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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1332639
審判番号 不服2016-11821  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-05 
確定日 2017-10-03 
事件の表示 特願2014-542901「シーンに位置する電子機器を駆動する制御手段を有するTOF照明システム及びTOFカメラと動作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月 6日国際公開、WO2014/033157、平成27年 3月 5日国内公表、特表2015-507173、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年8月28日(パリ条約による優先権主張 2012年8月30日(以下、「優先日」という。) 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月26日付けで手続補正がなされ、平成27年5月28日付けで拒絶理由が通知され、平成27年10月2日付けで手続補正がなされたが、平成28年3月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年8月5日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成29年4月20日付けで拒絶理由が通知され、平成29年7月14日付けで手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年3月28日付け)の概要は、次のとおりである。
理由1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1-14
・引用文献等1-4
引用文献1に記載された発明において、引用文献2-4の開示に倣い、周囲の人間に対する信号に代えて、物体の動作の制御のための信号とすることは、当業者が容易に想到しえたことである。

<引用文献等一覧>
引用文献1.特表2009-520194号公報
引用文献2.特開2001-41721号公報
引用文献3.特表2003-507780号公報
引用文献4.特表2008-506927号公報

理由2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1-14
請求項1に記載された「センサユニット」とは、何を意味するものか、明らかでない。
同様の点で、請求項7に係る発明並びに請求項12及びこれを引用する請求項13-14に係る発明も、明確でない。

(2)請求項5
請求項5の「前記照明ユニット・・・をさらに備え」という記載は、請求項5が引用する請求項1の「単独の照明ユニット」という記載と整合していない。また、請求項5に記載された「前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光を受信する受信機」と、請求項5が引用する請求項2-3に記載された「前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光を検出するためのセンサユニット」との関係、並びに、請求項5に記載された「ToFカメラ」と、請求項5が引用する請求項2-3に記載された「ToFセンサ配置構成」との関係が、いずれも明らかでなく、さらに、請求項5の記載にあって、「ToFカメラ」が「画面に内蔵されている」とは、どういうことか、日本語として意味が明らかでないから、請求項5に係る発明は、明確でない。

(3)請求項6及び11
請求項6に記載された「物体」と、請求項6が引用する請求項1-3に記載された「第1の物体」及び「第2の物体」との関係が、明らかでないから、請求項6に係る発明は、明確でなく、さらに、同様の点で、請求項11に係る発明も、明確でない。

(4)請求項14
請求項14に記載された「内蔵ToFカメラシステム」とは、何を意味するものか、依然として明らかでなく、また、請求項14の記載にあって、「内蔵ToFカメラシステム」を備えたものである「光源」が、その「内蔵ToFカメラシステムによって操作される」とは、どういうことか、日本語として意味が明らかでないから、請求項14に係る発明は、明確でない。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(平成29年4月20日付け)の概要は次のとおりである。

本願発明1-14は、引用例1に記載された発明及び周知の事項(引用例2-4)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
また、本願発明12は、引用例4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
引用例1:特表2008-506927号公報(拒絶査定時の引用文献4)
引用例2:特開昭55-34578号公報(当審において新たに引用した文献)
引用例3:特開2001-41721号公報(拒絶査定時の引用文献2)
引用例4:特表2009-520194号公報(拒絶査定時の引用文献1)

