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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03F |
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管理番号 | 1332765 |
審判番号 | 不服2016-4876 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-04 |
確定日 | 2017-09-21 |
事件の表示 | 特願2011-283982「感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、半導体装置及び電子部品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 8日出願公開、特開2013-134346〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 平成23年12月26日 出願 平成27年 7月10日 拒絶理由通知(同年同月14日発送) 平成27年 9月11日 意見書・手続補正書 平成27年12月15日 拒絶査定(平成28年1月5日発送) 平成28年 4月 4日 審判請求書 平成28年 5月16日 手続補正書(方式) 平成29年 4月14日 拒絶理由通知(同年同月18日発送) 平成29年 6月15日 意見書・手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成29年6月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、 (B)光により酸を生成する化合物と、 (C)熱架橋剤と、 (D)フェノール性低分子化合物とを含有し、 (B)成分がo-キノンジアジド化合物であり、 (C)成分が下記一般式(6)で表される化合物であり、 (E)アクリル樹脂を更に含有する、感光性樹脂組成物。 【化1】 (式(6)中、R^(31)?R^(36)は、それぞれ独立に炭素数1?10のアルキル基を示す。)」 第3 当審の判断 1 引用文献の記載 (1)当審より平成29年4月14日付けで通知した進歩性欠如の拒絶理由(以下「先の拒絶理由」という。)において引用された引用文献1(国際公開第2010/073948号)には、次の事項が記載されている(下線は審決にて付した。)。 ア 「[請求項1] フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、 光により酸を生成する化合物と、 熱架橋剤と、 アクリル樹脂と、 を含有するポジ型感光性樹脂組成物。 …… [請求項7] 前記光により酸を生成する化合物が、o-キノンジアジド化合物である、請求項1?6のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。」 イ 「技術分野 [0001] 本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、レジストパターンの製造方法、半導体装置及び電子デバイスに関する。」 ウ 「発明が解決しようとする課題 [0007] 近年、再配線層を有する半導体装置の表面保護膜及びカバーコート層の用途において、環境負荷低減の観点から、アルカリ水溶液により現像可能でありながら、高い耐熱性を有するパターンを形成可能なポジ型感光性樹脂組成物が求められている。 また、高温による半導体装置へのダメージを軽減する観点から、低温で硬化が可能な、脱水閉環を必要としないポリマーを含むポジ型感光性樹脂組成物が求められている。 [0008] そこで、本発明は、低温での硬化が可能で、アルカリ水溶液で現像可能であり、十分に高い感度及び解像度で、密着性及び耐熱衝撃性に優れるレジストパターンを形成することができるポジ型感光性樹脂組成物、該ポジ型感光性樹脂組成物を用いたレジストパターンの製造方法、係る方法により形成されたレジストパターンを有する半導体装置、及び該半導体装置を備える電子デバイスを提供することを目的とする。」 エ 「課題を解決するための手段 [0009] 本発明は、(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する化合物と、(C)熱架橋剤と、(D)アクリル樹脂とを含有するポジ型感光性樹脂組成物を提供する。 [0010] かかるポジ型感光性樹脂組成物によれば、低温での硬化が可能であり、十分に高い感度及び解像度で、密着性に優れ、良好な耐熱衝撃性を有するレジストパターンを形成することが可能である。本発明のポジ型感光性樹脂組成物によりこのような効果が得られる理由は必ずしも明らかでないが、本発明者らは次のように考えている。 [0011] 上記ポジ型感光性樹脂組成物は、(D)アクリル樹脂、中でも特に後述する特定の構造のアクリル樹脂を用いることにより、硬化膜とした時に(D)アクリル樹脂由来の非常に微細なドメイン(ミクロ相分離状態)が形成されるものと考える。この様なミクロ相分離状態が形成されると、応力が生じた際に、(D)アクリル樹脂由来の微細なドメインのブラウン運動が活発化し、応力を熱として発散することにより応力を緩和することができ、この応力の緩和により、耐熱衝撃性が向上できるものと考える。 [0012] そして、(D)成分を上記(A)?(C)成分と共に用いることにより、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、十分に高い感度、解像性及び密着性を同時に達成しているものと考えられる。 本発明者らは、上述した応力緩和の指標として残留応力を採用し、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られた硬化膜の残留応力が小さいことを確認している。