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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1332115
審判番号 不服2016-14547  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-28 
確定日 2017-09-26 
事件の表示 特願2012-117857「無線タグ用補助部材並びに無線タグ読取り装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 9日出願公開、特開2013-246502、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月23日の出願であって、平成27年12月25日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年3月7日付けで手続補正がされ、平成28年6月9日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年9月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成29年7月13日付けで当審からの拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成29年8月9日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成29年8月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-3は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
集積回路素子に対してループ状に接続されたインダクタと、前記集積回路及び前記インダクタの両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナと、を備える無線タグを有し、紙のように幅及び高さに対して厚さが薄いシートを、N枚(Nは自然数)束ねた状態で両側から挟み込む、一対の無線タグ用補助部材であって、
前記シートと同様の形状、厚さ及び材質を有し、
前記無線タグに配された前記第1と第2のアンテナの形成位置に対応して、前記第1と第2のアンテナの両端に重なるように配置されると共に、前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体を備えることを特徴とする無線タグ用補助部材。
【請求項2】
集積回路素子に対してループ状に接続されたインダクタと、前記集積回路及び前記インダクタの両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナと、を備える無線タグを有し、紙のように幅及び高さに対して厚さが薄いシートを、N枚(Nは自然数)束ねた状態で、前記無線タグの情報を読み取る無線タグ読取り装置であって、
前記シートと同様の形状、厚さ及び材質を有し、前記N枚のシートを両側から挟み込むことが可能である一対の無線タグ用補助部材と、
前記N枚のシートの無線タグに対して質問信号を送信し、かつ、前記N枚のシートの無線タグから応答信号を受信するリーダライタアンテナと、
前記N枚のシートの無線タグから前記リーダライタアンテナを介して受信される応答信号により、前記N枚のシートの無線タグの情報を取得するリーダライタ本体とを具備し、
前記無線タグ用補助部材の各個が、
前記無線タグに配された前記第1と第2のアンテナの形成位置に対応して、前記第1と第2のアンテナの両端に重なるように配置されると共に、前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体を備えることを特徴とする無線タグ読取り装置。
【請求項3】
集積回路素子に対してループ状に接続されたインダクタと、前記集積回路及び前記インダクタの両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナと、を備える無線タグを有し、紙のように幅及び高さに対して厚さが薄いシートを、N枚(Nは自然数)束ねた状態で、前記無線タグの情報を読み取る無線タグ読取り方法であって、
前記シートと同様の形状、厚さ及び材質を有し、前記無線タグに配された前記第1と第2のアンテナの形成位置に対応して、前記第1と第2のアンテナの両端に重なるように配置されると共に、前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体を備え、前記N枚のシートを両側から挟み込むことが可能である一対の無線タグ用補助部材を配置し、
リーダライタアンテナが、前記N枚のシートの無線タグに対して質問信号を送信し、かつ、前記N枚のシートの無線タグから応答信号を受信し、
リーダライタ本体が、前記N枚のシートの無線タグから前記リーダライタアンテナを介して受信される応答信号により、前記N枚のシートの無線タグの情報を取得する、
無線タグ読取り方法。」

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1、引用発明について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-280273号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。

