• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  F21S
審判 一部申し立て 2項進歩性  F21S
管理番号 1332242
異議申立番号 異議2016-700069  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-01-28 
確定日 2017-08-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5760193号発明「照明装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5760193号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。 特許第5760193号の請求項1-9、14-17に係る特許を維持する。  
理由 第1.手続の経緯
特許第5760193号の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成27年6月19日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人特許業務法人プロテック(以下「特許異議申立人」という。)より請求項1?9、14?17に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成28年4月25日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月7日に訂正請求がなされ、同年9月9日に補正対象書類名を訂正請求書とする手続補正書が提出され、同年9月15日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年10月17日付けで特許異議申立人より意見書が提出され、平成29年1月25日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年3月29日に訂正請求がなされ、同年4月18日に補正対象書類名を訂正請求書とする手続補正書及び意見書が提出され、同年5月12日付で訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年6月14日付けで特許異議申立人より意見書が提出されたものである。
なお、平成28年7月7日になされた訂正請求(同年9月9日に提出された手続補正書により補正されている。)は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2.訂正の適否について
1.訂正の内容
平成29年3月29日になされた訂正請求(同年4月18日に提出された手続補正書により補正されている。)による訂正(以下「本件訂正請求」という。)の内容は、次のとおりである(下線部は訂正箇所を示すものである。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を以下のように訂正する。
【訂正前】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、複数の透明ELパネルの出射光が重合した光を照射することを特徴とする照明装置。」
【訂正後】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し、
各々の前記透明ELパネルは、前記パネル枠の一方の面に陽極端子及び陰極端子が、前記パネル枠の他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする照明装置。」

(2)訂正事項2
願書に添付した明細書の段落【0008】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記課題を解決するため、本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、複数の透明ELパネルの出射光が重合した光を照射することを特徴とする。」
【訂正後】
「上記課題を解決するため、本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し、各々の前記透明ELパネルは、前記パネル枠の一方の面に陽極端子及び陰極端子が、前記パネル枠の他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする。」

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記複数の透明ELパネルは、互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
【訂正後】
「前記陽極端子及び陰極端子は、凸形状に夫々形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、凹形状に夫々形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置」

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0009】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することが好ましい。」
【訂正後】
「上記照明装置において、前記陽極端子及び陰極端子は、凸形状に夫々形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、凹形状に夫々形成されていることが好ましい。」

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記透明ELパネルは、一方の面に陽極及び陰極端子が、他方の面に前記陽極及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。」
【訂正後】
「前記陽極端子及び陰極端子は、互いに異なる形状に形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。」

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0010】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記透明ELパネルは、一方の面に陽極及び陰極端子が、他方の面に前記陽極及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることが好ましい。」
【訂正後】
「上記照明装置において、前記陽極端子及び陰極端子は、互いに異なる形状に形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する形状に形成されていることが好ましい。」

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
【訂正後】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。」

(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0015】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することが好ましい。」
【訂正後】
「本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。」

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
【訂正後】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。」

(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0016】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することが好ましい。」
【訂正後】
「本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。」

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項10を以下のように訂正する。
【訂正前】
「前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」
【訂正後】
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。」

(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0017】を以下のとおり訂正する。
【訂正前】
「上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することが好ましい。」
【訂正後】
「本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。」

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「透明ELパネル」に関し、訂正前の請求項2及び請求項3の発明特定事項を付加して限定するとともに、「前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され」ることを限定し、さらに、「EL素子がパネル枠に組み込まれて構成された」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2は、上記訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3は、請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「透明ELパネル」に関し、願書に添付した明細書の段落【0029】の「パネル枠21には、一方の面に陽極端子22a及び陰極端子22bが、他方の面に陽極端子22a及び陰極端子22bに夫々対応する端子受け部23a,23bが設けられる。各端子22a,22bは凸形状に、また、端子受け部23a,23bは凹形状に形成され、各端子22a,22bが端子受け部23a,23bに嵌まり込むことにより、ELパネル2同士が電気的に接続される。」との記載に基づき限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4は、上記訂正事項3に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5は、請求項3に記載された発明を特定するために必要な事項である「陽極及び陰極端子」に関し、願書に添付した明細書の段落【0029】の「陽極端子22aと陰極端子22bとは、夫々異なる形状に形成されており、陽極端子22aは、陰極用の端子受け部23bに嵌まり込まないように、陰極端子22bは、陽極用の端子受け部23aに嵌まり込まないように構成されている。」との記載に基づき限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6は、上記訂正事項5に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7、9、11は、引用関係の解消を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8、10、12は、上記訂正事項7、9、11に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)一群の請求項について
訂正事項1、3、5、7、9、11に係る訂正前の請求項1?17について、請求項2?17は、請求項1を引用するものであるから、請求項1?17は一群の請求項である。そして本件訂正請求は、かかる一群の請求項ごとにされたものであるから、特許法第120条の5第4項に適合するものである。

(11)明細書の訂正について
訂正事項2、4、6、8、10、12の明細書の訂正は、請求項1?17に関係するものであり、本件訂正請求は、請求項1?17の全てを対象とするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。

3.小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?17〕についての訂正を認める。

第3.特許異議申立てについて
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?17に係る発明(以下「本件特許発明1?17」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?17に記載した事項により特定される次のとおりのものであ。
「【請求項1】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し、
各々の前記透明ELパネルは、前記パネル枠の一方の面に陽極端子及び陰極端子が、前記パネル枠の他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記陽極端子及び陰極端子は、凸形状に夫々形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、凹形状に夫々形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置
【請求項3】
前記陽極端子及び陰極端子は、互いに異なる形状に形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記器具本体は、前記複数の透明ELパネルを収容する筐体を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記筐体は、該筐体の内面に設けた溝部に押さえ部材が嵌め込まれ、該押さえ部材が、前記透明ELパネルを前記溝部で保持することを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記器具本体は、前記透明ELパネルに対向する部分が、光反射性を有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
光反射層を有するELパネルを更に備え、該光反射層を有するELパネルが、重ね合わされた前記複数の透明ELパネルの最外部に配置されることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項9】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項10】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項11】
前記器具本体は、前記透明ELパネルのスライド方向に直交する方向に複数並設されたスライド溝を備えることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
前記透明ELパネルが、スライド扉の窓部に配設されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記透明ELパネルによって引き戸が構成されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の照明装置。
【請求項14】
前記複数の透明ELパネルを個別に点灯制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項15】
前記複数の透明ELパネルは、夫々発光色が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項16】
前記複数の透明ELパネルの発光色は、RGB三原色を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項17】
前記複数の透明ELパネルは、発光面の面積が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の照明装置。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1?9、14?17に係る特許に対して平成29年1月25日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。

本件の請求項1、2、4、6、7、14?17に係る発明は、刊行物1に記載されている発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。



刊行物1:特開2005-190768号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開2007-335146号公報(甲第2号証)

3.刊行物の記載事項
(1)刊行物1には、次の事項が図面と共に記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。)
(1a)「【0001】
本発明は、有機電界発光素子を用いた照明装置に関する。」

(1b)「【0003】
本発明は、上記要求に鑑みなされたものであり、照度を自由に設定可能な、有機電界発光素子を用いた新規な構成の照明装置を提供することをその課題とする。」

