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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G08B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G08B
管理番号 1332594
審判番号 不服2016-16895  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-11 
確定日 2017-10-10 
事件の表示 特願2012-183136「地域防災情報システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月6日出願公開、特開2014-41457、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月22日の出願であって、平成28年3月15日付けで拒絶理由が通知され、同年5月19日に手続補正がされ、同年8月10日付け(発送日:8月16日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月11日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正がされ、同年12月15日に前置報告され、平成29年2月3日に審判請求人から前置報告に対する上申書が提出され、当審において平成29年6月9日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月28日に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1 請求項1について
引用文献1の段落【0013】,段落【0023】ないし段落【0025】,図1等に記載される「セキュリティ機器」は、本願発明の「警報器」に相当する。
引用文献1の段落【0013】,段落【0023】,段落【0026】ないし段落【0027】,図1等に記載される「セキュリティコントローラ」は、本願発明の「子機」に相当する。
引用文献1の段落【0013】,図1等に記載される「統合管理装置」は、本願発明の「親機」に相当する。
引用文献1の段落【0014】,図1等に記載される「センタ装置」は、本願発明の「サーバー」に相当する。
引用文献1の段落【0046】ないし段落【0049】等には、センタ装置がセキュリティコントローラから受け取った異常発生の通報メッセージを、予め登録されている携帯電話機のメールアドレスに送信する旨の記載がある。引用文献1の段落【0013】,図1等の記載から、セキュリティコントローラからセンタ装置に送信される異常発生の通報メッセージは、統合管理装置を経由して送信されていることが明らかである。
本願の請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とを比較すると、本願発明は中継機を有する点において相違するものの、ネットワーク上に必要に応じて中継機を配置することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

引用文献3(段落【0002】ないし段落【0005】)、引用文献4(段落【0013】、段落【0014】)、引用文献5(段落【0002】ないし段落【0003】)に記載のように、複数の住戸に同じホームシステムをそれぞれ設ける構成、及び、通報された警報を近隣の住民の通信端末等に送信することは、いずれも周知技術に過ぎない。

2 請求項2、3について
引用文献2の請求項4,段落【0093】ないし段落【0104】等には、端末装置が災害用センサを備えることについて記載されている。引用文献2の段落【0047】ないし段落【0052】,図7等には、情報管理サーバが、端末装置からの災害発生通知を検知し、端末IDと対応付けて、災害データを蓄積する旨の記載がある。引用文献2の段落【0046】,段落【0051】ないし段落【0056】,段落【0077】,図6ないし図7等には、情報管理サーバが、端末IDと行政地区、所在地、設置座標を対応付けて記憶すること、地図サーバに対して被災地近傍を含む地図データを要求すること、地図上の設置座標にマークを付与することにより災害地図を生成すること、当該災害地図を添付した電子メールをメール送信先テーブルに登録された送信先アドレス宛てに送信することについて、記載されている。引用文献2に記載された発明における「情報管理サーバ」,「地図サーバ」,「端末装置」,「端末ID」は、それぞれ、本願発明の「サーバー」,「地図検索サービスサイト」,「子機」,「識別情報」に相当する。なお、引用文献2には、端末装置からの災害発生通知に端末IDが付加されることについて明記されていないが、情報管理サーバにおいて端末IDと災害発生通知との対応関係を認識していることは明らかであり、また、メッセージに自端末のIDを付すことは情報通信技術分野における常套手段であるから、端末装置からの災害発生通知に端末IDを付加することは、当業者であれば適宜なし得たことである。
引用文献1及び2に記載された発明は、各所に配置されたセンサが災害の発生を検知してセンタ装置に通知し、センタ装置が所定の電子メールアドレス宛てに災害の発生を通知する点において共通するものであるから、引用文献1に記載された発明に引用文献2に記載された発明を適用することによって、セキュリティコントローラのIDと対応付けて位置情報を記憶しておき、当該位置情報に基づいて地図検索サービスサイトから地図情報を取得し、当該地図情報を電子メールに含めて送信するよう構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。

3 まとめ
以上により、本願請求項1ないし3に係る発明は引用文献1ないし5に記載の発明に基いて、当業者が容易になし得たものである。

引用文献等一覧
1.特開2007-235603号公報
2.特開2000-251174号公報
3.特開2006-237905号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2004-272763号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2003-296835号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成29年7月28日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、次のとおりのものである。