(1) 段落【0010】-【0012】
「【0010】
図1は、第1の実施形態による無線タグ読取システムの概略構成図である。図1に示すように、無線タグ読取システム1は、収納容器2と、リーダライタアンテナ3と、リーダライタ4と、管理装置5とを有する。そして無線タグ読取システム1は、収納容器2に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7と通信して、無線タグ7が持つ情報を読み取ることが可能となっている。
【0011】
リーダライタアンテナ3は、収納容器2の下方に設置される。そしてリーダライタアンテナ3は、リーダライタ4で生成された質問信号を収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7に向けて発信し、また無線タグ7から発信された応答信号を受信する。リーダライタアンテナ3は、RFIDシステムにおいて利用される様々なアンテナの何れかとすることができる。例えば、リーダライタアンテナ3は、パッチアンテナとすることができる。
リーダライタ4は、マイクロプロセッサと、メモリと、その周辺回路と、マイクロプロセッサ上で動作するプログラムを有する。そしてリーダライタ4は、無線タグ7に向けて発信する質問信号を生成する。質問信号は、例えば、質問信号を無線タグ7において同期をとるためのプリアンブル部と、無線タグ7を制御するためのコマンドデータを含む変調部と、無線タグ7が識別情報などを用いて変調するための無変調部とを有する。そしてリーダライタ4は、その質問信号を、リーダライタアンテナ3を介して無線タグ7に向けて発信する。
また、リーダライタ4は、リーダライタアンテナ3を介して無線タグ7から応答信号を受信すると、その応答信号を解析して、応答信号に含まれる無線タグ7の識別情報を抽出する。そしてリーダライタ4は、抽出した無線タグ7の識別情報を、通信回線を通じて接続される管理装置5へ送信する。
管理装置5は、いわゆるコンピュータであり、リーダライタ4から受信した無線タグ7の識別情報を記憶することにより、収納容器2内に収納されている物品6を管理する。なお、リーダライタ4と管理装置5は、一体となっていてもよい。
【0012】
管理対象となる物品6は、例えば、書類、ファイル、封筒、カルテ、X線写真など、幅及び高さに対して厚さが小さい形状を有する物品である。そのため物品6は、収納容器2に多数重ねて入れることが可能となっている。また物品6の下方には、無線タグ7が取り付けられている。
無線タグ7は、無線タグとしての機能を提供するために、整流回路、メモリ及びマイクロプロセッサユニットなどの回路を組み込んだ集積回路と、アンテナとを有する。本実施形態では、無線タグ7は、いわゆるパッシブ方式を採用している。さらに無線タグ7は、リーダライタ4との通信に、UHF帯の周波数(例えば、953MHz)を持つ電波を使用する。そのため、無線タグ7は、アンテナを介して受信した質問信号から整流回路により直流電力を生成して、その直流電力をマイクロプロセッサユニット等を駆動するために供給する。そしてマイクロプロセッサは、リーダライタから質問信号を受信すると、メモリから無線タグ7を他の無線タグと識別するための識別コードを読み取って、その識別コードで質問信号を変調して応答信号を生成する。なお、無線タグ7は、内蔵バッテリからの給電を利用して応答信号を生成するアクティブ方式あるいはセミアクティブ方式を採用するものであってもよい。また、無線タグ7とリーダライタ4間の通信に使用される通信電波の周波数(以下、通信周波数という)は、RFIDシステムにおいて利用される周波数のうち、電波の送受信にアンテナが使用されるもの、例えばマイクロ波帯の2.45GHzとしてもよい。」

(2) 【図2】
引用文献1の【図2】を参照すると、無線タグ7のアンテナは、集積回路の両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナとからなるものであることが認定できる。

(3) 段落【0029】
「【0029】
上記のように、導体22と無線タグとの間隔を大きくし過ぎると、導体22が一部の無線タグに対して反射板として機能し、無線タグの通信可能距離rが短くなるので好ましくない。そこで、導体22と無線タグとの間隔は、導体22と無線タグとの間で電磁結合を生じることが可能な距離以下とすることが好ましい。特に、無線タグの読取性能を従来のシステムにおける無線タグの読取性能よりも向上させるためには、導体22を配置した場合における最短通信可能距離が、導体を配置しない場合の最短通信可能距離よりも長くなるように、導体22と無線タグとの間隔を決定することがなお好ましい。具体的には、上記の第3のシミュレーション結果から明らかなように、導体22と無線タグの中心間の距離が、無線タグから放射される応答信号の波長の1/16以下であることが好ましい。」

