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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1332917 |
審判番号 | 不服2016-18082 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-12-02 |
確定日 | 2017-10-17 |
事件の表示 | 特願2012-272002「熱処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月30日出願公開、特開2014-120497、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年12月13日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 2月12日 拒絶理由通知(起案日) 平成28年 4月 6日 意見書及び手続補正書の提出 平成28年 9月 2日 拒絶査定(起案日) 平成28年12月 2日 審判請求及び手続補正書の提出 平成29年 7月 3日 当審拒絶理由通知(起案日) 平成29年 8月29日 意見書及び補正書の提出 第2 原査定の概要 1 拒絶理由通知 平成28年9月2日付けの拒絶査定(以下、「原査定」という。)の根拠となった平成28年2月12日付けの拒絶理由通知の概要は次のとおりである。 「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由1、2について ・請求項 1,2,6 ・引用文献等 1 ・備考 引用文献1の段落[0030]には、 「・・・。なお、これら複数個のガイドピン76に代えて上側に向けて拡がるように水平面と所定の角度をなすテーパ面が形成された円環状部材を設けるようにしても良い。」と記載されている。 また、段落[0055]等に記載されているように、引用文献1も「ハロゲンランプHLによって半導体ウェハーWを予備加熱温度T1(800℃)にまで予備加熱してからフラッシュランプFLからの閃光照射によってフラッシュ加熱を行っている。」ものである。 ……(中略)…… <引用文献等一覧> 1.特開2009-164451号公報」 2 拒絶査定 原査定の概要は次のとおりである。 「この出願については、平成28年 2月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。 なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。 備考 出願人は、平成28年2月12日付けの意見書において 「……(中略)……このように、引用文献1には、「ガイドリングの内周のテーパ面はフラッシュ光照射によって跳躍して浮上した基板が落下してきたときに当該基板の外周端を受ける」という本願請求項1に係る発明の特徴的事項については全く記載されておりません。また、引用文献1にはフラッシュ光照射時に基板がサセプターから跳躍して浮上すること自体が記載されておらず、かかる引用文献1の記載内容から容易に本願発明に至るものではございません。従って、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明ではなく、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できるものでもないと思料いたします。」 旨主張している。 出願人の上記主張について検討するに、特開2011-210790号公報(新たに引用した周知文献1)の段落[0075]-[0076]や、特開2007-188914号公報(新たに引用した周知文献2)の段落[0009]に記載されているように、ランプ加熱の衝撃によってウェハが飛び跳ね破損するることは従来より知られていた技術的手段に過ぎないものであり、また、テーパーが元の位置への位置決めなすことも当然予測しうるところと認められるので、(必要なら 特開2004-247339号公報(新たに引用した周知文献3)の段落[0040]-[0041]や、特開2004-179510号公報(新たに引用した周知文献4)の段落[0038]を参照されたい。)出願人の上記主張を採用することは出来ず、補正された本願出願は拒絶理由通知書において引用文献に周知技術を勘案して当業者が容易に想到し得るものである。 よって、出願人の上記主張を採用することは出来ず、本願出願は平成28年 2月12日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものとする。 <引用文献等一覧> 1.特開2009-164451号公報 2.特開2011-210790号公報(新たに引用した周知文献1) 3.特開2007-188914号公報(新たに引用した周知文献2) 4.特開2004-247339号公報(新たに引用した周知文献3) 5.