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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A47C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47C
管理番号 1332543
審判番号 不服2016-5169  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-07 
確定日 2017-09-12 
事件の表示 特願2013-514580「椅子」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月22日国際公開、WO2011/157392、平成25年 7月11日国内公表、特表2013-528452〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件出願は、2011年6月14日(パリ条約による優先権主張 2010年6月15日(以下「優先日」という。)、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成26年6月16日付けで手続補正がなされ、平成27年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年9月2日付けで手続補正がなされ、同年11月30日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年12月7日)、これに対し、平成28年4月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。

第2.平成28年4月7日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正後の請求項1へ補正された。補正前の特許請求の範囲の請求項1、及び、補正後の特許請求の範囲の請求項1は、それぞれ以下のとおりである(下線は補正箇所を示すために審決で付した。以下の下線も同様に審決で付した。)。

(1)本件補正前の本願の発明
「【請求項1】
椅子であって、
ベースと、
前記ベースに連結され、座領域と背もたれ領域と前記座領域および背もたれ領域を接続する移行領域とを備えている支持要素であって、前記背もたれ領域が前記支持要素の前記移行領域の弾性変形により前記座領域に対して角度調整可能であり、前記背もたれ領域が腰領域を備えている支持要素と、
前記ベースおよび背もたれ領域に連結された捩り要素であって、前記背もたれ領域の座領域に対する角度調節を制御し、前記支持要素の上方で前記捩り要素にだけ連結され、前記背もたれ領域が前記座領域に対して傾斜する及び/又はツイストすることができる捩り要素と、を備えており、
前記座領域、前記背もたれ領域、及び前記移行領域は連続的である、
ことを特徴とする椅子。」

(2)本件補正後の本願の発明
「【請求項1】
椅子であって、
ベースと、
前記ベースに連結され、座領域と背もたれ領域と前記座領域および背もたれ領域を接続する移行領域とを備えている支持要素であって、前記背もたれ領域が前記支持要素の前記移行領域の弾性変形により前記座領域に対して角度調整可能であり、前記背もたれ領域が腰領域を備えている支持要素と、
前記ベースおよび背もたれ領域に連結された捩り要素であって、前記背もたれ領域の座領域に対する角度調節を制御し、前記支持要素の上方で前記捩り要素にだけ連結され、前記背もたれ領域が前記座領域に対して傾斜する及び/又はツイストすることができる捩り要素と、を備えており、
前記座領域、前記背もたれ領域、及び前記移行領域は連続的であり、
前記捩り要素が、中央背骨部材と、前記支持要素に連結され横方向に延びる一対のアームとを備えており、
前記支持要素が、湾曲したL字型の一対の支持部材と、前記支持部材間に延びるカバーとを備え、前記アームの各々が前記L字型の支持部材の一つにそれぞれ連結されている、
ことを特徴とする椅子。」

上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「捩り要素」及び「支持要素」について、「前記捩り要素が、中央背骨部材と、前記支持要素に連結され横方向に延びる一対のアームとを備えており」及び「前記支持要素が、湾曲したL字型の一対の支持部材と、前記支持部材間に延びるカバーとを備え、前記アームの各々が前記L字型の支持部材の一つにそれぞれ連結されている」と限定することを含むものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、第17条の2第5項第2号の規定に適合する。

さらに、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、前記した事項により特定される、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例

(1)原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭57-64014号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「1. 座部に対して旋回可能である背当て部と下部フレームとを有し、この下部フレームに、座部の前方部分が枢着されていると共に、背当て部の腰当て部に一端を枢着されている支持レバーの他端が枢着されており、下部フレームに対する支持レバーの枢着点はほぼ座部中央の下方に位置している形式の事務用いすにおいて、座部(4)と背当て部(7)とが円弧形の可とう性中間部分(9)を介して互いに結合されており、支持レバー(6・6′)の両端の枢着点(5・8)の結合線(V)が通常の状態では鉛直線に対して0?25゜の角度で傾斜していることを特徴とする事務用いす。」(第1ページ左下右上欄第5?18行)

イ.「通常の状態では支持レバーが急傾斜に配置されていることによつて、上体を立てた執務姿勢からうしろによりかかつた休息姿勢に移る際に、背当て部は最初に下方に向かつてよりも著しく水平後方に向かつて動かされる。」(第3ページ左上欄第11?15行)

