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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1332931
審判番号 不服2017-7160  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-18 
確定日 2017-10-17 
事件の表示 特願2015- 85606「エピタキシャルウェーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日出願公開、特開2016-204187、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成27年4月20日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 3月 4日 上申書・手続補正書
平成29年 1月20日 出願審査請求
平成29年 1月24日 手続補正書
平成29年 2月 6日 拒絶理由通知
平成29年 4月 3日 意見書・手続補正書
平成29年 4月19日 拒絶査定
平成29年 5月18日 審判請求・手続補正書
平成29年 7月 5日 拒絶理由通知(当審)
平成29年 8月22日 意見書・手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成29年8月22日付け手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載される事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程と、
前記両面研磨装置を用い、前記第1の砥粒より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程と、
前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程と
を有し、
前記1次研磨と前記2次研磨を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いてスラリーを変更して引き続いて行い、更に引き続いて洗浄後にエピタキシャル成長を行い、
前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径74nm?100nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い、
前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径20nm?40nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記2次研磨を行う工程において、前記2次研磨の取り代を1μm以下とすることを特徴とする請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記研磨布をショアA硬度85?95の発泡ポリウレタンからなる研磨布とし、前記キャリアを表面のビッカース硬さが300以上のキャリアとすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。」

第3 原査定の理由の概要
原査定の理由は、「この出願については、平成29年 2月 6日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。」というものであり、平成29年2月6日付け拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献等 1-2
・備考
引用文献1には、エピタキシャルウェーハの製造方法において,半導体ウェーハを収容するキャリアと,キャリアを挟み研磨布を貼設された上定盤および下定盤を備えた両面研磨装置を用いて,被研磨面に平均粒径30?100nmの遊離砥粒を含む研磨スラリーを供給しながらシリコンウェーハの両面を平坦に鏡面研磨し(本願請求項1における『1次研磨を行う工程』に相当),その後,エピタキシャル膜を形成する工程の前に,アルカリ性水溶液に遊離砥粒の平均砥粒を10?50nmとした研磨スラリーを供給しながら仕上げ研磨を行う(本願請求項1における『2次研磨を行う工程』)こと,および,仕上げ研磨は両面研磨でもよいことが記載されている(特に段落[0001],[0023]-[0024],[0027]-[0028]を参照されたい。)。
そして,引用文献2(特に段落[0007]を参照されたい。)に記載されているように,同一の両面研磨装置を用いて砥粒のサイズを変更することにより粗研磨から仕上げ研磨までの研磨工程を行う技術が開示されている。
引用文献1に記載された構成において,引用文献2に記載された技術を適用して,本願請求項1に係る発明とすることは,当業者であれば容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

・請求項 2
・引用文献等 1-2
・備考
引用文献1に記載された平均粒径の範囲は請求項2に記載された平均粒径の範囲を含むものである。研磨スラリーの平均粒径をどのくらいとするかは,当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項であるから,請求項2に記載された平均砥粒の範囲とすることは当業者であれば容易に想到し得たものである。

・請求項 3
・引用文献等 1-3
・備考
引用文献3(段落[0032],[0036],[0038])には素材ウェーハの片面仕上げ研磨量が50nm?0.5μmとするのが好ましいことが記載されており,文献1に記載された両面研磨の仕上げ研磨量に適用すると1μm以下となり,請求項3に記載された範囲と同じとなる。

・請求項 4
・引用文献等 1-5
・備考
引用文献4(段落[0035],[0052])には,研磨パッドとして発泡ポリウレタンを用いること,および,研磨パッドが80?95のショアA硬度を有することが開示されており,研磨パッドとしてどのような素材を用いるか,どのくらいの硬さとするかは,当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項と認められる。
また,引用文献5(段落[0023]-[0024])には,キャリアの耐摩耗性を重視し骨材としてビッカース硬さで1000以上とすることが開示されており,キャリアの硬さをどのくらいとするかは,当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項と認められる。
したがって,請求項4に係る発明は,文献1-5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。

・請求項 5
・引用文献等 1-6
・備考
微小欠陥(LPD)の個数を面品質の基準として示すことは引用文献6の段落[0042]に記載されているように当業者にとって周知技術であり,研磨後の面品質をどのくらいとするかは当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項である。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-109310号公報
2.特開2010-021487号公報
3.特開2010-040643号公報
4.特開2013-025844号公報
5.特開2004-195571号公報
6.国際公開第2013/073025号(周知技術を示す文献)」
また、拒絶査定の概要は、次のとおりである。
「●理由1(特許法第29条第2項)について
・請求項 1
・引用文献等 1-2
出願人が、意見書において主張している以下の各点についてそれぞれ検討する。
(1)『引用文献1は、ロールオフ加工(半導体ウェーハの片面の外周部の研磨加工)を必須要件とする発明です。引用文献1の請求項1、4、5、7、図1等には、粗研磨、ロールオフ加工、仕上げ研磨、エピタキシャル成長という順番で各工程を実施する旨が記載されております。従って、引用文献1には、粗研磨と仕上げ研磨を引き続いて行うことは不可能です。』と主張する点について。
引用文献1では,ロールオフ加工について記載されているものの,これは,エピタキシャル膜を形成する反応ガスが裏面に回り込むことによって半導体ウェーハ裏面の外周部にエピタキシャル膜が付着することを考慮し,予め半導体ウェーハの外周部を研磨加工するものであり,エピタキシャル成長させる面について述べているものではない。このことから,エピタキシャル膜を形成する反応ガスが裏面に回り込むことによって半導体ウェーハ裏面の外周部にエピタキシャル膜が付着することを考慮しない場合は,ロールオフ加工は必要無いことは当業者にとって明らかであり,粗研磨、仕上げ研磨、エピタキシャル成長という順番で各工程を実施する技術が開示されているものと認められる。
なお,引用文献1の段落[0027]には、『仕上げ研磨処理は、使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施するようにしてもよい。』と記載されており,研磨布を変えずに研磨スラリー組成を変えて複数段に分けて実施する技術が開示されているものと認められる。
(2)『引用文献1の段落[0024]、[0027]には、粗研磨を両面研磨装置で行い、仕上げ研磨として片面研磨又は両面研磨を行う旨、並びに、別々の研磨布(別々の研磨装置)を用いて粗研磨、仕上げ研磨を行う旨が記載されております。従って、引用文献1には、同一の両面研磨装置を用いて粗研磨と仕上げ研磨を行うことは不可能です。』と主張する点について。
引用文献1の段落[0024],[0027]には、別々の研磨布(別々の研磨装置)を用いて粗研磨、仕上げ研磨を行う明確な記載は無く,引用文献1に記載された構成で,同一の両面研磨装置を用いて粗研磨と仕上げ研磨を行うことは不可能とはいえない。また,本願請求項1に係る発明では,同じ研磨布を用いて粗研磨、仕上げ研磨を行う構成は記載されていない。そして,先の拒絶理由通知で『引用文献2(特に段落[0007]を参照されたい。)に記載されているように,同一の両面研磨装置を用いて砥粒のサイズを変更することにより粗研磨から仕上げ研磨までの研磨工程を行う技術が開示されている。』と示しており,当該技術を引用文献1に記載された構成に適用して本願請求項1に係る発明とすることは容易になしえたものである。
(3)『引用文献2には『エピタキシャル成長』については記載も示唆もされておりません。従って、そもそもエピタキシャル成長について触れられていない引用文献2を、エピタキシャル成長に関する引用文献1と組み合わせる動機がありません。』と主張する点について。
引用文献2には,粗研磨および仕上げ研磨の両面研磨の技術について開示されており,引用文献1に記載された両面研磨の粗研磨および仕上げ研磨を優れた平坦度とするために引用文献2に記載された両面研磨の技術を適用することに何ら阻害要因は認められない。
(なお,引用文献1の段落[0027]には、『仕上げ研磨処理は、使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施するようにしてもよい。』と記載されており,研磨布を変えずに研磨スラリー組成を変えて複数段に分けて実施する技術が開示されているものと認められる。)
(4)『引用文献1、2には本発明の『2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程』も明確には記載されておりません。むしろ引用文献1の段落[0027]には、第1エピタキシャル膜を形成する工程の前に、仕上げ研磨として、遊離砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いた片面研磨(片面CMP研磨)を行っても良い旨が記載されております。』と主張する点について。
引用文献1には,2次研磨を行った後にシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことは記載されていない。引用文献1の段落[0027]には、仕上げ研磨として片面研磨を行うことが開示されているものであり,仕上げ研磨の両面研磨後に片面研磨を行うことが開示されているものではない。
以上のように,出願人の主張する点は採用できず,請求項1に係る発明は、引用文献1-2に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 2
・引用文献等 1-2
引用文献1に記載された平均粒径の範囲は請求項2に記載された平均粒径の範囲を含むものである。研磨スラリーの平均粒径をどのくらいとするかは,当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項であるから,請求項2に記載された平均砥粒の範囲とすることは当業者であれば容易に想到し得たものである。

・請求項 3
・引用文献等 1-3
引用文献3(段落[0032],[0036],[0038])には素材ウェーハの片面仕上げ研磨量が50nm?0.5μmとするのが好ましいことが記載されており,文献1に記載された両面研磨の仕上げ研磨量に適用すると1μm以下となり,請求項3に記載された範囲と同じとなる。

・請求項 4
・引用文献等 1-5
引用文献4(段落[0035],[0052])には,研磨パッドとして発泡ポリウレタンを用いること,および,研磨パッドが80?95のショアA硬度を有することが開示されており,研磨パッドとしてどのような素材を用いるか,どのくらいの硬さとするかは,当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項と認められる。
また,引用文献5(段落[0023]-[0024])には,キャリアの耐摩耗性を重視し骨材としてビッカース硬さで1000以上とすることが開示されており,キャリアの硬さをどのくらいとするかは,当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項と認められる。
したがって,請求項4に係る発明は,文献1-5に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。

・請求項 5
・引用文献等 1-6
微小欠陥(LPD)の個数を面品質の基準として示すことは引用文献6の段落[0042]に記載されているように当業者にとって周知技術であり,研磨後の面品質をどのくらいとするかは当業者が実施に当たり適宜設定する設計事項である。」

第4 当審拒絶理由の概要
平成29年7月5日付けで当審より通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)

(当審注.以下では、本願の請求項1ないし5に係る発明を、それぞれ、『本願発明1』ないし『本願発明5』という。)

