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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1333001
審判番号 不服2016-14873  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-04 
確定日 2017-10-24 
事件の表示 特願2012- 57589「入退場検出装置、及び、情報提供システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-191065、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年3月14日の出願であって、その手続の経緯は以下の通りである。

平成27年12月21日付け:拒絶理由の通知
平成28年 3月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 7月29日付け:拒絶査定
平成28年10月 4日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年11月29日 :前置報告


第2 原査定の概要

原査定(平成28年7月29日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

本願請求項1?10に係る発明は、以下の引用文献1?6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2003-150875号公報
2.特開2005-235166号公報
3.特開2002-123640号公報
4.特開2006-331142号公報
5.特開2003-288472号公報
6.特開2006-259908号公報


第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。


第4 本願発明

本願請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、審判請求時の補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される以下の通りのものである。

「【請求項1】
ガイド対象物が配置された施設に配置され、情報提供装置との距離が通信可能な範囲内である場合に該情報提供装置と通信して該情報提供装置を検出し、該検出の履歴に基づいて、該情報提供装置が該施設に入場したことと、該施設から退場したこととを区別して検出する検出手段と、
前記検出手段による検出に応答して、入場を検出した前記情報提供装置に、前記ガイド対象物に付与されている識別タグに記憶されている識別情報と該識別タグが付与されている前記ガイド対象物のガイドコンテンツとを含むガイド情報と、該ガイドコンテンツを出力する動作を実行させる制御アプリケーションとを、送信する送信手段と、を備える、
ことを特徴とする入退場検出装置。

【請求項2】
前記送信手段は、前記検出手段による前記情報提供装置の前記施設からの退場検出に応答して、前記施設から退場した旨を示す退場情報を該情報提供装置に送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の入退場検出装置。

【請求項3】
前記検出手段は、前記情報提供装置が備える表示装置のサイズ、解像度、縦横比を検出し、
前記送信手段は、前記検出手段で検出したサイズ、解像度、縦横比に対応する動作を実行する制御アプリケーションを送信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の入退場検出装置。

【請求項4】
情報提供装置と、
ガイド対象物が配置された施設に配置され、前記情報提供装置と通信して、該情報提供装置を検出し、該検出の履歴に基づいて、該情報提供装置が該施設に入場したことと、該施設から退場したこととを区別して検出し、該入場を検出した情報提供装置に、施設内に配置されている前記ガイド対象物に付与されている識別タグに記憶されている識別情報と該識別タグが付与されている前記ガイド対象物のガイドコンテンツとを含むガイド情報と、該ガイドコンテンツを出力する動作を実行させる制御アプリケーションとを、送信する入退場検出装置と、を備え、
前記情報提供装置は、
前記ガイド情報を、前記入退場検出装置と通信して受信する通信部と、
前記通信部で受信した前記ガイド情報を記憶する記憶部と、
前記ガイド対象物に付与された識別タグを検出し、該検出した識別タグに格納されている前記識別情報を受信する識別タグ検出部と、
前記識別タグ検出部で受信した識別情報に対応する前記ガイドコンテンツを前記記憶部から読み出して、提供するガイド情報提供部と、を備え、
前記通信部は、前記入退場検出装置との距離が通信可能な範囲内である場合に該入退場検出装置と通信を行い、該入退場検出装置に前記情報提供装置を検出させる、
ことを特徴とする情報提供システム。

【請求項5】
前記通信部は、前記入退場検出装置から前記情報提供装置が前記施設に入場したことを検出したときに送信されてくる制御アプリケーションと前記ガイド情報とを受信し、
前記記憶部は、前記通信部で受信した制御アプリケーションを記憶し、
前記ガイド情報提供部は、前記記憶部に記憶されている制御アプリケーションを実行することにより、前記識別タグ検出部で受信した識別情報に対応する前記ガイドコンテンツを前記記憶部から読み出して、提供する、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報提供システム。

【請求項6】
前記通信部は、前記入退場検出装置から、前記施設を退場したことを示す退場情報を受信し、
前記ガイド情報提供部は、前記通信部で受信した退場情報に応答して、前記記憶部に記憶されている前記ガイド情報と前記制御アプリケーションとの少なくとも一方を削除する、
ことを特徴とする請求項5に記載の情報提供システム。