「【請求項1】
所定の地域内における複数の住戸に設けられ、火災等を検出して警報する警報器と、
前記複数の住戸のそれぞれに設けられ、誤報スイッチを有し、前記警報器からの警報信号を含む通信情報を送信し、前記誤報スイッチが操作されたとき誤報信号を含む通信情報を送信する子機と、
前記所定の地域内に設けられ、前記子機からの通信情報を受信して再送信する中継機と、
前記子機及び前記中継機の少なくとも一方からの通信情報を受信する親機と、
前記親機と通信回線を介して接続され、前記通信回線を介して電子メールを送信するサーバーと、を備え、
前記サーバーは、前記子機のそれぞれに対応して、前記所定の地域内の居住者であって当該子機が設けられた前記住戸の住人以外の他の居住者が所持する1つ又は複数の情報端末の電子メールアドレスの情報が予め記憶され、
前記親機から前記警報信号を含む通信情報を取得したとき、前記警報器が火災等を検出した旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信し、
前記親機から前記誤報信号を含む通信情報を取得したとき、警報が誤報であった旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信することを特徴とする地域防災情報システム。
【請求項2】
前記子機は、前記通信情報に当該機器固有の識別情報を付加し、
前記サーバーは、前記識別情報に基づき、前記警報器が火災等を検出した住戸の位置情報が付与された地図情報を、前記電子メールに含めて送信することを特徴とする請求項1記載の地域防災情報システム。
【請求項3】
前記サーバーは、前記子機及び前記中継機の少なくとも一方の位置を特定する位置情報が予め記憶され、
前記親機から前記警報信号を含む通信情報を取得したとき、前記警報信号を送信した前記子機及び前記中継機の少なくとも一方の前記位置情報を、前記通信回線を介して地図検索サービスサイトに送信し、
前記地図検索サービスサイトから取得した地図情報を、前記電子メールに含めて送信することを特徴とする請求項1又は2記載の地域防災情報システム。」

第4 引用文献
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2007-235603号公報(以下「引用文献1」という。)には、「住宅設備監視制御システム」に関し、図面(特に図1、図5、図11参照)とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。


(1)「【0013】
本実施形態の住宅設備監視制御システムは、図1に示すように住宅内に設置されたコントローラC1,C2,C3が住宅設備の制御並びに監視を行う複数(図示例では3つ)のサブシステムSS1,SS2,SS3と、各サブシステムSSnのコントローラCn(n=1,2,3)と伝送路(エンハンスト・カテゴリ5若しくはカテゴリ6のLANケーブル)を介して接続される統合管理装置TMと、統合管理装置TMにLANケーブルを介して接続される複数(図示例では、2つ)の端末装置(パーソナル・コンピュータPC並びに表示制御装置CV)とを備え、これら複数のコントローラCと統合管理装置TMと端末装置とが汎用の通信プロトコル(TCP/IP、UDP、HTTPなど)を利用した宅内ネットワークを構成している。この宅内ネットワークは、100BASE-TX(IEEE 802.3u)規格に準拠したローカルエリアネットワーク(LAN)であって、スイッチングハブに相当する統合管理装置TMに、ネットワーク端末に相当する各サブシステムSSnのコントローラCnや端末装置(パーソナルコンピュータPC並びに表示制御装置CV)などがスター配線で接続されている。さらに統合管理装置TMは、インターネットに接続するための回線の種類(電話回線、CATV回線、光ファイバ回線など)に応じてADSLモデムやケーブルモデムあるいはONU(Optical Network Unit)などのインターネット接続装置MDと通信ケーブル(通常、LANケーブル)によって接続され、インターネット接続装置MDが介在することで宅内ネットワークが外部ネットワークたるインターネットに接続される。なお、この種のインターネット接続装置MDは従来周知であるから詳細な構成についての図示並びに説明は省略する。
【0014】
また、宅内ネットワークには住宅から離れた遠隔地に設置されたセンタ装置(センタサーバ)SVがインターネットを通じて接続されており、後述するようにインターネットに接続可能なノート型のパーソナルコンピュータ、携帯電話機MP、PDA(Personal Digital Assistance)等からなる携帯型の端末装置とセンタ装置SVとの間でインターネットを介したデータ通信を行うことにより、例えば、携帯電話機MPを使って外出先から住宅設備の制御や監視を行うことができる。センタ装置SVは、ネットワーク機能を有する汎用のコンピュータ装置で構成されており、携帯電話機MP等の端末装置からインターネットを通じて送信されるコントローラCn宛のメッセージやコントローラCnから宅内ネットワークに属さない端末装置に宛て送信されるメッセージを中継する機能を有している。但し、上述のようなインターネット接続機能を有する携帯型の端末装置やセンタ装置SVは従来周知であるから、詳細な構成についての図示並びに説明は省略する。」