1.理由1(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その1)
引用文献1の段落[0027]等には、『仕上げ研磨』の工程において半導体ウェーハの両面を研磨してもよいこと、及び、『仕上げ研磨』の工程を研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施するようにしてもよいことが記載されており、当該複数段に分けられた『仕上げ研磨』の工程のうち、前段のものが、本願発明1における『第1研磨を行う工程』に対応し、後段のものが、本願発明1における『第2研磨を行う工程』に対応する。
また、引用文献1の段落[0028]等には、『仕上げ研磨』の工程のあと、片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させることが記載されており、本願発明1における『前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程』に対応する。
本願発明1と引用文献1に記載された発明とを比較すると、下記の点において相違する。
・相違点1 本願発明1では、『第1研磨を行う工程』と『第2研磨を行う工程』において、同一の『研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置』を用いるのに対し、引用文献1に記載された発明では、複数段に分けられた『仕上げ研磨』の工程において、同一の『研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置』を用いるとは特定しない点。
・相違点2 本願発明1では、『第1研磨を行う工程』と『第2研磨を行う工程』において、同じ研磨布を用いるのに対し、引用文献1に記載された発明では、複数段に分けられた『仕上げ研磨』の工程において、同じ研磨布を用いるとは特定しない点。
・相違点3 本願発明1では、『第2研磨を行う工程』において、第1研磨を行う工程において供給されたスラリーに含まれる砥粒(第1の砥粒)より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリーを供給するのに対し、引用文献1に記載された発明では、複数段に分けられた『仕上げ研磨』のうち、後段の工程において、前段の工程において供給されたスラリーに含まれる砥粒より平均粒径の小さい砥粒を含むスラリーを供給するとは特定しない点。
上記相違点1について検討する。『研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置』は、引用文献1の段落[0024]、引用文献2の[0018]等に記載されているように周知であり、引用文献1に記載された発明の『仕上げ研磨』の工程において上記周知の両面研磨装置を用いることは、当業者であれば適宜なし得たことである。また、引用文献1に記載された発明における、複数段に分けられた『仕上げ研磨』の工程において、同一の研磨装置が用いられることは明らかである。
次に、相違点2及び3について検討する。引用文献1の段落[0027]には、『また、仕上げ研磨処理は、使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施するようにしてもよい。』と記載されており、研磨布と研磨スラリー組成のうちいずれか一方のみを変更してもよいことは明らかであるから、複数段に分けられた『仕上げ研磨』において同じ研磨布を用い、研磨スラリー組成のみを変更することは、当業者であれば容易になし得たことである。また、その際に、後段の『仕上げ研磨』において前段よりも粒径の小さい砥粒を含むスラリーを用いることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その2)
引用文献1の段落[0024]ないし[0028]等には、『粗研磨』、『ロールオフ加工』、『仕上げ研磨』、『エピタキシャル成長』という順番で各工程を行うことが記載されている。
また、引用文献1の段落[0038]等には、先に『仕上げ研磨』を行い、その後に『ロールオフ加工』を行ってもよい旨が記載されている。
以上より、引用文献1には、『粗研磨』、『仕上げ研磨』、『ロールオフ加工』、『エピタキシャル成長』という順番で各工程を行うことが記載されていると認められ、上記『粗研磨』及び『仕上げ研磨』の工程はそれぞれ、本願発明1の『第1研磨を行う工程』及び『第2研磨を行う工程』に対応する。
また、引用文献2の段落[0024]及び[0027]等には、『粗研磨』の工程において用いる研磨スラリーに含まれる砥粒の粒径よりも『仕上げ研磨』の工程において用いる研磨スラリーに含まれる砥粒の粒径の方が小さいこと、及び、『粗研磨』と『仕上げ研磨』の工程においてウェーハの両面を研磨することが記載されている。
さらに、引用文献1の段落[0028]等には、『仕上げ研磨』の工程のあと、片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させることが記載されており、本願発明1における『前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程』に対応する。
本願発明1と引用文献1に記載された発明とを比較すると、下記の点において相違する。
・相違点1 本願発明1では、『第1研磨を行う工程』と『第2研磨を行う工程』において、同一の『研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置』を用いるのに対し、引用文献1に記載された発明では、『粗研磨』の工程と『仕上げ研磨』の工程において、同一の『研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置』を用いるとは特定しない点。
・相違点2 本願発明1では、『第1研磨を行う工程』と『第2研磨を行う工程』において同じ研磨布を用いるのに対し、引用文献1に記載された発明では、『粗研磨』の工程と『仕上げ研磨』の工程において同じ研磨布を用いるとは特定しない点。
相違点1及び2についてまとめて検討する。引用文献1に記載された発明において、『粗研磨』の工程と『仕上げ研磨』の工程を続けて行う際に、同一の『研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置』を用いること、及び、同じ研磨布を用いることは、引用文献2(要約及び段落[0018]ないし[0026]等)の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 引用文献2を主引例とする拒絶の理由
引用文献2の段落[0018]等には、本願発明1の『研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置』に相当する構成が記載されている。
引用文献2の段落[0021]、[0023]、[0024]等に記載される『粗研磨』の工程は、本願発明1の『1次研磨を行う工程』に相当する。
引用文献2の段落[0021]、[0025]、[0026]等に記載される『仕上げ研磨』の工程は、本願発明1の『2次研磨を行う工程』に相当する。
本願発明1と引用文献2に記載された発明とを比較すると、本願発明1は、『前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程』を有するのに対し、引用文献2に記載された発明は当該工程を有しない点において相違する。
上記の相違について検討する。引用文献1の段落[0024]ないし[0028]等には、『粗研磨』と『仕上げ研磨』を行ったあと、片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させることが記載されている。引用文献2に記載された発明に対して引用文献1に記載された発明を適用し、上記相違に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
したがって、本願発明1は、引用文献2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)本願発明2について
ア 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その1)
引用文献1の段落[0027]には、『仕上げ研磨』において、平均粒径が10?50nmのコロイダルシリカ(砥粒)を含むアルカリ性水溶液を用いることが記載されており、『仕上げ研磨』の工程を複数段に分けて実施する際に、10?50nmの範囲内で粒径を徐々に小さくすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、本願発明2の数値限定には臨界的意義が認められないから、粒径の範囲を50nm?100nm又は20nm?40nmとすることも、当業者であれば適宜なし得たことである。
その他の点については、上記(1)アと同様である。
したがって、本願発明2は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その2)
引用文献1の段落[0024]には、『粗研磨』の工程において、平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給することが記載されている。
また、引用文献1の段落[0027]には、『仕上げ研磨』の工程において、平均粒径が10?50nmのコロイダルシリカ(砥粒)を含むアルカリ性水溶液を用いることが記載されている。
『粗研磨』の工程において用いるスラリーを『アルカリ性水溶液』とすることは、引用文献2の段落[0027]等の記載に基づいて当業者が容易になし得たことである。
また、本願発明2の数値限定には臨界的意義が認められないから、粒径の範囲を50nm?100nm又は20nm?40nmとすることも、当業者であれば適宜なし得たことである。
その他の点については、上記(1)イと同様である。
したがって、本願発明2は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 引用文献2を主引例とする拒絶の理由
引用文献1の段落[0024]には、『粗研磨』において、平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給することが記載されている。
また、引用文献1の段落[0027]には、『仕上げ研磨』において、平均粒径が10?50nmのコロイダルシリカ(砥粒)を含むアルカリ性水溶液を用いることが記載されている。
引用文献2に記載された発明に対して引用文献1に記載された発明を適用することにより、『粗研磨』及び『仕上げ研磨』の工程において用いるスラリーに含まれる砥粒の平均粒径を上記数値範囲のものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
また、本願発明2の数値限定には臨界的意義が認められないから、粒径の範囲を50nm?100nm又は20nm?40nmとすることも、当業者であれば適宜なし得たことである。
その他の点については、上記(1)ウと同様である。
したがって、本願発明2は、引用文献2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)本願発明3について
ア 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その1)
引用文献1に記載された発明における、複数段に分けられた『仕上げ研磨』の工程のうち、後段の工程における取り代を1μm以下とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
その他の点については、上記(1)ア及び(2)アと同様である。
したがって、本願発明3は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その2)
引用文献1に記載された発明における『仕上げ研磨』の工程における取り代を1μm以下とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
その他の点については、上記(1)イ及び(2)イと同様である。
したがって、本願発明3は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 引用文献2を主引例とする拒絶の理由
引用文献2に記載された発明における『仕上げ研磨』の工程における取り代を1μm以下とすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
その他の点については、上記(1)ウ及び(2)ウと同様である。
したがって、本願発明3は、引用文献2及び1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)本願発明4について
ア 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その1)
引用文献4の段落[0035]、[0052]等には、研磨パッドとして発泡ポリウレタンを用いること、及び研磨パッドが80?95のショアA硬度を有することが記載されており、引用文献1に記載された発明の『仕上げ研磨』の工程において、ショアA硬度80?95の発泡ポリウレタンからなる研磨布を用いることは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願発明4の数値限定には臨界的意義が認められないから、発泡ウレタンのショアA硬度を85?95の範囲とすることも、当業者であれば適宜なし得たことである。
また、引用文献5の段落[0023]及び[0024]等には、キャリアのビッカース硬さを1000以上とすることが記載されており、引用文献1に記載された発明において、研磨装置のキャリアの表面のビッカース硬さを1000以上とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願発明4の数値限定には臨界的意義が認められないから、キャリアの表面のビッカース硬さを300以上とすることも、当業者であれば容易になし得たことである。
その他の点については、上記(1)ア、(2)ア及び(3)アと同様である。
したがって、本願発明4は、引用文献1、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その2)
引用文献4の段落[0035]、[0052]等には、研磨パッドとして発泡ポリウレタンを用いること、及び研磨パッドが80?95のショアA硬度を有することが記載されており、引用文献1に記載された発明に対して引用文献2に記載された発明を適用する際に、ショアA硬度80?95の発泡ポリウレタンからなる研磨布を用いることは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願発明4の数値限定には臨界的意義が認められないから、発泡ウレタンのショアA硬度を85?95の範囲とすることも、当業者であれば適宜なし得たことである。
また、引用文献5の段落[0023]及び[0024]等には、キャリアのビッカース硬さを1000以上とすることが記載されており、引用文献1に記載された発明に対して引用文献2に記載された発明を適用する際に、研磨装置のキャリアの表面のビッカース硬さを1000以上とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願発明4の数値限定には臨界的意義が認められないから、キャリアの表面のビッカース硬さを300以上とすることも、当業者であれば容易になし得たことである。
その他の点については、上記(1)イ、(2)イ及び(3)イと同様である。
したがって、本願発明4は、引用文献1、2、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 引用文献2を主引例とする拒絶の理由
引用文献4の段落[0035]、[0052]等には、研磨パッドとして発泡ポリウレタンを用いること、及び研磨パッドが80?95のショアA硬度を有することが記載されており、引用文献2に記載された発明に対して引用文献1に記載された発明を適用する際に、ショアA硬度80?95の発泡ポリウレタンからなる研磨布を用いることは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願発明4の数値限定には臨界的意義が認められないから、発泡ウレタンのショアA硬度を85?95の範囲とすることも、当業者であれば適宜なし得たことである。
また、引用文献5の段落[0023]及び[0024]等には、キャリアのビッカース硬さを1000以上とすることが記載されており、引用文献2に記載された発明に対して引用文献1に記載された発明を適用する際に、研磨装置のキャリアの表面のビッカース硬さを1000以上とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
そして、本願発明4の数値限定には臨界的意義が認められないから、キャリアの表面のビッカース硬さを300以上とすることも、当業者であれば容易になし得たことである。
その他の点については、上記(1)ウ、(2)ウ及び(3)ウと同様である。
したがって、本願発明4は、引用文献2に記載された発明と、引用文献1、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(5)本願発明5について
ア 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その1)
研磨後の面品質をどの程度とするのかは、当業者が発明の実施に際して適宜決定し得た事項である。
その他の点については、上記(1)ア、(2)ア、(3)ア及び(4)アと同様である。
したがって、本願発明5は、引用文献1、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
イ 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その2)
研磨後の面品質をどの程度とするのかは、当業者が発明の実施に際して適宜決定し得た事項である。
その他の点については、上記(1)イ、(2)イ、(3)イ及び(4)イと同様である。
したがって、本願発明5は、引用文献1、2、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ウ 引用文献2を主引例とする拒絶の理由
研磨後の面品質をどの程度とするのかは、当業者が発明の実施に際して適宜決定し得た事項である。
その他の点については、上記(1)ウ、(2)ウ、(3)ウ及び(4)ウと同様である。
したがって、本願発明5は、引用文献2に記載された発明と、引用文献1、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

2.理由2(明確性)について
本願の請求項5に『前記2次研磨後のシリコンウェーハの面品質を、100nm以下のLPDの個数が測定可能な面品質とする』と記載されている。
ここで、『100nm以下のLPDの個数が測定可能』か否かは、シリコンウェーハの面品質だけでなく、測定方法や測定装置にも依存するものと認められるところ、請求項5においては測定方法や測定装置が特定されていないから、上記記載に含まれる技術事項の範囲を明確に特定することができない。
よって、本願の請求項5に係る発明は明確でない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-109310号公報
2.特開2010-021487号公報
4.特開2013-025844号公報
5.特開2004-195571号公報」