【請求項7】
前記ガイド情報提供部は、表示装置を備え、該表示装置のサイズ、解像度、縦横比を検出し、検出したサイズ、解像度、縦横比に対応する画像を、前記ガイドコンテンツから生成して、該表示装置に表示させる、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の情報提供システム。 」


第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2003-150875号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ア)「この発明は、例えば、所定の施設内に設けられている対象物についての有料関連情報を利用できるようにする情報利用決済システム、携帯情報端末およびサーバ装置に関する。」(【0001】)

(イ)「図1に示すように、美術館の入口付近にはガイドフォンサービス受付STが設けられているとともに、出口付近にはガイドフォンサービス精算所EDが設けられている。ガイドフォンサービス受付STには、この第1の実施の形態のガイドフォンシステムのサーバ装置が設置される。
このサーバ装置は、詳しくは後述もするように、ガイドフォンサービスを実現するための音声ファイル、画像ファイル、管理ファイルを記憶保持しているものである。なお、図1は1フロアの美術館の見取り図を示している。しかし、美術館の中には、複数フロアに渡る大規模なものもあるが、大規模な美術館にも以下に説明するこの実施の形態のガイドフォンシステムをそのまま適用することができる。
そして、当該美術館の入館者は、入館後において、ガイドフォンサービスを利用したい場合には、ガイドフォンサービス受付STに設置されているサーバ装置から自己の携帯電話端末へと、例えば、BlurToothなどの所定の通信規格に応じた近距離無線通信を介して、ガイドフォンサービスを受けるために必要となるファイルをダウンロードする。ダウンロードするファイルには、前述もしたように、音声ファイル、画像ファイル、管理ファイルが含まれる。」(【0030】?【0032】)

(ウ)「図2は、この実施の形態のガイドフォンシステムのサーバ装置100を説明するための図である。図2に示すように、この実施の形態のサーバ装置100は、LCD101、キーインターフェース(以下、キーI/Fという。)102、キー操作部103、近距離無線通信部104、近距離無線通信用アンテナ105、制御部110、音声ファイル121、音声ファイル122、…、画像ファイル131を備えたものである。」(【0043】)

(エ)「そして、アンテナ105、近距離無線通信部104を通じて携帯電話端末からデータの送信要求を受信し、また、例えば、キー操作部103、キーI/F102を通じて言語の選択入力を受け付けると、サーバ装置100の制御部110は、選択された言語の音声ファイルを該当する磁気ディスクから読み出し、これを近距離無線通信部104、アンテナ105を通じて要求元の携帯電話端末に送信する。
同様に、制御部110は、画像ファイル131から画像ファイルを読み出し、これを近距離無線通信部104、105を通じて要求元の携帯電話端末に送信する。また、作品毎の音声ファイルの使用/未使用、および、作品毎の画像ファイルの購入/未購入を管理するための管理ファイルもこのサーバ装置100から要求元の携帯電話端末に送信される。」(【0049】?【0050】)

(オ)「なお、以下に説明するように、データ受信キー306は、サーバ装置100からのデータを提供を受ける場合に用いるものであり、説明開始キー307は、作品についての説明を受ける場合に用いるものである。そして、精算キー308は、退館時において、精算を行なう場合に用いるものである。
ガイダンスモードに切り替えられた後、データ受信キー306が押下されると、制御部210はデータの送信要求を形成し、これを近距離無線通信部225、アンテナ226を通じてサーバ装置100に送信する。これに応じて、サーバ装置100は、携帯電話端末200に対して、この第1の実施の形態の美術館に展示されている作品の音声説明を行なうための音声ファイルと、当該美術館に展示されている作品の画像ファイルと、これらを管理するための管理ファイルとを送信してくる。
携帯電話端末200は、サーバ装置100からの音声ファイル、画像ファイル、管理ファイルを受信し、これを自機の内部ファイル214に格納する。そして、内部ファイル214に格納した音声ファイル、画像ファイルの利用を可能にするとともに、その利用状態を管理ファイルにおいて管理する。」(【0082】?【0084】)

(カ)「そして、携帯電話端末200の使用者は、美術館内の作品の鑑賞中において、目的とする作品の作品番号をテンキー群303を通じて入力して説明開始キー307を押下すると、制御部210は、指示された作品番号の作品の音声ファイルを内部メモリ214のサウンドフォルダ214Sndから読み出し、これをデコードし、デジタル信号処理部203、音声出力部204を通じてスピーカ205に供給し、目的とする作品の音声による説明をスピーカ205から放音させるようにする。これにより、携帯電話端末200の使用者は、目的とする作品の説明音声を自己の携帯電話端末200のスピーカ205を通じて聴取することができる。」(【0089】)