ここで、残留応力が小さい程、耐熱衝撃性に優れるものであると評価することができる。 …… [0018] また、(B)成分は、レジストパターンを形成する際の感度が更に向上することから、o-キノンジアジド化合物であることが好ましい。」 オ 「発明の効果 [0029] 本発明によれば、低温での硬化が可能で、アルカリ水溶液で現像可能であり、十分に高い感度及び解像度で、密着性及び耐熱衝撃性に優れるレジストパターンを形成することができるポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。本発明のポジ型感光性樹脂組成物によれば、200℃以下の低温加熱プロセスで、レジストパターンを形成可能であるため、電子デバイスへの熱によるダメージを防止することができ、信頼性の高い半導体装置を歩留りよく提供することができる。 [0030] また、本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物を用いて、十分に高い感度及び解像度で、良好な密着性及び耐熱衝撃性を有するレジストパターンを形成する方法、係る方法により形成されたレジストパターンを有する半導体装置、及び該半導体装置を備える電子デバイスを提供する。本発明の方法により形成されるレジストパターンは、良好な形状と特性を有し、硬化時の体積収縮が少ないため、寸法安定性が高い。」 カ 「発明を実施するための形態 [0032] 以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。…… [0033][ポジ型感光性樹脂組成物] 本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、(B)光により酸を生成する化合物と、(C)熱架橋剤と、(D)アクリル樹脂と含有する。以下、ポジ型感光性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。 [0034]<(A)成分> (A)成分:フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂 (A)成分は、分子中にフェノール性水酸基を有し、アルカリ現像液に対して可溶な樹脂である。(A)成分のフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン、及びヒドロキシスチレンを単量体単位として含む共重合体等のヒドロキシスチレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリ(ヒドロキシアミド)等のポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリ(ヒドロキシフェニレン)エーテル、及びポリナフトール等が挙げられる。(A)成分はこれらの樹脂のうちの1種のみで構成されていてもよく、また、2種以上を含んで構成されていてもよい。 [0035] これらの中で、低価格であること、コントラストが高いことや硬化時の体積収縮が小さいことから、フェノール樹脂が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂が特に好ましい。また、電気特性(絶縁性)に優れることや硬化時の体積収縮が小さいことから、ヒドロキシスチレン系樹脂も好ましい。 [0036] フェノール樹脂は、フェノール又はその誘導体とアルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は酸又は塩基等の触媒存在下で行われる。酸触媒を用いた場合に得られるフェノール樹脂を特にノボラック型フェノール樹脂という。ノボラック樹脂の具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシリレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂及びフェノール-ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂が挙げられる。」 キ 「[0070]<(B)成分> (B)成分である光により酸を生成する化合物は、感光剤として用いられる。このような(B)成分は、光照射により酸を生成させ、光照射した部分のアルカリ水溶液への可溶性を増大させる機能を有する。(B)成分としては、一般に光酸発生剤と称される化合物を用いることができる。(B)成分の具体例としては、o-キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。これらの中で、感度が高いことから、o-キノンジアジド化合物が好ましい。」 ク 「[0079]<(C)成分)> (C)成分である熱架橋剤を含有することにより、パターン形成後の感光性樹脂膜を加熱して硬化する際に、(C)成分が(A)成分と反応して橋架け構造が形成される。これにより、低温での硬化が可能となり、膜の脆さや膜の溶融を防ぐことができる。(C)成分として、具体的には、フェノール性水酸基を有する化合物、ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物が好ましいものとして用いることができる。 [0080] なお、ここでいう「フェノール性水酸基を有する化合物」には、(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂は包含されない。熱架橋剤としてのフェノール性水酸基を有する化合物は、熱架橋剤としてだけでなく、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度を向上させることができる。 …… [0086] 上述した(C)成分の中で、感度と耐熱性の向上という観点から、フェノール性水酸基を有する化合物及びヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましく、解像度及び塗膜の伸びもより向上できる観点から、ヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物がより好ましく、ヒドロキシメチルアミノ基の全部又は一部をアルキルエーテル化したアルコキシメチルアミノ基を有する化合物が特に好ましく、ヒドロキシメチルアミノ基の全部をアルキルエーテル化したアルコキシメチルアミノ基を有する化合物が最も好ましい。 前記ヒドロキシメチルアミノ基の全部をアルキルエーテル化したアルコキシメチルアミノ基を有する化合物の中でも特に、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。 「化7」 [一般式(III)中、R^(21)?R^(26)は、それぞれ独立に炭素数1?10のアルキル基を示す。] [0087] (C)成分の配合量は、現像時間と、未露光部残膜率の許容幅、及び、硬化膜の特性の点から、(A)成分100質量部に対して1?50質量部が好ましく、2?30質量部がより好ましく、3?25質量部が特に好ましい。また、上述した熱架橋剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。」 ケ 「[0088]<(D)成分> (D)成分であるアクリル樹脂を含有することにより、良好な感光特性を維持しつつ、耐熱衝撃性を向上することができる。」 コ 「[0123]<その他の成分> 上述のポジ型感光性樹脂組成物は、上記(A)?(F)成分及び溶剤以外に、溶解促進剤、溶解阻害剤、カップリング剤、及び、界面活性剤又はレベリング剤等の成分を含有してもよい。 [0124](溶解促進剤) 溶解促進剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させることができる。溶解促進剤としては従来公知のものを用いることができる。その具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸、スルホンアミド基を有する化合物が挙げられる。 [0125] このような溶解促進剤を用いる場合の配合量は、アルカリ水溶液に対する溶解速度によって決めることができ、例えば、(A)成分100質量部に対して、0.01?30質量部とすることができる。 サ 上記アないしコ(特にア)によると、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。 「フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、 光により酸を生成する化合物と、 熱架橋剤と、 アクリル樹脂と、 を含有するポジ型感光性樹脂組成物であって、 前記光により酸を生成する化合物が、o-キノンジアジド化合物である、ポジ型感光性樹脂組成物。」 (2)先の拒絶理由において引用された引用文献2(特開2008-20623号公報)には、次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 波長405nmに感度を有し、ノボラック型フェノール樹脂、キノンジアジド基を有する化合物、界面活性剤、及び溶剤を含むポジ型感光性組成物よりなるポジ型感光層の上に、保護層を有することを特徴とするポジ型感光性積層体。」 イ 「【0037】 <ポジ型感光層> 前記ポジ型感光層は、ノボラック型フェノール樹脂、キノンジアジド基を有する化合物、界面活性剤、及び溶剤を含み、更に必要に応じてその他の成分を含むポジ型感光性組成物よりなる 【0038】 <<ポジ型感光性組成物>> -ノボラック型フェノール樹脂- 前記ノボラック型フェノール樹脂としては、アルカリ可溶性であることが好ましく、該アルカリ可溶性ノボラックフェノール樹脂は、フェノール類1モルに対してアルデヒド類0.6?1.0モルを酸性触媒下、付加縮合することにより得られる。」 ウ 「【0055】 -その他の成分- 本発明のポジ型感光性組成物には、上記成分以外にも、種々の目的で、必要に応じてその他の添加剤を添加することができる。該その他の添加剤としては、例えば、溶解促進剤、密着促進剤、熱架橋剤、可塑剤、着色剤などが挙げられる。 【0056】 -溶解促進剤- 前記溶解促進剤は、感度の向上などの目的で用いられるものであり、ポジ型感光性組成物への添加については多数の例が開示されている。例えば、特開昭61-141441号公報には、トリヒドロキシベンゾフェノンを含有するポジ型フォトレジスト組成物が開示されている。このトリヒドロキシベンゾフェノンを含有するポジ型フォトレジストでは感度及び現像性が改善されるが、耐熱性やプロファイルが悪化するという問題があった。 また、特開昭64-44439号公報、特開平1-177032号公報、特開平1-280748号公報、特開平2-10350号公報、特開平3-200251号公報、特開平3-191351号公報、特開平3-200255号公報、特開平4-299348号公報、及び特開平5-204144号公報には、トリヒドロキシベンゾフェノン以外の芳香族ポリヒドロキシ化合物を添加することにより、耐熱性を悪化させないで高感度化する工夫が示されている。しかし、かかる化合物はこれを添加すると未露光部の膜減りが増加し、結果としてレジストの形状を悪化させるのが普通である。また、現像速度を増加させるが故に、現像ラチチュードも低下するのが一般的である。従って、これらを最小限に抑えるようにして好ましい化合物の構造選択が行われてきた。 代表的なものとしては、分子中の炭素数の総数が12?50であり、かつフェノール性水酸基の総数が2?8の化合物を用いる。かかる化合物のうち、本発明で使用するノボラック型フェノール樹脂に添加した際に、該ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶解速度を増大させる化合物が特に望ましい。