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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1332952
審判番号 不服2016-334  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-07 
確定日 2017-09-27 
事件の表示 特願2011-191071「通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 55426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は,平成23年9月1日に出願され,平成27年7月30日付けで拒絶理由が通知され,同年10月6日付けで意見書とともに手続補正書が提出され,同年11月10日付けで拒絶査定され,平成28年1月7日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正され,同年10月13日付けで拒絶理由を当審から通知するとともに,同日付けで当審が平成28年1月7日付けの手続補正を却下し,平成28年12月2日付けで意見書とともに手続補正書が提出され,平成29年2月20日付けで拒絶理由(最後)を当審から通知し,同年4月21日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。
第2 当審から通知した拒絶理由の概要
1 平成28年10月13日付け拒絶理由の概要
平成28年1月7日付け手続補正は却下された。
よって,本件出願の請求項1から8に係る発明は,平成27年10月6日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1から8に記載された事項により特定されるとおりのものである。
なお,請求項1から8に係る発明を,請求項の番号に従って,「本願第1発明」などといい,「本願第1発明から本願第8発明」を併せて「本願発明」という。
○ 本件出願を拒絶すべき理由について
[理由1](進歩性)
本件出願の下記の発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
○ 理由1(29条2項)に関し
1.本願第1発明について
原査定の理由で「引用文献1」として引用された特開2009-171409号公報には図面とともに次の事項が記載されている。
この拒絶理由で引用する引用文献については,後記「当審拒絶理由の引用文献等一覧」を参照。
本願第1発明は,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
2.本願第7発明について
本願第7発明についても,上記「1.」に述べたのと同様の理由を有するので,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
3.本願第2発明から本願第6発明,及び本願第8発明について
本願第2発明から本願第6発明,及び本願第8発明も,本願第1発明と同じく,引用文献1記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
*****当審拒絶理由の引用文献等一覧
1.特開2009-171409号公報(平成21年7月30日公開。「引用文献1」,原査定の理由で引用。)
2.?5.省略
6.特開2010-258619号公報(平成22年11月11日公開。「引用文献6」として,この拒絶理由で新たに引用。)
7.特開2011-135166号公報(平成23年7月7日公開。「引用文献7」として,この拒絶理由で新たに引用。)
2 平成29年2月20日付け拒絶理由(最後)の概要
理 由
<< 最 後 >>
[理由1](実施可能要件)
本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由2](サポート要件)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由3](明確性)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<最後の拒絶理由通知とする理由>
この拒絶理由通知は、当審からの平成28年10月13日付け拒絶理由通知(最初)(「当審拒絶理由通知1」)に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものである。
なお,この拒絶理由は,当審拒絶理由1が解消したことを前提としていない。つまり,この拒絶理由通知における理由を解消することが,同時に,当審拒絶理由通知1も解消することを意図しない。
補正を検討する際には,特許法第17条の2各項の規定とともに当審拒絶理由通知1における理由にも留意されたい。
第3 本件補正及び本願発明
1 本件補正の概要
平成29年4月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は,当審からの平成29年2月20日付け拒絶理由通知(最後)に応じたものであって,本件補正によって補正された特許請求の範囲における請求項1の記載は,次の[本件補正前](平成28年12月2日付け手続補正)から[本件補正後]のとおりのものとなった。(下線は請求人が付与。)
[本件補正前]
【請求項1】
基地局に接続して通信する通信装置であって、
通信相手装置の機器識別子を取得する取得手段と、
前記基地局の消滅を検知する検知手段と、
前記基地局の消滅が検知された場合に、前記取得手段により取得した機器識別子を用いて、前記基地局の消滅前に通信していた通信相手装置であって、無線ネットワークを構築していない通信相手装置を検出する検出手段と、
