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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A24F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A24F |
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管理番号 | 1332264 |
異議申立番号 | 異議2017-700075 |
総通号数 | 214 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-01-30 |
確定日 | 2017-08-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5963375号発明「空気流が改善されたエアロゾル発生装置及びシステム」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5963375号の請求項1?14に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5963375号(以下「本件特許」という。)の請求項1?14に係る特許についての出願は,平成28年7月8日付けでその特許権の設定登録がされ,平成29年1月30日付けで特許異議申立人山本美映子より全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 そして,その後の手続の経緯は次のとおりである。 平成29年 4月13日付け 取消理由通知 平成29年 7月18日付け 意見書提出(特許権者) 第2 本件発明 本件特許の請求項1?14係る発明(以下「本件発明1」等という。また,本件発明1?14をまとめて「本件発明」という。)は,特許請求の範囲の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 エアロゾル形成基材と,ユーザが前記基材を通って空気を吸い込むことを可能にするマウスピース部とを含む,エアロゾル形成物品と, エアロゾル発生装置と, を備える,エアロゾル発生システムであって, 前記装置は,近位端及び遠位端を有し,少なくとも1つの外側面及び1つの内側面を含むハウジングを備え,前記内側面は,前記エアロゾル形成基材を収容する,前記ハウジングの近位端において開口したキャビティを規定し,前記キャビティは,その近位端と遠位端との間の長手方向の空間と,前記キャビティ内で前記キャビティに収容したエアロゾル形成基材を加熱するように構成された加熱要素と,空気入口とを有し, 前記システムは,前記空気入口から前記キャビティの遠位端まで延び,前記キャビティの前記長手方向空間の少なくとも一部に沿って,前記加熱要素と前記ハウジングの前記外側面との間に延びる第1の空気流チャンネルと,前記キャビティの前記遠位端から前記マウスピース部に延びる第2の空気流チャンネルとを備え,前記加熱要素は,前記基材の中に延びるピン又は刃の形態であり,前記第1の空気流チャンネルの遠位端及び前記第2の空気流チャンネルの遠位端は,前記加熱要素の基部の周りに位置付けられた空気出口で交わる,エアロゾル発生システム。 【請求項2】 前記エアロゾル形成物品及び前記エアロゾル発生装置は,全体として前記第1及び第2の空気流チャンネルを通じて80mmH_(2)Oから120mmH_(2)Oの間の引き込み抵抗(RTD)をもたらす,請求項1に記載のエアロゾル発生システム。 【請求項3】 前記エアロゾル発生装置は,前記第1及び第2の空気流チャンネルを通じて10%を超えるRTDをもたらす,請求項2に記載のエアロゾル発生システム。 【請求項4】 前記第1の空気流チャンネルは,前記ハウジングの内側面と外側面との間に配置される,請求項1から3のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項5】 前記空気入口は,前記キャビティの近位端又はその近くににある,請求項1から4のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項6】 複数の空気入口を備える,請求項1から5のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項7】 前記空気入口又は複数の空気入口の全断面積は,3から5mm^(2)の間である,請求項1から6のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項8】 前記第1の空気流チャンネルの少なくとも一部は,前記加熱要素の長手方向範囲に対して平行に延びる,請求項1から7のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項9】 前記ハウジングは,本体及び基材保持部を備え,前記基材保持部は,前記本体から取り外し可能であり,前記キャビティを規定する内壁の少なくとも一部を構成し,前記空気入口は,前記基材保持部に形成されている,請求項1から8のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項10】 前記ハウジングは,本体及び基材保持部を備え,前記基材保持部は,前記本体から取り外し可能であり,前記キャビティを規定する内壁を構成し,前記出口は,前記基材保持部に形成されている,請求項1から8のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項11】 前記加熱要素は,前記装置の作動時に連続的にエアロゾル形成基材を加熱するように構成されている,請求項1から10のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項12】 前記ハウジングは略円筒形であり,10から20mmの間の最大直径を有する,請求項1から11のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。 