第4 本願発明
本願の請求項1-14に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成29年7月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
多重変調信号を含む光によりシーン(55)を照明する単独の照明ユニット(8,49)と、
前記多重変調信号を発生させ、前記多重変調信号を前記照明ユニットに提供するために適合している信号発生器(4,43)と、
前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光をToF原理に基づいて検出するToFセンサユニットと、
を備え、
前記多重変調信号は、シーン内の第1の物体と前記ToFセンサユニットとの間の距離に関連するパラメータをToF原理に基づいて測定するために適合しているToF信号として機能する一つの変調信号、及び、ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含むことを特徴とする、
回路。
【請求項2】
前記ToFセンサユニットと、ToF原理に基づいて前記ToFセンサユニットと前記シーン内の前記第1の物体との間の距離に関連する値を前記ToFセンサユニットにより検出された前記第1の物体からの反射光に基づいて決定する手段と、を備えるToFセンサ配置構成をさらに備え、
前記照明ユニットは、ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の少なくとも第2の物体の動作を制御するために前記第2の物体に情報を提供するための少なくとも一つの変調信号を照射することを特徴とする、
請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記ToFセンサユニットと、ToF原理に基づいて前記ToFセンサユニットと前記シーン内の前記第1の物体又は第2の物体との間の距離に関連する値を前記ToFセンサユニットにより検出された前記第1の物体又は前記第2の物体からの反射光に基づいて決定する手段と、を備えるToFセンサ配置構成をさらに備える、請求項1に記載の回路。
【請求項4】
前記照明ユニットと共に用いられ、前記第1又は前記第2の物体との双方向通信を提供する双方向通信システムをさらに備える、請求項2及び3のいずれか一項に記載の回路。
【請求項5】
前記ToFセンサ配置構成は、前記照明ユニット(108)、及び前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光を受信する前記ToFセンサユニットを含むToFカメラであり、前記ToFカメラはディスプレイ画面(104)と一体化されている、請求項2または請求項3に記載の回路。
【請求項6】
前記シーン内の前記第2の物体を追跡する手段と、前記シーン内の追跡された前記第2の物体と一方向通信を行うための手段と、前記シーン内の追跡された前記第2の物体にコマンドを転送するタイミングを決定する手段とをさらに備える、請求項2から4のいずれか一項に記載の回路。
【請求項7】
単独の照明ユニット(8,49)を使用してシーン(55)を多重変調信号を含む光により照明することと、
前記多重変調信号を発生させ、この信号を前記単独の照明ユニットに供給することと、
ToF原理に従って前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光をToFセンサユニットによって感知することと、
を備え、
前記多重変調信号は、シーン内の物体と前記ToFセンサユニットとの間の距離に関連するパラメータをToF原理に基づいて測定するために適合しているToF信号として機能する少なくとも一つの変調信号と、ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の動作を制御するために前記第1の物体に情報を提供するよう適合している少なくとも別の変調信号とを含むことを特徴とする、
方法。
【請求項8】
前記ToF原理に基づいて前記ToFセンサユニットと前記シーン内の第1の物体との間の距離に関連する値を前記ToFセンサユニットにより検出された前記第1の物体からの反射光に基づいて決定すること、
をさらに備え、
前記照明されたシーン内の少なくとも第2の物体の動作を制御するために前記第2の物体に情報を提供するための少なくとも一つの変調信号が照射される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ToF原理に基づいて前記ToFセンサユニットと前記シーン内の前記第1の物体又は第2の物体との間の距離に関連する値を前記ToFセンサユニットにより検出された前記第1の物体又は前記第2の物体からの反射光に基づいて決定すること、
をさらに備える、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1又は前記第2の物体との双方向通信を提供することをさらに備える、請求項8及び9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記シーン内の前記第2の物体を追跡し、前記シーン内の追跡された前記第2の物体と一方向通信を行い、前記シーン内の追跡された前記第2の物体にコマンドを転送するタイミングを決定することをさらに備える、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
多重変調信号を含む光によりシーンを照明する照明ユニットと、
前記多重変調信号を発生させ、前記多重変調信号を前記照明ユニットに提供するために適合している信号発生器(4)と、
前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光をToF原理に基づいて検出するToFセンサユニットと、
を備え、
前記多重変調信号は、シーン内の物体と前記ToFセンサユニットとの間の距離に関連するパラメータをToF原理に基づいて測定するために適合しているToF信号として機能する少なくとも一つの変調信号、及び、ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含むことを特徴とする、
光源。
【請求項13】
ワイヤレス通信プロトコルのために動作するワイヤレス信号をシーン内の物体に送信する送信機と、
をさらに備える請求項12に記載の光源。
【請求項14】
前記光源に一体化され、前記ToFセンサユニットを備えたToFカメラシステムをさらに備え、前記ToFカメラシステムは、距離測定を行うために、前記シーンを照明するよう前記照明ユニットを操作する、請求項12又は13に記載の光源。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用例1について
平成29年4月20日付けの当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2008-506927号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