(2)「【0023】
また、サブシステムSS2は、図1に示すように住宅内における異常発生を検知する1乃至複数種類のセキュリティ機器Y1,Y2と、各セキュリティ機器Y1,Y2の検知情報を収集するセキュリティ受信器SRと、セキュリティ受信器SRが収集した検知情報を受け取るとともに受け取った当該検知情報を応答メッセージにより宅内ネットワークを通じて伝送するコントローラ(以下、セキュリティコントローラと呼ぶ。)C2とで構成されるセキュリティシステムである。
【0024】
セキュリティ機器Y1は、例えば、人体から放射される熱線を検出することによる監視領域内への人の侵入検知や、窓に設置されているクレセント錠の施解錠検知、窓の開閉検知等を行う防犯用のセンサを具備し、センサで異常(人の侵入やクレセント錠の解錠等)を検知したときに当該検知情報を無線信号(若しくは有線信号)でセキュリティ受信器SRに送信する機能を有している。また、セキュリティ機器Y2は、煙や熱を検出することによる火災検知や都市ガスあるいはLPガスを検出することによるガス漏れ検知等を行う防災用のセンサを具備し、センサで異常(火災発生やガス漏れ等)を検知したときに当該検知情報を無線信号(若しくは有線信号)でセキュリティ受信器SRに送信する機能を有している。但し、上述のような機能を有するセキュリティ機器Y1,Y2については従来周知であるから、詳細な構成についての図示並びに説明は省略する。
【0025】
セキュリティ受信器SRは、セキュリティ機器Y1,Y2から送信された無線信号(若しくは有線信号)を受信することで検知情報を収集し、さらに当該検知情報に対応した処理、例えば、火災やガス漏れあるいは不審者の侵入等の異常発生を家人に知らせるために警報音を鳴動する処理を行うとともに検知された異常の種類や場所等の検知情報を無線信号(若しくは有線信号)でセキュリティコントローラC2に送信する処理を行う。ここで、セキュリティ機器Y1,Y2には固有の識別符号(ID)が割り当てられており、セキュリティ受信器SRでは当該識別符号によって個々のセキュリティ機器Y1,Y2の検知情報を識別可能となっている。また、セキュリティ受信器SRは、上述のようにセキュリティ機器Y1,Y2から検知情報を収集する警戒状態と検知情報を収集しない非警戒状態の2つの動作状態があり、例えば、ワイヤレス送信機(図示せず)から送信されるワイヤレス信号によって警戒状態と非警戒状態の2つの動作状態が択一的に切り換えられる。但し、ワイヤレス送信機にも固有の識別符号が割り当てられており、予め登録されている識別符号以外の識別符号が割り当てられたワイヤレス送信機では動作状態の切換が行えないようになっている。なお、上述のような機能を有するセキュリティ受信器SRについては従来周知であるから、詳細な構成についての図示並びに説明は省略する。
【0026】
セキュリティコントローラC2は、図5に示すようにマイコンを主構成要素とするセキュリティコントローラ制御部30と、宅内ネットワークのLANケーブルが接続されセキュリティコントローラ制御部30と宅内ネットワークのインタフェースを行うLANインタフェース部31と、セキュリティ受信器SRとの間で無線(若しくは有線)によるデータ通信を行う通信部32と、LED等の発光素子で電源のオン/オフ状態や通信状態等を表示する表示部33と、押釦スイッチ等を有する操作部34と、マイコンで実行するプログラムやセキュリティ機器Y1,Y2から収集した検知情報を記憶するメモリ部35とを備えている。また、図示は省略しているが、商用電源から所望の直流電源を作成してセキュリティコントローラ制御部30やその他の各部に動作電源を供給するための電源回路も備えている。
【0027】
セキュリティコントローラ制御部30は、セキュリティ受信器SRから通信部32を介して受け取った検知情報を応答メッセージとして宅内ネットワーク(あるいは宅内ネットワークと外部ネットワーク)を通じて端末装置に送信する機能(警報機能)や、端末装置から制御要求のメッセージを受け取ったときに通信部32を介してセキュリティ受信器SRにコマンドを送信してセキュリティ受信器SRの動作状態(警戒状態又は非警戒状態)を切り換えたり、あるいはセキュリティ受信器SRによる警報音の鳴動を停止させたり、端末装置から監視要求のメッセージを受け取ったときに通信部32を介してセキュリティ受信器SRにコマンドを送信してセキュリティ受信器SRの動作状態(警戒状態又は非警戒状態)を通知させるとともに、制御要求や監視要求に対する応答(セキュリティ受信器SRの動作状態や警報音の鳴動状況等)のメッセージをLANインタフェース部31より要求メッセージの送信元である端末装置に向けて送信させる機能(制御監視機能)を有する。また、セキュリティコントローラ制御部30は、自己の配下にあるセキュリティ受信器SRの動作状態等を文字や記号で表示するためのウェブコンテンツ(ウェブページ)を作成し、端末装置からの要求に応じて当該ウェブコンテンツをLANインタフェース部31より端末装置に提供(配信)する機能(ウェブサーバ機能)を有している。」

