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審決分類 |
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 F16F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 F16F 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 F16F 審判 全部申し立て 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 F16F 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 F16F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F16F 審判 全部申し立て 2項進歩性 F16F |
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管理番号 | 1332220 |
異議申立番号 | 異議2016-700336 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-04-21 |
確定日 | 2017-07-24 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5798656号発明「ウレタン製バンパスプリングおよびその製法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5798656号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕について、訂正することを認める。 特許第5798656号の請求項1、3に係る特許を維持する。 特許第5798656号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5798656号(以下、「本件特許」という。)に係る出願(以下、「本件出願」という。)は、平成26年3月26日の出願であって、平成27年8月28日に設定登録(特許掲載公報発行日:平成27年10月21日)がされ、その後、平成28年4月21日に特許異議申立人鮫島正洋(以下、「異議申立人」という。)より請求項1ないし3に対して特許異議の申立てがされ、平成28年7月8日付けで取消理由通知が通知されたのに対し、平成28年9月9日に特許権者より意見書の提出及び訂正請求がされ、平成28年11月11日に異議申立人より意見書が提出され、平成28年12月13日付けで取消理由通知(決定の予告、以下、「本件取消理由通知」という。)が通知されたところ、平成29年3月14日に特許権者より意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成29年4月26日に異議申立人より、意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のアないしケのとおりである。 ア 訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1に、「ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料からなり、」とあるのを、「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、」に訂正する。 イ 訂正事項b 特許請求の範囲の請求項1に、「そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)および(2)の関係を満たすことを特徴とするウレタン製パンパスプリンク。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2)」とあるのを、「そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Da)および発泡セル径(Ra)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たすことを特徴とするウレタン製バンパスプリング。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4)」に訂正する。 ウ 訂正事項c 上記訂正事項aにともない、特許請求の範囲の請求項2を削除する。 エ 訂正事項d 特許請求の範囲の請求項3に、「請求項1または2記載のウレタン製バンパスプリングの製法であって、」とあるのを、 「下記の(α)に示すウレタン製バンパスプリングの製法であって、… (α)車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングの製法であって、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たすウレタン製バンパスプリング。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4)」に訂正する。 オ 訂正事項e 特許請求の範囲の請求項3に、「成形型のキャビティ内に、」とあるのを、「主型と中子とからなる成形型のキャビティ内に、」に訂正する。 カ 訂正事項f 特許請求の範囲の請求項3に、「ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料を注入し、」とあるのを、 「エチレングリコール、ブタクンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料を、液温39?41℃で注入し、」に訂正する。 キ 訂正事項g 特許請求の範囲の請求項3に、「70℃以上で加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、」とあるのを、「70?130℃で2?60分間加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、」に訂正する。 ク 訂正事項h 特許請求の範囲の請求項3に、「上記脱型後のウレタン成形体を加熱して二次加硫させる工程とを備えることを特徴とするウレタン製バンパスプリングの製法。」とあるのを、「上記脱型後のウレタン成形体を100?150℃で3?20時間加熱して二次加硫させる工程とを備えることを特徴とするウレタン製バンパスプリングの製法。」に訂正する。 ケ 訂正事項i 願書に添付した明細書の、段落【0008】、【0009】、【0011】、【0012】、【0016】、【0019】、【0021】、【0022】、【0026】、および【0031】の記載に対し、上記訂正事項a?hと同様の訂正を行う。 (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項aに関連する記載として、本件特許明細書の段落【0022】に「上記ウレタン原料におけるポリオール成分として、本発明では、ポリエステル系ポリオールが用いられる。上記ポリエステル系ポリオールとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなる、ポリエステル系ポリオールが用いられる。」、段落【0026】に「本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、そのウレタン原料としては、上記のように、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をイソシアネート成分とするものが用いられる。そして、上記イソシアネート成分の、ポリオール成分に対する配合割合は、そのNCOインデックス[イソシアネート中のNCO基と、ポリオール中の水酸基との当量比(NCO基/OH基)]が0.9?1.3の範囲となるよう配合することが、先に述べたような特徴的構造のバンパスプリングを良好に作製する観点から好ましい。」と記載されているから、「ポリオール成分」として「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみ」を用い、「イソシアネート成分」として「ジフェニルメタンジイソシアネートのみ」を用い、かつ「ウレタン原料」の「NCOインデックスが0.9?1.3の範囲」となるようにする発明は本件特許明細書に記載されているものと認められる。 上記訂正事項aは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において、「ポリオール成分」、「イソシアネート成分」及び「ウレタン原料」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 イ 訂正事項bに関連する記載として、本件特許明細書の段落【0019】に「スキン層の発泡セル径(Ra)は25?400μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50?300μmの範囲である。そして、コア部の発泡セル径(Rb)は25?400μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは50?300μmの範囲である。」と記載されているから、「スキン層の発泡セル径(Ra)」として「50?300μmの範囲」とし、「コア部の発泡セル径(Rb)」として「50?300μmの範囲」とする発明は本件特許明細書に記載されているものと認められる。 上記訂正事項bは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において、「スキン層の発泡セル径(Ra)」及び「コア部の発泡セル径(Rb)」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 ウ 訂正事項cは、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 エ 訂正事項dは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 オ 訂正事項eに関連する記載として、本件特許明細書の段落【0028】に「主型(おもがた)と中子(なかご)とからなる成形型(金型)を準備する金型準備工程と」と記載されているから、「成形型」が「主型と中子とからなる」とする発明は本件特許明細書に記載されているものと認められる。 上記訂正事項eは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において、「成形型」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 カ 訂正事項fに関連する記載として、本件特許明細書の段落【0022】、【0026】に上記アに摘記した記載があるほか、【0042】に「ポリオール剤100重量部と、鎖延長剤11.8重量部と、触媒1.1重量部と、発泡剤0.6重量部とからなるA液を調製した。また、イソシアネート剤169.3重量部からなるB液を準備した。…(中略)…上記A液およびB液を、3000rpmで5秒間撹拌した(液温:40±1℃、NCOインデックス:1.0)後、上記金型内に注入し」と記載されているから、「ポリオール成分」として「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみ」を用い、「イソシアネート成分」として「ジフェニルメタンジイソシアネートのみ」を用い、かつ「ウレタン原料」の「NCOインデックスが0.9?1.3の範囲」となるようにするとともに「液温39?41℃で注入」する発明は本件特許明細書に記載されているものと認められる。 