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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1332515 |
審判番号 | 不服2016-18524 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-09 |
確定日 | 2017-10-03 |
事件の表示 | 特願2013-543252「基板から窒化物を選択的に除去する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月14日国際公開、WO2012/078580、平成25年12月19日国内公表、特表2013-545319、請求項の数(23)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成23年12月6日を国際出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 平成22年12月10日,米国)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成26年12月 4日 審査請求・手続補正 平成27年 8月26日 拒絶理由通知 平成28年 1月27日 意見書 平成28年 7月29日 拒絶査定(以下,「原査定」という。) 平成28年12月 9日 審判請求・手続補正 平成29年 4月28日 拒絶理由通知(当審) 平成29年 7月19日 意見書・手続補正 第2 本願発明 本願の請求項1ないし23に係る発明は,平成28年7月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるものと認められる。 本願の請求項1ないし23に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明23」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 基板からシリコン窒化物をシリコン酸化物に対して選択的に除去する方法であって: a)表面上にシリコン窒化物及びシリコン酸化物を有する基板を提供する工程, b)リン酸および硫酸を含む混合酸性液体流と,水蒸気流との流れを供給する工程であって,前記混合酸性液体流は,150℃よりも高い温度である,工程;ならびに, c)前記混合酸性液体流の流れを用いて,前記水蒸気の存在する中で,前記シリコン酸化物に対して前記シリコン窒化物を選択的にエッチングする工程; を有する方法。 【請求項2】 前記工程b)の前に,HFを含む前処理用液体によって前記基板を処理する工程をさらに有する,請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記水蒸気が過熱蒸気を含む,請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記混合酸性液体流は,180℃よりも高い温度で供給される,請求項1に記載の方法。 【請求項5】 前記混合酸性液体流は,200℃よりも高い温度で供給される,請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記混合酸性液体流は,190℃乃至240℃の温度で供給される,請求項1に記載の方法。 【請求項7】 前記混合酸性液体流は,150℃乃至180℃の温度で供給される,請求項1に記載の方法。 【請求項8】 前記水蒸気と交差させた後の前記混合酸性液体流の含水量が10wt%乃至20wt%である,請求項1に記載の方法。 【請求項9】 前記水蒸気と交差させた後の前記混合酸性液体流の含水量が11wt%乃至15wt%である,請求項1に記載の方法。 【請求項10】 前記混合酸性液体流は,少なくとも80wt%のリン酸であるリン酸溶液と,少なくとも90wt%の硫酸である硫酸溶液とを,リン酸と硫酸との割合を体積比にして3:1乃至1:6で混合させることによって準備される,請求項1に記載の方法。 【請求項11】 前記リン酸溶液は,85wt%のリン酸であり,前記硫酸溶液は98wt%の硫酸である,請求項10に記載の方法。 【請求項12】 硫酸に対するリン酸の体積比が1:2乃至1:4である,請求項10に記載の方法。 【請求項13】 前記水蒸気は,80℃乃至110℃の温度で提供される,請求項1に記載の方法。 【請求項14】 前記水蒸気は,100℃の温度で提供される,請求項1に記載の方法。 【請求項15】 前記基板は,前記混合酸性液体流の供給中に回転する,請求項1に記載の方法。 【請求項16】 前記水蒸気と交差させた後の前記混合酸性液体流は,連続流の状態で前記基板と衝突する,請求項1に記載の方法。 【請求項17】 前記混合酸性液体流は,水蒸気と交差した後,エアロゾル液滴の状態で前記基板と衝突する,請求項1に記載の方法。 【請求項18】 前記リン酸と前記硫酸は,混合酸性液体流としてノズルから供給される前に,貯蔵用容器内で混合される,請求項1に記載の方法。 