ア 「【要約】
車両安全システムが、隣接する車両までの距離を求めるための距離測定装置を備える衝突回避システムを備え、その衝突回避システムは送信機(74)及び受信機(70)を備える。通信システムが、路側端末と通信するために用いられる。通信システムは、その同じ送信機及び受信機をそれぞれ用いて、路側端末との間でデータを送信及び受信する。」(フロントページ)

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は交通安全システムに関し、詳細には、車両に搭載されるトランスポンダと路側監視及び/又は制御ステーションとの間で通信できるようにするシステムに関する。」

ウ 「【0035】
衝突回避システムの最も簡単な実施態様では、レーザ出力が単にパルス動作でオン及びオフされる。しかしながら、変調されたレーザ出力を与えること、及びパルス弁別器24を相互相関システムによって置き換えることによって、システムの性能を大幅に改善することができる。この場合、そのシステムは、変調信号を供給するためのレーザのような信号源と、信号源に接続され、変調信号によって変調される送信光信号を送信するための伝送システムとを含む。
【0036】
変調信号として、たとえば最大長系列を用いることができる。これは、その入力が適当なフィードバックタップから生成されるデジタルシフトレジスタを用いて典型的に生成される擬似ランダム雑音バイナリ信号(PRBS)の仲間である。最大長系列は、r個のセクションのシフトレジスタで生成することができる最も長い周期を有する擬似ランダム雑音系列である。それは、N=2r-1個のシフトレジスタクロックサイクルの長さを有し、自己相関関数が相関点において-1/N又は1.0のピークのいずれかの2つの値だけを有するので、良好な自己相関特性を有する。」

エ 「【0047】
衝突回避システムは、光受信器としてフォトダイオードアレイを用いる。
【0048】
上記の衝突回避システムは、レーザの形の光出力デバイスと、そのレーザの出力を変調して、データ系列(MLS系列)が光出力によって符号化されるようにするための変調器と、広い視野から、変調された光信号を受信し、復号化するための光受信器とを備える。これらの構成要素は、高い周波数変調を検出することができ、高い周波数のデジタル変調された光出力を生成することができる。」

オ 「【0051】
図4は本発明のシステムを示す。ただ1つのフォトダイオードアレイ70が、戻ってくるMLS距離測定信号のための光受信器、及び路側トランスポンダ64とのデータ通信のための光受信器の役割を果たす。同様に、1つの変調器72及び光放出器74が、MLS距離測定信号を送信する役割と、路側トランスポンダ64のためのデータ通信信号を送信する役割とを果たす。
【0052】
距離測定を実施しながら、同時に通信を受信できるようにするためのフォトダイオードアレイの1つの簡単な実施形態を図5に示す。ここで、光検出器は、4つのフォトダイオード(PD11-PD22)を備え、それらのフォトダイオードは増幅器(A11-A22)に接続される。各増幅器の出力は、スイッチトランジスタ(TR11-TR22)を介して距離測定プロセッサに、また混合抵抗器(R11-R22)を介して通信回路にも接続される。
【0053】
フォトダイオードアレイ70は、異なる機能を果たすために異なるモードにおいて動作することができる。
【0054】
距離測定の場合、スイッチトランジスタを用いて、各フォトダイオードが距離測定プロセッサに順次に接続され、各フォトダイオードの視野内の物体までの飛行時間、すなわち距離が測定される。」

カ 「【0066】
通信のための変調系列が、オーバーサンプリングされた各MLSサイクル中に1つの論理1及び1つの論理0を含む(すなわち、500Kビット/秒(bps)のデータ速度を仮定すると、各ビットが2μs内に伝送される)ように構成される場合には、距離測定のためのMLSを抽出するために受信器において用いられる相互相関動作は、通信変調を概ね排除するであろう。
【0067】
これは、図7に示されるように、MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調方式が用いられる場合を考えることによって明らかであろう。」

キ 「【0070】
上記の変調システムの場合、-500Kbpsのビット速度で車両と路側トランスポンダとの間に通信リンクを確立することができ、同時に、衝突警告及び回避のための距離データを与えることができることが明らかであろう。」