(3)「【0046】
次に、セキュリティシステム(サブシステムSS2)において、セキュリティコントローラC2がセキュリティ受信器SRから異常発生(例えば、火災やガス漏れの発生あるいは不審者の侵入など)を示す検知情報を取得した場合の動作を、図11のシーケンス図を参照して説明する。
【0047】
何れかのセキュリティ機器Y1,Y2で異常が検出され、セキュリティコントローラC2のセキュリティコントローラ制御部30がセキュリティ受信器SRから異常発生の検知情報を取得すると(1)、セキュリティコントローラ制御部30は当該検知情報を含む応答メッセージ(以下、連携メッセージと呼ぶ。)を作成して宅内ネットワーク内に一斉同報(ブロードキャスト)する(2)とともに、センタ装置SVにも異常発生通報のためのメッセージを送信する(3)。
【0048】
前記連携メッセージを受け取った表示制御装置CVでは、マイコン部50が受け取った連携メッセージに含まれる検知情報から発生した異常の内容(例えば、火災やガス漏れの発生あるいは不審者の侵入など)を判断し、その内容に応じた警報音(例えば、「火災が発生しました。すぐに避難してください。」あるいは「不審者が侵入しました。」などの音声メッセージやブザー音など)をスピーカ部55に鳴動させるとともに、異常の内容に応じた警報表示(例えば、「○○で火災が発生しました。」あるいは「××に不審者が侵入しました。」などのメッセージ)を表示部52の液晶ディスプレイに表示させる(4)。なお、検知された異常が不審者の侵入であった場合、セキュリティコントローラC2では、ウェブカメラWCを起動させるとともに当該ウェブカメラWCで撮像された画像を宅内ネットワーク経由で取得し、さらに取得した画像をセンタ装置SVに転送する。
【0049】
また、センタ装置SVでは、セキュリティコントローラC2から受け取った異常発生の通報メッセージとウェブカメラWCで撮像された画像を、予め登録されている携帯電話機MPのメールアドレスに送信することで異常の発生を外出中の家人に通知する(5)。」

(4)図1における、セキュリティ機器Y1、Y2、セキュリティ受信機SR、セキュリティコントローラC2からなるサブシステムSS2を備える住宅が、所定の地域内に設けられることは明らかである。

(5)段落【0047】における、センタ装置SVに送信される異常発生通報のためのメッセージが、異常の種類等の判別のために、連携メッセージと同様にセキュリティ受信器SRからの異常発生の検知情報を含むことは明らかである。

(6)段落【0013】、段落【0014】、及び図1、図11からは、セキュリティコントローラC2から送信されるメッセージは、統合管理装置TMに受信されることが示されている。

(7)段落【0049】における、センタ装置SVがセキュリティコントローラC2から受け取った異常発生の通報メッセージを予め登録されている携帯電話機MPのメールアドレスへ送信することは、セキュリティコントローラC2からの異常発生の通報メッセージがセキュリティ機器Y2の火災やガス漏れの検出に基いて生成されていること(段落【0024】ないし段落【0027】参照)、及びメールアドレスが電子メールのアドレスを示すことは明らかであるから、センタ装置SVがセキュリティ機器Y2が火災やガス漏れを検出した旨の情報を含む電子メールを、予め登録されている携帯電話機MPに送信するといえる。

上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容を総合して、本願発明1に則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「所定の地域内における住宅に設けられ、火災やガス漏れを検出するセキュリティ機器Y2とセキュリティ機器Y2から送信された無線信号(若しくは有線信号)を受信することで検知情報を収集し、さらに当該検知情報に対応した火災やガス漏れ等の異常発生を家人に知らせるために警報音を鳴動する処理を行うセキュリティ受信器SRと、
前記住宅に設けられ、前記セキュリティ受信機SRからの異常発生の検知情報を含むメッセージを送信するセキュリティコントローラ制御部30を有するセキュリティコントローラC2と、
前記セキュリティコントローラC2からのメッセージを受信する統合管理装置TMと、
前記統合管理装置TMとインターネットを介して接続され、前記インターネットを介して電子メールを送信するセンタ装置SVと、を備え、
前記センタ装置SVは、家人が所持する携帯電話機MPのメールアドレスの情報が予め登録され、
前記統合管理装置TMから前記異常発生の検知情報を含むメッセージを取得したとき、前記セキュリティ機器Y2が火災やガス漏れを検出した旨の情報を含む電子メールを、前記携帯電話機MPに送信する住宅設備監視制御システム。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2000-251174号公報(以下「引用文献2」という。)には、「防災管理用システム、インターネットファクシミリ装置及びサーバ装置」に関し、図面(特に図1、図3ないし図6、図12、図15参照)とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0039】
防災管理システム1において、インターネット2上には、情報管理サーバ3および地図サーバ4が設けられている。
【0040】
また、インターネット2には、複数の行政庁端末A、B、C5?7が接続している。行政庁端末A、B、C5?7は、複数の行政地区(例えば、都道府県、市町村等の行政区分)A?Cを夫々担当している。行政地区A?Cには、夫々複数のインターネットファクシミリ(以下、IFAXという)?、?および?が夫々属している。」