【請求項19】 前記リン酸と前記硫酸は,混合酸性液体流としてノズルから排出される前に,ノズル集合体内で混合される,請求項1に記載の方法。 【請求項20】 前記リン酸と前記硫酸は,ノズル集合体の別個のオリフィスから流れる別個の溶液として供給され, 前記供給された別個の流れは,前記基板表面と接触する前に,互いに衝突し,前記ノズルの外部に前記混合酸性液体流を生成する, 請求項1に記載の方法。 【請求項21】 前記リン酸と前記硫酸は,前記基板表面上に噴霧される,請求項1に記載の方法。 【請求項22】 前記リン酸と前記硫酸は,前記基板の表面に向かうように流される,請求項1に記載の方法。 【請求項23】 前記水蒸気と,前記供給された流れている混合酸性液体流は,前記基板の表面に衝突する前に,供給されて交差する,請求項1に記載の方法。」 第3 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物(特開2006-278954号公報,以下「引用文献1」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。以下同じ。) (1)引用文献1の記載事項 ア 「【技術分野】 【0001】 この発明は,基板を薬液および純水で処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には,たとえば,半導体ウエハ,液晶表示装置用ガラス基板,プラズマディスプレイ用ガラス基板,光ディスク用基板,磁気ディスク用基板,光磁気ディスク用基板,フォトマスク用基板などが含まれる」 イ 「【0004】 ところが、このような基板処理では、基板の表面内における薬液処理の不均一が生じるという問題があった。より具体的には、たとえば、ふっ酸のようなエッチング液を薬液として用いる場合に、薬液吐出開始時に勢いよく薬液ノズルから吐出されたエッチング液により、基板表面の着液点付近(一般には回転中心付近)において、急激な濃度変化が生じ、急激にエッチングが進行する。これにより、着液点付近とそれ以外の領域との間でエッチング不均一が生じる。 【0005】 薬液吐出終了時には、着液点付近ではエッチング液の供給がただちに停止されるのに対して、その周辺の基板表面では、エッチング液が徐々に基板の外方へと排除されていく。これによっても、エッチングのばらつきが生じる。 薬液吐出開始時と終了時とのエッチングの進行の面内ばらつきが互いに補い合う関係にあることは期待できず、実際、処理後の基板上にはエッチングばらつきが見られる。 【0006】 エッチング液に限らず、他の種類の薬液によって基板を処理する場合にも、同様な処理不均一が生じる。この問題は、処理能力の高い高濃度または高温の薬液を用いる場合にとくに顕著に現れる。 そこで、この発明の目的は、処理液による基板処理の面内不均一を抑制することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。」 ウ 「【0011】 前記エッチング液の例としては,ふっ酸(酸化膜または窒化膜のエッチング液),ふっ硝酸(シリコンのエッチング液),水酸化カリウム等のアルカリ液(シリコンのエッチング液),および燐酸(窒化シリコンのエッチング液)を例示することができる。 前記前純水供給工程および薬液供給工程は,基板保持回転機構によって保持されている基板に純水を供給する純水ノズルおよび薬液を供給する薬液ノズルをそれぞれ用いて行われてもよい。また,前記基板保持回転機構によって保持されている基板に向けて処理液を供給する処理液ノズルが設けられ,この処理液ノズルに対して薬液および/または純水を共通に供給することによって,前記前純水供給工程および薬液供給工程が行われるようになっていてもよい。」 エ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 以下では,この発明の実施の形態を,添付図面を参照して詳細に説明する。 図1は,この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を図解的に示す概念図である。この基板処理装置は,基板を1枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置であり,基板Wをほぼ水平に保持して鉛直軸線まわりに回転させるスピンチャック1と,このスピンチャック1に保持されて回転されている基板Wの回転中心に向けて純水を供給する純水ノズル2と,スピンチャック1に保持されて回転されている基板Wの回転中心に向けて一定濃度の薬液(たとえばエッチング液)を供給する薬液ノズル3とを備えている。さらに,この基板処理装置は,スピンチャック1に保持されて回転されている基板Wの下面の中心に向けて処理液を供給する下面処理液ノズル4を備えている。」 オ 「【0030】 また,高温および/または高濃度の高性能な薬液を用いる場合でも,基板W上での薬液濃度の急変を抑制できるので,このような高性能薬液を用いることで,基板処理時間を短縮し,かつ,基板処理の面内不均一を抑制することができる。