ク 「【0072】
衝突警告または回避及び通信のために1つの車両上の同じ放出器または検出器を用いるという、本発明の重要な概念から利益を得る他の手法も実現可能であることは当業者には明らかであろう。
【0073】
先に説明されたように、衝突警告システムは、前方の車両から反射された照明を、1つ又は複数のどのピクセルが受信するかを特定することができる。これらの1つ又は複数の同じピクセルは、通信を目的として前方の車両によって放射される変調光信号を受信するために監視することができるピクセルであるので、この情報を、車両間通信の場合にも有益に用いることができる。それゆえ、このシステムは、全てのピクセルを同時に監視するのではなく、前方の車両からの通信のために、どのピクセルが監視されるかを選択することができる。
【0074】
光放出器は、近赤外線波長において動作し、雨、雪又は霧であっても、透過性及び検出量を最大にするように構成されることが好ましい。レーザを用いることが記述されてきたが、用いられる光源は、レーザ、高出力発光ダイオード(LED)又はLEDのアレイのいずれかを用いて実装することもできる。」

よって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(括弧内は、認定に用いた段落番号である。)。
「衝突回避システムは、レーザの形の光出力デバイスと、そのレーザの出力を変調して、データ系列(MLS系列)が光出力によって符号化されるようにするための変調器と、変調された光信号を受信し、復号化するための光受信器とを備え(【0048】)、1つの変調器72及び光放出器74が、MLS距離測定信号を送信する役割と、路側トランスポンダ64のためのデータ通信信号を送信する役割とを果たし(【0051】)、
距離測定を実施しながら、同時に通信を受信できるようにするためのフォトダイオードアレイを備え(【0052】)、
距離測定の場合、スイッチトランジスタを用いて、各フォトダイオードが距離測定プロセッサに順次に接続され、各フォトダイオードの視野内の物体までの飛行時間、すなわち距離が測定され(【0054】)、
通信のための変調系列が、各MLSサイクル中に1つの論理1及び1つの論理0を含むように構成され(【0066】)、
MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調方式が用いられ(【0067】)、
車両と路側トランスポンダとの間に通信リンクを確立することができ、同時に、衝突警告及び回避のための距離データを与えることができ(【0070】)、
衝突警告または回避及び通信のために1つの車両上の同じ放出器または検出器を用い(【0072】)、
衝突警告システムは、前方の車両から反射された照明を、1つ又は複数のどのピクセルが受信するかを特定することができ(【0073】)、
光放出器は、近赤外線波長において動作し、用いられる光源は、レーザ、高出力発光ダイオード(LED)又はLEDのアレイのいずれかを用いて実装することもできる(【0074】)、
衝突回避システム。」

2 引用例2について
当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開昭55-34578号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 「発明の詳細な説明
本発明は衛星通信方式に適する符号通信方式であって、PNコードによる距離測定と、PCM方式によるデータ通信とを同時に行う方式に関するものである。
従来人工衛星等に対する通信では、コマンドあるいはテレメトリと人工衛星の追跡のための距離測定とについて、同一搬送波を使用しなければならない場合には周波数分割による多重化を行っていた。」(第1頁左下欄第15行-同頁右上欄第6行)

イ 「また、測距信号を同時に伝送するコマンドおよびテレメトリは、いずれもPCM方式を用いる。PCM信号の「1」を通常のPNコード系列に対応させ、「0」をPNコードの反転系列に対応させてコマンドおよびテレメトリの情報伝送を行うことを特徴とする。
実施例図面によりさらに詳しく説明する。
第1図?第5図は本発明の実施例装置の構成図である。第1図は信号発生送信部、第2図は人工衛星用のトランスポンダ、第3図は同受信復調部である。
第1図中で1は測距用PNコードのクロック発信器、2は測距用PNコード(送信用)発生器、3は排他的論理和回路、4は変調器、5は送信機、6は逓分器、7はコマンド符号発生器である。」(第2頁左上欄第16行-同頁右上欄第10行)

ウ 「一方、コマンド符号はコマンド符号発生器7によって発生され、排他的論理和回路3でこのコマンド符号の「1」と「0」に対応させて、PNコード発生器2で発生させたPNコード列をそのまま、または反転して変調器4に人力する。この測距およびコマンド信号は変調l器4で変調され、送信機5により送信される。」(第2頁右下欄第2-8行)

