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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1332700
審判番号 不服2016-10390  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-08 
確定日 2017-10-10 
事件の表示 特願2013-511161「サイズ変更されたフラットパネルディスプレイの作成および修理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月24日国際公開、WO2011/146173、平成25年 8月15日国内公表、特表2013-532304、請求項の数(17)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

平成23年 4月11日 国際特許出願(パリ条約による優先権主張20 10年5月17日、米国)
平成26年 4月10日 手続補正書
平成27年 3月19日 拒絶理由通知(同年3月24日発送)
平成27年 9月16日 意見書・手続補正書
平成28年 2月29日 拒絶査定(同年3月8日送達)
平成28年 7月 8日 本件審判請求・手続補正書
平成29年 7月19日 拒絶理由通知(同年7月25日発送、
以下「当審拒絶理由通知」という。)
平成29年 8月 4日 意見書・手続補正書

第2 原査定の概要
原査定は、請求項1-17(注:平成27年9月16日付け手続補正により補正された請求項1-17である。)に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献等一覧
国際公開第2006/028445号(以下「引用文献」という。)

第3 本願発明
本願の請求項1-17に係る発明(以下、その順に「本願発明1」等という。)は、平成29年8月4日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-17に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
前面プレートと、後面プレートと、前記前面および後面プレートの間隔を空ける周縁シールと、前記前面および後面プレート間でかつ前記周縁シールの縁部内の領域に含まれる画像生成媒体とを備える電子ディスプレイをサイズ変更する方法において、
前記前面および後面プレートの各々に沿うカットラインを識別して、前記ディスプレイの対象部分および余剰部分を識別するステップと、
前記ディスプレイを前記カットラインに沿って分離させて、前記ディスプレイの対象部分および余剰部分を分離させ、それにより、前記対象部分に沿って、前記対象部分のプレート間の領域に通じる露出エッジを生じさせるステップと、
前記対象部分のプレートを互いの方向に向けて押圧して、所定のセルギャップ分、それらプレートの間隔を空けるステップと、
前記露出エッジに沿って粘着剤を塗布するステップと、
前記対象部分の部分的な画像障害を引き起こす電気的短絡を前記露出エッジにおける電極から取り除くステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
電子ディスプレイをサイズ変更する方法であって、前面プレートと、後面プレートと、前記前面および後面プレートの間隔を空ける周縁シールと、前記前面および後面プレート間でかつ前記周縁シールの縁部内の領域に含まれる画像生成媒体とを備え、前記前面および後面プレートが、所定のセルギャップ分、間隔を空けて配置される電子ディスプレイをサイズ変更する方法において、
前記ディスプレイを切断して対象部分と余剰部分を分離させ、それにより、前記対象部分に沿って、前記対象部分のプレート間の領域に通じる露出エッジを生じさせるステップと、
前記露出エッジに沿ってプレート間に粘着剤の少なくとも一部が延在するようように、前記露出エッジに沿って粘着剤を塗布するステップと、
プレート間に延在する粘着剤が前記露出エッジに沿って実質的なシールを維持する状態で、プレート間から延出する、前記露出エッジに沿う外部の粘着剤のほぼすべてを取り除くステップと、
外部の粘着剤のほぼすべてを取り除いた後に、前記対象部分の露出エッジにおける電気的短絡を取り除くステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
電気的短絡を取り除くステップが、
前記短絡を開放できるように前記露出エッジ上の短絡に機械的力を加えるステップと、
開放された短絡に追加の力を加えるステップとを含み、
前記追加の力が、電気的力、化学的力および熱的力からなる群から選択されるものであることを特徴とする方法。
【請求項4】
サイズ変更されたフラットパネルディスプレイの短絡を修復する方法であって、
サイズ変更されたフラットパネルディスプレイの対象部分を得るステップと、
前記サイズ変更されたフラットパネルディスプレイの対象部分における短絡と、対応する前記対象部分の画像領域におけるピクセルの障害ラインとを識別するステップと、
短絡を開放できるように短絡に機械的力を加えるステップであって、ピクセルの障害ラインを消滅させるステップと、
開放された短絡に追加の力を加えるステップとを備え、
前記追加の力が、電気的力、化学的力および熱的力からなる群から選択されるものであることを特徴とする方法。
【請求項5】
サイズ変更されたフラットパネルディスプレイの短絡を修復する方法であって、
サイズ変更されたフラットパネルディスプレイの対象部分を得るステップと、
前記サイズ変更されたフラットパネルディスプレイの対象部分における短絡と、対応する前記対象部分の画像領域上のピクセルの障害ラインとを識別するステップと、
短絡を開放できるように短絡に機械的力および化学的力を同時に加えて、ピクセルの障害ラインを消滅させるステップと、
開放された短絡のストレステストを行うステップと、
前記ストレステスト中にピクセルの障害ラインが現れないことを確認するステップと、
その確認するステップの後に、開放された短絡に隣接する領域に保護材料を塗布するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
開放された短絡に追加の力を加えるステップをさらに備え、
前記追加の力が、電気的力および熱的力からなる群から選択されるものであることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の方法において、
開放された短絡のストレステストを行うステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5又は7に記載の方法において、
前記ストレステストを行うステップが、湿潤剤を塗布するためのアプリケータで、開放された短絡を擦るステップと、その擦る間にピクセルの障害ラインが現れないことを確認するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項3又は4に記載の方法において、
開放された短絡に隣接する領域に保護材料を塗布するステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項5又は9に記載の方法において、
前記保護材料が誘電性のシーリング剤であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法において、
前記保護材料を塗布した後に、開放された短絡のストレステストを行うステップと、
ピクセルの障害ラインが再び現れないことを確認するステップとをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項3又は4に記載の方法において、
前記追加の力が化学的力であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項3、4又は6のいずれか1項に記載の方法において、
前記追加の力が電気的力であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項3、4又は6のいずれか1項に記載の方法において、
前記追加の力が熱的力であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項3、4、6又は12乃至14のいずれか1項に記載の方法において、
開放された短絡に第2の追加の力を加えるステップをさらに備え、
前記第2の追加の力が、前記追加の力とは異なるものであり、かつ電気的力、化学的力および熱的力からなる群から選択されるものであることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項5に記載の方法において、
前記ストレステストを行うステップが、前記フラットパネルディスプレイのパネルを曲げるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項5、7又は11のいずれか1項に記載の方法において、
前記ストレステストを行うステップが、湿潤剤を塗布するためのアプリケータで、開放された短絡を擦るステップを含むことを特徴とする方法。

