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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A61B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61B
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A61B
管理番号 1332456
審判番号 訂正2017-390037  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2017-05-25 
確定日 2017-09-14 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3609289号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3609289号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3609289号は、平成11年6月2日を出願日とする特願平11-155753号として特許出願され、平成16年10月22日に特許権の設定登録がなされたものであり、その後、平成29年5月25日に本件訂正審判の請求がなされ、さらに請求人より平成29年6月12日付け上申書及び平成29年6月23日付け上申書が提出されたものである。

第2 請求の趣旨
本件審判請求の趣旨は、特許第3609289号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正事項
1 訂正事項a1
請求項1に「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、」とあるのを、「裏面に水溶性の糊がコーティングされると共に表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、」に訂正する。(下線部を付した。以下同様。)

2 訂正事項a2
請求項1に「該保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するインク層と、」とあるのを、「該保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成するインク層と、」に訂正する。

3 訂正事項b
明細書の段落[0005]に「・・・表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と、該保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを形成するインク層と、・・・」とあるのを、「・・・裏面に水溶性の糊がコーティングされると共に表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と、該保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成するインク層と、・・・」に訂正する。

第4 当審の判断
1 訂正の目的について
(1) 訂正事項a1について
基台紙の裏面について、訂正前の請求項1に係る発明では何ら特定されていないのに対し、訂正後の請求項1に係る発明では「裏面に水溶性の糊がコーティングされる」と特定されるものであり、基台紙の裏面の構成を具体的に限定するものであるから、訂正事項a1は特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2) 訂正事項a2について
基台紙に印刷されるマークとインク層に形成されるマークの位置関係について、訂正前の請求項1に係る発明では何ら特定されていないのに対し、訂正後の請求項1に係る発明では「前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に」と特定されるものであり、これらマークの位置関係を具体的に限定するものであるから、訂正事項a2は特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(3) 訂正事項bについて
訂正事項bは、訂正事項a1及びa2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明細書の段落[0005]の記載を訂正するものであるから、訂正事項bは、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(4) 小括
したがって、訂正事項a1、a2及びbは、特許法第126条第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

2 新規事項について
(1) 訂正事項a1について
願書に添付した明細書には、「【0011】・・・なお、基台紙5の裏面には水溶性の糊がコーティングされている。」、「【0013】・・・すると、基台紙5にコーティングされている水溶性の糊が溶けて保護シート層7が基台紙5から剥がれ易くなると共に、接着層11が患者の皮膚に対してしっかりと接着する。・・・」と記載されている。
したがって、基台紙を、その裏面に水溶性の糊がコーティングされるものとすることは、願書に添付した明細書に記載されているといえる。

(2) 訂正事項a2について
願書に添付した明細書には、「【0006】・・・ここで、基台紙を患部に貼り付ける際には、その表面に印刷されているマークによってどこに貼り付けたらよいかが容易に判明する。そして、患者の皮膚にはこのマークと同一のマークからなる目印が転写されるので、鮮明で正確な目印を患者の皮膚にマーキングすることができる。・・・」、「【0013】この放射線治療用ラインマーカー1を使用するに当たっては、まず、保護紙13を剥がした後に、患者の患部の皮膚に対して、基台紙3の表面に印刷されているライン3にて位置を合わせながら接着層11を押し付ける様に基台紙5を貼り付ける。・・・」と記載されている。
そして、基台紙の表面に印刷されたマークで位置を合わせながらインク層のマークを皮膚に転写すると、皮膚に正確なマーキングを行えるということは、その前提として、基台紙の表面に印刷されたマークとインク層のマークが同一の投影位置に存在することを要する。なぜならば、仮に、これらマークの投影位置が異なっている場合、基台紙の表面に印刷されたマークで位置を合わせながらインク層のマークを皮膚に転写すると、皮膚のどこにマーキングされるか不明であり、正確なマーキングを実現できないからである。
したがって、基台紙に印刷されたマークと同一のマークを基台紙の表側と保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成することは、願書に添付した明細書に記載されているといえる。

(3) 訂正事項bについて
前記1(3)に示したとおり、訂正事項bは、訂正事項a1及びa2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。
そして、訂正事項a1及びa2に係る訂正は、前記(1)及び(2)において検討したとおり、願書に添付した明細書の記載に基づくものであるから、訂正事項a1及びa2と内容が整合している訂正事項bについても、願書に添付した明細書の記載に基づくものであるといえる。

(4) 小括
したがって、訂正事項a1、a2及びbは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合する。

3 特許請求の範囲の拡張又は変更について
(1) 訂正事項a1及びa2について
訂正事項a1及びa2は、いずれも発明特定事項を直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2) 訂正事項bについて
前記1(3)に示したとおり、訂正事項bは、訂正事項a1及びa2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものである。
そのため、訂正事項bに係る訂正により、特許請求の範囲に記載された事項の解釈に影響を与えるものではないから、訂正事項bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3) 小括
したがって、訂正事項a1、a2及びbは、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

4 独立特許要件について
本件訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項を含むものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

訂正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】 裏面に水溶性の糊がコーティングされると共に表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、
該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と、
該保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成するインク層と、
該インク層の裏面に積層されている接着層と、
該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成され、
前記保護紙を剥がして、前記基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して、各種の治療の際の目印となり、前記保護シート層、インク層及び接着層が皮膚に対して柔軟性に富み、かつ摩擦に強いものである治療用マーカー。
【請求項2】 請求項1記載の治療用マーカーにおいて、
前記保護シート層が、ポリエステル系インクによって形成されており、
前記インク層が、ポリエステル系インクによって形成されており、
前記接着層が、アクリル系接着剤によって形成されていること
を特徴とする治療用マーカー。
【請求項3】 請求項1又は2記載の治療用マーカーにおいて、
前記インク層として、自然太陽光や屋内照明として用いられる蛍光灯や白熱灯に対しては発色せず、ブラックライトのみによって発色するインクを用いていること
を特徴とする治療用マーカー。」
(以下、訂正後の請求項1?3に記載されている事項により特定される発明を、それぞれ「本件訂正発明1」?「本件訂正発明3」という。)

ここで、請求人は、平成29年6月12日付け上申書において、本件特許に係る侵害訴訟の一審判決(東京地方裁判所 平成26年(ワ)第21436号 特許権侵害差止請求事件 平成28年7月22日判決言渡)及び二審判決(知的財産高等裁判所 平成28年(ネ)第10083号 特許権侵害差止請求控訴事件 平成29年5月18日判決言渡)を引用し、以下の特許無効の抗弁がなされた旨、上申している。

無効理由1:サポート要件違反及び実施可能要件違反
無効理由2:明確性要件違反
無効理由3:乙第1号証及び乙第2?4号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
無効理由4:乙第9号証及び乙第1、3号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
無効理由5:乙第1号証及び乙第9号証に記載された発明に基づく進歩性欠如
無効理由6:明確性要件違反(プロダクト・バイ・プロセスクレーム)

また、請求人は、二審判決において以下の無効理由について理由ありとされた旨、上申している。

無効理由5改:乙第1号証及び乙第2、3、9号証に記載された発明に基づく進歩性欠如

そこで、これら無効理由1?6及び5改の観点から、本件訂正発明1?3が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1) 無効理由1について
ア 特許無効の抗弁の概要
訂正前の請求項1における「基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層」との記載では、基台紙の裏面に直接保護シート層が積層されるものとも、基台紙の裏面に介在層を挟んで保護シート層が積層されるものとも解釈できる。
そして、基台紙の裏面に介在層を挟んで保護シート層が積層されるものと解釈した場合、本件明細書等にはそのような介在層が存在する場合の構造について開示がないことから、サポート要件違反及び実施可能要件違反である。(一審判決の第3 2〔被告の主張〕(1)を参照。)

イ 判断
訂正後の請求項1には「裏面に水溶性の糊がコーティングされると共に表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層」と記載されており、基台紙(5)の裏面に水溶性の糊のコーティングを介在して保護シート層(7)を積層するものであるから、水溶性の糊のコーティングが介在層として存在する発明であることが明らかとなった。
一方、本件明細書等には、「・・・基台紙5の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層7・・・によって構成されている。なお、基台紙5の裏面には水溶性の糊がコーティングされている。」(段落[0011]を参照。)、「・・・基台紙5に水分を十分に含ませる。すると、基台紙5にコーティングされている水溶性の糊が溶けて保護シート層7が基台紙5から剥がれ易くなる・・・」(段落[0013]を参照。)との記載があり、水溶性の糊のコーティングが介在層として存在することについて開示がある。
そうすると、本件訂正発明1、すなわち水溶性の糊のコーティングが介在層として存在する発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。また、前記開示の内容に基づいて、本件訂正発明1の構造や使用方法を把握することができるため、発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