(4) 段落【0031】-【0036】
「【0031】
次に、第2の実施形態に係る無線タグ読取システムについて説明する。第2の実施形態に係る無線タグ読取システムは、収納容器内に無線タグのアンテナと電磁結合を生じさせるための導体を複数設け、それら複数の導体のうち、実際に電磁結合を生じさせる導体を、収納容器内に収納された無線タグ付の物品数に応じて選択可能としたものである。
【0032】
第2の実施形態に係る無線タグ読取システムも、第1の実施形態に係る無線タグ読取シ
ステムと同様に、収納容器と、リーダライタアンテナと、リーダライタと、管理装置とを有する。このうち、リーダライタアンテナ、リーダライタ及び管理装置については、第1の実施形態に係る無線タグ読取システムのリーダライタアンテナ、リーダライタ及び管理装置と同様の構成及び機能を有する。そのため、それらの構成要素の説明は、以下では省略する。
【0033】
図9(a)及び(b)に、それぞれ、第2の実施形態に係る無線タグ読取システム11の収納容器2の概略側面断面図及び仕切り板に設置された導体の概略構成図を示す。図9(a)に示すように、第2の実施形態に係る無線タグ読取システム11では、収納容器2内に複数の仕切り板21a?21gが設けられる。そして収納容器2は、各仕切り板の間に、管理対象となる物品6を所定個数ずつ収納可能となっている。この複数の仕切り板のうち、仕切り板21c、21d及び21eに、それぞれ、スイッチ付導体23?25が設置される。各スイッチ付導体の構造及び機能は同一であるため、以下ではスイッチ付導体23についてのみ説明する。
【0034】
図9(b)に示すように、スイッチ付導体23は、二つの導体23a及び23cと、スイッチ23cを有する。
導体23a及び23bは、アルミニウム、銅などの導電性を有する材料により形成される。そして導体23a及び23bは、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7の長手方向と平行な方向において、通信波長λの1/4以上かつ1/2未満の長さを持つ。また導体23a及び23bは、無線タグ7の長手方向と平行な方向に沿って一列に配置される。さらに導体23a及び23bは、それぞれ、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7のアンテナの中心からそれら導体の端部までのy軸方向における距離が10mmとなるように配置される。
【0035】
スイッチ23cは、手動あるいは管理装置(図示せず)からの制御信号に基づいて、オン/オフを切り替え可能な薄型のスイッチであり、二つの導体23a及び23bを電気的に接続するか否かを切り替える。例えばスイッチ23cは、メンブレンスイッチとすることができる。あるいは、スイッチ23cは、携帯電話などに使用されるような、集積回路に組み込まれた、厚さ約1mmまたはそれ以下の薄型スイッチであってもよい。
【0036】
スイッチ23cをオンにすると、二つの導体23aと23bは電気的に接続される。この場合、二つの導体23aと23bの無線タグ7の長手方向と平行な方向の長さの合計が、通信波長λの1/2以上になる。そのため、スイッチ付導体23は、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7のアンテナとの間で電磁結合を生じさせることが可能となる。一方、スイッチ23cをオフにすると、二つの導体23aと23bは電気的に切断される。この場合、各導体23a及び23bの、無線タグ7の長手方向と略平行な方向における長さは、通信波長λの1/2未満である。そのため、各導体23a及び23bと、無線タグ7のアンテナとの間で電磁結合は生じない。したがって、スイッチ23cのオン/オフを切り替えることにより、無線タグ読取システム11は、収納容器2内に収納される物品6の無線タグ7のアンテナの利得を調節することができる。」

よって、上記各記載事項を関連図面(特に、図2、図9(a)、(b))と技術常識に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「管理対象となる物品、例えば、書類、ファイル、封筒、カルテ、X線写真など、幅及び高さに対して厚さが小さい形状を有する物品6は、収納容器2に多数重ねて入れることが可能となっており、また物品6の下方には、無線タグ7が取り付けられ、
無線タグ7は、無線タグとしての機能を提供するために、整流回路、メモリ及びマイクロプロセッサユニットなどの回路を組み込んだ集積回路と、アンテナとを有し、

無線タグ7のアンテナは、集積回路の両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナとからなるものであり、