前記基地局の消滅が検知され、かつ、前記検出手段により前記通信相手装置が検出された場合、前記通信装置と前記通信相手装置とのいずれが新たな基地局となるかを決定する決定手段と、
前記決定手段による決定に応じて、前記通信装置と前記通信相手装置との間の通信を再開するための処理を行う再開手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
[本件補正後]
【請求項1】
基地局に接続して通信する通信装置であって、
通信相手装置の機器識別子を取得する取得手段と、
前記基地局の消滅を検知する検知手段と、
前記基地局の消滅が検知された場合に、前記基地局の消滅前に通信していた前記通信相手装置を前記取得手段により取得した機器識別子を用いて検出する検出手段と、
前記基地局の消滅が検知され、かつ、前記検出手段により前記通信相手装置が検出された場合、前記通信装置と前記通信相手装置とのいずれが新たな基地局となるかを決定する決定手段と、
前記決定手段による決定に応じて、前記通信装置と前記通信相手装置との間の通信を再開するための処理を行う再開手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
以上によれば,本件補正は,請求項1について,明りょうでない記載の釈明(特許法第17条の2第5項第4号)を目的としている。
また,本件補正が,特許法第17条の2第3項及び同条第4項の規定に違反するものであるということもできない。
2 本願発明
したがって,本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記[本件補正後]に記した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
平成29年2月20日付け拒絶理由通知書(最後)(以下「当審拒絶理由通知2」という。)において,「当審拒絶理由通知2は,平成28年10月13日付け拒絶理由通知(最初)(以下「当審拒絶理由通知1」という。)が解消したことを前提としていない。つまり,この拒絶理由通知における理由を解消することが,同時に,当審拒絶理由通知1も解消することを意図しない。補正を検討する際には,特許法第17条の2各項の規定とともに当審拒絶理由通知1における理由にも留意されたい。」との事項を,当審は付記した。(上記第2の「2 平成29年2月20日付け拒絶理由(最後)の概要」参照。)
そこで,以下において,当審拒絶理由通知1における「理由1」(上記第2の「1 平成28年10月13日付け拒絶理由の概要」参照。)が解消したか否かを検討する。
第4 引用文献及び引用発明等
1 引用文献1記載事項及び引用発明
当審拒絶理由通知1において,「引用文献1」として引用した「特開2009-171409号公報」(平成21年7月30日公開)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)
(1) 記載事項1
【0001】
本発明は、無線通信端末と複数の無線通信端末間での無線通信方法に関し、特に無線ネットワーク圏外へ移動した場合であっても、無線通信端末間の通信を継続することができる無線通信端末及び無線通信方法に関する。
(2) 記載事項2
【0004】
無線LAN通信方式では、アクセスポイントと呼ばれる無線LAN基地局装置との通信リンクを確立することによって、同一アクセスポイントに帰属している通信相手先無線LAN端末と通信を行うインフラストラクチャモード(基地局通信)と、通信相手先無線LAN端末と直接通信リンクを確立することにより通信を行うアドホックモード(端末間通信)がある。
【0005】
無線LAN端末において、これら通信モードを切り換えて通信相手先無線LAN端末との通信を継続するためには、無線LAN端末の利用者による再接続のための手順や設定が必要となる。例えば、特許文献1に開示された無線LAN端末は、ビーコン受信手段がアクセスポイントからのビーコンを受信し、タイミング検出手段がビーコン受信のタイミングを検出し、モード切換手段が、ビーコン受信間隔が所定の時間経過した場合に、通信モードを切り換えるため、通信相手先からビーコン信号が到達しなくなった場合に他の通信モードに自動的に切り換えることができる。
【0006】
また、この無線LAN端末は、予め登録されているアクセスポイントの識別情報を含むビーコン信号が受信された場合に、インフラストラクチャモードに切り換えるので、通信モード切換後に確実にアクセスポイントに接続可能とされるとともに、不要な切換動作を防止することができるという利点があった。
(3) 記載事項3
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の無線LAN端末は、アドホックモードに切り換えた後に所望の無線LAN端末に接続するためには、予め識別情報や、認証及び暗号化のための鍵情報を登録しておく必要があり不便であった。特に、事前に情報を知りえない無線LAN端末とアドホックモードで接続しようとする場合には、その都度登録操作を行う必要があり、利用者にとっての利便性を低下させていた。
【0009】
また、予め識別情報を登録していない場合であっても、認証及び暗号化の設定が施されていない無線LAN端末であれば接続することが可能であるが、その場合、通信の暗号化や、接続相手先端末を認証することができず、安全な通信を行うことができなかった。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、事前に識別情報や鍵情報を登録する操作を要することなく、安全にアドホックモードでの通信が可能な無線通信端末及び無線通信方法を提供することを目的とする。
(4) 記載事項4
【0033】
