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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 F01N 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01N 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F01N |
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管理番号 | 1332619 |
審判番号 | 不服2016-11557 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-08-02 |
確定日 | 2017-10-10 |
事件の表示 | 特願2014-516554「内燃機関の排気浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月28日国際公開、WO2013/175572、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2012年5月22日を国際出願日とする出願であって、平成26年11月19日に国内書面が提出され、平成26年12月8日に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成27年10月30日付けで拒絶理由が通知され、平成27年12月17日に意見書が提出されるとともに、特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年5月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年8月2日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、その後、平成29年4月10日付けで拒絶理由が当審より通知され、平成29年6月9日に意見書が提出されるとともに、明細書、特許請求の範囲及び図面について補正する手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成29年6月9日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 内燃機関の排気通路に設けられ供給される還元剤によりNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、 前記選択還元型NOx触媒よりも上流側から該選択還元型NOx触媒へ尿素を供給する供給装置と、 前記供給装置よりも上流側の排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、 前記選択還元型NOx触媒よりも下流側で排気中の粒子状物質の量を検出するPMセンサと、 を備え、前記PMセンサの検出値を用いて前記フィルタの故障判定を行う内燃機関の排気浄化装置において、 前記選択還元型NOx触媒に付着している粒子状物質の推定量が閾値以上の場合に、前記PMセンサの検出値を用いた前記フィルタの故障判定を禁止する禁止部を備えるとともに、前記供給装置からの尿素の供給を制限する制限部を備える内燃機関の排気浄化装置。 【請求項2】 内燃機関の排気通路に設けられ供給される還元剤によりNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、 前記選択還元型NOx触媒よりも上流側から該選択還元型NOx触媒へ尿素を供給する供給装置と、 前記供給装置よりも上流側の排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、 前記選択還元型NOx触媒よりも下流側で排気中の粒子状物質の量を検出するPMセンサと、 を備え、前記PMセンサの検出値を用いて前記フィルタの故障判定を行う内燃機関の排気浄化装置において、 前記選択還元型NOx触媒に付着している粒子状物質の推定量が閾値以上の場合に、前記PMセンサの検出値を用いた前記フィルタの故障判定を禁止する禁止部を備えるとともに、前記選択還元型NOx触媒に付着しているPMを除去する除去部を備える内燃機関の排気浄化装置。 【請求項3】 前記フィルタを通り抜ける粒子状物質の推定量の積算値が所定値以上となる場合が、前記選択還元型NOx触媒に付着している粒子状物質の推定量が前記閾値以上の場合である請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。 【請求項4】 前記フィルタを通り抜ける粒子状物質の推定量は、前記フィルタの故障の度合いが所定値になっているものと仮定したときに推定される量である請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。」 第3 引用文献 1 引用文献1の記載事項 原査定に引用され、本願出願前に頒布された特開2011-241724号公報(以下、「引用文献1」という、原査定の引用文献1。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (1)「【0013】 図1は、実施例1に係る内燃機関200及び故障検出装置100の構成を示す図である。図中の矢印14は、排気の流れを示す。燃焼室10の後段の排気通路に、ディーゼルパティキュレートフィルタ20(以下DPF20)が設けられている。DPF20の後段には、PMセンサ30が設けられている。燃焼室10には、燃料供給のためのインジェクタ12が設けられている。 【0014】 DPF20は、燃焼室10からの排気中に含まれるPMを捕集し、浄化するための装置であり、本発明における排気浄化装置に相当する。PMは、未燃焼の炭素を主成分とし、他にもSOxや各種の金属成分を含む。DPF20は、例えばハニカム構造を有する構造体であり、濾過壁により上流側と下流側とが分離されている。排気が濾過壁を通過する際に、排気中のPMが濾過壁へと吸着される。 【0015】 PMセンサ30は、DPF20を通過した排気中のPMを検出するセンサであり、本発明におけるセンサに相当する。