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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1332892
審判番号 不服2016-12083  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-09 
確定日 2017-09-28 
事件の表示 特願2012- 1681「エポキシ樹脂組成物および電子部品装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月16日出願公開、特開2012-153887〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月6日(優先権主張 平成23年1月6日)を出願日とする出願であって、平成27年11月18日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月5日に手続補正書と意見書が提出されたが、同年5月2日付け(発送日:同年5月10日)で拒絶査定され、これに対し、同年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであって、そのうち、本願の請求項1に係る発明は、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)ジヒドロキシベンゼン誘導体とアルデヒド化合物との反応によって得られる化合物を含有するフェノール樹脂、及び(C)酸化防止剤を含有するエポキシ樹脂組成物。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、要するに、「本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記引用文献1および2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
引用文献1:特開2008-118113号公報
引用文献2:特開2010-248369号公報」
というものを含むものである。

第4 当審の判断
1 刊行物の記載事項
(1)引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線部は合議体が付与。)。
ア「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤を含有し、かつスリット式粘度測定装置にて測定温度175℃、せん断速度300s^(-1)における見かけ最低溶融粘度が7.0Pa・s以下であるエポキシ樹脂組成物を用いて、キャビティ内気圧が0.2MPa以上の状態にて素子を封止する電子部品装置の製造方法。」(特許請求の範囲 請求項1)

イ「近年、半導体装置の高密度実装化に伴って配線数が増加し、半導体素子表面のアルミ配線及び金線間のピッチは狭くなる傾向にある。そのため、隣接する金線との間隔が非常に狭くなり、少しの変形でショートする可能性が大きくなる。そして、これらの問題に対応するために、金線はより細線化する傾向にある。・・・
本発明は、ファインピッチ配線半導体素子を封止成形する際に、金線変形や断線、金線変形によるリーク不良といった、電気特性不良のないエポキシ樹脂組成物を用いた電子部品装置の製造方法及びその電子部品装置を提供するものである。」(段落【0002】?【0004】)

ウ「本発明に用いられる(B)硬化剤としてはエポキシ樹脂を硬化させることができる化合物であれば、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール樹脂等のフェノール化合物、・・・等が挙げられ、これらのうち1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもかまわない。中でも、中でも(C)硬化促進剤の効果が十分に発揮されるという観点からは、フェノール樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂の硬化剤としてフェノール樹脂としては特に制限はないが、例えば、一般に使用されている1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂で、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
・・・などが挙げられる。
」(段落【0015】?【0016】)

エ「通常の成形金型温度である175℃の温度条件下において、スリット式粘度測定装置により測定された見かけ最低溶融粘度は、せん断速度が300s^(-1)の場合7.0Pa・s以下でなければならない。7.0Pa・sを超える場合、金線にかかる抵抗が大きくなり、ファインピッチ半導体素子において金線が変形してリーク不良が発生する傾向にある。」(段落【0032】)

オ「以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
[エポキシ樹脂組成物1?7]
(A)エポキシ樹脂として、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX-4000)、スチルベン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2:東都化成株式会社製商品名YSLV-120TE)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3:住友化学工業株式会社製商品名ECSN-190-2)を用意した。また、臭化エピビス型エポキシ樹脂(難燃剤:東都化成株式会社商品名YDB-400)を用意した。
(B)硬化剤として、一般式(I)で表されるフェノール樹脂(硬化剤1)、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤2:三井化学株式会社製商品名ミレックスXL-225-3L)、フェノールノボラック樹脂(硬化剤3:明和化成株式会社製商品名H-1)を用意した。
(C)硬化促進剤として、トリフェニルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加物(硬化促進剤1)、トリパラトリルホスフィンと1,4-ベンゾキノンとの付加物(硬化促進剤2)を用意した。
・・・
添加剤としてハイドロタルサイド(添加剤1:協和化学工業株式会社製商品名DHT-4A)、フェノール系抗酸化剤(添加剤2:旭電化工業株式会社製商品名アデカスタブAO-60)、インデンとベンゾチオフェンの共重合物(添加剤3:新日鐵化学株式会社製製品名IS-100)を用意した。
これらを表1に示す割合で配合し、ミキシングロール機で混練して冷却した後、粉砕機で微粒化することにより目的とする粉末状のエポキシ樹脂組成物1?7を得た。
【表1】