第5 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1の記載事項及び引用発明1-1ないし1-3
(1)引用文献1の記載事項
原査定の理由及び当審拒絶理由において引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2012-109310号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(当審注.下線は参考のために当審において付したものである。以下において同じ。)
ア「【0001】
本発明は、エピタキシャルウェーハの製造方法およびエピタキシャルウェーハに関し、特に、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルウェーハの表裏面などを研磨することなく、高い裏面の平坦度を得ることが可能なエピタキシャルウェーハの製造方法およびこれにより得られるエピタキシャルウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
エピタキシャルウェーハは、例えばシリコン基板上に、厚さ数μmの単結晶シリコン層(エピタキシャル膜)を、主として気相成長させることによって形成させた高品質ウェーハである。エピタキシャルシリコンウェーハは、デバイスメーカーの要請等に応じて、高濃度のボロン(B)やリン(P)といったドーパントを添加したウェーハを製造できる点で有効である。
【0003】
従来の一般的なエピタキシャルウェーハの製造方法を、図8を用いて説明する。図8(a)は、端部に面取り部41が形成された半導体ウェーハ40の端部付近を示す。この半導体ウェーハ40の表面42a上に、エピタキシャル膜50を形成させ(図8(b))、エピタキシャルウェーハ200とする。近年のエピタキシャル成長技術により、半導体ウェーハ40の表面42aに関しては、その全面に厚みが均一なエピタキシャル膜50を形成することが可能になってきた。
【0004】
ところが、半導体ウェーハ40の裏面42bに関しては、エピタキシャル成長を行う際、エピタキシャル膜を形成するために用いられる反応ガスが、裏面42bに回り込むことによって、半導体ウェーハ裏面42bの外周部44にもエピタキシャル膜60が付着してしまう。このため、エピタキシャル膜50自体の厚みは均一であっても、半導体ウェーハ40までも含めたエピタキシャルウェーハ200のウェーハ径方向の厚み分布は、外周部44に付着したエピタキシャル膜60の厚みが加算された厚み分布となり、その結果、エピタキシャルウェーハ全体の平坦度が悪化するという問題があった。特に、形成するエピタキシャル膜50の厚みが増加するほど、裏面42bの外周部44に付着するエピタキシャル膜60の厚みも増大するため、より平坦度が悪化する。なお、本明細書においては、上記の通り、半導体ウェーハのうち、主のエピタキシャル膜を成長させる面を半導体ウェーハの『表面』、その反対側の面を半導体ウェーハの『裏面』という。
【0005】
近年の半導体デバイスの高集積化に伴うデザイン・ルールの縮小に伴い、かかるエピタキシャルシリコンウェーハに要求される平坦度もますます厳しくなっている。また、1枚のウェーハから極力多くのデバイスを得ることが望まれ、ウェーハの大口径化と共に、ウェーハの全面、特にエッジ部(ウェーハ端部)まで平坦な形状が要求されるようになってきている。ウェーハ面のフラットネス(平坦度)の測定除外範囲(Edge Exclusion)は、従来、ウェーハエッジから3mmであったものが、現状では、2mmへと進んでおり、さらには1mmまでの縮小化も要求されつつある。
【0006】
このような状況下、エピタキシャルウェーハの平坦度を向上させるべく、特許文献1には、エピタキシャル膜の形成後のエピタキシャルウェーハの表面または両面を鏡面研磨する製造方法が記載されている。また、特許文献2,3にも、エピタキシャル膜の形成後に、エピタキシャル膜表面を鏡面研磨する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-122023号公報
【特許文献2】特開2005-209862号公報
【特許文献3】特開2006-190703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、特許文献1?3に記載された発明は、エピタキシャルウェーハの表面または表裏面を機械的に研磨加工するものであるため、エピタキシャルウェーハの平坦度を向上させることができる。特に、特許文献1に記載されているように、エピタキシャル膜の形成後のエピタキシャルウェーハの両面を鏡面研磨すれば、図8(b)に示したエピタキシャル膜60を除去することができ、表面および裏面において高い平坦度を有するエピタキシャルウェーハを得ることができる。
【0009】
しかしながら、エピタキシャル膜表面は非常に活性であるため、エピタキシャル膜表面を研磨処理すると、エピタキシャル膜表面に加工起因の欠陥であるPID(Polishing Induced Defect)やスクラッチ等が発生するおそれがある。また、エピタキシャルウェーハを研磨する処理工程により、生産コストの上昇を招く。また、エピタキシャルウェーハの裏面を鏡面研磨するには、真空吸着部材などを用いてエピタキシャル膜表面を吸着保持してエピタキシャルウェーハ裏面側を研磨処理する必要がある。このため、エピタキシャル膜表面に傷や接触痕を発生させてしまい、エピタキシャル膜の品質低下を招くおそれがある。そのため、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルウェーハの両面、特に裏面を研磨せずとも、裏面において外周部まで含めて高い平坦度を実現する方法が望まれていた。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルエピタキシャルウェーハの表裏面を研磨することなく、高い裏面の平坦度を得ることが可能なエピタキシャルウェーハの製造方法およびこれにより得られるエピタキシャルウェーハを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、エピタキシャル膜形成後に、半導体ウェーハ裏面の外周部に付着したエピタキシャル膜を除去するのではなく、発想を正反対に転換して、エピタキシャル膜形成前に予め半導体ウェーハ裏面の外周部を意図的にロールオフさせておき、その後エピタキシャル膜を形成すれば、所期の目的を達成することができることに思い至り、本発明を完成するに至った。
・・・
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エピタキシャル膜形成前に予め半導体ウェーハ裏面の外周部を意図的にロールオフ加工して、その後エピタキシャル膜を形成したため、エピタキシャル膜形成後にウェーハの表裏面を研磨することなく、高い裏面の平坦度を有するエピタキシャルウェーハおよびその製造方法を提供することができた。」
イ「【0023】
(エピタキシャルウェーハの製造方法)
図1は、本発明に従う代表的なエピタキシャルウェーハの製造方法を説明する摸式断面図であり、ウェーハ端部付近のみを図示するものである。まず、半導体ウェーハ10を用意する(図1(a))。半導体ウェーハ10としては、例えば、シリコン単結晶インゴットを、ワイヤーソー等を用いてスライスし、ラッピングや研削などの平坦化加工処理を経たシリコンウェーハが挙げられる。この半導体ウェーハ10は、端部に面取り部11が形成され、両面12a,12bにこの面取り部11との境界であるエッジ13a,13bを有している。端部の面取りを行った後、半導体ウェーハ10に対して粗研磨を行うことができる。
【0024】
粗研磨は、半導体ウェーハの両面12a,12bの少なくとも一方、好ましくは両面に対して行うことができる。粗研磨は、ラッピングや研削処理により導入された加工歪層の除去や、表面形状(平坦度)を調整することを目的に実施する鏡面研磨処理である。例えば、半導体ウェーハを収容するキャリアと、該キャリアを挟みポリウレタンなどの硬質の研磨布を貼設された上定盤および下定盤を備えた両面研磨装置を用いて、被研磨面に平均粒径30?100nmの遊離砥粒(コロイダルシリカ、ダイヤモンド砥粒、アルミナ砥粒など)を含む研磨スラリーを供給しながらウェーハの両面を平坦に鏡面研磨する。粗研磨工程は、研磨布の種類や粗研磨液に含まれる遊離砥粒のサイズを変更し、シリコンウェーハの被研磨面の研磨量を、例えば2段階または3段階に分けて研磨してもよい。
【0025】
その後、面取り部11の鏡面研磨を行うことができる。なお、面取り部11の鏡面研磨は、粗研磨工程の前でもよい。エッチング工程を経たウェーハは、ウェーハを回転させるとともに研磨液を供給しながら、ウェーハ端部を研磨布に押し付けて鏡面に研磨する。研磨布の種類は限定されない。例えば、単層式の研磨布でもよいし、研磨布層の裏面にスポンジ層が形成された2層式の研磨布でもよい。単層式における研磨布および2層式における研磨布層としては、例えば、ウレタンフォームなどの合成樹脂発泡体からなる研磨布、ポリエステル繊維製の不織布にウレタン樹脂を含浸させた硬質なベロアタイプの研磨布、不織布の基布の上にウレタン樹脂を発泡させたスエードパッドなどを採用することができる。研磨布に供給される砥液(研磨剤)としては、例えばアルカリ溶液中に焼成シリカまたはコロイダルシリカなどの遊離砥粒を分散させたものを採用することができる。
【0026】
次に、半導体ウェーハ10の片面である裏面12bの外周部14をロールオフ加工して、この外周部14をロールオフ領域とする(図1(b))。裏面12bの外周部14は、図1(a)に示すように、裏面12b側のエッジ13b位置の内方所定位置Pからウェーハ外方に向かう領域である。ロールオフ領域とする外周部14の広さおよびロールオフ量については、後述する。なお、本明細書において『ロールオフ量』とは、図1(b)に示すように、ロールオフ後のウェーハ裏面12bのエッジ13cの位置と、ロールオフがなかった場合の平坦な裏面12bエッジ13bの位置(図1(a)参照)との厚さ方向の乖離の大きさtを意味する。
【0027】
その後、第1エピタキシャル膜20を形成する工程の前に、このロールオフ加工された半導体ウェーハ10の表面側の面粗さを改善することを目的に、仕上げ研磨を実施する。仕上げ研磨は、粗研磨のようなシリコンウェーハの平坦度を調整する研磨とは異なり、ウェーハ表面の微小なうねりやヘイズレベルの改善を目的として実施するものである。仕上げ研磨は、被研磨面に対して研磨スラリーを供給しながら、回転する軟質の研磨布に半導体ウェーハ10の被研磨面を押し当てることにより鏡面研磨処理を行うものである。例えば、枚葉式の研磨装置を使用しても、複数枚のシリコンウェーハを同時に研磨するバッチ式の研磨装置を使用してもよい。また、半導体ウェーハ表面12aのみに対する片面研磨でも、表面12aおよび裏面12bを同時に研磨する両面研磨でもよい。また、仕上げ研磨処理は、使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施するようにしてもよい。仕上げ研磨において、遊離砥粒を含むアルカリ性水溶液を仕上げ研磨液とすることができる。例えば、アルカリ性水溶液中に、コロイダルシリカ(砥粒)、ダイヤモンド砥粒、アルミナ砥粒などの遊離砥粒が混入されたものを採用することができる。これにより、シリコンウェーハの被研磨面は、主に遊離砥粒によるメカニカルな研削作用と、アルカリによるケミカル作用により研磨される。仕上げ研磨液用のアルカリ性水溶液に添加される遊離砥粒の平均粒径は、砥粒が凝集しない粒径範囲で選定すればよく、平均粒径が10?50nmのものを使用することが望ましい。仕上げ研磨用の研磨布としては、粗研磨用のポリウレタンなどの硬質の研磨布とは異なり、軟質の研磨布が適している。具体的には、ベロアタイプやスエードタイプのものを採用することができる。ベロアタイプの研磨布は、単層構造のいわゆる不織布であり、立体的な構造の多孔質シート状材料である。スエードタイプの研磨布は、いわば工業材料用の人工皮革で、合成繊維および特殊合成ゴムにより形成した立体構造の不織布からなる基体層と、耐摩耗性に優れたポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボ樹脂等の高分子樹脂に多数の微細なポア(孔)を形成した表面層とから構成したものである。
【0028】
そして、裏面12bとは反対の他面である表面12a上に、第1エピタキシャル膜20を形成する(図1(c))。エピタキシャル成長時には、シリコンウェーハをサセプタ内に、ウェーハ表裏面を水平にして横置きする。次に、シリコンウェーハの表面の自然酸化膜やパーティクルの除去を目的として、チャンバ内に水素ガスを供給し、1150℃の温度で60秒間の水素ベークを行う。その後、キャリアガス(H_(2)ガス)、ソースガス(4塩化けい素、モノシラン(SiH_(4))、トリクロロシラン(SiHCl_(3))、ジクロルシラン(SiH_(2)Cl_(2))など)、ドーパントガス(ジボラン(B_(2)H_(6))、フォスフィン(PH_(3))など)をチャンバ内に供給し、1000℃?1150℃で加熱したシリコンウェーハの表面に2?100μmのエピタキシャル膜を成長させる。
【0029】
このとき、第1エピタキシャル膜20を形成するために用いられる反応ガスが、半導体ウェーハ10の裏面12bに回り込むことによって、ロールオフ領域とした半導体ウェーハ裏面12bの外周部14に、第2エピタキシャル膜30が付着する。ここで従来は、図8(b)に示すように、裏面外周部44にエピタキシャル膜60が形成されると、エピタキシャルウェーハ200の裏面平坦度が悪化していた。しかし、本発明の製造方法では、第1エピタキシャル膜20の形成前に予め半導体ウェーハ裏面12bの外周部14のみを意図的にロールオフ加工して、その後第1エピタキシャル膜20を形成した。このため、第2エピタキシャル膜30がロールオフ領域である外周部14に付着することで、第1エピタキシャル膜20形成後にウェーハの裏面12bを研磨することなく、エピタキシャルウェーハ100の裏面に高い平坦度をもたらすことができる。このように、エピタキシャルウェーハ100の表面および裏面を研磨せずとも外周部まで均一な厚み分布を有する、すなわち、高い平坦度を有するエピタキシャルウェーハ100を得ることができる。」
ウ「【0037】
本発明では、すでに説明した工程順のとおり、半導体ウェーハ10の両面12a,12bの少なくとも一方、好ましくは両面に対して行う粗研磨工程の後に、ロールオフ加工である外周部14の研磨加工を行うことが好ましい。ロールオフ量が約50?500nm程度であるのに対し、粗研磨の削り量は5?30μm程度と非常に多いため、上記順序とすることにより、ロールオフ領域が粗研磨により除去されることがないからである。」
エ「【0038】
また、すでに説明した工程順のとおり、第1エピタキシャル膜20を形成する工程(図1(c))の前に、半導体ウェーハ10の少なくとも表面12a、あるいは表面12aおよび裏面12bに対して行う最終の仕上げ研磨工程の前に、ロールオフ加工である外周部14の研磨加工を行うことが好ましい。上記順序とすれば、ロールオフ加工する際に、研磨スラリーが最終仕上げ研磨されたウェーハ表面(エピタキシャル成長処理される側の面)に飛散して品質低下を招くおそれがないからである。ただし、スラリー飛散防止板を取り付けるなどの工夫を施して、半導体ウェーハ表面を最終仕上げ研磨した後、裏面外周部をロールオフ加工するようにしてもよい。」