訂正事項fは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において、「ポリオール成分」、「イソシアネート成分」、「ウレタン原料」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 キ 訂正事項gに関連する記載として、本件特許明細書の段落【0031】に「つぎに、上記成形型のキャビティ内に、ポリエステル系ポリオールをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタン原料を注入し、70℃以上(好ましくは70?130℃)で、2?60分間加熱して、発泡,硬化させ、ポリウレタンフォーム化させることにより、一次加硫したバンパスプリング成形体(半製品)を作製する。」と記載されているから、ウレタン原料を「70?130℃で、2?60分間加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程」を備える発明は本件特許明細書に記載されているものと認められる。 上記訂正事項gは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において、「ウレタン原料を一次加硫させる工程」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 ク 訂正事項hに関連する記載として、本件特許明細書の段落【0033】に「なお、上記二次加硫工程における加熱条件としては、100?150℃程度の温度にて、3?20時間程度加熱する条件が採用される。」と記載されているから、脱型後のウレタン成形体を「100?150℃で3?20時間加熱して二次加硫させる工程」を備える発明は本件特許明細書に記載されているものと認められる。 上記訂正事項hは、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において、「脱型後のウレタン成形体を加熱して二次加硫させる工程」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 ケ 訂正事項iに関連する記載として、本件特許明細書には上記ア、イ及びオないしクに摘記した記載があるから、訂正事項iに係る事項は本件特許明細書に記載されているものと認められる。 上記訂正事項iは、上記訂正事項aないしhに係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、これらの訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 (3)小活 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1及び3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 〔本件発明1〕 「車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングであって、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たすことを特徴とするウレタン製バンパスプリング。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4)」 〔本件発明3〕 「下記の(α)に示すウレタン製バンパスプリングの製法であって、主型と中子とからなる成形型のキャビティ内に、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料を、液温39?41℃で注入し、70?130℃で20?60分間加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、上記一次加硫後のウレタン成形体を成形型より取り出す脱型工程と、上記脱型後のウレタン成形体を100?150℃で3?20時間加熱して二次加硫させる工程とを備えることを特徴とするウレタン製バンパスプリングの製法。 (α)車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングの製法であって、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たすウレタン製バンパスプリング。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4)」 2.取消理由の概要 本件訂正前の請求項1ないし3に係る特許に対して通知した本件取消理由通知における取消理由の要旨は、次のとおりのものである。 (1) 請求項1に係る発明は、甲第1、4及び5号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。 (2) 請求項2に係る発明は、甲第1、4及び5号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項2に係る特許は、取り消されるべきものである。 (3) 請求項3に係る発明は、甲第1、2、4及び5号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項3に係る特許は、取り消されるべきものである。 3.甲号証の記載 (1)甲第1号証刊行物(特開昭57-100121号公報:異議申立人の提出した甲第1号証)(以下、「甲1」という。) 本件取消理由通知において引用した甲1には、「ウレタンエラストマースポンジ組成物」に関して、次の事項が記載されている。 (ア)「2.特許請求の範囲 (1)下記の(A項)に示されるポリエステルジオールと4,4′-ジフエニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られるプレポリマーに対して発泡・架橋剤を均一に混合してなることを特徴とするウレタンエラストマースポンジ組成物。 (A) エチレングリコール(EG)とブチレングリコール(BG)を両者の混合比(EG/BG)が70/30?30/70になるように調整した混合物とアジピン酸とを縮合反応させることにより得られるポリエステルジオール。」(1頁左下欄4-14行) (イ)「(4) ポリエステルジオールと4,4′-ジフエニルメタンジイソシアネートとの比率が、前者のNCO基と後者のOH基のNCO/OHモル比が1.5?4.0になるように選ばれている特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記載のウレタンエラストマースポンジ組成物。」(1頁右下欄2-7行) (ウ)「この発明は、初期状態から50?80%と非常に大きな荷重を繰り返し受けたときにおいて特に動的特性(破壊やヘタリ)における耐久性にすぐれたウレタンスポンジ製品等の製造に用いられるウレタンエラストマースポンジ組成物に関するものである。 ウレタンスポンジ製品は軽量であり、その優れたゴム弾性、耐摩耗性、耐候性等の特性のため乗用車のシヨツクアブソーバー用防振機および車輌の軸バネ用防振材への応用が考えられている。」(1頁右下欄9-18行) (エ)「そこで、NDIに代えてメチレンジイソシアネート(以下「MDI」と略す)を用いることが考えられている。 ところが、NDIに代えてMDIを用いた組成物により製造されるウレタンスポンジ製品は、NDIを用いた組成物製のウレタンスポンジ製品と比べて、比重、抗張力、伸び、引き裂き等の静的特性、あるいは初期状態から0?50%と比較的小さな荷重を繰り返し受けた時の動的特性等における耐久性においてはほぼ同等であるが、初期状態から50?80%と大きな荷重を繰り返し受けたときの動的特性、特に破壊やヘタリ等における耐久性において著しく悪いため、乗用車のシヨツクアブソーバー用防振材および車輌の軸バネ用防振材等への応用はできないものと考えられていた。 この発明者らは、この点に鑑み、安価なうえ製造作業性のよいMDIを用い、何んとか大きな荷重を繰り返し受けた時の動的特性における耐久性のよいウレタンエラストマースポンジ組成物を製造できないものかと一連の研究を進めるうち、ポリエステルポリオールとして特定のポリエステルジオールを選択し、このポリエステルジオールと、「MDI」として4,4′-ジフエニルメタンジイソシアネートと、を反応させた反応生成物(プレポリマー)を用いることにより、初期の目的が達成されることを見い出しこの発明を完成するに至った。」(2頁左上欄7行-右上欄13行) (オ)「〔実施例〕 まず、EG/BG=50/50の混合物とアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルジオール(以下「P(E/B)A」と略す)と、4,4′-ジフエニルメタンジイソシアネートと、発泡・架橋剤とを下記の量だけ準備した。 P(E/B)A(分子量:2000):100重量部(以下「部」と略す。) 純MDI:30部 水:1.1部 ウレタン化触媒:0.1部 つぎに、P(E/B)Aを脱水装置に仕込んで脱水し、反応装置に移して純MDIを加え80℃で2時間反応させてプレポリマーを製造した。ついで、生成したプレポリマーに、水およびウレタン化触媒を加えて80℃で充分攪拌混合したのち、金型に注型して成形した。つぎに、この成形品を110℃で24時間キユアさせたのち、室温で7日間熟成して目的とするウレタンスポンジ製品を得た。」(4頁左上欄14行-右上欄12行) これらの記載事項から、本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、甲1には、次の発明が記載されている。 「型成形製の、ウレタンスポンジ製品であって、EG(エチレングリコール)/BG(ブチレングリコール)=50/50の混合物とアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルジオールがポリオール成分であり、4,4′-ジフエニルメタンジイソシアネートがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが1.5?4.0であるウレタン原料からなる、ウレタンスポンジ製品。」(以下、「引用発明1」という。) また、本件発明3の記載ぶりに則って整理すると、甲1には、次の発明が記載されている。 「ウレタンスポンジ製品の製法であって、金型内に、EG(エチレングリコール)/BG(ブチレングリコール)=50/50の混合物とアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルジオールがポリオール成分であり、4、4′-ジフエニルメタンジイソシアネートがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが1.5?4.0であるウレタン原料を注型して、上記金型内でウレタン原料を成形する工程と、ウレタン成形体を110℃で24時間キュアさせる工程と、を有するウレタンスポンジ製品の製法。」 (以下、「引用発明2」という。) (2)甲第4号証刊行物(特開2002-30129号公報:異議申立人の提出した甲第4号証) (以下、「甲4」という。) 本件取消理由通知において引用した甲4には、「微発泡ポリウレタンエラストマー及びその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、微発泡ポリウレタンエラストマーに関し、また微発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法に関する。詳しく述べると本発明は、靴底用途に好適に用いられる微発泡ポリウレタンエラストマー、及びその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 微発泡ポリウレタンエラストマーは、成形体内に微細でかつ均一に分散された気泡を有し、成形密度はソリッドタイプのポリウレタンエラストマーよりも低く、軟質ポリウレタンフォームよりも高いことを特徴とする。一般に、微発泡ポリウレタンエラストマーは、靴底、ガスケット、シーリング材、防振材などの分野で利用されており、その重要性は今なお高い水準にある。」 (イ)「【0011】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、上記の従来技術における問題を解決した微発泡ポリウレタンエラストマー、及びその製造方法を提供することを課題とする。