特開2004-179510号公報(新たに引用した周知文献4)」 第3 本願発明 本願の請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、平成29年8月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、 基板を収容するチャンバーと、 前記チャンバー内にて基板を載置して保持するサセプターと、 前記サセプターに保持された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、 を備え、 前記サセプターは、 基板を載置する載置面を有するプレートと、 前記プレート上に設置され、基板の径よりも大きな内径を有する円環形状のガイドリングと、 前記ガイドリングよりも内側の前記プレート上に立設され、基板を点接触にて支持する複数の支持ピンと、 を備え、 前記ガイドリングの内周は、前記プレートから上方に向けて広くなるようなテーパ面とされ、 前記ガイドリングの内径は基板の径よりも10mm以上40mm以下大きく、 前記プレートの前記載置面に対する前記テーパ面の勾配は30°以上70°以下であり、 前記テーパ面は前記フラッシュ光の照射によって前記複数の支持ピンから跳躍して浮上した前記基板が落下してきたときに当該基板の外周端を受けることを特徴とする熱処理装置。 【請求項2】 請求項1記載の熱処理装置において、 前記テーパ面の表面平均粗さは1.6μm以下であることを特徴とする熱処理装置。 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の熱処理装置において、 フラッシュ光照射前に前記サセプターに保持された基板を予備加熱する予備加熱手段をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。」 第4 引用文献及び引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載事項 原査定の根拠となった拒絶理由通知に引用された刊行物である特開2009-164451号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「熱処理装置」(発明の名称)について、図1?図7とともに次の事項が記載されている(下線は参考のため当審において付したもの。以下同様である。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 この発明は、半導体ウェハーやガラス基板等(以下、単に「基板」と称する)に対して閃光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 特許文献1,2に開示されているような技術を用いることによって、キセノンフラッシュランプを使用した場合における半導体ウェハーの割れをある程度は防止できるようになったものの、半導体ウェハーの種類や熱処理条件(予備加熱温度、照射エネルギー)によっては依然として相当な頻度で割れが生じていた。 【0008】 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フラッシュランプからの閃光照射時の基板の割れを防止することができる熱処理装置を提供することを目的とする。」 ウ 「【発明の効果】 【0016】 本発明によれば、複数の支持ピンによって基板を保持部材の上方に近接させて点接触にて支持するため、基板と保持部材との間に薄い気体層が形成され、その気体層によって閃光照射時の基板の激しい動きが抑制され、フラッシュランプからの閃光照射時の基板の割れを防止することができる。」 エ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。 【0021】 まず、本発明に係る熱処理装置の全体構成について概説する。図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す側断面図である。本実施形態の熱処理装置1は基板としてφ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに閃光(フラッシュ光)を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。 【0022】 熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、を備える。また、熱処理装置1は、チャンバー6およびランプハウス5に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。 【0023】 チャンバー6は、ランプハウス5の下方に設けられており、略円筒形状の内壁を有する上部チャンバー61、および、複数のハロゲンランプHLを内蔵する下部チャンバー62によって構成される。上部チャンバー61の天井部分には上側チャンバー窓63が装着されて上方が閉塞されている。また、上部チャンバー61の床部分には下側チャンバー窓64が装着されて下方が閉塞されている。下側チャンバー窓64は上部チャンバー61と下部チャンバー62とを仕切る雰囲気遮断壁としても機能する。上部チャンバー61の内側側壁、上側チャンバー窓63および下側チャンバー窓64によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。 ……(中略)…… 【0028】 また、熱処理装置1は、上部チャンバー61の内部において半導体ウェハーWを保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構4とを備える。図2は、保持部7の斜視図である。保持部7は、サセプタ70および保持プレート74を備えて構成される。サセプタ70は、石英により形成され、円環形状のリング部71に複数の爪部72(本実施形態では4本)を立設して構成される。 【0029】 図3は、保持プレート74の平面図である。保持プレート74は石英にて形成された円形の平板状部材である。