これにより,基板処理の品質を悪化させることなく,基板処理に要する時間を短縮することができる。 特に,薬液としてエッチング液を用いる場合に,高温および/または高濃度の高性能エッチング液を用いても,均一性の高いエッチング処理が可能になる。」 (2)引用発明1 前記ウより,回転する基板に薬液ノズルから薬液を提供する事から,提供する薬液は基板の回転速度に応じた流れができていると解されるので,前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「基板から窒化シリコンをエッチングする方法であって,表面上に窒化シリコン膜を形成した基板を提供する工程と,燐酸を含むエッチング液を薬液ノズル3を通じて供給し,薬液の流れを提供する工程と,薬液の流れを用いて,シリコン窒化物をエッチングする工程を有する方法。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物(特開2008-71801号公報,以下「引用文献2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 (1)引用文献2の記載事項 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,エッチング液,エッチング方法および電子部品の製造方法に関し,詳しくは窒化シリコンの選択的エッチングを行うことができるエッチング液,エッチング方法および電子部品の製造方法に関する。」 【背景技術】 【0002】 半導体装置,液晶表示装置,位相シフトマスクなどの電子部品の製造工程では,選択的にシリコン窒化膜を除去するウェットエッチングが行われている。そして,例えば,半導体装置においては,ウェーハ上に素子分離酸化膜(シリコン酸化膜;SiO_(2)膜)を形成させる際のハードマスクとして窒化膜(シリコン窒化膜;Si_(3)N_(4))が用いられているが,このような窒化膜の除去には,加熱したリン酸溶液を用いた,いわゆる熱リン酸法によるウェットエッチングが一般的に行われている。この熱リン酸溶液(エッチング液)は,シリコン酸化膜(SiO_(2)膜)に対するシリコン窒化膜(Si_(3)N_(4))のエッチングレートが高いという特性を有しているので,シリコン酸化膜(SiO_(2)膜)からなる素子分離酸化膜を除去することなく,シリコン窒化膜(Si_(3)N_(4))からなるハードマスクを選択的に除去できるということで用いられてきている。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は,窒化シリコンの選択的なエッチングにおいて,その窒化シリコンのエッチングレートを高めることができるエッチング液,エッチング方法および電子部品の製造方法を提供する。」 ウ 「【0009】 また,本発明の他の一態様によれば,窒化シリコンの選択的なエッチングに用いるエッチング液であって,前記水と,リン酸と,硫酸と,を含み,前記リン酸と前記硫酸との体積比は,300:32?150:300であること,を特徴とするエッチング液が提供される。 【0010】 さらにまた,本発明の他の一態様によれば,前記エッチング液を用いて,窒化シリコンの選択的なエッチングを行うこと,を特徴とするエッチング方法が提供される。」 エ「【0022】 図3は、処理回数が及ぼす影響を説明するための図である。 図3(a)は、ウェーハ断面の構成を説明するための模式図である。図3(b)は、処理回数がエッチングによる寸法・形状に与える影響を説明するためのウェーハの模式断面図である。 まず、ウェーハ断面の構成を簡単に説明する。図3(a)に示すように、単結晶シリコンからなるシリコン層1の上に、酸化シリコン(SiO_(2))からなる絶縁膜2、多結晶シリコンからなるポリシリコン層3、窒化シリコン(Si_(3) N_(4)) からなるマスク4が下層から順番に積層されている。そして、トレンチTには塗布型酸化膜5が埋め込まれている。尚、図3(b)に示す模式断面図は、マスク4が熱リン酸法により除去された後の場合である。」 (2)引用発明2 前記(1)より,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「基板から窒化シリコン(Si_(3) N_(4))を酸化シリコン(SiO_(2))に対して選択的に除去する方法であって、表面上に酸化シリコンからなる絶縁膜2,窒化シリコンからなるマスク4を有する基板を提供する工程、リン酸及び硫酸を含むエッチング液を供給する工程、酸化シリコンに対して窒化シリコンを選択的にエッチングする工程を有する方法。」 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物(特表2007-517413号公報,以下「引用文献3」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 (1)引用文献3の記載事項 ア 「【0009】 発明の要旨 したがって,本発明の目的は,結果的に酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチング選択性を増加させる,少なくともひとつの基板から窒化ケイ素をエッチングするためのシステムと方法を提供することである。」 