(2)「【0047】
図3は、情報管理サーバ3の各機能を説明するための機能ブロック図である。災害発生検知部31は、例えば各行政地区にある端末からの災害発生通知を検知する。災害発生通知は、図4に示すように、PING信号を示すエリア71およびその付加情報72からなる。この付加情報72は、行政地区A(図1中5)の行政庁端末Aからの信号であることを示す。PINGは、TCP/IPネットワーク上の任意の端末に対して接続性を確認するためのコマンドである。対象端末が稼働中で通信可能かどうかをIPレベルで確認できる。災害発生検知部31は、被災情報に基づいて、図5に示す配信先情報テーブル32の所定項目にフラグを立てる。
【0048】
PING発信部33は、災害発生検知部31が被災情報を検知した場合にIFAX?にPINGを発信する。端末管理テーブル34は、PING発信部33がPINGを送信すべき端末のIPアドレスおよび設置座標を保持している。図6に、端末管理テーブル34の一例を示す。
【0049】
応答受信部35は、IFAX?からのPINGに対する応答を受信する。
【0050】
解析部36は、IFAX?について、PING発信の有無およびその応答の有無を解析する。
【0051】
地図取り出し部37は、地図サーバ4に対して地図データを要求し、地図サーバ4から送信されてくる地図データを受信する。
【0052】
データ更新部38は、解析部36の解析結果に基づいて災害データを更新する。災害データ蓄積部39は、HTML(hyper text markup Language)文書、XML(extensible markup language)文書のような構造化文書により記述された災害データを蓄積する。災害データは、IFAX?毎に、被災情報、所在地、所在エリア等を互いに関連付けされている。図7に災害データの一例を示す。
【0053】
災害地図生成部40は、災害データ蓄積部39から被災情報を端末管理テーブル34から設置座標を夫々読み出し、地図取り出し部37から受け取った地図上の設置座標に被災情報に基づいてマークを付与する。これにより、災害地図を生成する。
【0054】
災害地図格納部41は、災害地図生成部40が作った災害地図をHDD27内の格納エリアに格納する。災害地図は画像ファイルとして格納エリアに格納され、画像ファイル名を手がかりに読み出すことができる。
【0055】
FAX送信処理部42は、災害地図をFAX送信先テーブル43に登録された送信先にファクシミリ送信する。
【0056】
メール生成部44は、災害データ蓄積部39の情報に基づいてリポートを作成し、このリポートを含む電子メールを生成する。メール生成部44は、メール送信先テーブル45に登録された送信先アドレスを、フィールド[To:]に指定する。送信先としては、例えば、警察、消防署等の行政機関に設置した行政庁端末A、B、C(図1中5?7)がある。また、この電子メールには災害地図を添付することができる。メール送信部45は、生成した電子メールを送信する。」

(3)「【0077】
ST1201において、上述の災害データ収集が終了した後、自動的に又は要求に応じて、地図取り出し部37は、被災地近傍を含む地図データを地図サーバ4に要求する。地図サーバ4は、要求された地図データを情報管理サーバ3に送信する。この地図データの転送は、例えばHTTP(hypertext transfer protocol)により行われる。
【0078】ST1202において、地図取り出し部37は、地図データを受信し、災害地図作成部40に渡す。」