無線タグ読取システムは、収納容器内に無線タグのアンテナと電磁結合を生じさせるための導体を複数設け、それら複数の導体のうち、実際に電磁結合を生じさせる導体を、収納容器内に収納された無線タグ付の物品数に応じて選択可能としたものであり、
収納容器2内に複数の仕切り板21a?21gが設けられ、収納容器2は、各仕切り板の間に、管理対象となる物品6を所定個数ずつ収納可能となっており、この複数の仕切り板のうち、仕切り板21c、21d及び21eに、それぞれ、スイッチ付導体23?25が設置され、各スイッチ付導体の構造及び機能は同一であり、
スイッチ付導体23は、二つの導体23a及び23cと、スイッチ23cを有し、
導体23a及び23bは、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7の長手方向と平行な方向において、通信波長λの1/4以上かつ1/2未満の長さを持ち、無線タグ7の長手方向と平行な方向に沿って一列に配置され、それぞれ、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7のアンテナの中心からそれら導体の端部までのy軸方向における距離が10mmとなるように配置され、
スイッチ23cをオンにすると、二つの導体23aと23bは電気的に接続され、この場合、二つの導体23aと23bの無線タグ7の長手方向と平行な方向の長さの合計が、通信波長λの1/2以上になるため、スイッチ付導体23は、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7のアンテナとの間で電磁結合を生じさせることが可能となる一方、
スイッチ23cをオフにすると、二つの導体23aと23bは電気的に切断され、この場合、各導体23a及び23bの、無線タグ7の長手方向と略平行な方向における長さは、通信波長λの1/2未満であるため、各導体23a及び23bと、無線タグ7のアンテナとの間で電磁結合は生じない、
無線タグ読取システムにおける、収納容器2内の複数の仕切り板21a?21g。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「集積回路」、「無線タグ」は、本願発明1における「集積回路」、「無線タグ」に相当する。
引用発明における「集積回路の両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナ」を備える「無線タグ」は、本願発明1における「集積回路素子に対してループ状に接続されたインダクタと、前記集積回路及び前記インダクタの両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナと、を備える無線タグ」と、「集積回路の両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナ、を備える無線タグ」である点で共通するといえる。

イ 引用発明における「管理対象となる物品、例えば、書類、ファイル、封筒、カルテ、X線写真など、幅及び高さに対して厚さが小さい形状を有する物品6」は、本願発明1における「紙のように幅及び高さに対して厚さが薄いシート」に相当する。
引用発明の収納容器2内に設けられる「複数の仕切り板21a?21g」(引用文献1の図9(a)を参照されたい。)のうち、特に、2枚の仕切り板「21c」、「21e」に着目すると、引用発明の「仕切り板21c、21e」は、「各仕切り板の間に、管理対象となる物品6を所定個数ずつ収納可能となって」いるから、本願発明1における「紙のように幅及び高さに対して厚さが薄いシートを、N枚(Nは自然数)束ねた状態で両側から挟み込む、一対の無線タグ用補助部材」に相当するといえる。

ウ 引用発明の「スイッチ付導体23、25」である「二つの導体23a及び23cと、スイッチ23c」のうちの、「二つの導体23a及び23c」は、本願発明1における「独立した2つの導体」と、「2つの導体」である点で共通するといえる。
引用発明の「二つの導体23a及び23c」が、「無線タグ7の長手方向と平行な方向に沿って一列に配置され、それぞれ、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7のアンテナの中心からそれら導体の端部までのy軸方向における距離が10mmとなるように配置され」ることは、本願発明1の「独立した2つの導体」が、「前記無線タグに配された前記第1と第2のアンテナの形成位置に対応して、前記第1と第2のアンテナの両端に重なるように配置される」ことと、「前記無線タグに配された前記第1と第2のアンテナの形成位置に対応して、配置される」点で共通するといえる。

エ 引用発明の「二つの導体23a及び23c」が、「無線タグ7の長手方向と平行な方向に沿って一列に配置され、それぞれ、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7のアンテナの中心からそれら導体の端部までのy軸方向における距離が10mmとなるように配置され」ることは、ここで、無線タグと導体とがy軸方向(当審注:すなわち、引用文献1の図2、図9における紙面の上下方向。)に距離10mmだけずれていることは、導体が、無線タグ、及びその「集積回路」を「避けて配置された」ものともいえるから、本願発明1の「前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体」と、「前記集積回路を避けて配置された、2つの導体」である点で共通するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「集積回路の両側にそれぞれ配された第1のアンテナと第2のアンテナ、を備える無線タグを有し、紙のように幅及び高さに対して厚さが薄いシートを、N枚(Nは自然数)束ねた状態で両側から挟み込む、一対の無線タグ用補助部材であって、
前記無線タグに配された前記第1と第2のアンテナの形成位置に対応して、配置されると共に、前記集積回路を避けて配置された、2つの導体を備えることを特徴とする無線タグ用補助部材。」

[相違点1]
本願発明1の「無線タグ」は、「集積回路素子に対してループ状に接続されたインダクタ」という構成を備えるとともに、第1のアンテナと第2のアンテナが「前記集積回路及び前記インダクタの両側にそれぞれ配された」ものであるという構成を備えているのに対し、引用発明の「無線タグ」は、「集積回路素子に対してループ状に接続されたインダクタ」を備えておらず、第1のアンテナと第2のアンテナが「前記集積回路及び前記インダクタの両側にそれぞれ配された」ものであるという構成を備えていない点。

