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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1332173
審判番号 不服2016-3862  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-14 
確定日 2017-09-26 
事件の表示 特願2012-197299「半導体キャリア寿命測定装置および該方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日出願公開,特開2014- 53470,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年9月7日の出願であって,平成27年8月5日付けで拒絶理由通知がされ,同年10月9日に意見書と手続補正書が提出され,同年12月11日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年3月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され,平成29年5月11日付けで拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)がされ,同年6月16日に意見書と手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成27年12月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1-2,4-7に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された以下の引用文献1-4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2004-319633号公報
2.特開2004-189584号公報
3.特開平06-268038号公報
4.特開2007-048959号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 この出願は,下記の点で,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

1 理由1について
(1)請求項1について
ア 対比
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と,引用文献1([0111]ないし[0114])に記載されたシリコンインゴットのライフタイムの測定装置の発明(以下「引用発明1A」という。)とを対比すると,両者は,以下の点で相違し,その余の点で一致すると認められる。
・相違点1
本願発明1は,「前記検出部の検出結果に基づいて,前記光照射部によって前記励起光を前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射してこの照射終了時点から,前記測定波の反射波における強度の時間変化を測定する強度時間変化測定部」を備え,測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおけるキャリア寿命に関する情報を,上記「強度時間変化測定部」の測定結果に基づいて求めるのに対し,引用発明1Aが「強度時間変化測定部」を備えること,及び引用発明1Aにおいて,測定対象のシリコンインゴットにおけるキャリア寿命に関する情報を,上記「強度時間変化測定部」の測定結果に基づいて求めることは,いずれも特定されていない点

イ 相違点についての判断
引用文献1の記載より,引用発明1Aは,μPCD法により測定対象のシリコンインゴットにおけるキャリア寿命に関する情報を求めるものと認められる。
そして,μPCD法において,光照射部によって励起光を測定対象に照射してこの照射終了時点から,測定波の反射波における強度の時間変化を測定し,測定対象におけるキャリア寿命に関する情報を,上記の測定結果に基づいて求めることは,引用文献2(【0002】)及び引用文献3(【0039】,図5)にみられるように,当該技術分野では周知の技術といえる。
そうすると,引用発明1A及び上記周知技術は,いずれも,μPCD法による測定対象のキャリア寿命に関する情報を求めるものであって,両者を組み合わせる動機付けは存在すると認められるから,引用発明1Aにおいて,光照射部によって励起光を測定対象に照射してこの照射終了時点から,測定波の反射波における強度の時間変化を測定する構成を備え,当該構成による測定結果に基づいて,測定対象のシリコンインゴットにおけるキャリア寿命に関する情報を求めるようにすることは,上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
以上から,相違点1に係る構成は,引用発明1Aにおいて,引用文献2及び3にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものということができる。

ウ 小括
したがって,本願発明1は,引用発明1Aにおいて,引用文献2及び3にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

(2)請求項2について
ア 対比
本願請求項2に係る発明(以下「本願発明2」という。)と,引用発明1Aとを対比すると,両者は,上記相違点1に加え,以下の点でも相違し,その余の点で一致すると認められる。
・相違点2
本願発明2は,「前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部」をさらに備え,「前記演算部は,前記強度時間変化測定部の測定結果および前記抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて,前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおけるキャリア寿命に関する情報を求める」のに対し,引用発明1Aは,本願発明2における上記の構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
上記(1)イのとおり,相違点1に係る構成は,引用発明1Aにおいて,引用文献2及び引用文献3にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものということができる。
(イ)相違点2について
引用文献4(【0008】ないし【0011】,【0039】ないし【0042】)には,測定対象の結晶の抵抗率を測定する抵抗率測定器を備え,上記結晶のバルクライフタイムに含まれる抵抗率依存性を排除して結晶品質を評価することが記載されており,引用発明1Aにおいて,測定対象のシリコンインゴットにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部を備え,当該抵抗率測定部で測定した抵抗率にも基づいて,測定対象のシリコンインゴットにおけるキャリア寿命に関する情報を求めるようにすること(相違点2に係る構成とすること)は,引用文献4記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

ウ 小括
したがって,本願発明2は,引用発明1Aにおいて,引用文献2及び3にみられるような周知技術,並びに引用文献4記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

