,AWG2は,出力部4からの光シグナルを入力部3で2以上の波長構成成分を有するマルチプレクスしたシグナルにマルチプレクスするために使用され得る。」

イ 「【0017】
本発明は,互いに相対的に移動し得る2以上の異なる領域または断片を有するOICまたはAWGを用いてビーム偏向を使用することによる,アサーマルOICおよび低消費電力のOICを提供する。この相対的移動は,2つの断片の動きに比例するOICの,中心波長(CW)または所定のチャネルのためのピーク送電の波長をシフトさせる。OICは,2つの断片の動きによって生じるCW変化の程度が,(OICの膨張/収縮および導波路屈折率の温度依存性によって生じるような)OICに固有のCW変化と同等の大きさおよび反対のサインになるように設計され,次いで,デバイスは,およそ正味0のCWの温度依存性を有し,実質的に温度非依存である中心波長を有する。したがって,アサーマルと称される。」

ウ 「【0051】
よりさらなる他の実施態様では,アサーマルOICは,レンズおよびミラーの下に配置されたヒンジを有する基材またはライザーを覆うように取り付けられたAWGチップを含む。例えば,図11および12を参照すると,このようなOICの例,およびOICの製造方法が示される。
【0052】
具体的に,図11を参照すると,基材60が示される。基材60は,第1の領域61および第2の領域63を分離しかつ接続するヒンジ64を含むように構成される。第2の熱膨張係数(基材60の第1の熱膨張係数と異なる)を有するアクチュエーター62が示され,基材60の第1の領域61および第2の領域63を接続する。基材は,ヒンジ64のため曲がり得る。すなわち,第1の領域61および第2の領域63は,ヒンジ64の周りを矢印と一致するように回転し得る。
【0053】
図12を参照すると,AWGチップ66およびミラー67は,基材60に任意の適切な手段で貼り付けられる。例えば,接着剤がAWGチップ66またはミラー67と基材60との間に配置され得る。基板,入力導波路72,第1のレンズ70,折り曲げられた第2のレンズ76,多数の導波路を含む第1のレンズ70と折り曲げられたレンズ76との間の導波路回折格子,および出力導波路74を有するAWGチップ66が示される。基材60,基板,アクチュエーター62,および導波路は,図2および3に関連して記載されたこれらの特徴のための任意の材料で作成され得る。AWGチップ66およびミラー67が配置され,溝または間隙68がその間に存在する。ミラー67は,折り曲げられたレンズ76から折り曲げられたレンズ76へ光を反射し返し導波路回折格子に入るように機能を果たす。なお,アクチュエーター62は,AWGチップ66が基材60に貼り付けられる前または後に,基材60に付着され得る。
【0054】
この実施態様では,AWGチップ66およびミラー67は,基材60を覆うように配置され,そのため折り曲げられたレンズ76およびミラー67は,基材60のヒンジ64のすぐ上にある。間隙または溝68は,レンズ76を横切る。溝68は,AWGチップ66とミラー67とを完全に分ける。AWGチップ66は溝68の片側にあり,基材60の第1の領域61によって支持される。一方,ミラー67は溝68の他側にあり,基材60の第2の領域63によって支持される。
【0055】
間隙または溝68は,必要に応じて研磨され得,そして必要に応じて,導波路回折格子の導波路の屈折率と実質的に整合する屈折率を有する接着剤,ゲル,ポリマー,または液体で満たされ得る。効果は,屈折率整合物質の屈折率にのみ弱く依存し,そのため,物質の屈折率の厳密な制御は必要ではない。あるいは,(溝68内の)AWGチップ66の内面端は,必要に応じて,反射防止膜でコーティングされ得,空気に露出したままであり得る。
【0056】
構造物の温度が変化するにつれて,アクチュエーター62は,熱膨張係数の差のため,基材60とは異なる速度で長さを変化する。これは,レンズ76とミラー67との間の角度の変化,およびレンズおよび入力(または出力)導波路部分の偏向を引き起こし,そのため,光の焦点に相対的に導波路を移動する。したがって,波長が導波路回折格子に集中するようにシフトし,デバイスのCWのシフトを引き起こす。特に,ミラーが取り付けられる角度は,AWGのCWを選択するために用いられ,そして温度の関数として,アクチュエーターによって提供されるミラーの回転の程度は,AWGの温度応答を取り消すために用いられる。アクチュエーターおよび基材材料のサイズおよび形状は,アクチュエーターの熱膨張/収縮によって引き起こされるCWシフトが,温度変化のためAWGのCWシフトと正確につり合うように選択される。その結果,AWGのCWは,温度非依存である。」