すなわち本発明の課題は、脱型時間が短縮され、圧縮永久ひずみの著しい低下を示し、優れた機械物性を持つと共に、外観、塗装性に優れた微発泡ポリウレタンエラストマー、及びその製造方法を提供することである。 【0012】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは優れた特性を有する微発泡ポリウレタンエラストマー (microcellular polyurethane elastomer)及び効率的な微発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法を鋭意研究した結果、特定範囲の全密度(D)を有し、かつこの全密度(D)に対し圧縮永久歪み(CS2)およびスキン表面のセル直径が特定関係を満たすものである場合には、優れた機械的強度を有する微発泡ポリウレタンエラストマーとなることを見い出した。・・・(略)・・・」 (ウ)「【0058】・・・(前略)・・・ <その他のポリオール>本発明の微発泡ポリウレタンエラストマーの製造においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記ポリオキシアルキレンポリオール以外の構造を有するポリオールを併用することができる。このようなその他のポリオールとしては、例えば、2価?6価等の多価アルコール、ポリエステルポリオール(汎用ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールを含む。)、ポリカーボネートポリオール、ポリマー分散ポリオール等が例示できる。 ・・・(中略)・・・ 【0060】(汎用ポリエステルポリオール)汎用ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸と多価アルコールとを重縮合したポリエステルポリオールが挙げられる。ポリエステルポリオールに用いられるジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、スベリン酸、リシノール酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、・・・(中略)・・・等が挙げられる。」 (エ)「【0068】≪ポリイソシアネート化合物≫本発明に係わる微発泡ポリウレタンエラストマーを製造する上で用いられるポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの製造に用いるものであればいずれでも用いることができる。ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(異性体の各種混合物を含む)、ジフェニルメタンジイソシアネート(異性体の各種混合物を含む)、・・・(中略)・・等が挙げられる。」 (オ)「【0077】・・・(中略)・・・≪微発泡ポリウレタンエラストマーの製造方法≫本発明の微発泡ポリウレタンエラストマーは、本発明に係わるポリオキシアルキレンポリオールを含むポリオール、鎖延長剤、発泡剤として用いる水、触媒、及び整泡剤等を予め、混合した液(以下、レジンプレミックスと言う)とポリイソシアネート化合物と攪拌混合し製造する。通常、この時のNCOインデックスを0.8?1.3の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは0.9?1.2である。NCOインデックスとは全活性水素化合物(ポリオール、及び鎖延長剤、発泡剤としての水)中の活性水素のモル数とポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数の比である。」 (カ)「【0080】≪微発泡ポリウレタンエラストマーの用途≫本発明の微発泡ポリウレタンエラストマーは、引張強度、100%モデュラス、最大伸び、引裂強度、及び圧縮永久ひずみ等の機械物性に優れており、且つ、脱型時間が短いため、生産性に優れている。このような特性を有する微発泡ポリウレタンエラストマーで得られた靴底は履き心地、及び耐久性に優れている。また、スキン表面に存在するセル径が特定範囲内にあることより、表面性、及び塗装性に優れている。従って、本発明の微発泡ポリウレタンエラストマーは靴底、電機部品等のガスケット、工業部品等のガスケット、シートマット、足ふきマット、静振材、静音材、及び衝撃吸収材等の用途において、好適に使用し得る材料である。」 (キ)「【0087】(6)スキン表面に観察されるセルの平均直径(単位:μm) スキン表面とは、内寸12.5×150.0×250.0mmのアルミ製のモールドで作成したシート(微発泡ポリウレタンエラストマー)のモールドに接触していた面を指す。上記したモールドの底面に接した面(150.0×250.0mm)について、縦方向及び横方向の縁から20mmをのぞいた4隅、及びシートの中央部分計5カ所をマイクロカメラ(株式会社島津製作所製 MICRO CCD SCOPE/CCD-F2)により、セルの直径を観察する。次いで画像処理解析装置により、それぞれのセルの平均直径を求める。これら5カ所の平均値をスキン表面に観察されるセルの平均直径とした。 【0088】(7)微発泡ポリウレタンエラストマー内部のセルの平均直径(単位:μm) 内寸12.5×150.0×250.0mmのアルミ製のモールドで作成したシート(微発泡ポリウレタンエラストマー)の中心部分を縦3cm、横1cmの大きさで切り出し、スキン表面から厚み方向に上下4mmずつ除いた部分を断面方向(スキン面に対して垂直な面)4面についてマイクロカメラ(株式会社島津製作所製 MICRO CCD SCOPE/CCD-F2)で、セルの直径を観察し、画像処理解析装置により、セルの平均直径を求める。」 (ク)「【0114】 【実施例1】ステンレス製の容器に、ポリオキシアルキレンポリオールA372質量部、ポリオキシアルキレンポリオールC563質量部、鎖延長剤45質量部、水5質量部、触媒5質量部、整泡剤10質量部を秤量し、500r.p.m.の条件で、5分間、攪拌混合して、レジンプレミックスを調整した。次に、レジンプレミックス中の活性水素のモル数とポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数の比(イソシアネートインデックス、以下、NCO/OHと言う)が1.0となるように、ポリイソシアネート化合物を秤量し、レジンプレミックスに添加した。この際、レジンプレミックスとポリイソシアネート化合物は予め40℃に調整した。ホモミキサーを用いて、1500r.p.m.の回転数で3秒間、攪拌混合した後、直ちに、予め40℃に調整した内寸12.5×150.0×250.0mmのアルミ製のモールドに該混合液を注入し、蓋を閉め、40℃に調整したオーブンにモールドを入れた。脱型時間、及び脱型後、微発泡ポリウレタンエラストマーの物性測定を行った。」 (ケ)「【0117】 【実施例3】ポリオキシアルキレンポリオールA、Cに換えてポリオキシアルキレンポリオールE、ポリオキシアルキレンポリオールFを使用した以外は、実施例1と同様な方法により微発泡ポリウレタンエラストマーを得た。尚、表5に配合処方を、表8に脱型時間を、表9に物性を示す。」 (コ)「【0119】 【実施例5】ポリイソシアネート化合物としてイソシアネート末端プレポリマーRを使用した以外は、実施例3と同様な方法により微発泡ポリウレタンエラストマーを得た。尚、表5に配合処方を、表8に脱型時間を、表9に物性を示す。」 (サ)【表5】(段落【0120】)により、実施例1ないし5において、NCO/OHが、「1.0」であること、【表9】(段落【0129】)により、実施例3において、スキン表面セルの平均直径が「40μm」、内部セルの平均直径が「45μm」、実施例5において、スキン表面セルの平均直径が「40μm」、内部セルの平均直径が「50μm」であることが看取でき、これらからスキン表面セルの平均直径/内部セルの平均直径は、実施例3は、40μm/45μm=0.89、実施例5は、40μm/50μm=0.8であることがわかる。 (3)甲第5号証刊行物(特開昭59-108040号公報:異議申立人の提出した甲第5号証)(以下、「甲5」という。) 本件取消理由通知において引用した甲5には、第1図とともに、「ポリウレタンエラストマースポンジ成形品」に関して、次の事項が記載されている。 (ア)「2.特許請求の範囲 ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるプレポリマー100重量部に対して、シリコン系整泡剤0.1?3重量部と、フッ素系界面活性剤0.1?3重量部とを含有して得られる、セル径10?50μの独立気泡セル構造を有してなることを特徴とするポリウレタンエラストマースポンジ成形品。」(1頁左下欄4-11行) (イ)「本発明はポリウレタンエラストマースポンジ成形品に関し、更に詳しくは、自動車のサスペンション用バンパスプリング等の特に高圧縮条件下で使用される製品に適用可能なポリウレタンエラストマースポンジ成形品に関する。」(1頁左下欄13-17行) (ウ)「本発明におけるポリイソシアネートとしては、・・・(中略)・・・好ましくは、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する)、1.5-ナフタレンジイソシアネート(以下「NDI」と略記する)が機能性を要求されるスポンジ製品を得るためのポリイソシアネートとして用いられる。」(2頁右上欄20行-左下欄8行) (エ)「比較例1. 表-1に示す材料を激しく混合して、まず架橋剤を作る。次に、この架橋剤(50℃)12.9重量部を前記プレポリマー(90℃)100重量部と激しく混合し、生じた混合物を90℃に加熱した金型内に、密度が0.5g/cm^(3)になるように投入し、90℃×6時間キュアを行いスポンジ成形品を得た。 比較例2. 比較例1.において用いた混合物を金型温度を50℃に保持した後、混合物を投入し、比較例1.と同様の条件にてキュアを行なった。得られたスポンジ成形品は、表面全体にスキンを有し、密度0.5g/cm^(3)であった。」(3頁左下欄4-17行) (オ)表-1(4頁右上欄)における「架橋剤」の「P(E/B)A」には、注1)として、「エチレングリコール/ブチレングルコール=50/50の混合物とアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルポリオール」と記載されている。 (カ)表-2(4頁左下欄)における「耐久性」には、注6(5頁左上欄)として「耐久性:試料(第1図)の軸方向に700Kgの荷重を加えて圧縮し(圧縮率70%)、次いで荷重を除く。これを1回とし、2Hzの間隔で試料が破壊するまで行い、その回数を測定した。(試験は常温にて行なった。)」と記載されている。 (4)甲第2号証の1刊行物(「Polyurethane and Related Foams Chemistry and Technology」2007 by Taylor & Fracis Group,LLC、表紙、p.1?2、p.74?75:異議申立人の提出した甲第2号証の1)(以下、「甲2の1」という。) 甲2の1には、「(p.74頁)4.2.2 成形軟質フォーム 成形された軟質ポリウレタンフォームは、高温金型加工又は低温金型加工によって、複雑な形状の製品、例えば、・・・(中略)・・・自動車用の制振材、・・・(中略)・・・を製造するために使用されている。・・・(中略)・・・。成形されたフォームの密度分布は、高密度のスキンフォームと低密度のコアフォームとからできている。」と記載されている。(翻訳文である「甲2の2」より) (5)甲第3号証の1刊行物(「HANDBOOK OF PLASTIC FOAMS」Edited by Arthur H. Landrock(ret.)、1995 by Noyes Publications、表紙、p.1?2、P.56?57:異議申立人の提出した甲第3号証の1)(以下、「甲3の1」という。) 甲3の1には、「(p.56)成形軟質ポリウレタンフォーム 成形されたフォームは、高密度のスキンフォームと、低密度のコアフォームとからできている。」