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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1332685
審判番号 不服2016-11247  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-26 
確定日 2017-10-10 
事件の表示 特願2014-252778「磁気共鳴イメージング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日出願公開、特開2015- 71081、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年10月20日(優先権主張 平成21年12月14日)に出願された特願2010-235837号の一部を、平成26年12月15日に新たに出願したものであって、平成27年9月7日付けで拒絶理由が通知され、同年11月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月18日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年7月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、当審において平成29年2月7日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年4月17日に意見書及び手続補正書が提出され、当審において同年5月19日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、同年7月21日に意見書及び手続補正書が提出され、当審において同年8月16日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由3」という。)が通知され、同年8月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1 本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献A-Dに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.特開平04-030830号公報
B.特開2009-045251号公報
C.特開2005-058428号公報
D.特開2009-240669号公報


第3 当審拒絶理由の概要
1 当審拒絶理由1の概要
当審拒絶理由1の概要は次のとおりである。
(1) 本願請求項1-2、4-6に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、本願請求項7-8に係る発明は、以下の引用文献1-3、5に基づいて、本願請求項9に係る発明は、以下の引用文献1-3、6に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開平05-269113号公報(当審において新たに引用した文献)
2.特開2000-126150号公報(当審において新たに引用した文献)
3.特開2008-054738号公報(当審において新たに引用した文献)
4.特開平04-030830号公報(原査定時の引用文献A)
5.特開2009-240669号公報(原査定時の引用文献D)
6.特開2008-289862号公報(当審において新たに引用した文献)

2 当審拒絶理由2の概要
当審拒絶理由2の概要は次のとおりである。
(1)本願請求項1に記載された発明、及び、本願請求項1を直接的、間接的に引用する請求項2-9に記載された発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)本願請求項1に記載された発明、及び、本願請求項1を直接的、間接的に引用する請求項2-9に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

3 当審拒絶理由3の概要
当審拒絶理由3の概要は次のとおりである。
(1)本願請求項4に記載された発明、及び、本願請求項4を引用する請求項6に記載された発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年8月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-6は以下のとおりの発明である。
ただし、本願発明1について、当審にて分節しA)?G)の見出しを付した。

「 【請求項1】
A) 第1の撮像シーケンスを実行する第1撮像部と、
B) 前記第1の撮像シーケンスの実行により得られた核磁気共鳴信号を用いて、第1の画像データを生成する第1画像生成部と、
C) 前記第1の画像データに基づいて、前記第1の撮像シーケンスとは異なる第2の撮像シーケンスにおいて印加されるプレパルスの印加領域を算出する算出部と、
D) 前記プレパルスの印加を伴って、前記第2の撮像シーケンスを実行する第2撮像部と、
E) 前記第2の撮像シーケンスの実行により得られた核磁気共鳴信号を用いて、第2の画像データを生成する第2画像生成部と
を備え、
F) 前記算出部は、前記第1の画像データから抽出された、被検体の体内の特定組織の領域である脊椎領域から、腹側脊椎境界線と、前記腹側脊椎境界線を線形近似した第1の直線とを求め、前記第1の直線に平行であって、前記腹側脊椎境界線に腹側から外接する第2の直線をさらに求め、前記第2の直線を用いて前記プレパルスの印加領域を算出する、
G) 磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1の撮像シーケンスは、前記第2の撮像シーケンスに先立って行われる、前記第2の撮像シーケンスにて収集される画像の位置決め画像を収集するものである磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1の画像データは、脊椎の椎間板撮像により得られる画像データである、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1撮像部は、ダイナミック撮像である第1の撮像シーケンスを実行し、
前記第1画像生成部は、複数の時相分の第1の画像データを生成し、
前記算出部は、前記複数の時相分の第1の画像データから、腹側体表境界線を抽出すると共に、前記第2の直線に平行であって、前記腹側体表境界線に腹よりも外側から外接する第3の直線を求め、前記第2の直線と前記第3の直線を、夫々所定のマージンだけ腹側に平行移動させた第4の直線と第5の直線を夫々求め、前記第4の直線と第5の直線とを用いて、前記複数の時相に対応する前記プレパルスの印加候補領域を夫々求め、前記複数の時相の印加候補領域のうち、前記第4の直線と第5の直線との間隔である、前記被検体の背腹方向の厚みが最大となる領域を、前記プレパルスの印加領域として算出する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1撮像部は、呼吸同期を伴って前記第1の撮像シーケンスを実行し、
前記第1画像生成部は、所定の呼吸位相に対応する前記第1の画像データを生成し、
前記算出部は、前記所定の呼吸位相に対応する第1の画像データに基づいて、前記プレパルスの印加領域を算出する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項1?請求項5のいずれか1項記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第2の撮像シーケンスの実行前に、前記算出部によって算出された前記プレパルスの印加領域を表示する表示部を更に備える磁気共鳴イメージング装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由1に引用された引用文献1(特開平05-269113号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下、同様。)。