ウ 小括
したがって、本件訂正発明1はサポート要件に違反するものではなく、また、発明の詳細な説明は実施可能要件に違反するものではない。

(2) 無効理由2について
ア 特許無効の抗弁の概要
(ア) 「裏面に」について
訂正前の請求項1における「基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層」との記載では、基台紙の裏面に直接保護シート層が積層されるものとも、基台紙の裏面に介在層を挟んで保護シート層が積層されるものとも解釈でき、基台紙と保護シート層との間に介在層が存在するのか否かを特定することができないことから、明確性要件違反である。
また、基台紙の裏面に介在層を挟んで保護シート層が積層されることを意味するとした場合、介在層の具体的な構成(どのような膜をどのような膜厚で何種類含んでよいかなど)が不明であることから、明確性要件違反である。(一審判決の第3 2〔被告の主張〕(2)アを参照。)

(イ) 「透明な」について
訂正前の請求項1における「透明な保護シート層」との記載について、光の波長や透過率が特定されていないため、「透明」の技術的範囲が不明確であり、どのような保護シートであれば上記記載に包含されるのかを特定することができないことから、明確性要件違反である。(一審判決の第3 2〔被告の主張〕(2)イを参照。)

(ウ) 「治療用の目印」について
訂正前の請求項1における「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙」との記載では、基台紙に印刷されたマークを治療に用いるものと解釈できる。
しかしながら、同項には「前記基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して、各種の治療の際の目印となり」との記載もあり、皮膚に転写されたインク層のマークが治療に用いられるものの、治療の際には基台紙は剥がされて存在しないから、基台紙に印刷されたマークは治療に用いられないものと解釈できる。
そうすると、基台紙に印刷されたマークを治療に用いるか否かが整合していないことから、明確性要件違反である。(一審判決の第3 2〔被告の主張〕(2)ウを参照。)

イ 判断
(ア) 「裏面に」について
訂正後の請求項1には「裏面に水溶性の糊がコーティングされると共に表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙」と記載されており、基台紙(5)の裏面に水溶性の糊のコーティングが介在する、すなわち基台紙(5)の裏面に介在層を挟んで保護シート層(7)が積層されることが明らかとなった。
また、当該介在層は、「水溶性の糊のコーティング」からなり「基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写」するためのものであるから、その厚さや種類には限界があり、権利範囲が無限定に広まるものではない。
そうすると、「裏面に」という記載の技術的意義を把握することができるから、この記載が不明確であるということはできない。

(イ) 「透明な」について
訂正後の請求項1には「基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層」と記載されており、保護シート層(7)が透明であると解釈できる。
また、発明の詳細な説明の段落[0006]によれば、「透明な」とは、患者の皮膚に転写されたインク層(9)が保護シート層(7)によって保護されながらも、「各種の治療の際の目印とすることができる。」、すなわち、皮膚に転写された治療用のマークが、保護シート層(7)を通してインク層(9)を目印として使用できる程度に目視できるものと解釈できる。
そうすると、「透明な」という記載の技術的意義を把握することができるから、この記載が不明確であるということはできない。

(ウ) 「治療用の目印」について
訂正後の請求項1には「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、・・・前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成するインク層」と記載されており、基台紙(5)の「治療用の目印となるマーク」とインク層(9)の「マーク」は、同一であり投影位置も同一であると解釈できる。
そして、発明の詳細な説明の段落[0013]によれば、患者の皮膚に転写されたインク層(9)を放射線治療の目印とすることができるため、インク層(9)の「マーク」は「治療用の目印」であり、これと同一である基台紙(5)の「マーク」も「治療用の目印」であるということができる。
そうすると、訂正後の請求項1における「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙」という記載について、「治療用の目印」という記載が不明確であるということはできない。

ウ 小括
したがって、本件訂正発明1は、明確性要件に違反するものではない。

(3) 無効理由3、5、5改について
ア 特許無効の抗弁の概要
(ア) 無効理由3
訂正前の請求項1に係る発明は、乙第1号証に記載された発明及び乙第2号証?乙第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることから、進歩性を有しない。(一審判決の第3 2〔被告の主張〕(3)を参照。)

(イ) 無効理由5
訂正前の請求項1に係る発明は、乙第1号証に記載された発明及び乙第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得ることから、進歩性を有しない。(二審判決の第2 3(2)(控訴人の主張)イを参照。)

(ウ) 無効理由5改
訂正前の請求項1に係る発明は、乙第1号証に記載された発明並びに乙第9号証に記載された発明並びに乙第2号証及び乙第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることから、進歩性を有しない。(平成29年6月12日付け上申書の4(2)(2-3)を参照。)

イ 刊行物の記載
乙第1号証:特開平8-207499号公報
乙第2号証:実願昭63-84323号(実開平2-10096号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
乙第3号証:特許第2891256号公報
乙第4号証:米国特許第5306271号明細書
乙第9号証:米国特許第5743899号明細書

(ア) 乙第1号証
乙第1号証には、次の記載がある。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、各種被着体、特に皮膚、レザージャンパー、各種のボール等の屈曲性及び/又は伸縮性(以下、『屈曲・伸縮性』とする)を有する被着体に貼って好適な転写シールに関する。詳しくは、貼り易く、特に屈曲・伸縮性被着体に貼り付けた後の該被着体の屈曲や伸縮による転写後シールのひび割れや剥がれを無くすことができ、更に使用後は剥がれ易くするために、特定の特性を有する伸縮可能の透明弾性層をスクリーン印刷により剥離性シート上に設け、該透明弾性層の上面に着色印刷インキ層、粘着剤層、剥離性シートを順次設けたことを特徴とする皮膚用の入れ墨転写シールを含めた各種用途の転写シールに関する。」

「【0002】【従来の技術】各種の転写シール、例えば入れ墨転写シールは、水転写タイプ、有機溶剤転写タイプ、粘着転写タイプ等のものが知られている。粘着転写タイプシールの基本的構造は実公昭第40-36198号公報に開示されている。即ち、例えば、シリコーン樹脂等で処理した剥離紙上に、透明な印刷層を設け、その上面に多色の印刷を施すことによって所要の印刷層を形成し、更にその上面に感圧性粘着剤層を設け、更にその上面に剥離紙を貼着してなる使用時において透明な印刷層及び上記所要の多色印刷層のみを感圧性粘着剤層を介して目的物に転着せしめるごとくした転写マークである。透明な印刷層は、目的物に転写後の多色印刷層を保護する。」

「【0003】【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、従来の入れ墨転写シールは、インキ・接着剤層等が適切な特性を有しないため、皮膚への追随性が悪く絵柄がひび割れしたり、皮膚に貼着・使用後にこれを剥がそうとする時、剥離が非常に困難で、溶剤で拭いたり、ゴシゴシ擦って取り除く必要があり、皮膚を痛める原因となっていた。」

「【0004】このため、皮膚に貼着する場合も貼る場所を制限され、近年流行の顔に貼り付けたりする場合なども、使用後の『剥がし』が問題となり、非常に剥がし難いため、溶剤やクレンジングクリーム等の薬剤の使用やゴシゴシ擦る必要があり、果ては、皮膚の破壊にもつながっていた。勿論、皮膚以外の被着体に貼着する場合は、皮膚の破壊という問題等は無いにしても、従来の転写シールが非常に剥がし難いという問題は解決されていなかった。」

「【0005】本発明は、転写後に着色印刷層を保護する透明印刷層を有し、且つ、上述したような従来技術の欠点を解消することができる優れた皮膚を被着体とする入れ墨転写シールや屈曲・伸縮性物品等を被着体とする転写シール等の各種用途の転写シールを提供することを目的とするものである。」

「【0019】本発明の転写シールの被着体への貼着手順は、先ず、セパレーターとしての剥離性シートを剥がし、粘着剤層により皮膚、その他の被着体に圧接・貼着し、透明弾性層上の剥離性シートを剥がす。」