また、炭素数が51以上の化合物では本発明の効果が著しく減少することがある。また、11以下の化合物では耐熱性が低下するなどの新たな欠点が発生する。本発明の効果を発揮させるためには、分子中に少なくとも2個の水酸基数を有することが好ましいが、これが9以上になると、現像ラチチュードの改良効果が失われることがある。 【0057】 前記溶解促進剤としては、例えば、フェノール類、レゾルシン、フロログルシン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、アセトン-ピロガロール縮合樹脂、プロログルシド、2,4,2’,4’-ビフェニルテトロール、4,4’-チオビス(1,3-ジヒドロキシ)ベンゼン、2,4,2’,4’-テトラヒドロキシジフェニルエーテル、2,4,2’,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルホキシド、2,4,2’,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルホン、トリス(4-ヒドロキジフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキジフェニル)シクロヘキサン、4,4’-(α-メチルベンジリデン)ビスフェノール、α,α’,α”-トリス(4-ヒドロキジフェニル)-1-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン、α,α’,α”-トリス(4-ヒドロキジフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、1,2,2-トリス(ヒドロキジフェニル)プロパン、1,1,2-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキジフェニル)プロパン、2,2,5,5-テトラキス(4-ヒドロキジフェニル)ヘキサン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキジフェニル)エタン、1,1,3-トリス(ヒドロキジフェニル)ブタン、パラ[α,α,α’,α’-テトラキス(4-ヒドロキジフェニル)-キシレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」(当審注:「ヒドロキジフェニル」は、「ヒドロキシフェニル」の明らかな誤記である。) (3)先の拒絶理由において引用された引用文献3(特開2006-3422号公報)には、次の事項が記載されている。 ア 「【0052】 <ポジ型感光層> 前記ポジ型感光層形成工程で形成されるポジ型感光層は、1,2-キノンジアジド化合物と、ノボラック型フェノール樹脂、及び溶解促進剤を含有してなり、溶剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。」 イ 「【0057】 -ノボラック型フェノール樹脂- 前記ノボラック型フェノール樹脂としては、アルカリ可溶性であることが好ましく、該アルカリ可溶性ノボラックフェノール樹脂は、フェノール類1モルに対してアルデヒド類0.6?1.0モルを酸性触媒下、付加縮合することにより得られる。」 ウ 「【0065】 -溶解促進剤- 前記溶解促進剤は、感度の向上などの目的で用いられるものであり、ポジ型感光性組成物への添加については多数の例が開示されている。例えば、特開昭61-141441号公報には、トリヒドロキシベンゾフェノンを含有するポジ型フォトレジスト組成物が開示されている。このトリヒドロキシベンゾフェノンを含有するポジ型フォトレジストでは感度及び現像性が改善されるが、耐熱性やプロファイルが悪化するという問題があった。 また、特開昭64-44439号公報、特開平1-177032号公報、特開平1-280748号公報、特開平2-10350号公報、特開平3-200251号公報、特開平3-191351号公報、特開平3-200255号公報、特開平4-299348号公報、及び特開平5-204144号公報には、トリヒドロキシベンゾフェノン以外の芳香族ポリヒドロキシ化合物を添加することにより、耐熱性を悪化させないで高感度化する工夫が示されている。しかし、かかる化合物はこれを添加すると未露光部の膜減りが増加し、結果としてレジストの形状を悪化させるのが普通である。また、現像速度を増加させるが故に、現像ラチチュードも低下するのが一般的である。従って、これらを最小限に抑えるようにして好ましい化合物の構造選択が行われてきた。 代表的なものとしては、分子中の炭素数の総数が12?50であり、かつフェノール性水酸基の総数が2?8の化合物を用いる。かかる化合物のうち、本発明で使用するノボラック型フェノール樹脂に添加した際に、該ノボラック型フェノール樹脂のアルカリ溶解速度を増大させる化合物が特に望ましい。また、炭素数が51以上の化合物では本発明の効果が著しく減少することがある。また、11以下の化合物では耐熱性が低下するなどの新たな欠点が発生する。本発明の効果を発揮させるためには、分子中に少なくとも2個の水酸基数を有することが好ましいが、これが9以上になると、現像ラチチュードの改良効果が失われることがある。 