ウ.「第4図に示した実施例ではクツシヨン20が鎖線で示されており、この場合座部及び背当て部はそれぞれほぼU字形の支持管フレーム21・22を有しており、これらの支持管フレームの開いている端部内に、折れ曲がつたばね鋼片23の端部がそう入されている。折れ曲がつたばね鋼片23は第1図に示した実施例の中間部分9と同じようにたわみ弾性区域を形成するものであつて、同じように強く湾曲せしめられている。」(第5ページ左上欄第12行?右上欄第1行)

エ.上記ア.を参照すると、第3及び4図からは、支持レバー6,6′の端部が、座部4及び背当て部7からなる部分にその上方で枢着する点を看取できる。

オ.上記ウ.を参照すると、第4図からは、支持管フレーム21・22及びばね鋼片23からなる部分が、湾曲した一対のL字状の部分を有し、支持管フレーム21・22間にクッション20が位置し、支持レバー6,6′の端部が一対のL字状の部分にそれぞれ枢着する点を看取できる。

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「座部に対して旋回可能である背当て部と下部フレームとを有し、
下部フレームに、座部の前方部分が枢着されていると共に、
背当て部の腰当て部に一端を枢着されている支持レバーの他端が枢着され、
座部4と背当て部7とが円弧形の可とう性中間部分9を介して互いに結合され、
通常の状態では支持レバーが急傾斜に配置されていることによつて、上体を立てた執務姿勢からうしろによりかかつた休息姿勢に移る際に、背当て部は最初に下方に向かつてよりも著しく水平後方に向かつて動かされ、
座部及び背当て部はそれぞれほぼU字形の支持管フレーム21・22を有しており、これらの支持管フレームの開いている端部内に、折れ曲がつたばね鋼片23の端部がそう入され、
支持レバー6,6′の端部が、座部4及び背当て部7からなる部分にその上方で枢着し、
支持管フレーム21・22及びばね鋼片23からなる部分が、湾曲した一対のL字状の部分を有し、支持管フレーム21・22間にクッション20が位置し、支持レバー6,6′の端部が一対のL字状の部分にそれぞれ枢着する
事務用いす。」

(2)同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-117537号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

カ.「【0020】
上記椅子1自体の基本構成は従来の椅子と同様に、キャスタ付きの脚2の上部に回転自在に装着される基台3に座板4が設置されるとともに、支柱として機能する側面視略L字状に屈曲する背フレーム5の下部前端部が前記基台3の前部に枢支され、ガススプリング6をハンドル7により操作することで後傾角度調整可能とされており、この背フレーム5の後部の立上部5aに背もたれ8が支持される構成を有している。
【0021】
前記背もたれ8は本発明の特徴的構成を有するもので、図4に示すように編地等のネット状の布地により背もたれ形状に形成された背もたれシート9を備え、その四周囲が連続した筒状の二重部10とされており、この背もたれシート9の上下方向中央よりやや下位位置の二重部10の左右対称位置に骨材挿入孔11、11が開口されている。
【0022】
前記背もたれシート9の二重部10内には、その上半部に上部骨材12が、同下半部には下部骨材13がそれぞれ挿入される。」

キ.「【0027】
これにより上部骨材12および下部骨材13が背もたれシート9の二重部10内に納まり、その骨材挿入孔11、11の位置で脚端の接続部14、16を連結部材18により剛結することにより背もたれ8が形造られる。」

ク.「【0029】
前記背フレーム5の立上部5aの上端左右部にはアーム部22、22が延設され、このアーム部22、22の先端の突部が前進連結部材18のボス部20に首振り自在に嵌合して取り付けられるようになっている。」

ケ.上記ク.を参照すると、図2からは、立上部5aが椅子1の中央に位置する点、及び、アーム部22、22が横方向に延設される点を看取できる。

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「基台3に座板4が設置されるとともに
背フレーム5の下部前端部が前記基台3の前部に枢支され、
背フレーム5の後部の立上部5aに背もたれ8が支持され、
背もたれ8は背もたれシート9を備え、その四周囲が連続した筒状の二重部10とされており、
上部骨材12および下部骨材13が背もたれシート9の二重部10内に納まり、脚端の接続部14、16を連結部材18により剛結することにより背もたれ8が形造られ、
背フレーム5の立上部5aの上端左右部にはアーム部22、22が延設され、
立上部5aは椅子1の中央に位置し、アーム部22、22は横方向に延設され、
このアーム部22、22の先端の突部が連結部材18のボス部20に首振り自在に嵌合して取り付けられる
椅子1。」