「【0024】実施例1 剥離性を付与するシリコーン系化合物を塗布処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(剥離性シート)1の上に日本ポリウレタン工業(株)製のポリウレタン『パラプレン(商品名)』100重量部に日本ポリウレタン工業(株)製の可塑剤『デスモフェン800(商品名)』80重量部を加え、シクロヘキサノンで適当な粘度の溶液となるように調整し、この溶液をスクリーン印刷し、約15μm厚みの透明弾性層2を形成した。この透明弾性層2の上に平版オフセット印刷により多色網点印刷を行い着色印刷インキ層3を形成した。この着色印刷インキ層の上に、ブチルアクリレート-エチルアクリレート共重合体アクリル系粘着剤溶液をスクリーン印刷し、乾燥厚み約15mμの粘着剤層4を形成した。この上にセパレーターとしての剥離紙5を重ね、『図1』の断面構造のような本発明の転写シールとした。なお、上記アクリル系粘着剤は、上記の乾燥厚みで、JIS-Z0237で粘着強度を測定して、約500g/25mm巾前後の粘着強度を示すものである。」

「【0025】剥離紙上に上記のポリウレタンと可塑剤の溶液のみをスクリーン印刷し、約15μmの透明弾性フィルムを形成し、これを剥離紙から剥がして破断伸度と100%モジュラスを測定したところ、破断伸度は約300%、100%モジュラスは約25kg/平方cmであった。」

「【0027】【発明の効果】本発明の転写シールは、被着体に貼り易く、皮膚や屈曲・伸縮性物品等の被着体に貼着後、該皮膚や屈曲・伸縮性物品等の屈曲や伸縮に追随可能であり、絵柄のひび割れや崩れが無く、使用中に剥がれ落ちることも無い。使用後は、剥離が容易である。また、マークの周りにはみ出した粘着剤のためにこの部分の汚れが激しい従来の入れ墨転写シールに比べ、かかる汚れを最小限にすることもできる。本発明の転写シールは、貼り易く、使用中は絵柄のひび割れや崩れがなく、剥がれ落ちることもなく、使用後は非常に簡単に剥離し得る皮膚用の転写シールとして特に好ましく用いることができる。本発明の転写シールがその効果を最も発揮するのは、皮膚や、レザージャンパー、レザーバッグ、各種ボール(サイン転写シールとしても用いることができる)等の屈曲・伸縮性物品を被着体とする時であるが、勿論、硬質の金属、ガラス、陶磁器、プラスチック成形品、その他の物品を被着体とする時にも使用できることは明らかで、この場合も貼り易く且つ使用後の剥離は容易である。」

これら記載及び図1の記載からみて、乙第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「乙1発明」という。)。
「剥離性シート(1)と、
剥離性シート(1)の裏面に剥離可能に積層されている透明弾性層(2)と、
透明弾性層(2)の裏面に積層された着色印刷インキ層(3)と、
着色印刷インキ層(3)の裏面に積層されている粘着剤層(4)と、
粘着剤層(4)の裏面に剥離可能に積層されているセパレーター(5)とによって構成され、
セパレーター(5)を剥がして、粘着剤層(4)を皮膚に押し当てることにより、粘着剤層(4)、着色印刷インキ層(3)及び透明弾性層(2)を皮膚側に転写して、透明弾性層(2)、着色印刷インキ層(3)及び粘着剤層(4)が皮膚に対して柔軟性に富み、かつ摩擦に強いものである
転写シール。」

また、以上の記載から、乙1発明の技術的意義は、転写シールの技術分野において、従来、皮膚に貼り付けた後、皮膚への追随性が悪かったり剥がしにくかったりするという問題を解決しようとするものであり、転写シールが皮膚等の屈曲・伸縮に追随できるようにするとともに、透明弾性層が比較的強靱なため剥離が容易であるとの作用効果を得ることであると認められる。

(イ) 乙第2号証
第1ページ第10行?第2ページ第13行、第3ページ第8行?第5ページ第15行、第1図?第4図の記載からみて、以下の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「乙2事項」という。)。
「基材(1)、前処理層(2)、マーク層(3)、粘着剤層(4)、離型シート(5)の5層からなる転写マークについて、
マーク層(3)に形成されたマークの貼り付け位置を正確にするために、基材(1)を透明又は半透明とした上で、
位置決め用のラインを印刷しておくこと。」

(ウ) 乙第3号証
段落[0002]?[0004]の記載からみて、以下の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「乙3事項」という。)。
「入れ墨転写シールを含む各種の転写シールには、転写紙の糊層を水で膨潤・溶解させる水転写タイプ、転写紙の糊層を有機溶剤で膨潤・溶解させる有機溶剤転写タイプ、水や有機溶剤を使用せず皮膚に貼り付け転写剥離紙を剥がす粘着転写タイプ等のものが知られていること。」

(エ) 乙第4号証
第1欄第24行?同第27行、第1欄第65行?第2欄第18行、第3欄第53行?同第59行、第4欄第28行?同第33行、Fig_1a、Fig_1c、Fig_1fの記載からみて、以下の技術的事項が記載されていると認められる(以下、「乙4事項」という。)。
「放射線治療が行われている間、患者の皮膚表面に放射線治療用のマーキングを付ける装置であって、平坦で接着剤がコーティングされたテープ状の構造を有し、支持ライナー(12)上に剥離可能に設けたラインマーカー(18)に、長辺に平行な線(38)を短辺間に延在させること。」

(オ) 乙第9号証
乙第9号証には、次の記載がある(和文は当審による訳文である。)。
a 「TECHNICAL FIELD The present invention relates to improvements in devices used to delineate radiation therapy portal areas of patients to be treated with radiation. More specifically, it relates to delineating such areas by applying marking devices of various shapes onto the patient's skin.」(第1欄第3行?同第9行)(発明の属する技術分野 本発明は、放射線で治療すべき患者の放射線治療ポータル領域を区別するために用いられる装置の改良に関するものである。より具体的には、患者の皮膚上に様々な形状のマーキング装置を適用することによって、当該領域を区別することに関するものである。)

b 「The present inventor is a named inventor on two prior patents relating to this field of art. In U.S. Pat. No. 5,306,271, issued Apr. 26, 1994 and U.S. Pat. No. 5,407,440, which is a continuation of the inventors' '271 patent, issued Apr. 18, 1995, a radiation therapy skin marker is taught which is applied to the patient's skin without the problems associated with conventional markers. The marking device comprises adhesive-coated tape-like structures in various shapes which are used to denote the perimeter, isocenter(s) and set-up points of radiation treatment portals on the skin of patients undergoing radiation therapy. The device may be reliably retained in its original position for up to seven days, may be repositioned easily without risk to patient or personnel and is removable without leaving any permanent traces on the patient's skin.
The prior art skin marking device is safe and effective, however, practical experience has taught the inventor that limitations arise when the device is intentionally removed or becomes otherwise detached from the patient's skin. Although the prior art device can be retained adhesively for up to seven days, commonly it is removed or detached from the patient's skin during the course of treatment, or between treatments, resulting in loss of the portal field markings and requiring repositioning and remarking.」(第1欄第34行?同第57行)(本発明者は、当該分野における2件の先行特許の発明者でもある。1994年4月26日発行の米国特許5,306,271及び当該271特許の継続案件である1995年4月18日発行の米国特許5,407,440には、従来のマーカーに関連した問題を伴うことなく、放射線治療皮膚マーカーが患者の皮膚に適用されることが示されている。マーキング装置は接着剤がコーティングされた様々な形のテープ状の構造を有し、放射線治療を受ける患者の皮膚に放射線治療ポータル領域の周辺域やアイソセンター、セットアップポイントを示すために用いられる。この装置は、最長7日間は確実に元の位置に保持されてもよく、また、患者や担当者の危険を伴わずに再度の位置決めをしてもよく、患者の皮膚に永続的な痕跡を残すことなく取り外すこともできる。
従来技術の皮膚マーキング装置は安全かつ有効であるが、意図的に又はその他の方法で患者の皮膚から取り外された場合、限界が生じることを実際の経験により発明者に教示している。従来の当該装置は、最大7日間接着保持されるが、一般的には放射線治療期間中、例えば、治療から次の治療までの間に患者の皮膚から取り外されることがあり、放射線治療ポータル領域のマーキングが失われるため、再度の位置決め及びマーキングが必要となる。)