と記載されている。(翻訳文である「甲3の2」より) (6)甲第6号証の1刊行物(「Advances in POLYURETHANE TECHNOLOGY」 Edited by J. M. BUIST AND H.GUDGEON 、1968 IMPERIAL CHEMICAL INDUSTRIES LTD、表紙、p.1?2、P.176?177:異議申立人の提出した甲第6号証の1) (以下、「甲6の1」という。) 甲6の1には、「(p.176?p.177)5.5.4金型条件 1.金型温度の変化は製造される(ポリウレタン)フォームの密度に影響を与える、・・・(中略)・・・ 2.金型成形品の表面スキンの属性と厚さは金型温度に依存する。目的は、通常、薄く、連続的で、透過性のスキンを製造することである。低い金型温度は、厚く、固いスキンを製造し、・・・(中略)・・・」と記載されている。(翻訳文である「甲6の2」より) (7)甲第7号証刊行物(特開平5-202164号公報:異議申立人の提出した甲第7号証) (以下、「甲7」という。) 甲7には、「高密度表層付ウレタンフォーム成形品の製造方法」に関して、次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ウレタンフォーム成形品の製造方法に係り、さらに詳しくは自動車、船舶などの内装部品や家具などの構成部品として使用されるウレタンフォーム成形品であって、特に表面層に高密度表層を有するウレタンフォーム成形品(所謂インテグラルスキン付フォーム成形品)の製造方法に関する。」 (イ)「【0056】[比較例4]本比較例では、比較例2(1)の配合液を用い、発泡金型の温度を25℃,35℃,45℃,50℃と変化させ、他は比較例2と同様の操作を行って「TP型」を使用して成形製品を作成した。この成形品を厚さ方向に切断して断面を確認したところ、金型温度が25℃では、表面層として高密度層が極めて良好な状態で形成された、均質微細なセル構造を有する半硬質ウレタンフォーム成形品であったが、35℃から50℃へと金型温度の上昇につれ、高密度表層の形成も淡くなり、高密度表層と中間フォーム層の密度差も小さくなった。このようにして、得られた表面層に高密度層を有するウレタンフォーム成形品の特性を、表10に示す。」 (ウ)【表10】(段落【0066】)には、比較例4について、金型温度(℃)が25、35、45、50の場合、それぞれ、高密度表層の平均厚さ(mm)が、1.0、0.5、0.2、0.1となり、金型温度が50℃の場合(4)に、高密度層の密度(g/cm^(3))が0.857、中間フォーム層の密度(g/cm^(3))が0.671が看取でき、この場合、高密度層の密度/中間フォーム層の密度=0.857/0.671=約1.28であることがわかる。 (8)甲第8号証の1刊行物(「Temperature and Mold Size Effects on Physical and Mechanical Properties of a Polyurethane Foam」DACIA JACKOVICHら、JOURNAL OF CELLULAR PLASTICS Volume 41 March 2005、p.153?168:異議申立人の提出した甲第8号証の1)(以下、「甲8の1」という。) (ア)甲8の1には、「(第153頁の11行から15行)硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、防振材料、エネルギー吸収材料として用いられ、金型と発泡構造との間に平坦で薄いスキンが形成されるような所定の形状に直接金型成形される。密度勾配及びスキンの存在は、フォームの機械的特性に影響を与えることが知られている。」、「(第160頁の下から4行から第161頁の5行)半径密度勾配 半径密度勾配は、芯材サンプルの密度を異なる半径位置で測定し、標準化された半径位置に対する密度をプロットし、そして、中心から外側の半径位置に向かう密度の変化割合を計算することによって、決定された。三つの異なる大きさの金型で25℃又は85℃で処理された(サンプル)における標準化された半径位置の関数としての密度を、リファレンスフォーム(破線)と比較して、図6に示す。」と記載されている。(翻訳文である「甲8の2」より) (イ)Figure6(161頁)から、25℃で処理された場合、ポリウレタンフォームの密度が中心から外側の半径位置に向かうに従って上昇していくこと、85℃で処理された場合もポリウレタンフォームの密度が中心から外側の半径位置に向かうに従って上昇していくが、その上昇する割合は、25℃で処理された場合と比較して小さく、中心と外側の密度の差は小さいことが看取できる。 (9)甲第9号証の1刊行物(「POLYURETHANES CHEMISTRY AND TECHNOLOGY」 J.H.SAUNDERS and K. C. FRISCH、1964 INTERSCIENCE PUBLISHERS、表紙、p.1?2、P.102?103:異議申立人の提出した甲第9号証の1)(以下、「甲9の1」という。) 甲9の1には、「(第103頁の4行から5行)高温の金型は、おそらくスキンの密度が低減することによって、フォーム(全体の)密度を下げることに貢献する。」と記載されている。(翻訳文である「甲9の2」より) (10)甲第10号証刊行物(「ポリウレタンフォーム」今井嘉夫著、株式会社高分子刊行会発行、2000年9月10日、表紙、P.106?107:異議申立人の提出した甲第10号証)(以下、「甲10」という。) 甲10には、以下の記載がある。 (ア)「10.2.1使用原料 使用イソシアネートは2官能か2官能に近いものが選定される。すなわち、MDI系としては特にモノメリックMDIか2官能に近く変性されたもの、・・・(中略)・・・その他NDI,HDI,IPDI,TODIが使用される。 使用ポリオールは主として線状で分子量1,000?3,000程度のポリエステルポリオールで1種または2種のグリコールとアジピン酸からなるものである。」 (イ)「10.2.2 製造プロセス ・・・(中略)・・・注入はハンドミックスあるいは注型注入機を用い、100℃前後に加熱された金型内に加圧せずいわゆるオープンモールドで注入し、20?60分で脱型、110℃で8時間以上アフターキュアを行う。製法の一例を挙げると図38のごとくである。」 (ウ)図38(106頁)には、「微細セルポリウレタン注型エラストマーの製法(例)」が記載されており、同図からは、注入のあと、100℃で20分1次加熱を行い、脱型して、モールド品を得て、その後、110℃で24時間2次加熱をして製品となることが、看取できる。 (エ)「10.4 発泡ポリウレタン注型エラストマーの用途 (1)自動車:緩衝材、ショックアブソーバー、サイレントブロック、ブッシュ、スプリング併用材、ダストシール、各種パッキング (2)車両、運搬機器:軌道パット、耐振材、・・・(中略)・・・吸音・制振部品」 (11)甲第12号証刊行物(「DOW POLYURETHANES Flexible Foams」Ron Herrington,Kathy Hock編集、The Dow Chemical Company発行、1997年、表紙、裏表紙、第2.23頁:異議申立人の提出した甲第12号証) (以下、「甲12」という。) 甲12には、「(第2.23頁)イソシアネートインデックス ・・・(中略)・・・イソシアネートの理論上の化学量論的量は、発泡体の配合および所定の最終特性に依存して、上方もしくは下方に適宜調整でき、そして、この理論上の当量は、イソシアネートインデックスとして知られている。・・・(中略)・・・金型(モールド)発泡体の硬度も、イソシアネートインデックスを変量して調整できる。・・・(中略)・・・イソシアネートインデックス85-110が、一般的である。」と記載されている。(異議申立人が提出した抄訳より) (12)甲第13号証刊行物(「ポリウレタン樹脂ハンドブック」岩田敬治編、日刊工業新聞社発行、昭和62年9月25日、表紙、第356?359頁:異議申立人の提出した甲第13号証)(以下、「甲13」という。) 甲13には、以下の記載がある。 (ア)(357?359頁)「8.2.4. マイクロセルラーエラストマー ・・・(中略)・・・ TODIとポリエステルとの組合わせによるマイクロセルラーエラストマーも類似した物性が得られているようで,これら高価なジイソシアネートに対抗したMDI系高密度発泡体も検討され、成形性と静的物性は発泡ブルコランに類似したものまで開発された。(表8.12) これらマイクロセルラーエラストマーは軽量で耐摩耗性が優れ,かつ吸収エネルギーが非常に大きいため衝撃吸収材として優秀な性能を発揮し,自動車のサスペンションをはじめ各種工業用緩衝用材料に使われている。」 (イ)表8.12(359頁)には、「MDI系マイクロセルラーPUエラストマーの配合と物性例」について、 システムが「DC-6929/DN-6930」として、一次キュア温度110℃で離型時間6?15分、二次キュア温度100℃で14?16時間としたもの、システムが「DC-6931/DN-6932]として、一次キュア温度130℃で離型時間10?20分、二次キュア温度100℃で14?16時間とした点が看取できる。 4.対比・判断 (1) 取消理由通知に記載した取消理由について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「EG(エチレングリコール)/BG(ブチレングルコール)=50/50の混合物とアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルジオール」は、本件発明1の「ポリエステル系ポリオール」に相当し、引用発明1の「4,4’-ジフエニルメタンジイソシアネート」は本件発明1の「ジフェニルメタンジイソシアネート」に相当する。 そして、引用発明1において「EG(エチレングリコール)/BG(ブチレングルコール)=50/50の混合物とアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルジオールがポリオール成分であ」ることは、本件発明1において「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分であ」ることに相当し、同様に、「4、4’-ジフエニルメタンジイソシアネートがイソシアネート成分である」ことは、「ジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分である」ことに相当する。 また、引用発明1の「ウレタンスポンジ製品」と、本件発明1の「ウレタン製バンパスプリング」とは、「ウレタン製部品」という限りで共通する。 したがって、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、相違点1及び2で相違する。 [一致点] 「型成形製の、ウレタン製部品であって、 エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であるウレタン原料からなるウレタン製部品。」 [相違点1] ウレタン製部品について、本件発明1では、「車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する」「外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリング」であるのに対し、引用発明1では、具体的な製品が明らかでない点。 [相違点2] ウレタン原料が、本件発明1では、「NCOインデックスが0.9?1.3の範囲である」のに対して、引用発明1は、NCOインデックスが1.5?4.0である点。 [相違点3] 本件発明1では「スキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たす 1.0≦Da/Db<1.34・・・(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0・・・(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4)」のに対して、引用発明1ではこの点が不明な点。 (イ)判断 [ア]技術常識について [ア-1]ポリウレタンの用途として、甲5に、「自動車のサスペンション用バンパスプリング」(上記3.(3)(イ))、甲2の1に、「自動車用の制振材」(上記3.(4))、甲7に、「自動車の内装部品」(上記(3.(7)(ア))、甲10に、「自動車:緩衝材、ショックアブソーバー、スプリング併用材、耐振材、制振部品」(上記3.(10)(エ))、甲13に、「自動車のサスペンションをはじめ各種工業用緩衝用材料」(上記3.(12)(ア))と記載されていることを踏まえると、ウレタンを広く自動車の緩衝材、制振材等として使用することは、技術常識であると認められる。(以下、「技術常識1」という。) [ア-2]甲2の1及び甲3の1に、「成形軟質ポリウレタンフォームは、高密度のスキンフォームと低密度のコアフォームとからできている。」こと(上記3.(4)、(5))、甲6の1に、「金型温度の変化は製造される(ポリウレタン)フォームの密度に影響を与えること、金型成形品の表面スキンの属性と厚さは金型温度に依存すること、低い金型温度は、厚く、堅いスキンを製造すること」(上記3.(6))、甲7に、「金型温度が25℃では、表面層として高密度層が形成され、35℃から50℃へと金型温度の上昇につれ、高密度表層の形成も淡くなり、高密度表層と中間フォーム層の密度差も小さくなること」(上記3.(7)(イ))、甲9の1には、「高温の金型は、おそらくスキンの密度が低減することによって、フォーム(全体の)密度を下げることに貢献する。」こと(上記3.(9))が記載されている。 また、甲8の1からは、「25℃で処理された場合、ポリウレタンフォームの密度が中心から外側の半径位置に向かうに従って上昇していくこと、85℃で処理された場合もポリウレタンフォームの密度が中心から外側の半径位置に向かうに従って上昇していくが、その上昇する割合は、25℃で処理された場合と比較して小さく、中心と外側の密度の差は小さいこと」が認定できる。 これらを踏まえると、一般に、型成形製のウレタンフォームは内部のコア部と外部のスキン層とから構成されること、ウレタンフォームの密度が中心から外側の半径位置に向かうに従って上昇していくこと、型成形の金型の温度を上げると外部のスキン層と内部コア層との密度差が小さくなることは、技術常識であると認められる。(以下、「技術常識2」という。) [イ]相違点1について 本件取消理由通知で引用した甲1に、用途として「乗用車のショックアブソーバー用防振機構」及び「車輌の軸バネ用防振材」が記載されていること(上記3.(1)(ウ))、甲5に、用途として「自動車のサスペンション用バンパスプリング」が記載されていること(上記3.(3)(イ))、及び上記技術常識1に照らせば、当業者であれば、引用発明1のウレタン製部品を「車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する」「中空円筒状ウレタン製バンパスプリング」とすることは、容易に想到し得たことである。 また、上記技術常識2に照らせば、一般に、型成形製のウレタンフォームは内部のコア部と外部のスキン層とから構成されるのであるから、ウレタン製部品を、「中空円筒状ウレタン製バンパスプリング」とする際に、「外層にスキン層を有する」ものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たことであると認められる。 [ウ]相違点2について 甲4には、衝撃吸収材等の用途において使用し得る微発泡ポリウレタンエラストマーの製造において、NCOインデックスを0.8?1.3の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは0.9?1.2である旨が記載されている(上記3.(2)(オ)及び(カ))。 しかし、甲4に記載された微発泡ポリウレタンエラストマーは、ポリオキシアルキレンポリオールを含むポリオール、鎖延長剤、発泡剤として用いる水、触媒、及び整泡剤等を予め、混合した液とポリイソシアネート化合物と攪拌混合し製造した(上記3.(2)(オ))ものであって、本件発明1のように「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であるウレタン原料」とは異なる。 したがって、甲4は、「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であるウレタン原料」においてNCOインデックスを0.9?1.3の範囲とすることを示唆するものではない。 また、甲12には、ポリオールとの反応に必要なイソシアネートの量として、NCOインデックスを0.85?1.1とすることが一般的である旨が記載されており、この範囲は、本件発明1におけるNCOインデックスの範囲と一部重複している。しかし、甲12の記載は、NCOインデックスの一般的に用いられる値を示したにとどまり、むしろ、「発泡体の配合および所定の最終特性に依存して、上方もしくは下方に適宜調整でき」ると記載され、特定の材料において特定の構造を得るためのNCOインデックスを示唆するものではない。 これに対し、本件発明1は、「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であるウレタン原料」という特定の材料よりなるウレタン製バンパスプリングに対して、「そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが」、「1.0≦Da/Db<1.34、0.53<Ra/Rb≦1.0、Ra=50?300μm、Rb=50?300μm」という特定の構造を得るための条件として、「NCOインデックスが0.9?1.3の範囲である」ことを特定するものである。 したがって、甲12に接した当業者が、上記特定の材料よりなるウレタン製バンパスプリングについて、上記特定の構造を得るために、「NCOインデックスが0.9?1.3の範囲である」ことを特定することが容易であったとすることはできない。 [エ]相違点3について 上記[ウ]に記載したように、本件発明1は、特定の材料よりなるウレタン製バンパスプリングにおいて、NCOインデックスを特定の範囲とし、「そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが」、「1.0≦Da/Db<1.34、0.53<Ra/Rb≦1.0、Ra=50?300μm、Rb=50?300μm」との構造を得るものである。 これに対し、上記[ア-2]において認定した技術常識2は、一般に、型成形製のウレタンフォームは内部のコア部と外部のスキン層とから構成されること、ウレタンフォームの密度が中心から外側の半径位置に向かうに従って上昇していくこと、及び型成形の金型の温度を上げると外部のスキン層と内部コア層との密度差が小さくなることが技術常識であるということを示すにとどまり、特定の材料よりなるウレタン製バンパスプリングにおいて、NCOインデックスを特定の範囲とした場合に、Da/Dbを1.34未満とすること、Ra/Rbを0.53よりも大きくすること、並びにRa及びRbを、50ないし300μmの範囲とすることが技術常識であるとはいうことはできない。 また、甲4の【表9】(段落【0129】)に、実施例3において、スキン表面セルの平均直径が「40μm」、内部セルの平均直径が「45μm」、実施例5において、スキン表面セルの平均直径が「40μm」、内部セルの平均直径が「50μm」、すなわちスキン表面セルの平均直径/内部セルの平均直径を、「0.8」及び「0.89」とした点が記載されており(上記3.(2)(サ))、ともに本件発明1における数値範囲「0.53<Ra/Rb≦1.0」に含まれる。 しかし、甲4において実施例3はポリオール成分としてポリオキシアルキレンポリオールE及びポリオキシアルキレンポリオールFを使用したものであり(上記3.(2)(ケ))、実施例5は、イソシアネート成分としてイソシアネート末端プレポリマーRを使用したものである(上記3.(2)(コ))から、本件発明1のように「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であるウレタン原料」において、スキン層及びコア部のそれぞれの発泡セル径(Ra及びRb)を0.53<Ra/Rb≦1.0とすることを示唆するものではない。 したがって、引用発明1において、甲4の記載事項に基づいて、相違点3に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 [オ]効果について 本件特許明細書の段落【0010】には、「本発明者は、低コストなジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をイソシアネート成分とするウレタン原料を用いることを検討してみたが、先に述べたように耐久性や耐へたり性の点で問題がある。その要因を突き止めるべく本発明者が更に研究したところ、ウレタン製バンパスプリングのスキン層とコア部との密度および発泡セル径が明らかに異なることに起因し、MDIをイソシアネート成分とするウレタン原料を用いたバンパスプリングでは、歪み(応力集中)による内部クラック(破断)が発生しやすく、その結果、耐久性や耐へたり性に劣るとの知見を得た。型成形製のウレタン製バンパスプリングであれば、その外層(成形型との接触部分)には、上記のようにスキン層が形成される。上記のようにスキン層が問題となるのであれば、脱型後にスキン層を切削するといった対処法もあるが、この対処法では、寸法精度が出ない、製造工程が煩雑になる等の問題が残る。そこで、本発明者は、スキン層とコア部との密度および発泡セル径を近づけることを研究した結果、ポリオール成分の最適化、製法の最適化等により、MDIをイソシアネート成分とするウレタン原料であっても、スキン層とコア部との密度および発泡セル径を近づけることができることを突き止めた。すなわち、本発明に示すように、スキン層とコア部との密度および発泡セル径が特定の関係を満たすことにより、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。」と記載されている。 すなわち、本件発明1は、特定の材料よりなるウレタン製バンパスプリングにおいて、NCOインデックスを特定の範囲とし、そのスキン層とコア部の密度および発泡セル径が特定の関係となる構造を得ることで、高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性に優れ、しかもコストダウンを図ることができるという特有の効果を得るものである。 そして、本件発明1の同効果は、引用発明1並びに甲4及び甲5に記載された事項から当業者が予測できる範囲を超えた顕著なものであるといえる。 [カ]まとめ 以上から、本件発明1は、引用発明1並びに甲4及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明3について (ア)対比 本件発明3と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「EG(エチレングリコール)/BG(ブチレングルコール)=50/50の混合物とアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルジオール」及び「4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネート」は、本件発明3の「ポリエステル系ポリオール」及び「ジフェニルメタンジイソシアネート」に、それぞれ相当し、引用発明2の「金型内」は本件発明3の「成形型のキャビティ内」に相当するから、引用発明2の「金型内に、EG(エチレングリコール)/BG(ブチレングルコール)=50/50の混合物とアジピン酸とを反応させて得られたポリエステルジオールがポリオール成分であり、4、4’-ジフェニルメタンジイソシアネートがイソシアネート成分であ」る「ウレタン原料を注型」することは、本件発明3の「成形型のキャビティ内に、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であ」る「ウレタン原料を注入」することに相当する。 