• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01K
管理番号 1333017
審判番号 不服2017-1612  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-03 
確定日 2017-10-24 
事件の表示 特願2015-545070「熱検出システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 5日国際公開、WO2014/085071、平成28年 2月12日国内公表、特表2016-504575、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年11月11日(パリ条約による優先権主張 2012年11月30日(以下、「優先日」という。) 米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年5月31日付けで拒絶理由が通知され、平成28年9月7日付けで手続補正がなされたが、平成28年9月30日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成29年2月3日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年9月30日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

この出願の請求項1-19に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、引用文献1-4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2006-509995号公報
2.実願昭52-139363号(実開昭54-65906号)のマイクロフィルム
3.実願昭52-17272号(実開昭53-113205号)のマイクロフィルム
4.特表2010-535895号公報

第3 本願発明
本願の請求項1-19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明19」という。)は、特許請求の範囲の請求項1-19に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
耐火壁と、
前記耐火壁の完全に内側に存在する、温度検出先端端部を備えた熱センサと、
前記耐火壁の一部として突出耐火煉瓦と
を備え、前記突出耐火煉瓦が端壁を形成するブラインドホールにおいて前記突出耐火煉瓦が前記温度検出先端を取り囲む、ガス化器用の温度測定システム。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
a 「【0027】
ガス化装置10は、好ましくは鋼で形成され、内側耐火ライニング14と、供給インゼクタ20を支持する頂部ネック部18とを備えた外側反応容器又はシェル12を含む。耐火ライニング14(図1及び図2)は、例えば高温対面表面26を有する耐火レンガの高温対面層24と、耐火レンガの支持層30と、耐火レンガの最外層34とを含む。最外層34とガス化装置シェル12との間には、圧縮性の耐火断熱材38の層が設けられる。」

b 「【0029】
ガス化装置10には、複数の任意の適当な公知の商業的に入手可能な熱電対44(図2)が設けられる。熱電対44は、入口において任意の適当な公知の方式で公知の熱電対ノズル48に支持された端部分46を含み、ガス化装置シェル12内の熱電対開口49を貫通して延びる。熱電対ノズル48は、任意の適当な公知の方法でガス化装置シェル12に溶接される。耐火ライニング14内の熱電対空洞50を貫通して延びる熱電対44は、耐火ライニング14の高温対面表面26から後退して配置された自由端54を有する。
【0030】
熱電対空洞50(図2)は、高温対面レンガ層24内の空洞部分58、支持レンガ層30内の空洞部分60及び最外レンガ層34内の空洞部分62を含む。空洞部分62は、ガス化装置シェル12内の熱電対開口49とほぼ整列する。熱電対空洞50の周壁は、全体を参照符号64で示しており、空洞部分58、60、62の各々の壁又は周縁(図3?図5)を含むことが理解されるであろう。」

c 「【0043】
図6及び図7を参照すると、保護キャップ80は、熱電対空洞58の開口120(図7)を覆う。保護キャップ80は、熱電対44を保護し、熱電対空洞58内へのスラグ侵入を実質的に排除し、また熱電対空洞58を通してのガス化装置シェル12への熱の流れを制限する。保護キャップ80は、高温対面表面26(図6)において高温対面層24内にリセス嵌合されるのが好ましい。
【0044】
図11A、11B、11C及び11Dを参照すると、保護キャップ80は、高密度アルミナで形成できるほぼ円板状の構造体である。キャップ80は、前面82と、ほぼ平坦な垂直後面84と、前面及び後面間の周縁部86とを有する。前面82は、キャップが図8に示すような選択した向きにある時、下向き垂直方向において後面84から離れるように傾斜した上方スラグ反らせ部分90を含む。前面82はまた、スラグ反らせ部分90の下方に後退部分92を含む。この後退部分92は、キャップ80が図8に示すような選択した向きにある時、下方向において後面84に向けて傾斜する。スラグ反らせ部分90は、後退部分92よりも面積が小さいことが好ましい。」

d 「【0046】
一対の孔104及び106(図11A及び図11D)が、前面82を貫通して後面84まで延び、キャップ80が図6?図8の選択した向きにある時、前面82から後面84まで上向きに傾斜している。孔104及び106は、前面82の後退部分92(図11B)内に設置されるのが好ましい。2つの孔104及び106は、必要に応じて着脱時のキャップ80の取扱いを容易にすることができることに注目されたい。キャップ80内に単一の孔を設けることも可能である。また、キャップ80の後退部分92に単一の孔を設けることは、図示するような2つの孔104及び106を使用した場合に可能であるよりも大きな傾斜角をその孔に使用することを可能にする。孔のないキャップも可能であろう。」