c 「It is an object of the present invention to improve upon devices used to delineate radiation therapy portal areas of patients to be treated with radiation by providing a novel device which deposits marking lines from a marker releasably applied to the patient's skin. The device presented allows for the portal line markings to remain on the patient's skin after the adhesive pieces have been detached or removed.
The object is achieved by a device comprising flat, adhesive-coated tape-like structures in various shapes which are used to denote the perimeter, isocenter(s), and set-up points of radiation treatment portals on the skin of patients undergoing radiation therapy.」(第1欄第60行?第2欄第5行)(本発明の目的は、患者の皮膚に剥離可能に装着されるマーカーからマーキングラインを付着させる新たな装置を提供し、放射線処置を受ける患者の放射線治療ポータル領域を描く際に使用される装置を改善することである。この装置により、接着片が剥がされた又は取り外された後も、放射線治療ポータル領域のラインマーキングは患者の皮膚に残ることとなる。
この目的を達成するため、平坦で接着剤がコーティングされた様々な形のテープ状の構造を有する装置が使用され、放射線治療を受ける患者の皮膚に放射線治療ポータル領域の周辺域やアイソセンター、セットアップポイントを示す。)

d 「The ink lines comprising the portal field markings may be disposed on both the adhesive surface and the top surface. Alternatively, the ink lines may be disposed solely on the surface of the marker containing the adhesive; this alternative requires that the marker material be sufficiently transparent to allow the lines to remain observable through the marker while it is attached to the patient's skin. The markers are pealably released from the backing liner and the adhesive surface is attached to the patient's skin thereby delineating the desired portal markings either disposed on both surfaces or solely on the bottom adhesive surface and showing through the marker. The ink lines disposed on the adhesive surface of the marker are at least partially transferred to and received by the patient's skin so that the line markings continue to delineate the portal field even when the markers become detached, whether intentionally or accidentally.」(第2欄第11行?同第27行)(放射線治療ポータル領域のマーキングを構成するインクラインは、接着面及び頂面の双方に配置してもよい。あるいは、インクラインをマーカーの接着面に単独で配置する場合、マーカーを患者の皮膚に装着した状態でインクラインを視認できるよう、マーカーの材料は十分に透明であることが必要である。マーカーが支持ライナーから剥離され、その接着層が患者の皮膚に装着されると、マーカーの両面に配置されている所望の放射線治療ポータル領域が描かれるか、又は接着面のみに配置されている所望の放射線治療ポータル領域がマーカーを通して示される。マーカーの接着面に配置されたインクラインは、少なくとも部分的に患者の皮膚に移動かつ浸透し、マーカーが意図的又は偶発的に剥がれたとしても、ラインマーキングは放射線治療ポータル領域を描き続ける。)

e 「Upon application of the marker to the skin, a substantial amount of ink will initially remain with the adhesive coating for which it has a greater affinity. As the ink is absorbed into the first layer of skin an equilibrium distribution of ink will be established at the skin-adhesive coating interface. As subsequent layers of skin absorb the ink, the equilibrium distribution will shift in the direction favoring absorption of ink into the skin. Over time a substantial amount of ink will be transferred from the adhesive coating into the patient's skin.」(第2欄第45行?同第54行)(皮膚にマーカーを装着すると、当初は相当量のインクが親和性の高い接着層に残ることとなる。皮膚と接着層との境界面における平衡分布により皮膚の第1層にインクが吸収される。皮膚の第2層にインクが吸収されると、平衡分布の状態から皮膚にインクを吸収させる作用を推進する状態に移行する。時間の経過に伴って、相当量のインクが接着層から患者の皮膚へと移転する。)

f 「As shown in FIG. 1A, the backing liner 12 includes two die cuts 24a and 24b along its full length which define backing strips 14a and 14b. The die cuts 24a and 24b are designed in a way to facilitate the removal of backing strips 14a and 14b without disturbing the various markers 16, 18, 20, and 22 on the backing liner 12. FIG. 2 shows a perspective view of the present invention as a backing strip 14a is being removed. FIG. 3A shows a perspective view of the present invention after the removal of backing strip 14a.
As shown in FIGS. 2, and 3A, but irrespective of the shape or pattern of a particular marker, except for purposes of illustration, once the backing strip 14a has been removed, bottom surfaces of portions of the corner markers 16, the line markers 18, and the isocenter markers 20 are exposed. As described above, and depicted in FIG. 2A, the entire bottom surface of the markers 16, 18, 20, and 22 includes a pressure sensitive adhesive coating 64 into which is deposited an ink layer 66 in defined patterns. Backing liner 12 is coated with an appropriate, preferably silicon-based, ink-resistant release material to prevent the ink from being retained on the backing liner when the marker is released. Thus, when the bottom surfaces are exposed, the adhesive coating 64 is exposed which enables a radiation therapist to apply the markers onto the patient as shown in FIG. 3A. The ink line markings 66, placed into the adhesive coating 64, thereby come in contact with the patient's skin when the markers are positioned and attached. This allows line markings 66 to be impressibly deposited from the adhesive surface of marker 18 and received by the patient's skin. In its most preferred embodiment, the composition of the ink will be such that the patient's skin has a finite affinity for the ink thereby allowing an equilibrium to be established at the skin-adhesive coating interface. Transfer of ink into the patient's skin is achieved by the driving of the equilibrium in the direction favoring absorption into the skin effected by successive absorption into subsurface skin layers. Thus, with reference to FIG. 2A, the ink line markings 66 are disposed into the adhesive coating 64 on the bottom surface of marker 18, the surface by which line marker 18 is releasably mounted onto backing liner 12. It is preferred but not required that the substrate material from which each marker is made be substantially transparent so that ink deposited into or on adhesive coating 64 can be seen through the adhesive and the marker 16 once the marker is applied to the patient's skin. Alternatively, if a substrate material is selected which is not sufficiently transparent to achieve this objective, then it is again preferred but not required that the line markings 66 be recreated, identically and in the same position, on the top surface of each marker.」(第4欄第57行?第5欄第38行)(図1Aに示されるように、支持ライナー12には、その全長に沿って2つの切り込み24a、24bがあり、支持片14a、14bが形成される。これら切り込み24a、24bは、剥離台紙12上の各種マーカー16、18、20、22を乱すことなく、支持片14a、14bを容易に取り除くことができるようにされている。図2は本発明の斜視図であり、支持片14aが取り除かれる様子を示している。図3Aは本発明の斜視図であり、支持片14aが取り除かれた後の様子を示している。
図2及び図3Aに示されるように、図示を目的とした特定マーカーの形状やパターンとは関係なく、一旦、支持片14aが取り除かれると、コーナーマーカー16やラインマーカー18、アイソセンタマーカー20の下面が露出される。以上、図2Aにも示したように、マーカー16、18、20、22の全底面には感圧粘着剤の接着層64があり、この接着層64には所定パターンのインク層66が設けられる。支持ライナー12は適切な、好ましくはシリコン系の耐インク性剥離材料でコーティングされており、マーカーが剥がされた際にインクが支持ライナー12上に残らないようにしてある。そして、底面が露出されると、接着層64も露出され、図3Aに示されるように、放射線療法士によってマーカーが患者に取り付けられる。マーカーが患者の皮膚に位置決めされ、取り付けられると、接着層64内に配置されたインクラインマーキング66は、患者の皮膚に接触する。このようにして、インクラインマーキング66は、マーカー18の接着面から患者の皮膚に移転する。最良の実施形態では、患者の皮膚がインクに対する有限の親和性を有し、それによって皮膚と接着層との境界面で平衡状態となるようなインクの組成となっている。皮下吸収作用により皮膚に吸収させる方向の作用を推進することで、患者の皮膚内にインクが移動する。図2Aによれば、インクラインマーキング66はマーカー18の底面にある接着層64に設けられており、このマーカー18の底面は支持ライナー12に着脱可能に設けられている。必須ではないが好ましくは、マーカーの基材材料は実質的に透明であり、これによりマーカーが患者の皮膚に取り付けられたとき、接着層64内又は接着層64上に配置されたインクを、接着剤及び基材を通して見ることができる。あるいは、この目的を達成するほどには透明でない基材材料が選択された場合には、必須ではないが好ましくは、マーカーの頂面にラインマーキング66と同じ形状のものを同じ位置に再構成する。)

g 「1. A device for marking skin surfaces comprising:
a substrate having a first and second surface;
an adhesive layer disposed on said second surface;
a first ink layer disposed on said adhesive layer, said first ink layer defining a pattern which is transferable onto said skin surface when placed in contact with said skin surface; and
a backing liner removably covering said adhesive layer and said first ink layer;
whereby said pattern may be subsequently and selectively removed from said skin surface.」(請求項1)(皮膚表面にマークを付ける装置において、第1面と第2面を有する基材と、前記基材の前記第2面に配置された接着層と、前記接着層に配置された第1インク層であって、前記皮膚表面に接触すると前記皮膚表面上に移動可能なパターンを定める第1インク層と、前記接着層と前記第1インク層を剥離可能に覆う支持ライナーとを備えており、その後、前記パターンを選択的に皮膚表面から除去することができる。)