(1c)「【0015】
《第一の照明装置》
図1に、第一の照明装置10の断面構成を示す断面模式図を示す。図1に示すように、第一の照明装置10は、第一の有機エレクトロルミネッセンスデバイスとしての有機エレクトロルミネッセンスデバイス(以下、適宜「有機ELデバイス」と表記する。)11を備え、有機ELデバイス11の光取出側に、第二の有機エレクトロルミネッセンスデバイスとしての有機ELデバイス12及び有機ELデバイス13を備える。また、第一の照明装置10は、その外部を覆う筐体14を備える。
【0016】
有機ELデバイス11は、透明基板110の一方の面に有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」と表記する。)111が設けられたボトムエミッション型のデバイスである。
有機ELデバイス12は、透明基板120の一方の面に有機EL素子121が設けられたボトムエミッション型のデバイスであり、有機ELデバイス11の光取出側に配置されている。
有機ELデバイス13は、透明基板130の一方の面に有機EL素子131が設けられたボトムエミッション型のデバイスであり、有機ELデバイス11及び有機ELデバイス12の光取出側に設けられる。
【0017】
図1における矢印H11は、有機ELデバイス11における透明基板110が有機EL素子111と接する面(以下、適宜「EL面」と表記する。)の法線であり、矢印が示す方向は、有機ELデバイス11の光が発せられる方向を示す。有機ELデバイス11は、矢印H11以外の方向にも光を発するが(有機EL素子111は一般に等方向光出射特性を有するが)、照明装置10として利用される光は、主として矢印H11方向の光並びにこの矢印を中心として一定の角度範囲内の方向へ発せられる光である。以下、矢印で示す方向を、有機ELデバイスの光出射方向(正面方向)と適宜記載する。
図1における矢印H12及びH13は、それぞれ、有機ELデバイス12、13の光出射方向を示す。
【0018】
有機ELデバイス11、12及び13は、それぞれ、電圧が印加されることで、有機EL素子111、121及び131から光が発せられる。
なお、有機ELデバイス11、12及び13(有機EL素子111、121及び131)は、それぞれ別個の駆動回路と接続していてもよく、同一の駆動回路と接続していてもよい。また、互いに並列に接続されていてもよく、直列に接続されていてもよい。さらに、上記三つの有機ELデバイスの内の二つが同一の駆動回路に接続されていたり、互いに並列に接続されていたり、互いに直列に接続されていたりしてもよい。
【0019】
筐体14は、装置外部を覆い、最も光取出側に設けられた第二の有機ELデバイスである有機ELデバイス13から出射された光を装置外部へ取り出すための機構である窓部141を備える。窓部141は、有機ELデバイス13から「出射された」光を取り出す機構であるため、有機ELデバイス13の有機EL素子131から「発せられた」光のみならず、好ましくは、有機ELデバイス11や12から「発せられた」光も透過できる位置に設けられる。例えば図1に示すように、各透明基板110、120及び130のEL面を互いに平行に設定し、各有機ELデバイス11、12及び13の光出射方向が平行になるようにし、この光出射方向に窓部141を設ければよい。」

(1d)「【0027】
また、従来の照明装置では、実現できない照度を実現できる。
従来は、求められている輝度を発することのできる有機ELデバイスが実在しない場合には、新規な有機発光材料等を開発したり、新規な素子構造を開発したりするなどしなければならなかった。
これに対して、照明装置10は、求められている照度を実現するためには、第二の有機ELデバイスの数を変更するだけでよい。これは、有機ELデバイスが、透明基板及び透明な有機EL素子で構成されているため、すべての有機ELデバイスから発せられた光を窓部141から装置外部へ出射できるからである。」

(1e)「【0029】
(効果2:種々の色を表現できる)
照明装置10は、各有機ELデバイスは、他の少なくとも一つの有機ELデバイスと、発する色の色度が異なるようにすることで、一つの有機ELデバイスのみを用いた照明装置では表現することの難しい色を表現することができる。
例えば、有機ELデバイス11から赤色の光を発するようにし、有機ELデバイス12から緑色の光を発するようにし、有機ELデバイス13から青色の光を発するようにし、各デバイスから発せられる光の量を調整すれば、窓部141から照明装置10外部へ出射される光の色を白色にすることができる。
当然、他の色を表現することもできる。また、各有機ELデバイスが同一の色の光を発するようにしてもよい。
【0030】
(効果3:使用不能になりにくい、修理が容易)
照明装置10は、一つ若しくは複数の有機ELデバイスが壊れるなどしても、実質的に照明装置として機能することができる。
例えば、一つ若しくは複数の有機ELデバイスが光を発しなくなってしまったとしても、他の有機ELデバイスが光を発することができれば、照明装置として実質的に機能することができる。また、光を発しなくなってしまった有機ELデバイスのみを交換すれば、照明装置10の初期性能と同等の性能(照度等)を得ることが可能となる。つまり、一つの有機ELデバイスで構成された照明装置と比較して、照明装置10の全部品を交換したり、全部品を修理したりする必要がなくなる可能性が高い。」

(1f)「【0034】
(変形例1:筐体14の内側に光反射性能を有する部材を設ける)
例えば、鏡面14の内側に光反射性能を有する部材(光反射手段)を設けるとよい。これにより、有機ELデバイスから窓部141方向へ向かわなかった光の一部又は全部を、窓部141へ進ませ、窓部141から照明装置10外部へ出射させることが可能となる。したがって、光反射手段を設けない構成と比べて、照明装置10外部へ出射される光の量を多くする(光取出効率を高くする)ことが可能となる。
【0035】
光反射手段は、公知の手段を採用すればよく、これを筐体14内に配置すればよい。
例えば、筐体14の内側の一部又は全面を鏡面としてもよい。このように鏡面とするには、筐体14とされた際に光反射性能を有する材料によって筐体14を構成したり、光反射性能を有する金属や樹脂などの部材を筐体14の内側に貼り合わせたり蒸着させたりするなどすればよい。」

(1g)「【0041】
(変形例3:有機ELデバイスの一つ若しくは複数を、他のデバイスとは別個に点灯/非点灯制御できるようにする)
有機ELデバイスのうちの一つ若しくは複数を、他のデバイスとは別個に点灯/非点灯できるようにすれば、照明装置10から出射される光の量を調整することが可能となる。なお、各有機ELデバイスの点灯/非点灯をそれぞれ制御できるようにしてもよい。また、一つ若しくは複数の有機ELデバイスに印加する電圧の大きさを調整できるようにしてもよい。」

(1h)「【0070】
(有機EL素子111、121、131)
有機EL素子111、121及び131は、透明電極と背面電極との間に、両電極に電圧が印加されることで発光する有機発光材料を含有する有機層が狭持された構成であり、公知の有機EL素子における公知の層構成及び公知の材料の層にすればよく、公知の製造方法によって製造できる。
【0071】
第二の有機ELデバイスである有機EL素子121及び131の背面電極は透明である必要がある。
第一の有機ELデバイスである有機EL素子111の透明電極は、背面電極よりも光取出側(窓部141側)となるように設けられる必要がある。また、有機EL素子111の背面電極を光反射性電極とすれば、各有機ELデバイスから、窓部141とは反対方向へ発せられた光を窓部141側へ進ませることが可能となる。
まず、有機層について説明する。」

(1i)「【0078】
電子注入輸送層は、陰極(本例では背面電極42)・・・」

(1j)「【0080】
透明電極は、一方が陽極として機能し・・・」

(1k)「【0081】
陽極形成用の材料としては、・・・
これらの材料の内、金属や合金等を用いる場合には、光を透過できるようにするために十分薄く成膜する必要がある。」

(1l)「【0091】
陰極は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン化蒸着法、イオンプレ-ティング法、電子ビ-ム蒸着法などの公知の薄膜成膜法によって形成できる。
次に、有機EL素子に設けてもよいその他の層について説明する。」

(1m)「【0107】
《第三の照明装置30》
第三の照明装置30は、光取出側に設けられた有機ELデバイスほど、有機EL素子の面積が広くなるようにされている点以外は、第一の照明装置と同様に構成でき、また、同様に変形することができる。」

(2)刊行物2には、次の事項が図面と共に記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、複数の発光パネルで構成される発光パネルシステムに関するものである。」

(2b)「【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、簡単に各発光パネルの電気的な導通を図ることができ、かつ、良好な外観を得ることができる発光パネルシステムを提供することを目的とする。」