」(段落【0039】?【0045】)

(2)引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)下記一般式(I-1)で示されるレゾルシノール誘導体、を必須成分として含有し、(C)下記一般式(I-2)で示される環状フェノール化合物及び(D)下記一般式(I-3)で示される鎖状フェノール化合物のいずれか又は両方を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式(I-1)中、R^(2)は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。)
【化2】

(式(I-2)中、mは、2以上の整数であり、平均で2?20の数であり、
R^(1)は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R^(2)は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R^(1)及びR^(2)の2以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【化3】

(式(I-3)中、nは、1以上の整数であり、平均で1?20の数であり、lは、それぞれ独立して0又は1であり、平均でそれぞれ独立して0?1の数であり、
R^(1)は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R^(2)は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R^(1)及びR^(2)の2以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【請求項7】
(B)下記一般式(I-1)で示されるフェノール化合物、(C)下記一般式(I-2)で示される環状フェノール化合物及び(D)下記一般式(I-3)で示される鎖状フェノール化合物のいずれか又は両方を含有するエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法であって、
酸触媒下、(b)下記一般式(I-4)で示されるアルデヒド及びその複数量体より選ばれる少なくとも一種と(a)下記一般式(I-1)で示されるレゾルシノール誘導体とを、(a)成分が(b)成分に対して当量比で過剰の条件で重縮合反応させることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤の製造方法。
【化4】

(式(I-1)中、R^(2)は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。)
【化5】

(式(I-2)中、mは、2以上の整数であり、平均で2?20の数であり、
R^(1)は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R^(2)は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R^(1)及びR^(2)の2以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【化6】

(式(I-3)中、nは、1以上の整数であり、平均で1?20の数であり、lは、それぞれ独立して0又は1であり、平均でそれぞれ独立して0?1の数であり、
R^(1)は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R^(2)は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素オキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素チオ基、及びハロゲン原子からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R^(1)及びR^(2)の2以上が結合して環状構造を形成してもよい。)
【化7】

(式(I-4)中、R^(1)は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1?18の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよい。)」(特許請求の範囲 請求項1、7)

イ「一方、近年、電子部品の分野では高速化及び高密度化が進んでおり、それに伴って、電子部品の発熱が顕著となってきている。また、高温下で作動する電子部品も増加している。そのため、電子部品に使用されるプラスチック、特にエポキシ樹脂硬化物には高い耐熱性が要求されている。
耐熱性をはじめとするエポキシ樹脂硬化物の各種特性を向上させるために、カリックスアレーン類を硬化剤として使用する方法が報告されている(特許文献1?5を参照)。これらの方法によれば、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度を向上させ、高い耐熱性を付与することが可能となる。
・・・
しかしながら、上記方法で使用する硬化剤は、エポキシ樹脂組成物の構成成分との溶解性が低いため、流動性が低下する等の問題がある。
本発明の課題は、エポキシ樹脂組成物にした際に溶解性が良好であり、かつ、エポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与できるエポキシ樹脂用硬化剤として用いることができる、フェノール誘導体を提供することである。また、本発明の他の課題は、前記エポキシ樹脂用硬化剤を含む流動性及び耐熱性が良好であるエポキシ樹脂組成物及びそれによって封止された素子を備えてなる電子部品装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のフェノール誘導体と特定のアルデヒド化合物を重縮合反応させることにより得られた化合物をエポキシ樹脂用硬化剤として用いることにより、所期の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。」(段落【0002】?【0005】)

ウ「本発明によれば、エポキシ樹脂組成物にした際に溶解性が良好であり、且つエポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与でき、高温時における弾性率の低下が小さいエポキシ樹脂用硬化剤を提供することができる。また、本発明によれば、前記エポキシ樹脂用硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物及びそれによって封止された素子を備えてなる電子部品装置を提供することができる。」(段落【0007】)