保持プレート74の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート74は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。保持プレート74の上面には複数個のバンプ75が立設されている。本実施形態においては、保持プレート74の外周円と同心円の周上に沿って60°毎に計6本のバンプ75が立設されている。6本のバンプ75を配置した円の径(対向するバンプ75間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、本実施形態ではφ280mmである。それぞれのバンプ75は石英にて形成された支持ピンである。 【0030】 また、保持プレート74の上面には、6本のバンプ75と同心円状に複数個(本実施形態では5個)のガイドピン76が立設されている。5個のガイドピン76を配置した円の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きい。各ガイドピン76は石英にて形成されている。なお、これら複数個のガイドピン76に代えて上側に向けて拡がるように水平面と所定の角度をなすテーパ面が形成された円環状部材を設けるようにしても良い。 【0031】 リング部71が上部チャンバー61の側壁部分に形成された円環形状の棚に載置されることによって、サセプタ70が上部チャンバー61に装着される。そして、保持プレート74は上部チャンバー61に装着されたサセプタ70の爪部72に載置される。上部チャンバー61に搬入された半導体ウェハーWはサセプタ70に保持された保持プレート74の上に水平姿勢にて載置される。 【0032】 図4は、保持プレート74に半導体ウェハーWが載置されたときのバンプ75近傍を拡大した図である。サセプタ70の各爪部72には支持棒73が立設されている。支持棒73の上端部が保持プレート74の下面に穿設された凹部に嵌合することによって、保持プレート74が位置ずれすることなくサセプタ70に保持される。 【0033】 また、バンプ75およびガイドピン76も保持プレート74の上面に穿設された凹部に嵌着されて立設されている。保持プレート74の上面に立設されたバンプ75およびガイドピン76の上端は当該上面から突出する。半導体ウェハーWは保持プレート74に立設された複数のバンプ75によって点接触にて支持されて保持プレート74上に載置される。バンプ75の上端の高さ位置から保持プレート74の上面までの距離は0.5mm以上3mm以下(本実施形態では1mm)である。従って、半導体ウェハーWは複数のバンプ75によって保持プレート74の上面から0.5mm以上3mm以下の間隔を隔てて支持されることとなる。また、ガイドピン76の上端の高さ位置はバンプ75の上端よりも高く、複数のガイドピン76によって半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれが防止される。なお、バンプ75およびガイドピン76を保持プレート74と一体に加工するようにしても良い。 【0034】 また、ガイドピン76に代えて上記テーパ面が形成された円環状部材を設けた場合には、当該円環状部材によって半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれが防止される。そして、保持プレート74の上面のうち少なくとも複数のバンプ75に支持された半導体ウェハーWに対向する領域は平面となる。この場合、半導体ウェハーWは複数のバンプ75によって保持プレート74の当該平面から0.5mm以上3mm以下の間隔を隔てて支持されることとなる。」 オ 「【0041】 チャンバー6の上方に設けられたランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、ランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。ランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状部材である。ランプハウス5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65に閃光を照射する。」 カ 「【0057】 ところで、上記の熱処理工程において、フラッシュランプFLからの閃光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は瞬間的に1000℃ないし1100℃程度の処理温度T2まで上昇する一方、その瞬間の裏面温度は予備加熱温度T1からさほどには上昇しない。このため、ウェハー表面側のみに急激な熱膨張が生じ、半導体ウェハーWに上面を凸面とするように反ろうとする応力が作用する。次に瞬間には、半導体ウェハーWの表面温度が急速に下降する一方、表面から裏面への熱伝導により裏面温度も若干上昇するため、半導体ウェハーWには上記とは逆向きに反ろうとする応力が作用する。その結果、半導体ウェハーWが保持プレート74の上で激しく動こうとする。 【0058】 本実施形態においては、φ300mmの半導体ウェハーWが6本のバンプ75によって点接触にて支持され、保持プレート74の上面から1mmの間隔tを隔てて保持される。これにより、半導体ウェハーWの裏面と保持プレート74の上面との間には薄い気体層が挟み込まれることとなる。このような薄い気体層は半導体ウェハーWが反ろうとする動きの抵抗として作用する。すなわち、半導体ウェハーWの裏面と保持プレート74の上面との間の薄い気体層へは気体の出入りが困難であるため、容積変化が生じにくく、これが半導体ウェハーWが反ろうとする動きの抵抗となるのである。