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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01R 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R |
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管理番号 | 1332793 |
審判番号 | 不服2016-9750 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-29 |
確定日 | 2017-10-13 |
事件の表示 | 特願2011-234012「電磁放射を検出するための装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 6月 7日出願公開、特開2012-108119、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年10月25日(パリ条約による優先権主張 2010年10月26日 (FR)フランス共和国)の出願であって、平成27年7月22日付けで拒絶理由が通知され、平成27年10月26日付けで意見書が提出されたが、平成28年2月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年6月29日付けで拒絶査定不服審判が請求され、当審において、平成29年3月27日付けで、拒絶理由が通知され、平成29年9月4日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成29年9月4日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願発明1は、次のとおりの発明である。 「【請求項1】 電磁放射(8)に対して感受性を有する第1の要素(12)を備えたアクティブ・ボロメータ(7)と、 前記アクティブ・ボロメータ(7)と同一であり、前記電磁放射(8)に対して感受性を有する第2の要素(13)を備えた基準ボロメータ(10)と、 外壁(16)および前記第2の感受性要素(13)に向いた内壁(17)を有するカバー(15)であって、前記電磁放射(8)に晒される前記第2の感受性要素(13)の少なくとも一部分を被覆し、かつ前記第2の感受性要素(13)と前記内壁(17)を隔てる空きスペースを設ける、カバー(15)と、 前記電磁放射(8)に晒される前記外壁(16)の少なくとも一部分を形成する反射シールド(18)と、 を単一基板(14)上に含む、電磁放射を検出するための装置であって、 前記カバー(15)の前記内壁(17)は、吸収性層(20)から構成され、 前記吸収性層(20)は、少なくとも前記第2の感受性要素(13)から放射された熱放射線を吸収する材料から作られていることを特徴とする、電磁放射を検出するための装置。」 本願発明2-11は、本願発明1を減縮した発明である。 第3 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平07-209089号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、非接触で対象物の温度を測定する赤外線センサに関する。」 「【0011】 【発明が解決しようとすべき課題】本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、サーミスタ定数の大きな赤外線検知手段を用いることによって、微弱な赤外線をも高精度で測定できる高感度な赤外線センサを提供することにある。」 「【0035】 【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明がこの実施例のみに限定されるものではない。 【0036】本発明の一実施態様として本実施例に用いてなる赤外線センサの外観構造を図1、図2に示す。 【0037】本実施例の赤外線センサ1は、センサ基板としてシリコン基板2を有し、このシリコン基板2には空洞部3が形成されている。この空洞部3は、シリコン基板2の上下面に開口している。シリコン基板2の上面には、空洞部上に形成する絶縁性の薄膜を4点支持の架橋構造によって形成してなる二つの架橋部4および5を有するシリコンオキシナイトライド膜6が成膜されている。 【0038】それぞれの架橋部4および5の中央部には感温膜7および8が設けられている。これらの感温膜7および8は、例えば多結晶シリコンにより形成されている。感温膜7および8には、図示しないが、モリブデンあるいはモリブデンシリサイドと多結晶シリコンとの間にショットキー接合が形成され、さらにアルミニウム膜により形成された電極配線層の端部が電気的に接続され、この電極配線層の他端部は、クロム膜で延長されて、シリコン基板2の上面の周辺部に形成された電極パッド9に接続されている。 【0039】シリコン基板2の上面には、シリコンオキシナイトライド膜6が成膜され、このシリコンオキシナイトライド膜6の上面に表蓋10が接合されている。表蓋10はシリコンにより形成されており、その表蓋10には、赤外線反射防止膜11が成膜されている。赤外線反射防止膜11の表面には、例えばアルミニウム膜や銅層上にチタン層が積層されてなる多層膜により赤外線遮蔽膜12が成膜され、これら赤外線遮蔽膜12の赤外線受光部13に対向する位置には、赤外線を内部に導くために入射窓(アパーチャ)14が設けられている。 【0040】一方、シリコン基板2の下面には裏蓋15が接合されている。