エ「以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例の硬化剤の合成>
(実施例1):レゾルシノールとアセトアルデヒドの重縮合物(レゾルシノール/アルデヒド比=2.0)の合成
1000mlのセパラブルフラスコを用い、レゾルシノールを220.2g(2.0mol)、パラアルデヒド44.1g(0.33mol)、メタノールを135g、純水を170g、シュウ酸を0.87g(9.7mmol)投入し、攪拌棒で攪拌しながら、オイルバスを用いて、約85℃で6時間加熱還流した。反応終了後、アスピレータ、真空ポンプを用いて減圧し、溶媒であるメタノール及び水を留去することで、濃赤色固体を233g得た。
・・・
これらGPCの積分比から求めた結果、レゾルシノール含有量は26%であった(残分:一般式(I-2)で示される環状フェノール化合物及び一般式(I-3)で示される鎖状フェノール化合物の混合物)。また、水酸基当量は66であった。
(実施例2):レゾルシノールとアセトアルデヒドの重縮合物(レゾルシノール/アルデヒド比=1.5)の合成
1000mlのセパラブルフラスコを用い、レゾルシノールを165.2g(1.5mol)、パラアルデヒド44.1g(0.33mol)、メタノールを135g、純水を170g、シュウ酸を0.66g(7.3mmol)投入し、攪拌棒で攪拌しながら、オイルバスを用いて、約85℃で6時間加熱還流した。反応終了後、アスピレータ、真空ポンプを用いて減圧し、溶媒であるメタノール及び水を留去することで、濃赤色固体を174g得た。
・・・
これらGPCの積分比から求めた結果、レゾルシノール含有量は17%であった(残分:一般式(I-2)で示される環状フェノール化合物及び一般式(I-3)で示される鎖状フェノール化合物の混合物)。また、水酸基当量は68であった。
・・・
〔エポキシ樹脂組成物の調製及びその特性評価〕
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂:エポキシ当量170、軟化点67℃のヒドロキシベンズアルデヒド型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製商品名「EPPN-502H」)
(硬化剤)
硬化剤1:実施例1で得た化合物
硬化剤2:実施例2で得た化合物
硬化剤3:合成例1で得た化合物
硬化剤4:合成例2で得た化合物
硬化剤5:水酸基当量103のヒドロキシベンズアルデヒド型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名「MEH-7500」)
・・・
上述の成分をそれぞれ下記表1に示す質量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例3?4、比較例1?3のエポキシ樹脂組成物を得た。
【表1】

次に、実施例3、4、及び比較例1?3によって得たそれぞれのエポキシ樹脂組成物を、以下に示す各試験によって評価した。評価結果を表2及び図2に示す。・・・
(1)スパイラルフロー(流動性の指標)
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、上記条件で成形して流動距離(cm)を測定した。結果を表2に示す。
・・・
(3)動的粘弾性挙動
エポキシ樹脂組成物を上記条件で長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの大きさに成形し、後硬化した。次いで、ダイヤモンドカッターで幅5mm、長さ55mmに切断し、粘弾性測定装置RSA3(TAインスツルメンツ社製)を用い、3点曲げモードで昇温速度5℃/min、周波数6.28rad/sの条件で測定した。
(4)均一性(溶解性)
表1のエポキシ樹脂と硬化剤のみを混合して、ホットプレートを用い120℃で3分間加熱して、透明になったものを○、濁ったままのものを×とした。
【表2】

」(段落【0075】?【0087】)

オ「

」(図2)

2 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、上記摘示第4 1(1)オにおけるエポキシ樹脂組成物2の記載から、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX-4000)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3:住友化学工業株式会社製商品名ECSN-190-2)、臭化エピビス型エポキシ樹脂(難燃剤:東都化成株式会社商品名YDB-400)、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤2:三井化学株式会社製商品名ミレックスXL-225-3L)、及びフェノール系抗酸化剤(添加剤2:旭電化工業株式会社製商品名アデカスタブAO-60)を含有するエポキシ樹脂組成物。」

3 本願発明と引用発明との対比
引用発明の「ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名YX-4000)」、「クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3:住友化学工業株式会社製商品名ECSN-190-2)」、「臭化エピビス型エポキシ樹脂(難燃剤:東都化成株式会社商品名YDB-400)」は、いずれも、本願発明の「(A)エポキシ樹脂」に相当する。
引用発明の「フェノールアラルキル樹脂(硬化剤2:三井化学株式会社製商品名ミレックスXL-225-3L)」は、本願発明の「ジヒドロキシベンゼン誘導体とアルデヒド化合物との反応によって得られる化合物を含有するフェノール樹脂」と、「フェノール樹脂」である限りにおいて共通する。
引用発明の「フェノール系抗酸化剤(添加剤2:旭電化工業株式会社製商品名アデカスタブAO-60)」は、本願発明の「(C)酸化防止剤」に相当する。
引用発明の「エポキシ樹脂組成物」は、本願発明の「エポキシ樹脂組成物」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、及び(C)酸化防止剤を含有するエポキシ樹脂組成物。」
である点で一致し、