(2)引用発明1-1ないし1-3
ア 引用発明1-1
上記(1)イの引用文献1の記載、引用文献1の【図1】の記載、及び当該技術分野における技術常識より、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。(当審注.「引用発明1-1」は、原査定の理由における主引用発明に対応するものである。)
「エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する粗研磨工程と、
前記粗研磨工程に続いて、前記シリコンウェーハの裏面の外周部をロールオフ加工するロールオフ加工工程と、
前記ロールオフ加工工程に続いて、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程と、
前記仕上げ研磨工程に続いて、前記シリコンウェーハの表面にエピタキシャル膜を形成する工程と
を有するエピタキシャルウェーハの製造方法。」
イ 引用発明1-2
上記(1)イの引用文献1の記載、引用文献1の【図1】の記載、及び当該技術分野における技術常識より、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。(当審注.「引用発明1-2」は、当審拒絶理由の「1.(1)ア 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その1)」における主引用発明に対応するものである。)
「エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する粗研磨工程と、
前記粗研磨工程に続いて、前記シリコンウェーハの裏面の外周部をロールオフ加工するロールオフ加工工程と、
前記ロールオフ加工工程に続いて、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程を、使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施する工程と、
前記仕上げ研磨工程に続いて、前記シリコンウェーハの表面にエピタキシャル膜を形成する工程と
を有するエピタキシャルウェーハの製造方法。」
ウ 引用発明1-3
上記(1)イ及びエの引用文献1の記載、引用文献1の【図1】の記載、及び当該技術分野における技術常識より、引用文献1には下記の発明(以下「引用発明1-3」という。)が記載されていると認められる。(当審注.「引用発明1-3」は、当審拒絶理由の「1.(1)イ 引用文献1を主引例とする拒絶の理由(その2)」における主引用発明に対応するものである。)
「エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する粗研磨工程と、
前記粗研磨工程に続いて、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程と、
前記仕上げ研磨工程に続いて、前記シリコンウェーハの裏面の外周部をロールオフ加工するロールオフ加工工程と、
前記ロールオフ加工工程に続いて、前記シリコンウェーハの表面にエピタキシャル膜を形成する工程と
を有するエピタキシャルウェーハの製造方法。」

2 引用文献2の記載事項及び引用発明2
(1)引用文献2の記載事項
原査定の理由及び当審拒絶理由において引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2010-021487号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、半導体ウェーハおよびその製造方法に関するものであり、詳しくは、素材ウェーハを両面鏡面研磨する半導体ウェーハの製造方法に関する。
・・・
【0006】
本発明は、上記の実情を鑑みなされたもので、素材ウェーハの両面を同時に、粗研磨から仕上げ研磨までの研磨工程を同一の研磨布で行うことにより、素材ウェーハの研磨量を低減して、優れた平坦度を有する両面鏡面半導体ウェーハおよびその製造方法を提供することを目的とする。
特に、本発明は、半導体ウェーハの直径が450mm以上の大口径シリコンウェーハである場合に、顕著な効果を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上記の目的を達成するため、研削を終了した素材ウェーハの両面を研磨して両面鏡面半導体ウェーハとするに際し、従来法に比べて素材ウェーハの研磨量を低減して、半導体ウェーハの平坦度を向上させることができる半導体ウェーハの製造方法について鋭意検討を行った。
その結果、研削工程を終了した素材ウェーハの両面を、砥粒を含まない研磨布に、含有する砥粒の平均粒径で種別する少なくとも2種類の研磨液を、大きなサイズの砥粒を含有する研磨液から、小さなサイズの砥粒を含有する研磨液に段階的に変更しながら供給して、素材ウェーハの両面を同時に、粗研磨から仕上げ研磨までを1回の研磨工程で、同一の研磨布で行うことにより、素材ウェーハの研磨量を低減し、半導体ウェーハの平坦度を向上させることができることを見出した。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づくもので、その要旨構成は次のとおりである。
・・・
【0010】
3.素材ウェーハの両面を、砥粒を含有する研磨液を研磨布に供給しながら研磨して、前記両面を仕上げ研磨する研磨工程を有する半導体ウェーハの製造方法において、
前記研磨布に、含有する砥粒の平均粒径で種別する少なくとも2種類の研磨液を、大きなサイズの砥粒を含有する研磨液から、小さなサイズの砥粒を含有する研磨液に段階的に変更しながら供給して、前記素材ウェーハの両面を同時に、粗研磨から仕上げ研磨までの研磨工程を同一の研磨布で行うことを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【0011】
4.前記少なくとも2種類の研磨液が、粗研磨用砥粒を含有する研磨液と仕上げ研磨用砥粒を含有する研磨液であることを特徴とする上記3に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0012】
5.前記粗研磨用砥粒のサイズが、平均粒径で、0.5μmを超え2.0μm以下であることを特徴とする上記4に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0013】
6.前記仕上げ研磨用砥粒のサイズが、平均粒径で、0?0.5μm(0μmを含まず)であることを特徴とする上記4または5に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0014】
7.前記粗研磨用砥粒が、コロイダルシリカであることを特徴とする上記4乃至6のいずれか1項記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0015】
8.前記仕上げ研磨用砥粒が、コロイダルシリカであることを特徴とする上記4乃至7のいずれか1項記載の半導体ウェーハの製造方法。
【0016】
9.前記半導体ウェーハは、直径が450mm以上の大口径シリコンウェーハである上記3乃至8のいずれか1項記載の半導体ウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体ウェーハの製造方法によれば、粗研磨から仕上げ研磨までの研磨工程を同一の研磨布で行うことにより、素材ウェーハの研磨量を低減し、平坦度に優れる半導体ウェーハを得ることができる。
また、粗研磨工程から仕上げ研磨工程までの研磨工程全体を1つの工程に集約することにより、研磨工数を低減することができる。
特に、本発明の半導体ウェーハの製造方法は、直径が450mm以上の大口径半導体ウェーハ、とりわけシリコンウェーハを得るのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の半導体ウェーハの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の製造方法で使用する両面研磨装置の一例を示す斜視図である。両面研磨装置100は、一対の上定盤1および下定盤2と、上定盤1および下定盤2に固定された上研磨布3および下研磨布4と、小穴5および側面ギア6aを有するキャリア6と、キャリア6の側面ギア6aと噛み合う中心ギア7と、研磨液供給管8とからなる。
【0019】
図2は、図1の両面研磨装置100を、上定盤1を外した状態で真上から眺めた平面図である。この両面研磨装置100は、5個のキャリア6を有する場合の例であるが、本発明では、少なくとも1個のキャリア6を有していればよく、必要に応じてキャリアの配設個数を増減することができる。
【0020】
図3は、素材ウェーハ9を研磨している状態の両面研磨装置100の図2に示すI-I線上の断面図である。
キャリア6の小穴5aに嵌め込んだ素材ウェーハ9を、上研磨布3を固定した上定盤1と、下研磨布4を固定した下定盤2で挟み込み、研磨液供給管8から上研磨布3および下研磨布4に研磨液を供給しながら、図2に示すように、上定盤1および下定盤2を逆向きの方向に回転させ、中心ギア7を用いてキャリア6を矢印の方向に回転させて、素材ウェーハ9の両面を同時に研磨する。
【0021】
本発明では、#2000程度の砥粒で研削された素材ウェーハ9をキャリア6の小穴5aに嵌めこみ研磨に供される。研磨は、上定盤1と下定盤2で素材ウェーハ9を挟み込んだまま、含有する砥粒の平均粒径で種別する少なくとも2種類の研磨液を、大きなサイズの砥粒を含有する研磨液から、小さなサイズの砥粒を含有する研磨液に段階的に変更しながら供給することによって、素材ウェーハの両面を同時に、粗研磨から仕上げ研磨までの研磨工程全体を、同一の研磨布を用いて1回の工程で行うことができる。従って、従来法のように、粗研磨工程と仕上げ研磨工程との間で、含有する砥粒のサイズが異なる研磨液に変更するために、研磨布を交換したり、別の両面研磨装置に研磨途中の素材ウェーハを載せかえたりする際に、素材ウェーハをハンドリングすることがないことから、研磨途中の素材ウェーハにキズをつけたり、汚れを付着させたりすることがない。これにより、研磨途中の素材ウェーハ上についたキズや汚れを除去するために、仕上げ研磨量を増やす必要がなくなり、素材ウェーハの総研磨量を低減することができる。その結果、半導体ウェーハの平坦度を向上させることができる。この素材ウェーハの総研磨量の低減による半導体ウェーハの平坦度向上の他に、本発明の半導体ウェーハの製造方法では、従来法で行っていた素材ウェーハのハンドリングによって、素材ウェーハに歪み等が加わることがないことも、半導体ウェーハの平坦度向上に寄与する。また、粗研磨工程から仕上げ研磨工程までを1つの工程に集約することによって、研磨工数を低減することができる。
【0022】
次に本発明の製造方法で用いる研磨布および砥粒について説明する。
上研磨布3および下研磨布4は、砥粒を含まず、素材ウェーハ9を上定盤1と下定盤2で挟み込んで回転させたときに破損することがなければ特に制限されることはないが、ウレタン系が好ましい。なお、上研磨布3および下研磨布4は、同一材質、あるいは異なる材質のいずれでも良い。
【0023】
粗研磨用砥粒のサイズは、平均粒径で、0.5μmを超え2.0μm以下の範囲が好ましい。粗研磨用砥粒のサイズが、平均粒径で、0.5μm以下の場合、研磨レートの低下の懸念がある。一方、2.0μmを超えると、研磨途中の素材ウェーハの表面にキズが入る懸念がある。より好ましい粗研磨用砥粒のサイズは、平均粒径で、0.8?1.5μmの範囲である。
【0024】
なお、粗研磨用砥粒は、上記したサイズの範囲内で2種類以上の粗研磨用砥粒を準備し、それぞれの粗研磨用砥粒を含有した研磨液を生成して、大きなサイズの砥粒を含有する研磨液から、小さなサイズの砥粒を含有する研磨液に段階的に変更しながら研磨してもよい。例えば、平均粒径を1.5μmとする第1粗研磨用砥粒を含有する研磨液を研磨布に供給しながら行う第1粗研磨と、平均粒径を1.0μmとする第2粗研磨用砥粒を含有する研磨液を研磨布に供給しながら行う第2粗研磨を、第1粗研磨→第2粗研磨の順番で同一の研磨布を用いて研磨を行っても良い。素材ウェーハの研磨は、大きいサイズの砥粒を含有する研磨液から小さいサイズの砥粒を含有する研磨液への変更回数を多くした方が、研磨が進むにつれて変化する素材ウェーハの表面状態に対して、常に最適なサイズの砥粒を含有する研磨液で研磨することができるが、従来法では、含有する砥粒のサイズが異なる研磨液に変更する毎に、研磨布の交換等をする必要があるのに対して、本発明の製造方法では、同一の研磨布で研磨することができるため、工数低減や研磨途中の半導体ウェーハにキズ等をつけることの防止につながる。
【0025】
仕上げ研磨用砥粒のサイズは、平均粒径で、0?0.5μm(0μmは含まず)の範囲が好ましい。仕上げ研磨用砥粒の平均粒径が0.5μmを超えると、研磨途中の素材ウェーハの表面にキズが入る懸念がある。より好ましい仕上げ研磨用砥粒のサイズは、平均粒径で、0.1?0.2μmの範囲である。
【0026】
なお、仕上げ研磨用砥粒についても、粗研磨用砥粒の場合と同様に、上記した仕上げ研磨用砥粒のサイズの範囲内で2種類以上の仕上げ研磨用砥粒を準備し、それぞれのサイズの仕上げ研磨用砥粒について研磨液を生成し、研磨してもよい。
【0027】
次に本発明の製造方法における研磨条件について説明する。
研磨液は、上記した砥粒とアルカリ溶液を混合して生成し、研磨液供給管8を通じて上研磨布3および下研磨布4に供給される。研磨液の供給量は、上定盤1、下定盤2およびキャリア6の回転数、ならびに上定盤1および下定盤2で素材ウェーハ9を挟み込む力によって異なるが、研磨中に、上研磨布3または下研磨布4と素材ウェーハ9の表面との間に、一定厚さ以上の研磨液膜が形成され、円滑に研磨することができるように各条件を設定すれば良い。一定厚さ以上の研磨液膜が形成され、円滑に研磨することができる各条件の範囲は、次のとおりである。なお、括弧内は、好ましい条件の範囲である。
研磨液の供給量:0?2000ml/分(0ml/分を含まず)
(好ましくは、500?1000ml/分)
上定盤1の回転数:0?80rpm(0rpmを含まず)
(好ましくは、10?50rpm)
下定盤2の回転数:0?80rpm(0rpmを含まず)
(好ましくは、10?50rpm)
キャリア6の回転数:0?80rpm(0rpmを含まず)
(好ましくは、5?50rpm)
【0028】
上記した条件で、粗研磨される素材ウェーハの研磨量(両面の合計研磨量)は、0?20μm(0μmを含まず)が好ましい。より好ましくは、5?12μmの範囲である。また、仕上げ研磨される素材ウェーハの研磨量(両面の合計研磨量)は、0?1μm(0μmを含まず)が好ましい。より好ましくは、0.1?0.8μmの範囲である。
【0029】
上記した本発明の製造方法により、直径が450mm以上で、両面が仕上げ研磨されている半導体ウェーハを製造することができる。
特に、本発明の製造方法により得られた、直径が450mm以上で、両面が仕上げ研磨されている半導体ウェーハは、優れた平坦度(GBIR):0.1μm以下を有する。
【0030】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々変更を加えることができる。」