3 引用例3について
当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2001-41721号公報(以下、「引用例3」という。)には、「なお送信されるデータは、距離情報検出動作で検出され、画像メモリ34に記憶された距離データや画像データである。また必要に応じて制御データなども送信される。」(第6頁第9欄第43-46行)と記載されている。

4 引用例4について
当審拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2009-520194号公報(以下、「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
ア 「【0014】
一実施形態では、光源コントローラ14は、一定DC信号又はパルス幅変調(PWM)信号のような照明駆動信号を発生するように設計され、これは、通常、照明システムにおいて、必要な照明を発生し、その輝度を制御するのに使用される。照明駆動信号は、コントローラ14の照明駆動サブモジュール14Aによって発生される。変調/パルス化駆動信号は、遠隔物体検出に必要な高速変調/パルスシーケンスを供給する。この変調/パルス化駆動信号は、コントローラ14の変調駆動サブモジュール14Bにより発生される。両駆動信号は、独立して発生することもできるし、組み合わせて発生することもできる。駆動信号のシーケンスは、データ/信号プロセッサ18により制御される。」

イ 「【0038】
さらに、既知の位相シフト又はフライト測定時間により振幅変調又はパルスを使用して、ヘッドライトの照明フィールドにおける車と他の車又は物体(歩行者のような)との間の距離を得ることができる。」

5 引用例5について
原査定の拒絶の理由において、「引用文献3」として引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2003-507780号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0009】
図1は、建物にある2つのレール上を縦方向に走行可能な門形クレーン1を概略的に示している。レール2の一端には、(図示してない建物)の壁に、赤外線範囲にあるレーザ光用の放射器及びセンサを持つ距離計3が設けられている。放射されるレーザ光は、クレーン1に取付けられる対向反射器5へ向けられる測定放射線4を形成する。距離計3と反射器5とを結ぶ線は、建物内におけるクレーン1の運動方向に対して平行に向く測定軸を表わす。反射器5はその中央に受信器6を持ち、この受信器6は、距離計3から放射される放射線を受信するようになっている。
【0010】
運転の際クレーン1は建物内のレール2に沿って走行する。この場合距離計3は規則正しく光パルスを放射し、これらの光パルスは反射器により反射され、距離計3において記録される。光パルスの走行時間は、クレーン1と距離計3従って建物壁との間の距離の尺度として評価される。クレーン1が距離計3からの最小又は最大距離の範囲に近づくと、クレーンの走行駆動装置へ自動的に、まず緩速走行用の信号が伝送され、それから開始すべき制動用の信号が伝送されるようにする。伝送すべき別の信号は、故障用の信号、必要な整備又は現在実行すべき整備用の信号、及び欠陥のない運転用の信号である。
【0011】
最も簡単な場合、距離計から発せられる光はパルス化され、その際光パルスの異なる時間間隔が可能である。これは、測定放射線の可変周波数を表わす。
【0012】
伝送すべき情報を持つこの周波数は、受信器6に記録され、後に設けられる評価回路により評価される。この情報の対応する電子信号は、従ってクレーン1において直接使用可能であり、もはや別の区間を介して距離計からクレーン1へ伝送される必要はない。実施例として、測定パルスの周波数は次のように情報に対応させることができる。
1. 周波数=0Hz(測定信号は発信されない)は、情報′欠陥′の伝送のために利用される。この信号は、例えば測定信号が何らかのやり方で中断されるので、距離計がもはや確実に動作できず、従ってクレーン1の運転安全性が危険に陥る時に、生じる。
2. 10Hzの低い周波数により、必要な整備のための信号を伝送することができる。
3. 100Hzの周波数により、通常の運転状態が存在するという情報を、受信器へ伝送することができる。
4. 1000Hzの周波数は、衝突を回避するための制動を開始すべきであるとの情報を割り当てられることができる。
5. 10,000Hzの周波数は、走行状態の終点へのゆっくりした接近を開始する緩速走行用の信号を意味することができる。
【0013】
その代わりに、異なるパルス長を使用して、信号のパルス幅変調を行うことによっても、情報を伝送することができる。別の変調方式も同様に考えられる。信号が、1つの変調方式から他の変調方式への移行を行うことであるようにすることもできる。」