イ 「【0035】 はじめに,液体のH_(2)SO_(4),H_(3)PO_(4),およびH_(2)Oを,プロセスチャンバ10の処理槽(processing volume)12へ,ライン20-22を介して注入するために,加減弁23-25を開放位置へ切り替える。H_(2)SO_(4),H_(3)PO_(4),およびH_(2)Oが,プロセスチャンバ10の処理槽(processing volume)12へ供給されるとき,H_(2)SO_(4),H_(3)PO_(4),およびH_(2)Oは混合液(すなわちエッチング溶液)を形成するために混合される。H_(2)SO_(4):H_(3)PO_(4):H_(2)Oの所定の/望まれる濃度比を有するよう混合液を作成するために,加減弁23-25は注入ライン20-22を通るH_(2)SO_(4),H_(3)PO_(4),およびH_(2)Oの流速を制御する。一実施例では,混合液は,H_(2)SO_(4)(96重量%)2部,H_(3)PO_(4)(85重量%)2部,H_(2)O1部の濃度比を有することが好ましい。しかしながら,必要に応じて,どんな濃度比でも使用できる。さらに,必要に応じて,本発明のいくつかの実施例では,エッチング液としてH_(3)PO_(4)のみのエッチング液のような,一種類の化学薬品しか使用していない。 【0036】 混合液が処理槽(processingvolume)12から再循環ダム11(recirculation weir)へ,および再循環ライン40へと流出するまで,H_(2)SO_(4),H_(3)PO_(4),およびH_(2)Oはライン20-22を介して,処理槽(processing volume)12へと供給され続ける。いったん所定量のエッチング液の混合液が,閉ループ循環システム(すなわち,プロセスチャンバ10および再循環ライン40)内で供給され,形成されると,弁23-25は閉じられ,それによってプロセスチャンバへのH_(2)SO_(4),H_(3)PO_(4),およびH_(2)Oの供給は止まる。 【0037】 この時点で,ポンプ60は動かされ,再循環ライン40を通る,プロセスチャンバ10(ダム11を介して)からの混合液の循環的な流れを引き起こし,プロセスチャンバ10へ(吸入マニフォールド13を介して)戻す。混合液は,再循環ライン40を通るときにヒーター70とフィルター80を通る。ヒーター60は,混合液を約160から180℃の範囲内で加熱することが好ましく,最も好ましいのは165℃である。また混合液は,濃度センサー50と粒子計数器55を通る。濃度センサー50と粒子計数器55は共に再循環ライン40と操作可能に連結している。」 (2)引用発明3 前記(1)より,引用文献3には次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のエッチング選択性を有するH_(2)SO_(4),H_(3)PO_(4),およびH_(2)Oは混合液(すなわちエッチング溶液)であり,当該混合液の温度として約160から180℃の範囲内とするエッチング技術。」 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に外国において頒布された刊行物(米国特許第6087273号明細書,以下「引用文献4」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。(訳は,当審で作成した。) (1)引用文献4の記載事項 ア BACKGROUND OF THE INVENTION The present invention relates to a process for selectively etching silicon nitride in the presence of silicon oxide, and more particularly to a process for effectively and efficiently etching a layer of silicon nitride at ahigh etch rate and with high selectivity with respect to exposed or underlying layers of silicon oxide, particularly in a multilayer semiconductor wafer structure. (第1欄10?17行) (訳:発明の背景 本発明は,シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜の選択エッチングプロセスに関するものであり,特に,多層配線の半導体ウエハにおいて,シリコン酸化膜上に露出あるいは被覆されたシリコン窒化膜の高い選択性を有する効果的かつ効率的なエッチングプロセスに関する。) イ EXAMPLE 1 To demonstrate the etching behavior of the