(2)引用発明2
上記(1)の引用文献2の記載及び当該技術分野における技術常識より、引用文献2には下記の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。(当審注.「引用発明2」は、当審拒絶理由の「1.(1)ウ 引用文献2を主引例とする拒絶の理由」における主引用発明に対応するものである。)
「半導体ウェーハの製造方法であって、
研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、平均粒径が0.5μmを超え2.0μm以下のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する粗研磨工程と、
前記両面研磨装置を用い、平均粒径が0?0.5μm(0μmを含まず)のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程と
を有し、
前記粗研磨工程と仕上げ研磨工程を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いて研磨液を変更して引き続き行う
ことを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。」

3 引用文献3の記載事項
原査定の理由において引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2010-040643号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0030】
(片面仕上げ研磨工程)
本発明では、片面仕上げ研磨工程においても、図1に示した両面研磨装置100を使用する。両面研磨装置100は、両面研磨工程と片面仕上げ研磨工程とで別個に設けてもよいし、1台を共用としてもよい。
【0031】
図4は、保護膜形成工程により、両面研磨された素材ウェーハの一方の面に保護膜10を形成した素材ウェーハ9を研磨している状態の両面研磨装置100についての図2に示すI-I線上での断面図である。
【0032】
キャリア6の小穴5に、保護膜形成工程により、両面研磨された素材ウェーハの一方の面に保護膜10を形成した素材ウェーハ9を嵌めこみ、上研磨布3を固定した上定盤1と、下研磨布4を固定した下定盤2で挟み込んで、図2に示すように、上定盤1および下定盤2を逆向きの方向に回転させ、中心ギア7を用いてキャリア6を矢印の方向に回転させ
て、素材ウェーハ9の他方の面を片面仕上げ研磨する。
【0033】
片面仕上げ研磨は、図4(a)に示すように保護膜10を上にする、あるいは図4(b)に示すように保護膜10を下にするいずれの実施形態でも構わないが、図4(b)に示す、保護膜10を下にする実施形態の方が好ましい。これは、ウェーハの裏面に保護膜を形成した場合に、研磨後にウェーハを反転することなく、研磨以降の工程に流動することが可能であるためである。
【0034】
上研磨布3および下研磨布4は、砥粒を含まない研磨布、砥粒を固定した研磨布のいずれも使用することができる。以下、砥粒を含まない研磨布を使用する場合と、砥粒を固定した研磨布を使用する場合とに分けて説明する。
【0035】
・砥粒を含まない研磨布の場合
研磨布3および下研磨布4の材質は、研磨後のウェーハ研磨面の表面粗さを十分に小さくする必要があるためスウェードタイプの人工皮革パッドなどを用いることが好ましい。なお、上研磨布3および下研磨布4は、同一の材質としてもよいが、保護膜10側、すなわち図4(a)の実施形態では上研磨布3を、図4(b)の実施形態では下研磨布4を、より軟らかく、メカニカルな作用を及ぼさないもの、望ましくは摩擦係数が小さくなる表面処理を行った材質にすることが好ましい。これは、保護膜を維持するためである。
【0036】
研磨中は、図1に示した研磨液供給管8から、砥粒を含む研磨液を供給しながら研磨を行う。砥粒を含む研磨液は、アルカリ系の水溶液に、クッション効果を持たせるための水溶性高分子を加えたものに砥粒を混合して生成する。砥粒の材質は、メカノケミカル効果を持ち、高純度化が比較的容易で、粒径分布を制御することが比較的容易であることからシリカ粒子を用いることが好ましい。砥粒のサイズは、平均粒径で、10nm?100nmの範囲が好ましい。砥粒の平均粒径が10nm未満の場合、砥粒同士の凝集や研磨速度が十分でない懸念があり、一方、100nmを超えると、研磨表面にスクラッチを発生させる懸念があるためである。
【0037】
研磨条件は、片面仕上げ研磨中に、上研磨布3および下研磨布4と素材ウェーハ9の表面との間に、一定厚さ以上の研磨液膜が形成され、保護膜10が剥れたり、破損したりしたりせず、円滑に研磨することができるように各条件を次のように設定することが好ましい。なお、括弧内は、より好ましい条件の範囲である。
上定盤1および下定盤2で素材ウェーハ9を挟み込む力:50?300gf/cm^(2)
(好ましくは、50?200gf/cm^(2))
上定盤1の回転数:10?100rpm
(好ましくは、20?50rpm)
下定盤2の回転数:10?100rpm
(好ましくは、20?50rpm)
キャリア6の回転数:1?30rpm
(好ましくは、2?10rpm)
研磨液の供給量:50?5000ml/分
(好ましくは、100?1000ml/分)
【0038】
上記した条件で研磨される素材ウェーハの片面仕上げ研磨量は、10nm?1μmの範囲とすることが好ましい。片面仕上げ研磨量が、10nm未満の場合、表面の粗さが十分に低減されないなどの懸念があり、一方、1μmを超えるとウェーハ形状を悪化させるなどの懸念があるためである。より好ましい片面仕上げ研磨量は、50nm?0.5μmの範囲である。」

4 引用文献4の記載事項
原査定の理由及び当審拒絶理由において引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2013-025844号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0035】
本発明の実施形態の主平面粗研磨工程(4A)においては、前記一対の研磨パッドのうちの少なくとも下側の研磨パッド50、好ましくは上下両側の研磨パッド40、50が、発泡ウレタン樹脂のような気泡を含有する発泡樹脂からなり、1.1?2.5(%)の圧縮率を有する。また、この研磨パッドの研磨面に開口する気泡(以下、開口気泡と示す。)の平均直径は80?300μmとなっている。
・・・
【0052】
さらに、この研磨パッドは、80?95のショアA硬度を有することが好ましい。また、25?60のショアD硬度を有することが好ましい。ショアA硬度のさらに好ましい範囲は80?90であり、特に好ましい範囲は82?88である。ショアD硬度のより好ましい範囲は25?50であり、さらに好ましい範囲は28?55であり、特に好ましい範囲は30?45である。ショアA硬度は、JIS K6253に拠り、ショアA型硬度計(タイプAデュロメータ)により測定する。また、ショアD硬度は、JIS K6253に拠り、タイプDデュロメータにより測定する。」

5 引用文献5の記載事項
原査定の理由及び当審拒絶理由において引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2004-195571号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0022】
図1は、本発明の一実施例である両面研磨機用ワークキャリア(以下、単にキャリアと称す)10を示す平面図である。この図1に示すように、かかるキャリア10は、外周部に設けられた歯型である複数本(図1では32本)の突起部12と、径方向中程に設けられてそれぞれ矩形状を成す複数(図1では6個)の保持穴部14と、中央部に設けられて円形状を成す中央穴16とを備えて極薄手の円板状(歯車状)に構成されている。このキャリア10は、好適には、その厚み寸法が5μmt以上100μmt以下の範囲内とされたものであり、例えば外径72mmφ×厚み50μmt×保持穴部11mm角程度の寸法を備えて形成されている。
【0023】
図2は、上記キャリア10の組織の一部を拡大して示す模式図である。この図2に示すように、上記キャリア10の組織は、例えば炭化ケイ素質、酸化アルミニウム質、窒化ケイ素質、ホウ酸アルミニウム質、ダイヤモンド質、又は炭素質(ダイヤモンドライクカーボン、グラッシーカーボン、グラファイト等)をはじめとするセラミック材料、或いは炭酸カルシウム又はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の有機樹脂材料から成り球形状又は繊維(ウィスカ)状を成す多数の骨材18が、例えばニッケル或いはニッケル合金等の金属組織20により相互に結合して形成されたものである。この組織全体に占める上記多数の骨材18の体積割合は、5%以上70%以下の範囲内であり、それらは上記金属組織20内に略均一に分散して含まれている。一般に、金属材料は他の材料に比べて延性及び剛性に優れているが、例えば上述のように100μmt以下といった極薄手に形成されたものでは折れ・曲がり等の変形が生じ易い。本実施例のキャリア10の組織は、上記多数の骨材18が金属組織20により相互に結合して形成された複合材料から成ることで、その延性及び剛性が可及的に高められている。
【0024】
上記骨材18としては、例えば、前記キャリア10の耐摩耗性を重視するのであれば、JIS Z2244に規定するビッカース硬さでHV1000以上である材料が好適に用いられ、また、その平均粒径(繊維状粒子にあっては平均短径)は、0.1μm以上10μm以下の範囲内であることが好ましく、最大であるものの粒径が前記キャリア10の厚み寸法の半分以下であるべきである。また、前記キャリア10の潤滑性を高めることで摩耗を抑制するというのであれば、PTFEの粒子、グラファイト粒子、二硫化モリブデン粒子等が好適に用いられる。この骨材18の平均粒径が0.1μmより小さい場合には、例えば後述する無電解鍍金工程P3において無電解鍍金液中に分散させるのが難しくなり、10μmより大きい場合には、同じく無電解鍍金工程P3において前記キャリア10の厚み制御が難しくなる。また、上記金属組織20としては、0.5重量%以上20重量%以下、更に好適には3重量%以上15重量%以下のリンを含むリン-ニッケル合金、或いは0.1重量%以上5重量%以下、更に好適には0.3重量%以上3重量%以下のホウ素を含むホウ素-ニッケル合金等が好適に用いられる。かかる組成のニッケル合金は、所定の熱処理が施されることにより、例えばビッカース硬さでHV1000といった比較的高い硬さが付与されるものであり、延いては優れた耐摩耗性を示す。」

6 引用文献6の記載事項
原査定の理由において引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である国際公開第2013/073025号(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「[0042] [5]半導体ウェーハに対する研磨特性の評価方法
SF1、CV値の異なるシリカ粒子に、水、アンモニア、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコールを添加して研磨液組成物を調製し、絶対ろ過精度1.0μmのフィルターで濾過処理した。その研磨液組成物を40倍に希釈した研磨スラリーを用いて、同1条件で一次研磨されたシリコンウェーハを以下に示す条件で仕上げ研磨した。
研磨機:900φ片面加工機
荷重:120g/cm^(2)
定盤回転数:40rpm
ヘッド回転数:40rpm
研磨組成物の希釈液:350ml/分
研磨時間:5分
ウェーハ:シリコンウェーハP^(-)(100)
仕上げ研磨後のシリコンウェーハに公知のSC1洗浄(アンモニア:過酸化水素:水の混合比=1:1?2:5?7の洗浄液(SC1液)に75?85℃、10?20分浸漬処理)及びSC2洗浄(塩酸:過酸化水素:水=1:1?2:5?7の洗浄液(SC2液)に75?85℃、10?20分浸漬処理)を施し、ウェーハ表面の不純物を除去した。仕上げ研磨後のシリコンウェーハ表面のLPDは、KLA-Tencor社製Surf Scan SP-2を用いて測定した。LPDは37nm以上の個数で示した。表1において、(○)はウェーハ1枚あたりの37nm以上のLPDの個数が80個未満、(△)は80個以上200個未満、(×)は200個以上を示す。」