図1は、本発明の一実施の形態に係る無線通信端末が無線通信システムにおいてインフラストラクチャモード(基地局通信)で接続される構成の一例を示す図である。同図において、本実施の形態の無線通信端末101及び102は無線通信システム100に含まれる。また、無線通信システム100には無線アクセスポイント103も含まれる。なお、この図では説明の便宜上2つの無線通信端末を示しているが、3つ以上の無線通信端末から構成される場合もある。
【0034】
無線通信端末101及び102は、携帯電話やPDAなど電話機能や無線通信機能などの各種機能を備えている。無線アクセスポイント103は、例えばIEEE802.11にて規定される無線LANを構築するためのアクセスポイントであり、無線通信端末101の利用者の自宅等に設置されたり、公衆の場に設置されたりする。無線エリア104は、無線アクセスポイント103によって管理され構築される無線通信可能な範囲である。なお、無線エリア104は「無線ネットワーク」の一例である。無線アクセスポイントによって構築されるネットワークは「インフラストラクチャネットワーク」と呼ばれる。無線アクセスポイント103は定期的にビーコン信号を送信する。無線通信端末101及び102は、無線アクセスポイント103から送信されたビーコン信号を受信することで無線エリア104の圏内に位置することを把握する。
(5) 記載事項5
【0037】
(無線通信端末の構成)
図3は、本実施の形態の無線通信端末101の概略構成を示すブロック図である。同図において、無線通信端末101は、通信部11、端末識別子記憶部12、リンク切断検出部13、無線制御部14、ネットワーク検索部15、識別子照合部16及びサーバ制御手部17(正>“サーバ制御部17”)を備えている。
【0038】
通信部11は、例えば無線LANデバイスであり、無線制御部14からの指示により、無線アクセスポイント103や、無線通信端末102を含む外部端末110との接続を確立する。また、ネットワーク検索部15からの指示により、近隣の無線ネットワークの検索を行い、検索結果を出力する。また、外部端末110からのデータフレームを受信し、データフレームの送信元の端末識別子を端末識別子記憶部12に入力する。また、無線アクセスポイント103や外部端末110との通信リンクが切断された場合にリンク検出部13(正>“リンク切断検出部13”)に通知する。また、外部端末110から受信した要求データをサーバ制御部17に入力する。
【0039】
端末識別子記憶部12は、通信部11から入力された外部端末110の端末識別子を記憶する。また、識別子照合部16及びサーバ制御部17からの問い合わせに対し、記憶している端末識別子情報を出力する。リンク切断検出部13は、通信部11におけるリンク状態を監視し、通信リンクが切断されたことを検出すると、無線制御部14に通知する。
【0040】
無線制御部14は、ネットワーク検索部15に無線ネットワークの検索を指示し、検索結果を得て、その検索結果を識別子照合部16に入力し、発見した無線ネットワークの無線識別子と端末識別子記憶部12に記憶された端末識別子とを照合させる。また、識別子照合部16の照合結果から、記憶された端末識別子と一致する無線識別子の無線ネットワークが見つかった場合は通信部11を指示し、発見した無線ネットワークに接続させる。また、前記の照合結果から、記憶された端末識別子と一致する無線識別子の無線ネットワークが見つからない場合は通信部11に自端末(無線通信端末101)の端末識別子をアドホックモードにおける無線識別子として設定し、アドホックネットワークの構築を指示する。また、通信部11に外部端末110からの接続要求があった場合、接続要求元の端末識別子を取得し、識別子照合部16に入力し、接続要求元の端末識別子と端末識別子記憶部12に記憶された端末識別子とを照合させる。この照合の結果、一致しない場合には通信部11に外部端末110からの接続を拒否するように指示を入力する。
【0041】
ネットワーク検索部15は、リンク切断検出部13によって通信部11と無線アクセスポイント103とのリンクが切断されたときに無線ネットワークの検索を行い、発見した無線ネットワークの無線識別子を含む検索結果を無線制御部14に入力する。無線ネットワークの検索は、通信部11にプローブ要求を送信させ、プローブ応答及びビーコン信号を、通信部11を介して受信することにより行う。識別子照合部16は、ネットワーク検索部15によって発見される無線ネットワークの無線識別子と端末識別子記憶部12に記憶される端末識別子との照合を行い、照合した結果を無線制御部14に入力する。
【0042】
サーバ制御部17は、サーバ機能の動作状態を有効又は無効に切り替えるように制御を行う。また、無線制御部14からの問い合わせ指示に応じてサーバ機能が有効であるか無効であるかを示す情報を出力する。また、通信部11からサーバ機能への要求を受信すると、要求元端末の端末識別子が端末識別子記憶部12に記憶されているかどうかを識別子照合部16に照合させ、記憶されている場合には受信した要求に対する応答を、通信部11を介して送信する。また、照合の結果、要求元端末の端末識別子が端末識別子記憶部12に記憶されていない場合は受信した要求を拒否する。
(6) 記載事項6
【0043】
(アドホックモードでの再接続方法)
次に、無線通信端末101の動作の一例を説明するとともに、合わせて無線通信端末101におけるアドホックモードでの再接続方法について詳述する。図4は、無線通信端末101及び102のアドホックモードでの再接続動作手順の一例を示すフローチャートである。ここで、無線通信端末101は、無線通信端末102と無線アクセスポイント103を介してインフラストラクチャモードで接続され、相互通信を行える状態である。ここで行われる通信データとしては、電話のための音声パケット、対戦ゲームのための制御コマンド、マルチメディアデータの転送など、様々に考えられるが、通信データの種別は特に限定しない。
【0044】