e 「【0062】
以上の説明から明らかな本発明の幾つかの利点は、熱電対空洞内へのスラグの流入を減少又は防止することによって熱電対空洞内におけるスラグ堆積の問題を克服する熱電対及び熱電対空洞のための保護キャップを含む。別の利点は、保護キャップが、ガス化装置の反応室から熱電対空洞を通してガス化装置シェルに熱が伝達するのを減少させることである。さらに別の利点は、保護キャップがスラグ反らせ面と後退面とを有し、スラグ反らせ面がスラグをキャップの後退面から反らすことである。さらに別の利点は、キャップが熱電対空洞と連通した1つ又はそれ以上の孔を含み、熱電対がキャップの断熱効果の結果得られた補正温度ではなくて実際のガス化装置温度をモニタすることを可能にすることができることである。キャップ内の比較的小さな孔は、キャップが無い場合に起きるおそれのある熱電対に対する熱衝撃損傷の可能性を最少にする。」

上記a?dより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(括弧内は、認定に用いた引用文献1の記載箇所を示す。)。
「ガス化装置10は、内側耐火ライニング14と、シェル12を含み、
耐火ライニング14は、高温対面表面26を有する耐火レンガの高温対面層24と、耐火レンガの支持層30と、耐火レンガの最外層34とを含み(【0027】)、
耐火ライニング14内の熱電対空洞50を貫通して延びる熱電対44は、耐火ライニング14の高温対面表面26から後退して配置された自由端54を有し(【0029】)、
熱電対空洞50は、高温対面レンガ層24内の空洞部分58、支持レンガ層30内の空洞部分60及び最外レンガ層34内の空洞部分62を含み(【0030】)、
熱電対空洞58の開口120を覆う保護キャップ80を有し(【0043】)、
保護キャップ80は、高密度アルミナで形成できるほぼ円板状の構造体であり、前面82と、ほぼ平坦な垂直後面84と、前面及び後面間の周縁部86とを有し(【0044】)、一対の孔104及び106が、前面82を貫通して後面84まで延びている(【0046】)、
ガス化装置10。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「本考案は金属溶解炉に係り、特に溶融金属(以下溶湯という)の自動温度制御を行なうことができる改良した溶解炉に関するものである。」(第1頁第8-10行)

b 「ルツボ方式ではルツボ台1の中央部を貫通する熱電対2が溶湯9を収納するルツボ3の底部に外部から埋設されている。この熱電対2は楔状耐熱ブロック5によって保護されている。」(第3頁第3-6行)

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「本考案は鋳造用黒鉛または金属製のルツボに係り特に溶融金属(以下溶湯という)の温度制御を行なうことができる改良したルツボに関するものである。」(第1頁第8-11行)

b 「以下本案の一実施例を第2図に示した金属製ルツボの場合を参照して説明する。21は金属製のルツボで、このルツボ2の内壁面にはライニング22を施こしてある。ルツボ21の底部にルツボ21内に突出する熱電対収納部23を形成する。この収納部23にルツボ21の外方から熱電対24の端を埋込んである。尚熱電対24の埋込部より外部に出た保護ケースは断熱材で保護し、図示しない計器及び制御部に接続される。熱電対24の端部はできるだけ溶湯温度に接近させるようにする。そして収納部23は溶解作業に支障を及ぼさない程度に突出させる。」(第2頁第19行-第3頁第9行)

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
a 「【0011】
おそらく図2で最もよく図示されているとおり、第一段反応器部分14は、供給原料12を少なくとも部分的にガス化させることができる第一の反応ゾーン20を協調的に定義する複数の第一の内面18を持ちうる。第一段反応器部分14には、第一の内面18の本体部分18aを持つ本体22、および第一の内面18の入口部分18bを持つ一対の入口突出物24が含まれうる。少なくとも1つの入口26は、それぞれの入口突出物24上に配置することができ、それぞれの入口26は、供給原料12を第一の反応ゾーン20に放出するよう動作可能である。一実施態様において、入口突出物24は、実質的に同一の高さに位置する。」

b 「【0026】
耐熱材料42は、供給原料12のガス化に利用される熱から少なくとも部分的に金属容器40を保護するよう動作可能な任意の材料または材料の組合せで構成されうる。一部の実施態様において、耐熱材料42は、図2?4に図示したとおり、少なくとも部分的に金属容器40の内部を裏張りする複数の煉瓦44で構成されうる。金属容器40を保護するために、耐熱材料42は、実質的な変形や劣化なしに少なくとも30日間、2000°Fを超える温度に耐えるように適応させることができる。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「耐火ライニング14」、「自由端54」、「熱電対44」は、それぞれ、本願発明1の「耐火壁」、「温度検出先端端部」、「熱センサ」に相当する。