次の点で相違する。

[相違点]
フェノール樹脂に関し、本願発明は「ジヒドロキシベンゼン誘導体とアルデヒド化合物との反応によって得られる化合物を含有する」と特定するのに対して、引用発明では「フェノールアラルキル樹脂」である点。

4 相違点についての判断
(1)引用文献1には、上記摘示第4 1(1)イに、エポキシ樹脂組成物がファインピッチ配線半導体素子、すなわち、高密度化された電子部品に適用されることが記載され、上記摘示第4 1(1)ウに、エポキシ樹脂の硬化剤として各種フェノール樹脂が用いられることが記載され、その一例として、レゾルシン等のフェノール類とアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合または共縮合して得られるノボラック型フェノール樹脂が示されている。
一方、引用文献2には、上記摘示第4 1(2)イに、電子部品の高密度化により、電子部品に使用されるプラスチック、特にエポキシ樹脂硬化物には高い耐熱性が要求されていることが記載され、上記摘示第4 1(2)アないしオより、エポキシ樹脂組成物とした際に流動性が良好であり、エポキシ樹脂硬化物に高い耐熱性を付与し、高温時における弾性率の低下が小さいエポキシ樹脂用硬化剤として、(I-1)で示されるレゾルシノール誘導体、すなわち、ジヒドロキシベンゼン誘導体と(I-4)で示されるアルデヒドとの重縮合で得られる、(I-2)で示される環状フェノール化合物及び(I-3)で示される鎖状フェノール化合物のいずれか又は両方を含有するフェノール樹脂が記載され、該(I-2)で示される環状フェノール化合物及び該(I-3)で示される鎖状フェノール化合物はいずれも、ノボラック型フェノール樹脂に含まれるものである。

そうすると、引用文献2に記載される知見に接した当業者であれば、ファインピッチ配線半導体素子への封止時の低い粘度、すなわち流動性が要求される引用発明において、硬化剤のフェノールアラルキル樹脂を、組成物の流動性が良好なうえ、高い耐熱性の付与と高温時における弾性率の低下が小さいことを期待して、引用文献2に記載されるエポキシ樹脂用硬化剤、すなわち、ジヒドロキシベンゼン誘導体とアルデヒドとの重縮合で得られる、ノボラック型フェノール樹脂に代えることは当業者が容易に想到し得ることである。

(2)本願の実施例1?12(本願発明に対応)は、比較例5?8(引用発明に対応。)に比べ、重量保持率は低下するものの、弾性保持率は向上するという効果を奏することができるから、本願発明の引用発明と対比した場合の効果は、引用発明よりも「重量保持率は低下するものの、弾性保持率は向上する」という効果であると解される。
他方、引用発明において、引用文献2に記載されたエポキシ樹脂硬化剤を採用したことにより当業者が予測する効果は、引用発明よりも弾性率の低下が小さい、すなわち、「弾性保持率が向上する」という効果である。
そうすると、引用発明よりも「重量保持率は低下するものの、弾性保持率は向上する」という本願発明の効果は、引用発明において相違点に係る本願発明の構成を採用した場合に予測される「弾性保持率が向上する」という効果に比べ、当業者が予測できない格別顕著なものとはいえない。

(3)審判請求人は、審判請求書において、(A)成分及び(B)成分に加えて、(C)成分を組み合わせたときの相乗効果について主張するが、当該主張の相乗効果は、本願発明と引用発明とを比較した場合の効果の差についていうものではないから、引用発明に基づく進歩性を検討する上では、考慮しないのが相当である。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明および引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-25 
結審通知日 2017-08-01 
審決日 2017-08-15 
出願番号 特願2012-1681(P2012-1681)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀谷 のぞみ  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 藤原 浩子
上坊寺 宏枝
発明の名称 エポキシ樹脂組成物および電子部品装置  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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