(引1a)
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、MRI(核磁気共鳴イメージング)において、1枚又は2枚の位置決め用画像(以下、必要に応じて親画像という)を用い、本撮影時の診断用画像(以下、必要に応じて子画像という)の撮影位置を予め設定して撮影する位置決め撮影方法に関する。」

(引1b)
「【0045】続いて、第2実施例を図9?図12に基づき説明する。この第2実施例に係るMRIシステムはサチュレーション法を加味した位置決め撮影を行うものである。ハード的なシステム構成は第1実施例と同一である。
【0046】サチュレーション法は、撮影対象の特定部分からのMR信号の発生を抑制することにより、呼吸、体動に起因したアーチファクトや血流アーチファクトを排除するものである。例えば、頸椎のサジタル像を撮影する場合、図9(a)に示すように、嚥下運動のアーチファクトDGが画像の診たい部分に重なってしまい、診断が不能になることがある。これを回避するためにサチュレーション法では、係るアーチファクトを発生している部分をカバーするようにサチュレーション領域を積極的に指定する。この結果、例えば図9(b)に示すように、サチュレーション領域STを設定した部分が診断画像上で黒く現れる。しかし、嚥下運動の部位からのMR信号の発生を阻止でき、アーチファクトを排除できる。
【0047】以下に、上記サチュレーション法を加味した位置決め撮影手順例及び画像例を図10及び図11に基づき説明する。なお、ここで、撮影準備に要する図2記載の手順も同様に実施されている。また、図10記載の手順において、図3と同一又は同等のステップには同一符号を用いて、詳しい説明を省略する。
【0048】演算装置12は、位置決め用画像を撮影することが決まると(図10ステップ30)、ステップ31で撮影部位情報として例えば「頸椎」を読み込む。この入力が完了すると(ステップ32)、ステップ33で予め決めてある、撮影部位「頸椎」に対応した2つの指定スライス面の情報を呼び出す。その2つの指定スライス面は、頸椎に対しては例えばサジタル面及びコロナル面が適当である。スライス面が決まると、演算装置12はステップ34で位置決め用の親画像となるサジタル像S及びコロナル像Cを、例えばマルチアングル・マルチスライス手法及び2次元フーリエ変換法を使って撮影する。
【0049】次いでステップ35に移行して、演算装置12は一方の親画像であるサジタル像Sを図11(a)の如く表示装置13に表示する。この後、ステップ35Aに移行し、サチュレーション法の適用有りの指定を行う。これにより、本撮影で撮影される子画像の持つべき属性としてサチュレーション領域に関する情報も合わせて必要になる。そこで、ステップ36では、オペレータは表示されたサジタル像Sを見ながら、関心領域ROIaを設定することでエンコード方向の撮影領域(FOV)ED及びその領域中心位置並びにリード方向の撮影領域(FOV)RD及びその領域中心位置を指定する一方、関心領域ROIbを指定することでサチュレーション領域STを指定する。サチュレーション領域は原理的にスラブ状の形状に限定されるから、その指定は、スラブの厚み、スラブの位置、スラブの傾き角、及びスラブの本数(図12に示すように複数のスラブを組み合わせることもある)を規定して行われる。
【0050】この一方の親画像における子画像の属性の指定が終わると(ステップ37)、ステップ38において、もう一方の親画像であるコロナル像Cを図11(b)の如く表示する。次いで、ステップ39に移行し、オペレータは表示されたコロナル像Cを見ながら関心領域ROIcを使って、所望のスライス領域SLを、スライス方向の属性として指定する。
【0051】この指定が終わると(ステップ40)、ステップ41に移行し、上記ステップ36、39で指定された属性にしたがって診断用の画像を撮影する。この撮影はここでは、マルチスライス手法及び2次元フーリエ変換法に基づき行われる。この結果、図11(c)に示すように、1回のスキャンでサジタル像(子画像)が指定スライス枚数だけ得られる。
【0052】これらの子画像は、親画像S上で指定されたエンコード方向、リード方向の撮影領域と同じ画像範囲を有し、且つ、その画像中心位置が表示装置13のモニタの中心位置に一致している。これによって、勘や経験に頼らず、オペレータの意図した通りの位置決めに基づいて位置決め精度の高い子画像を得るという、前述した第1実施例と同等の作用効果を得ることができる。加えて、この実施例では、親画像S上で指定されたサチュレーション領域STの部分からMR信号を受信していないから、そのスラブ状の領域STは黒く表示され、その代わりに、嚥下運動などに起因したアーチファクトを子画像上から排除することができ、画質を向上させて診断能を上げることができる。
【0053】なお、サチュレーション法を適用した子画像の属性指定は、上述した頸椎の撮影に限定されるものでは無く、任意の診断部位の撮影に適用できる。また、その診断部位に応じて2つの親画像のスライス面を任意に選択できることは勿論である。さらに、上述した実施例はサチュレーション位置を一方の親画像のみで指定する場合を説明したが、2枚の親画像各々でサチュレーション領域を設定することもできる。
【0054】また、上述した各実施例においては、2枚の親画像を順次表示して必要な属性をその都度指定させるとしたが、この方法はモニタ画面が小さい場合には好適である。これに対して、モニタ画面が十分大きい場合には、2枚の親画像を1つのモニタ画面上に分割表示させて、画面を更新させることなく、両方の属性を同一画面上で指定させるようにしてもよい。
【0055】さらに、上述した実施例ではマルチアングル・マルチスライス撮影によって、2枚の親画像を同時に撮影するとしたが、これは、若干撮影時間は延びるものの、通常の撮影によって別々に撮影するようにしてもよい。
【0056】さらに、上述した各実施例では、2枚の親画像が直交した画像同士であるとしたが、必ずしも直交している必要は無く、エンコード方向、リード方向、及びスライス方向の属性を指定可能であれば、互いに傾斜したオブリークのスライス面同士であるとしてもよい。また、2枚のスライス面の指定も、前述した頭部、腹部撮影のものに限定されることは無く、撮影部位に応じて臨床面を考慮して決定されるものである。」