また、引用発明2の「金型内でウレタン原料を成形する工程」は本件発明3の「成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程」に、以下同様に、 「ウレタン成形体を110℃で24時間キュアさせる工程」は「脱型後のウレタン成形体を」「加熱して二次加硫させる工程」に、それぞれ相当する。 そして、引用発明2の「ウレタンスポンジ製品の製法」と、本件発明3の「ウレタン製バンパスプリングの製法」とは、「ウレタン製部品の製法」という限りで共通する。 したがって、本件発明3と引用発明2とは、下記の一致点で一致し、相違点4ないし10で相違する。 [一致点] 「ウレタン製部品の製法であって、成形型のキャビティ内に、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であるウレタン原料を注入し、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、ウレタン成形体を加熱して二次加硫させる工程とを備えるウレタン製部品の製法。」 [相違点4] 本件発明3においては、「成形型」が「主型と中子とからなる」のに対し、引用発明2においては「金型」が同様の構成を有するか否か不明である点。 [相違点5] ウレタン原料が、本件発明3においては、「NCOインデックスが0.9?1.3の範囲である」のに対し、引用発明2においては、「NCOインデックスが1.5?4.0である」点。 [相違点6] ウレタン原料を一次加硫させる工程について、本件発明3においては、ウレタン原料を「液温39?41℃で注入し、70?130℃で2?60分間加熱することにより」行われるのに対し、引用発明2においては、どのような液温及び時間で行われるか明らかでない点。 [相違点7] 本件発明3においては、「一次加硫後のウレタン成形体を成形型より取り出す脱型工程」を有するのに対して、引用発明2においては、かかる工程を有するのか明らかでない点。 [相違点8」 ウレタン成形体を二次加硫させる工程に関し、本件発明3においては、「脱型後のウレタン成形体を100?150℃で3?20時間加熱」するのに対し、引用発明2においては、ウレタン成形体を110℃で24時間キュアさせる」点。 [相違点9] 製造するウレタン製部品について、本件発明3では、「車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリング」であるのに対し、引用発明2では、具体的な製品が明らかでない点。 [相違点10] 本件発明1では「スキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たす 1.0≦Da/Db<1.34・・・(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0・・・(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4)」のに対して、引用発明2ではこの点が不明な点。 (イ)判断 事案に鑑み、まず相違点10について検討する。 相違点10は、上記相違点3と同じであり、上記(イ)[エ]で示した理由と同様の理由により、相違点10に係る本件発明3の構成は、引用発明2並びに甲4及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 そして、本件発明3は、特定の材料よりなるウレタン製バンパスプリングにおいて、NCOインデックスを特定の範囲とするとともに、製造条件を最適化し、そのスキン層とコア部の密度および発泡セル径が特定の関係となる構造を得ることで、高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性に優れ、しかもコストダウンを図ることができるという特有の効果を得るものである。 ゆえに、本件発明3の同効果は、引用発明2並びに甲4及び甲5に記載された事項から当業者が予測できる範囲を超えた顕著なものであるといえる。 したがって、相違点4ないし9について検討するまでもなく、本件発明3は、引用発明2並びに甲4及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 異議申立人の意見について (ア)NCOインデックスについて 異議申立人は、平成29年4月26日に提出した意見書において、甲12や甲14といったポリウレタン樹脂の教科書的文献を参照する限り、ポリオール成分やイソシアネート成分の種類に関係なく、ウレタンフォームのNCOインデックスが0.9?1.3程度の値となることは技術常識である旨を主張している。 しかし、上記(イ)[ウ]に記載したように、甲12の記載は、NCOインデックスの一般的に用いられる値を示唆したにとどまり、むしろ、「発泡体の配合および所定の最終特性に依存して、上方もしくは下方に適宜調整でき」ると記載され、特定の材料において特定の構造を得るためのNCOインデックスを示したものではない。 また、甲14も「α値は物性上から普通0.8?1.0の範囲で設定される。」と記載され、その逆数の範囲は1.0?1.25であるが、これも、あくまで、一般的な値を示したものと理解できる。したがって、当業者は、同記載から、本件発明1のように「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であるウレタン原料」という特定の材料よりなるウレタン製バンパスプリングにおいて、「そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが」「1.0≦Da/Db<1.34、0.53<Ra/Rb≦1.0、Ra=50?300μm、Rb=50?300μm」という特定の構造を得るための条件として、「NCOインデックスが0.9?1.3の範囲」に設定することを容易に想起することはできない。 (イ)発泡セル径を50?300μmとすることについて 異議申立人は、平成29年4月26日提出の意見書において、甲16ないし18を挙げて、発泡セル径を50?300μmとすることは、本件出願前に周知技術であった旨を主張している。 しかし、上記(イ)[エ]に説示したように、本件発明1は、特定の材料よりなるウレタン製バンパスプリングに対して、「そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが」、「1.0≦Da/Db<1.34、0.53<Ra/Rb≦1.0、Ra=50?300μm、Rb=50?300μm」という特定の構造を得るための条件として、NCOインデックスの範囲を特定したものである。 したがって、たとえ、発泡セル径を50?300μmとすることが本件出願前に周知技術であったとしても、それは本件発明1に係るウレタン製バンパスプリングの構造の一部が周知技術と共通しているにすぎず、そのことをもって、相違点3に係る本件発明1の構成を、当業者が容易に想到し得たとすることはできない。 (2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について ア 特許法第36条第4項第1号 異議申立人は、本件特許の設定登録時の明細書において、どのようなポリオール成分を使用すれば、「1.0≦Da/Db<1.34、0.53<Ra/Rb≦1.0」の関係を満たすバンパスプリングを作ることができるのか、出願時の技術常識を考慮しても理解できないから、本件特許に係る発明の詳細な説明は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨を主張した。 当該主張に関連し、本件訂正によって、本件発明1及び3において「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分であ」る旨が特定された。 そして、本件訂正後の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、異議申立人の当該主張は理由がない。 イ 特許法36条第6項第1号 異議申立人は、本件特許の設定登録時の明細書において、どのようなポリオール成分を使用し、金型温度の制御以外にどのような製法を採用すれば、「1.0≦Da/Db<1.34、0.53<Ra/Rb≦1.0」が満たされるのか、当業者は認識できず、本件特許発明の課題(高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性を備えつつ、コストダウンが図れるウレタン製バンパスプリング及び製法の提供)解決を認識できないから、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでない旨を主張した。 当該主張に関連し、本件訂正によって、本件発明1及び3において「エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲である」旨及び「Ra=50?300μm、Rb=50?300μm」である旨が特定され、本件発明3においてはさらに「成形型のキャビティ」が「主型と中子からなる」旨、「成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程」が「70?130℃で2?60分間加熱することにより」行われる旨及び「脱型後のウレタン成形体を」「二次加硫させる工程」が「100?150℃で3?20時間加熱」するものである旨が特定された。 そして、本件発明1及び3は、本件訂正後の明細書の発明の詳細な説明の記載したものであるから、異議申立人の当該主張は理由がない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、本件取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された異議申立理由によっては、請求項1及び3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2に対して、異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ウレタン製バンパスプリングおよびその製法 【技術分野】 【0001】 本発明は、車両のサスペンション機構におけるショックアブソーバのピストンロッドに装着され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限するウレタン製バンパスプリングおよびその製法に関するものである。 【背景技術】 【0002】 例えば、図1に示すように、車両のサスペンションを構成するショックアブソーバ30のピストンロッド31には、ゴムや発泡ポリウレタン樹脂等の弾性体からなる略筒状(蛇腹形状)のバンパスプリング2が外挿され、このショックアブソーバ30のシリンダ(アブソーバプレート)32と、車体側の取付部(アッパーサポート33)との間に配置されている(特許文献1参照)。 【0003】 この車両用バンパスプリングの代表として、発泡ポリウレタン樹脂(以下「ウレタン」と略す)を用いたウレタン製バンパスプリングがあげられる。また、上記ウレタン製バンパスプリングを製造する方法としては、通常、成形型(金型)を用いたモールド成形が用いられる(特許文献2参照)。 【0004】 上記ウレタンのモールド成形は、主型(おもがた)と中子(なかご)からなる成形型(金型)の成形キャビティ内に、ウレタン原料を注入(注型)して加熱することにより、成形型内においてウレタン原料を反応(発泡)させて硬化させた後、上記成形型から取り出し、筒状のウレタン成形体内側の成形型中子を抜き取って(脱型して)から、製品としてのウレタン製バンパスプリングを得る方法である。