第6 対比・判断
1 本願発明12について(引用例1を主引用例とした場合)
(1)対比
本願発明12と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調方式」によって「変調された光信号」が、本願発明12における「多重変調信号を含む光」に相当する。

イ 引用発明1における「衝突警告システム」は、「前方の車両から反射された照明を」「受信する」ものであるから、上記「ア」における対比を踏まえると、引用発明1における「変調された光信号」を放出する「光放出器」は、「前方の車両」を「照明」するものであって、本願発明12における「多重変調信号を含む光によりシーンを照明する照明ユニット」に相当するといえる。

ウ 引用発明1における「レーザの出力を変調して、データ系列(MLS系列)が光出力によって符号化されるようにするための変調器」は、「1つの変調器72」であって、「MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調方式」で光信号を変調するものであるから、該「1つの変調器72」に「MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調」信号が供給されていることは、明らかである。
よって、引用発明1における「1つの変調器72」に供給される信号を提供する回路と、本願発明12における「前記多重変調信号を発生させ、前記多重変調信号を前記照明ユニットに提供するために適合している信号発生器(4)」とは、「前記多重変調信号を前記照明ユニットに提供するための回路」の点で共通する。

エ 引用発明1における「変調された光信号を受信し、復号化するための光受信器」、つまり「フォトダイオードアレイ」は、「距離測定の場合、スイッチトランジスタを用いて、各フォトダイオードが距離測定プロセッサに順次に接続され、各フォトダイオードの視野内の物体までの飛行時間、すなわち距離が測定され」るものであるから、該「フォトダイオードアレイ」及び「距離測定プロセッサ」を含む構成は、本願発明12における「前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光をToF原理に基づいて検出するToFセンサユニット」に相当する。

オ 引用発明1の「MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調方式」における、「データ系列(MLS系列)」によって「符号化」された変調信号は、「MLS距離測定信号」であるから、本願発明12における「前記多重変調信号」に含まれる、「シーン内の物体と前記ToFセンサユニットとの間の距離に関連するパラメータをToF原理に基づいて測定するために適合しているToF信号として機能する少なくとも一つの変調信号」に相当する。

カ 引用発明1の「MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調方式」における「データ通信信号」は、「MLS距離測定信号」とは別の変調信号であるから、本願発明12の「前記多重変調信号」に含まれる「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号」とは、「前記多重変調信号」に含まれる「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している少なくとも別の変調信号」の点で共通する。

キ 引用発明1における「光放出器」に「用いられる光源」が、次の相違点は除いて、本願発明12における「光源」に相当する。

よって、本願発明12と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「多重変調信号を含む光によりシーンを照明する照明ユニットと、
前記多重変調信号を前記照明ユニットに提供するための回路と、
前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光をToF原理に基づいて検出するToFセンサユニットと、
を備え、
前記多重変調信号は、シーン内の物体と前記ToFセンサユニットとの間の距離に関連するパラメータをToF原理に基づいて測定するために適合しているToF信号として機能する少なくとも一つの変調信号、及び、ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している少なくとも別の変調信号を含むことを特徴とする、
光源。」

(相違点1)
本願発明12では、前記多重変調信号を前記照明ユニットに提供するための回路が、「前記多重変調信号を発生させ、前記多重変調信号を前記照明ユニットに提供するために適合している信号発生器(4)」であるの対し、引用発明1では、「MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調」信号が「1つの変調器72」に供給されていることは明らかであるものの、該「位相偏移変調」信号が、信号発生器によって発生されるか、明らかでない点。

(相違点2)
本願発明12では、「多重変調信号」が、「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含む」のに対し、引用発明1では、「物体までの飛行時間、すなわち距離」を測定するための「MLS距離測定信号」とは別の変調として、「前方の車両」ではなく「路側トランスポンダ」との間に「通信」のために、「MLSサイクル当たり1つの論理1及び1つの論理0を有する位相偏移変調方式」による「データ通信信号」を含んでいる点。