【0066】 前記溶解促進剤としては、例えば、フェノール類、レゾルシン、フロログルシン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、アセトン-ピロガロール縮合樹脂、プロログルシド、2,4,2’,4’-ビフェニルテトロール、4,4’-チオビス(1,3-ジヒドロキシ)ベンゼン、2,4,2’,4’-テトラヒドロキシジフェニルエーテル、2,4,2’,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルホキシド、2,4,2’,4’-テトラヒドロキシジフェニルスルホン、トリス(4-ヒドロキジフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキジフェニル)シクロヘキサン、4,4’-(α-メチルベンジリデン)ビスフェノール、α,α’,α”-トリス(4-ヒドロキジフェニル)-1-1,3,5-トリイソプロピルベンゼン、α,α’,α”-トリス(4-ヒドロキジフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、1,2,2-トリス(ヒドロキジフェニル)プロパン、1,1,2-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキジフェニル)プロパン、2,2,5,5-テトラキス(4-ヒドロキジフェニル)ヘキサン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキジフェニル)エタン、1,1,3-トリス(ヒドロキジフェニル)ブタン、パラ[α,α,α’,α’-テトラキス(4-ヒドロキジフェニル)-キシレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」(当審注:「ヒドロキジフェニル」は、「ヒドロキシフェニル」の明らかな誤記である。) (4)先の拒絶理由において引用された引用文献4(特開2005-107130号公報)には、次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 吐出ノズルと基板とを相対的に移動させることによって基板の塗布面全面にポジ型ホトレジスト組成物を塗布する工程を有する吐出ノズル式塗布法に用いられるポジ型ホトレジスト組成物であって、(A)アルカリ可溶性ノボラック樹脂、(C)ナフトキノンジアジド基含有化合物、(D)有機溶剤、および(E)フッ素含有量が10?25質量%であり、かつケイ素含有量が3?10質量%の界面活性剤成分を含有してなることを特徴とする吐出ノズル式塗布法用ポジ型ホトレジスト組成物。 【請求項2】 さらに、(B)分子量が1000以下のフェノール性水酸基含有化合物を含有してなることを特徴とする請求項1に記載の吐出ノズル式塗布法用ポジ型ホトレジスト組成物。 …… 【請求項7】 前記(B)成分は、下記式(I)で表わされるフェノール性水酸基含有化合物を含有することを特徴とする請求項2?6のいずれか一項に記載の吐出ノズル式塗布法用ポジ型ホトレジスト組成物。 【化1】 」 イ 「【0023】 [(B)成分] 本発明のポジ型ホトレジスト組成物は、分子量が1000以下のフェノール性水酸基含有化合物(B)を含有することにより、感度向上効果が得られる。特に、液晶表示素子製造の分野においては、スループットの向上が非常に大きい問題であり、またレジスト消費量が多くなりがちであるため、ホトレジスト組成物にあっては高感度でしかも安価であることが望ましく、該(B)成分を用いると、比較的安価で高感度化を達成できるので好ましい。また(B)成分を含有させると、レジストパターンにおいて表面難溶化層が強く形成されるため、現像時に未露光部分のレジスト膜の膜減り量が少なく、現像時間の差から生じる現像ムラの発生が抑えられて好ましい。 【0024】 (B)成分の分子量が1000を超えると感度の低下が大きくなる傾向にあるので好ましくない。 該(B)成分としては、従来液晶表示素子製造用のポジ型ホトレジスト組成物に用いられている分子量1000以下のフェノール性水酸基含有化合物を適宜用いることができるが、下記一般式(III)で表わされるフェノール性水酸基含有化合物は、感度を効果的に向上できるのでより好ましい。 【0025】 【化1】 【0026】 〔式中、R1?R8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数1?6のアルコキシ基、または炭素原子数3?6のシクロアルキル基を表し;R9?R11はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1?6のアルキル基を表し;Qは水素原子、炭素原子数1?6のアルキル基、R9と結合し、炭素原子鎖3?6のシクロアルキル基、または下記の化学式(IV)で表される残基 【0027】 【化2】 【0028】 (式中、R12およびR13はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数1?6のアルコキシ基、または炭素原子数3?6のシクロアルキル基を表し;cは1?3の整数を示す)を表し;a、bは1?3の整数を表し;dは0?3の整数を表し;nは0?3の整数を表す〕 これらは、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 【0029】 上記に挙げたフェノール性水酸基含有化合物の中でも、下記式(I)で示される化合物は、高感度化、高残膜率化に優れるので特に好ましい。 【0030】 【化3】 【0031】 (B)成分の配合量は、(A)成分であるアルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対し1?25質量部、好ましくは5?20質量部の範囲が好ましい。ホトレジスト組成物における(B)成分の含有量が少なすぎると、高感度化、高残膜率化の向上効果が十分に得られず、多すぎると現像後の基板表面に残渣物が発生しやすく、また原料コストも高くなるので好ましくない。 (5)先の拒絶理由において引用された引用文献5(特開2003-233174号公報)には、次の事項が記載されている。 