【請求項13】 近位端及び遠位端を有し,少なくとも1つの外側面及び1つの内側面を含むハウジングであって,前記内側面が,エアロゾル形成基材を収容する,前記ハウジングの近位端において開口したキャビティを規定し,前記キャビティが,その近位端と遠位端との間の長手方向の空間を有するようになった,前記ハウジングと, 前記キャビティ内で前記キャビティに収容した前記エアロゾル形成基材を加熱するように構成された加熱要素と, 空気入口と, 前記空気入口から前記キャビティの遠位端まで延び,前記キャビティの前記長手方向空間の少なくとも一部に沿って,前記ハウジングの前記内側面と前記外側面との間を延びる第1の空気流チャンネルと, 前記キャビティの前記遠位端から前記キャビティの近位端まで延びる第2の空気流チャンネルと, を備え, 前記加熱要素は,前記基材の中に延びるピン又は刃の形態であり,前記第1の空気流チャンネルの遠位端及び前記第2の空気流チャンネルの遠位端は,前記加熱要素の基部の周りに位置付けられた空気出口で交わる,エアロゾル発生装置。 【請求項14】 前記装置は,前記キャビティ内にエアロゾル形成基材が存在しない場合,前記第1及び第2の空気流チャンネルを通じて5mmH_(2)Oから20mmH_(2)Oの間の引き込み抵抗(RTD)をもたらす,請求項13に記載のエアロゾル発生装置。」 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 請求項1?14に係る特許に対し,平成29年4月13日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1(明確性要件) 本件特許の請求項3の「前記エアロゾル発生装置は,前記第1及び第2の空気流チャンネルを通じて10%を超えるRTDをもたらす」という記載において,「10%を超える」というのが,何を100%としたときの10%であるのか明確でないので,請求項3?12に係る特許は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当し,取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1?14に係る発明は,その優先日前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物(甲第1?3号証)に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反するから,請求項1?14に係る特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。 記 甲第1号証 特表2001-521123号公報 甲第2号証 特表平11-503912号公報 甲第3号証 英国特許出願公開第2473264号明細書 2 当審の判断 (1)取消理由1(明確性要件)について 請求項3は,請求項2を引用する形式で記載されるところ,上記第2によれば,請求項2には次の事項が記載されている。 「【請求項2】 前記エアロゾル形成物品及び前記エアロゾル発生装置は,全体として前記第1及び第2の空気流チャンネルを通じて80mmH_(2)Oから120mmH_(2)Oの間の引き込み抵抗(RTD)をもたらす,請求項1に記載のエアロゾル発生システム。」 そうすると,請求項3の「前記エアロゾル発生装置は,前記第1及び第2の空気流チャンネルを通じて10%を超えるRTDをもたらす」という事項が,エアロゾル形成物品及びエアロゾル発生装置が全体としてもたらすRTDを基準(100%)として,エアロゾル発生装置がそのうちの10%を超えるRTDをもたらすということを意味していることは,当業者にとって明らかである。 よって,請求項3?12に係る特許は,上記取消理由1によって取り消されるべきものであるとすることはできない。 (2)取消理由2(進歩性)について ア 本件発明1?12について 甲第1号証の図6ないし10から把握される発明(以下「甲1発明」という。)と,本件発明1とを対比すると,少なくとも次の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1では,加熱要素は,基材の中に延びるピン又は刃の形態であるのに対して,甲1発明では,加熱要素37は,たばこ23の外周を包囲する実質円筒形の形態である点。 上記相違点1について検討する。 特許異議申立人が特許異議申立書37ページ1?9行で主張するように,甲第2号証の図22及び図23や,甲第3号証のFIG.1にはいずれも,上記相違点1に係る本件発明1の「加熱要素は基材の中に延びるピン又は刃の形態である」という事項(以下「加熱要素事項」という。)に相当するものが開示されている。 そこで,甲1発明に上記加熱要素事項を適用できるかについて検討するに,甲第1号証には,空気流路に関して次の記載がある。(下線は当審が付した。) 「 【0095】 ここで図10を参照すると,喫煙中に喫煙者がたばこ23を吸い込むと,空気は,マニホールド350から,フリット360およびシールリング340のポート352を経て,外側環状流路410に沿って吸い込まれる。その時,空気は,一方向(図10において矢印464によって概略的に示してある)に吸い込まれるが,この方向は,煙が喫煙者によってたばこから吸い込まれる全体的方向(図10において矢印466によって概略的に示してある)と全体的に逆である(逆流)。前に述べたように,空気が外側環状流路410に沿って吸い込まれた後,2次ヒータ要素(クリーナーカン)400の端部分396の周りに,ベース部300に設けられたノッチ394を介して吸い込まれ,内側環状流路420へ浸入する。端部分396の周りでの空気の方向転換により,空気流の方向(図10において矢印468によって概略的に示してある)が定まり,この方向は,煙が喫煙者によってたばこ23から吸い込まれる方向466に対し全体的に並流である。ヒータ取付具は,たばこのエアロゾルが作動中のヒータ要素37の所で生じている場所の上流であり,そこから離間されている場所(カン400の端部分396の周り)で空気を方向転換させており,そのため,加熱場所で生じる乱れは少なくなり,たばこのエアロゾルの不要な分散がヒータ要素120の所またはその周りで生じることが少なくなる。