通信部11は、無線通信端末102からの何等かのデータフレームを受信した場合(ステップS101)、受信したデータフレームのヘッダに含まれる送信元のMAC(Media Access Control)アドレスを無線通信端末102の端末識別情報として、端末識別子記憶部12に記憶させる(ステップS102)。なお、このデータ受信は、無線通信端末101から送信する要求に対する無線通信端末102からの応答であってもよいし、無線通信端末102からの要求であってもよい。また、無線通信端末102からの2回目以降のデータフレームの受信であれば、端末識別子記憶部12に無線通信端末102のMACアドレスが既に登録されているため再度登録する必要はない。
【0045】
リンク切断検出部13は、通信部11における通信リンクが確立されている間は常に状態を監視している(ステップS103のNoでステップS101に戻るループ)。無線通信端末101が無線アクセスポイント103の無線エリア104の圏外に移動し、通信リンクが切断された場合(ステップS103の判定でYesの場合)、リンク切断検出部13は無線制御部14にリンク切断を通知し、無線制御部14は、ネットワーク検索部15に無線ネットワークの検索を指示する(ステップS104)。ネットワーク検索部15は通信部11にプローブ要求の送信を指示し、通信部11からの応答が入力されることによって検索結果を得る。
【0046】
通信部11は、ネットワーク検索部15からのプローブ要求の送信を指示されると、プローブ要求を送信する。このとき、近隣に無線通信端末が存在しない場合はプローブ応答が受信されない。また、アドホックモードの無線通信端末102が存在する場合は通信部11が送信したプローブ要求を無線通信端末102が受信し、無線通信端末102はプローブ応答を送信する。プローブ応答は無線通信端末101の通信部11によって受信される。このプローブ応答には、無線ネットワークの無線識別子としてBSSID(Basic Service Set Identifier)が含まれている。
【0047】
ネットワーク検索部15が検索結果を無線制御部14に入力すると、無線制御部14は、識別子照合部16に対し、検索された無線ネットワークのBSSIDが端末識別子記憶部12に記憶されているMACアドレスのいずれかと一致するか否かの判断を要求する(ステップS105)。識別子照合部16によって一致するMACアドレスがあると判断された場合(ステップS105でYesの場合)、無線制御部14は、一致するMACアドレスをアドホックモードにおけるBSSIDとして設定し(ステップS106)、アドホックモードへの切り替えを通信部11に指示する(ステップS107)。
【0048】
一方、識別子照合部16によって一致するMACアドレスがないと判断された場合(ステップS105でNoの場合)、無線制御部14は、自端末(無線通信端末101)のMACアドレスをアドホックモードにおけるBSSIDとして設定し(ステップS108)、アドホックモードへの切り替えを通信部11に指示する(ステップS107)。アドホックモードに切り替わった場合、BSSIDを含むビーコン信号を周期的に送信しつつ、外部端末110(無線通信端末102)から送信されるビーコン信号を受信する。このとき、自端末のBSSIDと同一のBSSIDを含むビーコン信号を受信すると、外部端末110との間でアドホックモードでの接続が確立される。なお、アドホックモードへ切り替わった状態において、一定時間プローブ要求が受信されない場合は、接続対象の無線通信端末が存在しないと判断し、接続待ち状態を解除するのが好ましい。
【0049】
以上の動作手順により、無線通信端末101が圏外に移動し、続けて無線通信端末102が圏外に移動した場合は、無線通信端末101は接続先ネットワークを発見しないため自端末(無線通信端末101)のMACアドレスをBSSIDとしたアドホックモードに切り替わる。続けて無線通信端末102が、無線通信端末101の構築するアドホックネットワークを発見し、無線通信端末101のMACアドレスをBSSIDとしたアドホックモードに切り替わるため、無線通信端末101との通信リンクを確立することができる。すなわち、無線エリアの圏外に移動した場合であっても、自動的に無線通信端末101及び102の間で接続を確立することができる。また、無線通信端末102が圏外に移動した後に無線通信端末101が圏外に移動した場合であっても、同様の手順により、無線通信端末102のMACアドレスをBSSIDとするアドホックネットワークに、無線通信端末101が接続することができる。
(当審注<1> 上記【0037】には,「サーバ制御手部17」との記載がある。しかし,該記載が誤記であって,正しくは「サーバ制御部17」であることは,上記【0038】,【0039】,【0042】等の記載から明らかである。<2> 上記【0038】には,「リンク検出部13」との記載がある。しかし,該記載が誤記であって,正しくは「リンク切断検出部13」であることは,上記【0037】,【0039】,【0045】等の記載から明らかである。)
(7) 図面記載事項
図4として次の記載がある。

(8) 引用発明
以上によれば,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているということができる。
通信部(11),端末識別子記憶部(12),リンク切断検出部(13),無線制御部(14),ネットワーク検索部(15),識別子照合部(16)及びサーバ制御部(17)を備える無線通信端末(101)であって,
無線通信端末(101)は,無線通信端末(102)と無線アクセスポイント(103)を介してインフラストラクチャモードで接続され,相互通信を行える状態であり,
通信部(11)は,無線通信端末(102)からの何等かのデータフレームを受信した場合,受信したデータフレームのヘッダに含まれる送信元のMAC(Media Access Control)アドレスを無線通信端末(102)の端末識別情報として,端末識別子記憶部(12)に記憶させ,