3.対比

本願補正発明と引用発明1とを対比する。

後者の「下部フレーム」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「ベース」に相当し、同様に、「座部」は「座領域」に、「背当て部」は「背もたれ領域」に、「腰当て部」は「腰領域」に、「事務用いす」は「椅子」にそれぞれ相当する。
後者は「座部4と背当て部7とが円弧形の可とう性中間部分9を介して互いに結合され」るから、その「中間部分9」は前者の「移行領域」に相当し、「中間部分9」は「可とう性」であるから弾性変形するといえる。また、「背当て部」は「座部に対して旋回可能である」から、後者においては「背当て部」が「座部」に対して角度調整可能であるといえる。そして、後者のこの点は、前者の「背もたれ領域が前記支持要素の前記移行領域の弾性変形により前記座領域に対して角度調整可能であ」る点に相当する。
以上の両者の各部材の対応関係を踏まえると、後者の「座部」、「背当て部」及び「中間部分9」からなる部分は、前者の「座領域と背もたれ領域と前記座領域および背もたれ領域を接続する移行領域とを備えている支持要素」に相当する。
後者の「下部フレームに、座部の前方部分が枢着されている」点は、前者の「支持要素」が「ベースに連結され」る点に相当する。
後者においては、「背当て部の腰当て部に一端を枢着されている支持レバーの他端が枢着され」るのだから、「背当て部」が「腰当て部」を備えていることは明らかであって、この点は前者の「前記背もたれ領域が腰領域を備えている」点に相当する。
後者においては「下部フレームに」、「背当て部の腰当て部に一端を枢着されている支持レバーの他端が枢着され」るから、その「支持レバー」は「下部フレーム」及び「背当て部」に連結されているといえる。そうすると、後者の「下部フレーム」及び「背当て部」に連結された「支持レバー」と、前者の「前記ベースおよび背もたれ領域に連結された捩り要素」とは、「ベースおよび背もたれ領域に連結された要素」(以下、「支持要素」と区別するために、ベースおよび背もたれ領域に連結された「要素」を「第二の要素」という。)との概念で共通する。
後者においては「通常の状態では支持レバーが急傾斜に配置されていることによつて、上体を立てた執務姿勢からうしろによりかかつた休息姿勢に移る際に、背当て部は最初に下方に向かつてよりも著しく水平後方に向かつて動かされ」るのだから、「支持レバー」は「背当て部」の動きを制御しているといえ、「背当て部」が「最初に下方に向かつてよりも著しく水平後方に向かつて動かされ」ることによって、「背当て部」の「座部」に対する角度が変化することは明らかだから、「支持レバー」は「背当て部」の「座部」に対する角度を制御しているといえる。そして、前者のこの点は、後者の「前記背もたれ領域の座領域に対する角度調節を制御」する点に相当する。
後者の「支持レバー」は「背当て部の腰当て部に一端を枢着されている」から「腰当て部」と「支持レバー」は連結されている。また、「支持レバー」は「座部4及び背当て部7からなる部分にその上方で枢着し」ており、他の部材には連結していないから、後者の「座部4及び背当て部7からなる部分」はその上方で「支持レバー」にだけ連結されているといえ、この点は前者の「前記支持要素の上方で前記捩り要素にだけ連結され」る点と、「支持要素の上方で第二の要素にだけ連結され」るとの概念で共通する。
後者においては、上記のとおり「背当て部」の「座部」に対する角度が変化するから、「背当て部」が「座部」に対して傾斜することができるといえ、「通常の状態では支持レバーが急傾斜に配置されていることによつて、上体を立てた執務姿勢からうしろによりかかつた休息姿勢に移る際に、背当て部は最初に下方に向かつてよりも著しく水平後方に向かつて動かされ」ることを踏まえると、「支持レバー」がこのような傾斜を許容していることは明らかであるから、後者の「支持レバー」と前者の「前記背もたれ領域が前記座領域に対して傾斜することができる捩り要素」とは、「背もたれ領域が座領域に対して傾斜することができる第二の要素」との概念で共通する。
後者においては、「座部4と背当て部7とが円弧形の可とう性中間部分9を介して互いに結合され」るから、「座部4」、「背当て部7」及び「中間部分9」は連続的であるといえ、この点は、後者の「前記座領域、前記背もたれ領域、及び前記移行領域は連続的であ」る点に相当する。
後者の「支持管フレーム21・22及びばね鋼片23からなる部分が、湾曲した一対のL字状の部分を有し、支持管フレーム21・22間にクッション20が位置し、支持レバー6,6′の端部が一対のL字状の部分にそれぞれ枢着する」点と、前者の「前記支持要素が、湾曲したL字型の一対の支持部材と、前記支持部材間に延びるカバーとを備え、前記アームの各々が前記L字型の支持部材の一つにそれぞれ連結されている」点とは、前者の「アーム」は「捩り要素」が備えるものであるから、「支持要素が、湾曲したL字状の部分を有する支持部材と、前記支持部材間に延びるカバーとを備え、第二の要素の各々が前記L字状の部分を有する支持部材の一つにそれぞれ連結されている」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「椅子であって、
ベースと、
前記ベースに連結され、座領域と背もたれ領域と前記座領域および背もたれ領域を接続する移行領域とを備えている支持要素であって、前記背もたれ領域が前記支持要素の前記移行領域の弾性変形により前記座領域に対して角度調整可能であり、前記背もたれ領域が腰領域を備えている支持要素と、
前記ベースおよび背もたれ領域に連結された第二の要素であって、前記背もたれ領域の座領域に対する角度調節を制御し、前記支持要素の上方で前記第二の要素にだけ連結され、前記背もたれ領域が前記座領域に対して傾斜する及び/又はツイストすることができる第二の要素と、を備えており、
前記座領域、前記背もたれ領域、及び前記移行領域は連続的であり、
前記支持要素が、湾曲した一対のL字状の部分を有する支持部材と、前記支持部材間に延びるカバーとを備え、前記第二の要素の各々が前記一対のL字状の部分の一つにそれぞれ連結されている、
椅子。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「第二の要素」に関して、前者では「捩り要素」であるのに対して、後者では「支持レバー」である点。

[相違点2]
「第二の要素」に関して、前者では「捩り要素」が「中央背骨部材と、支持要素に連結され横方向に延びる一対のアームとを備えている」のに対して、後者の「支持レバー」はそのようなものでない点。

[相違点3]
前者は「支持部材」が「湾曲したL字型の一対」のものであり、「アームの各々がL字型の支持部材の一つにそれぞれ連結されている」のに対して、後者はそのようなものでない点。

4.判断

上記相違点について検討する。

(1)相違点1及び2について

本願明細書の段落【0027】には、「捩じり要素22の捩じり特性は、対称平面22の付近で背もたれ部9の中央にもたれかからないで例えば荷重箇所25のところで背もたれ部に側方に荷重を加えたときに効果を発揮する。」と記載されており、「捩じり特性」が捩じりを生じる性質であることは明らかだから、本願補正発明の「捩じり要素」は捩じりを生じる性質を有する要素であると認められる。
引用発明2は「上記のように構成される椅子1の背もたれ8は、四周囲に上下の骨材12、13が内挿されているので十分な保形性が得られ、これに寄りかかったとき上下の骨材12、13で囲まれた中央の領域がクッション性を発揮し、上部骨材12、下部骨材13の弾性によるクッション性、さらには背フレーム5の立上部5aおよびその側方へ延びるアーム部22、22の各撓みによるクッション性が加味されて柔らかいクッション機能を奏し、座り心地のよい椅子となる」(段落【0032】)ものであって、「背フレーム5」は、「立上部5a」及び「アーム部22、22」にそれぞれ「撓み」が生じるのだから、可撓性を有するといえる。そうすると、背もたれ8への荷重が偏った場合に、可撓性を有する「背フレーム5」に捩じりが生じることは明らかであるから、引用発明2の「背フレーム5」は本願補正発明の「捩り要素」に相当するといえる。
引用発明2の「基台3」は本願補正発明の「ベース」に相当し、同様に、「背もたれ8」は「背もたれ領域」に相当する。また、引用発明2の「座板4」及び「背もたれ8」からなる部分は、本願補正発明の「支持要素」に相当する。
引用発明2においては、背もたれ8は背もたれシート9を備え、その四周囲が連続した筒状の二重部10とされており、上部骨材12および下部骨材13が背もたれシート9の二重部10内に納まり、脚端の接続部14、16を連結部材18により剛結することにより形造られるから、引用発明2の「上部骨材12」、「下部骨材13」及び「連結部材18」からなる部分は、本願補正発明の「支持要素」が備える「支持部材」に相当する。
引用発明2の「背フレーム5」は、「下部前端部が前記基台3の前部に枢支され」、「後部の立上部5aに背もたれ8が支持され」、「立上部5a」と、その上端左右部に延設される「アーム部22、22」を有し、立上部5aは椅子1の中央に位置し、アーム部22、22は横方向に延設され、アーム部22、22の先端の突部が連結部材18のボス部20に首振り自在に嵌合して取り付けられるから、引用発明2の「背フレーム5」は、「ベースおよび背もたれ領域に連結される」及び「中央背骨部材と、支持要素に連結され横方向に延びる一対のアームとを備えており、アームの各々が支持要素にそれぞれ連結されている」といえる。
従って、引用発明2は、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の発明特定事項を備えている。