なお、ウレタンの発泡・硬化方法には、一次加硫,二次加硫の2段階の加熱ステップを経て行う方法もあり、その場合は、一次加硫したウレタン成形体(半硬化品)内側の成形型中子を抜き取って(脱型して)から、このウレタン成形体をさらに加熱して二次加硫させ、完全硬化品(製品)としてのウレタン製バンパスプリングを得る(特許文献3参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特許第3758343号公報 【特許文献2】特開2004-293697号公報 【特許文献3】特開2006-56132号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 ウレタン製バンパスプリングには、高荷重、高変形に耐えることが要求されるため、通常、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)をイソシアネート成分とするウレタン原料が用いられる。しかしながら、NDIの材料コストが高いため、汎用車種へ展開しづらいといった課題がある。そのため、高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性を備えつつ、コストダウンが図れるバンパスプリングが要望されている。 【0007】 本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性を備えつつ、コストダウンが図れるウレタン製バンパスプリングおよびその製法の提供をその目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記の目的を達成するため、本発明は、車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングであって、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たすウレタン製バンパスプリングを第1の要旨とする。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4) 【0009】 また、本発明は、下記の(α)に示すウレタン製バンパスプリングの製法であって、主型と中子とからなる成形型のキャビティ内に、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料を、液温39?41℃で注入し、70?130℃で2?60分間加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、上記一次加硫後のウレタン成形体を成形型より取り出す脱型工程と、上記脱型後のウレタン成形体を100?150℃で3?20時間加熱して二次加硫させる工程とを備えるウレタン製バンパスプリングの製法を第2の要旨とする。 (α)車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングの製法であって、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たすウレタン製バンパスプリング。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4) 【0010】 すなわち、本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者は、低コストなジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)をイソシアネート成分とするウレタン原料を用いることを検討してみたが、先に述べたように耐久性や耐へたり性の点で問題がある。その要因を突き止めるべく本発明者が更に研究したところ、ウレタン製バンパスプリングのスキン層とコア部との密度および発泡セル径が明らかに異なることに起因し、MDIをイソシアネート成分とするウレタン原料を用いたバンパスプリングでは、歪み(応力集中)による内部クラック(破断)が発生しやすく、その結果、耐久性や耐へたり性に劣るとの知見を得た。型成形製のウレタン製バンパスプリングであれば、その外層(成形型との接触部分)には、上記のようにスキン層が形成される。上記のようにスキン層が問題となるのであれば、脱型後にスキン層を切削するといった対処法もあるが、この対処法では、寸法精度が出ない、製造工程が煩雑になる等の問題が残る。そこで、本発明者は、スキン層とコア部との密度および発泡セル径を近づけることを研究した結果、ポリオール成分の最適化、製法の最適化等により、MDIをイソシアネート成分とするウレタン原料であっても、スキン層とコア部との密度および発泡セル径を近づけることができることを突き止めた。すなわち、本発明に示すように、スキン層とコア部との密度および発泡セル径が特定の関係を満たすことにより、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。 【発明の効果】 【0011】 本発明のウレタン製バンパスプリングは、型成形後に係る中空円筒状のものであって、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、そのスキン層の密度および発泡セル径と、コア部の密度および発泡セル径とが、特定の関係を満たすとともに、上記スキン層およびコア部の発泡セル径が特定の範囲である。そのため、本発明のウレタン製バンパスプリングは、高荷重、高変形に対する耐久性や耐へたり性に優れ、しかもコストダウンを図ることができる。 【0012】 また、本発明のウレタン製バンパスプリングの製法は、主型と中子とからなる成形型のキャビティ内に、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料を、液温39?41℃で注入し、70?130℃で2?60分間加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、上記一次加硫後のウレタン成形体を成形型より取り出す脱型工程と、上記脱型後のウレタン成形体を100?150℃で3?20時間加熱して二次加硫させる工程とを備えている。このような製法により、上記のような本発明のウレタン製バンパスプリングを良好に製造することができる。 【図面の簡単な説明】 【0013】 【図1】ウレタン製バンパスプリングの実施形態を示す説明図である。 【図2】本発明のウレタン製バンパスプリングに係る、スキン層の断面(a)とコア部の断面(b)を示す、電子顕微鏡写真である。 【図3】従来のウレタン製バンパスプリングに係る、スキン層の断面(a)とコア部の断面(b)を示す、電子顕微鏡写真である。 【図4】実施例におけるウレタン製バンパスプリングの耐久性試験の測定方法を示す説明図である。 【発明を実施するための形態】 【0014】 つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。 【0015】 本発明のウレタン製バンパスプリングは、自動車のサスペンション装置におけるショックアブソーバのピストンロッドに、その作動ストロークを弾性的に制限するストッパ等として嵌装されるものであり、外見上は、例えば図1に示すような従来のウレタン製バンパスプリングと同様、中空円筒状の形状である。 【0016】 本発明のウレタン製バンパスプリングは、型成形製であることから、従来の型成形製ウレタンバンパスプリングと同様、その外層(成形型との接触部分)にスキン層を有している。しかしながら、本発明のウレタン製バンパスプリングは、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、スキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たす。ここで、本発明における「スキン層」とは、成形体表面から厚み方向に2mm以内の部分のことをいい、「コア部」とは、それより深い部分のことをいう。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4) 【0017】 図2は、本発明のウレタン製バンパスプリングにおける、スキン層の断面(a)とコア部の断面(b)を示す、電子顕微鏡写真(50倍)である。一方、図3は、従来のウレタン製バンパスプリングにおける、スキン層の断面(a)とコア部の断面(b)を示す、電子顕微鏡写真(50倍)である。上記断面写真より、本発明のウレタン製バンパスプリングのほうが、スキン層とコア部との発泡状態に差がないことがわかる。なお、図2の、本発明のウレタン製バンパスプリングにおけるスキン層とコア部が、前記式(1)および(2)の関係を満たすものであり、図3の、従来のウレタン製バンパスプリングにおけるスキン層とコア部は、前記式(1)および(2)の関係を満たさないものである。 【0018】 本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、そのスキン層の密度(Da)およびコア部の密度(Db)は、前記式(1)に示す関係を満たす必要があるが、スキン層の密度(Da)は0.4?0.7g/cm^(3)の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5?0.6g/cm^(3)の範囲である。そして、コア部の密度(Db)は0.4?0.7g/cm^(3)の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5?0.6g/cm^(3)の範囲である。 【0019】 また、本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、そのスキン層の発泡セル径(Ra)およびコア部の発泡セル径(Rb)は、前記式(2)に示す関係を満たす必要があるが、スキン層の発泡セル径(Ra)は50?300μmの範囲である。そして、コア部の発泡セル径(Rb)は50?300μmの範囲である。 【0020】 本発明において、スキン層とコア部の密度は、その部位のサンプルに対し、例えば、東洋精機社製の自動比重計DSG-1を用いて測定される。また、スキン層とコア部の発泡セル径は、例えば、前記のような電子顕微鏡による断面写真をもとに、その発泡セル(中空の気泡)の直径(セル径)の10点平均を測定したものである。 【0021】 本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、先に述べたように、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のみをイソシアネート成分とするウレタン原料を用いていても、そのスキン層の密度および発泡セル径と、コア部の密度および発泡セル径とが前記の関係を満たすのは、主に、そのポリオール成分の最適化、製法の最適化によるものである。 【0022】 すなわち、上記ウレタン原料におけるポリオール成分として、本発明では、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなる、ポリエステル系ポリオールのみが用いられる。すなわち、上記特定のポリエステル系ポリオールと、MDIとを含有するウレタン原料を用い、後述のように成形型の温度を高温にして一次加硫させることにより、前記に示すようなスキン層およびコア部を有する本発明のウレタン製バンパスプリングを良好に製造することができるからである。 【0023】 なお、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールは、その凝固点が低いため、例えばプレポリマー法を採用する際には、一旦溶融してからプレポリマーを調製するといった作業が不用となることから、プレポリマーの調製が容易となる。また、その凝固点の低さから、プレポリマー法よりも工程の少ないワンショット法を採用することもできる。このように、上記特定のポリエステル系ポリオールを用いることにより、製法上の利点も得られるようになる。 【0024】 そして、上記ポリエステル系ポリオールとしては、その数平均分子量(Mn)が500?4000であることが好ましく、より好ましくは数平均分子量(Mn)1000?3000の範囲である。すなわち、このような数平均分子量のポリエステル系ポリオールを用いることにより、先に述べたような特徴的構造のバンパスプリングを良好に作製することができるからである。なお、上記数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー測定等により求めることができる。 