「【0014】即ち、本発明は、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、(B)下記一般式(I) 【0015】 【化9】 【0016】〔式中、R^(1)?R^(8)はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数1?6のアルコキシ基、又は炭素原子鎖3?6のシクロアルキル基を表し;R^(9)?R^(11)はそれぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1?6のアルキル基を表し;Qは水素原子、炭素原子数1?6のアルキル基、R^(9)と結合して炭素原子鎖3?6のシクロアルキル基を形成する基、又は下記の化学式(II)で表される基 【0017】 【化10】 【0018】(式中、R^(12)及びR^(13)はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数1?6のアルコキシ基、又は炭素原子鎖3?6のシクロアルキル基を表し;cは1?3の整数を示す)を表し;a、bは1?3の整数を表し;dは0?3の整数を表し;nは0?3の整数を表す〕で表されるフェノール化合物を5?25質量部含有し、(A)成分と(B)成分の総質量100質量部に対し、 …… 【0024】前記(B)成分は、下記式(V)又は(VI) 【0025】 【化13】 【0026】で表されるフェノール化合物であることが好ましい。これら化合物は、ホトレジスト膜に高感度化、高残膜率化、及びリニアリティの向上効果に特に優れる。 【0027】前記(A)成分は、全フェノール系繰り返し単位中、p-クレゾール系繰り返し単位を60モル%以上含有し、かつm-クレゾール系繰り返し単位を30モル%以上含有し、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が2000?8000のノボラック樹脂であることが好ましい。このような樹脂は、特に感度が良好であり、かつ、加熱処理時の温度ムラに対する感度変化が起こりにくい。」 (6)先の拒絶理由において引用された引用文献6(特開2005-107131号公報)には、次の事項が記載されている。 「【0029】 [(B)成分] 本発明のポジ型ホトレジスト組成物は、分子量が1000以下のフェノール性水酸基含有化合物(B)を含有することにより、感度向上効果が得られる。特に、LCD製造の分野においては、スループットの向上が非常に大きい問題であり、またレジスト消費量が多くなりがちであるため、ホトレジスト組成物にあっては高感度でしかも安価であることが望ましく、該(B)成分を用いると、比較的安価で高感度化を達成できるので好ましい。また(B)成分を含有させると、レジストパターンにおいて表面難溶化層が強く形成されるため、現像時に未露光部分のレジスト膜の膜減り量が少なく、現像時間の差から生じる現像ムラの発生が抑えられて好ましい。 【0030】 (B)成分の分子量が1000を超えると感度の低下が大きくなる傾向にあるので好ましくない。 該(B)成分としては、従来LCD製造用のポジ型ホトレジスト組成物に用いられている分子量1000以下のフェノール性水酸基含有化合物を適宜用いることができるが、下記一般式(III)で表わされるフェノール性水酸基含有化合物は、感度を効果的に向上できるのでより好ましい。 【0031】 【化3】 【0032】 〔式中、R^(1)?R^(8)はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数1?6のアルコキシ基、または炭素原子数3?6のシクロアルキル基を表し;R^(9)?R^(11)はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1?6のアルキル基を表し;Qは水素原子、炭素原子数1?6のアルキル基、R^(9)と結合し、炭素原子鎖3?6のシクロアルキル基、または下記の化学式(IV)で表される残基 【0033】 【化4】 【0034】 (式中、R^(12)およびR^(13)はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1?6のアルキル基、炭素原子数1?6のアルコキシ基、または炭素原子数3?6のシクロアルキル基を表し;cは1?3の整数を示す)を表し;a、bは1?3の整数を表し;dは0?3の整数を表し;nは0?3の整数を表す〕 これらは、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。 【0035】 上記に挙げたフェノール性水酸基含有化合物の中でも、下記式(I)で示される化合物は、高感度化、高残膜率化に優れるので特に好ましい。 【0036】 【化5】 【0037】 (B)成分の配合量は、(A)成分であるアルカリ可溶性ノボラック樹脂100質量部に対し1?25質量部、好ましくは5?20質量部の範囲が好ましい。ホトレジスト組成物における(B)成分の含有量が少なすぎると、高感度化、高残膜率化の向上効果が十分に得られず、多すぎると現像後の基板表面に残渣物が発生しやすく、また原料コストも高くなるので好ましくない。」 (7)先の拒絶理由において引用された引用文献7(特開2003-207883号公報)には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】5?30重量%の高分子樹脂、2?10重量%の感光性化合物、0.1?10重量%の感度増進剤、0.1?10重量%の感度抑制剤及び60?90重量%の有機溶媒を含むフォトレジスト組成物。 【請求項2】前記高分子樹脂は分子量が2,000?12,000範囲のノボラック樹脂である請求項1に記載のフォトレジスト組成物。 【請求項3】前記感光性化合物はジアジド系化合物である請求項1に記載のフォトレジスト組成物。 【請求項4】前記感度増進剤は2?7個のフェノール系ヒドロキシグループを有し、分子量が1,000未満であるポリヒドロキシ化合物である請求項1に記載のフォトレジスト組成物。 【請求項5】前記感度増進剤は次の化学式I乃至Vよりなる群から選択された少なくとも一つの化合物である請求項4に記載のフォトレジスト組成物。 