etchant process of the present invention, silicon wafers which had silicon nitride and silicon dioxide layers, respectively, deposited on them by a thermal chemical vapor deposition process (CVD) were etched using a heated, closed etchant bath container equipped with a cooled lid to condense vapors. The thickness ofthe nitride and oxide coatings on the wafers were measured both before and after etching to measure the reduction in thickness of the nitride or oxide layers. Three liters of an etchant solution was prepared by combining 945 ml of sulfuric acid (95-98% assay), 1500 ml of phosphoric acid (85%) and 555 ml water. The approximate volume percentages were: 30.0% sulfuric acid, 42.5% phosphoric acid, and 27.5% water. This mixture yielded an etchant solution having a boiling point of approximately 175℃. A silicon wafer with a thermal nitride coating was placed into the etchant solution at a temperature of 152-153℃for five minutes. The film thickness on the wafer was measured both before and after etching at five different points. The nitride-coated wafer lost an average of 99 Å in thickness, yielding an etch rate of approximately 20 Å/min.(第3欄35?60行) (訳:本発明のエッチングプロセスのエッチング挙動を示すために,化学的気相堆積法(CVD)によって堆積された窒化ケイ素及び二酸化ケイ素層を有するシリコンウェハは,凝縮する蒸気と冷却された蓋を備え、加熱され閉じたエッチャント浴容器を使用してエッチングを行った。ウェハ上の窒化物および酸化物被覆の厚さは,エッチング前後の窒化物または酸化物の層の厚さの減少を測定するためにエッチングの前後の両方で測定した。 硫酸(含有率95-98%)945mlを,1500mlのリン酸(85%)および555mLの水を混合して調製し,3リットルのエッチング剤溶液が準備された。およその体積割合は,30.0%の硫酸,42.5%のリン酸,および水27.5%である。この混合物は,およそ175℃の沸点を有するエッチャント溶液を得た。 熱窒化物によりコーティングされたシリコンウエハは,152-153℃のエンッチング溶液に5分間,浸漬した。ウェーハ上の膜厚は,5箇所でエッチング後の両方で測定した。窒化物で被覆されたウェーハは,平均99Å膜厚が減じ,約20Å/分のエッチング速度が得られた。) (2)引用発明4 前記(1)より,引用文献4には次の発明(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。 「窒化ケイ素及び二酸化ケイ素層を有するシリコンウェーハに対して,硫酸,リン酸および,水からなるエッチング液を用い,152-153℃のエッチング溶液に5分間の浸漬し,窒化シリコンを選択エッチングする技術。」 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物(特表2010-528459号公報,以下「引用文献5」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 (1)引用文献5の記載事項 ア 「【0002】 本発明は,水蒸気または蒸気を用いた基板の処理方法に関する。本発明の一態様では,材料(及び好ましくはフォトレジスト材料)が硫酸及び水蒸気を用いて基板から除去される。」 イ 「【0006】 基板の処理のための,特に材料の除去,特に有機材料の除去,とりわけ例えば半導体ウエハのような基板からフォトレジスト材料を除去するための,代替技術または組成物を特定することが望ましいと考えられる。」 