第6 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明1-1との対比及び判断
(ア)本願発明1と引用発明1-1との対比
a 本願発明1と引用発明1-1は、「エピタキシャルウェーハの製造方法」である点において共通するといえる。
b 本願発明1における「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程」と、引用発明1-1における「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する粗研磨工程」を対比する。
引用発明1-1における「平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリー」は、「第1の砥粒を含むスラリー」であるといえる。
また、引用発明1-1における「粗研磨工程」は、「1次研磨を行う工程」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1は、「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程」を有する点において共通するといえる。
c 本願発明1における「前記両面研磨装置を用い、前記第1の砥粒より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程」と、引用発明1-1における「前記ロールオフ加工工程に続いて、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程」を対比する。
引用発明1-1における「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液」は、「第2の砥粒を含むスラリー」であるといえる。
また、引用発明1-1では、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)の後で「仕上げ研磨」を行っているから、引用発明1-1における「仕上げ研磨工程」は、「前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨」する、「2次研磨を行う工程」であるとえいる。
他方、引用発明1-1は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いたものと同じ両面研磨装置を用いるとは特定しない。
また、引用発明1-1は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において用いられるスラリーに含まれるコロイダルシリカ(「第2の砥粒」に対応)の平均粒径が、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いられるスラリーに含まれるコロイダルシリカ(「第1の砥粒」に対応)の平均粒径よりも小さいとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1は、「第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程」を有する点において共通し、後述する相違点1-1-1及び1-1-2において相違するといえる。
d 本願発明1における「前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」と、引用発明1-1における「前記仕上げ研磨工程に続いて、前記シリコンウェーハの表面にエピタキシャル膜を形成する工程」とを対比する。
引用発明1-1では、「仕上げ研磨」(「2次研磨」)のあと、片面CMP研磨を行うことなく、エピタキシャル膜を形成しているといえる。
また、引用発明1-1における「エピタキシャル膜を形成する工程」は「エピタキシャル層を成長させる工程」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1は、「前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」を有する点において共通するといえる。
e 本願発明1の「前記1次研磨と前記2次研磨を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いてスラリーを変更して引き続いて行い、更に引き続いて洗浄後にエピタキシャル成長を行い」との発明特定事項と、引用発明1-1を対比する。
引用発明1-1は、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)と「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)を、「同一の両面研磨装置」の「同じ研磨布」を用いて行うとは特定しない。
また、引用発明1-1は、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)と「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)の間に「ロールオフ加工」を実行するものであり、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)と「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)を「引き続いて行」うものではない。
さらに、引用発明1-1は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)に引き続いて、「洗浄後」にエピタキシャル成長を行うとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1は、後述する相違点1-1-1及び1-1-3ないし1-1-5において相違するといえる。
f 本願発明1の「前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径74nm?100nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」との発明特定事項と、引用発明1-1を対比する。
引用発明1-1では、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において「平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給」しており、該「平均粒径30?100nmのコロイダルシリカ」は「シリカ砥粒」であるといえる。
他方、引用発明1-1は、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いる研磨スラリーに含まれるコロイダルシリカの平均粒径が「74nm?100nm」であるとは特定しない。
また、引用発明1-1は、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いる研磨スラリーが「アルカリ性水溶液」であるとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1は、「前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むスラリーを用い」る点において共通し、後述する相違点1-1-6において相違するといえる。
g 本願発明1の「前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径20nm?40nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いる」との発明特定事項と、引用発明1-1を対比する。
引用発明1-1では、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給」しており、該「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液」は「シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液」であるといえる。
他方、引用発明1-1は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において用いる研磨スラリーに含まれるコロイダルシリカの平均粒径が「20nm?40nm」であるとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-1は、「前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」る点において共通し、後述する相違点1-1-7において相違するといえる。
h 以上から、本願発明1と引用発明1-1は、下記(a)の点で一致し、下記(b)の点で相違すると認める。
(a)一致点
「エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程と、
第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程と、
前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程と
を有し、
前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むスラリーを用い、
前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。」
(b)相違点
・相違点1-1-1
本願発明1では、「1次研磨」と「2次研磨」を、同一の両面研磨装置を用いて行うのに対し、引用発明1-1は、「1次研磨」(粗研磨)と「2次研磨」(仕上げ研磨)を、同一の両面研磨装置を用いて行うとは特定しない点。
・相違点1-1-2
本願発明1では、「2次研磨」において用いられるスラリーに含まれる「第2の砥粒」の平均粒径が、「1次研磨」において用いられるスラリーに含まれる「第1の砥粒」の平均粒径よりも小さいのに対し、引用発明1-1は、「2次研磨」(仕上げ研磨)において用いられるスラリーに含まれる「第2の砥粒」(コロイダルシリカ)の平均粒径が、「1次研磨」(粗研磨)において用いられるスラリーに含まれる「第1の砥粒」(コロイダルシリカ)の平均粒径よりも小さいとは特定しない点。
・相違点1-1-3
本願発明1では、「1次研磨」と「2次研磨」を、同じ研磨布を用いて行うのに対し、引用発明1-1は、「1次研磨」(粗研磨)と「2次研磨」(仕上げ研磨)を、同じ研磨布を用いて行うとは特定しない点。
・相違点1-1-4
本願発明1では、「1次研磨」と「2次研磨」を引き続いて行うのに対し、引用発明1-1では、「1次研磨」(粗研磨工程)と「2次研磨」(仕上げ研磨)の間に「ロールオフ加工工程」を実行しており、「1次研磨」(粗研磨)と「2次研磨」(仕上げ研磨)を引き続いて行わない点。
・相違点1-1-5
本願発明1では、「2次研磨」に引き続いて「洗浄後」にエピタキシャル成長を行うのに対し、引用発明1-1は、「2次研磨」(仕上げ研磨)に引き続いて「洗浄後」にエピタキシャル成長を行うとは特定しない点。
・相違点1-1-6
本願発明1では、「1次研磨」を行う工程において、第1の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径74nm?100nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いるのに対し、引用発明1-1では、「1次研磨」(粗研磨)を行う工程において、平均粒径30?100nmの第1の砥粒(コロイダルシリカ)を含む研磨スラリーを用いる点。すなわち、本願発明1と引用発明1-1では、「1次研磨」(粗研磨)において用いるスラリーに含まれる砥粒の平均粒径の範囲が異なり、また、引用発明1-1では、「1次研磨」(粗研磨)において用いるスラリーが「アルカリ性水溶液」であるとは特定しない点。
・相違点1-1-7
本願発明1では、「2次研磨」を行う工程において、第2の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径20nm?40nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いるのに対し、引用発明1-1では、「2次研磨」(仕上げ研磨)を行う工程において、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を用いる点。すなわち、本願発明1と引用発明1-1では、「2次研磨」(仕上げ研磨)において用いるスラリーに含まれる砥粒の平均粒径の範囲が異なる点。
(イ)判断
a まず、相違点1-1-4について、検討する。
(a)引用発明1-1において相違点1-1-4に係る構成を採用するためには、「ロールオフ加工工程」を省略するか、あるいは、「ロールオフ加工工程」の実行順序を変更し、「1次研磨」(粗研磨)よりも前、又は「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行する必要があることは明らかである。
(b)そこで、まず、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を省略することを、当業者が容易に想到することができたかについて、検討する。
上記第5の1(1)アの引用文献1の記載より、引用発明1-1は、エピタキシャル成長を行う際、エピタキシャル膜を形成するために用いられる反応ガスが裏面に回り込むことによって、半導体ウェーハ裏面の外周部にもエピタキシャル膜が付着してエピタキシャルウェーハ全体の平坦度が悪化するという課題、及び、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャル膜表面を研磨処理した場合には生産コストの上昇や品質低下を招くという課題を解決するために、エピタキシャル膜形成前にあらかじめ半導体ウェーハ裏面の外周部をロールオフ加工することによって、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルウェーハの表裏面などを研磨することなく、高い裏面の平坦度を得ることを目的としたものであると認められる。
そして、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を省略した場合に、上記課題を解決できなくなることは明らかである。
したがって、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を省略することには、阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(c)次に、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を「1次研磨」(粗研磨)よりも前に実行することを、当業者が容易に想到することができたかについて、検討する。
上記第5の1(1)ウの引用文献1の記載より、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を「1次研磨」(粗研磨)よりも前に実行した場合には、ロールオフ領域が粗研磨により除去され、上記課題の解決が困難となることは明らかである。
そうすると、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を「1次研磨」(粗研磨)よりも前に実行することには、阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(d)次に、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行することを、当業者が容易に想到することができたかについて、検討する。
引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行した場合に、上記課題を解決できなくなることは明らかである。
したがって、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行することには阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(e)以上より、引用発明1-1において、「ロールオフ加工工程」を省略すること、「ロールオフ加工工程」を「1次研磨」(粗研磨)よりも前に実行すること、及び「ロールオフ加工工程」を「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行することには、いずれも阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、引用発明1-1において相違点1-1-4に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しえたことであるとはいえない。
b 次に、相違点1-1-6及び1-1-7について検討する。
引用文献1ないし6には、相違点1-1-6及び1-1-7に係る構成について、記載も示唆もされていない。
そして、本願発明1は、相違点1-1-6及び1-1-7に係る構成を備えることにより、「フラットネスを維持しつつ、片面CMP研磨を行った場合と同レベルまで欠陥数を低減させることができる」(本願明細書の段落【0076】)という、引用文献1ないし6に記載された発明からは予測することのできない格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点1-1-6及び1-1-7に係る構成は、引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
c 以上より、相違点1-1-1ないし1-1-3及び1-1-5について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1-1及び引用文献2ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本願発明1と引用発明1-2との対比及び判断
(ア)本願発明1と引用発明1-2との対比
a 本願発明1と引用発明1-2は、「エピタキシャルウェーハの製造方法」である点において共通するといえる。
b 本願発明1における「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程」と、引用発明1-2における「前記ロールオフ加工工程に続いて、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程を、使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施する工程」を対比する。
引用発明1-2では、「仕上げ研磨工程」を、「使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施」しており、当該複数段に分けられた「仕上げ研磨工程」のうち、前段のものは、「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨の前段工程」であるといえる。
そして、上記「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液」は、「第1の砥粒を含むスラリー」であるといえ、上記「仕上げ研磨の前段工程」は、「第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する」工程であるといえる。
他方、引用発明1-2は、「仕上げ研磨の前段工程」において、「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い」るとは特定しない。
また、本願発明1における「1次研磨を行う工程」と、引用発明1-2における「仕上げ研磨の前段工程」は、「研磨を行う工程」(以下、当該「研磨」を「第1研磨」という。)である点においては共通するものの、引用発明1-2では、「粗研磨」を行ったのちに「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)を行っているから、上記「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)は「2次研磨」であって、「1次研磨」ではない。
以上より、本願発明1と引用発明1-2は、「第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する第1研磨を行う工程」を有する点において共通し、後述する相違点1-2-1及び1-2-2において相違するといえる。
c 本願発明1における「前記両面研磨装置を用い、前記第1の砥粒より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程」と、引用発明1-2における「前記ロールオフ加工工程に続いて、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程を、使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施する工程」を対比する。
引用発明1-2では、「仕上げ研磨工程」を、「使用する研磨布や研磨スラリー組成などを変えて複数段に分けて実施」しており、当該複数段に分けられた「仕上げ研磨工程」のうち、後段のものは、「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、第1研磨(仕上げ研磨の前段)を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨の後段工程」であるといえる。
そして、上記「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液」は、「第2の砥粒を含むスラリー」であるといえ、上記「仕上げ研磨の後段工程」は、「第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記第1研磨(仕上げ研磨の前段)を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する」工程であるといえる。
他方、引用発明1-2は、「仕上げ研磨の後段工程」において、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)において用いられた両面研磨装置と同一の両面研磨装置を用いるとは特定しない。