PMセンサ30は、DPF20の後段に排出されたPMの累積値を検出する。 【0016】 ECU40は、PMセンサ30の出力からDPF20後段に排出されたPM累積値を取得する。ECU40は、PMセンサ30の出力値に基づいて、DPF20の故障判定を行う判定手段として機能する。」(段落【0013】ないし【0016】) (2)上記(1)及び図面の記載より分かること 上記(1)及び図1の記載によれば、DPF20は内燃機関200の排気通路に設けられていること、及び、DPF20とPMセンサ30とECU40とを有する装置が、排気浄化を行うとともに、ECU40がDPF20の故障判定を行うことが分かる。 (3)引用発明1 上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 <引用発明1> 「内燃機関200の排気通路に設けられ排気中に含まれるPMを捕集するDPF20と、 DPF20の後段で排気中のPMの累積値を検出するPMセンサ30と、ECU40と、 を有し、PMセンサ30の出力値に基づいてDPF20の故障判定を行う装置。」 2 引用文献2の記載事項 原査定に引用され、本願出願前に頒布された特開2010-229957号公報(以下、「引用文献2」という、原査定の引用文献2。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (1)「【0012】 以下、本発明の実施形態について説明する。 図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関の排気システム1を含む、車両の排気系統の断面図を示す。内燃機関の排気システム1は、粒子状物質捕集装置(DPF)12の下流側に設置される下流側排気通路(排気管)4と、排気管4に設置されてDPF12の劣化検知を行う粒子状物質測定センサ(PMセンサ)2とを備えている。・・・後略・・・」(段落【0012】) (2)「・・・前略・・・なお、上記した実施形態では、PMセンサ2より下流の排気管4の末端にマフラー6が取り付けられているが、DPF12とPMセンサ2との間の排気管4に各種の装置(例えばSCR(選択触媒還元)装置や、マフラー(サイレンサー)など)が設けられていてもよい。・・・後略・・・」(段落【0017】) (3)上記(1)、(2)及び図面から分かること 上記(1)、(2)及び図1の記載によると、内燃機関の排気システム1は、SCR装置を設ける場合、排気通路4にSCR装置が設けられ、SCR装置の上流側にDPF12を備え、SCR装置の下流側で排気中の粒子状物質を測定するPMセンサ2を備えていることが分かる。 (4)引用発明2 上記(1)ないし(3)を総合すると、引用発明2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 <引用発明2> 「排気通路4に設けられたSCR装置と、 SCR装置よりも上流側に設けられたDPF12と、 SCR装置の下流側で排気中の粒子状物質を測定するPMセンサ2と、 を備えた内燃機関の排気システム1。」 第4 対比・判断 1 本願発明1について 本願発明1と引用発明1とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明1における「排気中に含まれる」は、本願発明1における「排気中の」に相当し、以下同様に、「内燃機関200」は「内燃機関」に、「PM」は「粒子状物質」に、「DPF20」は「フィルタ」に、「後段」は「下流側」に、「累積値」は「量」に、「PMセンサ30」は「PMセンサ」に、「出力値」は「検出値」に、「基づいて」は「用いて」に、それぞれ相当する。 引用発明1における「装置」は、排気浄化を行うとともに、DPF20の故障判定を行うものであるから、本願発明1における「排気浄化装置」に相当する。 また、引用発明1における「DPF20の後段」の「PMセンサ30」と本願発明1における「選択還元型NOx触媒よりも下流側」の「PMセンサ」とは、本願発明1において、「前記選択還元型NOx触媒よりも上流側から該選択還元型NOx触媒へ尿素を供給する供給装置と、前記供給装置よりも上流側の排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するフィルタ」であるから、「フィルタよりも下流側」の「PMセンサ」という限りで共通している。 してみると、本願発明1と引用発明1とは、 「内燃機関の排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、 前記フィルタよりも下流側で排気中の粒子状物質の量を検出するPMセンサと、 を備え、前記PMセンサの検出値を用いて前記フィルタの故障判定を行う内燃機関の排気浄化装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明1は、「排気通路に設けられ供給される還元剤によりNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、選択還元型NOx触媒よりも上流側から該選択還元型NOx触媒へ尿素を供給する供給装置」とを備え、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタは、「供給装置よりも上流側の」排気通路に設けられ、PMセンサは、「選択還元型NOx触媒よりも下流側で」排気中の粒子状物質の量を検出し、「選択還元型NOx触媒に付着している粒子状物質の推定量が閾値以上の場合に、PMセンサの検出値を用いたフィルタの故障判定を禁止する禁止部を備えるとともに、供給装置からの尿素の供給を制限する制限部を備える」のに対し、引用発明1は、かかる構成を備えていない点(以下、「相違点1」という。)。 ここで、相違点1について検討する。 本願発明1及び引用発明2は、内燃機関の排気浄化装置という同一の技術分野に属するものであるから、本願発明1と引用発明2とを対比すると、その機能、構造又は技術的意義からみて、引用発明2における「排気通路4」は、本願発明1における「排気通路」に相当し、以下同様に、「SCR装置」は「還元剤によりNOxを還元する選択還元型NOx触媒」に、「DPF12」は「排気中の粒子状物質を捕集するフィルタ」に、「粒子状物質を測定する」ことは、「粒子状物質の量を検出する」ことに、「排気システム1」は「排気浄化装置」に、それぞれ、相当する。 