ウ 「【0011】 本発明に用いられ得る処理組成物の例には,例えばSC-1組成物(NH_(4)OH/過酸化物/水),SC-2組成物(HCl/過酸化物/水),PiranhaまたはSPM組成物(硫酸/過酸化物),SOM(硫酸/オゾン)組成物,硫酸組成物,緩衝酸化物エッチング(HF及びフッ化アンモニウム)組成物,及びNH_(4)OH,H_(3)PO_(4),HF,HCl,またはHF/HCl組成物のような,当技術分野で常用の水洗浄系が含まれる。」 エ 「【0013】 本発明の一態様において, a)処理チャンバー内に,その表面上に材料を有する少なくとも1つの基板を配置すること; b)硫酸及び/またはその脱水種及び前駆体を含む液状硫酸組成物の流れを基板の表面に衝突させるように向けること;及び c)水蒸気の流れを基板の表面に衝突させるように及び/または液状硫酸組成物に衝突させるように向けること, を含む,基板からの材料の除去方法を提供する。好ましくは,液状硫酸組成物が約5:1以下の水/硫酸のモル比を有し,且つ水蒸気に曝露する前の液状硫酸組成物の温度よりも高く液状硫酸組成物の温度を上昇させるために効果的な量の水蒸気に,液状硫酸組成物を曝露する。」 オ 「【0033】 好ましくは,基板を囲む水蒸気は,約70℃?約160℃の水蒸気の温度にて基板に曝露されるように導入される。さらに好ましくは,基板を囲む水蒸気は,約100℃?約150℃の水蒸気の温度にて基板に曝露されるように導入される。特に有利な実施態様では,基板を囲む水蒸気は,約120℃?約140℃の水蒸気の温度にて基板に曝露されるように導入される。」 カ 「【0042】 ウエハ13は,除去されるべき有機材料で被覆されている。除去することが困難な有機材料は以前の加工工程の際に熱にさらされてベークされたフォトレジストを含む。除去することが特に困難な有機材料は,以前のウエハの加工工程の際に大量にイオン注入されたものである。本発明の方法は,特に驚くべき事に,大量にイオン注入されたフォトレジスト材料の除去に効果的である。 【0043】 スプレーバー20は,液状エアロゾル小滴をウエハ13上に向けるための複数のノズルを含む。液状硫酸組成物は液体供給タンク22からライン23を通して供給され,水蒸気の蒸気が供給タンク24からライン25を通して同様に供給される。過酸化水素は,過酸化物供給タンク26からライン27を通して硫酸供給ライン23に供給される。この構成は,過酸化物が硫酸の存在下で貯蔵及び加熱されず,さらに処理方法に用いられる過酸化物の量を,特定のプロセス要求によって決定されるような硫酸の量から独立して制御できる,という利益を有しながら,硫酸組成物に過酸化物を加えることを可能にする。したがって,様々な過酸化物の濃度を,所望により処理プロセスの際に適用することができる。別法では,過酸化水素をライン25にて水蒸気の流れに供給することができる。スプレーバー20は好ましくは,液状硫酸組成物の流れを水蒸気の流れと衝突させることから得られる処理組成物のエアロゾル小滴を生成するための複数のノズルを備える。好ましい実施態様では,スプレーバー20がウエハ13の上方の位置に配置されているときにウエハの半径またはウエハの全直径に対応する位置にあるスプレーバー20内に,ノズルが約3.5mmの間隔を開けて備えられる。ノズルは所望により,ウエハの外縁におけるノズルの間隔と比較して,回転軸に近くでは異なる間隔で備えられてもよい。好ましいスプレーバーの構成は,2006年7月7日に出願された,発明の名称が,BARRIER STRUCTUREAND NOZZLE DEVICE FOR USE IN TOOLSUSED TO PROCESS MICROELECTRONIC WORKPIECES WITH ONE OR MORE TREATMENT FLUIDSである,米国特許出願第60/819,133号明細書に記載されている。」 キ 「【0049】 好ましくは,液状硫酸組成物は,少なくとも約90℃,さらに好ましくは約90℃?約150℃の温度で投与される。他の実施態様において,液状硫酸組成物は好ましくは約95℃?約120℃の温度で投与される。他の実施態様において,液状硫酸組成物は,水蒸気への暴露前に,少なくとも約130℃,さらに好ましくは約130℃?約200℃の温度で投与される。」 ク 「【0052】 好ましくは,水蒸気は,約70℃?約160℃の水蒸気温度でウエハに暴露されるように導入される。さらに好ましくは,水蒸気は約100℃?約150℃の水蒸気温度でウエハに暴露されるように導入される。特に有利な実施態様では,水蒸気は,約120℃?約140℃の水蒸気温度でウエハに暴露されるように導入される。別の有利な実施態様では,水蒸気は約130℃の水蒸気温度でウエハに暴露されるように導入される。この実施態様は,常用の蒸気生成装置により,処理槽の中または外で,常用の条件下で水を沸騰させて蒸気を生成することを比較的容易にする。」 ケ 「【0083】 例2 上述の処理工程の際に水蒸気及び/または窒素ガスで基板を囲む効果を立証するために,さらなる試験を行った。これらの試験では,本発明の方法を用いて及び用いないで酸化物のエッチング試験を行った。対照を除いて,70℃の投与温度にて60秒間,SC-1溶液を用いてウエハから酸化物をエッチングした。」 (2)引用発明5 前記(1)より,引用文献5には次の発明(以下,「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。 「約70℃?約160℃の水蒸気の温度にて基板に曝露されるようにスプレーバーを用いて基板に衝突するような流れを作りながら導入し,液状硫酸組成物及び水蒸気を用いて基板から材料(及び好ましくはフォトレジスト材料)を除去する基板の処理方法。」 6 引用文献6について 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物(特開2008-28365号公報,以下「引用文献6」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 (1)引用文献6の記載事項 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,被処理物の表面を処理する処理装置及び処理方法に関し,特に,シリコン等の半導体基板,半導体基板を用いた半導体メモリや集積回路又はガラス基板の上に形成された表示装置を被処理物として,それらの製造工程に使用される処理装置及び処理方法に関する。」 イ 「【0005】 また,基板表面に形成された被膜をウェットエッチングする場合としては,例えば,シリコン窒化膜を除去する工程がある。半導体集積回路装置の製造では,MOSトランジスタ間を分離するために,シリコン窒化膜をマスクとして,選択酸化する方法を用いており,この酸化工程の後,シリコン窒化膜は,不要であるために除去される。しかし,シリコン窒化膜の表面は,酸化工程において僅かに酸化されており,そのエッチング処理は多少煩雑なものであった。まず,シリコン窒化膜上の酸化膜をフッ化水素酸水溶液でウェットエッチングし,次に,160度の熱リン酸(H_(3)PO_(4)水溶液)が入った洗浄槽に約40分間浸漬させてシリコン窒化膜を除去し,最後に,シリコン窒化膜の下地である酸化膜をフッ化水素酸水溶液でウェットエッチングしていた。」 (2)引用発明6 前記(1)より,引用文献6には次の発明(以下,「引用発明6」という。)が記載されていると認められる。 「シリコン窒化膜の除去工程前に,シリコン窒化膜上の酸化膜をフッ化水素酸水溶液でウェットエッチングする技術。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明1の対比 ア 引用発明1の「窒化シリコンをエッチングする方法」は,下記相違点(1)を除いて,本願発明1と「窒化シリコンをエッチングする方法」の点で一致する。 イ 引用発明1の「表面上にシリコン窒化物が形成された基板を提供する工程」は,下記相違点(2)を除いて,本願発明1と「基板を提供する工程」の点で一致する。 ウ 引用発明1の「リン酸を含むエッチング液を薬液ノズル3を通じて供給し,薬液の流れを供給する工程」は,下記相違点(3)の点を除いて,本願発明1と「薬液を供給し,薬液の流れを供給する工程」の点で一致する。 エ 引用発明1の「薬液の流れを用いて,シリコン窒化物をエッチンする工程」は,下記相違点(4)の点を除いて,本願発明1と「薬液の流れを用いてエッチングする工程」の点で一致する。 そうすると,本願発明1と引用発明1とは下記オの点で一致し,下記カの点で相違する。 オ 一致点 窒化シリコンをエッチングする方法において,基板を提供する工程,薬液の流れを供給する工程,薬液の流れを用いてエッチングする工程を有する点。 カ 相違点 相違点(1) 本願発明1は,シリコン窒化物をシリコン酸化物に対して選択的に除去する方法であるのに対して,引用発明1では,選択的にエッチングする方法である点が明記されていない点。 相違点(2) 本願発明1は,表面上にシリコン窒化物及びシリコン酸化物を有する基板を提供する工程を有するのに対して,引用発明1では,表面上にシリコン窒化物が形成された基板ではあるが,他にどのようなものが形成された基板であるか明確でない点。 相違点(3) 本願発明1では,リン酸及び硫酸を含む混合酸性液体流と水蒸気との流れを供給する工程であり,前記混合酸性液体流は,150℃よりも高い温度であるのに対して,引用発明1では,リン酸を含む薬液を供給し,流れを供給する工程を有する点。 相違点(4) 本願発明1では,混合酸性液体流の流れを用いて,水蒸気の存在する中で,シリコン酸化物に対して,シリコン窒化物を選択的にエッチングするのに対して,引用発明1では,水蒸気は存在せず,かつ,シリコン酸化物に対するシリコン窒化物の選択的エッチングについて言及されていない点。 (2)相違点についての判断 前記相違点(3)について検討する。 相違点(3)は,本願発明1がシリコン窒化物をシリコン酸化物に対して選択的なエッチングを行うために用いるエッチング液とその供給工程及び温度条件という基板処理技術に不可欠な要素で有り,当該不可欠な要素として,リン酸及び硫酸を含む混合酸性液体流と水蒸気との流れを供給する工程について,前記混合酸性液体流は,150℃よりも高い温度である点について明記したものである。 