上記(ア)?(カ)から、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「所定の施設内に設けられている対象物についての有料関連情報を利用できるようにするサーバ装置に関するものであって、
サーバ装置100は、LCD101、キーインターフェース(以下、キーI/Fという。)102、キー操作部103、近距離無線通信部104、近距離無線通信用アンテナ105、制御部110、音声ファイル121、音声ファイル122、…、画像ファイル131を備え、アンテナ105、近距離無線通信部104を通じて携帯電話端末からデータの送信要求を受信し、携帯電話端末200に対して、美術館に展示されている作品の音声説明を行なうための音声ファイルと、当該美術館に展示されている作品の画像ファイルと、これらを管理するための管理ファイルとを送信する、サーバ装置。」


2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2005-235166号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(キ)「本発明は、美術館、博物館等で閲覧者へ展示物についての必要な情報を案内したり、観光地で名所・旧跡等についての情報を案内をする案内システムに関する。」(【0001】)

(ク)「閲覧者が展示物の前で、その展示物に関する説明を希望する場合には、展示パネル9に付随した案内対象用ICタグ8dに携帯型端末装置6を近づける。これにより、図3(a)に示すように、携帯型端末装置6のリーダ/ライタ13からアンテナ12を介して送信している読込命令が、案内対象用ICタグ8dに受信されるので、同図(b)に示すように、ICタグ8dの内部に記憶されているコード情報が携帯型端末装置6に転送される。これにより、同図(c)に示すように、携帯型端末装置6の内部では、ICタグ8dから受信されたコード情報に対応し、且つICタグ8a,8b,8cのいずれか1つから読み取られた案内種別情報に対応する説明情報がメモリカード5から検索される。そして、検索された説明情報は携帯型端末装置6の表示装置14に表示される。」(【0017】)

3.引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2002-123640号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ケ)「本発明は、テーマパークやイベント会場、巨大ショッピングモール等における電子ガイドシステムに適用して好適な電子案内情報処理システム、情報配信装置、携帯端末装置及び電子案内情報処理方法に関するものである。」(【0001】)

(コ)「このシステム100では情報提供事業者17に情報配信装置19が設けられ、集客施設場所に関する案内情報を電子案内情報D1にしてデータ配信するようになされる。案内情報とは情報提供事業者側で作成された集客施設場所に係るアトラクション、レストランなどの詳細な説明情報や、その周辺の地図情報をいう。電子案内情報D1とは案内情報をデータ化して映像表示及び音声出力可能なようにしたものである。この実施形態で電子案内情報D1には専用のプログラム情報D2が一緒に付加されてデータ配信される。
一方、情報利用者側の各々には携帯端末装置#i(i=1?n)が準備され、情報配信装置19からデータ配信された電子案内情報D1を記録再生するようになされる。携帯端末装置#iでは電子案内情報D1を映像表示したり、それを音声出力するようになされる。このプログラム情報D2は各種の電子案内情報D1を携帯端末装置#iの表示部6に読み出したり、アトラクションやレストランなどを検索する際の制御手順を成すものである。各種案内情報を快適に検索・表示するためである。」(【0026】?【0027】)

(サ)「この出場口12付近には情報回収装置2が設けられ、携帯端末装置14に貸し出してあった電子案内情報D1を回収するようになされる。この際の情報回収に関しては、電子案内情報D1を出場口12で読出し禁止するような処理が施される。例えば、出場口12で電子案内情報D1を消去される。これと共に、情報利用者の集客施設の利用情報及び/又は集客施設場所10に関する宣伝広告情報を携帯端末装置14に書き込むような処理を施してもよい。利用情報は情報利用者に採って来場記念になるし、宣伝広告情報は情報提供事業者にとって次回の集客効果につながる。」(【0044】)

(シ)「その後、情報利用者が当該集客施設場所10から退場するときは、ステップC2でこの出場口12付近に設けられた情報回収装置2により、携帯端末装置14にダウンロードされていた電子案内情報D1を回収するようになされる。
この際の情報回収に関しては、ステップC21で電子案内情報D1を出場口12で消去される。これと共にステップC22で、情報利用者の集客施設の利用情報及び/又は集客施設場所10に関する宣伝広告情報を携帯端末装置14に書き込むようになされる。これにより、情報利用者は集客施設場所10から出場した後に利用情報を携帯端末装置14に表示したり、当該集客施設場所10の次回のアトラクションなどの宣伝広告情報を表示することができる。」(【0055】?【0056】)