引用発明1は「本発明によるいすはこのような身体の動きに適合せしめられており、身体にぴつたりとなじむ快適な支持面を提供する」(第3ページ右上欄第6?8行)ものであり、引用発明2は上述のとおり「上記のように構成される椅子1の背もたれ8は、四周囲に上下の骨材12、13が内挿されているので十分な保形性が得られ、これに寄りかかったとき上下の骨材12、13で囲まれた中央の領域がクッション性を発揮し、上部骨材12、下部骨材13の弾性によるクッション性、さらには背フレーム5の立上部5aおよびその側方へ延びるアーム部22、22の各撓みによるクッション性が加味されて柔らかいクッション機能を奏し、座り心地のよい椅子となる」(段落【0032】)ものである。
また、以上の検討のとおり、引用発明1の「支持レバー」と引用発明2の「背フレーム5」とは、ともにベースおよび背もたれ領域に連結される部材である。

そうすると、両者はともに椅子の技術分野に属し、着座状態を快適にすることを共通の課題としており、引用発明1の「支持レバー」と引用発明2の「背フレーム5」とは同様の箇所に位置するから、引用発明1に引用発明2を適用することは当業者が容易になし得ることである。

よって、引用発明1に引用発明2を適用して、相違点1及び2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点3について

引用発明1の「支持管フレーム21・22及びばね鋼片23からなる部分」は、複数の棒状部材を連結して枠組みとした部分であるところ、一般に家具において複数の棒状部材を連結して枠組みを構成することは本願の出願前に広く行われていることであって、その際に、枠組みをどのような位置で分割して複数の棒状部材とするかは、家具の強度や組立ての容易性等を考慮して、当業者が適宜決定し得る設計事項であるから、引用発明1において「湾曲したL字状の部分」を一部材にして「湾曲したL字型の一対の支持部材」となすことに困難性はない。また、本願補正発明が、「湾曲したL字型の一対の支持部材」とすることにより格別の効果を奏するものでもない。
そして、引用発明1において「湾曲したL字状の部分」を「湾曲した一対のL字型の支持部材」として引用発明2に適用すれば、必然的に「アームの各々がL字型の支持部材の一つにそれぞれ連結される」ことになる。

そうすると、引用発明1において、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1及び2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび

以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

したがって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願の発明について

1.本願の発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年9月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、「第1」の「[理由]1.(2)」に記載したとおりのものである。

2.引用例

原査定の拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1及び2の記載内容及び引用発明は、上記「第2」の「2.引用例」に記載したとおりである。

3.対比及び判断

本願発明は、本願補正発明に係る「捩り要素」及び「支持要素」について、「前記捩り要素が、中央背骨部材と、前記支持要素に連結され横方向に延びる一対のアームとを備えており」及び「前記支持要素が、湾曲したL字型の一対の支持部材と、前記支持部材間に延びるカバーとを備え、前記アームの各々が前記L字型の支持部材の一つにそれぞれ連結されている」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明と引用発明1とは、上記「第2」の「3.対比」において認定した相違点1において相違し、その他の点において一致する。

そして、上記相違点1については、「第2」の「4.判断」の(1)で検討したとおりである。

したがって、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項に該当し特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-13 
結審通知日 2017-04-17 
審決日 2017-05-02 
出願番号 特願2013-514580(P2013-514580)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47C)
P 1 8・ 113- Z (A47C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 角田 貴章高島 壮基  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
植田 高盛
発明の名称 椅子  
代理人 西島 孝喜  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 松下 満  
代理人 松下 満  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 吉野 亮平  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 吉野 亮平  
代理人 吉野 亮平  
代理人 弟子丸 健  
代理人 松下 満  
代理人 弟子丸 健  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 西島 孝喜  
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