してみると、引用発明2は、本願発明1の用語を用いると、以下のものとなる。 「排気通路に設けられ供給される還元剤によりNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、 選択還元型NOx触媒よりも上流側の排気通路に設けられ排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、 選択還元型NOx触媒よりも下流側で排気中の粒子状物質の量を検出するPMセンサと、 を備えた内燃機関の排気浄化装置。」 そして、選択還元型NOx触媒において、その上流側に還元剤である尿素の供給装置を設けることは、本願の出願前の周知技術である。 しかしながら、引用発明2は、該周知技術を踏まえても、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項のうち、「選択還元型NOx触媒に付着している粒子状物質の推定量が閾値以上の場合に、PMセンサの検出値を用いたフィルタの故障判定を禁止する禁止部を備えるとともに、供給装置からの尿素の供給を制限する制限部を備える」という事項(以下、「発明特定事項A」という。)については、構成として有していない。また、発明特定事項Aは、本願の出願前の周知技術とはいえず、当業者にとって設計的事項ともいえない。 また、本願発明1は、相違点1に係る発明特定事項を備えることにより、「・・・前略・・・NOx触媒7を通り抜ける尿素によりPMセンサ17の検出値の精度が低くなる虞がある場合に、尿素の供給を制限したり、フィルタ5の故障判定を禁止したり、PMセンサ17の検出値の使用を禁止したりすることができる。これにより、PMセンサ17の検出精度が低下することを抑制したり、または、フィルタ5の故障判定において誤判定がなされることを抑制したりできる。すなわち、フィルタ5の故障判定の精度が低下することを抑制できる。」(段落【0073】)との効果を奏するものである。 このような効果は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術から、当業者が予測できるものではない。 よって、本願発明1は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2について 本願発明2は、「前記選択還元型NOx触媒に付着している粒子状物質の推定量が閾値以上の場合に、前記PMセンサの検出値を用いた前記フィルタの故障判定を禁止する禁止部を備えるとともに、前記選択還元型NOx触媒に付着しているPMを除去する除去部を備える」という事項(以下、「発明特定事項B」という。)を有するものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2も、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本願発明3及び4について 本願発明3及び4は、本願発明1又は本願発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、それぞれ、本願発明1又は本願発明2と同様に、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1 原査定(平成28年5月19日付け拒絶査定)の概要 (1)明確性について 請求項8に記載の発明特定事項が、同請求項が引用する請求項1、4、6及び7に記載の発明特定事項と技術的に矛盾し不明確である。 よって、請求項8に係る発明は、明確とはいえない。 以上より、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 (2)進歩性について 請求項1及び5に係る発明は、引用文献1及び引用文献2に記載の発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 原査定についての判断 (1)平成29年6月9日の手続補正書により請求項8が削除されたため、拒絶の理由は解消した。 (2)平成29年6月9日の手続補正書により補正された請求項1、2には、それぞれ、発明特定事項A、発明特定事項Bを有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし4は、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 (1)サポート要件について 本願は、請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 (2)実施可能要件について 本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。 2 当審拒絶理由についての判断 平成29年6月9日の手続補正により、特許請求の範囲は、上記第2で示したとおりの請求項1ないし4となり、明細書及び図面も補正された。 これにより、当審の拒絶理由は解消された。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし4は、いずれも、引用発明1、引用発明2及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-09-27 |
出願番号 | 特願2014-516554(P2014-516554) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(F01N)
P 1 8・ 536- WY (F01N) P 1 8・ 121- WY (F01N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 今関 雅子 |
特許庁審判長 |
金澤 俊郎 |
特許庁審判官 |
八木 誠 冨岡 和人 |
発明の名称 | 内燃機関の排気浄化装置 |
代理人 | 宮下 文徳 |
代理人 | 平川 明 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 今堀 克彦 |
代理人 | 関根 武彦 |
代理人 | 小久保 篤史 |
代理人 | 世良 和信 |