第4 引用文献、引用発明等
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(国際公開第2006/028445号)には、以下の事項が記載されている。(注:下線は当審が付加した。以下同様である。)
ア 発明の技術分野(FIELD OF THE INVENTION)の記載

(1頁2行?同頁5行)
(訳:本発明は、一般に、電子ディスプレイに関し、より詳細には、例えば、オリジナルのディスプレイをカスタマイズし、サイズ変更し、及び/又は頑丈にするために、電子ディスプレイを改造するための装置及び方法、並びにこのような装置及び方法を用いて製造されるディスプレイに関する。)

イ 発明の概要(SUMMARY OF THE INVENTION)の記載

(3頁下4行?4頁3行)
(訳:プレートが切断されると、内部電子回路も切断され、しばしば電気的連続性の再確立が必要となる。同様に、ディスプレイエレクトロニクスを取り外し、再取り付けし、および/または別の方法で修正することができ、フィルタ、偏光子、および/またはディスプレイに関連付けられた他のフィルムを、たとえばカスタマイズされたディスプレイサイズおよび/または形状に合わせて切断することができる。したがって、ディスプレイに機能性を高める機会が存在する。任意選択的に、カスタムベゼルおよび/またはフレームを使用して、例えば、ユニット全体のさらなる耐久性を可能にするように、ディスプレイを収容することができる。)

ウ 詳細な説明(DETAILED DESCRIPTION)の記載

(訳:例えば、カスタマイズされたディスプレイ10’の内部または外部にある、電子回路の何れかが、切断、損傷および/または除去された場合、電気的導通を復元しなければならないことがある。任意には、切断、損傷および/または除去されたそれらを置換するために、あるいはカスタマイズされたディスプレイ10’の機能性を強化するために、新たな回路が必要とされることがある。そのような回路を修理または置換する方法は、引用によって組み込まれる米国特許第6,204,906号に記載されている。任意には、その他の切断を行ってもよく、かつ/または、例えば、米国特許第6,204,906号に記載の例示的な方法を使用して、COTSディスプレイのセクションを取り除くようにしてもよい。)

エ 請求項の記載

(訳:1.前面プレートと、背面プレートと、前面プレートと背面プレートとを離間させる周囲シールと、前面プレートと背面プレートとの間の領域に含まれる画像生成媒体とを含む電子ディスプレイのサイズ変更方法であって、該方法は、
前記前面及び背面プレートの各々に沿ってスクライブラインを形成して前記ディスプレイのターゲット部分及び余剰部分を識別する段階と、
スクライブラインに沿ってディスプレイを切断してディスプレイのターゲット部分と余分部分を分離し、それによりターゲット部分に沿い、ターゲット部分のプレート間の領域に通じる露出エッジを形成する段階と、
ターゲット部分のプレートを互いに向かって押圧する段階と、
露出したエッジに沿って接着剤を塗布する段階と、そして、
ターゲット部分のプレートを所定のセルギャップに戻し、それによって、露出したエッジに沿ってプレート間に接着剤を引き込む段階、
からなる。)