h 「2. The device of claim 1 wherein a second ink layer defining said pattern is further disposed on said first surface of said substrate.」(請求項2)(請求項1記載の装置において、前記パターンを定める第2インク層が前記基材の第1面に更に配置される。)

i 「16. The device of claim 1 wherein said ink layer is at least partially deposited onto a patient's skin when said substrate is removed.」(請求項16)(請求項1記載の装置において、前記基材が取り除かれた時には、前記インク層の少なくとも一部分が患者の皮膚上に付着している。)

j 「18. A method of marking a person's skin with a marker, said marker having a substrate with a first and second surface; an adhesive layer disposed on said second surface; an ink layer disposed on said adhesive layer, said ink layer defining a pattern; and a backing liner removably covering said adhesive layer; said method comprising steps of
a) removing said substrate from said backing liner;
b) applying said second surface to the skin of a person such that said pattern defined by said ink layer comes in contact with said skin; and
c) allowing said substrate to remain in contact with said skin so that said ink layer defining said pattern may be transferred at least in part to said skin through absorption.」(請求項18)(マーカーにより人間の皮膚にマークを付ける方法において、前記マーカーは、第1面と第2面を有する基材と;前記基材の前記第2面に配置された接着層と;前記接着層に配置されたインク層と、前記インク層はパターンを定め;前記接着層を剥離可能に覆う支持ライナーとを備え、前記方法は、a)前記基材を前記支持ライナーから取り外すステップと、b)前記第2面を人間の皮膚に当てて、前記インク層を前記皮膚に接触させるステップと、c)前記基材を前記皮膚と接触させたままにして、前記パターンを定める前記インク層の少なくとも一部分が前記皮膚への吸収により移動されるステップとを備える。)

これら記載及びFig.-2、Fig.-2Aの記載からみて、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「乙9発明」という。)。
「皮膚表面に放射線治療用のマーキングを付ける装置であって、
第1面と第2面を有する十分に透明でない基材(18)と、
基材(18)の第2面に配置された接着層(64)と、
接着層(64)に配置された第1インク層(66)であって、皮膚表面に接して置かれたときに皮膚表面上に移動可能なパターンを定める第1インク層(66)と、
接着層(64)と第1インク層(66)を剥離可能に覆う支持ライナー(12)と、を備え、
前記パターンを定める第2インク層が基材(18)の第1面に更に配置されており、
支持ライナー(12)を剥がして基材(18)の第2面を皮膚に当て、第1インク層(66)を皮膚に接触させると、第1インク層(66)が皮膚への吸収により移動される装置。」

また、以上の記載から、乙9発明の技術的意義は、次のとおりであると認められる。
乙9発明は、放射線治療用マーキング装置の技術分野に関する(a)。
従来のマーキング装置(例えば、乙第4号証に記載された発明)は、放射線治療ポータル領域を示すための形状をしたテープ状の構造であり、当該テープ状の構造に接着剤がコーティングされたものであったので、皮膚に貼り付けた後、マーキング装置が剥がれてしまうと、放射線治療ポータル領域を把握できなくなるとの問題があった(b)。
乙9発明は、この問題を解決しようとするものである(c)。具体的には、乙9発明は、第1面と第2面を有する基材(18)と基材(18)の第2面(Fig.-2Aでは、基材(18)の上側の面)に配置された接着層(64)とを含むマーキング装置において、放射線治療ポータル領域のパターンを定める第1インク層(66)を接着層(64)に配置し、当該マーキング装置が皮膚表面に接して置かれたときに、第1インク層(66)を皮膚表面上に移動可能なように構成した(g)ものである。
乙9発明はこのように構成されているので、当該マーキング装置を皮膚に貼り付けると、第1インク層(66)のインクが皮膚に移動し吸収されることになる(d、e)。よって、乙9発明は、当該マーキング装置が意図的又は偶発的に剥がれてしまっても、皮膚に吸収されたインクにより放射線治療ポータル領域を把握できるようになるという作用効果を奏する(d、i、j)。そして、このことは、放射線治療の際にはマーキング装置を皮膚に貼り付けた状態を維持し、このマーキング装置によって放射線治療ポータル領域を把握することを前提とする一方、事故等によりマーキング装置が剥がれてしまい、マーキング装置では放射線治療ポータル領域を把握できない問題が生じた場合であっても、マーキング装置が貼られていた場所の皮膚表面に吸収されたインクによって放射線治療ポータル領域を把握できるという、いわゆるフォールトトレラントとしての作用効果であると認められる(なお、前記dには「マーカーが意図的又は偶発的に剥がれたとしても」との記載があるところ、その文脈からみて、「意図的又は偶発的に剥がれ」ることは好ましくない事態を意味していることが明らかである。)。
ところで、乙第9号証には、基材(18)を実質的に透明としたものであって、マーキング装置が剥がれてしまっていない間は、第1インク層(66)のインクを接着剤及び基材(18)を通して見て放射線治療ポータル領域を把握するようにする(f)とともに、マーキング装置が剥がれてしまった後は、皮膚表面上に移動した前記インクにより当該領域を把握するようにした(d、e)態様も記載されている。他方、乙9発明は、当該態様とは異なり、基材(18)が十分に透明でない場合において(f)、基材(18)の第1面(Fig.-2Aでは、基材(18)の下側の面)に第2インク層を配置して、当該第2インク層も前記パターンを定める(f、h)ものとされている。そのため、乙9発明では、マーキング装置が剥がれてしまっていない間、第1インク層(66)のインクを接着剤及び基材(18)を通して見ることができないとしても、第2インク層が放射線治療ポータル領域を示すことができる(f)が、マーキング装置が剥がれてしまった後は、前記態様と同様に、皮膚表面上に移動した(第1インク層(66)の)インクにより、放射線治療ポータル領域を把握することができる。

ウ 対比
本件訂正発明1と乙1発明とを対比すると、その構造又は機能からみて、乙1発明の「剥離性シート(1)」は、本件訂正発明1の「基台紙」に相当し、以下同様に、「透明弾性層(2)」は「保護シート層」に、「着色印刷インキ層(3)」は「インク層」に、「粘着剤層(4)」は「接着層」に、「セパレーター(5)」は「保護紙」に相当する。

したがって、本件訂正発明1と乙1発明とは、以下の点で一致する。
「基台紙と、
該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と、
該保護シート層の裏面に積層されたインク層と、
該インク層の裏面に積層されている接着層と、
該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成され、
前記保護紙を剥がして、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して、前記保護シート層、インク層及び接着層が皮膚に対して柔軟性に富み、かつ摩擦に強いものである
転写シール。」

そして、本件訂正発明1と乙1発明とは、以下の点で相違する。
(ア) 相違点1
基台紙について、本件訂正発明1では「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている」のに対し、乙1発明ではそのようなマークの存在が不明な点。

(イ) 相違点2
インク層について、本件訂正発明1では「保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成する」のに対し、乙1発明ではそのように形成されているかどうか不明な点。

(ウ) 相違点3
皮膚に貼り付ける際、本件訂正発明1では基台紙の「裏面に水溶性の糊がコーティングされ」ているため、「保護紙を剥がして、前記基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写」するのに対し、乙1発明では剥離性シートの裏面に水溶性の糊のコーティングが存在するかどうか不明であり、セパレーター(5)を剥がして粘着剤層(4)を皮膚に押し当てると、粘着剤層(4)、着色印刷インキ層(3)、透明弾性層(2)が皮膚に転写される点。

