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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1332776
審判番号 不服2016-16807  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-09 
確定日 2017-09-21 
事件の表示 特願2015- 83375「携帯型酸素ボンベキャリアバッグ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日出願公開、特開2015-128714〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 特願2015-83375「携帯型酸素ボンベキャリアバッグ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月16日公開、特開2015-128714号〕について、次のとおり審決する。

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理 由
第1 手続の経緯
本件出願は、平成22年12月28日に出願した特願2010-292557号の一部を、平成27年4月15日に新たな特許出願としたものであって、平成28年1月29日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月6日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲について補正がなされたが、同年8月2日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成28年11月9日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正がなされたものである。


第2 平成28年11月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年11月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
平成28年11月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成28年4月6日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1)<補正前>
「【請求項1】
酸素ボンベから流量調整器、カニューラを介して使用者に酸素を供給する携帯型酸素ボンベシステムを収納するバッグであり、該バッグの内部が外気と流通が可能なように、当該バッグの上部に設けられた第1の開口部と、当該酸素ボンベの下部とバッグ内面が完全に密着しておらず、両者の間に酸素ボンベから漏出したガスが滞留する僅かな空間部と、当該バッグの下部に設けられた第2の開口部とを備え、該空間部と外気との通気性を確保し酸素ガスの排出を可能とする第1の開口部と第2の開口部とをつなぐ通気路を形成していることを特徴とする携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。」

(2)<補正後>
「【請求項1】
酸素ボンベから機械制御の流量調整器、カニューラを介して使用者に酸素を供給する携帯型酸素ボンベシステムを収納するバッグであり、該バッグの内部が外気と流通が可能なように、当該バッグの上部に設けられた第1の開口部と、当該酸素ボンベの下部とバッグ内面が完全に密着しておらず、両者の間に酸素ボンベから漏出したガスが滞留する僅かな空間部と、当該バッグの下部に設けられた第2の開口部とを備え、該空間部と外気との通気性を確保し酸素ガスの排出を可能とする第1の開口部と第2の開口部とをつなぐ通気路を形成していることを特徴とする携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。」


2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の「流量調整器」について、「機械制御の」ものである点を付加するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、同法同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件に適合するか否かについて検討する。

(1)補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「携帯型酸素ボンベキャリアバッグ」であると認める。

(2)刊行物
これに対して、原審の平成28年1月29日付け拒絶の理由に引用された、本件の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-37879号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開平11-319098号公報(以下、「刊行物2」という。)及び特開2002-224220号公報(以下、「刊行物3」という。)には、各々、以下の発明が記載されていると認められる。

(2-1)刊行物1
ア 刊行物1に記載された事項
刊行物1には、「医療用携帯酸素ボンベキャリアバッグ」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付したものである。

(ア)
「【請求項1】
医療酸素ボンベを収容する略方形状のバッグであって、該バッグの側面部及び平面部にファスナー手段の開口部を備え、該ファスナー手段が該バッグ平面部奥部に平行であって、側面部奥部上部から正面斜め下方に備えることを特徴とする医療用携帯酸素ボンベキャリアバッグ。」

(イ)「【0003】一方患者が通院や買物等で外出する際には、酸素源として携帯用の軽量酸素ボンベを使用し、ボンベからカニューラ等の酸素供給チューブを用いて酸素吸入をしながら外出し、その行動範囲を広げている。酸素ボンベには当然容量が有り、使用時間の延長が求められ、患者の吸入時のみに酸素ガスを供給し、呼気時には供給をストップするデマンドレギュレーターが用いられている。」

(ウ)「【0004】外出時には、キャリアバッグにボンベとデマンドレギュレーターを入れて肩にかけて持ったり、かかるキャリアバッグをキャリアカートに載せ、バッグにカニューラを通して酸素を吸入しながら移動している。」


イ 刊行物1発明
(エ)上記記載事項(イ)には、「ボンベからカニューラ等の酸素供給チューブを用いて酸素吸入しながら外出し」及び「患者の吸入時のみに酸素ガスを供給し、呼気時には供給をストップするデマンドレギュレーターが用いられている」とあり、これは、“酸素ボンベから・・・デマンドレギュレーター、カニューラを介して使用者に酸素を供給する”ことに他ならない。

そこで、上記記載事項(ア)ないし(ウ)及び上記認定事項(エ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「刊行物1発明」という。)

「酸素ボンベからデマンドレギュレーター、カニューラを介して使用者に酸素を供給する酸素ボンベとデマンドレギュレーターを入れる、医療用携帯酸素ボンベキャリアバッグ。」


(2-2)刊行物2
ア 刊行物2に記載された事項
刊行物2には、「移動型酸素濃縮装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付したものである。