(3)請求項4について
上記(2)イのとおり,本願発明2は,引用発明1Aにおいて,引用文献2及び3にみられるような周知技術,並びに引用文献4記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められ,その際に,測定対象のシリコンインゴットにおける抵抗率を,何に基づいて測定するかは,当業者が適宜選択し得るものであって,本願請求項4に係る発明(以下「本願発明4」という。)のように,測定波の反射波における反射率および位相のうちの少なくとも一方に基づいて測定することは,当業者が適宜なし得たものと認める。
したがって,本願発明4は,引用発明1Aにおいて,引用文献2及び3にみられるような周知技術,並びに引用文献4記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

(4)請求項5及び6について
引用文献1の記載より,引用発明1Aは,μPCD法により測定対象のシリコンインゴットにおけるキャリア寿命に関する情報を求めるものと認められるところ,上記キャリア寿命に関する情報を,本願請求項5に係る発明(以下「本願発明5」という。)のように,キャリア寿命の長短の程度を表す評価指標として求めることや,本願請求項6に係る発明(以下「本願発明6」という。)のように,キャリア寿命そのものとして求めることは,当業者が適宜なし得たものといえる。
したがって,本願発明5及び6は,いずれも,上記(1)及び(2)の理由により,引用発明1Aにおいて,引用文献2及び引用文献3にみられるような周知技術,並びに引用文献4記載の発明に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

(5)請求項7について
ア 対比
本願請求項7に係る発明(以下「本願発明7」という。)と,引用文献1([0111]ないし[0114])に記載されたシリコンインゴットのライフタイムの測定方法の発明(以下「引用発明1B」という。)とを対比すると,両者は,以下の点で相違し,その余の点で一致すると認められる。
・相違点3
本願発明7は,「前記光照射部によって前記励起光を前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射してこの照射終了時点から,前記測定波の反射波における強度の時間変化を測定する強度時間変化測定工程」を備え,測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおけるキャリア寿命に関する情報を,上記「強度時間変化測定工程」の測定結果に基づいて求めるのに対し,引用発明1Bが「強度時間変化測定工程」を備えること,及び引用発明1Bにおいて,測定対象のシリコンインゴットにおけるキャリア寿命に関する情報を,上記「強度時間変化測定工程」の測定結果に基づいて求めることは,いずれも特定されていない点

イ 相違点についての判断
引用文献1の記載より,引用発明1Bは,μPCD法により測定対象のシリコンインゴットにおけるキャリア寿命に関する情報を求めるものと認められる。
そして,μPCD法において,光照射部によって励起光を測定対象に照射してこの照射終了時点から,測定波の反射波における強度の時間変化を測定し,測定対象におけるキャリア寿命に関する情報を,上記の測定結果に基づいて求めることは,引用文献2(【0002】)及び引用文献3(【0039】,図5)にみられるように,当該技術分野では周知の技術といえる。
そうすると,引用発明1B及び上記周知技術は,いずれも,μPCD法による測定対象のキャリア寿命に関する情報を求めるものであって,両者を組み合わせる動機付けは存在すると認められるから,引用発明1Bにおいて,光照射部によって励起光を測定対象に照射してこの照射終了時点から,測定波の反射波における強度の時間変化を測定する工程を備え,当該工程による測定結果に基づいて,測定対象のシリコンインゴットにおけるキャリア寿命に関する情報を求めるようにすることは,上記周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認められる。
以上から,相違点3に係る構成は,引用発明1Bにおいて,引用文献2及び3にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものということができる。

ウ 小括
したがって,本願発明7は,引用発明1Bにおいて,引用文献2及び3にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たものと認める。

引 用 文 献 等 一 覧
1 国際公開第2006/093099号
2 特開2008-305859号公報
3 特開2012-69614号公報
4 特開平6-268038号公報


2 理由2について
本願請求項7の「前記光照射部によって前記励起光を前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射してこの照射終了時点から,前記測定波の反射波における強度の時間変化を測定する強度時間変化測定工程」との記載において,「前記光照射部」なる文言が指し示す内容が不明であり,その結果,上記の記載では,「強度時間変化測定工程」の内容が明確であるとは認められない。
したがって,本願請求項7には,当該請求項に係る発明の構成が明確に記載されているとは認められない。