エ ここで,図11及び図12は以下のものである。
【図11】

【図12】


上記ウによれば,引用例には,
「第1の領域61および第2の領域63を分離しかつ接続するヒンジ64を含むように構成される基材60と,
基材60の第1の熱膨張係数と異なる第2の熱膨張係数を有し,基材60の第1の領域61および第2の領域63を接続するアクチュエーター62と,
基材60に貼り付けられたAWGチップ66およびミラー67と,
を含むOICであって,
AWGチップ66は,基板,入力導波路72,第1のレンズ70,折り曲げられた第2のレンズ76,多数の導波路を含む第1のレンズ70と折り曲げられたレンズ76との間の導波路回折格子,および出力導波路74を有し,
AWGチップ66とミラー67の間には,溝または間隙68が存在し,
ミラー67は,折り曲げられたレンズ76から折り曲げられたレンズ76へ光を反射し返し導波路回折格子に入るように機能を果たし,
溝68は,AWGチップ66とミラー67とを完全に分け,AWGチップ66は溝68の片側にあり,基材60の第1の領域61によって支持され,ミラー67は溝68の他側にあり,基材60の第2の領域63によって支持され,
構造物の温度が変化するにつれて,アクチュエーター62は,熱膨張係数の差のため,基材60とは異なる速度で長さを変化し,
温度の関数としてアクチュエーターによって提供されるミラーの回転の程度は,AWGの温度応答を取り消すために用いられ,
AWGのCWは,温度非依存であるOIC。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用例の【0002】に「光集積回路(OIC)」と記載され,【0003】に「このような光回路は,平坦な基板上に光導波路を有するプレーナ光波回路(PLC)を含み」と記載され,また,【0005】に「アレイ導波路回折格子(AWG)がPLCの形態で開発されている」と記載されていることから,引用発明の「OIC」は,本願発明の「プレーナ光波回路」に相当すると認められる。
(2)そして,引用発明の「入力導波路72」,「出力導波路74」,「折り曲げられた第2のレンズ76」,「(折り曲げられたレンズ76から折り曲げられたレンズ76へ光を反射し返し導波路回折格子に入るように機能を果たす)ミラー67」,「(ミラー67を支持する)基材60の第2の領域63」,「多数の導波路」及び「第1のレンズ70」は,それぞれ,本願発明の「合成信号導波路」,「分散信号導波路の集合」,「第一のスラブ導波路」,「前記第一のスラブ導波路に光学的に接続された第一のミラー」,「前記第一のミラーを支持するミラーアセンブリ」,「導波路アレイ」及び「第二のスラブ導波路」に相当する。
(3)引用発明の「多数の導波路」は,「第1のレンズ70と折り曲げられたレンズ76との間の導波路回折格子」に含まれるから,引用発明も本願発明と同様に「前記導波路アレイが,前記第一のスラブ導波路と前記第二のスラブ導波路を光学的に接続して,アレイ導波路回折格子を提供」するものといえる。
(4)引用例の図12にみられるように,引用発明の「入力導波路72」は,引用発明の「折り曲げられた第2のレンズ76」に接続され,また,引用発明の「出力導波路74」は,引用発明の「第1のレンズ70」に接続されているから,引用発明は,本願発明と同様に「前記合成信号導波路(または前記分散信号導波路の集合)が,アクセスエッジにおいて前記第一のスラブ導波路に光学的に接続され,(前記合成信号導波路または)前記分散信号導波路の集合(のうちの他方)が,前記第二のスラブ導波路に光学的に接続され」ているものといえる。
(5)引用発明において,「ミラー67は,折り曲げられたレンズ76から折り曲げられたレンズ76へ光を反射し返し導波路回折格子に入るように機能を果た」すから,引用発明は,本願発明と同様に「前記アクセスエッジから前記第一のスラブ導波路を通る光路が,前記第一のミラーから,前記導波路アレイと,(前記合成信号導波路または)前記分散信号導波路の集合の適当な素子を接続するアレイエッジへの光反射を提供することによって折り返され」ているものといえる。
(6)引用発明の「基材60の第1の熱膨張係数と異なる第2の熱膨張係数を有し,基材60の第1の領域61および第2の領域63を接続するアクチュエーター62」が本願発明の「アクチュエータ」に相当するところであり,引用発明は,「構造物の温度が変化するにつれて,アクチュエーター62は,熱膨張係数の差のため,基材60とは異なる速度で長さを変化し」,「温度の関数としてアクチュエーターによって提供されるミラーの回転の程度は,AWGの温度応答を取り消すために用いられ」,「AWGのCWは温度非依存であるOIC」(すなわち,引用例の【0017】に記載されるように「実質的に温度非依存である中心波長を有する」「アサーマルOIC」)である。
また,引用例の図12から,引用発明の「入力導波路72」と「第2のレンズ76」との接続部位から「ミラー67」までの距離と,「多数の導波路」と「第2のレンズ76」との接続部位から「ミラー67」までの距離は,略等しいと認められる。
したがって,引用発明は,本願発明と「前記第一のミラーで反射させる設計の構成では,前記アクセスエッジから前記第一のミラーまでの光路の距離と前記導波路アレイから前記第一のミラーまでの光路の距離の比が約0.5:1?約2:1であり,前記ミラーアセンブリがアクチュエータを含み,これは,温度変化に応答して前記第一のミラーを旋回させることによって反射角度を変化させ,選択された温度範囲において,前記プレーナ光回路を通る光の伝送の有効な温度補償を行うプレーナ光波回路。」の点で一致する。
(7)以上のことから,両者は,
「合成信号導波路と,
分散信号導波路の集合と,
第一のスラブ導波路と,
前記第一のスラブ導波路に光学的に接続された第一のミラーと,
前記第一のミラーを支持するミラーアセンブリと,
導波路アレイと,
第二のスラブ導波路と,
を含むプレーナ光波回路において,
前記導波路アレイが,前記第一のスラブ導波路と前記第二のスラブ導波路を光学的に接続して,アレイ導波路回折格子を提供し,
前記合成信号導波路または前記分散信号導波路の集合が,アクセスエッジにおいて前記第一のスラブ導波路に光学的に接続され,前記合成信号導波路または前記分散信号導波路の集合のうちの他方が,前記第二のスラブ導波路に光学的に接続され,
前記アクセスエッジから前記第一のスラブ導波路を通る光路が,前記第一のミラーから,前記導波路アレイと,前記合成信号導波路または前記分散信号導波路の集合の適当な素子を接続するアレイエッジへの光反射を提供することによって折り返され,
前記第一のミラーで反射させる設計の構成では,前記アクセスエッジから前記第一のミラーまでの光路の距離と前記導波路アレイから前記第一のミラーまでの光路の距離の比が約0.5:1?約2:1であり,前記ミラーアセンブリがアクチュエータを含み,これは,温度変化に応答して前記第一のミラーを旋回させることによって反射角度を変化させ,選択された温度範囲において,前記プレーナ光回路を通る光の伝送の有効な温度補償を行うプレーナ光波回路。」の点で一致する。
(8)一方,両者は,
本願発明では,「反射角度が約80度以下であり」とされているのに対し,引用発明では,「反射角度が約80度以下」であるか不明な点で相違する。