(2c)「【0011】
図1に、本発明の一実施形態に係る発光パネルシステム1Aを示す。なお、本実施形態では、図1の左右方向を左右方向、図1の上下方向を前後方向として説明する。
【0012】
発光パネルシステム1Aは、左右方向に並んで配置される複数(図1では2つ)の発光パネル2Aを備えている。
【0013】
前記各発光パネル2Aは、図2に示すように、隣り合う発光パネル2Aが合決り状に連結できるように、所定の厚み(例えば2?3cm程度)を有するパネル部分の下端部から右方に突出する第1張り出し部4aと、前記パネル部分の上端部から左方に突出する第2張り出し部5aとを備えており、隣り合う発光パネル2Aの第1張り出し部4aと第2張り出し部5aとが上下に重なり合うようになっている。
【0014】
第1張り出し部4aの上面には陽極端子6Bおよび陰極端子7Bが、第2張り出し部5aの下面には陽極端子6Aおよび陰極端子7Aがそれぞれ前後に並んで設けられている。これらの陽極端子6A,6B同士および陰極端子7A,7B同士は、左右方向に延びる直線上に並ぶ位置に設けられており、隣り合う発光パネル2Aの第1張り出し部4aと第2張り出し部5aとが重ね合わされたときに、陽極端子6A,6B同士および陰極端子7A,7B同士が接触するようになっている。そして、一番左に配置される発光パネル2Aの陽極端子6Aおよび陰極端子7Aに電源が接続され、一番右に配置される発光パネル2Aの陽極端子6Bおよび陰極端子7Bに絶縁性のダミー部材9Aが接続されるようになる。 【0015】
具体的には、前記各発光パネル2Aは、図3に示すように、透明基板4と、この透明基板4の上面に配置される発光素子3と、この発光素子3を覆うカバー体5とを有している。なお、図3(a)では、カバー体5を二点鎖線で示している。
【0016】
前記透明基板4は、例えばガラス等で構成されており、前後方向の寸法(例えば30cm)よりも左右方向の寸法が僅かに長い矩形板状をなしている。
【0017】
前記発光素子3は、有機ELを利用したものであり、透明基板4の上面に順次積層される第1電極31、発光層32、および第2電極33と、これらを覆うように配設される封-止層34とからなっている。なお、発光素子3としては、有機ELを利用したものに限らず、無機ELを利用したものであってもよい。」

(2d)「【0021】
前記カバー体5は、絶縁性の材料で構成されており、下方に開口する容器状の本体部5bを有している。この本体部5bは、平面視で正方形となる形状に形成されており、前記透明基板4の右端部を残すようにして当該透明基板4の上面を略全面的に覆っている。すなわち、透明基板4の右端部が、カバー体5よりも右方に張り出す第1張り出し部4aとなっている。そして、本体部5bは、透明基板4の上面に接着剤等で接合されている。」

(2e)「【0024】
前記陽極端子6Aおよび陰極端子7Aは、第2張り出し部5aの下面およびカバー体5の本体部5bの左端面に沿うように正面視で略L字状をなしている。この陽極端子6Aおよび陰極端子7Aは、第2張り出し部5aの下面に設けられることによって当該下面に上方から支持されている。一方、前記陽極端子6Bおよび陰極端子7Bは、上方に突となる形状に形成されていて、下方に押圧されると弾性変形するようになっている。この陽極端子6Bおよび陰極端子7Bは、第1張り出し部4aの上面に設けられることによって当該上面に下方から支持されている。このため、陽極端子6Bおよび陰極端子7Bは、図4に示すように、下方に弾性変形しながら陽極端子6Aまたは陰極端子7Aに接触するようになる。
【0025】
なお、陽極端子6A,6B同士および陰極端子7A,7B同士は、少なくとも一方が弾性変形しながら接触するようになっていればよく、陽極端子6Aおよび陰極端子7Aも下方に突となる形状に形成されていてもよいし、陽極端子6Aおよび陰極端子7Aのみが下方に突となる形状に形成されていてもよい。」

(2f)「【0032】
また、前記実施形態では、発光素子3が並列接続されるようになっているが、図5に示す変形例の発光パネルシステム1Bのように、発光素子3を直列接続することも可能である。」

4.刊行物1に記載された発明
刊行物1の上記記載事項(1a)?(1m)から、以下の事項が認定できる。

・記載事項(1h)の段落【0070】の「有機EL素子111、121及び131は、透明電極と背面電極との間に、両電極に電圧が印加されることで発光する有機発光材料を含有する有機層が狭持された構成であり」との記載、段落【0071】の「有機EL素子111の透明電極は、背面電極よりも光取出側(窓部141側)となるように設けられる必要がある。」との記載、及び【図1】に示された透明基板110,120,130と有機EL素子111,121,131の配置関係から、有機EL素子111,121,131は、透明基板110,120,130上に陽極である透明電極、発光層及び陰極である透明な背面電極を順に積層して成ることが理解できる。

・記載事項(1c)の段落【0017】の記載内容及び【図1】の図示内容から、照明装置10は、複数の有機ELデバイス11,12,13の光出射領域が互いに重なり合い、該複数の有機ELデバイス11,12,13の出射光が重合した光を照射するものといえる。また、(1d)の段落【0027】の「照明装置10は、求められている照度を実現するためには、第二の有機ELデバイスの数を変更するだけでよい。これは、有機ELデバイスが、透明基板及び透明な有機EL素子で構成されているため、すべての有機ELデバイスから発せられた光を窓部141から装置外部へ出射できるからである。」との記載から、前記複数の有機ELデバイス11,12,13の数を変更できるように構成され、重ね合わされたときに、各有機ELデバイス11,12,13の出射光を重合した光を照射することが理解できる。

以上の記載事項(1a)?(1m)、上記認定事項及び図示内容を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。

「透明基板110,120,130上に陽極である透明電極、発光層及び陰極である透明な背面電極を順に積層して成る有機EL素子111,121,131で構成した複数の有機ELデバイス11,12,13と、前記複数の有機ELデバイス11,12,13の光出射領域が互いに重なり合うように前記有機ELデバイス11,12,13を所定の位置に固定する筐体14と、を備え、
前記複数の有機ELデバイス11,12,13の数を変更できるように構成され、重ね合わされたときに、各有機ELデバイス11,12,13の出射光を重合した光を照射し、
有機ELデバイス11,12,13は、同一の駆動回路と接続し、互いに並列に接続されている照明装置10。」

5.対比・判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と刊行物発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、
・後者の「透明基板110,120,130」は前者の「透光性の基板」に相当する。
・後者の「陽極である透明電極」及び「陰極である透明な背面電極」は、記載事項(1k)及び記載事項(1l)に、金属や合金等を成膜することで形成することが記載されているから、前者の「透明導電膜から成る陽極」及び「透明導電膜から成る陰極」に相当する。
・後者の「発光層」は前者の「発光層」に相当する。
・後者の「有機ELデバイス11,12,13」は、記載事項(1c)の段落【0017】の記載内容及び【図1】を参酌すると透明であるから、それを構成する「有機EL素子111,121,131」も透明である。そうすると、後者の「有機EL素子111,121,131で構成した複数の有機ELデバイス11,12,13」は前者の「透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネル」に相当する。
・後者の「有機ELデバイス11,12,13を所定の位置に固定する筐体14」は前者の「透明ELパネルを保持する器具本体」に相当し、後者の「照明装置10」は前者の「照明装置」に相当する。
・後者の「前記複数の有機ELデバイス11,12,13の数を変更できるように構成され、重ね合わされたときに、各有機ELデバイス11,12,13の出射光を重合した光を照射し」と前者の「前記複数の透明ELパネルは、互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し」とは、「前記複数の透明ELパネルは、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し」の限度で共通する。

そうすると、両者は、本件特許発明1の用語を用いて表現すると、
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射する照明装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。

〔相違点1〕
本件特許発明1は、「前記複数の透明ELパネルは、互いに着脱自在となるよう構成され」るのに対し、
刊行物発明は、「前記複数の有機ELデバイス11,12,13の数を変更できるように構成され」る点。

〔相違点2〕
本件特許発明1は、「透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネル」であり、「各々の前記透明ELパネルは、一方の面に陽極端子及び陰極端子が、他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられている」のに対し、
刊行物発明は、「複数の有機ELデバイス11,12,13」がパネル枠に組み込まれて構成されているか明らかでなく、また「有機ELデバイス11,12,13は、同一の駆動回路と接続し、互いに並列に接続されている」ものであるが、有機ELデバイス11,12,13を互いに並列に接続する際の具体的な電気的接続構造も明らかでない点。

(イ)判断
事案に鑑み〔相違点2〕を先に検討する。
刊行物2には、先の1(2)の記載事項(2a)?(2f)及び【図1】?【図4】の図示内容を総合すると、「透明基板4の上面に配置される発光素子3と該発光素子3を覆う下方に開口する容器状の本体部5bを有するカバー体5とからなる複数の発光パネルシステム1A,2Aを左右方向に並んで配置する接続構造において、複数の発光パネルシステム1A,2Aが、同一の駆動回路と接続し、互いに並列に接続さるものであり、各々の発光パネルシステム1A,2Aは、右端面に沿うように配置され上方に突となる形状に形成されている陽極端子6B及び陰極端子7Bが、左端面に沿うように前記陽極端子6B及び陰極端子7Bに夫々対応する正面視で略L字状をなしている陽極端子6A及び陰極端子7Aが設けられていること」が記載されている。(以下「刊行物2に記載されている事項」という。)
刊行物2に記載されている事項には、複数の発光パネルシステム1A,2Aが、同一の駆動回路と接続し、互いに並列に接続されている発光パネルシステムにおいて、各々の発光パネルシステム1A,2Aは、一方の面に陽極端子及び陰極端子が、他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることが開示されているといえる。
しかしながら、刊行物2に記載されている事項の「カバー体5」は「透明基板4の上面に配置される発光素子3」(本件特許発明1の「透明のEL素子」に相当する。)を覆う形状であり、枠状ではないから本件特許発明1の「パネル枠」に相当するものとはいえない。また、当該「カバー体5」は文字どおり「発光素子3」をカバーするもの、つまり外部からの異物等の侵入を防止するためのものと考えられるから、「カバー体5」を枠状に設計変更することには阻害要因が存在する。
したがって、刊行物発明に刊行物2に記載されている事項を適用しても相違点2に係る本件特許発明1の構造には至らないので、刊行物発明に刊行物2に記載されている事項を適用しても上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても刊行物発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

イ 本件特許発明2、4、6、7、14?17について
本件特許発明2、4、6、7、14?17は、本件特許発明1をさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、当業者であっても刊行物発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 小括
以上、検討したとおり、本件特許発明1、2、4、6、7、14?17は、当業者であっても刊行物発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえないから、取消理由によっては、請求項1、2、4、6、7、14?17に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(2-1)異議申立人が主張する特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。
ア 訂正前の請求項1、2、4?7、14?17に係る発明は、刊行物発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

イ 訂正前の請求項3に係る発明は、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

ウ 訂正前の請求項8、9に係る発明は、刊行物発明、刊行物2に記載されている事項及び甲第3号証(特開2008-186599号公報)に記載されている事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2-2)当審の判断
ア 特許異議申立理由アについて
第3.5.ア(ア)で述べたように、本件特許発明1と刊行物発明とは、〔相違点1〕及び〔相違点2〕で相違するから、本件特許発明1は刊行物発明ではない。
本件特許発明2、4?7、14?17は、本件特許発明1をさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に刊行物発明ではない。

イ 特許異議申立理由イについて
本件特許発明3は、本件特許発明1をさらに限定した発明であるから、本件特許発明1と同様に、当業者であっても刊行物発明及び刊行物2に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 特許異議申立理由ウについて
(ア)本件特許発明8について
a 対比
先の5.(1)ア(ア)に述べた対比関係を踏まえて、本件特許発明8と刊行物発明とを対比すると、
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備える照明装置。」の点で一致し、以下の〔相違点3〕で相違する。

〔相違点3〕
本件特許発明8は、「前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射する」構成を有しているのに対し、
刊行物発明は、かかる構成を備えていない点。

b 判断
〔相違点3〕について 検討する。
甲第3号証の段落【0016】、段落【0017】及び段落【0021】並びに【図1】を参酌すると、甲第3号証には「面発光部を有するメインパネル1に対して同じく面発光部を有する各サブパネル2,3,4を回動自在に支持すること」(以下「甲第3号証に記載されている事項」という。)が記載されているといえるが、メインパネル1及び各サブパネル2,3,4の出射光を重合した光を照射するものではないから、刊行物発明に刊行物2及び甲第3号証に記載されている事項を適用しても上記相違点3に係る本件特許発明8の構成に至らない。
したがって、本件特許発明8は、当業者であっても刊行物発明、刊行物2及び甲第3号証に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)本件特許発明9について
a 対比
先の5.(1)ア(ア)に述べた対比関係を踏まえて、本件特許発明9と刊行物発明とを対比すると、
「透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備える照明装置。」の点で一致し、以下の〔相違点4〕で相違する。

〔相違点4〕
本件特許発明9は、「前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射する」構成を有しているのに対し、
刊行物発明は、かかる構成を備えていない点。

b 判断
〔相違点4〕について 検討する。
上記〔相違点3〕で検討したとおり、甲第3号証に記載されている事項は、メインパネル1及び各サブパネル2,3,4の出射光を重合した光を照射するものではないから、刊行物発明に刊行物2及び甲第3号証に記載されている事項を適用しても上記相違点4に係る本件特許発明9の構成に至らない。
したがって、本件特許発明9は、当業者であっても刊行物発明、刊行物2及び甲第3号証に記載されている事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。

以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張は理由がない。

第6.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照明装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、EL素子を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス(EL)素子は、発光層を陽極及び陰極で挟持させた発光部が透明基板上に形成されたものであり、電極間に電圧印加されたとき、発光層にキャリアとして注入された電子及びホールの再結合により生成された励起子によって発光する。
【0003】
EL素子は、発光層の蛍光物質に有機物を用いた有機EL素子と、無機物を用いた無機EL素子に大別される。特に、有機EL素子は、低電圧で高輝度の発光が可能であり、蛍光物質の種類によって様々な発光色が得られ、また、平面発光体としての製造が容易であるという特性がある。
【0004】
EL素子の平面発光体としての特性を利用したものとして、例えば、矩形状の有機ELパネルの各辺に、これと同形状のサブパネルを回動可能に連結した照明装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この照明装置は、サブパネルを回動させることにより、フラット型や箱型といった好みの形態に変形させえることができる。また、タイル式フラットパネルをヒンジ式コネクタで互いに連結させた照明装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この照明装置によれば、複数のパネルの連結形状を変化させたり、それらを適宜に点灯させることにより、光が照射される範囲を適宜に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-186599号公報
【特許文献2】特開2005-536708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び引用文献2に記載された照明装置は、複数のパネルの連結形状を変えることにより、光の照射範囲を変更することができるが、各パネルが個別に発光するので、照明装置の用途に応じて発光輝度を切り換えることはできない。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、照明装置の用途に応じて、ユーザが適宜に発光輝度を切り換えることができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し、各々の前記透明ELパネルは、前記パネル枠の一方の面に陽極端子及び陰極端子が、前記パネル枠の他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記照明装置において、前記陽極端子及び陰極端子は、凸形状に夫々形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、凹形状に夫々形成されていることが好ましい。
【0010】
上記照明装置において、前記陽極端子及び陰極端子は、互いに異なる形状に形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する形状に形成されていることが好ましい。
【0011】
上記照明装置において、前記器具本体は、前記複数の透明ELパネルを収容する筐体を備えることが好ましい。
【0012】
上記照明装置において、前記筐体は、該筐体の内面に設けた溝部に押さえ部材が嵌め込まれ、該押さえ部材が、前記透明ELパネルを前記溝部で保持することが好ましい。
【0013】
上記照明装置において、前記器具本体は、前記透明ELパネルに対向する部分が、光反射性を有することが好ましい。
【0014】
上記照明装置において、光反射層を有するELパネルを更に備え、該光反射層を有するELパネルが、重ね合わされた前記複数の透明ELパネルの最外部に配置されることが好ましい。
【0015】
本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。
【0016】
本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。
【0017】
本発明は、透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする。
【0018】
上記照明装置において、前記器具本体は、前記透明ELパネルのスライド方向に直交する方向に複数並設されたスライド溝を備えることが好ましい。
【0019】
上記照明装置において、前記透明ELパネルが、スライド扉の窓部に配設されていることが好ましい。
【0020】
上記照明装置において、前記透明ELパネルによって引き戸が構成されていることが好ましい。
【0021】
上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルを個別に点灯制御する制御部を備えることが好ましい。
【0022】
上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、夫々発光色が異なることが好ましい。
【0023】
上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルの発光色は、RGB三原色を含むことが好ましい。
【0024】
上記照明装置において、前記複数の透明ELパネルは、発光面の面積が互いに異なることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の照明装置によれば、重ね合わされる透明ELパネルの個数を変更することにより、発光輝度を適宜に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明装置の分解斜視図。
【図2】(a)(b)は同照明装置の側断面図。
【図3】同照明装置に用いられるEL素子の概略構成を示す側断面図。
【図4】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す分解斜視図。
【図5】同照明装置の他の構成を示す側断面図。
【図6】同照明装置の他の構成を示す分解斜視図。
【図7】同照明装置の他の構成を示す側断面図。
【図8】(a)は同照明装置の他の構成を示す分解斜視図、(b)は同側断面図。
【図9】同照明装置の他の構成を示す分解斜視図。
【図10】同照明装置の他の構成を示す側断面図。
【図11】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す分解斜視図。
【図12】同照明装置の他の構成を示す分解斜視図。
【図13】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す分解斜視図。
【図14】(a)(c)は本発明の第2の実施形態に係る照明装置の斜視図、(b)(d)(e)(f)は同側面図。
【図15】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図16】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図17】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図18】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図19】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図20】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図21】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図22】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す側面図、(c)は同斜視図。
【図23】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図24】(a)(b)は本発明の第3の実施形態に係る照明装置の斜視図。
【図25】同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図26】(a)(b)は本発明の第4の実施形態に係る照明装置の斜視図。
【図27】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【図28】(a)(b)は同照明装置の他の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の実施形態に係る照明装置について、図1乃至図3を参照して説明する。ここでは、本実施形態の照明装置1が、天井Cに埋め込まれる埋め込み式ダウンライトとして用いられる構成に基いて説明する。また、図面下方向を光導出方向とする。照明装置1は、図1及び図2(a)(b)に示すように、複数の透明なELパネル2と、これら複数のELパネル2の光出射領域が互いに重なり合うようにELパネル2を保持する器具本体3と、を備える。各ELパネル2は、夫々同形状であり、互いに着脱自在となるよう構成される。
【0028】
ELパネル2は、円板状に形成された透明なEL素子20が、環状のパネル枠21に組み込まれて、1個のモジュールとして構成されたものである。EL素子20は、後述するように、透明であるので、ELパネル2は、複数のものを重ね合わせた状態において、それ自体が発光して光を出射すると共に、他のELパネル2から出射された光を透過する。従って、照明装置1が、ダウンライトとして用いられた場合、下段に重ね合わされたELパネル2が、上段のELパネル2の光を重合した光を照射する。
【0029】
パネル枠21には、一方の面に陽極端子22a及び陰極端子22bが、他方の面に陽極端子22a及び陰極端子22bに夫々対応する端子受け部23a,23bが設けられる。各端子22a,22bは凸形状に、また、端子受け部23a,23bは凹形状に形成され、各端子22a,22bが端子受け部23a,23bに嵌まり込むことにより、ELパネル2同士が電気的に接続される。また、陽極端子22aと陰極端子22bとは、夫々異なる形状に形成されており、陽極端子22aは、陰極用の端子受け部23bに嵌まり込まないように、陰極端子22bは、陽極用の端子受け部23aに嵌まり込まないように構成されている。図例では、陽極端子22aが円筒形状、陰極端子22bがやや細長いタブレット形状に形成され、各端子受け部23a,23bもそれらに対応した形状に形成されている。こうすれば、ユーザが、複数のELパネル2を重ね合わせるときに、夫々の端子を間違って接続してしまうことを防止できる。また、パネル枠21には、EL素子20の発光部(詳細は後述する)の位置を避けるように貫通孔24が設けられ、この貫通孔24に挿通されるネジ31によって、ELパネル2が、器具本体3に保持される。
【0030】
器具本体3は、複数の透明ELパネルを収容するための円筒形状の筐体32と、筐体32内を2つの収容空間に、ELパネル2が当接する基部33と、天井Cに当接する鍔部34とを備える。複数のELパネル2は、基部33によって区分けされた筐体32内の一方の空間に収容され、他方の空間には、ELパネル2を点灯制御するための点灯回路や制御用のマイコン(制御部)等を内蔵した電源ユニット4が収容される。基部33は、筐体32の内周面に接着又は溶接により強固に固定されている。電源ユニット4は、導線41によって商用電源(不図示)に接続される。器具本体3は、筐体32の外面側に器具固定部材(不図示)が設けられ、この器具固定部材と鍔部34とが天井Cを構成する板材を挟みこむことにより、器具本体3が天井Cに固定される。また、筐体32の外面には、放熱性を向上させるための複数の放熱フィン(不図示)が設けられていてもよい。
【0031】
基部33には、ELパネル2の端子受け部23a,23bと同形状の本体端子受け部33a,33bが設けられ、本体端子受け部33a,33bは、基部33に設けられた回路配線(不図示)によって電源ユニット4に接続される。また、本体端子受け部33a,33bにELパネル2の陽極端子22a及び陰極端子22bが夫々嵌り込むことにより、電源ユニット4とELパネル2とが電気的に接続される。また、基部33には、ELパネル2を器具本体3に固定するため、ネジ31が挿通されるネジ固定孔33cが設けられている。なお、本例のように、ネジ31でELパネル2を器具本体3に固定する構成においては、用いられるELパネル2の個数が少ないとき、ネジ31が、基部33の上方に大きく突出することがある。そのため、電源ユニット4及び導線41等は、ネジ固定孔33cが形成される位置を避けるように基部33の上面側に配置されることが望ましい。
【0032】
EL素子20は、図3に示すように、透光性を有する基板25上に、発光部26を形成し、その外側を封止材27で被覆した構成となっている。発光部26は、透明導電膜から成る陽極26a、発光機能を有する発光層26b、透明導電膜から成る陰極26cを、順に基板25上に積層形成したものである。陽極26a及び陰極26cを成す透明導電膜は、ITO(酸化インジウムスズ)、SnO2(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の透光性の導電材料で構成される。封止材27は、透明な材料から構成され、各電極の一部が露出するように被覆され、これら電極の露出部は、直接又はリード線等を介して陽極端子22a又は陰極端子22bに電気的に接続される。
【0033】
基板25は、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等の透光性ガラス、又は透光性樹脂材料等から成り、円板形状に形成されている。
【0034】
陽極26aは、発光層26bにホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、導電性化合物又はこれらの混合物から成る電極材料が用いられ、好ましくは、仕事関数が4eV以上のものが用いられる。特に、ITO、SnO2(酸化スズ)、ZnO(酸化亜鉛)等の透光性の導電材料が好ましい。陽極26aは、これらの電極材料を、基板25の表面に、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により成膜及びパターニングすることによって形成される。
【0035】
発光層26bは、所望の白色光を発光させ得る有機蛍光材料が用いられ、例えば、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4-メチル-8-キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5-フェニル-8-キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ-(p-ターフェニル-4-イル)アミン、1-アリール-2,5-ジ(2-チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及びこれらの発光性化合物から成る基を分子構造の一部に有する化合物、高分子材料、各種蛍光色素の混合材料等が用いられる。
【0036】
発光層26bは、陽極26aの表面に上述した化合物を、例えば、真空蒸着法により成膜及びパターニングすることによって形成される。なお、発光層26bは、複数の異なる材料が積層されたものであってもよく、これら複数層の間に電位を調整するためのバッファ層を介在させてもよい。
【0037】
陰極26cは、発光層26bに電子を注入するための電極であり、陽極26aと同様に、ITO、SnO2、ZnO等の透光性の導電材料によって形成される。また、陰極26cも陽極26aと同様の方法により形成される。なお、陽極26a及び発光層26bの間には、陽極26aから発光層26bへのホール注入効果を促進するホール注入・輸送層(不図示)が設けられてもよい。また、発光層26b及び陰極26cの間には、好ましくは、陰極26cから発光層26bへの電子注入効果を促進する電子注入・輸送層(図示せず)が設けられる。
【0038】
このように構成されたEL素子20においては、パネル枠21の各端子22a,22b(図1及び図2参照)を介して、陽極26a及び陰極26cに所定の電力が供給されることにより、発光層26bが発光する。発光した光は、陽極26a及び陰極26cを透過してEL素子20外へ取り出される。なお、EL素子20の上面には、基板25からの光取り出し効率を高めるための拡散層(不図示)等が、透明性を損じない程度に設けられてもよい。
【0039】
本実施形態の照明装置1によれば、複数のELパネル2が、器具本体3に対して着脱自在となっているので、重ね合わされるELパネル2の個数を容易に変更することができる。そして、照明装置1の発光輝度を大きくする場合は、重ね合わされるELパネル2の個数を多くし、発光輝度を小さくする場合は、重ね合わされるELパネル2の個数を少なくする。こうすれば、照明装置1の用途に応じて、ユーザが適宜に、照明装置1の発光輝度を切り換えることがきる。また、ELパネル2は、夫々同一形状にモジュール化されているので、製造者にとっては、型番数を少なくすることができ、製造効率を向上させることができる。また、ユーザにとっては、器具本体に適合する型番のものを探す必要がないので、製品を手間無く購入することができる。
【0040】
基部33のうち、ELパネル2に対向する部分は、白色塗料の塗布される、又は反射膜等が形成される等によって光反射性を有するように構成されることが好ましい。こうすれば、ELパネル2から、基部33の方へ出射された光が、基部33の表面で反射されて光導出方向へ向かうので、光利用効率を向上させることができる。
【0041】
また、ELパネル2と同じ形状に形成され、陰極26cにアルミニウム等の光反射性材料を用いることにより、光反射性を有するように構成された反射性ELパネル(不図示)を、重ね合わされた複数のELパネル2の最外部に、別個配置してもよい。本例においては、基部33と当接する位置に、光反射性ELパネルが配置される。こうすれば、上記と同様に、基部33の方へ出射された光が反射されて、光導出方向へ向かうので、光利用効率を向上させることができる。
【0042】
また、各端子22a,22b及び端子受け部23a,23bに、複数の電気回路が内装され、重ね合わされた複数のELパネル2が夫々独立して電源ユニット4の制御部に接続され、各ELパネル2が個別に点灯制御されるように構成されることが好ましい。こうすれば、重ね合わされたELパネル2のうち、点灯させるELパネル2の個数を変更することにより、ELパネル2を取り外すことなく、発光輝度を任意に切り換えることができる。また、例えば、発光輝度を小さくする場合、下段側のELパネル2を点灯させる。すなわち、上段のELパネル2から出射された光は、下段のELパネル2を透過する際に、全反射等によって僅かながら損失する。従って、下段側のELパネル2から優先的に点灯させることにより、他のELパネル2を透過することによる光の損失を抑制でき、光利用(光取り出し)効率を向上させることができる。
【0043】
また、複数のELパネル2は、夫々発光色が異なるように構成されていてもよい。この場合、例えば、複数のELパネル2の発光色は、RGB三原色を含むように構成される。この構成においては、各ELパネル2の出力を調整することにより、白色光を含むフルカラー照明が可能となり、例えば、照明装置1が用いられる空間のシチェーションに応じて、照射光の演色性を変化させるような照明演出を行なうことができる。
【0044】
次に、本実施形態の照明装置1の他の構成について、特に、ELパネル2の保持構造や、ELパネル2及び器具本体3の形状、及び上述した埋め込み式ダウンライト以外の形態等について、図4乃至図13を参照して説明する。
【0045】
図4(a)(b)は、ELパネル2を筐体32内に保持するための保持枠が設けられた構成を示す。図4(a)に示す構成は、器具本体3の鍔部34と同形状に形成された環状の保持枠51を備えたものである。鍔部34及び保持枠51の双方にネジ孔34a,51aが形成され、このネジ孔34a,51aにネジ31を挿通させることにより、鍔部34と保持枠51とが接合される。また、筐体32内には、弾性を有し、ELパネル2のパネル枠21と略同形状に形成された環状の間隔調整部材52が配置される。つまり、ELパネル2は、基部33と保持枠51に挟まれた空間において、弾性を有する間隔調整部材52によって押圧されることにより、器具本体3内に保持される。
【0046】
また、図4(b)に示す構成は、ELパネル2の外径よりも僅かに大きな内径の筒部53aと、EL素子20と略同形状の開口が形成された縁部53bとを有する保持枠53を備えたものである。筐体32の内周面にはネジ溝が形成され、このネジ溝に対応するように、筒部53aの外周面にもネジ溝が形成されている。そして、筒部53aを筐体32にネジ挿入することにより、保持枠53が器具本体3に固定される。その結果、ELパネル2は、基部33と縁部53bに挟まれた空間において、器具本体3内に保持される。なお、図4(a)に示した構成と同様に、間隔調整部材52が適宜に配置されてもよい。また、保持枠53に換えて、筐体32の内周面に形成されたネジ溝に、このネジ溝の周径よりも僅かに大きな周径の環状バネ(不図示)を嵌め込み、この環状バネでELパネル2を保持してもよい。
【0047】
図5は、筐体32の内周面に、ELパネル2の厚みと同じ幅で複数の溝部35が形成され、溝部35に、押さえ部材として、バネ片54の一部が嵌め込まれ、このバネ片54によってELパネル2が保持される構成を示す。バネ片54は、溝部35に嵌め込まれた状態で、溝部35から突出した部分が、基部33側へ付勢されるように形成されている。そして、この付勢されたバネ片54が、ELパネル2のパネル枠21の下面側を支持することによって、ELパネル2はバネ片54が嵌め込まれた位置で筐体32内に保持される。この構成においては、パネル枠21にバネ受け部(不図示)が形成されていることが望ましい。なお、上述した構成は、ELパネル2が円板形状で、筐体32が筒形状のものを示したが、図6に示すように、ELパネル2が矩形状で、筐体32が箱型形状であってもよい。この場合、各ELパネル2を保持する構造として、上記図4(a)及び図5に示した構成を用いることができる。
【0048】
また、本実施形形態の照明装置1は、上述した天井埋め込み型のダウンライトに限らず、例えば、図7に示すように、床面Fに埋め込まれる埋め込み型照明器具として用いることができる。この構成においては、各ELパネル2は、各端子22a,22b及び各端子受け部23a,23b,33a,33bによって位置決めされ、自重によって器具本体3に保持されるので、別段の保持構造を要しない。この埋め込み型の照明装置1は、鍔部34が床面Fに埋め込まれて、床面F上に突出しないように設置される。また、鍔部34には、ELパネル2を保護するための保護カバー36が取り付けられる。
【0049】
図8(a)(b)は、照明装置1がシーリングライトとして用いられる構成を示す。この構成においては、器具本体3がネジ31によって直接的に天井Cに固定される。また、器具本体3及びELパネル2のパネル枠21の下面には、円穴と長穴とを組み合わせたダルマ穴形状の端子受け部23a,23b,32a,32bが形成される。一方、器具本体3及びELパネル2のパネル枠21の下面には、ネジ頭形状の各端子22a,22bが形成される。そして、端子受け部23a,23b,32a,32bの円穴部分に、各端子22a,22bを通した後、取り付けようとするELパネル2を僅かに回転させる。これにより、ネジ頭形状の各端子22a,22bが、端子受け部23a,23b,32a,32bの長穴部分に係合し、器具本体3及びELパネル2、又はELパネル2同士が固定される。この構成によれば、別途の保持部材を用いずに、器具本体3にELパネル2を取り付けられ、上段のELパネル2に、直接的に下段のELパネル2を取り付けることができる。なお、重ね合わされるELパネル2のうち、最下段には、端子受け部23a,23bが設けられていないELパネル2aを取り付けることが望ましい。
【0050】
また、シーリングライトにおいても、図9に示すように、矩形のELパネル2を用いることができる。この場合、器具本体3の側部にフック部材55を設け、このフック部材55によってELパネル2が保持されるように構成されてもよい。また、図示したように、角枠56をフック部材55に係止させ、角枠56及び器具本体3でELパネル2を挟持することにより、ELパネル2が保持されるように構成されてもよい。
【0051】
図10は、器具本体3が、囲い枠57の底面を介して天井Cに固定され、この囲い枠57内にELパネル2が保持されるように構成されたものである。具体的な保持構造は、上述したいずれかのものが用いられる。また、この場合においても、図11(a)(b)に示すように、円形及び矩形のいずれのELパネル2が用いられてもよい。
【0052】
更に、複数のELパネル2は、発光面の面積が互いに異なるものであってもよい。この場合、図12に示すように、上段に発光面の面積が大きなELパネル2が取り付けられ、下段になる程、順次発光面の面積が小さなELパネル2が取り付けられることが望ましい。また、この構成においては、器具本体3及び各ELパネル2間の電気的接続は、例えば、リード線等によってなされる。
【0053】
図13(a)(b)は、照明装置1がスポットライトとして用いられる構成を示す。この構成においては、器具本体3が支持軸58を介して天井Cに固定されると共に、器具本体3と支持軸58との間にヒンジ部61が設けられ、器具本体3が首振り自在となっている。この構成においても、重ね合わされるELパネル2は、図13(a)に示す円形であっても、図13(b)に示す矩形であってもよい。また、各ELパネル2は、器具本体3の筐体32内に内装されるものであってもよいし、筐体32外へ積層されるものであってもよい。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態に係る照明装置について、図14乃至図23を参照して説明する。本実施形態の照明装置1は、複数のELパネル2が、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各ELパネル2の出射光を重合した光を照射するものである。
【0055】
図14(a)乃至(f)は、照明装置1が、天井Cに取り付けられるシーリングライトとして用いられる構成を示す。この照明装置1は、天井Cに固定される台座部37(器具本体3)に、筒状の軸受け部62を介して一対の支持部材63が接合され、各支持部材63に夫々ELパネル2が固定されている。軸受け部62は、折り曲げ軸(不図示)を内装し、一対の支持部材63及びELパネル2を、0?180°の範囲で折り曲げ自在とする。支持部材63は、軸受け部62との接合部と反対側の側面にパネル挿入溝64が形成されている。台座部37又は軸受け部62には、電源ユニット(不図示)が内装され、支持部材63のパネル挿入溝の内部に形成された端子受け部(不図示)とリード線等によって電気的に接続されている。また、ELパネル2の側部に電極端子(不図示)が設けられ、パネル挿入溝64にELパネル2が差し込まれることにより、ELパネル2が支持部材63に固定されると共に、電源ユニットと電気的に接続される。また、この構成は、図15(a)(b)に示すように、支持軸58による吊り下げ式のシーリングライトとして用いることもできる。この場合、照明装置1は、台座部37に換えて、支持軸58を介して天井Cに固定される。
【0056】
本実施形態においては、図14(a)(b)、図15(a)に示すように、各ELパネル2を水平配置にすれば、広い範囲に、低輝度の光を照射することができる。また、ELパネル2は両面から光を出射するので、天井C方向及び床方向の両方に光を照射することができる。また、図14(a)(b)、図15(b)に示すように、各ELパネル2を垂直配置にすれば、狭い範囲に高輝度の光を照射することができる。更に、図14(e)(f)に示すように、各ELパネル2の折り曲げ角度は任意であり、この折り曲げ角度を変えることにより、光の照射範囲及び輝度をユーザが任意に変更することができる。
【0057】
図16乃至図18は、照明装置1が、スタンドライトとして用いられる構成を示す。図16(a)(b)は、L字形状に屈曲した支持アーム59が、器具本体3に対して回転自在に立設され、この支持アーム59の上辺にヒンジ部61を介して一対のELパネル2が取り付けられた構成を示す。また、図17(a)(b)は、矩形状のELパネル2の一辺が器具本体3に対して角度可変に取り付けられ、他辺がヒンジ部61を介して別のELパネル2と連結されている構成を示す。なお、図18(a)(b)に示すように、連結される各ELパネル2が互いに異なる形状であってもよい。この構成によれば、図16(a)、図17(a)、図18(a)に示すように、各ELパネル2の折り曲げ角度を180°にすれば、広い範囲に低輝度の光を照射することができる。また、図16(b)、図17(b)、図18(b)に示すように、各ELパネル2を重ね合わせれば、狭い範囲に高輝度の光を照射することができる。なお、図16(a)(b)における白抜矢印は、ELパネル2からの照射光の輝度の変化をイメージとして示したものである。
【0058】
図19乃至図23は、照明装置1が、2つ以上の折り曲げ部を有する構成を示す。図19及び図20は、図14及び図15で示したシーリングライトと同様のものであり、器具本体3に対して、2枚のELパネル2が夫々ヒンジ部61を介して取り付けられた構成を示す。図19(a)(b)は、器具本体3が天井Cに固定されている構成を示し、図20(a)(b)は、支持軸58による吊り下げ式の構成を示す。図20(a)(b)に示す構成においては、器具本体3と天井とが離れているので、ヒンジ部61は、図示したように、器具本体3の側部に設けられることが望ましい。こうすれば、より広い範囲で各ELパネル2を回動させることができる。
【0059】
図21(a)(b)は、床面Fに載置された台座部37(器具本体3)に支持軸58が立設され、支持軸58の上端に上底部65が配置されると共に、上底部65に夫々ヒンジ部61を介して一対のELパネル2が取り付けられている構成を示す。この構成によれば、図21(a)に示すように、ELパネル2を広げた状態にすれば、照明を兼ねたテーブルとして機能させることができる。また、図21(b)に示すように、ELパネル2を畳んだ状態にすれば、メッセージボードとして機能させることができる。
【0060】
図22(a)乃至(c)は、照明装置1が、フロアスタンドライトとして用いられる構成を示す。この照明装置1は、床面F上の台座部37(器具本体3)に長尺の支持軸58が立設され、支持軸58の上端にELパネル2が水平に配置されると共に、このELパネル2の対向する辺に接続部66a,66bを介して夫々ELパネル2が設けられたものである。各接続部66a,66bはヒンジを内蔵し、各ELパネル2を折り曲げ自在に連結する。また、一方の接続部66bは、他方の接続部66aよりもELパネル2の厚み分長く形成されているので、図22(b)に示すように、接続部66aによって接続されたELパネル2を折り畳んだ後、接続部66bによって接続されたELパネル2をスムーズに折り畳むことができる。
【0061】
図23(a)(b)は、複数のELパネル2が複数のヒンジ部61を介して連結された構成を示す。各ELパネル2は、図23(a)に示すような同形状であってもよいし、図23(b)に示すように夫々異なる形状であってもよい。この照明装置1は、上述した構成と同様に、ヒンジ部61の折り曲げ角度を変えることにより、光の照射範囲及び輝度をユーザが任意に変更することができる。また、図例のように折り曲げたときは、「光る屏風」として利用することができる。