第4 本願発明
本願請求項1ないし5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は,平成29年6月16日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1ないし5は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
波長1.0μm?1.1μmの励起光を測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射する光照射部と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに所定の測定波を照射する測定波照射部と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックで反射された前記測定波の反射波における強度を検出する検出部と,
前記検出部の検出結果に基づいて,前記光照射部によって前記励起光を前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射してこの照射終了時点から,前記測定波の反射波における強度の時間変化を測定する強度時間変化測定部と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部と,
前記強度時間変化測定部の測定結果に基づいて,前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおけるキャリア寿命に関する情報を求めるとともに前記抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算部と,を備え,
前記シリコンインゴット又は前記シリコンブリックは,シリコンウエハを切り出す母材であること
を特徴とする半導体キャリア寿命測定装置。
【請求項2】
前記抵抗率測定部は,前記測定波の反射波における反射率および位相のうちの少なくとも一方に基づいて,前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定すること
を特徴とする請求項1に記載の半導体キャリア寿命測定装置。
【請求項3】
前記キャリア寿命に関する情報は,前記キャリア寿命の長短の程度を表す評価指標であること
を特徴とする請求項1または2に記載の半導体キャリア寿命測定装置。
【請求項4】
前記キャリア寿命に関する情報は,キャリア寿命そのものであること
を特徴とする請求項1または2に記載の半導体キャリア寿命測定装置。
【請求項5】
波長1.0μm?1.1μmの励起光を測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射する光照射工程と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに所定の測定波を照射する測定波照射工程と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックで反射された前記測定波の反射波における強度を検出する検出工程と,
前記励起光を前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射してこの照射終了時点から,前記測定波の反射波における強度の時間変化を測定する強度時間変化測定工程と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定工程と,
前記強度時間変化測定工程の測定結果に基づいて,前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおけるキャリア寿命に関する情報を求めるとともに前記抵抗率測定工程で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算工程と,を備え,
前記シリコンインゴット又は前記シリコンブリックは,シリコンウエハを切り出す母材であること
を特徴とする半導体キャリア寿命測定方法。」

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
平成29年5月11日付けの当審拒絶理由通知に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
・「[0111]SIMSによる全窒素濃度[N]の測定条件としては,他の軽元素と同様とすることができ,例えば,下記実施例に記載されたものを採用することができる。
キャリアのライフタイム(以下,単に「ライフタイム」という。)τは,以下のようにして求められる物理量である。ここで,その測定に当たっては,一般に,μPCD法(マイクロ波光導電率減衰法)が用いられる。これは,半導体中にレーザー光などの光を浸入させて励起生成させた光励起キャリアの再結合によるキャリア密度減衰(光導電率の減衰)を,検知波として入射するマイクロ波の反射強度の減衰として検知するもので,その減衰時定数τが,すなわちキャリアのライフタイムτである。
[0112]ここで,キャリアの再結合には,結晶内部(基板内部)の欠陥を介して生じるもの(バルク再結合)と,結晶表面(基板表面)の欠陥を介して生じるもの(表面再結合)とが存在する。上記のマイクロ波の反射強度の測定により直接得られるのは(測定できるのは),バルク再結合によるものと表面再結合によるものとを含むトータルのキャリアライフタイム(有効ライフタイムτ_(eff))である。このうち,バルク再結合によるバルクライフタイムτが,基板品質の指標である。ここでバルク再結合のトータル量をΣRb,表面再結合のトータル量をΣRsとすると,有効ライフタイムτ_(eff)は,下記(5)式?(9)式のように諸物理量と関係付けられる。
[0113]なお,基板に対して充分厚みのあるインゴットのτ_(eff)を測定する場合は,表面再結合成分はインゴット表面側(レーザー光入射面)に限定されると考えてよいので(インゴット裏面側での再結合は無視できるので),(5)式のΣRsの係数は1にしてある(充分薄い基板の場合は,基板表面側と裏面側での再結合を考慮するので係数は2となる)。
(ne/τ_(eff))・W=ΣRb+1・ΣRs (5)
ΣRb=ne・(σ・vth・Nrb)・W=(ne/τ)・W (6)
1/τ=σ・vth・Nrb (7)
ΣRs=ne・(σ・vth・Nrs)・dW=ne・S (8)
S=σ・vth・Nrs・dW (9)
ここで,式中の各記号の意味は下記の通りである。
ne : 少数キャリア密度(≒光励起キャリア密度)
σ : 少数キャリア捕獲断面積
vth: 少数キャリア熱運動速度
Nrb: バルク再結合中心密度(≒バルク欠陥密度)
Nrs: 表面極薄領域での再結合中心密度(単位体積あたり表現)
W : 基板厚さ
dW: 表面極薄領域厚さ
Nrs・dW : 単位面積あたりの再結合中心密度(≒表面欠陥密度)
τ : バルクライフタイム(基板品質)
S : 表面再結合速度
ここで,上記したように,インゴット状態で測定した場合のτは,インゴット表面での再結合の影響も含んだ有効ライフタイムτ_(eff)になるが,τ_(eff)∝τであるので,このτ_(eff)をもってインゴット品質(τ)の指標にすることができる。
[0114]ライフタイムτの測定装置としては,例えば,SEMILAB社製の「ライフタイムスキャナー WT-2000」を挙げることができ,その場合,ライフタイムτの測定条件は,この装置による標準的な条件,例えば,照射レーザー波長=904nm(あるいは1064nm),照射レーザー光口径=1mmφ,マッピング解像度(スキャンピッチ)=1mmピッチとすることができる。これにより,基板全体での平均τ値,最小τ値,最大τ値,τマップ,τヒストグラムなどを容易に評価することができる。」