(4)「【0093】
(実施の形態2)次に、通信端末装置であるインターネットファクシミリがセンサを備えている場合について説明する。
【0094】
図15は、本発明の実施の形態2に係るインターネットファクシミリを示す機能ブロック図である。図9に示す上記実施の形態1に係るインターネットファクシミリと同様の構成については同一の番号を付与し、説明を省略する。
【0095】
上記実施の形態2に係るインターネットファクシミリは、センサとして震度計100を備えている。震度計100は、測定結果を端末情報管理部101に送る。端末情報管理部101は、過去の震度計100の測定結果を管理している。端末情報管理部101は、この他に、震度計以外センサを具備している場合、これらのセンサの測定結果を管理する。
【0096】
端末情報生成部102は、端末情報管理部101より必要な情報を抽出して、震度を少なくとも含む端末詳細情報を生成する。生成した端末詳細情報は、PING応答部68からPING信号と一緒に情報管理サーバ3に送信される。
【0097】
次に、端末詳細情報を受信した情報管理サーバ3の処理について説明する。図16は、上記実施の形態2に係る情報管理サーバ3、IFAX?、地図サーバ3および避難場所サーバ間における詳細情報収集および配信処理を示すシーケンス図である。図17は、上記実施の形態2に係る情報管理サーバ3の詳細情報収集の各工程を示すフロー図である。
【0098】
ST1701において、情報管理サーバ3のPING送信部33は、IFAX?に対して詳細情報要求を送信する。例えば、詳細情報要求は、図4に示すものと同様に、PING信号に端末詳細情報を要求する旨を示す付加情報を付加したものである。
【0099】
ST1702において、応答受信部35は、IFAX?からの端末詳細情報を受信する。次に、ST1703において、解析部36は、端末詳細情報を解析する。ST1704において、データ更新部38は、解析結果に基づいて災害データ蓄積部39に蓄積した災害データを更新する。ST1705において、タイマーがカウントアップした場合に詳細情報の収集を終了する。
【0100】
詳細情報の収集が終了した後、地図取り込み部37は、上記実施の形態1と同様に地図サーバ4から地図データを取得する。災害地図生成部41は、災害データ蓄積部39から端末詳細情報を取得する。また、災害地図生成部41は、図17に示す避難場所サーバから避難場所情報を取得する。災害地図生成部41は、端末詳細情報および避難場所情報を地図データに写像して、避難場所情報を含む災害地図を作成する。次いで、FAX送信処理部42は、災害地図をIFAX?へファクシミリ送信又はインターネットファクシミリ送信する。
【0101】
上述のように上記実施の形態2に係る防災管理システムでは、インターネットファクシミリが震度計100のようなセンサを備え、震度を含む端末詳細情報を情報管理サーバ3に送信する。これにより、上記実施の形態1における被災情報に加えてセンサ測定結果を収集することができる。情報管理サーバ3は、収集した端末詳細情報を上記実施の形態1と同様に行政庁端末A、B、C(図1中5?7)等に配信することができる。
【0102】
また、上記実施の形態2においては、情報管理サーバ3は、避難場所サーバから避難場所情報を取得し、この避難場所情報を端末詳細情報と共に地図に写像して災害地図を作成し、端末に配信することができる。これにより、実施の形態1に比べてより詳細かつ豊富な情報を提供することができる。この結果、受信者は、災害情報および避難場所を照らし合わせて、適切な避難場所を正確かつ迅速に決定することができる。
【0103】また、地図データおよび避難場所情報は、情報管理サーバ3と物理的に異なる位置に設置されたサーバからインターネット2を介して取得される。これにより、情報を分散化することができるため、災害時にもシステムの安全性を高めることができる。
【0104】センサは、震度計100の他に、温度計、湿度計およびガス漏れセンサ等を含む。」

3 引用文献6
前置報告に引用され、本願の出願前に頒布された特開2002-216271号公報(以下「引用文献6」という。)には、「地域自衛セキュリティシステム」に関し、図面(特に図1、図3、図4参照)とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0031】
図1は、本発明の第1の実施の形態の地域自衛セキュリティシステムの構成図を示す。
【0032】
この第1の実施の形態の地域自衛セキュリティシステムは、警備保障会社と契約していない場合を示し、図1に示すように、A宅1に設置する通報装置10および警報器19と、B宅2に設置する代理人端末装置20と、A宅住人の携帯電話3と、保安機構5と、地域ネットワーク4とで構成されている。
【0033】
保安機構5は、代理人端末装置20より異常通報を受ける警察署や、消防署や、ガス会社などであり、地域ネットワーク4は、通報装置10と、代理人端末装置20と、A宅住人の携帯電話3と、保安機構5とに接続する。」

(2)「【0044】
外出したA宅1でガス漏れ警報器19a、火災警報器19b、防犯警報器19cのいずれかの警報器19で異常を検出し警報信号の発報があった場合、通報装置10は、発報があった警報器19の種別に応じショートメモ文章を選択し、予め定めた代理人端末装置20と外出中のA宅住人の携帯電話3に異常信号が通報1Sされる。
【0045】
B宅2の住人は、ショートメモ文章の内容に従い、A宅1に行き様子を確認して見極め真報通報か誤報通報かを判断し、真報通報の場合には代理人端末装置20の通報部24に設置されている異常通報スイッチ部24Sを発報があった警報器19の種別に応じ操作することにより保安機構5とA宅住人の携帯電話3とに異常通報2Sし、保安機構5とA宅住人はA宅1の様子の通報を受け、それぞれまたは連携してその報告内容に応じ適切なセキュリティ対応を行うことができる。
【0046】
また、誤報通報の場合には通報部24に設置されている誤報通報スイッチ24Eを操作しA宅住人の携帯電話3に誤報通報3Sすることにより、自宅を留守にした住人の心配を早期に解消することができる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その構成、機能又は技術的意義からみて、後者の「住宅」は前者の「住戸」に相当し、以下同様に、「異常発生の検知情報」は「警報信号」に、「メッセージ」は「通信情報」に、「インターネット」は「通信回線」に、「センタ装置SV」は「サーバー」に、「携帯電話機MP」は「情報端末」にそれぞれ相当する。