(エ) 相違点4
本件訂正発明1は「各種の治療の際の目印」となる「治療用マーカー」であるのに対し、乙1発明は入れ墨転写シールを含む各種用途の転写シールである点。

エ 判断
まず、相違点4について検討し、次に「基台紙」のマークに関連する相違点1、2についてまとめて検討する。
(ア) 相違点4について
本件訂正発明1の治療用マーカーは、例えば放射線治療(本件明細書の段落【0001】を参照。)など、「各種の治療の際の目印」となるものであり、その用途はマーキング(「印をつけること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味。以下、特に断らない限り、同様の意味として「マーキング」という用語を使用する。)であるといえる。そして、本件訂正発明1は、「マーキング」を「転写」により実現するものであるということができる。
一方、乙1発明の転写シールは、入れ墨転写シール等の各種用途に対応するものではあるが、乙第1号証には乙1発明が治療用マーカーとして用いられることについて記載も示唆もされておらず、前記「各種用途」にマーキングが含まれることについても記載も示唆もされていない。
また、乙2事項や乙3事項は転写シールに関する技術である点で乙1発明と共通するものの、乙第2号証及び乙第3号証には、一般的な転写シールを治療用マーカーはおろか、マーキングに転用できることについてすら記載も示唆もされていない。
なお、乙2事項の「マーク層(3)」は「模様、図柄、文字等、所望する色彩とパターンに施されている」(乙第2号証の第4ページ第17行?同第19行を参照。)が、目印についての記載や示唆はない。また、乙2事項の「位置決め用のライン」は目印ではあるものの、転写に際して剥がされることが予定された「基材(1)」に印刷される(乙第2号証の第5ページ第13行?同第15行を参照。)にとどまるから、目印を被転写物に転写するものではなく、よって、乙2事項は、マーキングを転写により実現したものではない。
さらに、乙4事項や乙9発明は放射線治療用のマーキングに関する技術ではあるものの、その具体的装置は平坦で接着剤がコーティングされたテープ状の構造(前記イ(エ)及び(オ)を参照。)を有する単なるシールであって、乙1発明の剥離性シート(1)に相当する構成を有しないから、転写シールとしての構造を有するものではなく、転写シールを治療用マーカーに転用できることについては記載も示唆もされていない。特に、乙9発明の基材(18)は、皮膚に貼り付けた後に剥がれてしまう(乙第9号証の第2欄第11行?同第27行を参照。)という意味では、乙1発明の剥離性シート(1)に対応するようにもみえるが、乙9発明の技術的意義は、前記イ(オ)で認定したとおり、基材(18)が剥がれてしまったとしても皮膚にインクが吸収されて残るようフォールトトレラントの機能を付加する点にあり、基材(18)を剥がすことが必然的に予定されたものとは認められないから、乙9発明の基材(18)は、乙1発明の剥離性シート(1)とは機能が異なるものであり、他に剥離性シート(1)に相当する構成を乙9発明は有しないから、乙9発明は転写シールではない。また、そのような乙9発明の基材(18)が、乙1発明の剥離性シート(1)とどのような関係にあるのかを評価するに当たり、それを剥がすことが必然的に予定されるものではないという機能に着目せず、それが剥がれたという結果を重視して、乙1発明の剥離性シート(1)と同様であると評価できるとする技術常識もないから、乙9発明を転写シールと同様の発明であるということもできない。
そうすると、乙第1号証?乙第4号証及び乙9号証に接した当業者といえども、入れ墨転写シールを含む各種用途の転写シールである乙1発明を、治療用マーカーに転用することは、容易になし得たことではない。すなわち、一般的な転写シールをマーキングに転用できることが技術常識であるとはいえないから、乙1発明をマーキングの用途がさらに限定された「治療用マーカー」に転用することは当業者が容易になし得たとはいえないし、また、仮に、一般的な転写シールをマーキングに転用することが技術常識であるとしても、治療用マーキング装置に関する乙4事項及び乙9発明は、いずれも転写シールに関しない技術であるという意味で、乙1発明とは技術分野が異なるから、相違点4を解消するために、乙1発明に乙4事項又は乙9発明を組み合わせる動機付けがあるともいえない。

(イ) 相違点1、2について
相違点2に係る発明特定事項は「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙」の存在を前提とするものであるから、まずは、その前提の成否に関連する相違点1について検討する。
相違点1に係る発明特定事項は、基台紙の「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている」というものであるが、乙2事項及び乙3事項は、いずれも治療用のマーキングに関しない技術であり、治療用のマークを開示するものではない以上、乙1発明に乙2事項又は乙3事項を組み合わせても、相違点1に係る発明特定事項を充足するものとはならない。
また、乙4事項は前記(ア)に示したとおり、治療用のマーキングに関する技術ではあるものの、転写シールに関する技術ではなく、その意味で乙1発明とは技術分野が異なるものであるから、乙1発明に乙4事項を適用する動機付けはない。仮に、乙1発明に乙4事項を適用しようとすると、治療用の目印である乙4事項の線(38)を設ける可能性がある部材としては、皮膚に貼り付けられたままである点で乙4事項のラインマーカー(18)と共通する乙1発明の透明弾性層(2)か、皮膚に貼り付けた際に最も皮膚から離れた面である点で乙4事項のラインマーカー(18)と共通する乙1発明の剥離性シート(1)の、2部材が一応挙げられる。しかし、乙1発明の透明弾性層(2)に乙4事項の線(38)を設けたとしても、相違点1に係る発明特定事項を充足するものとはならない。また、乙1発明の剥離性シート(1)に乙4事項の線(38)を設けることについては、この剥離性シート(1)が、絵柄を皮膚に転写した後、必然的に剥がされることが予定されたものであるから、乙4事項の放射線治療が行われている間には、もはや存在しない一方、線(38)は放射線治療が行われている間、皮膚上に存在しつづけることが予定されているものと解されるから、乙4事項の線(38)を乙1発明の剥離性シート(1)に設けることは、線(38)の機能を大きく損なうものということができ、そうであるとすると特段の技術常識がない限りは当業者であっても想到できないというべきである。
さらに、乙9発明も前記(ア)に示したとおり、治療用のマーキングに関する技術ではあるものの、転写シールに関する技術ではなく、その意味で乙1発明とは技術分野が異なるものであるから、乙1発明に乙9発明を適用する動機付けはない。仮に、乙1発明に乙9発明を適用しようとすると、治療用の目印である乙9発明の第2インク層を設ける可能性がある部材としては、皮膚に貼り付けられる点で乙9発明の基材(18)と共通する乙1発明の透明弾性層(2)か、皮膚に貼り付けた際に最も皮膚から離れた面である点で乙9発明の基材(18)と共通する乙1発明の剥離性シート(1)の、2部材が一応挙げられる。しかし、乙1発明の透明弾性層(2)に乙9発明の第2インク層を設けたとしても、相違点1に係る発明特定事項を充足するものとはならない。また、乙1発明の剥離性シート(1)に乙9発明の第2インク層を設けることについては、この剥離性シート(1)が、絵柄を皮膚に転写した後、必然的に剥がされることが予定されたものであるから、剥離性シート(1)に第2インク層を設けてしまうと、剥離性シート(1)とともに第2インク層も剥がれてしまうこととなり、このことは前記イ(オ)において認定した「好ましくない事態」に該当するということができ、そうであるとすると特段の技術常識がない限りは当業者であっても想到できないというべきである。
そうすると、乙第1号証?乙第4号証及び乙9号証に接した当業者といえども、乙1発明において、「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙」を有するものとすること、すなわち相違点1に係る発明特定事項を充足するものとすることは、容易になし得たことではない。
そして、「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙」の存在を前提とした相違点2については、以上に示したとおり、その前提が成立しないことから、乙第1号証?乙第4号証及び乙9号証に接した当業者といえども、乙1発明において、相違点2に係る発明特定事項を充足するものとすることは、容易になし得たことではない。

オ 小括
以上に示したとおり、相違点1、2、4に係る発明特定事項は、当業者が容易になし得たことではないから、相違点3について検討するまでもなく、乙1発明において相違点1?4に係る発明特定事項を全て充足するものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
したがって、本件訂正発明1は、乙1発明及び乙第2号証?乙第4号証、乙第9号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4) 無効理由4について
ア 特許無効の抗弁の概要
訂正前の請求項1に係る発明は、乙第9号証に記載された発明並びに乙第1号証に記載された発明及び乙第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることから、進歩性を有しない。(二審判決の第2 3(2)(控訴人の主張)アを参照。)

イ 刊行物の記載
前記(3)イに示したとおり。

ウ 対比
本件訂正発明1と乙9発明とを対比すると、その構造又は機能からみて、乙9発明の「放射線治療用のマーキング」は、本件訂正発明1の「治療用の目印となるマーク」に相当し、以下同様に、「第1インク層(66)」は「インク層」に、「接着層(64)」は「接着層」に、「支持ライナー(12)」は「保護紙」に相当する。
また、前記(3)エ(ア)に示したのと同様に、乙9発明の「基材(18)」は必然的に剥がすことが予定されたものとは認められないことから、本件訂正発明1の「基台紙」とは機能が異なるものであり、むしろインク層を覆うという機能を有する点に限り、乙9発明の「基材(18)」は、本件訂正発明1の「保護シート層」に対応するといえる。