この裏蓋15は、例えばパイレックスガラス(商品名)で作製されている。 【0041】この赤外線センサ1では、赤外線は表蓋10の開口部14および空洞部3を通して一方の感温膜7に選択的に入射する。他方の感温膜8では、赤外線遮蔽膜11により赤外線の入射が遮蔽される。この赤外線が入射する感温膜7と赤外線が遮蔽される感温膜8との差動出力がフレキシブル基板(図示せず)を介して外部に導かれる。ここで、空洞部3および掘込み部内の感温膜7の周囲は、センサ基板たるシリコン基板2の両面に接合された蓋体(表蓋10および裏蓋15)により、まず裏蓋15をシリコン基板2の下面に接合した後、真空中において表蓋10をシリコン基板2の上面に接合することで真空状態に保持されている。そのため、入射した赤外線のエネルギーが大気を通じて失われることがなく、微量な赤外線で効率よく感温膜7を加熱でき、感度が向上する。一方、他方の感温膜8も同一の真空状態に保たれている。そのため、二つの感温膜7および8の間の差動出力により真の赤外線量を検出することができる。」 また、引用文献1の図面第1、2図には、「表蓋10」の外面及び内面に、「赤外線反射防止膜11」が成膜されていることが見て取れる。 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「赤外線センサ(段落【0001】より)であって、赤外線センサ1は、センサ基板としてシリコン基板2を有し、このシリコン基板2には空洞部3が形成され、この空洞部3は、シリコン基板2の上下面に開口し、シリコン基板2の上面には、空洞部上に形成する絶縁性の薄膜を4点支持の架橋構造によって形成してなる二つの架橋部4および5を有するシリコンオキシナイトライド膜6が成膜されており(段落【0037】より)、 架橋部4および5の中央部には感温膜7および8が設けられており(段落【0038】より)、 シリコン基板2の上面には、シリコンオキシナイトライド膜6が成膜され、このシリコンオキシナイトライド膜6の上面に表蓋10が接合され、表蓋10はシリコンにより形成されており、その表蓋10には、赤外線反射防止膜11が成膜され、赤外線反射防止膜11の表面には、例えばアルミニウム膜や銅層上にチタン層が積層されてなる多層膜により赤外線遮蔽膜12が成膜され、これら赤外線遮蔽膜12の赤外線受光部13に対向する位置には、赤外線を内部に導くために入射窓(アパーチャ)14が設けられており(段落【0039】より)、 赤外線反射防止膜11は、表蓋10の外面及び内面に成膜されており(図面第1、2図より)、 シリコン基板2の下面には裏蓋15が接合され(段落【0040】より)、 赤外線センサ(段落【0001】より)。」 2 引用文献2-6について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平05-090552号公報)には、「多重反射防止策として0.01?10[torr]の低真空で金属蒸着を行った金属黒体膜を赤外線センサの受光部の近傍の電極領域に形成し、反射防止膜として使用する熱型センサの構造が提案されている。金属黒体は例えば「”蒸着による金属黒体の形成”真空第16巻第5号(1937)」に紹介されているように金属10^(- 5) [torr]以上の高真空状態で蒸着させるといわゆる金属光沢と呼ばれる反射率の高い金属膜となるのに対し、10^(- 2) ?数10[torr]の真空度で蒸着させると金属黒体と呼ばれる密度の低い多孔質状の膜となり光の吸収体となるものである。」(【0006】)と記載されている。 つまり、「金属の多孔質膜であり光の吸収体となる黒体膜を含み、多層構造を有する反射防止膜」が開示されている。 (2)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特表2010-507084号公報)には、図8とともに、次の技術事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0025】 典型的な実施形態は、光学的に不透明な窓を備える基準セルを使用することになる。そのような不透明性を用いて、「暗い」セルを提供することができ、それは、第1のセルにより感知される放射線のレベルと無関係の信号出力を提供するものである。図8は、そのような配列の例を示している。前の図に関連してすでに説明されている要素については同じ参照番号が使用される。 【0026】 この配列において、センサデバイス800は、センサデバイス上に入射する放射線のレベルを示す出力を提供する第1のセル810及びセンサデバイス上に入射する放射線のレベルと無関係の出力を提供する第2のセル820を含む。第1及び第2のセルの各々は、第1の基板110上に形成されたIRセンサ105を含み、その各々は、各々の上に備えられたキャップ816、826を有する。各々のセルのキャッピングは、各々のセンサの上に制御された体積を定める役割をし、上述のように、これは適宜、そのアプリケーションに応じて真空排気するか、又は特定のガスで充填することができる。第2のセル820は、キャップを介したセンサ105上への放射線の透過を妨げるように構成されているという点で第1のセルと異なる。これは、セル上に光学的に不透明な層830を備えることにより達成することができる。したがって、第2のセルは、基準セルとみなすことができ、その出力は入射放射線と無関係である。次いで、この第2のセルの出力は、第1のセルの出力をキャリブレーションするために使用することができ、その信号出力は入射放射線の強度により決定される。 【0027】 そのような基準セルを備えることにより、本発明の教示にかかるセンサデバイスが、暴露センサ(exposed sensor)の出力と基準暗センサの出力との比較を行うことにより放射線の検出を可能にすることは理解されるであろう。