(ア)「装置本体1の天面7には空気取り入れ口6や操作盤が設けられており、カバー2の無い状態では雨天で屋外使用の場合、雨水が直接当たる位置である。カバー2は通常は装着せずに雨天の場合のみ使用するようにしてもよいし、実施例のように常時取り付けておいてもよい。」(第2欄第17?22行目)

(イ)「カバー2を装置本体1に装着した状態では、図2のような開口部4や隙間5が存在し、カバー2の内部はその開口部4や隙間5により外気と通じている。」(第2欄第24?27行目)

イ 刊行物2事項
そこで、上記記載事項(ア)ないし(イ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、刊行物2には以下の事項が記載されていると認める。(以下「刊行物2事項」という。)

「装置本体1の天面に装着したカバー2に、開口部4や隙間5が存在している、移動型酸素濃縮装置。」


(2-3)刊行物3
ア 刊行物3に記載された事項
刊行物3には、「呼吸用気体供給装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付したものである。

(ア)「【0010】すなわち本発明は、酸素ボンベ、減圧手段、流量設定手段およびそれらを収納するハードケースを備え、使用者のカニューラに酸素を供給する呼吸用気体供給装置において、該ハードケースの筐体壁に通気孔を備えることを特徴とする呼吸用気体供給装置を提供するものである。」

(イ)「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の呼吸用気体供給装置の好ましい態様例を図面を用いて説明する。本発明の呼吸用気体供給装置は、図1の概略図で示すように酸素ボンベ1、減圧手段、流量設定手段であるデマンドレギュレーター2を備え、使用者のカニューラ3に酸素を供給する装置を輸送するための収納キャリングケースを備える。」

(ウ)「【0016】ただし、該装置を完全に密封する構造では漏洩酸素が該ケース内に貯まる問題が発生するため、図2及び図3に示すような通気手段を備えるものとする。この通気手段には、図2に示すような該ケース静置時及び輸送時に水平方向より下向きに開口しているスリット12、或いは図3に示すような流入逆止構造23を持つ任意の通気孔、或いはこれらの通気開口部の外側にゴアテックスTMなどの透湿防水シートを貼り付けたもので、酸素が空気より重いことから収納ケースの下方に取り付けることが望ましい。」

(エ)「【0017】また、該開口しているスリットは該ケースの静置時及び輸送時に内側から外側へ向かって下向きに開口するように取り付けるものとする。特にケース側面部に設けるのが好ましく、この時、該スリットの中心線と水平面との間に成す角度は、側面部形状が平面或は曲面の場合を含め、60度以上90度以下で開口していることが望ましい。また、該スリットの開口は該ケース筐体壁の厚み以下であることが防水性能を維持する上で望ましい。」

(オ)「【符号の説明】
1 酸素ボンベ
2 流量設定手段
3 カニューラ
4 キャリングケース筐体
5 スリット状通気孔取り付け位置例
6 流入逆止構造体取り付け位置例
11 キャリングケース筐体壁
12 スリット状通気孔
21 キャリングケース筐体壁
22 通気孔
23 流入逆止構造体」


イ 刊行物3事項
(カ)上記記載事項(ウ)には、「通気手段には、・・・酸素が空気より重いことから収納ケースの下方に取り付けることが望ましい。」とあり、かつ【図1】には、収納ケースにおいて、酸素ボンベ1下部側面に対向する位置に、スリット状通気孔取り付け位置例5が示されている。
そのため、酸素ボンベ1の下部側面と収納ケース内面が完全に密着していた場合、通気孔が通気を行うことはできないことが明白であるから、刊行物3には、酸素ボンベ1の下部とケース内面が完全に密着していないことが示されていることは明らかである。
そして、両者が完全に密着していない以上、両者の間に、空間何らかの空間が存在しており、その空間において、酸素ボンベから漏出したガスが滞留することが可能であることも、また明白であるから、刊行物3には、酸素ボンベ1下部とケース内壁の間に酸素ボンベ1から漏出したガスが滞留する僅かな空間部を備えることが示されているものと認められる。

(キ)上記記載事項(ウ)に、「漏洩酸素が該ケース内に貯まる問題が発生するため、図2及び図3に示すような通気手段を備えるものとする」とあり、当該記載は、通気手段が、ケース内の漏洩酸素を外部に排出するものであることを意味している。よって、「通気手段」は、空間部と外気との通気性を確保し漏洩酸素の排出を可能とするためのものであることが明白であるから、刊行物3には、“空間部と外気との通気性を確保し漏洩酸素の排出を可能とする”構成について記載されていると認められる。


そこで、上記記載事項(ア)ないし(オ)及び上記認定事項(カ)ないし(キ)を、図面を参照しつつ技術常識を踏まえ補正発明に照らして整理すると、刊行物3には以下の事項が記載されていると認める。(以下、「刊行物3事項」という。)