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「μPCD法(マイクロ波光導電率減衰法)が用いられるライフタイムτの測定装置であって,
ライフタイムτの測定は,
インゴット状態の半導体中に,波長=1064nmであるレーザー光を照射し,
当該レーザー光を浸入させて励起生成させた光励起キャリアの再結合によるキャリア密度減衰(光導電率の減衰)を,検知波として入射するマイクロ波の反射強度の減衰として検知し,
その減衰時定数τを,キャリアのライフタイムτとして測定するものである,
ライフタイムτの測定装置。」

2 引用文献2ないし4について
平成29年5月11日付けの当審拒絶理由通知に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【0002】
半導体層のキャリアライフタイムを測定する方法が知られている。特許文献1に,一般的な測定方法であるμPCD(microwave Photo Conductivity Decay)法が記載されている。μPCD法では,半導体層の表面にレーザ光を照射することによって半導体層にキャリアを誘起する状態と,レーザ光の照射を停止することによって誘起したキャリアが消失する状態を作り出してキャリアのライフタイムを測定する。キャリア量を測定するために,半導体層の表面にマイクロ波を照射してマイクロ波の反射率を測定する。
本明細書に添付した図7に,経過時間Tとマイクロ波の反射率Mの関係を示す。測定の開始時には,レーザ光を照射しないでマイクロ波の反射率Mを測定する。この時の反射率Mをm1とする。時刻s1で,半導体層の表面にレーザ光を照射し始める。するとレーザ光に励起されて半導体層にキャリアが誘起される。キャリアの密度が高くなる程,マイクロ波の反射率Mは増加する。レーザ光を照射し続けていると,誘起されるキャリア量と,再結合等によって消失するキャリア量が平衡する状態が得られ,マイクロ波の反射率Mは一定値に安定する。この時のマイクロ波の反射率Mをm2とする。
レーザ光で誘起されるキャリア量と消失するキャリア量が平衡する状態が得られたら,レーザ光の照射を停止する。図7では,時刻s2でレーザ光の照射を停止している。その後はキャリアが発生しなくなるので,キャリアは消失していき,それに伴ってマイクロ波の反射率Mも指数関数的に低下していく。マイクロ波の反射率Mの低下速度を測定すると,キャリアの消失速度が判明し,キャリアのライフタイムが判明する。実際の測定では,反射率Mがm1+(m2-m1)/eにまで低下する時刻s3を測定する。時刻s2から時刻S3までの経過時間τが,半導体層のキャリアライフタイムを示す。」

平成29年5月11日付けの当審拒絶理由通知に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【0039】
さらにまた,評価手段である前記パーソナルコンピュータ19は,前記結晶性の評価を,検出手段である前記検出器18による反射電磁波の強度のピーク値Peakを検出することで行なう。これは,前記紫外励起光照射による光励起キャリアの密度は,図5で示すように変化し,nsecオーダーのレーザーパルス照射期間t0に比べて,光励起キャリアのライフタイムτがns以下(ピコ秒オーダー)の短いとき,キャリアの消滅時間が,発生したキャリア数に近似するためである。時刻t=0から照射を開始すると,キャリア密度が増加し,前記ライフタイムτを超える充分な時間が経過すると,励起光照射によって新たに発生するキャリア数と,ライフタイムτが経過して再結合して消失するキャリア数とが均衡し,キャリア密度は一定となる。その後,時刻t=t0で励起光の照射を停止すると,キャリア密度は前記ライフタイムτで減少してゆく。」