また、引用発明における「火災やガス漏れを検出するセキュリティ機器Y2とセキュリティ機器Y2から送信された無線信号(若しくは有線信号)を受信することで検知情報を収集し、さらに当該検知情報に対応した火災やガス漏れ等の異常発生を家人に知らせるために警報音を鳴動する処理を行うセキュリティ受信器SR」は、「セキュリティ機器Y2」が火災等を検出し、「セキュリティ受信器SR」が検出された火災等を警報するものとなっているから、引用発明における「セキュリティ機器Y2」及び「セキュリティ受信機SR」は本願発明1における「火災等を検出して警報する警報器」に相当する。

また、引用発明における「所定の地域内における住宅に設けられ、火災やガス漏れを検出するセキュリティ機器Y2とセキュリティ機器Y2から送信された無線信号(若しくは有線信号)を受信することで検知情報を収集し、さらに当該検知情報に対応した火災やガス漏れ等の異常発生を家人に知らせるために警報音を鳴動する処理を行うセキュリティ受信器SRと、前記住宅に設けられ、前記セキュリティ受信機SRからの異常発生の検知情報を含むメッセージを送信するセキュリティコントローラ制御部30を有するセキュリティコントローラC2」は、「所定の地域内における住戸に設けられ、火災等を検出して警報する警報器と、前記住戸に設けられ、前記警報器からの警報信号を含む通信情報を送信する子機」という限りにおいて、本願発明1における「所定の地域内における複数の住戸に設けられ、火災等を検出して警報する警報器と、前記複数の住戸のそれぞれに設けられ、誤報スイッチを有し、前記警報器からの警報信号を含む通信情報を送信し、前記誤報スイッチが操作されたとき誤報信号を含む通信情報を送信する子機」と共通し、
引用発明における「セキュリティコントローラC2からのメッセージを受信する統合管理装置TM」は、「子機からの通信情報を受信する親機」という限りにおいて、本願発明1における「子機及び前記中継機の少なくとも一方からの通信情報を受信する親機」と共通し、
引用発明における「センタ装置SVは、家人が所持する携帯電話機MPのメールアドレスの情報が予め登録され」ることは、家人は所定の地域内の居住者であって、通常一人または複数人であり、1人または複数人の家人の各々が所持する携帯電話機MPに対応するメールアドレスも1つまたは複数存在することは自明であるから、「サーバーは、前記所定の地域内の居住者が所持する1つ又は複数の情報端末の電子メールアドレスの情報が予め記憶され」るという限りにおいて、本願発明1における「サーバーは、前記子機のそれぞれに対応して、前記所定の地域内の居住者であって当該子機が設けられた前記住戸の住人以外の他の居住者が所持する1つ又は複数の情報端末の電子メールアドレスの情報が予め記憶され」ることと共通し、
引用発明における「センタ装置SVは、家人が所持する携帯電話機MPのメールアドレスの情報が予め登録され、前記統合管理装置TMから前記異常発生の検知情報を含むメッセージを取得したとき、前記セキュリティ機器Y2が火災やガス漏れを検出した旨の情報を含む電子メールを、前記携帯電話機MPに送信する」ことは、「サーバーは、所定の地域内の居住者が所持する1つ又は複数の情報端末の電子メールアドレスの情報が予め記憶され、親機から前記警報信号を含む通信情報を取得したとき、警報器が火災等を検出した旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信」するという限りにおいて、本願発明における「サーバーは、前記子機のそれぞれに対応して、前記所定の地域内の居住者であって当該子機が設けられた前記住戸の住人以外の他の居住者が所持する1つ又は複数の情報端末の電子メールアドレスの情報が予め記憶され、前記親機から前記警報信号を含む通信情報を取得したとき、前記警報器が火災等を検出した旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信」することに共通し、
引用発明における「住宅設備監視制御システム」は、火災やガス漏れ等の防災情報を扱うシステムであるから、「防災情報システム」という限りにおいて、本願発明1の「地域防災情報システム」と共通する。

したがって、両者は、
「所定の地域内における住戸に設けられ、火災等を検出して警報する警報器と、
前記住戸に設けられ、前記警報器からの警報信号を含む通信情報を送信する子機と、
前記子機からの通信情報を受信する親機と、
前記親機と通信回線を介して接続され、前記通信回線を介して電子メールを送信するサーバーと、を備え、
前記サーバーは、前記所定の地域内の居住者が所持する1つ又は複数の情報端末の電子メールアドレスの情報が予め記憶され、
前記親機から前記警報信号を含む通信情報を取得したとき、前記警報器が火災等を検出した旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信する防災情報システム。」
という点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1における「地域防災情報システム」の警報器が「複数の住戸」に設けられ、子機は、「複数の住戸のそれぞれに設けられ、誤報スイッチを有し、」「前記誤報スイッチが操作されたとき誤報信号を含む通信情報を送信」し、サーバーは、「前記子機のそれぞれに対応して、所定の地域内の居住者であって当該子機が設けられた前記住戸の住人以外の他の居住者が所持する」1つ又は複数の情報端末の電子メールアドレスの情報が予め記憶され、「親機から前記警報信号を含む通信情報を取得したとき、前記警報器が火災等を検出した旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信し、前記親機から前記誤報信号を含む通信情報を取得したとき、警報が誤報であった旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信する」のに対し、引用発明における「住宅設備監視制御システム」は、かかるものではない点。