無線通信端末(101)が無線アクセスポイント(103)の無線エリア(104)の圏外に移動し,通信リンクが切断された場合,リンク切断検出部(13)は無線制御部(14)にリンク切断を通知し,無線制御部(14)は,ネットワーク検索部(15)に無線ネットワークの検索を指示し,ネットワーク検索部(15)は通信部(11)にプローブ要求の送信を指示し,通信部(11)からの応答が入力されることによって検索結果を得,
識別子照合部(16)によって一致するMACアドレスがあると判断された場合,無線制御部(14)は,一致するMACアドレスをアドホックモードにおけるBSSIDとして設定し,アドホックモードへの切り替えを通信部(11)に指示し,
アドホックモードに切り替わった場合,BSSIDを含むビーコン信号を周期的に送信しつつ,無線通信端末(102)から送信されるビーコン信号を受信し,このとき,自端末のBSSIDと同一のBSSIDを含むビーコン信号を受信すると,無線通信端末(102)との間でアドホックモードでの接続が確立される
無線通信端末(101)。
2 引用文献6記載事項及び記載技術
当審拒絶理由通知1において,「引用文献6」として引用した「特開2010-258619号公報」(平成22年11月11日公開)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 記載事項1
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN規格であるIEEE802.11に代表される無線ネットワークは、機器の自由度が高い等の利点から、有線ネットワークに代わり普及しつつあり、利用されるアプリケーションも多種多様になっている。
(2) 記載事項2
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IEEE802.11のインフラストラクチャモードでは、先にアクセスポイント(AP)の動作を開始させ、予め設定した周波数にてアクセスポイントから周期的に報知情報(ビーコン(Beacon))を送信させる。ステーション(STA)は、アクセスポイントから送信されたビーコンを受信することによって通信相手であるアクセスポイントを発見する。
【0005】
一方、通信する機器についてアクセスポイント、ステーションの区別を予めすることなく、接続が完了してからのネゴシエーションによりアクセスポイント、ステーションを決定する方式が想定されている。この方式では、相手側がどの周波数で動作しているのか判らないため、周波数を切り換えながらビーコンなどの報知情報を送り、あるタイミングで互いの機器の周波数が一致した場合に初めて報知情報を受信することができ、接続を完了させることができる。
【0006】
しかしながら、この場合、アクセスポイントになるか、ステーションになるかは、接続時に各機器がどちらの役割を担っていたかによって決まってしまう。このため、どの機器が親機になり、どの機器が子機になるかは、ユーザの意思や、アプリケーション、現時点での他機器との接続状況とは関係なく、ランダムに決定されてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、報知情報を送信しながら通信相手を探す際に、いずれの装置が親機としての役割を担うかを確実に決定することが可能な、新規かつ改良された無線通信装置、無線通信システム、無線通信方法及びプログラムを提供することにある。
(3) 記載事項3
【0024】
<1.第1の実施形態>
(1)前提となる技術
IEEE802.11 WLANをベースとした機器接続が一般化している。IEEE802.11では、図1に示すように、1つの親機(AP)が複数の子機(STA-i,STA-j)と接続されてネットワークトポロジーを構成するインフラストラクチャモードがある。また、IEEE802.11では、親機を必要とせず、機器同士を直接接続可能なアドホックモードが存在する。なお、本明細書において、親機をアクセスポイント(AP)と称し、子機をステーション(STA)と称する場合がある。
【0025】
インフラストラクチャモードは、幅広く家庭の内外に普及しており、モバイル機器のインターネット接続手段の一つとして中核を担っている。インフラストラクチャモードは、アクセスポイント(AP;親機)を必要とする構成のため、子機同士を直接接続することはできない。アドホックモードは、機器間の接続は仕様上可能であるが、互換性、消費電力、使い勝手の観点での利便性が比較的低く、現時点で大幅な普及には至っていない。
【0026】
一方、近年のデバイス技術の進化により、図2に示すような、親機(AP)の機能と子機(STA)の機能の両方を備えた無線機器を想定している。図2に示すシステムでは、各機器が状況に応じて親機、子機のいずれにもなることができ、P2P(Peer to Peer)での接続が可能である。このため、インフラストラクチャモードでのアクセスポイントに相当するような特別な無線機がない環境においても、機器同士の接続が可能である。図2(A)では、無線機iが親機となり、無線機jが子機となった状態で無線機iと無線機jが接続されている。また、図2(B)では、無線機iが子機となり、無線機jが親機となった状態で無線機iと無線機jが接続されている。図2に示すシステムは、一方の無線機が親機(AP)となり、他方の無線機が子機(STA)となることで、幅広く利用され且つ互換性が確保されているインフラストラクチャモード動作での接続が可能である。
【0027】
図2のように機器が状況に応じて親機(AP)、子機(STA)の役割を決定するような構成で無線接続を実現するためには、状況の判断、すなわち、繋がる相手が何処に(どの周波数に)存在していて、どの機器が親機の役割をするか判断する必要がある。一方で、ユーザの使い勝手を向上するためには、接続に要する時間を最小限に抑える必要がある。