(2)判断
事案に鑑みて、まず、相違点2について検討すると、上記相違点2に係る本願発明12の構成、つまり、「多重変調信号」が、「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調として、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含む」という構成は、引用例2-5には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。
よって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明12は、当業者であっても、引用発明1、引用例2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明12について(引用例4を主引用例とした場合)
引用例4には、光源コントローラ14は、パルス幅変調(PWM)信号のような照明駆動信号を発生するように設計され、これは、通常、照明システムにおいて、必要な照明を発生し、その輝度を制御するのに使用されることが記載されている(引用例4段落【0014】参照。)。
すると、引用例4には、「フライト測定時間により」「照明フィールドにおける車と他の車又は物体(歩行者のような)との間の距離を得る」ための「振幅変調又はパルス」(本願発明12でいう「少なくとも1つの変調」)(引用例4段落【0038】参照)と、「照明」の「輝度を制御するのに使用される」「パルス幅変調(PWM)信号」(本願発明12でいう「別の変調」)とによって多重変調される「光源」が示されているといえる。
しかし、引用例4には、上記「1」「(2)判断」に記載したとおり、相違点2に係る本願発明12の構成、つまり、「多重変調信号」が、「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含む」という構成は記載されていない。
また、上記構成は、引用例1-3、5には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。
よって、その余の点について対比・判断するまでもなく、本願発明12は、当業者であっても、引用例4に記載された発明及び引用例1-3、5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明1-11、13-14について
本願発明13-14は、上記相違点2に係る本願発明12の構成、つまり、「多重変調信号」が、「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含む」という構成を有しているから、本願発明12について述べたのと同じ理由により、引用発明1及び引用例2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明1-11も、上記相違点1に係る本願発明12の構成と同様に、「多重変調信号」が、「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含む」との構成を備えるものであるから、本願発明12について述べたのと同様の理由により、引用発明1及び引用例2-5に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1 理由1.(進歩性)について
平成29年7月14日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、本願発明1は、「多重変調信号」が、「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含む」という事項を有するものとなり、本願発明12は、「多重変調信号」が、「ToF信号として機能する前記変調信号の一つとは別の変調を有している、前記照明されたシーン内の第1の物体の駆動を制御するために前記第1の物体に情報を提供するための少なくとも別の変調信号を含む」という事項を有するものとなった。
従って、上記「第6」「1 本願発明12について(引用例1を主引用例とした場合)」「(2)判断」、「2 本願発明12について(引用例4を主引用例とした場合)」及び「3 本願発明1-11、13-14について」で述べたとおり、本願発明1-14は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明ができたものとはいえない。

2 理由2.(明確性)について
(1)本件補正により、平成27年10月2日付けの手続補正書の特許請求の範囲(以下、「拒絶査定時の特許請求の範囲」という)の請求項1、7、12における「センサユニット」との記載は、「前記ToFセンサユニット」と補正されており、原査定の理由2(1)を維持することはできない。

(2)本件補正により、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項5は、「前記ToFセンサ配置構成は、前記照明ユニット(108)、及び前記照明ユニットによって照射されたシーンからの反射光を受信する前記ToFセンサユニットを含むToFカメラであり、前記ToFカメラはディスプレイ画面(104)と一体化されている、請求項2または請求項3に記載の回路。」(下線は、補正箇所を示す)と補正されており、原査定の理由2(2)を維持することはできない。

(3)本件補正により、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項6、11における「物体」との記載は、「第2の物体」と補正されており、原査定の理由2(3)を維持することはできない。

(4)本件補正により、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項14は、「前記光源に一体化され、前記ToFセンサユニットを備えたToFカメラシステムをさらに備え、前記ToFカメラシステムは、距離測定を行うために、前記シーンを照明するよう前記照明ユニットを操作する、請求項12又は13に記載の光源。」(下線は、補正箇所を示す)と補正されており、原査定の理由2(4)を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-20 
出願番号 特願2014-542901(P2014-542901)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01S)
P 1 8・ 121- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大和田 有軌中村 説志  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
須原 宏光
発明の名称 シーンに位置する電子機器を駆動する制御手段を有するTOF照明システム及びTOFカメラと動作方法  
代理人 亀谷 美明  
代理人 金本 哲男  
代理人 松本 一騎  
代理人 萩原 康司  
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