その結果、フラッシュランプFLからの閃光照射がなされたときにも、半導体ウェハーWは6本のバンプ75に支持されたままほとんど動かず、半導体ウェハーWの割れを防止することができる。 【0059】 保持プレート74の上面から半導体ウェハーWの裏面までの間隔tが3mmを超えると、それらの間に挟まれた気体層への気体の出入りが容易となり、気体層が半導体ウェハーWの動きに対する抵抗として機能しなくなる。よって、閃光照射時に半導体ウェハーWが6本のバンプ75の上で激しく動き、保持プレート74の上面に衝突してウェハー割れが生じるおそれがある。 【0060】 一方、保持プレート74の上面から半導体ウェハーWの裏面までの間隔tが0.5mm未満であれば、それらの間には薄い気体層が形成される。しかし、薄い気体層が形成されていたとしても、閃光照射時には若干半導体ウェハーWが動く。間隔tが0.5mm未満であると、僅かに半導体ウェハーWが動いただけでも保持プレート74に衝突してウェハー割れが生じるおそれがある。このため、保持プレート74の上面から半導体ウェハーWの裏面までの間隔tは0.5mm以上3mm以下としている。なお、ガイドピン76に代えて上記テーパ面が形成された円環状部材を設けた場合であっても、半導体ウェハーWと対向する保持プレート74の平面から半導体ウェハーWの裏面までの間隔tは0.5mm以上3mm以下であるため、閃光照射時の半導体ウェハーWの著しい動きが抑制され、ウェハー割れを防止することができる。 【0061】 また、本実施形態においては、複数のバンプ75が半導体ウェハーWのデバイス形成領域PAよりも端縁部側にて半導体ウェハーWを支持している。バンプ75は石英製であるため、ハロゲンランプHLからの光を透過し、予備加熱時にもその温度がほとんど昇温しない。このため、比較的低温のバンプ75が半導体ウェハーWに接触している部分は他の領域よりも温度が低くなるものと考えられる。保持プレート74の複数のバンプ75がデバイス形成領域PAよりも端縁部側に接触して半導体ウェハーWを保持するようにすれば、少なくともデバイス形成領域PAの温度が低下して処理不良となることは防止される。 【0062】 以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、保持プレート74に立設された6本のバンプ75によって半導体ウェハーWを支持するようにしていたが、バンプ75の個数は6本に限定されるものではなく、半導体ウェハーWを安定して支持可能な3本以上であれば良い。 【0063】 もっとも、3本のバンプ75にて半導体ウェハーWを支持した場合には、支持点数が少ないためバンプ75間で半導体ウェハーWが若干撓む。一方、保持プレート74は石英製であるため、予備加熱時にもほとんど昇温しない。このため、バンプ75間の半導体ウェハーWの撓み部分が保持プレート74に近づき、その部分の温度低下が生じるおそれがある。本実施形態のように、6本以上のバンプ75にて半導体ウェハーWを支持すればバンプ75間での半導体ウェハーWの撓みはほとんど生じず、その結果撓み部分の温度低下が防止され、半導体ウェハーWの面内温度分布の均一性が向上する。 【0064】 また、保持プレート74の上面に傾斜の緩やかなテーパ面または曲率半径の大きな凹面を形成し、そのテーパ面または凹面に複数のバンプ75を立設し、それら複数のバンプ75によって半導体ウェハーWを支持するようにしても良い。」 (2)引用発明 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「φ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに閃光(フラッシュ光)を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置であって、 略円筒形状の内壁によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される上部チャンバー61と、複数のハロゲンランプHLを内蔵する下部チャンバー62とによって構成され、前記半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、 前記チャンバー6の上方に設けられ、前記熱処理空間65に閃光を照射する複数のフラッシュランプFLを内蔵するランプハウス5と、 前記上部チャンバー61の内部において前記半導体ウェハーWを保持する保持部7と、 を備え、 前記保持部7は、前記半導体ウェハーWが水平姿勢にて載置される保持プレート74と、当該保持プレート74を保持するサセプタ70を備えて構成され、 前記保持プレート74の上面に、当該保持プレート74の外周円と同心円の周上に沿って立設され、前記半導体ウェハーWを前記保持プレート74の上面から0.5mm以上3mm以下の間隔を隔てて支持する支持ピンである複数個のバンプ75と、 前記保持プレート74の上面に設けられ、前記半導体ウェハーWの径よりも若干大きい径を有し、上側に向けて拡がるように水平面と所定の角度をなすテーパ面が形成されて、前記半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれを防止する円環状部材と、 を有することを特徴とするフラッシュランプアニール装置。」 2 引用文献2について 原査定において「周知文献」として示された刊行物である特開2011-210790号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「半導体装置の製造方法」(発明の名称)について、図1?