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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
管理番号 1332260
異議申立番号 異議2016-700549  
総通号数 214 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-16 
確定日 2017-08-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5833221号発明「有機ケイ素化合物の水性分散液」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5833221号の特許請求の範囲を平成29年4月13日付けで手続補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第5833221号の請求項4、5に係る特許を維持する。 特許第5833221号の請求項1ないし3に係る特許に対する本件異議申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第5833221号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2014-503089号、以下「本願」という。)は、平成24年3月30日(パリ条約に基づく優先権主張:2011年4月7日、ドイツ連邦共和国)の国際出願日に出願人ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト(以下「特許権者」という。)によりされたものとみなされる国際特許出願であり、平成27年11月6日に特許権の設定登録(請求項の数5)がされたものである。

2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成28年6月16日付けで特許異議申立人エボニック デグサ ゲーエムベーハー(以下「申立人」という。)により「特許第5833221号の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がなされた。

3.以降の経緯
本件異議申立後の経緯は以下のとおりである。
平成28年10月17日付け 取消理由通知
平成29年 1月17日 意見書(特許権者)・訂正請求書
平成29年 2月17日付け 訂正拒絶理由通知
平成29年 4月13日 意見書(特許権者)・手続補正書
平成29年 4月18日付け 通知書(申立人あて)
平成29年 6月 8日 意見書(申立人)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第13号証を提示し、取消理由として、概略、以下の(a)ないし(e)が存するとしている。

(a)本件発明1ないし3は、いずれも、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。(以下「取消理由1」という。)
(b)本件発明1ないし5は、いずれも、甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。(以下「取消理由2」という。)
(c)本件特許の請求項1、4及び5に関して、同各項の記載が不備であり、請求項1、4及び5の各記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項1、4及び5に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。(以下「取消理由3」という。)
(d)本件特許の請求項1、4及び5に関して、同各項の記載が不備であり、請求項1、4及び5の各記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、請求項1、4及び5に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。(以下「取消理由4」という。)
(e)本件特許の請求項1及び4に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であり、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないから、請求項1及び4に係る発明についての特許は、いずれも特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由5」という。)

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2009-132921号公報
甲第2号証:特表平6-501514号公報
甲第3号証:国際公開2008/090458号(抄訳添付)
甲第4号証:米国特許出願公開第2010/0234517号明細書(抄訳添付)
甲第5号証:特開2000-34410号公報
甲第6号証:特開平8-302195号公報
甲第7号証:欧州特許ドイツ国再公表第69821522号明細書(抄訳添付)
(なお、申立人が申立書の証拠方法の欄に記載した「独国特許出願公開第69821522号明細書」なる文献名は、明らかな誤りであり、上記文献名は、当審が仮訳したものである。)
甲第8号証:EINE NEUE BESTIMMUNG DER MOLEKULDIMENSIONEN、1905年4月30日、BUCHDRUCKEREI K.J.WYSS発行、p.5?21(抄訳添付)
甲第9号証:Rheologie von Kugel- und Fasersuspensionen mit viskoelastischen Matrixflussigkeiten、1997年1月18日コロキウム発表(抄訳添付)
甲第10号証:特開平6-9783号公報
甲第11号証:特開昭50-111900号公報
甲第12号証:「Rhealogical Behavior of Silicone Fluids under Shear」(URL:http://www.clearcoproducts.com/pdf/library/Shear-Rhealogical.pdf)(抄訳添付)
甲第13号証:作成者、作成期日などが不詳の「EVONIC INDUSTRIES」なる企業名が付された実験成績書
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲13」と略していうことがある。)

第3 当審が通知した取消理由の概要
当審が、平成28年10月17日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
「第4 当審の判断
当審は、
当審が職権により新たに発見した取消理由により、本件発明1ないし5についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。
・・(中略)・・
●当審が新たに発見した取消理由について
・本件特許に係る請求項1ないし5に関して、同各項の記載が以下の1.ないし4の点で不備であり、請求項1ないし5の各記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、本件発明1ないし5についての特許は、いずれも特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」

第4 平成29年1月17日付け訂正請求の適否

1.訂正請求の内容
平成29年4月13日付け手続補正書により補正された上記平成29年1月17日付け訂正請求では、本件特許の特許請求の範囲を、上記手続補正書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?5について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであり、以下の(ア)ないし(カ)の訂正事項を含むものである。(なお、下線は、当審が付したもので訂正箇所を表す。)