・【図5】からは,半導体への励起光照射による光励起キャリアの密度変化を示すグラフが読み取れる。

平成29年5月11日付けの当審拒絶理由通知に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【0008】本発明は上記問題に鑑みてなされたもので,その目的とする処は,抵抗率の異なる結晶間の品質評価も含めて結晶品質を正しく評価することができるバルクライフタイムによる結晶評価方法及び装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく本発明は,測定された結晶の一次モードライフタイムτ_(1) からバルクライフタイムτ_(B )を求め,このバルクライフタイムτ_(B) 値に含まれる抵抗率依存性を排除して再結合中心濃度の相対値N_(r )を算出し,この値N_(r) を結晶品質評価のパラメータとすることを特徴とする。
【0010】又,本発明は,結晶の一次モードライフタイムτ_(1) を測定するライフタイム測定器と,結晶の抵抗率を測定する抵抗率測定器を含んで構成される測定系と,該測定系によって測定された結晶の一次モードライフタイムτ_(1) からバルクライフタイムτ_(B) を求め,該バルクライフタイムτ_(B) と前記抵抗率とから再結合中心濃度の相対値N_(r) を算出する演算手段を含んで構成される解析系とでバルクライフタイムによる結晶評価装置を構成したことを特徴とする。
【0011】
【作用】本発明によれば,バルクライフタイムτ_(B) 値に含まれるSRH理論に基づく抵抗率依存性を排除し,結晶品質を真に反映するパラメータである再結合中心濃度の相対値N_(r) を算出し,この再結合中心濃度の相対値N_(r) によって結晶品質を評価するようにしたため,抵抗率の異なる結晶間の品質評価も含めて結晶品質を再結合中心濃度,即ち,欠陥濃度のスケールによって正しく評価することができる。」

・「【0039】ところで,本実施例では,2×2×8cm^(3) の各棒に切り出されたP型結晶の表面にサンドブラスト処理を施したものを試料として用い,この試料の一次モードライフタイムτ_(1) を図1に示すライフタイム測定器1を用いてASTM規格に規定された測定方法に従って測定した。
【0040】即ち,試料を自動搬送器3によってライフタイム測定器1のライフタイム検出器5にセットし,該試料の一端に不図示の電気抵抗を接続して直列回路を構成し,該直列回路に不図示の電源から定電圧を印加しながら,光源4から発せられるパルス光を試料の一側面に照射し,電気抵抗の端子間電圧の波形の立ち下がり部をデジタルオシロスコープ6で読み取って試料の一次モードライフタイムτ_(1 )を測定する。
【0041】而して,上述の方法によって測定された一次モードライフタイムτ_(1 )はCPU8に入力され,CPU8では,この値τ_(1) を用いて前記(1)式(【数1】参照)により試料のバルクライフタイムτ_(B) が算出される。
【0042】一方,試料の抵抗率は図1に示す抵抗率測定器2によって測定され,その測定値がCPU8に入力され,CPU8では抵抗率ρに基づいて前記(6)式(【数6】参照)によりフェルミレベル(E_(f) -E_(V ))を算出し,この(E_(f) -E_(V) )と前記バルクライフタイムτ_(B )から前記(10)式によって再結合中心濃度の相対値N_(r) が算出される。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明における「『光励起キャリア』を『励起生成』する『レーザー光』」は,本願発明1における「励起光」に相当する。
そして,引用発明の「ライフタイムτの測定装置」が,「レーザー光」を使用する装置であることから,引用発明の「ライフタイムτの測定装置」が,当該「レーザー光」を照射する「光照射部」を備えていることは明らかである。

イ 引用発明における「インゴット状態の半導体」は,本願発明1における「シリコンインゴット」に相当する。
また,「シリコンインゴット」が「シリコンウエハを切り出す母材であること」は,当業者にとって明らかである。