[相違点2]
本願発明1の「無線タグ用補助部材」は、「前記シートと同様の形状、厚さ及び材質を有し」ているという構成を備えるのに対し、引用発明の「複数の仕切り板21a?21g」は、そのような構成を備えていない点。

[相違点3]
本願発明1の「無線タグ用補助部材」の「2つの導体」は、「前記第1と第2のアンテナの両端に重なるように配置される」という構成を備えるのに対し、引用発明の「導体23a及び23b」は、「無線タグ7のアンテナの中心からそれら導体の端部までのy軸方向における距離が10mmとなるように配置され」る構成であって、「前記第1と第2のアンテナの両端に重なるように配置される」ものではない点。

[相違点4]
本願発明1では、「無線タグ用補助部材」の「2つの導体」は、「前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体」であるという構成を備えるのに対し、引用発明の「導体23a及び23b」は、「前記インダクタを避けて」配置するものではなく、また、「独立した2つの導体」ではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記[相違点4]について先に検討する。

引用発明は「実際に電磁結合を生じさせる導体を、収納容器内に収納された無線タグ付の物品数に応じて選択可能としたものであ」る。
このために、引用発明の「スイッチ付導体23」における「導体23a及び23b」は、「スイッチ23cをオンにすると、二つの導体23aと23bは電気的に接続され、この場合、二つの導体23aと23bの無線タグ7の長手方向と平行な方向の長さの合計が、通信波長λの1/2以上になるため、スイッチ付導体23は、収納容器2内に収納された物品6に取り付けられた無線タグ7のアンテナとの間で電磁結合を生じさせることが可能となる一方、スイッチ23cをオフにすると、二つの導体23aと23bは電気的に切断され、この場合、各導体23a及び23bの、無線タグ7の長手方向と略平行な方向における長さは、通信波長λの1/2未満であるため、各導体23a及び23bと、無線タグ7のアンテナとの間で電磁結合は生じない」ものである。
よって、引用発明の「導体23a及び23b」が、「スイッチ付導体23」を構成して、「無線タグ用補助部材」としての機能を有するのは、スイッチ23cをオンにして、導体23a及び23bを電気的に接続した場合、すなわち、「独立した2つの導体」ではない状態に限られるものであると認められる。
ここで、引用発明の2枚の仕切り板「21c」、「21e」それぞれについて、「スイッチ付導体23」のスイッチ23cをオフにすることを想定すれば、「導体23a及び23b」は独立した状態となるが、このとき、「無線タグ7のアンテナとの間で電磁結合は生じない」から、独立した状態の2つの導体を有する2枚の仕切り板「21c」、「21e」は、「シートを、N枚(Nは自然数)束ねた状態で両側から挟み込む、一対の無線タグ用補助部材」とはいえないことが明らかである。
また、本願発明1のような「シートを、N枚(Nは自然数)束ねた状態で両側から挟み込む、一対の無線タグ用補助部材であって、……(中略)…… 前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体を備える」構成が、本願出願前の周知技術であるとも認められない。
よって、本願発明1の上記[相違点4]に係る、「無線タグ用補助部材」が「前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体を備える」という構成は、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて、容易に想到することができたものであるとはいえない。
したがって、上記相違点1-3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2、3について
本願発明2、本願発明3は、本願発明1に対応する無線タグ読み取り装置、及び、方法の発明であり、それぞれ、本願発明1と同様の「無線タグ用補助部材」が「前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体を備える」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1-3について上記引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年8月9日付け手続補正により補正された請求項1-3は、それぞれ「無線タグ用補助部材」が「前記集積回路及び前記インダクタを避けて配置された独立した2つの導体を備える」という構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1-3は、引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項3の「…一対の無線タグ用補助部材を準備し」という記載の意味が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年8月9日付けの補正において、「…一対の無線タグ用補助部材を配置し」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2012-117857(P2012-117857)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06K)
P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梅沢 俊  
特許庁審判長 高瀬 勤
特許庁審判官 稲葉 和生
山澤 宏
発明の名称 無線タグ用補助部材並びに無線タグ読取り装置及び方法  
代理人 宮本 哲夫  
代理人 河野 努  
代理人 伊坪 公一  
代理人 青木 篤  

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