図27とともに次の事項が記載されている。 「【0075】 前述したように、ランプ式アニール装置36では半導体ウエハ30の温度が目標温度に到達するまでに比較的長い時間を要するが、その時間を短縮する目的で昇温レート更に上げ、短時間で急速に半導体ウエハ30を加熱しようとすると、急激な加熱によって回転中の半導体ウエハ30の表面温度にムラが生じることで振動し、半導体ウエハ30が跳ねてウエハ台61から脱落する虞がある。この場合、半導体ウエハ30の表面が破損し、また、半導体ウエハ30の全面が均一に熱処理されなくなる。 【0076】 以上に述べたように、ランプ式アニール装置36では高い昇温レートで半導体ウエハ30を加熱すると半導体ウエハ30が跳ねる問題がある。また、ランプ式アニール装置36では半導体ウエハ30の加熱中にオーバーシュートが発生するため、高い昇温レートで半導体ウエハ30を加熱すると、さらに大きなオーバーシュートが起こり、半導体ウエハ30の熱処理を精度良く行うことができない。」 3 引用文献3について 原査定において「周知文献」として示された刊行物である特開2007-188914号公報(以下、「引用文献3」という。)には、「半導体ウエハ急速加熱装置」(発明の名称)について、図1?図6とともに次の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 しかしながら、前記のようなフラッシュランプを用いた光加熱装置で半導体ウエハを急速加熱する場合、該フラッシュランプを点灯させるパルス電流のピーク値に対する半値全幅の時間であるパルス幅を短くするにつれて、該半導体ウエハが光照射により飛び跳ねるといった問題が発生した。この飛び跳ねる理由は、次のように考えられる。該半導体ウエハの光照射される面が光照射に伴って急激な熱膨張を発生する。この時、該半導体ウエハの光照射された面と、支持用台側の面との間での温度差によって生じる熱膨張の差によって、該半導体ウエハが瞬時に該フラッシュランプ側(以下、上方と称する)に凸状に変形を起こす。この変形は、非常に短時間で発生するため、該半導体ウエハの端面で該支持用台を叩き付ける様な力が発生し、結果として該半導体ウエハ自身が飛び跳ねることになると考えられる。また、該フラッシュランプから放射される光のエネルギーが50J/cm2以上であって、パルス点灯される一回のパルス幅が5msで照射した場合、該半導体ウエハが光照射によって割れるといった新たな問題も生じた。」 4 引用文献4について 原査定において「周知文献」として示された刊行物である特開2004-247339号公報(以下、「引用文献4」という。)には、「熱処理装置および熱処理用サセプタ」(発明の名称)について、図1?図5とともに次の事項が記載されている。 「【0040】 ここで、サセプタ73および加熱プレート74が上昇する過程において、支持ピン70に載置された半導体ウェハーWをサセプタ73が受け取ることとなる。 このときに、支持ピン70からサセプタ73に半導体ウェハーWが移された後数秒間はサセプタ73と半導体ウェハーWとの間に薄い空気層が挟み込まれ、その空気層によって半導体ウェハーWがサセプタ73から僅かに浮上した状態となる。このような状態においては、何らかの原因(例えば、微妙な傾斜)によって半導体ウェハーWが凹部97内を滑るように移動し、ウェハー端部が第1テーパ面95によって跳ね返されるという現象が数秒間繰り返される。 【0041】 その後、やがて上記空気層が抜けることによって、サセプタ73の凹部97内に半導体ウェハーWが安定して保持されることとなる。すなわち、僅かに浮上している半導体ウェハーWが第1テーパ面95によって位置決めされ、特別な位置決めピン等を設けなくても凹部97の最下位置つまり載置面99上に保持されることとなるのである。なお、載置面99の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きく、通常載置面99上にて半導体ウェハーWが偏心して位置決め・保持されるため、その周端部の一点が第1テーパ面95に接触した状態で安定して保持されることとなる。また、半導体ウェハーWが凹部97内を滑るように移動したときに、その移動速度によっては第1テーパ面95にウェハー端部が乗り上げるおそれもあるが、このような場合であっても第1テーパ面95の外側にそれより急勾配の第2テーパ面93があるため、半導体ウェハーWがサセプタ73から飛び出すことは防止される。」 5 引用文献5について 原査定において「周知文献」として示された刊行物である特開2004-179510号公報(以下、「引用文献5」という。)には、「熱処理装置および熱処理用サセプタ」(発明の名称)について、図1?図5とともに次の事項が記載されている。 「【0038】 ここで、サセプタ73および加熱プレート74が上昇する過程において、支持ピン70に載置された半導体ウェハーWをサセプタ73が受け取ることとなる。このときに、支持ピン70からサセプタ73に半導体ウェハーWが移された後数秒間はサセプタ73と半導体ウェハーWとの間に薄い空気層が挟み込まれ、その空気層によって半導体ウェハーWがサセプタ73から僅かに浮上した状態となる。このような状態においては、何らかの原因(例えば、微妙な傾斜)によって半導体ウェハーWが凹部97内を滑るように移動し、ウェハー端部がテーパ面95によって跳ね返されるという現象が数秒間繰り返される。その後、やがて上記空気層が抜けることによって、サセプタ73の凹部97内に半導体ウェハーWが安定して保持されることとなる。