〔相違点2〕
本願発明1は、「所定の地域内に設けられ、子機からの通信情報を受信して再送信する中継機」を備え、親機は「前記子機及び前記中継機の少なくとも一方からの通信情報を受信する」のに対し、引用発明は、中継機を備えていない点。

(2)相違点についての判断
相違点1における誤報スイッチと当該誤報スイッチが操作されたときの誤報信号を含む通信情報を取得したとき、警報が誤報であった旨の情報を含む電子メールの宛て先きについて検討する。
前置報告において引用された上記引用文献6には、A宅1に設置した警報器19で異常を検出し警報信号の発報があった場合、異常信号がB宅2に設置した代理人端末装置に通報され、誤報通報の場合には、代理人端末装置20に通報部24に設けた誤報通報スイッチ24Eを操作しA宅住人の携帯電話3に誤報通報3Sする地域自衛セキュリティシステムが記載されている(特に段落【0044】ないし段落【0046】参照)。
すなわち、引用文献6に記載されたシステムは、警報器19と誤報通報スイッチ24Eが別の場所に存在するものであって、本願発明1の「警報器からの警報信号を含む通信情報を送信する子機」が誤報スイッチを有するものではない。また、引用文献6に記載されたシステムは、警報器19を設置したA宅の住人の携帯電話3に誤報通報3Sするものにすぎず、本願発明1の、子機のそれぞれに対応して、所定の地域内の居住者であって当該子機が設けられた「住戸の住人以外の他の居住者が所持する1つ又は複数の情報端末」宛てに警報が誤報であった旨の情報を含む電子メールを送信するものでもない。

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記引用文献2にも、相違点1に係る本願発明1の上記事項についての記載はない。

また、原査定において、複数の住戸に同じホームシステムを設ける構成、及び通報された警報を近隣の住民の通信端末等に送信することが周知技術であることを示す文献として引用され、本願の出願前に頒布された特開2006-237905号公報(以下「引用文献3」という。)、特開2004-272763号公報(以下「引用文献4」という。)、特開2003-296835号公報(以下「引用文献5」という。)にも、相違点1に係る本願発明1の上記事項についての記載はない。

そうしてみると、引用発明において、上記引用文献2ないし引用文献6の記載から、相違点1に係る本願発明1の上記事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって本願発明1は、相違点2を検討するまでもなく、引用発明及び上記引用文献2ないし引用文献6に基いて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び上記引用文献2ないし引用文献6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
平成29年7月28日の手続補正により補正された請求項1は、「地域防災情報システム」の警報器が「複数の住戸」に設けられ、子機は、「複数の住戸のそれぞれに設けられ、誤報スイッチを有し、」「前記誤報スイッチが操作されたとき誤報信号を含む通信情報を送信」し、サーバーは、「前記子機のそれぞれに対応して、所定の地域内の居住者であって当該子機が設けられた前記住戸の住人以外の他の居住者が所持する」1つ又は複数の情報端末の電子メールアドレスの情報が予め記憶され、「親機から前記警報信号を含む通信情報を取得したとき、前記警報器が火災等を検出した旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信し、前記親機から前記誤報信号を含む通信情報を取得したとき、警報が誤報であった旨の情報を含む電子メールを、前記情報端末宛てに送信する」という事項を備えるものとなっており、上記のとおり、引用発明及び上記引用文献2ないし引用文献6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
当審では、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知している。

「請求項2には、『前記子機及び前記中継機の少なくとも一方は、前記通信情報に当該機器固有の識別情報を付加し、前記サーバーは、前記識別情報に基づき、前記警報器が火災等を検出した住戸の位置情報が付与された地図情報を、前記電子メールに含めて送信する』ことが記載されている。
しかしながら、子機の識別情報からは、当該子機が設置された住戸の位置情報を導出することができるが、中継機のみが通信情報に当該機器固有の識別情報を付加した場合には、サーバーは、識別情報に基づき、警報器が火災等を検出した住戸の位置情報を導出することはできない。」
「よって、請求項2の記載は、明確でない。 」
「また、請求項3については、請求項2を引用するものであるので、同様に明確でない。」

これに対して、平成29年7月28日の手続補正により、請求項2から「中継機」に関する記載が削除された結果、この拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし3は、いずれも、引用発明及び上記引用文献2ないし引用文献6に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2012-183136(P2012-183136)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G08B)
P 1 8・ 537- WY (G08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須藤 竜也石井 則之  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 滝谷 亮一
内田 博之
発明の名称 地域防災情報システム  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

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