4.引用文献4について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2006-331142号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(ス)「ネットワークを介して端末装置にコンテンツデータを提供する情報提供装置と、前記提供されたコンテンツデータを表示する前記端末装置と、を備える情報提供システムにおいて、
前記端末装置は、
前記コンテンツデータが表示される画面上における領域の解像度を示す解像度情報を取得する取得手段と、
前記取得された解像度情報を前記情報提供装置に送信する解像度情報送信手段と、を備え、
前記情報提供装置は、
前記送信された解像度情報を受信する解像度情報受信手段と、
前記受信された解像度情報と、前記コンテンツデータを構成する要素の表示属性を当該解像度情報に基づいて求めるための計算方法を示す計算情報と、に基づいて、前記表示属性を求め、当該表示属性を前記要素の表示属性として設定して前記解像度に応じたコンテンツデータを生成するコンテンツ生成手段と、
前記生成されたコンテンツデータを前記端末装置に送信するコンテンツ送信手段と、
を備えることを特徴とする情報提供システム。」(【請求項1】)

5.引用文献5について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2003-288472号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(セ)「また、テーマパーク内の各建物300には、RFID(Radio Frequency IDentification)非接触型ICタグからタグ情報を非接触で読み取るRFID検出部310と、RFID検出部310で読み取ったタグ情報をビジター管理サーバ200に送信する通信部320とが設置されている。特に、RFID検出部310は、ビジターが商品またはサービスを購入すると思われる箇所またはその付近、およびビジターが通行すると思われる箇所またはその付近(例えば、建物300の入口側および出口側)に設置されている。なお、RFID検出部310および通信部320は、図示しない制御系により制御が行われ、実際には、RFID検出システムとして構築されている。
次に、ビジターガイド装置100の構成を説明する。ビジターガイド装置100は、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯可能な情報通信端末であり、図1に示すように、ビジター管理サーバ200と無線により通信可能に接続する通信部110と、ヒューマンインターフェースとしてデータの入力が可能なキーボード等からなる入力部120と、通信部110で受信した各種の情報を表示する表示部130と、固有のタグ情報を記憶したRFID非接触型ICタグ140とで構成されている。」(【0035】?【0036】)

(ソ)「RFID検出処理は、RFID検出部310を用いてRFID非接触型ICタグ140からタグ情報を非接触で読み取ることにより、ビジターガイド装置100が接近したことを検出する処理であって、CPUにおいて実行されると、図2に示すように、まず、ステップS100に移行するようになっている。ステップS100では、建物300の入口側に設けられているRFID検出部310によりRFID非接触型ICタグ140を検出したか否かを判定し、RFID非接触型ICタグ140を検出したと判定したとき(Yes)は、ステップS102に移行して、そのRFID検出部310によりRFID非接触型ICタグ140からタグ情報を読み取り、ビジターが建物300に入場したことをタグ情報とともにビジター管理サーバ200に通知し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。
一方、ステップS100で、建物300の入口側に設けられているRFID検出部310によりRFID非接触型ICタグ140を検出しないと判定したとき(No)は、ステップS104に移行して、建物300の出口側に設けられているRFID検出部310によりRFID非接触型ICタグ140を検出したか否かを判定し、RFID非接触型ICタグ140を検出したと判定したとき(Yes)は、ステップS106に移行して、そのRFID検出部310によりRFID非接触型ICタグ140からタグ情報を読み取り、ビジターが建物300から退場したことをタグ情報とともにビジター管理サーバ200に通知し、一連の処理を終了して元の処理に復帰させる。」(【0041】?【0042】)