すなわち、僅かに浮上している半導体ウェハーWがテーパ面95によって位置決めされ、特別な位置決めピン等を設けなくても凹部97の最下位置つまり載置面99上に保持されることとなるのである。なお、載置面99の径は半導体ウェハーWの径よりも若干大きく、通常載置面99上にて半導体ウェハーWが偏心して位置決め・保持されるため、その周端部の一点がテーパ面95に接触した状態で安定して保持されることとなる。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の「φ300mmの円板形状の半導体ウェハーW」及び「閃光(フラッシュ光)」は、それぞれ、本願発明1の「円板形状の基板」及び「フラッシュ光」に相当する。 したがって、引用発明の「φ300mmの円板形状の半導体ウェハーWに閃光(フラッシュ光)を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置」は、以下の相違点を除き、本願発明1の「円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置」に相当する。 イ 引用発明の「略円筒形状の内壁によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される上部チャンバー61と、複数のハロゲンランプHLを内蔵する下部チャンバー62とによって構成され、前記半導体ウェハーWを収容するチャンバー6」は、本願発明1の「基板を収容するチャンバー」に相応する。 ウ 引用発明の「チャンバー6」を構成する「前記上部チャンバー61」の「内部において前記半導体ウェハーWを保持する保持部7」は、本願発明1の「前記チャンバー内にて基板を載置して保持するサセプター」に相当する。 エ 引用発明の「前記半導体ウェハーWを保持する保持部7」を「内部」に備える「上部チャンバー61」によって規定される「前記熱処理空間65」に「閃光を照射する複数のフラッシュランプFL」は、本願発明1の「前記サセプターに保持された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプ」に相当する。 オ 引用発明の「前記保持部7」を「構成」している「前記半導体ウェハーWが水平姿勢にて載置される保持プレート74」は、本願発明1の「サセプター」が備える「基板を載置する載置面を有するプレート」に相当する。 カ 引用発明の「前記保持プレート74の上面に、当該保持プレート74の外周円と同心円の周上に沿って立設され、前記半導体ウェハーWを前記保持プレート74の上面から0.5mm以上3mm以下の間隔を隔てて支持する支持ピンである複数個のバンプ75」は、本願発明1の「サセプター」が備える「前記ガイドリングよりも内側の前記プレート上に立設され、基板を点接触にて支持する複数の支持ピン」に相当する。 キ 引用発明の「前記保持プレート74の上面に設けられ、前記半導体ウェハーWの径よりも若干大きい径を有し」ている「円環状部材」は、本願発明1の「サセプター」が備える「前記プレート上に設置され、基板の径よりも大きな内径を有する円環形状のガイドリング」に相当する。 そして、引用発明において、前記「円環状部材」に「上側に向けて拡がるように水平面と所定の角度をなすテーパ面が形成されて」いることは、本願発明1において、「前記ガイドリングの内周は、前記プレートから上方に向けて広くなるようなテーパ面とされ」ていることに相当する。 ク 以上から、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「円板形状の基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、 基板を収容するチャンバーと、 前記チャンバー内にて基板を載置して保持するサセプターと、 前記サセプターに保持された基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、 を備え、 前記サセプターは、 基板を載置する載置面を有するプレートと、 前記プレート上に設置され、基板の径よりも大きな内径を有する円環形状のガイドリングと、 前記ガイドリングよりも内側の前記プレート上に立設され、基板を点接触にて支持する複数の支持ピンと、 を備え、 前記ガイドリングの内周は、前記プレートから上方に向けて広くなるようなテーパ面とされていることを特徴とする熱処理装置。」 (相違点) (相違点1)本願発明1は「前記ガイドリングの内径は基板の径よりも10mm以上40mm以下大きく」されているという構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 (相違点2)本願発明1は「前記プレートの前記載置面に対する前記テーパ面の勾配は30°以上70°以下であり」という構成を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。 (相違点3)本願発明1は「前記テーパ面は前記フラッシュ光の照射によって前記複数の支持ピンから跳躍して浮上した前記基板が落下してきたときに当該基板の外周端を受ける」という構成を備えるのに対し、引用発明の「円環状部材」は「前記半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれを防止する」点。 (2)相違点についての判断 ア 事案に鑑みて、相違点1及び相違点2について検討する。 イ 上記相違点1に係る「前記ガイドリングの内径は基板の径よりも10mm以上40mm以下大きく」されているという構成と、上記相違点2に係る「前記プレートの前記載置面に対する前記テーパ面の勾配は30°以上70°以下であり」という構成とを、本願発明1にように併せ持つことは、引用文献1と同様に、引用文献2ないし引用文献5には記載も示唆もされていない。 