したがって、本件訂正発明1と乙9発明とは、以下の点で一致する。
「保護シート層と、
インク層と、
接着層と、
該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成されている、
治療用マーカー。」

そして、本件訂正発明1と乙9発明とは、以下の点で相違する。
(ア) 相違点5
本件訂正発明1は、「表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙」を有するのに対し、乙9発明は、そのような基台紙を有しない点。

(イ) 相違点6
保護シート層が、本件訂正発明1では「基台紙の裏面に剥離可能に積層されている」のに対し、乙9発明では前記(ア)に示したとおり基台紙がなく、そのように積層されていない点。

(ウ) 相違点7
インク層が、本件訂正発明1では「保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成する」のに対し、乙9発明では接着層(64)に配置されるものの、前記(ア)に示したとおり基台紙がないため、そのようにマークが形成されない点。

(エ) 相違点8
接着層が、本件訂正発明1では「インク層の裏面に積層され」るのに対し、乙9発明では基材(18)の第2面に配置されているが、インク層(66)の裏面に積層されていない点。

(オ) 相違点9
皮膚に貼り付ける際、本件訂正発明1では基台紙の「裏面に水溶性の糊がコーティングされ」ているため、「保護紙を剥がして、前記基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写」するのに対し、乙9発明では基台紙に相当する構成がなく、支持ライナー(12)を剥がして基材(18)の第2面を皮膚に当て、第1インク層(66)を皮膚に接触させると、第1インク層(66)が皮膚への吸収により移動される点。

エ 判断
まず、「基台紙」に関連する相違点5?7についてまとめて検討し、続いて相違点8、9について検討する。
(ア) 相違点5?7について
相違点5、7に係る発明特定事項は「基台紙」の存在を前提とするものであるから、まずは、その前提の成否に関連する相違点6について検討する。
ここで、乙1発明及び乙3事項は、いずれも転写シールの技術に関するものであり、本件訂正発明1の「基台紙」に対応する構成を有するものの、前記(3)エ(ア)に示したとおり、放射線治療用のマーキングを行う技術ではなく、その意味で乙9発明とは技術分野が異なるものであるから、乙9発明に乙1発明又は乙3事項を適用する動機付けはない。
また、乙9発明を皮膚に貼り付けるには、乙第9号証(第4欄第57行?第5欄第36行)に記載されているとおり、支持ライナー(12)を剥がして基材(18)を皮膚に当てれば足ることから、乙9発明は一般的なシールの構造を有するものであるといえる。そして、仮に、乙9発明の基材(18)に「基台紙」を追加しようとすると、いたずらに構造を複雑化させることとなり、また、追加された「基台紙」による格別の効果も見込めないことから、乙9発明を一般的なシールの構造から転写シールの構造に変更しようとする積極的な動機付けがあるとはいえない。
そうすると、乙第9号証並びに乙第1号証及び乙第3号証に接した当業者といえども、乙9発明において、「基台紙」を追加し、基材(18)が「基台紙の裏面に剥離可能に積層されている」構成とすること、すなわち相違点6に係る発明特定事項を充足するものとすることは、容易になし得たことではない。
そして、「基台紙」の存在を前提とした相違点5、7については、以上に示したとおり、その前提が成立しないことから、乙第9号証並びに乙第1号証及び乙第3号証に接した当業者といえども、乙9発明において、相違点5、7に係る発明特定事項を充足するものとすることは、容易になし得たことではない。

(イ) 相違点8について
前記(3)エ(ア)に示したとおり、乙9発明の技術的意義は、基材(18)が剥がれたとしても皮膚にインクが吸収されて残るようフォールトトレラントの機能を付加する点にあるから、少なくとも第1インク層(66)が皮膚に触れることができるよう、接着層(64)内か接着層(64)より皮膚側にあることが必要であるといえる(乙9号証の第4欄第57行?第5欄第36行を参照。)。
ここで、乙1発明は前記(ア)に示したとおり、放射線治療用のマーキングを行う技術ではなく、その意味で乙9発明とは技術分野が異なるものであるから、乙9発明に乙1発明を適用する動機付けはない。仮に、乙9発明に乙1発明を適用し、第1インク層(66)より皮膚側に接着層を設けたとすると、第1インク層(66)が皮膚に触れることができなくなり、前記フォールトトレラントの機能が失われるため、乙9発明に乙1発明を適用する際の阻害要因が存在するといえる。
同様に、乙9発明に乙3事項を適用する動機付けはなく、仮に適用するとしても阻害要因が存在するといえる。
そうすると、乙第9号証並びに乙第1号証及び乙第3号証に接した当業者といえども、乙9発明において、接着層が「インク層の裏面に積層され」たものとすること、すなわち相違点8に係る発明特定事項を充足するものとすることは、容易になし得たことではない。

(ウ) 相違点9について
本件訂正発明1の技術的特徴として、基台紙の「裏面に水溶性の糊がコーティングされ」ており、「保護紙を剥がして、前記基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写」するという発明特定事項が挙げられるが、乙1発明は水転写タイプの転写シールに関しない技術であり、水転写タイプの転写シールを開示するものではない以上、乙9発明に乙1発明を組み合わせても、相違点9に係る発明特定事項を充足するものとはならない。
ここで、前記(3)エ(ウ)に示したとおり、乙3事項には、従来から知られている転写シールの様々な転写タイプの1つとして、水転写タイプのものも挙げられているが、乙3事項は前記(ア)に示したとおり、放射線治療用のマーキングを行う技術ではなく、その意味で乙9発明とは技術分野が異なるものであるから、乙9発明に乙3事項を適用する動機付けはない。
また、乙9発明を皮膚に貼り付けるには、前記(ア)に示したとおり、支持ライナー(12)を剥がして基材(18)を皮膚に当てれば足ることから、乙9発明は一般的なシールの構造を有するものであるといえる。そして、乙9発明を一般的なシールの構造から水転写タイプの構造に変更しようとすることは、水がなくても皮膚に貼り付けることができる乙9発明を、水がなければ皮膚に貼り付けられないようにすることを意味しており、いたずらに構造を複雑化させるだけでなく、貼り付けの方法もより複雑で不便になることから、乙9発明を一般的なシールの構造から水転写タイプの転写シールの構造に変更しようとする積極的な動機付けがあるとはいえない。
そうすると、乙第9号証並びに乙第1号証及び乙第3号証に接した当業者といえども、乙9発明において、基台紙を追加し、しかも基台紙の「裏面に水溶性の糊がコーティングされ」たものとし、「保護紙を剥がして、前記基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写」するものとすること、すなわち相違点9に係る発明特定事項を充足するものとすることは、容易になし得たことではない。

オ 小括
したがって、本件訂正発明1は、乙9発明並びに乙第1号証及び乙第3号証に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5) 無効理由6について
ア 特許無効の抗弁の概要
訂正前の請求項1?3は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセスクレームに該当することから、明確性要件違反である。(二審判決の第2 3(2)(控訴人の主張)ウを参照。)

イ 判断
訂正後の請求項1における「裏面に水溶性の糊がコーティングされ」、「表面に治療用の目印となるマークが印刷され」、「基台紙の裏面に剥離可能に積層され」、「投影位置が同一となる様に形成する」、「インク層の裏面に積層され」、「接着層の裏面に剥離可能に積層され」との記載は、単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎず、製造に関して経時的な要素の記載がある場合、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合、製造方法の発明を引用する場合のいずれにも該当しない。
また、訂正後の請求項1の記載に基づいて、治療用マーカーの構造や特性を明らかに理解することができる。
よって、訂正後の請求項1には、その物の製造方法が記載されているとはいえず、本件訂正発明1は物の発明として明確である。また、訂正後の請求項2、3についても同様に、その物の製造方法が記載されているとはいえず、本件訂正発明2、3は物の発明として明確である。

(6) まとめ
したがって、本件訂正発明1?3は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項a1、a2及びbは、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第5 むすび
以上、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第三号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項、第6項及び第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
治療用マーカー
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者の皮膚にライン等のマークを記入して、例えば放射線治療の際の目印としたり、放射線治療以外の治療における目印とするための治療用マーカーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガン患者の治療において、放射線を患部に照射する治療が一般的に行われている。この放射線治療においては、患部を特定するための目印として、患者の皮膚に、油性インクやフクシンリゾルシン液等を用いてラインや十字等の目印を記入している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、油性インク等を用いてライン等を記入する場合、皮膚のしわ等により正確な直線を引くことができなかったり、滲んでしまってラインが不鮮明になるという問題がある。また、術者や患者の衣服や手を汚してしまうという問題もある。
【0004】
そこで、本発明は、患者の皮膚に治療用の目印をマーキングする際に、術者や患者の衣服等を汚すことがなく、鮮明で正確な目印をマーキングできるようにすることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた本発明の治療用マーカーは、裏面に水溶性の糊がコーティングされると共に表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と、該保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成するインク層と、該インク層の裏面に積層されている接着層と、該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成され、前記保護紙を剥がして、前記基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して、各種の治療の際の目印となり、前記保護シート層、インク層及び接着層が皮膚に対して柔軟性に富み、かつ摩擦に強いものである。
【0006】
本発明の治療用マーカーによれば、保護紙を剥がした後に、患者の患部の皮膚に対して、接着層を押し付ける様に基台紙を貼り付け、基台紙に水分を十分に含ませることによって接着層を皮膚に接着させた後で、この基台紙を剥がしてやれば、接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して、各種の治療の際の目印とすることができる。なお、保護紙を剥がした基台紙を皮膚に貼り付ける前に、基台紙に水分を含ませておく様にしてもよい。ここで、基台紙を患部に貼り付ける際には、その表面に印刷されているマークによってどこに貼り付けたらよいかが容易に判明する。そして、患者の皮膚にはこのマークと同一のマークからなる目印が転写されるので、鮮明で正確な目印を患者の皮膚にマーキングすることができる。また、この目印は、保護シート層によって表面を保護されているので、衣服等で擦れたりしても消えることがなく、長期間に渡って目印を施した状態を維持することができる。
【0007】
また、より具体的には、本発明の治療用マーカーとして、前記保護シート層が、ポリエステル系インクによって形成されており、前記インク層が、ポリエステル系インクによって形成されており、前記接着層が、アクリル系接着剤によって形成されているものを用いるとよい。
【0008】
この治療用マーカーによれば、伸縮性がよいため皮膚との馴染みがよく、肘等に接着した場合にも、皮膚に突っ張り感がなく、皮膚の動きと共に柔軟に変形し、破れたり剥がれたりし難い。
【0009】
また、本発明の治療用マーカーにおいて、前記インク層として、自然太陽光や屋内照明として用いられる蛍光灯や白熱灯に対しては発色せず、ブラックライトのみによって発色するインクを用いておくようにするとよい。
【0010】
この様なインクを用いることにより、衣服から露出する部分に本発明の治療用マーカーによるマーキングを施した場合に、通常時にはマークが目立たないので、患者の精神的な苦痛を和らげることができるからである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。実施の形態としての放射線治療用ラインマーカー1は、図1に示す様に、表面に治療用の目印となるライン3が印刷されている基台紙5と、この基台紙5の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層7と、この保護シート層7の裏面に積層され、基台紙5に印刷されたライン3と同一のラインを形成するインク層9と、このインク層9の裏面に積層される接着層11と、この接着層11の裏面に剥離可能に積層されている保護紙13とによって構成されている。なお、基台紙5の裏面には水溶性の糊がコーティングされている。
【0012】
ここで、保護シート層7としては、帝国インキ製造株式会社製のポリエステル系性インクである商品名「セリコールEG」を用いている。また、インク層9としては、ポリエステル系インクである株式会社永瀬スクリーン印刷研究所製の商品名「フジロン」を用いている。さらに、接着層11としては、アクリル酸エステル系接着剤であるリキダイン株式会社製の商品名「リキダインTHB-10」を用いている。
【0013】
この放射線治療用ラインマーカー1を使用するに当たっては、まず、保護紙13を剥がした後に、患者の患部の皮膚に対して、基台紙3の表面に印刷されているライン3にて位置を合わせながら接着層11を押し付ける様に基台紙5を貼り付ける。そして、この状態において、水を含ませた脱脂綿や霧吹き等によって基台紙5に水分を十分に含ませる。すると、基台紙5にコーティングされている水溶性の糊が溶けて保護シート層7が基台紙5から剥がれ易くなると共に、接着層11が患者の皮膚に対してしっかりと接着する。こうして接着層11を皮膚にしっかりと接着させた後に基台紙5を剥がしてやれば、接着層11、インク層9及び保護シート層7を皮膚側に転写して、放射線治療の際の目印とすることができる。なお、基台紙5を剥がした後に、かるく水分を拭き取り乾燥させることにより、この目印をしっかりと皮膚に接着させた状態とすることができる。
【0014】
この放射線治療用ラインマーカー1を用いて、皮膚への目印の接着性および耐久性をテストしたところ、数週間経っても、通常の日常生活等においてはラインが剥がれることがなく、また、皮膚面へのかぶれやアレルギー反応等も見られなかった。
【0015】
この様に、本実施の形態の放射線治療用ラインマーカー1によれば、患者の皮膚に治療用の目印を鮮明かつ正確にマーキングすることができ、しかも、術者や患者の衣服等を汚すこともない。加えて、伸縮性に優れ、十分な耐久性が得られると共に、皮膚面のかぶれやアレルギー反応等の副作用も見られない優れたものであることが分かった。
【0016】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られることなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の態様にて実施することができる。
【0017】
例えば、皮膚にマーキングするマークについては、直線に限らず、十字やL字の様なものでもよい。また、放射線治療用に限らず、放射線治療以外の治療時に患者の皮膚にマーキングを行うために用いることができる。
【0018】
また、上述の実施の形態では、インク層9のインクの色については特定しなかったが、黒色、白色、黄色、青色、緑色、赤色など各種の色のインクを用いた放射線治療用ラインマーカー1を作製しておき、患者の皮膚の色や治療の目的に応じて、最適な色のマーキングを施す様にしておくとよい。
【0019】
また、インク層9として、自然太陽光や屋内照明として用いられる蛍光灯や白熱灯に対しては発色せず、ブラックライトのみによって発色するインクを用いておくようにするとよい。
【0020】
この様なインクを用いることにより、衣服から露出する部分に本発明の治療用マーカーによるマーキングを施した場合に、通常時にはマークが目立たないので、患者の精神的な苦痛を和らげることができるからである。
【0021】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明によれば、患者の皮膚に治療用の目印をマーキングする際に、術者や患者の衣服等を汚すことがなく、鮮明で正確な目印をマーキングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態における放射線治療用ラインマーカーの構成を強調して示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
1・・・放射線治療用ラインマーカー、3・・・ライン、5・・・基台紙、7・・・保護シート層、9・・・インク層、11・・・接着層、13・・・保護紙。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 裏面に水溶性の糊がコーティングされると共に表面に治療用の目印となるマークが印刷されている基台紙と、
該基台紙の裏面に剥離可能に積層されている透明な保護シート層と、
該保護シート層の裏面に積層され、前記基台紙に印刷されたマークと同一のマークを前記基台紙の表側と前記保護シート層の裏側とで投影位置が同一となる様に形成するインク層と、
該インク層の裏面に積層されている接着層と、
該接着層の裏面に剥離可能に積層されている保護紙とによって構成され、
前記保護紙を剥がして、前記基台紙に水分を含ませると共に、前記接着層を皮膚に押し当てることにより、前記接着層、インク層及び保護シート層を皮膚側に転写して、各種の治療の際の目印となり、前記保護シート層、インク層及び接着層が皮膚に対して柔軟性に富み、かつ摩擦に強いものである治療用マーカー。
【請求項2】 請求項1記載の治療用マーカーにおいて、
前記保護シート層が、ポリエステル系インクによって形成されており、
前記インク層が、ポリエステル系インクによって形成されており、
前記接着層が、アクリル系接着剤によって形成されていること
を特徴とする治療用マーカー。
【請求項3】 請求項1又は2記載の治療用マーカーにおいて、
前記インク層として、自然太陽光や屋内照明として用いられる蛍光灯や白熱灯に対しては発色せず、ブラックライトのみによって発色するインクを用いていること
を特徴とする治療用マーカー。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-08-22 
結審通知日 2017-08-24 
審決日 2017-09-06 
出願番号 特願平11-155753
審決分類 P 1 41・ 851- Y (A61B)
P 1 41・ 856- Y (A61B)
P 1 41・ 853- Y (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 稲村 正義  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 熊倉 強
二階堂 恭弘
登録日 2004-10-22 
登録番号 特許第3609289号(P3609289)
発明の名称 治療用マーカー  
代理人 森 泰比古  
代理人 森 泰比古  
代理人 森 泰比古  

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