(2)上記(1)の記載によれば、引用文献には、以下の発明が記載されていると認められる。
「前面プレートと、背面プレートと、前面プレートと背面プレートとを離間させる周囲シールと、前面プレートと背面プレートとの間の領域に含まれる画像生成媒体とを含む電子ディスプレイのサイズ変更方法であって、該方法は、
前記前面及び背面プレートの各々に沿ってスクライブラインを形成して前記ディスプレイのターゲット部分及び余剰部分を識別する段階と、
スクライブラインに沿ってディスプレイを切断してディスプレイのターゲット部分と余分部分を分離し、それによりターゲット部分に沿い、ターゲット部分のプレート間の領域に通じる露出エッジを形成する段階と、
ターゲット部分のプレートを互いに向かって押圧する段階と、
露出したエッジに沿って接着剤を塗布する段階と、そして、
ターゲット部分のプレートを所定のセルギャップに戻し、それによって、露出したエッジに沿ってプレート間に接着剤を引き込む段階、
からなり、
カスタマイズされたディスプレイの内部または外部にある電子回路の何れかが、切断、損傷および/または除去された場合、電気的導通を復元する、方法。」(以下「引用発明」という。)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「前面プレート」、「背面プレート」、「周囲シール」、「画像生成媒体」、「電子ディスプレイ」、「スクライブライン」、「ターゲット部分」、「余分部分」、「露出エッジ」、「セルギャップ」、「接着剤」は、それぞれ、本願発明1の「前面プレート」、「後面プレート」、「周縁シール」、「画像生成媒体」、「電子ディスプレイ」、「カットライン」、「対象部分」、「余剰部分」、「露出エッジ」、「セルギャップ」、「粘着剤」に相当する。
してみると、両者は、
「前面プレートと、後面プレートと、前記前面および後面プレートの間隔を空ける周縁シールと、前記前面および後面プレート間でかつ前記周縁シールの縁部内の領域に含まれる画像生成媒体とを備える電子ディスプレイをサイズ変更する方法において、
前記前面および後面プレートの各々に沿うカットラインを識別して、前記ディスプレイの対象部分および余剰部分を識別するステップと、
前記ディスプレイを前記カットラインに沿って分離させて、前記ディスプレイの対象部分および余剰部分を分離させ、それにより、前記対象部分に沿って、前記対象部分のプレート間の領域に通じる露出エッジを生じさせるステップと、
前記対象部分のプレートを互いの方向に向けて押圧して、所定のセルギャップ分、それらプレートの間隔を空けるステップと、
前記露出エッジに沿って粘着剤を塗布するステップとを備える方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:本願発明1は、「前記対象部分の部分的な画像障害を引き起こす電気的短絡を前記露出エッジにおける電極から取り除くステップ」を備えるのに対し、引用発明は、「カスタマイズされたディスプレイの内部または外部にある、電子回路の何れかが、切断、損傷および/または除去された場合、電気的導通を復元する」が、「前記対象部分の部分的な画像障害を引き起こす電気的短絡を前記露出エッジにおける電極から取り除く」ものであるのか否か不明である点

(2)判断
以下、上記相違点について検討する。引用発明は、電子ディスプレイのターゲット部分と余剰部分をスクライブラインに沿って分離するものではあるが、引用文献には、スクライブラインに沿って分離する際に、分離により露出したエッジ部分で電極が短絡し、画像障害を引き起こすことについて開示や示唆はなく、スクライブラインに沿って分離する際に、電子回路を構成する電極が短絡するであろうことは、当業者が容易に予測しうるものとも言えない。そうすると、引用発明において、スクライブラインに沿ってディスプレイを切断した際に、ターゲット部分の露出エッジにおいて、画像障害を引き起こす電極間の短絡を取り除くこと、すなわち、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たこととは言えない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2、4、5について
本願発明2は、発明特定事項として「前記対象部分の露出エッジにおける電気的短絡を取り除くステップ」を備えものであるから、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項と実質的に同じステップを備える。また、本願発明4、5は、発明特定事項として「…短絡と、…ピクセルの障害ラインとを識別するステップと、短絡を開放できるように…ピクセルの障害ラインを消滅させるステップ」を備えるものであるところ、「短絡を開放できるように…ピクセルの障害ラインを消滅させるステップ」は実質的に短絡を取り除くステップであるから、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項と実質的に同じステップを備える。
したがって、本願発明2、4、5は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3、6?17について
本願発明3、6?17は、本願発明1,2、4、5の何れかの発明の発明特定事項を全て備え、さらに他の発明特定事項を付加して減縮した発明であるから、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項と実質的に同じステップを備える。
したがって、本願発明3、6?17は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 当審拒絶理由(特許法第36条第2項)について

当審では、
(1)請求項8に記載された「湿潤アプリケータ」はその構成が不明瞭である、
(2)請求項8に記載された「その擦る間にピクセルの障害ラインが見えなくなる」はその構成が不明瞭である、
(3)請求項8を引用する請求項17の「ストレステストを行うステップ」は、請求項8で特定するように「湿潤アプリケータで、開放された短絡を擦るステップと、その擦る間にピクセルの障害ラインが見えなくなることを確認するステップとを含む」のか、あるいは、請求項17で特定するように「湿潤アプリケータで、開放された短絡を擦るステップを含む」のか不明瞭ある、
旨の拒絶理由を通知しているが、平成29年8月4日付けの補正において前記拒絶理由は、何れも解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-17は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2013-511161(P2013-511161)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G09F)
P 1 8・ 121- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 請園 信博  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 野村 伸雄
小松 徹三
発明の名称 サイズ変更されたフラットパネルディスプレイの作成および修理方法  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  

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