また、本願発明1における「2次研磨を行う工程」と、引用発明1-2における「仕上げ研磨の後段工程」は、「研磨を行う工程」(以下、当該「研磨」を「第2研磨」という。)である点においては共通するものの、引用発明1-2では、「粗研磨」及び「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)を行ったのちに「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)を行っているから、上記「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)は、「3次研磨」であって、「2次研磨」ではない。
以上より、本願発明1と引用発明1-2は、「第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記第1研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する第2研磨を行う工程」を有する点において共通し、後述する相違点1-2-1及び1-2-2において相違するといえる。
d 本願発明1における「前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」と、引用発明1-2における「前記仕上げ研磨工程に続いて、前記半導体ウェーハの表面にエピタキシャル膜を形成する工程」とを対比する。
引用発明1-2では、「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)のあと、「片面CMP研磨」を行うことなくエピタキシャル膜を形成しているといえる。
また、引用発明1-2における「エピタキシャル膜を形成する工程」は、「エピタキシャル層を成長させる工程」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1-2は、「前記第2研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」を有する点において共通するといえる。
e 本願発明1の「前記1次研磨と前記2次研磨を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いてスラリーを変更して引き続いて行い、更に引き続いて洗浄後にエピタキシャル成長を行い」との発明特定事項と、引用発明1-2を対比する。
引用発明1-2は、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)と「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)を、「スラリーを変更して引き続いて行」うものであるといえる。
他方、引用発明1-2は、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)と「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)において「同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用い」るとは特定しない。
また、引用発明1-2は、「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)に引き続いて、「洗浄後」にエピタキシャル成長を行うとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-2は、「前記第1研磨と前記第2研磨をスラリーを変更して引き続いて行」う点において共通し、後述する相違点1-2-1、1-2-4及び1-2-5において相違するといえる。
f 本願発明1の「前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径74nm?100nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」との発明特定事項と、引用発明1-2を対比する。
引用発明1-2では、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)において、「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給」しており、当該「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液」は「シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液」であるといえる。
他方、引用発明1-2は、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)において用いる研磨スラリーに含まれるコロイダルシリカの平均粒径が「74nm?100nm」であるとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-2は、「前記第1研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」る点において共通し、後述する相違点1-2-6において相違するといえる。
g 本願発明1の「前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径20nm?40nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」との発明特定事項と、引用発明1-2を対比する。
引用発明1-2では、「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)において、「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給」しており、当該「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液」は「シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液」であるといえる。
他方、引用発明1-2は、「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)において用いる研磨スラリーに含まれるコロイダルシリカの平均粒径が「20nm?40nm」であるとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-2は、「前記第2研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」る点において共通し、後述する相違点1-2-7において相違するといえる。
h 以上から、本願発明1と引用発明1-2は、下記(a)の点で一致し、下記(b)の点で相違すると認める。
(a)一致点
「エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する第1研磨を行う工程と、
第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記第1研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する第2研磨を行う工程と、
前記第2研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程と
を有し、
前記第1研磨と前記第2研磨をスラリーを変更して引き続いて行い、
前記第1研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い、
前記第2研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。」
(b)相違点
・相違点1-2-1
本願発明1では、「第1研磨」(1次研磨)と「第2研磨」(2次研磨)において、同一の「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置」を用いるのに対し、引用発明1-2は、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)と「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)において、同一の「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置」を用いるとは特定しない点。
・相違点1-2-2
本願発明1では、「第1研磨」が「1次研磨」であり、「第2研磨」が「2次研磨」であるのに対し、引用発明1-2では、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)が「2次研磨」であり、「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)が「3次研磨」である点。
・相違点1-2-3
本願発明1では、「第2研磨」(2次研磨)において用いられるスラリーに含まれる「第2の砥粒」の平均粒径が、「第1研磨」(1次研磨)において用いられるスラリーに含まれる「第1の砥粒」の平均粒径よりも小さいのに対し、引用発明1-2は、「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)において用いられるスラリーに含まれる「第2の砥粒」(コロイダルシリカ)の平均粒径が、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)において用いられるスラリーに含まれる「第1の砥粒」(コロイダルシリカ)の平均粒径よりも小さいとは特定しない点。
・相違点1-2-4
本願発明1では、「第1研磨」(1次研磨)と「第2研磨」(2次研磨)において同じ研磨布を用いるのに対し、引用発明1-2は、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)と「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)において同じ研磨布を用いるとは特定しない点。
・相違点1-2-5
本願発明1では、「第2研磨」(2次研磨)に引き続いて、「洗浄後」にエピタキシャル成長を行うのに対し、引用発明1-2は、「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)に引き続いて、「洗浄後」にエピタキシャル成長を行うとは特定しない点。
・相違点1-2-6
本願発明1では、「第1研磨」(1次研磨)において用いられる第1の砥粒の平均粒径が「74nm?100nm」であるのに対し、引用発明1-2では、「第1研磨」(仕上げ研磨の前段)において用いられる第1の砥粒(コロイダルシリカ)の平均粒径が「10nm?50nm」である点。
・相違点1-2-7
本願発明1では、「第2研磨」(2次研磨)において用いられる第2の砥粒の平均粒径が「20nm?40nm」であるのに対し、引用発明1-2では、「第2研磨」(仕上げ研磨の後段)において用いられる第2の砥粒(コロイダルシリカ)の平均粒径が「10nm?50nm」である点。
(イ)判断
a まず、相違点1-2-2について、検討する。
引用発明1-2において相違点1-2-2の構成を採用するためには、「粗研磨」を省略する必要がある。
そこで、引用発明1-2において、「粗研磨」を省略することを、当業者が容易に想到することができたかについて、検討する。
上記第5の1(1)イの引用文献1の記載(段落【0024】及び【0027】)より、引用発明1-2における「粗研磨」は「ラッピングや研削処理により導入された加工歪層の除去や、表面形状(平坦度)を調整する」ことを目的とするものであるのに対し、「仕上げ研磨」は、「粗研磨のようなシリコンウェーハの平坦度を調整する研磨とは異なり、ウェーハ表面の微小なうねりやヘイズレベルの改善を目的」とするものと認められる。
このように、引用発明1-2における「粗研磨」と「仕上げ研磨」は、その目的を異とするものであり、「粗研磨」を省略して「仕上げ研磨」のみを実施したのでは、「ラッピングや研削処理により導入された加工歪層の除去や、表面形状(平坦度)を調整する」という目的を達成できなくなり、質の高いエピタキシャルウェーハを得られなくなることは明らかである。
そうすると、引用発明1-2において、「粗研磨」の工程を省略することには、阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
b 次に、相違点1-2-6及び1-2-7について検討する。
引用文献1ないし6には、相違点1-2-6及び1-2-7に係る構成について、記載も示唆もされていない。
そして、本願発明1は、相違点1-2-6及び1-2-7に係る構成を備えることにより、「フラットネスを維持しつつ、片面CMP研磨を行った場合と同レベルまで欠陥数を低減させることができる」(本願明細書の段落【0076】)という、引用文献1ないし6に記載された発明からは予測することのできない格別の効果を奏するものである。
そうすると、相違点1-2-6及び1-2-7に係る構成は、引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
c 以上のとおりであるから、相違点1-2-1及び1-2-3ないし1-2-5について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1-2及び引用文献2ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本願発明1と引用発明1-3との対比及び判断
(ア)本願発明1と引用発明1-3との対比
a 本願発明1と引用発明1-3は、「エピタキシャルウェーハの製造方法」である点において共通するといえる。
b 本願発明1における「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程」と、引用発明1-3における「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給しながら、半導体ウェーハの両面を研磨する粗研磨工程」を対比する。
引用発明1-3における「平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリー」は、「第1の砥粒を含むスラリー」であるといえる。
また、引用発明1-3における「粗研磨工程」は、「1次研磨を行う工程」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1-3は、「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程」を有する点において共通するといえる。
c 本願発明1における「前記両面研磨装置を用い、前記第1の砥粒より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程」と、引用発明1-3における「前記粗研磨工程に続いて、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給しながら、前記半導体ウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程」を対比する。
引用発明1-3における「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液」は、「第2の砥粒を含むスラリー」であるといえる。
また、引用発明1-3では、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)の後で「仕上げ研磨」を行っているから、引用発明1-3における「仕上げ研磨工程」は、「前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨」する、「2次研磨を行う工程」であるといえる。
他方、引用発明1-3は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いたものと同じ両面研磨装置を用いるとは特定しない。
また、引用発明1-3は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において用いられるスラリーに含まれるコロイダルシリカ(「第2の砥粒」に対応)の平均粒径が、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いられるスラリーに含まれるコロイダルシリカ(「第1の砥粒」に対応)の平均粒径よりも小さいとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-3は、「第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程」を有する点において共通し、後述する相違点1-3-1及び1-3-2において相違するといえる。
d 本願発明1における「前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」と、引用発明1-3における「前記ロールオフ加工工程に続いて、前記半導体ウェーハの表面にエピタキシャル膜を形成する工程」とを対比する。
引用発明1-3では、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)のあと、片面CMP研磨を行うことなく、エピタキシャル膜を形成しているといえる。
また、引用発明1-3における「エピタキシャル膜を形成する工程」は「エピタキシャル層を成長させる工程」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明1-3は、「前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」を有する点において共通するといえる。
e 本願発明1の「前記1次研磨と前記2次研磨を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いてスラリーを変更して引き続いて行い、更に引き続いて洗浄後にエピタキシャル成長を行い」との発明特定事項と、引用発明1-3を対比する。
引用発明1-3では、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)に続いて「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)を実行しており、また、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いられるスラリーと「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において用いられるスラリーとは異なるものであるから、「前記1次研磨と前記2次研磨をスラリーを変更して引き続いて行」っているといえる。
他方、引用発明1-3は、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)と「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)を、「同一の両面研磨装置」の「同じ研磨布」を用いて行うとは特定しない。
また、引用発明1-3は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)に引き続いて、洗浄後にエピタキシャル成長を行うとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-3は、「前記1次研磨と前記2次研磨をスラリーを変更して引き続いて行」う点において共通し、後述する相違点1-3-1、1-3-3及び1-3-4において相違するといえる。
f 本願発明1の「前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径74nm?100nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」との発明特定事項と、引用発明1-3を対比する。
引用発明1-3では、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において「平均粒径30?100nmのコロイダルシリカを含む研磨スラリーを供給」しており、当該「平均粒径30?100nmのコロイダルシリカ」は「シリカ砥粒」であるといえる。
他方、引用発明1-3は、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いる研磨スラリーに含まれるコロイダルシリカの平均粒径が「74nm?100nm」であるとは特定しない。
また、引用発明1-3は、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において用いる研磨スラリーが「アルカリ性水溶液」であるとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-3は、「前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むスラリーを用い」る点において共通し、後述する相違点1-3-5において相違するといえる。
g 本願発明1の「前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径20nm?40nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いる」との発明特定事項と、引用発明1-3を対比する。
引用発明1-3では、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を供給」しており、当該「平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液」は「シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液」であるといえる。