このデバイスでは、暗センサの光学的特性のみが変更され、熱的及び電気的特性はその照射センサの特性と同じである。このようにして、可視スペクトル中の放射線などのIR放射線又はあらゆるタイプの電磁放射線において、入射放射線の正確で精度の高い感知が可能になる。」 よって、引用文献3には、基準セルをキャップ826で覆って空洞を設けるように完全にカプセル化した構成を備える熱センサに関する技術が記載されている。 また、引用文献3(特表2010-507084号公報)には、「シリコンの蓋からなるキャップ」(段落【0013】参照。)を用いることも記載されている。 (3)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平06-147613号公報)には、「この黒体31は、人間の皮膚の輻射率である0.94に近似した輻射率を有し、多孔質のPt,Au,Agなどの金属が使用可能である。」(【0040】)と記載されている。 つまり、多孔質のPt、Agを用いた黒体に関する技術が記載されている(段落0040)。 (4)原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2007-285645号公報)には、「黒鉛等の黒体に近い物質」(段落【0019】)と記載されている。 つまり、黒鉛を黒体に用いることが示されている。 (5)原査定において、周知技術を示す文献として引用された引用文献6(特開2000-337958号公報)には「従来、上記構造の抵抗型赤外線センサの赤外線吸収膜は、半導体プロセスで使用可能であり且つ上記構造を形成し得る微細なパターニングが可能な膜として、ニクロム合金又は窒化チタンを材料として構成されていた。」(段落【0003】)と記載されている。 つまり、ニクロム合金、窒化チタンを赤外線吸膜材料として用いることが示されている。 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 引用発明1における「感温膜7および8」は、赤外線で加熱されるものであるから、それぞれ、本願発明1における、「前記電磁放射(8)に対して感受性を有する第2の要素(12)」、及び、「電磁放射(8)に対して感受性を有する第1の要素(13)」、及びに相当する。 イ 引用発明1における、「感温膜7」によって「赤外線量を検出」する部分が、本願発明1における「電磁放射(8)に対して感受性を有する第1の要素(12)を備えたアクティブ・ボロメータ(7)」に相当する。 また、引用発明1における、「感温膜8」によって「赤外線量を検出」する部分は、「赤外線が遮蔽され」、「この赤外線が入射する感温膜7と赤外線が遮蔽される感温膜8との差動出力が外部に導かれ」るから、本願発明1における、「前記アクティブ・ボロメータ(7)と同一であり、前記電磁放射(8)に対して感受性を有する第2の要素(13)を備えた基準ボロメータ(10)」に相当するといえる。 ウ 引用発明1における「表蓋10」は、「シリコン基板2の上面」に「シリコンオキシナイトライド膜6」を介して「接合され」、「表蓋10はシリコンにより形成されており、その表蓋10には、赤外線反射防止膜11が成膜され、(当審注:外面に成膜された)赤外線反射防止膜11の表面には、例えばアルミニウム膜や銅層上にチタン層が積層されてなる多層膜により赤外線遮蔽膜12が成膜され、これら赤外線遮蔽膜12の赤外線受光部13に対向する位置には、赤外線を内部に導くために入射窓(アパーチャ)14が設けられて」いる。そして、「アルミニウム膜や銅層上にチタン層が積層されてなる多層膜」が赤外線を反射することは明らかであって、しかも「赤外線は表蓋10の開口部14および空洞部3を通して一方の感温膜7に選択的に入射し、他方の感温膜8では、赤外線遮蔽膜11により赤外線の入射が遮蔽され」ているから、引用発明1における上記「表蓋10」と、本願発明1における「外壁(16)および前記第2の感受性要素(13)に向いた内壁(17)を有するカバー(15)であって、前記電磁放射(8)に晒される前記第2の感受性要素(13)の少なくとも一部分を被覆し、かつ前記第2の感受性要素(13)と前記内壁(17)を隔てる空きスペースを設ける、カバー(15)」及び「前記電磁放射(8)に晒される前記外壁(16)の少なくとも一部分を形成する反射シールド(18)」とは、「前記第2の感受性要素(13)に向いた内壁(17)を有するカバー(15)であって、前記電磁放射(8)に晒される前記第2の感受性要素(13)の少なくとも一部分を被覆」する「カバー(15)」及び「前記電磁放射(8)に晒される前記外壁(16)の少なくとも一部分を形成する反射シールド(18)」の点で共通する。 エ 引用発明1における、「シリコン基板2の下面」に[接合」された「裏蓋15」は、「裏蓋15」の上面に「感温膜7および8」及び「表蓋10」を含んでいるから、次の相違点は除いて、本願発明1における「単一基板(14)」に相当するといえる。 オ 引用発明1における「赤外線センサ」は、「二つの感温膜7および8の間の差動出力により真の赤外線量を検出することができる」ものであるから、次の相違点は除いて、本願発明1における「電磁放射を検出するための装置」に相当するといえる。 