6.引用文献6について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2006-259908号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(タ)「そして、利用者が、移動先のブースにおけるブース入場端末7にICカード機能付携帯電話1を翳すと、上記施設入場ゲート6の場合と同様にして、ブース入場端末7は施設管理サーバ3に登録IDと自己の識別コードを送信する(ステップS15)。施設管理サーバ3は、この識別コードによって、ブース入場端末7からアクセスがあったことを認識すると、図6(c)の処理を実行する。すなわち、上記の通り、識別コードによって、アクセス元のブース入場端末7がどのブースのものであるかも判別できるので、利用者数52における該当ブースの利用者数を+1する(ステップS71)。
そして、利用者はこのブースを利用した後、このブースから退場する際には、ブース退場端末8にICカード機能付携帯電話1を翳す。これによって、施設管理サーバ3は上記図6(b)の処理を実行し、上記と同様、複数の候補ブースとその優先順位をICカード機能付携帯電話1に返信して表示させる。
利用者は、この表示を見て、次のブースへと移動し(ステップS18)、移動先のブースにおいてステップS15,S16の作業を行い、次の候補ブース情報を入手する。そして、帰る場合には(ステップS17,YES)、退場ゲートへ移動し(ステップS19)、施設退場ゲート9にICカード機能付携帯電話1を翳す(ステップS20)。ICカード機能付携帯電話1は、ICカードに記録されている登録IDを送信し、施設退場ゲート9は、この登録IDを自己の識別コードと共に施設管理サーバ3に送信する。施設管理サーバ3は、この識別コードによって、施設退場ゲート9からのアクセスであることを認識すると、図6(d)の処理を実行する。すなわち、テーブル50の入場者数51を-1する(ステップS72)。」(【0050】?【0052】)


第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(1-1)
引用発明に係る「携帯電話端末」は、上記摘記事項(カ)に記載されている様に「携帯電話端末200の使用者は、美術館内の作品の鑑賞中において、目的とする作品の作品番号をテンキー群303を通じて入力して説明開始キー307を押下すると、制御部210は、指示された作品番号の作品の音声ファイルを内部メモリ214のサウンドフォルダ214Sndから読み出し、これをデコードし、デジタル信号処理部203、音声出力部204を通じてスピーカ205に供給し、目的とする作品の音声による説明をスピーカ205から放音させるようにする。これにより、携帯電話端末200の使用者は、目的とする作品の説明音声を自己の携帯電話端末200のスピーカ205を通じて聴取することができる。」のであるから、本願発明1でいうところの『情報提供装置』に対応するといえる。

(1-2)
引用発明に係るサーバ装置100が携帯電話端末200へ送信する「音声ファイル」は、「美術館に展示されている作品の音声説明を行なうため」のものであり、当該「音声ファイル」は、上記摘記事項(カ)に記載されている様に「携帯電話端末200の使用者は、美術館内の作品の鑑賞中において、目的とする作品の作品番号をテンキー群303を通じて入力して説明開始キー307を押下すると、制御部210は、指示された作品番号の作品の音声ファイルを内部メモリ214のサウンドフォルダ214Sndから読み出し、これをデコードし、デジタル信号処理部203、音声出力部204を通じてスピーカ205に供給し、目的とする作品の音声による説明をスピーカ205から放音させるようにする。」ことを鑑みると、「音声ファイル」には「作品の作品番号」が付与されていることは明らかである。
そして、上記「作品の作品番号」は、美術館内の作品を識別(特定)するための情報であるから、いわゆる『識別情報』といえる。
なお、上記「作品」が本願発明1でいうところの『ガイド対象物』、上記「音声ファイル」が本願発明1でいうところの『ガイドコンテンツ』に対応することは明らかである。

したがって、引用発明において、「サーバ装置100は、携帯電話端末200に対して、美術館に展示されている作品の音声説明を行なうための音声ファイルと、当該美術館に展示されている作品の画像ファイルと、これらを管理するための管理ファイルとを送信する」のであるから、引用発明に係る「サーバ装置」は、本願発明1でいうところの『情報提供装置に、ガイド対象物に付与されている識別情報と該識別情報が付与されている前記ガイド対象物のガイドコンテンツとを含むガイド情報とを、送信する送信手段』を備えているといえる。

(1-3)
引用発明に係る「サーバ装置」は、上記摘記事項(イ)に記載されている様に「美術館の入口付近にはガイドフォンサービス受付STが設けられているとともに、出口付近にはガイドフォンサービス精算所EDが設けられている。ガイドフォンサービス受付STには、この第1の実施の形態のガイドフォンシステムのサーバ装置が設置される。」のであるから、本願発明1でいうところの『ガイド対象物が配置された施設に配置され』ていることは明らかである。