【化1】 (前記化学式で、Rは各々独立的に又は同時に水素、-(CH_(3))n,-(CH_(2)CH_(3))n,-(OH)n又はフェニル基であり、nは0乃至5の整数である) 【請求項6】前記感度増進剤は2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、アセトン-ピロガロール縮合物、4,4-[1-[4-[1-(1,4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、及び4,4-[2-ヒドロキシフェニルメチレン]ビス[2,6-ジメチルフェノール]よりなる群から選択された少なくとも一つである請求項5に記載のフォトレジスト組成物。」 (8)先の拒絶理由において引用された引用文献8(特開2004-93816号公報)には、次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 光照射により、露光部は、アルカリ水溶液または、有機溶剤により、溶解除去することができ、未露光部は、その後の熱処理で硬化する組成物であり、170℃?300℃で1時間熱処理後の収縮率が10%以下であることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。 【請求項2】 請求項1の樹脂組成物であって、下記(a)?(c)を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。 (a)有機溶剤可溶性のポリマー (b)熱架橋性基を有する低分子化合物 (c)光酸発生剤 【請求項3】 (c)成分がエステル化したキノンジアジド化合物であることを特徴とする請求項2記載のポジ型感光性樹脂組成物。 【請求項4】 (d)フェノール性低分子化合物を含有することを特徴とする請求項1または2記載のポジ型感光性樹脂組成物。」 イ 「【0037】 本発明に用いられる(d)成分としては、たとえば、Bis-Z、BisOC-Z、BisOPP-Z、BisP-CP、Bis26X-Z、BisOTBP-Z、BisOCHP-Z、BisOCR-CP、BisP-MZ、BisP-EZ、Bis26X-CP、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisCR-IPZ、BisOCP-IPZ、BisOIPP-CP、Bis26X-IPZ、BisOTBP-CP、TekP-4HBPA(テトラキスP-DO-BPA)、TrisP-HAP、TrisP-PA、BisOFP-Z、BisRS-2P、BisPG-26X、BisRS-3P、BisOC-OCHP、BisPC-OCHP、Bis25X-OCHP、Bis26X-OCHP、BisOCHP-OC、Bis236T-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、BisRS-OCHP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)が挙げられる。 【0038】 これらのうち、好ましいフェノール性水酸基を有する化合物としては、たとえば、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-BIPC-F等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいフェノール性水酸基を有する化合物としては、たとえば、Bis-Z、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、BisRS-2P、BisRS-3P、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-BIPC-Fである。このフェノール性水酸基を有する化合物を添加することで、得られる樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像が容易になる。 ウ 「【0074】 各実施例、比較例に使用したフェノール性水酸基を有する化合物を下記に示した。 【0075】 【化10】 」 2 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂」、「光により酸を生成する化合物」、「熱架橋剤」、「アクリル樹脂」、「o-キノンジアジド化合物」及び「ポジ型感光性樹脂組成物」は、本願発明の「(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂」、「(B)光により酸を生成する化合物」、「(C)熱架橋剤」、「(E)アクリル樹脂」、「o-キノンジアジド化合物」及び「感光性樹脂組成物」にそれぞれ相当する。 (2)以上によれば、両者は以下の点で一致する。 <一致点> 「(A)フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂と、 (B)光により酸を生成する化合物と、 (C)熱架橋剤とを含有し、 (B)成分がo-キノンジアジド化合物であり、 (E)アクリル樹脂を更に含有する、感光性樹脂組成物。」 (3)他方、両者は以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明では、(C)熱架橋剤が下記一般式(6)で表される化合物であるのに対し、引用発明では、熱架橋剤の組成が特定されていない点。 【化1】 (式(6)中、R^(31)?R^(36)は、それぞれ独立に炭素数1?10のアルキル基を示す。) <相違点2> 本願発明は、(D)フェノール性低分子化合物を含有するのに対し、引用発明は、(D)フェノール性低分子化合物を含有するか否かが特定されていない点。 