【0025】 上記ポリエステル系ポリオールとともに用いられるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)としては、2,2′-MDI、2,4′-MDI、4,4′-MDI、ポリメリックMDIがあげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。 【0026】 本発明のウレタン製バンパスプリングにおいて、そのウレタン原料としては、上記のように、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)のみがイソシアネート成分であるものが用いられる。そして、上記イソシアネート成分の、ポリオール成分に対する配合割合は、そのNCOインデックス[イソシアネート中のNCO基と、ポリオール中の水酸基との当量比(NCO基/OH基)]が0.9?1.3の範囲となるよう配合するため、先に述べたような特徴的構造のバンパスプリングを良好に作製することができる。同様の観点から、上記NCOインデックスは、より好ましくは、1.0?1.2の範囲である。 【0027】 そして、上記ウレタン原料には、ポリオール成分、イソシアネート成分の他、必要に応じ、水等の発泡剤、鎖延長剤、触媒、整泡剤、加水分解防止剤、難燃剤、減粘剤、安定剤、充填剤、架橋剤、着色剤等が配合される。 【0028】 ここで、本発明におけるウレタン製バンパスプリングを製造する方法は、例えば、 1)主型(おもがた)と中子(なかご)とからなる成形型(金型)を準備する金型準備工程と、 2)上記金型の成形キャビティ内にウレタン原料を注入(注型)して加熱し、このウレタン原料を発泡・硬化(半硬化)させて、バンパスプリングの成形体(半製品)を得る一次加硫工程と、 3)上記一次加硫後のバンパスプリング成形体を主型より取り出し、ついでこの成形体の内周から中子を抜き取る脱型工程と、 4)上記脱型後のバンパスプリング成形体を加熱し、ウレタンの硬化反応を完了させて、ウレタン製バンパスプリングの製品を得る二次加硫工程と、からなる。 【0029】 本発明におけるウレタン製バンパスプリングは、上記1)?4)に準じ、具体的には、つぎのようにして作製される。 【0030】 [金型準備工程] まず、バンパスプリング(図1参照)の形状と同じキャビティを形成することのできる金型を用意する。また、必要に応じ、その中子の表面(外周面)に、スプレーあるいはその他の方法により、離型剤を塗布し、乾燥させて、この離型剤からなる均一な被膜を形成する。そして、主型と中子を組合せ、所定の成形キャビティを形成した後、所定の温度(70℃以上)まで金型を加温する。 【0031】 [一次加硫工程] つぎに、上記成形型のキャビティ内に、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみをポリオール成分としジフェニルメタンジイソシアネートのみをイソシアネート成分とするウレタン原料を、液温39?41℃で注入し、70?130℃で、2?60分間加熱して、発泡,硬化させ、ポリウレタンフォーム化させることにより、一次加硫したバンパスプリング成形体(半製品)を作製する。なお、上記加熱温度は、150℃以上になると、成形体の表面ふくれを生じるおそれもある。また、上記ウレタン原料は、プレポリマー法に従い、一旦プレポリマーを調製してから上記成形型のキャビティ内に注入してもよく、また、ワンショット法に従い、ポリオール成分とイソシアネート成分とを上記成形型のキャビティ内で混合するようにしてもよい。 【0032】 [脱型工程] つぎに、一次加硫の完了したバンパスプリング成形体を主型より取り出し、ついでこの成形体の内周から中子を抜き取る。 【0033】 [二次加硫工程] その後、上記のようにして金型から取り出されたバンパスプリング成形体を、加熱炉等を用いて、所定の条件にしたがって加熱し、成形体中に残存する未反応のポリオール成分とポリイソシアネート成分とを充分に反応させ、硬化反応を終了させて、ウレタン製バンパスプリングの完成品を得る。なお、上記二次加硫工程における加熱条件としては、100?150℃の温度にて、3?20時間程度加熱する条件が採用される。 【0034】 このようにして得られた本発明のウレタン製バンパスプリングは、ショックアブソーバのピストンロッドに装着されるバンパスプリングに適する。 【実施例】 【0035】 つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。 【0036】 まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。 【0037】 〔ポリオール剤〕 そのポリオール成分がポリエステル系ポリオールであるポリオール剤(トラール HT-2040、DIC社製) 【0038】 〔鎖延長剤〕 エチレングリコール 【0039】 〔触媒〕 トラール SM-2、DIC社製 【0040】 〔発泡剤〕 水 【0041】 〔イソシアネート剤〕 そのイソシアネート成分がMDIである、イソシアネート剤(トラール F-2560、DIC社製) 【0042】 [実施例1] ポリオール剤100重量部と、鎖延長剤11.8重量部と、触媒1.1重量部と、発泡剤0.6重量部とからなるA液を調製した。また、イソシアネート剤169.3重量部からなるB液を準備した。つぎに、図4に示すようなバンパスプリング40の形状と同じキャビティを形成することのできる金型(主型と中子)を用意した。そして、上記主型と中子を組合せ、所定の成形キャビティを形成した後、上記主型と中子からなる金型を加温した。続いて、上記A液およびB液を、3000rpmで5秒間撹拌した(液温:40±1℃、NCOインデックス:1.0)後、上記金型内に注入し、その金型温度を70℃に保持したまま10分間、一次加硫させた。そして、上記一次加硫後のウレタン成形体を、金型より脱型し、さらにオーブンにて二次加硫(110℃×16時間)させ、目的とするウレタン製バンパスプリング(高さ(A)75mm、内径(B)20mm、外径(C)57mm《図4参照》)を作製した。 【0043】 [実施例2?4、比較例1] 後記の表1に示すように、各成分の配合量等は、実施例1に準ずるが、一次加硫時の金型温度を実施例1と変更した。このようにして、図4に示すような形状のウレタン製バンパスプリング(高さ(A)75mm、内径(B)20mm、外径(C)57mm《図4参照》)を作製した。 【0044】 上記のようにして得られた実施例および比較例のウレタン製バンパスプリングに関し、下記の基準に従い、各特性の測定および評価を行った。これらの結果を後記の表1に併せて示した。 【0045】 〔密度〕 バンパスプリングの断面におけるスキン層(成形体表面から厚み方向に2mm以内)とコア部(スキン層より深い部分)から、それぞれサンプルを切り出し、東洋精機社製の自動比重計DSG-1を用いて、スキン層の密度Da(g/cm^(3))、コア部の密度Db(g/cm^(3))を測定し、Da/Dbを求めた。なお、上記の、比重計による密度測定は、3箇所、各2サンプルの計6回測定を実施し、その平均値を測定値とした。 【0046】 〔発泡セル径〕 バンパスプリングの断面におけるスキン層(成形体表面から厚み方向に2mm以内)とコア部(スキン層より深い部分)の電子顕微鏡写真をとり、その気泡(中空)の直径(セル径)の10点平均から、スキン層の発泡セル径Ra(μm)、コア部の発泡セル径Rb(μm)を測定し、Ra/Rbを求めた。 【0047】 〔耐久性〕 図4に示すように、取付金具43と、ピストンロッド41と、当たり部42とを備えたサーボ耐久試験機に、バンパスプリング40を取付け、周波数2Hzで0?7000Nの繰り返し(20万回)圧縮試験を行った。なお、バンパスプリング40の高さ(A)は75mmであり、内径(B)は20mmであり、外径(C)は57mmである。また、ピストンロッド41の外径(D)は12.5mmであり、当たり部42の外径(E)は50mmである。そして、初期および20万回圧縮試験後のバンパスプリングの外観を観察し、圧縮試験後に亀裂等の問題がみられたものを「×」、亀裂等の問題がみられなかったものを「○」と評価した。 【0048】 【表1】 【0049】 上記表の結果から、実施例のバンパスプリングは、耐久性試験後においても亀裂等の問題がみられなかったのに対し、比較例1のバンパスプリングは、Da/Dbの値が大きすぎ、それに起因して、耐久性試験後において内部亀裂を生じ、外観に亀裂がみられた。 【産業上の利用可能性】 【0050】 本発明のウレタン製バンパスプリングは、ショックアブソーバのピストンロッドに装着されるバンパスプリングに適する。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングであって、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たすことを特徴とするウレタン製バンパスプリング。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 下記の(α)に示すウレタン製バンパスプリングの製法であって、主型と中子とからなる成形型のキャビティ内に、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料を、液温39?41℃で注入し、70?130℃で2?60分間加熱することにより、上記成形型内でウレタン原料を一次加硫させる工程と、上記一次加硫後のウレタン成形体を成形型より取り出す脱型工程と、上記脱型後のウレタン成形体を100?150℃で3?20時間加熱して二次加硫させる工程とを備えることを特徴とするウレタン製バンパスプリングの製法。 (α)車両のショックアブソーバのピストンロッドに嵌装され、このショックアブソーバの作動ストロークを弾性的に制限する、型成形製の、外層にスキン層を有する中空円筒状ウレタン製バンパスプリングの製法であって、エチレングリコール,ブタンジオールおよびアジピン酸の縮合重合体からなるポリエステル系ポリオールのみがポリオール成分でありジフェニルメタンジイソシアネートのみがイソシアネート成分であり、かつNCOインデックスが0.9?1.3の範囲であるウレタン原料からなり、そのスキン層の密度(Da)および発泡セル径(Ra)と、コア部の密度(Db)および発泡セル径(Rb)とが、下記の式(1)?(4)の関係を満たすウレタン製バンパスプリング。 1.0≦Da/Db<1.34 ……(1) 0.53<Ra/Rb≦1.0 ……(2) Ra=50?300μm ……(3) Rb=50?300μm ……(4) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-07-10 |
出願番号 | 特願2014-63589(P2014-63589) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(F16F)
P 1 651・ 854- YAA (F16F) P 1 651・ 857- YAA (F16F) P 1 651・ 537- YAA (F16F) P 1 651・ 121- YAA (F16F) P 1 651・ 853- YAA (F16F) P 1 651・ 851- YAA (F16F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 塚原 一久 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
中村 達之 小関 峰夫 |
登録日 | 2015-08-28 |
登録番号 | 特許第5798656号(P5798656) |
権利者 | 住友理工株式会社 |
発明の名称 | ウレタン製バンパスプリングおよびその製法 |
代理人 | 杉尾 雄一 |
代理人 | 柳下 彰彦 |
代理人 | 西藤 優子 |
代理人 | 西藤 征彦 |
代理人 | 西藤 征彦 |
代理人 | 井▲崎▼ 愛佳 |
代理人 | 西藤 優子 |
代理人 | 井▲崎▼ 愛佳 |