以上、上記(1-1)及び(1-3)で対比した様に、本願発明1と引用発明とは、

「ガイド対象物が配置された施設に配置され、
情報提供装置に、前記ガイド対象物に付与されている識別情報と該識別情報が付与されている前記ガイド対象物のガイドコンテンツとを含むガイド情報とを、送信する送信手段と、を備える、
ことを特徴とする装置。」

という点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明1は、『情報提供装置との距離が通信可能な範囲内である場合に該情報提供装置と通信して該情報提供装置を検出し、該検出の履歴に基づいて、該情報提供装置が該施設に入場したことと、該施設から退場したこととを区別して検出する検出手段』を備えた『入退場検出装置』であるのに対し、引用発明においては、かかる検出手段を備えておらず、また、入退場検出を目的とした装置でもない点。

(相違点2)
本願発明1は、『前記検出手段による検出に応答して、入場を検出した前記情報提供装置に、前記ガイド対象物に付与されている識別タグに記憶されている識別情報と該識別タグが付与されている前記ガイド対象物のガイドコンテンツとを含むガイド情報と、該ガイドコンテンツを出力する動作を実行させる制御アプリケーションとを、送信する送信手段』と特定されているのに対し、引用発明は、「携帯電話端末からデータの送信要求を受信」すると「携帯電話端末200に対して、美術館に展示されている作品の音声説明を行なうための音声ファイルと、当該美術館に展示されている作品の画像ファイルと、これらを管理するための管理ファイルとを送信」する点。

(相違点3)
本願発明1においては、識別情報は『識別タグに記憶されている』と特定されているのに対し、引用発明には、その旨特定されていない点。

(相違点4)
本願発明1に係る『送信手段』は、『ガイドコンテンツを出力する動作を実行させる制御アプリケーション』も情報提供装置に送信するのに対し、引用発明には、かかる事項が明示されていない点。

(2)判断

上記(相違点1)について判断する。

引用文献5及び6には、無線による通信機能を利用した入退場検出手段について開示されているものの、これらは、いずれも「入口」と「出口」に設けられた装置によって利用者の入退場を検出するものであり、本願発明1の様に『(情報提供装置を検出し、該)検出の履歴に基づいて、該情報提供装置が該施設に入場したことと、該施設から退場したこととを区別して検出する』ものではない。
また、拒絶の査定に引用されたその他の引用文献(2?4)にも、上記(相違点1)に係る事項は開示されていない。

さらに、引用発明は、上記摘記事項(イ)に記載されている様に「美術館の入口付近にはガイドフォンサービス受付STが設けられているとともに、出口付近にはガイドフォンサービス精算所EDが設けられている。ガイドフォンサービス受付STには、この第1の実施の形態のガイドフォンシステムのサーバ装置が設置される。」ことを前提とする発明であり、美術館への入館者は出口付近に設けられているガイドフォンサービス精算所EDで作品毎の音声ファイルの使用/未使用、および、作品毎の画像ファイルの購入/未購入を精算するのであるから、入口付近に設けられたガイドフォンサービス受付STに設置されるサーバ装置で、入館者の入退場管理を行う必要性も認められない。

よって、上記(相違点1)に係る事項は、引用発明及び引用文献2?6に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に想起し得たとはいえない。

したがって、その他の相違点を検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?6に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。

2.本願発明2から本願発明7について

本願発明1を直接的又は間接的に引用する本願発明2?本願発明3、及び独立請求項である本願発明4、並びに本願発明4を直接的又は間接的に引用する本願発明5?本願発明7のいずれの発明においても、『情報提供装置と通信して該情報提供装置を検出し、該検出の履歴に基づいて、該情報提供装置が該施設に入場したことと、該施設から退場したこととを区別して検出する』との発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2?6に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとは認められない。


第7 原査定について

・理由(特許法第29条第2項)

審判請求時の補正により、本願発明1?7は『情報提供装置と通信して該情報提供装置を検出し、該検出の履歴に基づいて、該情報提供装置が該施設に入場したことと、該施設から退場したこととを区別して検出する』との発明特定事項を備えるものとなっており、上記「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」で示した様に、本願発明1?7は、拒絶査定において引用された引用文献1?6に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-10 
出願番号 特願2012-57589(P2012-57589)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 佐藤 智康
貝塚 涼
発明の名称 入退場検出装置、及び、情報提供システム  
代理人 机 昌彦  
代理人 下坂 直樹  

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