ここで、引用発明1の技術的課題は、エッチング液による基板処理方法において、薬液吐出開始時に勢いよく薬液ノズルから吐出されたエッチング液により、基板表面の着液点付近(一般には回転中心付近)において、急激な濃度変化が生じ、急激にエッチングが進行し、これにより、着液点付近とそれ以外の領域との間でエッチング不均一を抑制することにある(前記第3の1(1)イ参照)。 これに対して,引用発明5の技術的課題は,水蒸気または蒸気を用いた基板の処理方法に関して,基板の処理のための,特に材料の除去,特に有機材料の除去,とりわけ例えば半導体ウエハのような基板からフォトレジスト材料を除去するための,代替技術または組成物を特定することにある(前記第3の5(1)ア及びイ参照)。 両者は基板処理の面内不均一性の抑制と半導体ウエハにおける材料除去の向上という全く異なる技術的課題を有しており、両者を組みあわせる動機付けに欠ける。 また、引用発明2には、シリコン窒化物をシリコン酸化物に対して選択的なエッチングを行う基板処理技術の技術的課題は開示されているが、相違点(3)の特徴であるリン酸及び硫酸を含む混合酸性液体流と水蒸気との流れを供給する工程については記載も示唆もない。その他の引用発明についても相違点(3)の当該特徴に関する基板処理技術について記載も示唆もない。 以上の検討から,相違点(3)は,当業者が容易に想到し得ない事項と認められる。 また,本願発明1は,相違点(3)を備えることにより,優れたシリコン窒化物のエッチングの選択性を実現し,さらにはシリコン酸化物との選択性を考慮した上での高速エッチング(具体例として,蒸気を加えることによる窒化物のエッチング速度は5倍の改善効果(本願明細書【0041】参照)を実現し,それにより基板処理装置の生産性が改善されるという顕著な効果を奏する(本願明細書【0008】参照)。 (3)小括 したがって,他の相違点を検討するまでも無く,本願発明1は,当業者が引用発明1ないし引用発明6に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 2 本願発明2ないし本願発明23について 本願発明2ないし本願発明23は,本願発明1をさらに限定したものであるから,同様に,当業者が引用発明1ないし引用発明6に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 原査定は,請求項1ないし23について,前記引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,前記第4のとおり,平成29年7月19日付けの手続補正により補正された請求項1ないし23に係る発明は前記引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。 したがって,原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 (明確性)本件出願は,明細書,特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1)請求項1において「150℃よりも高い温度」という記載は,何が150℃よりも高い温度となっているのか,その対象が不明りょうである。 (2)請求項13において「水/硫酸のモル比が5:1を越えない」という記載は,【0022】の説明において,「液体の硫酸組成物は高濃度である」という記載と矛盾している。 (3)請求項18において「前記混合酸性溶液流」という記載は,前記に対応する記載がないので不明りょうである。 2.当審拒絶理由の判断 平成29年7月19日付け手続補正で,本願の請求項1は, 「【請求項1】 基板からシリコン窒化物をシリコン酸化物に対して選択的に除去する方法であって: a)表面上にシリコン窒化物及びシリコン酸化物を有する基板を提供する工程, b)リン酸および硫酸を含む混合酸性液体流と,水蒸気流との流れを供給する工程であって,前記混合酸性液体流は,150℃よりも高い温度である,工程;ならびに, c)前記混合酸性液体流の流れを用いて,前記水蒸気の存在する中で,前記シリコン酸化物に対して前記シリコン窒化物を選択的にエッチングする工程; を有する方法。」 と補正された。 この補正により,請求項1に係る発明は明確となった。 また,補正前の請求項13は,削除された。 さらに,補正前の請求項18に記載された「前記混合酸性溶液流」は,「前記混合酸性液体流」と補正され、前記の対応関係は整合するものとなった。 よって,当審で発見した拒絶理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-09-20 |
出願番号 | 特願2013-543252(P2013-543252) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 杢 哲次、小川 将之 |
特許庁審判長 |
深沢 正志 |
特許庁審判官 |
加藤 浩一 大嶋 洋一 |
発明の名称 | 基板から窒化物を選択的に除去する方法 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |