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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1332490
審判番号 不服2015-13452  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-15 
確定日 2017-09-15 
事件の表示 特願2011- 7525「EM保護が施された半導体ダイを形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 7月28日出願公開、特開2011-146720〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年1月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年1月18日 アメリカ合衆国(US))に特許出願したものであって、平成26年3月7日付け拒絶理由通知に対して、同年9月25日付けで手続補正がなされたが、平成27年3月11日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年7月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、平成28年4月22日付け当審の拒絶理由通知に対して、同年10月14日付けで手続補正がなされ、更に、同年12月5日付け当審の拒絶理由通知に対して、平成29年1月30日付けで手続補正がなされた。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成29年1月30日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。なお、下線部は、補正された事項である。

「【請求項1】
半導体ダイを形成する方法において、
半導体基板を有し、かつ前記半導体基板上に形成され、シンギュレーション・ラインが形成されることになる前記半導体基板の一部によって互いに分離される複数の半導体ダイを有する半導体ウエハを提供する段階であって、前記半導体基板は、第1表面および前記第1表面とは反対側にある、前記半導体基板の第2表面を有し、前記第1表面上に半導体装置のアクティブな部分を形成する、半導体ウエハを提供する段階と、
前記半導体基板の前記第1表面から始まり、前記複数の半導体ダイの内の第1半導体ダイを通して開口を形成することを含む段階であって、前記開口は、前記第1表面に第1端を有し、かつ前記第2表面に第2端を有し、前記半導体基板の一部は、前記開口に暴露され、前記開口は、傾斜したサイドウォールを有し、その結果前記開口の幅は、前記開口の前記第1端および前記第2端の内の一方の端が前記開口の前記第1端および前記第2端の内の他方の端より大きい、段階と、
前記開口の傾斜サイドウォール上に第1導体を形成し、かつ前記開口に暴露された前記半導体基板の前記一部に電気的接続を形成する段階であって、前記第1導体と前記半導体基板の前記一部との間に絶縁がない、段階と、
を含むことを特徴とする方法。」


第3 平成28年12月5日付け当審の拒絶理由通知の概要

本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


・請求項 1-5
・備考
(1)本願明細書の段落【0002】および【0003】を参酌すると、本願は電磁妨害あるいはEMIからの保護のために、半導体ダイに対し電磁シールドすることを要旨としているものと認められる。しかしながら、請求項1ないし5に係る発明には、シールドに対応する構成が明記されていない。
よって、請求項1ないし5に係る発明は、明確でなく、発明の詳細な説明に記載したものでもない。
(請求項1および5で特定されたサイドウォール上に形成された「第1導体」がシールドであるならば、請求項1および5にその旨を明記されたい。)

(2)請求項1で特定された「その結果前記開口の幅は、前記開口の他方端より前記開口の一方端の方が大きい」における「他方端」と「一方端」、請求項5で特定された「その結果前記開口の第1端の幅は、前記開口の反対端の幅よりも大きい」における「第1端」と「反対端」は、半導体基板との関係でそれぞれどこにあるのか不明である。
また、請求項1および請求項5の記載によれば、「他方端、一方端、第1端、反対端」が、それぞれ半導体基板の「第1表面」および「第2表面」のどちら側にも位置することができると解釈でき、本願明細書および図面に記載されていない開口(例えば、第1表面側の方が第2表面側よりも大きい開口。)も請求項1および5の範囲に含まれてしまうから、請求項1および5に係る発明は本願明細書および図面の記載を超えたものである。
よって、請求項1ないし5に係る発明は、明確でなく、発明の詳細な説明に記載したものでもない。
(「他方端、一方端、第1端、反対端」と「半導体基板の第1表面、第2表面」との関連性が不明であるから、「他方端」と「反対端」は「第1表面」側にあること、「一方端」と「第1端」は「第2表面」側にあることを請求項1および5に明記されたい。)

(3)請求項1で特定された「前記開口の傾斜サイドウォール上に第1導体を形成し、かつ前記開口に暴露された前記半導体基板の前記一部に電気的接続を形成する段階であって、前記第1導体と前記半導体基板の前記一部との間に絶縁がない」について、まず「第1導体」が何であるか不明であり、「半導体基板の前記一部」とは基板のどこを指すのか不明であり、「電気的接続を形成する」とは第1導体と何が接続されているのか不明である。
よって、請求項1ないし4に係る発明は、明確でなく、発明の詳細な説明に記載したものでもない。
(「第1導体」については、上記(1)でも指摘したとおり、シールドとの関係を明記されたい。「半導体基板の一部」は、請求項5との関連を考慮すると、ドープ領域などの半導体材料の層を指すものと認められるが、そうであれば請求項1にその旨の明記をされたい。)


