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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A23L 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A23L |
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管理番号 | 1332232 |
異議申立番号 | 異議2016-700631 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-07-20 |
確定日 | 2017-07-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5844957号発明「飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5844957号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第5844957号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5844957号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成27年11月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人田嶋順治より平成28年7月20日に特許異議の申立てがなされ、当審において平成28年9月23日付けで取消理由が通知され、特許権者より、その指定期間内である同年11月24日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がなされ、特許異議申立人より平成29年1月10日に意見書の提出がなされ、当審において同年2月28日に訂正拒絶理由が通知され、特許権者より同年3月31日に意見書の提出がなされたものである。 第2 訂正の適否 1 本件訂正請求の内容 本件訂正請求は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正することを求めるものであり、訂正の内容は以下のとおりである。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「・・・コラーゲンペプチドを含有し、pHが5.0以下である飲料・・・」とあるのを、「・・・コラーゲンペプチドを含有し、前記数平均分子量及び重量平均分子量はパギイ法20-2においてカラムを2本直列したShodex Asahipak GS 6207Gに変更した方法で測定したものであり、pHが5.0以下である飲料・・・」と訂正する(下線は訂正箇所を示す。)。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、数平均分子量及び重量分子量がいかなる方法で測定された値であるかについて特定されていなかったものを、「パギイ法20-2においてカラムを2本直列したShodex Asahipak GS 6207Gに変更した方法で測定したもの」と特定することにより明らかにするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (2) 新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について ア 訂正事項1の「前記数平均分子量及び重量平均分子量はパギイ法20-2においてカラムを2本直列したShodex Asahipak GS 6207Gに変更した方法で測定したものであ」ることについて、本件特許明細書の段落【0029】、段落【0031】、【0032】及び【0034】に、以下の事項がそれぞれ記載されている。 「【0029】 分析方法 (1)平均分子量の測定 製造例で得られたコラーゲンペプチドの平均分子量を、パギイ法20-2『平均分子量』に準じて測定した。パギイ法20-2『平均分子量』とは、高速液体クロマトグラフィーを用いたゲル濾過法によって、コラーゲン水溶液のクロマトグラムを求め、分子量分布を測定する方法である。具体的な操作は以下のとおりである。 1) 試料0.2gを100mlメスフラスコに取り、溶離液(0.1mol/lリン酸二水素カリウム溶液と0.1mol/lリン酸水素二ナトリウム溶液の等量混合液)を加え、1時間膨潤させた後、40℃で60分間加温して溶かす。室温まで冷却したあと、溶離液を標線まで加える。 2) 得られた溶液を溶離液で正確に10倍希釈し、検液とする。 3) 検液を用い、ゲル濾過法によってクロマトグラムを求める。 カラム:Shodex Asahipak GS 620 7G を2本直列 溶離液の流速:1.0ml/min カラムの温度:50℃ 検出方法:測定波長230nmの吸光度 4) 保存時間を横軸にとり、対応した230nmの吸光度値を縦軸にして、試料の分子分布曲線を作成し、平均分子量を算出する。」 「【0031】 以下に製造例で作製したコラーゲンペプチドの分析結果を記載する。 【0032】 【表1】 」 「【0034】 【表2】 」 段落【0029】の記載によると、分子量の測定は、「コラーゲンペプチドの平均分子量を、パギイ法20-2『平均分子量』に準じて測定した」ものであり、カラムは、「Shodex Asahipak GS 620 7G を2本直列」にしたものである。 また、当該分子量の測定について、「パギイ法20-2『平均分子量』とは、高速液体クロマトグラフィーを用いたゲル濾過法によって、コラーゲン水溶液のクロマトグラムを求め、分子量分布を測定する方法である」と記載され、分子量分布が求められるものであり、一般に分子量分布に基づけば、数平均分子量及び重量平均分子量を定めることができるものである。さらに、本件特許明細書の上記【表1】には、コラーゲンペプチドの分析結果として、「数平均分子量(Mn)」及び「重量平均分子量(mw)」と記載され、それぞれに基づく数値が記載されている。 よって、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ さらに、本件訂正請求は、一群の請求項1?3になされたものである。 (3) 小括 したがって、本件訂正請求による訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ訂正事項1は、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕について訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求による訂正後の請求項1?3に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。以下、訂正後の本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などといい、総称して「本件発明」という。 「【請求項1】 酸性ムコ多糖類、および、数平均分子量が1500以下かつ重量平均分子量が3000以下であり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が2.0以下であるコラーゲンペプチドを含有し、前記数平均分子量及び重量平均分子量はパギイ法20-2においてカラムを2本直列したShodex Asahipak GS 6207Gに変更した方法で測定したものであり、pHが5.0以下である飲料(アムラ(Phyllanthus emblica、もしくはEmblica officinale)またはショウガ科マンゴージンジャー(Curcuma amada ROXB.)の植物体またはその抽出物を含むものを除く)。 【請求項2】 コラーゲンペプチドの等イオン点が7.0未満である請求項1に記載の飲料。 【請求項3】 酸性ムコ多糖類が、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸およびデルマタン硫酸から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載の飲料。」 2 取消理由の概要 請求項1?3に係る特許に対する、平成28年9月23日付けの取消理由の概要は、以下のとおりである。 理由1 本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 記 引用例1:高崎一、”美容ドリンクにおけるコラーゲンペプチドの特性”、FoodStyle 21、2008、Vol.12、No.11、p.38-41(異議申立人提出の甲第5号証) 引用例2:特開2002-51734号公報(同甲第4号証) 引用例3:特開2006-217876号公報(同甲第6号証)(周知技術を示す文献) 引用例4:山田ゆき、”化粧品・健康食品へ展開めざすコラーゲンペプチド”、JETI、2005、Vol.53、No.5、p.122-123(同甲第7号証)(周知技術を示す文献) 引用例5:チッソ株式会社2004年12月21日付けの公開情報(同甲第8号証)(周知技術を示す文献) 理由2 発明の詳細な説明の記載では、コラーゲンペプチドの平均分子量の測定方法が定まらないため、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 理由3 発明の詳細な説明の記載では、コラーゲンペプチドの平均分子量の測定方法が定まらないため、本件特許は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。 理由4 特許請求の範囲において、コラーゲンペプチドの測定方法が規定されておらず、平均分子量の値が定まらないため、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 3 判断 (1) 理由2?4について ア 上記訂正事項1により、コラーゲンペプチドの測定方法について、特許請求の範囲において、「前記数平均分子量及び重量平均分子量はパギイ法20-2においてカラムを2本直列したShodex Asahipak GS 6207Gに変更した方法で測定したもの」であることが特定され、さらに発明の詳細な説明におけるコラーゲンペプチドの測定方法によれば(段落【0029】、【0031】、【0032】)、分子量分布が求められるものであり、一般に分子量分布に基づけば、数平均分子量及び重量平均分子量を求めることができるものである。 また、パギイ法20-2で定められた標準試料のプルランの分子量範囲が本件発明の分子量の範囲外であったとしても(甲第9、10号証)、標準試料の分子量の範囲外の部分については較正曲線を外挿するなどして求めることができ、Shodex Asahipak GS 620 7Gのカラムを2本直列したクロマトグラムを用いて、コラーゲンペプチドの平均分子量が762?5589と算出されたものも認めることができる(甲第4号証【0018】)。 以上のとおりであるから、当審が通知した上記取消理由の理由2?4は解消した。 なお、特許異議申立人は、意見書において、「パギイ法20-2で測定できる平均分子量は、異議申立人提出の甲第9号証(パギイ法20-2.平均分子量)における『ゼラチンの重量平均分子量を求めることを目的とする。下記に示す分子量分布の測定法で求めたクロマトグラムを用いて、プルラン換算の重量平均分子量値を算出する。』との記載から明らかなように『重量平均分子量』のみであるから、本件特許明細書段落【0029】に記載された『平均分子量』は、『重量平均分子量』であると認められる。」(特許異議申立人提出の平成29年1月10日付け意見書2ページ10?15行)と主張しているが、クロマトグラムから分子量分布を求めれば、数平均分子量及び重量平均分子量を定めることができるので、上記特許異議申立人の主張は採用できない。 イ よって、発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たさないとすることはできず、また、本件発明1?3に係る特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たさないとすることはできないので、本件発明に係る特許が特許法113条4号に該当するということはできない。 (2) 理由1について 引用例1には、その記載事項を総合すると、「コラーゲンペプチドとコンドロイチン硫酸とが配合されたドリンク製品で、pH3.8前後で製品化され、コラーゲンペプチドとコンドロイチン硫酸との凝集反応を抑制するために、コラーゲンペプチドの重量平均分子量を4,000以下に制御した、ドリンク製品。」(以下「引用発明1」という。)が記載され、コラーゲンペプチドのラインナップとして汎用タイプ(平均分子量5,000クラス)と低分子タイプ(同3,000クラス)も示唆され、分子量の違いによるコラーゲンペプチドとコンドロイチン硫酸との反応性比較において、重量平均分子量が3000のものを用いたものが示されている。 そうすると、引用例1には、重量平均分子量が数千程度のコラーゲンペプチドを、重量平均分子量4,000以下の低分子化したコラーゲンペプチドに制御することにより、コラーゲンペプチドとコンドロイチン硫酸などの酸性ムコ多糖類との凝集を低減させることができるという技術思想が開示されているといえる。 しかしながら、引用例1?5のいずれにも、酸性ムコ多糖類とコラーゲンペプチドを含有する飲料において、濁りを抑制するとの観点から、コラーゲンペプチドを低分子化する場合に、数平均分子量(Mn)を1500以下、重量平均分子量(Mw)を3000以下とし、その際に、Mw/Mnの値に着目して調整して、その値を2.0以下とする点は記載されておらず、また、示唆もなされていない。 そして、本件特許明細書において、「本発明に必須の低分子コラーゲンペプチドには、分子量の分布があるが、分子量分布は小さい方が好ましく、Mw/Mnは2.0以下の範囲であることが好ましい。但し本発明の目的を阻害しない範囲であれば、より分子量の低いコラーゲンペプチドやアミノ酸が含まれていても構わない。分子量分布が小さければ、酸性ムコ多糖類との反応に起因する沈殿や濁りがより生じにくくなる。」(段落【0021】)と記載され、「数平均分子量が1500以下かつ重量平均分子量が3000以下であり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が2.0以下」の範囲である「コラーゲンペプチド」を用いることで、濁りがないものを得ることができることが確認されている(【表2】の試料C?試料G、8)チッソ株式会社製(CF)、9)チッソ株式会社製(DF)の例)。 一方、本件特許明細書において、Mwが3190、Mnが1460であって、Mw/Mnが2.18であるものにおいては濁りが生じており(【表2】試料12)焼津水産化学工業株式会社製(マリンマトリックス)の例)、重量平均分子量(Mw)が4000以下であっても、Mw/Mnの値は必ずしも2.0以下になるものではないことが示されており、また、Mwが3000以下であっても、分子量分布によっては、Mw/Mnの値が2.0以下に必ずしもならないことは明らかである。 そうすると、本件発明は、「酸性ムコ多糖類、および、数平均分子量が1500以下かつ重量平均分子量が3000以下であり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が2.0以下であるコラーゲンペプチドを含有」するとの特定を行うことにより、「数平均分子量が1500以下かつ重量平均分子量が3000以下」であっても、濁りも生じない範囲の目安をMw/Mnの値を2.0以下とすることで与えるものであり、その数値範囲を特定することにより、格別の効果を奏するものといえ、本件発明1?3が、引用例1?5に記載の事項から当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 なお、上述の点は、甲第1号証?甲第12号証に記載された事項を勘案しても、同様に当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 よって、本件発明1?3は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものとはいえず、本件発明1?3に係る特許が、特許法113条2号に該当するということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 酸性ムコ多糖類、および、数平均分子量が1500以下かつ重量平均分子量が3000以下であり、数平均分子量に対する重量平均分子量の比が2.0以下であるコラーゲンペプチドを含有し、前記数平均分子量及び重量平均分子量はパギイ法20-2においてカラムを2本直列したShodex Asahipak GS 6207Gに変更した方法で測定したものであり、pHが5.0以下である飲料(アムラ(Phyllanthus emblica、もしくはEmblica officinale)またはショウガ科マンゴージンジャー(Curcuma amada ROXB.)の植物体またはその抽出物を含むものを除く)。 【請求項2】 コラーゲンペプチドの等イオン点が7.0未満である請求項1に記載の飲料。 【請求項3】 酸性ムコ多糖類が、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸およびデルマタン硫酸から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載の飲料。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-07-18 |
出願番号 | 特願2009-118379(P2009-118379) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L) P 1 651・ 536- YAA (A23L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 一宮 里枝、藤井 美穂、北村 弘樹 |
特許庁審判長 |
中村 則夫 |
特許庁審判官 |
莊司 英史 山崎 勝司 |
登録日 | 2015-11-27 |
登録番号 | 特許第5844957号(P5844957) |
権利者 | 日祥株式会社 |
発明の名称 | 飲料 |
代理人 | 丹羽 武司 |
代理人 | 菅家 博英 |
代理人 | 菅家 博英 |
代理人 | 佐貫 伸一 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 佐貫 伸一 |
代理人 | 丹羽 武司 |