「酸素ボンベ、減圧手段、流量設定手段を収納するキャリングケースであって、スリット12、通気孔が当該ケースの下方に取り付けられ、酸素ボンベの下部と当該ケース内面が完全に密着しておらず、両者の間に酸素ボンベから漏出したガスが滞留する僅かな空間部を備え、空間部と外気との通気性を確保し漏洩酸素の排出を可能とする構成を有する、キャリングケース。」


(3)対比
補正発明と刊行物1発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1発明の「酸素ボンベとデマンドレギュレーターを入れる」は、技術常識を踏まえれば「携帯型酸素ボンベシステムを収納する」に相当し、同様に、「医療用携帯酸素ボンベキャリアバッグ」は「携帯型酸素ボンベキャリアバッグ」に相当する。
次に、補正発明の「流量調整器」について、本願明細書には、“高圧ガスレギュレータ、呼吸同調式レギュレータ等の流量調整器”と記載されている(【0021】)。ここで言う“呼吸同調式レギュレータ”は、“デマンドレギュレータ”に他ならないから、補正発明の「流量調整器」は、“デマンドレギュレータ”を含む事項であることは明らかであり、刊行物1発明の「デマンドレギュレータ」が補正発明の「流量調整器」に相当する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。

<一致点>
「酸素ボンベから流量調整器、カニューラを介して使用者に酸素を供給する携帯型酸素酸素ボンベシステムを収納する、携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。

<相違点1>
補正発明は、当該酸素ボンベの下部とバッグ内面が完全に密着しておらず、両者の間に酸素ボンベから漏出したガスが対流する僅かな空間部と、当該バッグの下部に設けられた第2の開口部とを備えているのに対して、刊行物1発明は、酸素ボンベの下部とバッグ内面が完全に密着しているか否かが不明であり、かつ、第2の開口部を有していない点。

<相違点2>
補正発明は、該バッグの内部が外気と流通可能なように、当該バッグの上部に設けられた第1の開口部を備えているのに対して、刊行物1発明は、第1の開口部を有していない点。

<相違点3>
補正発明は、空間部と外気との通気性を確保し酸素ガスの排出を可能とする第1の開口部と第2の開口部とをつなぐ通気路を形成しているものであるのに対して、刊行物1発明は、当該通気路を有していない点。

<相違点4>
流量調整器に関し、補正発明は、「機械制御の流量調整器」を有しているのに対して、刊行物1発明は、デマンドレギュレーターが、機械制御のものか否かが明確でない点。


(4)相違点の検討
ア 相違点1について
(ア)上記(2-3)イにて述べたように、刊行物3事項は、「酸素ボンベ、減圧手段、流量設定手段を収納するキャリングケースであって、スリット12、通気孔が当該ケースの下方に取り付けられ、酸素ボンベの下部と当該ケース内面が完全に密着しておらず、両者の間に酸素ボンベから漏出したガスが滞留する僅かな空間部を備え、空間部と外気との通気性を確保し漏洩酸素の排出を可能とする構成を有する、キャリングケース。」というものであるところ、これを補正発明の用語で表現すれば、「酸素ボンベ、減圧手段、流量設定手段」は「携帯型酸素ボンベシステム」と表現でき、「スリット12、通気孔」は「第2の開口部」と、「下方」は「下部」と、「漏洩酸素」は「酸素ガス」と、各々表現できる。

したがって、刊行物3事項は、「携帯型酸素ボンベシステムを収納するキャリングケースであって、酸素ボンベの下部とケース内面が完全に密着しておらず、両者の間に酸素ボンベから漏出したガスが滞留する僅かな空間部を備え、ケースの下部に設けられた第2の開口部を備え、空間部と外気との通気性を確保し酸素ガスの排出を可能とする構成を有する、キャリングケース。」と言い改めることができる。

(イ)ここで、刊行物1発明と刊行物3事項は、いずれも、“携帯のために酸素ボンベおよびそれに付随する器具を収納する”ことに関するという点で技術分野が共通しており、刊行物3に接した当業者が、これを刊行物1発明に適用することを試みることに格別困難性はない。

(ウ)よって、刊行物1発明に、刊行物3事項を適用して、相違点1に係る補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たということが相当である。