(引1c)
図9は、以下のようなものである。


(引1d)
図10は、以下のようなものである。



(引1e)
図11は、以下のようなものである。




(2)引用文献1に記載された発明
上記(引1a)-(引1e)の記載を総合すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
なお、引用発明の認定の根拠となった対応する段落番号等を付記した。

「 演算装置12が、撮影部位情報を読み込むステップ31と、予め決めてある、撮影部位に対応した2つの指定スライス面の情報を呼び出すステップ33と、位置決め用の親画像となるサジタル像S及びコロナル像Cを、例えばマルチアングル・マルチスライス手法及び2次元フーリエ変換法を使って撮影するステップ34とを実行し(【0048】)、
サチュレーション法の適用有りの指定を行うことにより、本撮影で撮影される子画像の持つべき属性としてサチュレーション領域に関する情報も合わせて必要になり(【0049】)
オペレータが表示されたサジタル像Sを見ながら関心領域ROIaを設定することでエンコード方向の撮影領域(FOV)ED及びその領域中心位置並びにリード方向の撮影領域(FOV)RD及びその領域中心位置を指定する一方、関心領域ROIbを指定することでサチュレーション領域STを指定するステップ36(【0049】段落)、及びコロナル像Cを見ながら関心領域ROIcを使って、所望のスライス領域SLを、スライス方向の属性として指定するステップ39(【0050】)によって指定された属性にしたがって診断用の画像を、マルチスライス手法及び2次元フーリエ変換法に基づき撮像するように構成された(【0051】)
サチュレーション法を加味した位置決め撮影を行うMRIシステム(【0045】)。」

2 引用文献2について
当審拒絶理由1に引用された引用文献2(特開2000-126150号公報)には、その段落【0002】、図24-26の記載からみて、「MR画像から脊椎領域を自動で抽出する」という技術的事項が記載されている。

3 引用文献3について
当審拒絶理由1に引用された引用文献3(特開2008-054738号公報)には、その段落【0022】-【0034】、【0060】、図3-4の記載からみて、「被検体のスカウト画像を撮影し、スカウト画像から、被検体の横断面、冠状断面について、基準楕円を作成し、作成した基準楕円から一定距離小さい内楕円と、基準楕円から一定距離大きい外楕円とを作成し、これら同心楕円に囲まれる領域を領域信号抑制領域としてプリパルスを計算することで、MR画像からプリパルス領域を自動で設定する」という技術的事項が記載されている。