(ア)請求項1?3に係る訂正事項1?3
特許請求の範囲の請求項1ないし3をそれぞれ削除する。

(イ)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項4について、訂正前の請求項4が請求項1を引用するものであるため、訂正事項1ないし3の請求項1などの削除に伴い請求項4を独立項形式に書き換え、「請求項1?3のいずれか一項に記載の有機ケイ素化合物の水性分散液を製造する方法であって、」と記載されているのを「有機ケイ素化合物の水性分散液を製造する方法であって、」に訂正し、「無機充填剤(B)」と記載されているのを「シリカを含んでなる無機充填剤(B)」と訂正し、更に「および式(I)の単位」と記載されているのを「および式(I):
R_(a)(R^(1)O)_(b)SiO_((4-a-b)/2) (I)
(式中、
Rは、同一であるかまたは異なるものでよく、水素原子、または一価の、SiC結合した、所望により置換されたヒドロカルビル基であり、
R^(1)は、水素原子であり、
aは、0、1、2または3であり、
bは、0、1、2または3であるが、ただしaおよびbの合計は3以下である。)
の単位」と訂正する。

(ウ)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「式(II)のシラン(D)および/またはその部分的水解物」と記載されているのを、訂正事項1の請求項1の削除に伴い請求項4を独立項形式に書き換えて、請求項1に記載されていた式(II)の内容を加えるとともに、式(II)中のR^(4)の定義「R^(4)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、所望により置換されたヒドロカルビル基または水素を表し、」から水素を削除して、
「式(II):
R^(3)_(c)R^(2)_(d)Si(OR^(4))_(4-c-d) (II)
(式中、
R^(2)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、SiC結合した、所望により置換された、1?3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R^(3)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、SiC結合した、所望により置換された、少なくとも4個の炭素原子を有し、異原子および/またはカルボニル基により中断されていてよいヒドロカルビル基を表し、
R^(4)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、所望により置換されたヒドロカルビル基を表し、
cは、1、2または3であり、および
dは、0、1または2であるが、ただしcおよびdの合計は1、2または3である。)
のシラン(D)、および/またはその部分的水解物」と訂正する。

(エ)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「所望により(E)オルガノポリシロキサン、」と記載されているのを削除する。

(オ)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4に「前記混合物(A)は、前記シロキサン(C)よりも粘度が高い、」と記載されているのを、「前記混合物(A)は、前記シロキサン(C)よりも粘度が高く、前記シリカが親水性シリカである場合は、混合物(A)の製造の途中でその場で疎水化を行う、」と訂正する。

(カ)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5に「成分(A)、(D)、所望により(E)および所望により(H)を連続的に、または一緒に加え、」と記載されているのを、請求項4から「所望により(E)オルガノポリシロキサン、」の記載を削除する訂正に伴い「成分(A)、(D)、および所望により(H)を連続的に、または一緒に加え、」と訂正する。

2.検討
なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし5を「旧請求項1」ないし「旧請求項5」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし5を「新請求項1」ないし「新請求項5」という。

(1)訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。
上記訂正事項1ないし3は、いずれも旧請求項1ないし3を削除するものであるから、各請求項に係る特許請求の範囲を減縮するものと認められる。
上記訂正事項4ないし7は、いずれも、旧請求項1ないし3を削除する訂正に伴い、不明瞭となった事項につき単に補完するか(訂正事項4及び5の式に係る事項)、並列的選択肢又は任意的選択肢の一部を削除するか(訂正事項4ないし6)又は条件付の任意的技術手段を付加する(訂正事項7)ことにより、旧請求項4について新請求項4とするものであって、全体として、特許請求の範囲を減縮するものと認められる。
上記訂正事項8は、旧請求項4を引用する旧請求項5について、旧請求項4の訂正に伴い不整合となる部分を単に正したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものであって、新請求項4及び5についても各請求項に係る特許請求の範囲が減縮されているものと認められる。
してみると、上記訂正事項1ないし8による訂正により、新請求項4及び5に係る各特許請求の範囲が減縮されていることが明らかであって、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、上記訂正事項1ないし8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし8による訂正により、新請求項4及び5の特許請求の範囲がいずれも減縮されていることが明らかであるから、上記訂正事項1ないし8による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし8による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)一群の請求項について
上記(1)にも示したとおり、旧請求項2ないし5はいずれも旧請求項1を引用するものであるから、旧請求項1ないし5は、特許法第120条の5第4項でいう一群の請求項であることは明らかである。