【0028】
図3は、図2に示すP2P接続のシステムにおいて、複数の周波数上での運用が可能な無線システムで接続時間を縮小するために、それぞれの機器が行う処理を示すフローチャートである。ここでは、図2に示す無線機iと無線機jが接続される場合に、無線機iで行われる処理を例に挙げて説明する。
【0029】
先ず、ステップS10において、無線機iは、自局の運用周波数周波数[fi(0)]で周期的メッセージであるビーコン(Beacon)を送信する。次に、ステップS12では、自局の運用周波数[fi(0)]上で、無線機iが送信したビーコンに対する他局(無線機j)の応答メッセージを待ち受ける。次に、ステップS14では、周波数を切換えて、他局の周波数上で他局が送信したビーコンを検索する。ステップS14の後はステップS10へ戻る。
【0030】
以上のように、無線機iは、ステップS10,12ではビーコンを送信して応答を待ち受ける親機として動作し、ステップS14ではビーコンを検索する子機として動作し、親機と子機の動作を繰り返し行う。図3の処理は、無線機jにおいても同様に行われる。
(4) 記載事項4
【0051】
また、電力制限状況によって親機・子機の動作モードを決定する場合、一方の機器がAC電源への接続が可能であり、他方がバッテリー駆動の場合、AC電源への接続が可能な機器の方が安定的に電力を供給できるため、AC電源への接続が可能な機器が親機となる。また、例えば、無線機i,jの双方がバッテリー駆動の場合、バッテリー残量がより多い方が親機として動作するように判断がなされる。
【0052】
また、優先度指数は、機器の種類によって決定される指数であり、例えば無線機iがテレビ受像機に含まれ、無線機jが映像を録画する録画装置に含まれる場合、これらの機器の種類によって優先度指数は予め決定される。テレビ受像機の方が録画装置よりも優先度指数が高い場合、無線機iと無線機jが接続される際には、テレビ受像機に含まれる無線機iが親機となり、録画装置に含まれる無線機jは子機となる。また、例えば無線機iがノート型パーソナルコンピュータであり、無線機jがモバイル機器である場合、いずれの機器が親機になるかは、各機器の優先度指数に従って決定される。この場合、ノート型パーソナルコンピュータが親機となり、モバイル機器が子機となる。各無線機は、予め設定された優先度指数を有している。
(5) 引用文献6記載技術
以上によると,引用文献6には次の技術(以下「引用文献6記載技術」という。)が記載されているといえる。
「各無線機器が状況に応じて親機,子機のいずれにもなることができ,インフラストラクチャモードでのアクセスポイントに相当するような特別な無線機がない環境においても,機器同士の接続が可能であり,一方の無線機が親機(AP)となり,他方の無線機が子機(STA)となることで,幅広く利用され且つ互換性が確保されているインフラストラクチャモード動作での接続が可能であって,電力制限状況によって親機・子機の動作モードを決定する場合,一方の機器がAC電源への接続が可能であり,他方がバッテリー駆動の場合,AC電源への接続が可能な機器の方が安定的に電力を供給できるため,AC電源への接続が可能な機器が親機となる。また,例えば,無線機i,jの双方がバッテリー駆動の場合,バッテリー残量がより多い方が親機として動作するように判断がなされる」技術。
3 引用文献7記載事項及び記載技術
当審拒絶理由通知1において,「引用文献7」として引用した「特開2011-135166号公報」(平成23年7月7日公開)には,図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 記載事項1
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信方法、プログラム、および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11に代表される無線LAN(Local Area Network)システムは、機器の自由度が高い等の利点から、有線ネットワークに代わり普及しつつある。例えば、特許文献1に記載されているように、IEEE802.11で規定される無線LANシステムは、親機として動作するアクセスポイント、および子機として動作する複数のステーションからなる無線通信装置のグループで構成され、1のアクセスポイントは複数のステーションが接続される。このような無線LANシステムにおいては、アクセスポイントが親機として動作すること、およびステーションが子機として動作することが決定されていた。
【0003】
一方、Wi-Fi Allianceで策定中のWi-Fi Directは、複数の機器が直接接続して通信グループを形成するためのものであり、通信グループを形成する際に各機器が親機または子機のいずれとして動作するかを決定する。例えば、各機器は、自機が親機として動作することの優先度を示す重みを他の機器と交換し合い、自機の重みと他の機器の重みを比較することにより、親機または子機のいずれとして動作するかを決定する。
(2) 記載事項2
【0024】
<1.本発明の一実施形態の概要>
図1は、無線ノードの配置例を示した説明図である。図1に示した例では、無線通信装置20Aの周囲に、アクセスポイント10、無線通信装置20B、無線通信装置20C、無線通信装置20D、および無線通信装置22などの無線ノードが存在する。また、各無線ノードは、親機として動作するための機能、子機として動作するための機能、または、親機として動作するための機能と子機として動作するための機能の双方を有する。
【0025】