排出されないたばこのエアロゾルは,ライタの内部機構の周りに凝縮物を生成する。」 「 【0097】 通常,空気は,即時または先行の吸煙サイクルによる炭化によって生じた巻紙71およびたばこウェブ66の破れを通って内側環状流路420からたばこ23の中に横から吸い込まれる。しかし,最初にたばこ23を吸煙するには,上記の破損箇所はまだ作られていない。最初の吸煙とそれ以外との違いを最小にするために,別の空気流路が,バイパスチャンネル390によって設けられており,これは,代わりに空気を外側環状流路410から止め182に接するたばこ21の自由端部まで誘導する。最初の吸煙が進みその後の吸煙に向かうと,たばこの巻紙71およびたばこウェブ66は破られ,このような破れは,バイパスチャンネル390によって画成された空気流路を短絡し,その流れは,前述の流れのパターンで特徴的に流れる。」 上記【0095】によれば,甲1発明は,本件発明1の「第2の空気流チャンネル」に相当する「内側環状流路420」を備えるものである。そして,喫煙者がタバコ23を吸い込んだ際に,外側環状流路に沿って吸い込まれる空気は,外側環状流路410からクリーナカン400の端部分396の周りに,ベース部300に設けられたノッチ394を介して吸い込まれ,内側環状流路420へ侵入することが分かる。 他方,上記【0097】によれば,内側環状流路420は,空気を,「吸煙サイクルによる炭化によって生じた巻紙71およびたばこウェブ66の破れを通ってたばこ23の中に横から吸い込まれる」ために設けられるものである。 ここで,「吸煙サイクルによる炭化によって生じた巻紙71およびたばこウェブ66の破れを通ってたばこ23の中に横から吸い込まれる」という態様は,甲1発明の加熱要素37が,たばこ23の外周を包囲する実質円筒形の形態であることから生じるものである。仮に,これが上記加熱要素事項のように,加熱要素が基材の中に延びるピン又は刃の形態である場合には,加熱要素による加熱は基材(たばこ)の内部で行われるから,上記のような態様は想定し得ない。 そうすると,甲1発明の内側環状流路420等の空気流路に係る構成は,その加熱要素37が,たばこ23の外周を包囲する実質円筒形の形態であることと技術的に密接に関連するものといえる。仮に,甲1発明の加熱要素37に上記加熱要素事項を適用した場合には,空気は,「吸煙サイクルによる炭化によって生じた巻紙71およびたばこウェブ66の破れを通ってたばこ23の中に横から吸い込まれる」ことはなくなるから,内側環状流路420は,廃止されることを含め構成の変更を余儀なくされるものである。そして,これはこの内側環状流路420に空気を侵入させるノッチ394等についても同様である。 加えて,上記加熱要素事項は,甲1発明との関係からみて,電気喫煙システムにおける公知技術のひとつという以上のものではないところ,上記事情を踏まえれば,甲1発明に上記加熱要素事項を適用する動機付けは見出せない。また,仮に適用したとしても,上述のように,甲1発明の内側環状流路420やノッチ394等に係る構成は廃止又は変更され,本件発明1と一致するものでなくなる蓋然性がきわめて高い。 よって,本件発明1は,甲1発明と上記加熱要素事項とに基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,本件発明2?12は,本件発明1を更に減縮したものであるから,同様の理由により,甲1発明と上記加熱要素事項とに基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明13,14について 甲1発明と本件発明13とを対比すると,少なくとも次の点で相違する。 <相違点2> 本件発明13では,加熱要素は,基材の中に延びるピン又は刃の形態であるのに対して,甲1発明では,加熱要素37は,たばこ23の外周を包囲する実質円筒形の形態である点。 上記相違点2について検討するに,これは上記アの相違点1と実質的に同じものであり,判断済みである。 よって,本件発明13は,上記アと同様の理由により,甲1発明と上記加熱要素事項とに基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,本件発明14は,本件発明13を更に減縮したものであるから,同様の理由により,甲1発明と上記加熱要素事項とに基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上のとおり,請求項1?14に係る特許は,上記取消理由2によって取り消されるべきものであるとすることはできない。 第4 むすび 以上より,上記取消理由通知に記載した取消理由によっては,請求項1?14に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1?14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-08-22 |
出願番号 | 特願2014-550688(P2014-550688) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(A24F)
P 1 651・ 121- Y (A24F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 豊島 ひろみ |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
莊司 英史 中村 則夫 |
登録日 | 2016-07-08 |
登録番号 | 特許第5963375号(P5963375) |
権利者 | フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム |
発明の名称 | 空気流が改善されたエアロゾル発生装置及びシステム |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 近藤 直樹 |