4.判断
上記3.(8)の相違点について検討するに,引用発明において,本願発明でいう「反射角度」をどの程度にするかは,単なる設計事項にすぎないものと認められる。すなわち,引用発明におけるミラー67の反射角度は,「折り曲げられたレンズ76から折り曲げられたレンズ76へ光を反射し返し導波路回折格子に入るように機能」できるように設定されるところ,引用例において,「折り曲げられたレンズ76」自体の「折り曲げられた」角度に特段の記載はないから,「折り曲げられたレンズ76」が構成できる範囲内で適切な角度が採用されることは明らかである。
請求人は,審判請求書において,引用例について,「図12は,ミラーにおける光入射とミラーの反射との間の角度(いわゆる反射角度)が約90度であるような光がミラー67のアクセスエッジに入り跳ね返る状態にて,約90度の角度でたどる光路を有するアクセスエッジ及びアレイエッジを有した光学的スラブ76を示しています。」というが,引用例に,「反射角度」が「約90度」である旨の記載はなく,むしろ,引用例の図12では,反射角度が80度程度であるように図示がなされていることからしても,当該反射角度は,前記のとおり,単なる設計事項にすぎないものと認められるところであり,これを「約80度以下」として,上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることに格別の困難性は認められない。

5.むすび
以上のとおりであって,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-03 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-04-19 
出願番号 特願2014-513677(P2014-513677)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河原 正里村 利光  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 森 竜介
近藤 幸浩
発明の名称 温度補償型アレイ導波路回折格子アセンブリ  
代理人 中野 晴夫  
代理人 田中 光雄  
代理人 山田 卓二  

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