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Aである、当審拒絶理由1に引用された引用文献4(特開平04-030830号公報)には、その第4頁左上欄第1行-左下欄第13行,第5頁右下欄第13行-第8頁左上欄第8行及び第3,7,8,10図の記載からみて、「プリサチュレーション法を適用する領域の指定は、オペレータの手間と時間を必要とし、オペレータに大きな負担を強いるものであったとの課題を解決するために、磁気共鳴イメージング装置において、脊椎40を含む腹部のうち動きのない部分の断層像を撮影する前に印加する、腹壁の動きのある部分の信号を消すためのプリサチュレーションを行うに先だって、複数の呼吸位相、特に、最大吸気時及び最大呼気時において順次周波数エンコードを印加して得られた磁気共鳴信号を元にプロファイルを作成し、腹壁位置の検出を行うことで腹壁の動作範囲29を得て、当該動作範囲29をプリサチュレーション法適用領域に自動的に設定し、特定された断面における断層画像を得る」という技術的事項が記載されている。

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献Dである、当審拒絶理由1に引用された引用文献5(特開2009-240669号公報)には、その段落【0092】、図9の記載からみて、「プリサチュレーションパルス及び反転パルスを共に印加する」という技術的事項が記載されている。

6 引用文献6について
当審拒絶理由1に引用された引用文献6(特開2008-289862号公報)には、その請求項1の記載からみて、「プリパルスの印加領域を画面上に表示する」という技術的事項が記載されている。

7 引用文献Bについて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献B(特開2009-045251号公報)には、その段落【0038】,【0044】,図7の記載からみて、「複数の呼吸時相で撮影を行うことで得た画像データに基づいて、関心領域データの移動情報を検出する」という技術的事項が記載されている。

8 引用文献Cについて
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献C(特開2005-058428号公報)には、その段落【0081】の記載からみて、「自動的に設定された領域が正確であるかどうかの確認をユーザーに求めるために、自動的に決定された領域を表示する」という技術的事項が記載されている。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア A)、B)について
引用発明における「位置決め用の親画像となるサジタル像S及びコロナル像C」が、本願発明1における「第1の画像データ」に相当し、当該「位置決め用の親画像となるサジタル像S及びコロナル像C」を撮像するための撮像シーケンスが、本願発明1における「第1の撮像シーケンス」に相当する。
そして、引用発明は、「MRIシステム」において「位置決め用の親画像となるサジタル像S及びコロナル像Cを、例えばマルチアングル・マルチスライス手法及び2次元フーリエ変換法を使って撮影するステップ34とを実行」するものであるから、本願発明1の「第1の撮像シーケンスを実行する第1撮像部と、前記第1の撮像シーケンスの実行により得られた核磁気共鳴信号を用いて、第1の画像データを生成する第1画像生成部」に相当する部分を有していることは明らかである。

イ C)について
引用発明における「サチュレーション領域ST」は、本願発明1における「プレパルスの印加領域」に相当する。
また、引用発明における「診断用の画像」が、本願発明1の「第2の画像データ」に相当し、当該「診断用の画像」を撮像するための撮像シーケンスが、本願発明1の「第2の撮像シーケンス」に相当する。
ここで、引用発明において、「位置決め用の親画像となるサジタル像S及びコロナル像C」を撮像するためのシーケンスと、「診断用の画像」を撮像するためのシーケンスが異なることは明らかである。
したがって、引用発明における「オペレータが表示されたサジタル像Sを見ながら、」「サチュレーション領域STを指定する」ことと、本願発明1における「前記第1の画像データに基づいて、前記第1の撮像シーケンスとは異なる第2の撮像シーケンスにおいて印加されるプレパルスの印加領域を算出する」こととは、「前記第1の画像データに基づいて、前記第1の撮像シーケンスとは異なる第2の撮像シーケンスにおいて印加されるプレパルスの印加領域を決定され」る点で共通している。

ウ D)、E)について
上記イで説示したように、引用発明における「診断用の画像」が、本願発明1の「第2の画像データ」に相当し、当該「診断用の画像」を撮像するための撮像シーケンスが、本願発明1の「第2の撮像シーケンス」に相当する。
そして、引用発明は、「指定された属性にしたがって診断用の画像を、マルチスライス手法及び2次元フーリエ変換法に基づき撮像する」ものであり、当該「指定された属性」には、「サチュレーション領域ST」も含まれているから、本願発明1の「前記プレパルスの印加を伴って、前記第2の撮像シーケンスを実行する第2撮像部と、前記第2の撮像シーケンスの実行により得られた核磁気共鳴信号を用いて、第2の画像データを生成する第2画像生成部」に相当する部分を有していることは明らかである。