例えば、アクセスポイント10は、親機として動作するための機能のみを有する。また、無線通信装置22、IEEE802.11に準拠したハードウェアを有し、子機として動作するための機能のみを有する。また、無線通信装置20A?20Dは、親機として動作するための機能と子機として動作するための機能の双方を有する。
【0026】
また、図1に示した例では、無線通信装置20Bは、親機として動作し、子機として動作する無線通信装置20Cと通信グループを形成している。また、無線通信装置20Dは、いずれの無線ノードとも接続されていない未接続状態である。
【0027】
なお、図1においては無線通信装置20を模式的に示しているが、無線通信装置20は、PC(Personal Computer)、携帯電話、携帯型音楽再生装置、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、家庭用映像表示装置、PDA(Personal Digital Assistants)、家庭用ゲーム機器、家電機器、携帯用映像処理装置、携帯電話、携帯用ゲーム機器などの情報処理装置であってもよい。
【0028】
ここで、本発明との比較例として、複数の無線通信装置24が通信グループを形成するための手順を説明する。
【0029】
図2は、比較例にかかる複数の無線通信装置24が通信グループを形成するための手順を示した説明図である。図2に示したように、無線通信装置24Aおよび無線通信装置24Bは、まず、デバイス情報やハードウェア情報などを交換する(S32)。例えば、無線通信装置24Aは、図2に示したように、自装置がAudio Devicesであること、スピーカーであること、およびAC電源による駆動であることなどを無線通信装置24Bに通知する。また、無線通信装置24Bは、自装置がAudio Devicesであること、電池駆動であること、およびオーディオプレーヤであることなどを無線通信装置24Aに通知する。
【0030】
続いて、無線通信装置24Aおよび無線通信装置24B間で、いずれが親機として動作するかの交渉が行われる(S34)。例えば、無線通信装置24Aおよび無線通信装置24Bの各々は、自機が親機として動作することの優先度を他方に送信し、自機が親機として動作することの優先度と、他方が親機として動作することの優先度を比較することにより役割を決定する。
【0031】
その後、無線通信装置24Aおよび無線通信装置24Bの各々は、S34において決定した親機または子機として動作し、通信グループを形成する(S36)。例えば、無線通信装置24Aが親機として動作する場合、無線通信装置24Aが親機として動作する旨を無線通信装置24Bに送信し、無線通信装置24Bが無線通信装置24Aの子機として参加する旨を無線通信装置24Aに送信する。
(3) 図面記載事項
図2として次の記載がある。

(4) 引用文献7記載技術
以上によると,引用文献7には,次の技術(以下「引用文献7記載技術」という。)が記載されているといえる。
「各無線ノードは,親機として動作するための機能,子機として動作するための機能,または,親機として動作するための機能と子機として動作するための機能の双方を有し,無線通信装置24Aおよび無線通信装置24Bは,まず,デバイス情報やハードウェア情報などを交換し(S32),無線通信装置24Aおよび無線通信装置24B間で,いずれが親機として動作するかの交渉が行われ(S34),例えば,無線通信装置24Aおよび無線通信装置24Bの各々は,自機が親機として動作することの優先度を他方に送信し,自機が親機として動作することの優先度と,他方が親機として動作することの優先度を比較することにより役割を決定する」技術。
4 周知技術
上記「引用文献6記載技術」,「引用文献7記載技術」等によれば,「「検出手段により通信相手装置が検出された場合,通信装置と前記通信相手装置とのいずれが新たな基地局となるかを決定する」ことにより,「通信装置」と「通信相手装置」との間の通信を開始する」技術は周知(以下「周知技術」という。)であったといわざるを得ない。
第5 当審の判断
1 対比
本願発明と引用発明を比較すると次のことがいえる。
(1) 引用発明における「無線アクセスポイント」は本願発明における「基地局」に相当する。
(2) 引用発明における「無線通信端末(101)」及び「無線通信端末(102)」の両者は,いずれも「通信装置」ということができる。
このことから,両者のうち,一方が,本願発明における「通信装置」ということができるのならば,他方が,本願発明における「通信相手装置」ということができることは明らかである。
このことを踏まえるならば,引用発明は,「無線通信端末(101)」に係るものであることから,「無線通信端末(101)」に対して,「無線通信端末(102)」が通信の相手装置となっていることは明らかである。
したがって,引用発明における「無線通信端末(101)」が本願発明における「通信装置」に相当し,また,引用発明における「無線通信端末(102)」が本願発明における「通信相手装置」に相当するということができる。
また,「無線通信端末(101)」が,本願発明と同様に,「基地局に接続して通信する」ものであるということができる。
(3) 引用発明における「リンク切断検出部(13)」は,「無線通信端末(101)が無線アクセスポイント(103)の無線エリア(104)の圏外に移動し,通信リンクが切断された場合」,「無線制御部(14)にリンク切断を通知」するものである。
ここで,該「無線通信端末(101)」からみると「無線アクセスポイント(103)」が「消滅」したということができるものである。
そうすると,該「リンク切断検出部」は,無線アクセスポイントの消滅を検出するものであるということができる。
したがって,該「リンク切断検出部(13)」は,本願発明における「前記基地局の消滅を検知する検知手段」に相当するということができる。