第4 当審の判断

(1)本願明細書の段落【0003】には、背景技術として「EM保護の施された組み立てパッケージ装置のコストを削減し、よりEM保護の施された半導体ダイを形成し、そのEM保護の施された半導体ダイに対し低コストを有する、半導体ウエハからダイを形成する方法が望まれる。」と記載され、また、段落【0007】には、発明を実施するための形態として「さらに後述にみられるように、本記述は、半導体ダイのサイドウォール上のEMシールドとして導体を形成する段階を含む半導体ダイを形成する方法を含む。」と記載されている。なお、EM保護のためのシールドは、導体を形成すること以外は本願明細書に認められない。よって、本願の要旨は、EM保護の施された半導体ダイを形成するために、半導体ダイのサイドウォール上に「EMシールドとしての導体」を形成することと認められる。
しかしながら、本願発明は、「シールド」に関する特定事項がなく、本願の要旨である「EM保護の施された半導体ダイ」をどのように形成しているのか不明である。更に、本願発明は、シールドに関する特定事項がないから、発明の課題を解決するための構成が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。
なお、審判請求人は、平成29年1月30日付け意見書において、「請求項1ないし5に係る発明の第1導体は、半導体ダイに対し電磁シールドを提供するためだけではなく、電気的な接続を形成するためにも使用されます。」と主張している。そうすると、審判請求人は、本願発明の「第1導体」が少なくともシールドを提供するものと認めている。しかしながら、本願発明において、「第1導体」によって電磁シールドが提供される旨の特定はされておらず、「第1導体」はその用途に特定のないものとなっているから、審判請求人の主張は本願発明に反映されていない。
よって、本願発明は、明確でなく、発明の詳細な説明に記載したものでもなく、当審の拒絶理由を解消していない。

(2)補正前の請求項1の「他方端」及び「一方端」、補正前の請求項5の「第1端」及び「反対端」は、補正により、本願発明と請求項5において、それぞれ「半導体基板の第1表面の第1端」及び「半導体基板の第2表面の第2端」と用語の統一がなされた。
しかしながら、本願発明の「前記半導体基板の前記第1表面から始まり・・・開口を形成することを含む段階であって、・・・その結果前記開口の幅は、前記開口の前記第1端および前記第2端の内の一方の端が前記開口の前記第1端および前記第2端の内の他方の端より大きい、段階」(下線は補正箇所を示す。)については、開口は第1表面(半導体装置のアクティブな部分が形成された表面)から開口を形成することが前提であるところ、「開口の第2端が開口の第1端より大きい」ことは本願明細書及び図面に記載されているものの(段落【0008】、【0011】、【0014】、【0018】、【0035】、及び全ての図面を参照。)、「開口の第1端が開口の第2端より大きい」ことは記載されていない。そうすると、本願発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。
この点に関して、審判請求人は平成29年1月30日付け意見書において、「開口の第1端の幅はその開口の第2端の幅より大きいか、あるいは開口の第2端の幅はその開口の第1端の幅より大きいかのいずれかであることは、明細書段落【0061】に『加えて、開口136が底部表面から基板18を通して形成され、その結果導体137での開口136の終端が基板18の底部での終端より広くなるであろう。』と記述されていることに基づき、開口は、基板の上部表面から形成されるだけでなく、基板の底部表面からも形成されます。」と主張している。しかしながら、本願発明は、上記のとおり、半導体基板の第1表面(半導体装置のアクティブな部分が形成された表面)から開口を形成するものであるから、第2表面(底部表面)から開口を形成したものは含まれないので、審判請求人の主張は本願発明に基づいていない。
よって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、当審の拒絶理由を解消していない。


第5 むすび

以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2項に規定する要件を満たしていない。
その他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-18 
結審通知日 2017-04-20 
審決日 2017-05-08 
出願番号 特願2011-7525(P2011-7525)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雄一  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 酒井 朋広
井上 信一
発明の名称 EM保護が施された半導体ダイを形成する方法  
代理人 本城 雅則  
代理人 本城 吉子  

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