3 判断 (1)相違点1について 引用発明において如何なる「熱架橋剤」を用いるかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項というべきところ、引用文献1には、「熱架橋剤」に関し、「感度と耐熱性の向上という観点から、フェノール性水酸基を有する化合物及びヒドロキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましく、……ヒドロキシメチルアミノ基の全部をアルキルエーテル化したアルコキシメチルアミノ基を有する化合物が最も好ましい。前記ヒドロキシメチルアミノ基の全部をアルキルエーテル化したアルコキシメチルアミノ基を有する化合物の中でも特に、下記一般式(III)で表される化合物が好ましい。 「化7」 [一般式(III)中、R^(21)?R^(26)は、それぞれ独立に炭素数1?10のアルキル基を示す。]」と記載されている(上記1(1)クを参照。)。 してみると、引用発明において、熱架橋剤として上記一般式(III)で表される化合物を用いること、すなわち上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 (2)相違点2について 引用文献1には、「ポジ型感光性樹脂組成物は、……溶解促進剤、……を含有してもよい。……溶解促進剤を上述のポジ型感光性樹脂組成物に配合することによって、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させることができる。溶解促進剤としては従来公知のものを用いることができる。」と記載されており(上記1(1)コを参照。)、当該記載に照らせば、引用発明において溶解促進剤を含有させることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 一方、引用文献2ないし8に記載のように、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂を主体とする感光性樹脂組成物において、フェノール性低分子化合物からなる溶解促進剤を含有させることは周知技術である(上記1(2)ないし(8)を参照。)。 してみると、引用発明において、溶解促進剤としてフェノール性低分子化合物を含有させること、すなわち上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 (3)本願発明の効果について 本願発明によってもたらされる効果を全体としてみても、引用発明及び周知技術から当業者が当然に予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。 (4)請求人の主張について 請求人は、平成29年6月15日付けの意見書において、(ア)引用文献1に記載されている溶解促進剤(カルボキシル基、スルホン酸、カルボジイミド基を有する化合物)を用いた場合と比較して、本願発明における「(D)フェノール性低分子化合物」を用いた場合に、本願発明の課題に対応する効果(現像時の残渣と膜減りの抑制を同時に両立する)の点で優れることは、当業者が予測し得た範囲内の効果であるとはいえない旨、(イ)引用文献4、5に記載されたフェノール性水酸基含有化合物の含有量と高感度化、高残膜率化及び残渣物の発生しやすさとの関係は、あくまで引用文献4、5に記載された特定の感光性樹脂組成物に関するものであると理解するはずであり、当業者は引用文献1に記載のポジ型感光性樹脂組成物にフェノール性水酸基含有化合物を適用した場合にも、同様の関係が成り立つであろうとは予測しない旨主張する。 しかし、引用発明において、溶解促進剤としてフェノール性低分子化合物を含有させることが、当業者にとって容易になし得たものであることは上記(2)のとおりである(なお、引用文献1の段落【0080】には、フェノール性水酸基を有する化合物を含有することにより、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度を向上させることができることが記載されている(上記1(1)クを参照。))。 そして、引用文献2の段落【0056】(上記1(2)ウを参照。)及び引用文献3の段落【0065】(上記1(3)ウを参照。)に記載のように、一般に溶解促進剤を添加して感光性樹脂組成物を高感度化すると未露光部の膜減りが増加することは当業者にとって周知の課題であるところ、引用文献4の段落【0023】(上記1(4)イを参照。)、引用文献5の段落【0026】(上記1(5)を参照。)及び引用文献6の段落【0029】(上記1(6)を参照。)には、周知技術のフェノール性低分子化合物からなる溶解促進剤の作用・効果として、高感度化とともに膜減り量を少なくできることが開示されていることに照らせば、引用発明に周知のフェノール性低分子化合物からなる溶解促進剤を適用するにあたり、当業者であれば高感度化(現像時の残渣の抑制)と膜減りの抑制を同時に両立することを期待するのが自然である。 よって、上記請求人の主張は、いずれも採用できない。 (5)小括 よって、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおりであって、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし12に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-07-24 |
結審通知日 | 2017-07-25 |
審決日 | 2017-08-09 |
出願番号 | 特願2011-283982(P2011-283982) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石附 直弥 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
清水 康司 中田 誠 |
発明の名称 | 感光性樹脂組成物、パターン硬化膜の製造方法、半導体装置及び電子部品 |
代理人 | 阿部 寛 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 平野 裕之 |