(4) 引用発明における「無線通信端末(101)」は,「通信リンクが切断された場合」,プローブ要求を送信し,応答が入力され,「識別子照合部(16)」によって「一致するMACアドレス」があるかを判断する。
ここで,該「通信リンクが切断された場合」は,本願発明における「基地局の消滅が検知された場合」に相当することは明らかである。
(5) 上記の判断に用いられる「MACアドレス」は,「端末識別子記憶部(12)」に記憶された「MACアドレス」を意味すると解されるところ,該「MACアドレス」は,「無線通信端末(101)」が「無線通信端末(102)からの何等かのデータフレームを受信した場合,受信したデータフレームのヘッダに含まれる送信元」のものであることは明白である。
そうしてみると,該「MACアドレス」は,「無線通信端末(101)」が「無線通信端末(102)」を識別するための「機器識別子」ということができ,「無線通信端末(101)」が「無線通信端末(102)」の「MACアドレス」を取得し,記憶する機能を有していることは当然である。
これらのことから,「無線通信端末(101)」は「MACアドレス」を取得する「取得手段」を有しているといえる。
したがって,引用発明は,本願発明と同様に,「通信相手装置の機器識別子を取得する取得手段」を有しているということができる。
(6) 上記(5)に記したことを踏まえれば,上記(4)に記した「一致するMACアドレス」が「無線通信端末(102)」の「MACアドレス」を意味することは明らかである。
そうすると,引用発明には,本願発明における「前記基地局の消滅が検知された場合に、前記基地局の消滅前に通信していた前記通信相手装置を前記取得手段により取得した機器識別子を用いて検出する検出手段」が開示されているということができる。
更に,引用発明においては,「一致するMACアドレス」があると判断された場合,「無線通信端末(102)」との間で接続が確立される。
ここで,上記(4)に記したことを踏まえれば,引用発明には,本願発明と同様に,「通信装置と通信相手装置との間の通信を再開するための処理を行う再開手段」が開示されているということができる。
(7) 以上によれば,本願発明と引用発明は,次の点で一致し,相違するということができる。
[一致点]
基地局に接続して通信する通信装置であって、
通信相手装置の機器識別子を取得する取得手段と、
前記基地局の消滅を検知する検知手段と、
前記基地局の消滅が検知された場合に、前記基地局の消滅前に通信していた前記通信相手装置を前記取得手段により取得した機器識別子を用いて検出する検出手段と、
前記通信装置と前記通信相手装置との間の通信を再開するための処理を行う再開手段と、
を有することを特徴とする通信装置。
[相違点]
本願発明は,「前記基地局の消滅が検知され、かつ、前記検出手段により前記通信相手装置が検出された場合、前記通信装置と前記通信相手装置とのいずれが新たな基地局となるかを決定する決定手段」を有するのに対し,引用発明は,「基地局の消滅」を検知し,「検出手段により通信相手装置」を検出しているが,このように「検知」し,かつ,「検出」した場合,「通信装置と通信相手装置とのいずれが新たな基地局となるかを決定する決定手段」を有することの特定がない点。(相違点1)
そして,本願発明では,上記相違点1とした「決定手段」の決定に応じて,「再開手段」が「通信装置と通信相手装置との間の通信を再開するための処理を行う」のに対して,引用発明では,そのように行うことの特定がない点。(相違点2)
2 検討
相違点1及び2について検討する。
引用発明では,「通信を再開」するのに,「通信装置と通信相手装置との間」に直接通信リンクを確立する「アドホックモード」を用いている。(上記「第4」の1(2)参照。)
しかし,無線LANの技術分野において,「検出手段により通信相手装置が検出された場合,通信装置と前記通信相手装置とのいずれが新たな基地局となるかを決定することにより,「通信装置」と「通信相手装置」との間の通信を開始する」技術が周知(上記「第2」の4参照。)であったことに鑑みれば,通信を再開するのに,引用発明のように「アドホックモード」を用いるか,あるいは,周知技術を用いるかは当業者が適宜選択し得る設計的事項に過ぎない。
このことから,引用発明及び周知技術に基づいて,相違点1及び2のように構成することは,当業者が適宜なし得たものであるといわざるを得ない。
そして,本願発明のように構成したことによる効果も,引用発明及び周知技術から予測できる程度のものである。
3 まとめ
したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。
よって,本件補正によっても,当審拒絶理由通知1における理由1は依然解消していない。
第6 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許をすることができないものである。
したがって,他の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-28 
結審通知日 2017-07-31 
審決日 2017-08-14 
出願番号 特願2011-191071(P2011-191071)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 圭子石田 紀之小林 正明三枝 保裕  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 近藤 聡
山本 章裕
発明の名称 通信装置、通信装置の制御方法、およびプログラム  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 木村 秀二  
代理人 下山 治  
代理人 大塚 康徳  
代理人 永川 行光  

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