他方、引用発明1-3は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において用いる研磨スラリーに含まれるコロイダルシリカの平均粒径が「20nm?40nm」であるとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明1-3は、「前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」る点において共通し、後述する相違点1-3-6において相違するといえる。
h 以上から、本願発明1と引用発明1-3は、下記(a)の点で一致し、下記(b)の点で相違すると認める。
(a)一致点
「エピタキシャルウェーハの製造方法であって、
研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程と、
第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程と、
前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程と
を有し、
前記1次研磨と前記2次研磨をスラリーを変更して引き続いて行い、
前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むスラリーを用い、
前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いることを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。」
(b)相違点
・相違点1-3-1
本願発明1では、「1次研磨」と「2次研磨」を、同一の両面研磨装置を用いて行うのに対し、引用発明1-3は、「1次研磨」(粗研磨)と「2次研磨」(仕上げ研磨)を、同一の両面研磨装置を用いて行うとは特定しない点。
・相違点1-3-2
本願発明1では、「2次研磨」において用いられるスラリーに含まれる「第2の砥粒」の平均粒径が、「1次研磨」において用いられるスラリーに含まれる「第1の砥粒」の平均粒径よりも小さいのに対し、引用発明1-3は、「2次研磨」(仕上げ研磨)において用いられるスラリーに含まれる「第2の砥粒」(コロイダルシリカ)の平均粒径が、「1次研磨」(粗研磨)において用いられるスラリーに含まれる「第1の砥粒」(コロイダルシリカ)の平均粒径よりも小さいとは特定しない点。
・相違点1-3-3
本願発明1では、「1次研磨」と「2次研磨」を、同じ研磨布を用いて行うのに対し、引用発明1-3は、「1次研磨」(粗研磨)と「2次研磨」(仕上げ研磨)を、同じ研磨布を用いて行うとは特定しない点。
・相違点1-3-4
本願発明1では、「2次研磨」に引き続いて「洗浄後」にエピタキシャル成長を行うのに対し、引用発明1-3では、「2次研磨」(仕上げ研磨)の後に「ロールオフ加工工程」を実行しており、「2次研磨」(仕上げ研磨)に引き続いて「洗浄後」にエピタキシャル成長を行わない点。
・相違点1-3-5
本願発明1では、「1次研磨」を行う工程において、第1の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径74nm?100nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いるのに対し、引用発明1-3では、「1次研磨」(粗研磨)を行う工程において、平均粒径30?100nmの第1の砥粒(コロイダルシリカ)を含む研磨スラリーを用いる点。すなわち、本願発明1と引用発明1-3では、「1次研磨」(粗研磨)において用いるスラリーに含まれる砥粒の平均粒径の範囲が異なり、また、引用発明1-3は、「1次研磨」(粗研磨)において用いるスラリーが「アルカリ性水溶液」であるとは特定しない点。
・相違点1-3-6
本願発明1では、「2次研磨」を行う工程において、第2の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径20nm?40nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いるのに対し、引用発明1-3では、「2次研磨」(仕上げ研磨)を行う工程において、平均粒径10?50nmのコロイダルシリカを含むアルカリ性水溶液を用いる点。すなわち、本願発明1と引用発明1-3では、「2次研磨」(仕上げ研磨)において用いるスラリーに含まれる砥粒の平均粒径の範囲が異なる点。
(イ)判断
a まず、相違点1-3-4について、検討する。
(a)引用発明1-3において相違点1-3-4に係る構成を採用するためには、「ロールオフ加工工程」を省略するか、あるいは、「ロールオフ加工工程」の実行順序を変更し、「1次研磨」(粗研磨)よりも前、又は「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行する必要があることは明らかである。
(b)そこで、まず、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を省略することを、当業者が容易に想到することができたかについて、検討する。
上記第5の1(1)アの引用文献1の記載より、引用発明1-1は、エピタキシャル成長を行う際、エピタキシャル膜を形成するために用いられる反応ガスが裏面に回り込むことによって、半導体ウェーハ裏面の外周部にもエピタキシャル膜が付着してエピタキシャルウェーハ全体の平坦度が悪化するという課題、及び、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャル膜表面を研磨処理した場合には生産コストの上昇や品質低下を招くという課題を解決するために、エピタキシャル膜形成前にあらかじめ半導体ウェーハ裏面の外周部をロールオフ加工することによって、エピタキシャル膜形成後にエピタキシャルウェーハの表裏面などを研磨することなく、高い裏面の平坦度を得ることを目的としたものであると認められる。
そして、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を省略した場合に、上記課題を解決できなくなることは明らかである。
したがって、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を省略することには、阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(c)次に、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を「1次研磨」(粗研磨工程)よりも前に実行することを、当業者が容易に想到することができたかについて、検討する。
上記第5の1(1)ウの引用文献1の記載より、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を「1次研磨」(粗研磨)よりも前に実行した場合には、ロールオフ領域が粗研磨により除去され、上記課題の解決が困難となることは明らかである。
そうすると、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を「1次研磨」(粗研磨)よりも前に実行することには、阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(d)次に、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行することを、当業者が容易に想到することができたかについて、検討する。
引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行した場合に、上記課題を解決できなくなることは明らかである。
したがって、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行することには阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、当業者が容易に想到することができたとはいえない。
(e)以上より、引用発明1-3において、「ロールオフ加工工程」を省略すること、「ロールオフ加工工程」を「1次研磨」(粗研磨)よりも前に実行すること、及び「ロールオフ加工工程」を「エピタキシャル層を成長させる工程」(エピタキシャル膜を形成する工程)よりも後に実行することは、いずれも阻害要因があり、かつ、動機付けがないから、引用発明1-3において相違点1-3-4に係る構成を採用することは、当業者が容易に想到しえたことであるとはいえない。
b 次に、相違点1-3-5及び1-3-6について検討する。
引用文献1ないし6には、相違点1-3-5及び1-3-6に係る構成について、記載も示唆もされていない。
そして、本願発明1は、相違点1-3-5及び1-3-6に係る構成を備えることにより、「フラットネスを維持しつつ、片面CMP研磨を行った場合と同レベルまで欠陥数を低減させることができる」(本願明細書の段落【0076】)という、引用文献1ないし6に記載された発明からは予測することのできない効果を奏するものである。
したがって、相違点1-3-5及び1-3-6に係る構成は、引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
c 以上より、相違点1-3-1ないし1-3-3について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1-3及び引用文献2ないし6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本願発明1と引用発明2との対比及び判断
(ア)本願発明1と引用発明2との対比
a 本願発明1は「エピタキシャルウェーハの製造方法」であり、引用発明2は「半導体ウェーハの製造方法」であるから、両者は「ウェーハの製造方法」である点において共通し、後述する相違点2-1において相違するといえる。
b 本願発明1における「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程」と、引用発明2における「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、平均粒径が0.5μmを超え2.0μm以下のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する粗研磨工程」を対比する。
引用発明2における「平均粒径が0.5μmを超え2.0μm以下のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液」は「第1の砥粒を含むスラリー」であるといえ、引用発明2における「粗研磨工程」は「1次研磨を行う工程」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明2は、「研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程」を有する点において共通するといえる。
c 本願発明1における「前記両面研磨装置を用い、前記第1の砥粒より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程」と、引用発明2における「記両面研磨装置を用い、平均粒径が0?0.5μm(0μmを含まず)のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液を供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する仕上げ研磨工程」とを対比する。
上記bのとおり、引用発明2における「平均粒径が0.5μmを超え2.0μm以下のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液」は「第1の砥粒を含むスラリー」であるといえ、引用発明2における「平均粒径が0?0.5μm(0μmを含まず)のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液」は、「前記第1の砥粒より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリー」であるといえる。
また、引用発明2における「仕上げ研磨工程」は、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する、「2次研磨を行う工程」であるといえる。
そうすると、本願発明1と引用発明2は、「前記両面研磨装置を用い、前記第1の砥粒より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程」を有する点において共通するといえる。
d 本願発明1における「前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」と、引用発明2を対比する。
引用発明2は、本願発明の「前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」に相当する構成を有しない。
そうすると、本願発明1と引用発明2は、後述する相違点2-1において相違するといえる。
e 本願発明1における「前記1次研磨と前記2次研磨を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いてスラリーを変更して引き続いて行い、更に引き続いて洗浄後にエピタキシャル成長を行い」との発明特定事項と、引用発明2における「前記粗研磨工程と仕上げ研磨工程を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いて研磨液を変更して引き続き行う」との発明特定事項を対比する。
引用発明2における「粗研磨」、「仕上げ研磨」及び「研磨液」は、それぞれ、「1次研磨」、「2次研磨」及び「スラリー」であるといえ、引用発明2は「前記1次研磨と前記2次研磨を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いてスラリーを変更して引き続いて行」うものであるといえる。
他方、引用発明2は、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)に引き続いて洗浄後にエピタキシャル成長を行うとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明2は、「前記1次研磨と前記2次研磨を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いてスラリーを変更して引き続いて行う」点において共通し、後述する相違点2-1において相違するといえる。
f 本願発明1の「前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径74nm?100nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」との発明特定事項と、引用発明2を対比する。
引用発明2では、「粗研磨」(「1次研磨」に対応)において「平均粒径が0.5μmを超え2.0μm以下のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液」を用いており、当該「研磨液」は「シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液」であるといえる。
他方、引用発明2は、当該「研磨液」に含まれるコロイダルシリカ(シリカ砥粒)の平均粒径が「74nm?100nm」であるとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明2は、「前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」る点において共通し、後述する相違点2-2において相違するといえる。
g 本願発明1の「前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、平均粒径20nm?40nmのシリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いる」との発明特定事項と、引用発明2を対比する。
引用発明2では、「仕上げ研磨」(「2次研磨」に対応)において「平均粒径が0?0.5μm(0μmを含まず)のコロイダルシリカとアルカリ溶液を混合して生成した研磨液」を用いており、当該「研磨液」は「シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液」であるといえる。
他方、引用発明2は、当該「研磨液」に含まれるコロイダルシリカ(シリカ砥粒)の平均粒径が「20nm?40nm」であるとは特定しない。
そうすると、本願発明1と引用発明2は、「前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い」る点において共通し、後述する相違点2-3において相違するといえる。
h 以上から、本願発明1と引用発明2は、下記(a)の点で一致し、下記(b)の点で相違すると認める。
(a)一致点
「ウェーハの製造方法であって、
研磨布が貼付された上下定盤と、該上下定盤間でシリコンウェーハを保持するキャリアとを具備する両面研磨装置を用い、第1の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記シリコンウェーハの両面を研磨する1次研磨を行う工程と、
前記両面研磨装置を用い、前記第1の砥粒より平均粒径の小さい第2の砥粒を含むスラリーを供給しながら、前記1次研磨を行った後のシリコンウェーハの両面を研磨する2次研磨を行う工程と、
を有し、
前記1次研磨と前記2次研磨を同一の両面研磨装置の同じ研磨布を用いてスラリーを変更して引き続いて行い、
前記1次研磨を行う工程において、前記第1の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用い、
前記2次研磨を行う工程において、前記第2の砥粒を含むスラリーとして、シリカ砥粒を含むアルカリ性水溶液を用いることを特徴とするウェーハの製造方法。」
(b)相違点
・相違点2-1
本願発明1は、「前記2次研磨を行った後のシリコンウェーハ表面に片面CMP研磨を行うことなくエピタキシャル層を成長させる工程」を有する「エピタキシャルウエーハの製造方法」であり、「2次研磨」のあと、「更に引き続いて洗浄後にエピタキシャル成長を行」うものであるのに対し、引用発明2はこれらの構成を特定しない点。
・相違点2-2
本願発明1では、「1次研磨」において用いられるスラリーに含まれるシリカ砥粒の平均粒径が「74nm?100nm」であるのに対し、引用発明2では、「1次研磨」(粗研磨)において用いられるスラリー(研磨液)に含まれるシリカ砥粒(コロイダルシリカ)の平均粒径が「0.5μmを超え2.0μm以下」である点。
・相違点2-3
本願発明1では、「2次研磨」において用いられるスラリーに含まれるシリカ砥粒の平均粒径が「20nm?40nm」であるのに対し、引用発明2では、「2次研磨」(仕上げ研磨)において用いられるスラリー(研磨液)に含まれるシリカ砥粒(コロイダルシリカ)の平均粒径が「0?0.5μm(0μmを含まず)」である点。
(イ)判断
相違点2-1ないし2-3について、併せて検討する。
引用文献1ないし6には、相違点2-1ないし2-3に係る構成を併せ持った構成については、記載も示唆もされていない。
そして、本願発明1は、相違点2-1ないし2-3に係る構成を併せ持つことにより、「フラットネスを維持しつつ、片面CMP研磨を行った場合と同レベルまで欠陥数を低減させることができる」(本願明細書の段落【0076】)という、引用文献1ないし6に記載された発明からは予測することのできない格別の効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明2並びに引用文献1及び引用文献3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本願発明1についてのまとめ
以上より、本願発明1は、引用文献1に記載された発明(引用発明1-1ないし1-3)、引用文献2に記載された発明(引用発明2)、及び引用文献3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て備えたものである。
そうすると、本願発明1が、引用文献1に記載された発明(引用発明1-1ないし1-3)、引用文献2に記載された発明(引用発明2)、及び引用文献3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願発明2及び3は、引用文献1に記載された発明(引用発明1-1ないし1-3)、引用文献2に記載された発明(引用発明2)、及び引用文献3ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
上記のとおり、本願発明1ないし3は、引用文献1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第8 当審拒絶理由についての判断
1 理由1(進歩性)について
上記のとおり、本願発明1ないし3は、引用文献1、2、4及び5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、当審拒絶理由の「理由1」によっては、本願を拒絶することはできない。

2 理由2(明確性)について
当審拒絶理由の「2.理由2(明確性)について」において、本願の請求項5に係る発明は明確でない旨が指摘された。
これに対し、平成29年8月22日付け手続補正により、請求項5が削除されたため、当審拒絶理由の「理由2」は解消した。

3 当審拒絶理由についてのまとめ
以上のとおり、当審拒絶理由の「理由1」及び「理由2」によっては、本願を拒絶することはできない。
そうすると、もはや、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第9 結言
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-02 
出願番号 特願2015-85606(P2015-85606)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 鈴木 匡明
特許庁審判官 加藤 浩一
須藤 竜也
発明の名称 エピタキシャルウェーハの製造方法  
代理人 好宮 幹夫  
代理人 小林 俊弘  

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