エ G)について
引用発明の「MRIシステム」は、本願発明1の「磁気共鳴イメージング装置」に相当する。

オ 上記ア-エから、引用発明は、本願発明1に対して、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「第1の撮像シーケンスを実行する第1撮像部と、
前記第1の撮像シーケンスの実行により得られた核磁気共鳴信号を用いて、第1の画像データを生成する第1画像生成部と、
前記第1の画像データに基づいて、前記第1の撮像シーケンスとは異なる第2の撮像シーケンスにおいて印加されるプレパルスの印加領域が決定され、
前記プレパルスの印加を伴って、前記第2の撮像シーケンスを実行する第2撮像部と、
前記第2の撮像シーケンスの実行により得られた核磁気共鳴信号を用いて、第2の画像データを生成する第2画像生成部と
を備える、
磁気共鳴イメージング装置」

<相違点>
(相違点1)プレパルスの印加領域の決定に関して、本願発明1は、「前記第1の画像データから抽出された、被検体の体内の特定組織の領域である脊椎領域から、腹側脊椎境界線と、前記腹側脊椎境界線を線形近似した第1の直線とを求め、前記第1の直線に平行であって、前記腹側脊椎境界線に腹側から外接する第2の直線をさらに求め、前記第2の直線を用いて前記プレパルスの印加領域を算出する」「算出部」を備えるのに対して、引用発明は、「オペレータが表示されたサジタル像Sを見ながら」「指定」する点。

(2) 相違点についての判断
上記相違点について検討すると、プレパルス印加領域の算出方法として、「前記第1の画像データから抽出された、被検体の体内の特定組織の領域である脊椎領域から、腹側脊椎境界線と、前記腹側脊椎境界線を線形近似した第1の直線とを求め、前記第1の直線に平行であって、前記腹側脊椎境界線に腹側から外接する第2の直線をさらに求め、前記第2の直線を用いて前記プレパルスの印加領域を算出する」ことは、上記引用文献2-6及びB-Cには記載も示唆もされておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明ならびに引用文献2-6及びB-Cに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-6について
本願発明2-6も、上記相違点に係る本願発明1が備える構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2-6及びB-Cに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定についての判断
上記「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」に示したとおり、本願発明1ないし9は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献A-Dに基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由1について
上記「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」に示したとおり、本願発明1-6は、当業者であっても、当審拒絶理由1において引用された引用文献1-6に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 当審拒絶理由2について
当審拒絶理由2では、請求項1の「前記特定組織の領域の外側から前記特定組織の領域の境界線に接する接線を求め」との記載は明確でないとの拒絶の理由(理由1)、並びに、請求項1の「前記算出部は、前記第1の画像データから抽出された、被検体の体内の特定組織の領域、及び、前記第2の撮像シーケンスにおける撮像領域との関係に基づいて」及び「前記特定組織の領域の外側から前記特定組織の領域の境界線に接する接線」との発明特定事項を有する請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明であるとはいえないとの拒絶の理由(理由2)を通知しているが、平成29年8月24日付けの手続補正により、請求項1の当該記載を含む部分が、「前記算出部は、前記第1の画像データから抽出された、被検体の体内の特定組織の領域である脊椎領域から、腹側脊椎境界線と、前記腹側脊椎境界線を線形近似した第1の直線とを求め、前記第1の直線に平行であって、前記腹側脊椎境界線に腹側から外接する第2の直線をさらに求め、前記第2の直線を用いて前記プレパルスの印加領域を算出する」と補正された結果、当該理由1及び理由2は、ともに解消した。

3 当審拒絶理由3について
当審拒絶理由3では、請求項4の「前記第2の直線を用いて前記プレパルスの印加候補領域を夫々求め、前記複数の時相の印加候補領域のうち、前記被検体の背腹方向の厚みが最大となる領域を、前記プレパルスの印加領域として算出する」との記載は明確でないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年8月24日付けの手続補正により、「腹側体表境界線を抽出すると共に、前記第2の直線に平行であって、前記腹側体表境界線に腹よりも外側から外接する第3の直線を求め、前記第2の直線と前記第3の直線を、夫々所定のマージンだけ腹側に平行移動させた第4の直線と第5の直線を夫々求め、前記第4の直線と第5の直線とを用いて、前記複数の時相に対応する前記プレパルスの印加候補領域を夫々求め、前記複数の時相の印加候補領域のうち、前記第4の直線と第5の直線との間隔である、前記被検体の背腹方向の厚みが最大となる領域を、前記プレパルスの印加領域として算出する」と補正された結果、当審拒絶理由通知3における拒絶の理由は解消した。


第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-26 
出願番号 特願2014-252778(P2014-252778)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 姫島 あや乃右▲高▼ 孝幸  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 松岡 智也
渡戸 正義
発明の名称 磁気共鳴イメージング装置  
代理人 特許業務法人東京国際特許事務所  

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