(4)訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。

第5 本件特許に係る発明
上記第4で説示したとおり、上記本件訂正は適法であるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、訂正された請求項1ないし5にそれぞれ記載された事項で特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
有機ケイ素化合物の水性分散液を製造する方法であって、
シリカを含んでなる無機充填剤(B)、および式(I):
R_(a)(R^(1)O)_(b)SiO_((4-a-b)/2) (I)
(式中、
Rは、同一であるかまたは異なるものでよく、水素原子、または一価の、SiC結合した、所望により置換されたヒドロカルビル基であり、
R^(1)は、水素原子であり、
aは、0、1、2または3であり、
bは、0、1、2または3であるが、ただしaおよびbの合計は3以下である。)
の単位を含む、粘度が25℃で5?1000000mPasであるシロキサン(C)から実質的になり、粘度が25℃で10?10000000mPasである混合物(A)、
式(II):
R^(3)_(c)R^(2)_(d)Si(OR^(4))_(4-c-d) (II)
(式中、
R^(2)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、SiC結合した、所望により置換された、1?3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R^(3)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、SiC結合した、所望により置換された、少なくとも4個の炭素原子を有し、異原子および/またはカルボニル基により中断されていてよいヒドロカルビル基を表し、
R^(4)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、所望により置換されたヒドロカルビル基を表し、
cは、1、2または3であり、および
dは、0、1または2であるが、ただしcおよびdの合計は1、2または3である。)
のシラン(D)、および/またはその部分的水解物、の単位を含み、粘度が25℃で5?1000000mPasであるシロキサン(C)を混合することにより製造される、粘度が25℃で10?10000000mPasである混合物(A)と、
式(II)のシラン(D)および/またはその部分的水解物、
(F)乳化剤、
(G)水および
所望により
(H)さらなる物質、
と混合し、
前記混合物(A)は、前記シロキサン(C)よりも粘度が高く、前記シリカが親水性シリカである場合は、混合物(A)の製造の途中でその場で疎水化を行う、方法。
【請求項5】
成分(F)および成分(G)の一部を最初に装填し、成分(A)、(D)、および所望により(H)を連続的に、または一緒に加え、均一に混合し、次いで成分(G)の残りの量を加え、混合し、均質化する、請求項4に記載の方法。」
(以下、上記請求項1ないし5に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明5」という。また、併せて「本件発明」ということがある。)

第6 当審の判断

1.請求項1ないし3に係る異議申立について
本件異議申立に係る請求項1ないし3に対する申立は、上記第3及び第4で示したとおり、適法な訂正により請求項1ないし3の全ての内容が削除されたから、不適法なものであり、更にその補正ができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
そして、異議申立人が主張する取消理由1は、請求項1ないし3に係る特許に対するものであるから、取消理由1に係る申立てについては、以下検討を要さないものである。

2.請求項4及び5に係る異議申立について

(1)取消理由2について
申立人が主張する本件発明4及び5に対する取消理由2につき検討すると、上記甲1及び甲2(並びに甲3ないし甲13)には、いずれも、「シリカを含んでなる無機充填剤(B)」及び「式(I)」で表される「シロキサン(C)」とを混合して「混合物(A)」とした上で他の成分と混合する点に係る開示がない。
本件発明4及び5では、本件特許明細書に記載された各実施例と比較例との対比からみて、上記方法を採用することにより、各成分の分散性の改善などの特段の効果を奏しているものと認められる。
したがって、上記甲1ないし甲13に基づく取消理由2が成立するものとは認められない。
(なお、この理由につき先の取消理由通知では通知しなかった。)

(2)取消理由3について
申立人が主張する請求項4及び5に対する取消理由3につき本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき検討すると、請求項4に記載された事項を具備する方法の場合に、例えば、分散性が改善されない等の本件発明4では本件発明の解決すべき課題を解決することができないとするような事項が存するものとは認められない。
また、本件特許明細書に記載された各実施例と比較例との対比からみて、本件発明4の方法を採用することにより、各成分の分散性の改善などの特段の効果を奏しているものと認められる。
したがって、請求項4及び同項を引用する請求項5に記載された各発明が、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明に記載したものというべきである。
(なお、この理由についても先の取消理由通知では通知しなかった。)

(3)取消理由4について
申立人が主張する請求項4及び5に対する取消理由4につき検討すると、「所望により(H)さらなる物質」及び「所望により(H)を・・加え」などの任意付加的事項及び選択的事項が存するからといって、本件発明4又は5の「水性分散液を製造する方法」につき明確でないとすべき事情が存するものとは認められない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明を参酌すると、本件発明でいう「(H)さらなる物質」とは、「水性分散液にこれまで使用されている全ての添加剤」、いわゆる「常用の添加剤」を指すであろうことは、当業者が看取できるものと認められ、特異な物質を意味するものではないことも明らかである。
したがって、請求項4及び5の記載では、本件発明4及び5が明確であるというべきである。
(なお、この理由についても先の取消理由通知では通知しなかった。)