【0062】
次に、本発明の第3の実施形態に係る照明装置について、図24及び図25を参照して説明する。本実施形態の照明装置1は、複数のELパネル2は、器具本体3に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各ELパネル2の出射光を重合した光を照射するものである。
【0063】
図24(a)(b)は、照明装置1が、スタンドライトとして用いられる構成を示す。この照明装置1は、L字形状に屈曲した2本の支持アーム59が、器具本体3に対して夫々回転自在に立設され、支持アーム59の屈曲部の先端に夫々ELパネル2が取り付けられたものである。各支持アーム59の高さが、ELパネル2の厚み分夫々異なり、また屈曲部の長さも、器具本体3への立設位置に応じて異なり、図24(b)に示すように、一方のELパネル2を、他方のELパネル2に重ね合わすことができるように構成される。また、図25は、照明装置1が、シャンデリア型照明として用いられる構成を示す。図例では、3枚のELパネル2を取り付けた例を示すが、4枚以上のELパネル2が取り付けられてもよい。この構成によれば、ELパネル2を器具本体3に対して回動させることにより、上述した実施形態と同様に、光の照射範囲及び輝度をユーザが任意に変更することができる。
【0064】
次に、本発明の第4の実施形態に係る照明装置について、図26乃至図28を参照して説明する。本実施形態の照明装置1は、複数のELパネル2が、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各ELパネル2の出射光を重合した光を照射するものである。
【0065】
図26(a)(b)は、照明装置1が、スタンドライトとして用いられる構成を示す。この照明装置1は、器具本体3に対してヒンジ部61を介してELパネル2が角度可変に取り付けられ、このELパネル2の両側部に一対のスライドレール38が設けられている。そして、スライドレール38によって別のELパネル2がスライド自在に保持されている。この構成によれば、図26(a)に示すように、スライド自在となったELパネル2を、スライドレールの先端方向にスライドさせれば、広い範囲に、低輝度の光を照射することができる。また、図26(b)に示すように、各ELパネル2を重ね合わせれば、狭い範囲に高輝度の光を照射することができる。
【0066】
図27(a)(b)は、照明装置1が、吊り下げ式のシーリングドライトとして用いられる構成を示す。この照明装置1は、器具本体3の内側面に、ELパネル2のスライド方向に直交する方向に複数並設されたスライド溝39を備えるものである。各ELパネル2は、ELパネル2の厚み分、異なる高さで器具本体3に保持されているので、スライド溝39に沿ってELパネル2をスライドさせることにより、図27(a)に示すように、広い範囲に、低輝度の光を照射することができる。また、図27(b)に示すように、各ELパネル2を重ね合わせれば、狭い範囲に高輝度の光を照射することができる。
【0067】
図28(a)は、ELパネル2が、スライド扉7の窓部に配設されている構成を示す。スライド扉7を保持するスライド枠71には、給電線が内装され(不図示)、この給電線からELパネル2へ電力が供給される。この構成において、ELパネル2は、光を透過するので、消灯時は採光用の窓として機能し、点灯時は照明器具として機能する。また、スライド扉7をスライドさせて、ELパネル2を重ね合わせることにより、上述した構成と同様に、高輝度の光を照射することができる。また、図28(b)は、ELパネル2によって収納家具8の引き戸81が構成された例を示す。この構成においても、上述した構成と同様に、ELパネル2をスライドさせることにより、光の照射範囲と輝度とを、ユーザが適宜に変更することができる。
【0068】
なお、本発明は、上述の実施形態に限られることなく種々の変形が可能である。ELパネル2は、直径又は一辺の寸法が比較的小さく、例えば、200mm程度であれば、面一の発光部26(図3参照)により構成される。しかし、それ以上の寸法の場合、電圧降下による光ムラが生じないように、複数の発光部26が格子状に配列されたものを用いることが好ましい。また、その場合、複数の発光部26が、夫々個別に制御可能なように配線等の設計がなされることが更に好ましい。
【符号の説明】
【0069】
1 照明装置
2 ELパネル(透明ELパネル)
22a 陽極端子
22b 陰極端子
23a (陽極陽)端子受け部
23b (陰極用)端子受け部
3 器具本体
32 筐体
33 基部(ELパネルに対向する部分)
35 溝部
39 スライド溝
4 電源ユニット(制御部)
54 バネ片(押さえ部材)
7 スライド扉
81 引き戸
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子がパネル枠に組み込まれて構成された複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して互いに着脱自在となるよう構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射し、
各々の前記透明ELパネルは、前記パネル枠の一方の面に陽極端子及び陰極端子が、前記パネル枠の他方の面に前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する端子受け部が設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記陽極端子及び陰極端子は、凸形状に夫々形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、凹形状に夫々形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記陽極端子及び陰極端子は、互いに異なる形状に形成され、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する前記端子受け部は、前記陽極端子及び陰極端子に夫々対応する形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記器具本体は、前記複数の透明ELパネルを収容する筐体を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記筐体は、該筐体の内面に設けた溝部に押さえ部材が嵌め込まれ、該押さえ部材が、前記透明ELパネルを前記溝部で保持することを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記器具本体は、前記透明ELパネルに対向する部分が、光反射性を有することを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
光反射層を有するELパネルを更に備え、該光反射層を有するELパネルが、重ね合わされた前記複数の透明ELパネルの最外部に配置されることを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、折り畳み自在に連結され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項9】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、前記器具本体に対して、回動自在に保持され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項10】
透光性の基板上に透明導電膜から成る陽極、発光層及び透明導電膜から成る陰極を順に積層して成る透明のEL素子で構成した複数の透明ELパネルと、前記複数の透明ELパネルの光出射領域が互いに重なり合うように前記透明ELパネルを保持する器具本体と、を備え、
前記複数の透明ELパネルは、互いにスライド自在に構成され、重ね合わされたときに、各透明ELパネルの出射光を重合した光を照射することを特徴とする照明装置。
【請求項11】
前記器具本体は、前記透明ELパネルのスライド方向に直交する方向に複数並設されたスライド溝を備えることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
前記透明ELパネルが、スライド扉の窓部に配設されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記透明ELパネルによって引き戸が構成されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の照明装置。
【請求項14】
前記複数の透明ELパネルを個別に点灯制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項15】
前記複数の透明ELパネルは、夫々発光色が異なることを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項16】
前記複数の透明ELパネルの発光色は、RGB三原色を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項17】
前記複数の透明ELパネルは、発光面の面積が互いに異なることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の照明装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-07-24 
出願番号 特願2010-294562(P2010-294562)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (F21S)
P 1 652・ 121- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 林 政道  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
島田 信一
登録日 2015-06-19 
登録番号 特許第5760193号(P5760193)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 照明装置  
代理人 板谷 真之  
代理人 板谷 康夫  
代理人 板谷 康夫  
代理人 板谷 真之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