ウ 引用発明における「検知波として入射するマイクロ波」は,本願発明1における「所定の測定波」に相当する。
そして,引用発明の「ライフタイムτの測定装置」が,「マイクロ波」を使用する装置であることから,引用発明の「ライフタイムτの測定装置」が,当該「マイクロ波」を照射する「測定波照射部」を備えていることは明らかである。

エ 引用発明は,「検知波として入射するマイクロ波の反射強度の減衰として検知」するのであるから,引用発明が,「前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックで反射された前記測定波の反射波における強度を検出する検出部」を備えていることは明らかである。

オ 引用発明の「ライフタイムτの測定装置」は,「検知波として入射するマイクロ波の反射強度の減衰として検知」し,「その減衰時定数τを,キャリアのライフタイムτとして測定する」ものであるから,引用発明の「ライフタイムτの測定装置」が,「マイクロ波の反射強度」の測定結果に基づいて,「減衰時定数τ」を算出する演算を行う,「演算部」を備えていることは明らかである。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「波長1.0μm?1.1μmの励起光を測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射する光照射部と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに所定の測定波を照射する測定波照射部と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックで反射された前記測定波の反射波における強度を検出する検出部と,
前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおけるキャリア寿命に関する情報を求める演算部と,を備え,
前記シリコンインゴット又は前記シリコンブリックは,シリコンウエハを切り出す母材である半導体キャリア寿命測定装置。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1は,「『測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部』『前記抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算部』」という構成を備えるのに対して,引用発明は,そのような構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明1は,「前記検出部の検出結果に基づいて,前記光照射部によって前記励起光を前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射してこの照射終了時点から,前記測定波の反射波における強度の時間変化を測定する強度時間変化測定部」という構成を備えるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えているか明らかでないない点。

(2)相違点についての判断
相違点1に係る本願発明1の「『測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部』『前記抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算部』」という構成は,上記引用文献2ないし4には記載されておらず,本願の出願日前において周知技術であるともいえない。
そして,本願発明1は,当該構成を備えることによって,「強度時間変化測定部の測定結果に基づいて求められた測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおけるキャリア寿命に関する情報が,抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて求められた測定波浸透長に基づき補正され,これによって,測定の際の測定波浸透長が考慮される。したがって,このような構成の半導体キャリア寿命測定装置は,シリコンインゴット又はシリコンブリックにおけるキャリア寿命に関する情報をより精度よく測定することができる。」(本願明細書【0017】)という格別の効果を奏するものと認められる。
したがって,本願発明1は,他の相違点について検討するまでもなく,引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4も,本願発明1の「『測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部』『前記抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算部』」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明5について
本願発明5は,本願発明1に対応する方法の発明であり,本願発明1の「『測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部』『前記抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算部』」に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2ないし4に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 特許法第36条第6項第2号(発明の明確性)について
当審では,補正前の請求項7の,「前記光照射部」なる文言が指し示す内容が不明であり,その結果,「前記光照射部によって前記励起光を前記測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックに照射してこの照射終了時点から,前記測定波の反射波における強度の時間変化を測定する強度時間変化測定工程」の内容が明確であるとは認められない,との拒絶理由を通知しているが,平成29年6月16日付けの補正において,「前記光照射部によって」との記載を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

第8 原査定についての判断
平成29年6月16日付けの補正により,補正後の請求項1ないし4は,「『測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部』『前記抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算部』」という技術的事項を有し,また,請求項5は,「『測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定工程』『前記抵抗率測定工程で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算工程』」という技術的事項を有するものとなった。
当該「『測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定部』『前記抵抗率測定部で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算部』」,及び,「『測定対象のシリコンインゴット又はシリコンブリックにおける抵抗率を測定する抵抗率測定工程』『前記抵抗率測定工程で測定した抵抗率に基づいて前記測定波の浸透長を求め,前記キャリア寿命に関する情報を,前記測定波の浸透長に基づいて補正する演算工程』」は,原査定における引用文献1ないし4には記載されておらず,本願出願日前における周知技術でもないので,本願発明1ないし5は当業者であっても,原査定における引用文献1ないし4に基づいて容易に発明をすることはできない。
したがって。原査定を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2012-197299(P2012-197299)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼須 甲斐  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
飯田 清司
発明の名称 半導体キャリア寿命測定装置および該方法  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 櫻井 智  
代理人 小谷 悦司  
代理人 小谷 悦司  
代理人 櫻井 智  
代理人 小谷 昌崇  
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