イ 相違点2について
(ア)漏出したガスの滞留を防止する開口部を設ける際、開口部を、漏出が予想される箇所の近くに配置することは、きわめて常識的な事項である。
そして、酸素ボンベにおいて、酸素の漏洩が、酸素ボンベ上部の酸素取出部に発生することは技術常識であるといえること(実願昭59-182258号(実開昭61-96352号)のマイクロフィルム(明細書第2頁下から4行目?第3頁第2行目)などを参照)及び、実際にケース上部に開口部を設けることは従来より周知であり(刊行物1(段落【0022】等)の記載、刊行物2の上記(2-2)イにおける認定などを参照)、ケース上部に開口部を設けることに技術的な困難性が無いこと、を考慮するに、刊行物1発明において、刊行物3事項を適用して、開口部を設ける際に、バッグの下部のみならず、上部にも設けるものとすることは、当業者であれば容易に想到することができると認められる。

(イ)よって、刊行物1発明に、刊行物3事項、並びに、上記従来周知の技術事項、及び、上記技術常識を適用して、相違点2に係る補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たということが相当である。


ウ 相違点3について
(ア)上記(4)アにて述べたように、刊行物3事項は、「携帯型酸素ボンベシステムを収納するキャリングケースであって、酸素ボンベの下部とケース内面が完全に密着しておらず、両者の間に酸素ボンベから漏出したガスが滞留する僅かな空間部を備え、ケースの下部に設けられた第2の開口部を備え、空間部と外気との通気性を確保し酸素ガスの排出を可能とする構成を有する、キャリングケース。」と言い改めることができる。

(イ)補正発明の“第1の開口部と第2の開口部とをつなぐ通気路”については、刊行物1、3のいずれにも明記されていないものの、刊行物1、3のいずれにおいても、ケース、バッグ内の上下の通気を妨げる構成は見当たらず、開口部は酸素ボンベからの漏洩酸素を排出するものであることを考慮するに、刊行物1発明に刊行物3事項を適用し、開口部を上部および下部に設けた際、その両者の間に通気性が生じることは、極めて自然なことであると言える。
また、この点に関して、本願明細書には“・・・僅かな空間があればそこに酸素ガスが滞留する可能性がある。そこでキャリアバッグ下部にも開口部を設けることで外気との通気性を確保し、酸素ガスの排出を可能とする。”(段落【0026】)と記載されているのみであり、「通気路」なる構成を設けることの技術的意義については明確な記載がなく、技術的意義はきわめて乏しいと考えざるを得ない。

(ウ)ゆえに、“第1の開口部と第2の開口部とをつなぐ通気路”を設けることに、格別阻害要因はなく、当業者が通常の創作能力の発揮によりなし得ることというべきである。
そして、当該「通気路」を設けた場合、第1の開口部、第2の開口部の機能に照らすと、当然に、当該通気路は、“空間部と外気との通気性を確保し酸素ガスの排出を可能とする”なる機能を有するものとなる。

(エ)よって、刊行物1発明に、刊行物3事項を適用して、相違点3に係る補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たということが相当である。


エ 相違点4について
(ア)酸素ボンベを使用する際に、デマンドレギュレータとあわせて、機械制御の流量調整器を用いることは、例えば特開2002-306600号公報(段落【0014】?【0015】等)、特開2004-159965号公報(段落【0027】?【0028】)、特開2004-242906号公報(段落【0013】)に示されるように従来周知の技術事項である。
そして、各種の流量調整器により適切な酸素流量を実現することは、酸素ボンベを使用する際に当然に求められることであることを考えれば、補正発明に、上記従来周知の技術事項を適用して、「デマンドレギュレータ」とあわせて、機械制御の流量調整器を用いるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることというべきである。

(イ)よって、刊行物1発明に、上記従来周知の技術事項を適用して、相違点4に係る補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たということが相当である。



オ 小括
したがって、補正発明は、刊行物1発明、刊行物3事項、及び、上記従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。



第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたところ、本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成28年4月6日付けの手続補正書により補正された上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「携帯型酸素ボンベキャリアバッグ」であると認める。

2 刊行物
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された刊行物は、上記第2の2(2)に示した刊行物1、刊行物2、刊行物3であり、その記載事項は上記第2の2(2)のとおりである。

3 対比・検討
本願発明は、実質的に、上記第2の2で検討した補正発明の「携帯型酸素ボンベキャリアバッグ」の「流量調整器」から「機械制御の」ものであるとする限定(第2の2(3)の相違点4に対応する事項)を削除したものである。
そうすると、本願発明に限定を加え、他の発明特定事項を共通とする補正発明が、上記第2の2で検討したとおり想到容易である以上、それよりも広い範囲を特定事項とする本願発明については、上記第2の2(3)にて相違点1ないし3についての検討した通り、刊行物1発明、刊行物3事項、及び、従来周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということになる。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-20 
結審通知日 2017-07-25 
審決日 2017-08-08 
出願番号 特願2015-83375(P2015-83375)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 昌司鶴江 陽介家辺 信太郎  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 熊倉 強
五閑 統一郎
発明の名称 携帯型酸素ボンベキャリアバッグ  
代理人 為山 太郎  

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