(4)取消理由5について
申立人が主張する請求項4に係る取消理由5につき本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき検討すると、本件特許明細書には「粘度」につき「混合物(A)」は25℃の温度条件(請求項4及び【0032】参照)でブルックフィールド粘度計で測定すること(実施例1など)が開示されているから、具体的な全ての測定条件が一括して明示されていないからといって、本件発明4の「水性分散液を製造する方法」を当業者が実施することができないとすべき事情が存するものとは認められない。
また、本件発明4における「シロキサン(C)」の「5?1000000mPas」なる範囲及び「混合物(A)」の「10?10000000mPas」なる範囲は、いずれも極めて広範な範囲であり、粘度「5?1000000mPas」の「シロキサン(C)」と「無機充填剤(B)」とを混合して「混合物(A)」を構成した場合に「10?10000000mPas」なる範囲の粘度を有するものとなるであろうことは、当業者の技術常識の範ちゅうに属する事項であると認められ、上記「粘度」に係る事項は、本件発明4を当業者が実施することの可否を左右する事項であるものとはいえない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、本件発明4を当業者が実施することができる程度に記載されているものというべきである。
(なお、この理由についても先の取消理由通知では通知しなかった。)

(5)小括
したがって、請求項4及び5に係る特許につき、申立人が主張する取消理由2ないし5により、取り消すべきものとすることはできない。

3.当審が通知した取消理由について
当審が通知した記載不備に係る上記新たな取消理由は、上記適法にされたものと認められる訂正により、請求項1ないし3がいずれも削除され、また、請求項4において「所望により(E)オルガノポリシロキサン」が削除されたことにより、いずれも解消されたものと認められる。
したがって、当該理由により、上記請求項4及び5に係る特許について、取り消すべきものとすることはできない。

第7 むすび
以上のとおり、申立人が主張する取消理由2ないし5によって、本件の請求項4及び5に係る発明についての特許につき、取り消すことはできない。
また、ほかに、本件の請求項4及び5に係る発明についての特許につき、取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許に対する本件異議申立は、不適法なものであり、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
有機ケイ素化合物の水性分散液を製造する方法であって、
シリカを含んでなる無機充填剤(B)、および式(I):
R_(a)(R^(1)O)_(b)SiO_((4-a-b)/2) (I)
(式中、
Rは、同一であるかまたは異なるものでよく、水素原子、または一価の、SiC結合した、所望により置換されたヒドロカルビル基であり、
R^(1)は、水素原子であり、
aは、0、1、2または3であり、
bは、0、1、2または3であるが、ただしaおよびbの合計は3以下である。)
の単位を含み、粘度が25℃で5?1000000mPasであるシロキサン(C)を混合することにより製造される、粘度が25℃で10?10000000mPasである混合物(A)と、
式(II):
R^(3)_(c)R^(2)_(d)Si(OR^(4))_(4-c-d) (II)
(式中、
R^(2)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、SiC結合した、所望により置換された、1?3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し、
R^(3)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、SiC結合した、所望により置換された、少なくとも4個の炭素原子を有し、異原子および/またはカルボニル基により中断されていてよいヒドロカルビル基を表し、
R^(4)は、同一であるかまたは異なるものでよく、一価の、所望により置換されたヒドロカルビル基を表し、
cは、1、2または3であり、および
dは、0、1または2であるが、ただしcおよびdの合計は1、2または3である。)
のシラン(D)および/またはその部分的水解物、
(F)乳化剤、
(G)水および
所望により
(H)さらなる物質、
と混合し、
前記混合物(A)は、前記シロキサン(C)よりも粘度が高く、前記シリカが親水性シリカである場合は、混合物(A)の製造の途中でその場で疎水化を行う、方法。
【請求項5】
成分(F)および成分(G)の一部を最初に装填し、成分(A)、(D)、および所望により(H)を連続的に、または一緒に加え、均一に混合し、次いで成分(G)の残りの量を加え、混合し、均質化する、請求項4に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-07-31 
出願番号 特願2014-503089(P2014-503089)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 536- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 孝泰  
特許庁審判長 小柳 健悟
特許庁審判官 西山 義之
橋本 栄和
登録日 2015-11-06 
登録番号 特許第5833221号(P5833221)
権利者 ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
発明の名称 有機ケイ素化合物の水性分散液  
復代理人 砂山 麗  
代理人 永井 浩之  
代理人 浅野 真理  
代理人 中村 行孝  
代理人 柏 延之  
代理人 柏 延之  
復代理人 砂山 麗  
代理人 浅野 真理  
代理人 朝倉 悟  
代理人 佐藤 泰和  
復代理人 小倉 あい  
代理人 小島 一真  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 永井 浩之  
復代理人 末盛 崇明  
代理人 佐藤 泰和  
復代理人 末盛 崇明  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 小島 一真  
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