そして、熱処理装置の技術分野において、上記の「前記ガイドリングの内径は基板の径よりも10mm以上40mm以下大きく」されているという構成と「前記プレートの前記載置面に対する前記テーパ面の勾配は30°以上70°以下であり」という構成とを併せ持つことが、本願の出願日前に周知技術であるともいえない。 ウ これに対して、本願明細書には、 (ア)「サセプター74から跳躍して浮上した半導体ウェハーWは、その直後にサセプター74に向けて落下してくる。このときに、薄板状の半導体ウェハーWは鉛直方向に沿って上方に跳躍し、そのまま鉛直方向下方に落下するとは限らず、むしろ水平方向の位置がずれて落下してくることが多い。その結果、図11に示すように、半導体ウェハーWの外周端がガイドリング76のテーパ面76aに衝突することとなる。」ことが、段落【0066】に記載され、 (イ)このとき、「保持プレート75の載置面75aに対するテーパ面76aの勾配αが70°よりも大きいと、跳躍した半導体ウェハーWが落下して衝突したときの衝撃緩和効果が得られにくい。一方、載置面75aに対するテーパ面76aの勾配αが30°よりも小さいと、半導体ウェハーWが落下して衝突したときの位置修正効果が得られにくく、逆に水平方向の位置ずれがさらに大きくなるおそれもある。このため、保持プレート75の載置面75aに対するガイドリング76のテーパ面76aの勾配αは30°以上70°以下としている。」ことが、段落【0074】に記載され、 (ウ)また、「ガイドリング76の内径」が「半導体ウェハーWの直径」よりも「10mm未満であると、フラッシュ光照射時に跳躍した半導体ウェハーWがガイドリング76よりも外側に落下するおそれがある。一方、ガイドリング76の内径が半導体ウェハーWの直径よりも40mmを超えて大きいと、半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれ防止というガイドリング76の本来の機能を喪失するのみならず、上述の位置修正効果も得られ難くなる。このため、ガイドリング76の内径は、半導体ウェハーWの直径よりも10mm以上40mm以下大きいものとしている。」ことが、段落【0076】に記載されている。 エ すなわち、本願発明1は、相違点1に係る構成と相違点2に係る構成を併せ持つことで、「跳躍した半導体ウェハーWが落下して衝突したときの衝撃緩和効果」を得るとともに「フラッシュ光照射時に跳躍した半導体ウェハーWがガイドリング76よりも外側に落下するおそれ」を減らし、加えて、「半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれ」を「防止」するとともに「半導体ウェハーWが落下して衝突したときの位置修正効果」を得るという格別の効果を奏することが、本願明細書には記載されている。 オ したがって、相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明と引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2及び本願発明3について 本願発明2及び本願発明3は、本願発明1の記載を引用する発明であり、本願発明1をさらに限定した発明である。 したがって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2ないし本願発明3は、当業者であっても、引用発明と引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定についての判断 平成29年8月29日に提出された手続補正書により補正された請求項1は、上記相違点1及び2に係る構成を備えるものとなっており、上記のとおり、本願発明1及び3は、引用発明と引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 したがって、もはや原査定を維持することはできない。 第7 当審拒絶理由について 当審では、平成29年7月3日付けの当審よりの拒絶理由通知で、請求項1に係る『「熱処理装置」は,「前記プレートの前記載置面に対する前記テーパ面の勾配」が30°未満,ないしは,70°を超えるものを包含するといえるが,このような「熱処理装置」においては,「フラッシュ光照射時における基板の割れを防止する」という本願発明の課題は解決されないといえる。』から、『請求項1の記載には,発明の詳細な説明に記載された,発明の課題を解決するための手段が反映されておらず,あるいは,請求項1の記載は,発明の詳細な説明において効果があることが示された範囲を超えている。』との拒絶の理由を通知した。 これに対して、平成29年8月29日に提出された手続補正書により、請求項1に「前記プレートの前記載置面に対する前記テーパ面の勾配は30°以上70°以下であり」という構成が追加された。 したがって、前記の当審拒絶理由は解消した。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-10-02 |
出願番号 | 特願2012-272002(P2012-272002) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 右田 勝則 |
特許庁審判長 |
深沢 正志 |
特許庁審判官 |
鈴木 匡明 加藤 浩一 |
発明の名称 | 熱処理装置 |
代理人 | 有田 貴弘 |
代理人 | 吉竹 英俊 |