カ 引用発明1における「表蓋10」の「内面」に「赤外線反射防止膜11」が成膜されていることと、本願発明における「前記カバー(15)の前記内壁(17)は、吸収性層(20)から構成され、前記吸収性層(20)は、少なくとも前記第2の感受性要素(13)から放射された熱放射線を吸収する材料から作られている」こととは、「前記カバー(15)の前記内壁(17)は層(20)から構成され、前記層(20)は、少なくとも前記第2の感受性要素(13)から放射された熱放射線を反射しないように作られている」点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「電磁放射(8)に対して感受性を有する第1の要素(12)を備えたアクティブ・ボロメータ(7)と、 前記アクティブ・ボロメータ(7)と同一であり、前記電磁放射(8)に対して感受性を有する第2の要素(13)を備えた基準ボロメータ(10)と、 前記第2の感受性要素(13)に向いた内壁(17)を有するカバー(15)であって、前記電磁放射(8)に晒される前記第2の感受性要素(13)の少なくとも一部分を被覆するカバー(15)と、前記電磁放射(8)に晒される前記外壁(16)の少なくとも一部分を形成する反射シールド(18)と、 を単一基板(14)上に含む、電磁放射を検出するための装置であって、 前記カバー(15)の前記内壁(17)は層(20)から構成され、前記層(20)は、少なくとも前記第2の感受性要素(13)から放射された熱放射線を反射しないように作られていることを特徴とする、電磁放射を検出するための装置。」 (相違点1) 本願発明1では、カバー(15)が、「前記第2の感受性要素(13)と前記内壁(17)を隔てる空きスペース」を設けているのに対し、引用発明1では、「表蓋10」が、「感温膜8」と「表蓋10」の内面を隔てる空きスペースを設けているか、明らかでない点。 (相違点2) 本願発明1では、カバー(15)の内壁(17)が「吸収性層(20)」で形成され、「前記吸収性層(20)は、少なくとも前記第2の感受性要素(13)から放射された熱放射線を吸収する材料から作られている」のに対し、引用発明1では、「表蓋10」の内面に「赤外線反射防止膜11」が成膜されている点。 (2)相違点に付いての判断 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 引用発明1における「表蓋10」は「シリコンにより形成されて」いるところ、シリコンは赤外線を透過する材料であることは技術常識であるから、表蓋10の内部は赤外線に対し、透明である。 すると、引用発明1における「表蓋10」の外面及び内面に成膜された「赤外線反射防止膜11」は、赤外線が、外部から「赤外線遮蔽膜12の赤外線受光部13に対向する位置に」設けられた「入射窓(アパーチャ)14」を通って「内部に導」かれるようにする際、赤外線が、表蓋10の外面及び内面(つまり、表面)で反射しないようにするための反射防止膜であって、感温膜8から放射された赤外線を吸収するための膜ではない。 また、引用発明1において、「赤外線反射防止膜11」が赤外線を吸収する材料としたのでは、「入射窓(アパーチャ)14」を通って「内部に導」かれる赤外線が減衰することになり、「微弱な赤外線をも高精度で測定できる高感度な赤外線センサを提供する」(引用文献1段落【0001】参照。)という引用発明1の目的に反することになる。 よって、引用文献2-6に記載された技術を斟酌したとしても、引用発明1において、「赤外線反射防止膜11」を、感温膜8から放射された赤外線を吸収する材料とすることはできず、上記相違点2に係る本願発明2の構成とすることは、当業者といえども、容易になし得たことではない。 (3)まとめ 以上のとおり、本願発明1は、相違点1について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-6に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2-11について 本願発明2-11も、上記相違点2に係る本願発明1の構成、つまり、カバー(15)の内壁(17)が「吸収性層(20)」で形成され、「前記吸収性層(20)は、少なくとも前記第2の感受性要素(13)から放射された熱放射線を吸収する材料から作られている」構成を備えるものであるから、本願発明1におけるのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-6に記載された技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第2号について 当審では、請求項7に「石油」と記載されているが、石油は「多孔質で金属質」ではないから、請求項7の記載は不明りょうであるとの拒絶理由を通知しているが、平成29年9月4日付けの手続補正において、請求項7における「石油」が「金黒」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1-11は、当業者が引用発明1及び引用文献2-6に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-09-28 |
出願番号 | 特願2011-234012(P2011-234012) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G01R)
P 1 8・ 121- WY (G01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 續山 浩二 |
特許庁審判長 |
酒井 伸芳 |
特許庁審判官 |
清水 稔 須原 宏光 |
発明の名称 | 電磁放射を検出するための装置 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 吉田 昌司 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 関根 毅 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 永井 浩之 |