イ 引用発明の「耐火ライニング14内の熱電対空洞50を貫通して延びる熱電対44」は、「自由端54」が、「耐火ライニング14の高温対面表面26から後退して配置され」ているので、本願発明1の「前記耐火壁の完全に内側に存在する、温度検出先端端部を備えた熱センサ」に相当する。

ウ 引用発明の「耐火ライニング14」と「熱電対44」と「保護キャップ80」とを備えた、「ガス化装置10」は、以下の相違点を除いて、本願発明の「ガス化器用の温度測定システム」に相当する。

すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「耐火壁と、
前記耐火壁の完全に内側に存在する、温度検出先端端部を備えた熱センサとを備えた、
ガス化器用の温度測定システム。」

(相違点1)
本願発明1が、「前記耐火壁の一部として突出耐火煉瓦とを備え」るのに対して、引用発明は、「高密度アルミナで形成」された「熱電対空洞58の開口120を覆う保護キャップ80」を備える点。つまり、引用発明の「保護キャップ80」は、「高密度アルミナで形成」されたものであり、「耐火煉瓦」といえない。
(相違点2)
本願発明1は、「前記突出耐火煉瓦が端壁を形成するブラインドホールにおいて前記突出耐火煉瓦が前記温度検出先端を取り囲む」の対して、引用発明は、「保護キャップ80」が、「熱電対空洞58の開口120を覆う」が、「保護キャップ80は、」「ほぼ円板状の構造体」であり、「一対の孔104及び106が、前面82を貫通して後面84まで延びている」点。つまり、引用発明の「保護キャップ80」は、「熱電対空洞58の開口120を覆う」が、「保護キャップ80は、」「ほぼ円板状の構造体」であるから、「保護キャップ80」が「熱電対44」の「自由端54」を取り囲んではいない。

(2)判断
事案に鑑みて、上記相違点1,2についてまとめて検討する。
ア 引用文献1には、「保護キャップ80」を、「耐火ライニング14」の一部として、「耐火レンガ」で形成し、当該「耐火レンガ」が、端壁を形成するブラインドホールにおいて、「耐火レンガ」が「熱電対44」の「自由端54」を取り囲む構造とすることを示唆する記載はないから、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

イ 引用文献3には、熱電対24の端部をできるだけ溶湯温度に接近させるように、ルツボ21の底部にルツボ21内に突出する熱電対収納部23を形成し、この収納部23にルツボ21の外方から熱電対24の端を埋込む技術(上記「第4 3 b」)が記載されている。
ここで、引用文献3に記載されているように、熱電対の端部をできるだけ被測定物に接近させるという技術が公知だとしても、引用発明の「保護キャップ80」は、「一対の孔104及び106が、前面82を貫通して後面84まで延びて」いるものであり、そのことにより、実際のガス化装置温度をモニタすることを可能にすることができるのであるから(段落【0062】(上記「第4 1 e」))、引用発明の「保護キャップ80」に、引用文献3の突出する熱電対収納部を適用する理由はない。
さらに、引用文献3の熱電対24が埋め混まれたルツボ21は、鋳造用黒鉛または金属製のルツボであり(上記「第4 3 a」)、引用文献3に記載された突出する熱電対収納部を、引用発明である「ガス化装置10」に適用する動機付けとなる理由も見当たらない。

ウ 引用文献2には、熱電対2が、溶湯9を収納するルツボ3の底部に外部から埋設されている金属溶解炉(上記「第4 2」)が記載されているが、
上記イで検討したように、引用文献2に記載の技術を、引用発明に適用する動機付けとなる理由は見当たらない。

エ 引用文献4には、上記相違点1、2に係る本願発明1の「前記耐火壁の一部として突出耐火煉瓦とを備え、前記突出耐火煉瓦が端壁を形成するブラインドホールにおいて前記突出耐火煉瓦が前記温度検出先端を取り囲む」構成は記載されていない。

したがって、上記相違点1、2に係る本願発明1の構成は、上記アで検討したように、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、上記イ-エで検討したように、引用発明に、引用文献2-4に記載された技術を適用し、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

よって、本願発明1は、引用発明、引用文献1-4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2-9について
本願発明2-9も、上記相違点1、2に係る本願発明1の「前記耐火壁の一部として突出耐火煉瓦とを備え、前記突出耐火煉瓦が端壁を形成するブラインドホールにおいて前記突出耐火煉瓦が前記温度検出先端を取り囲む」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由によって、引用発明、引用文献1-4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明10-17、18-19について
本願発明10-17、18-19も、上記相違点1、2に係る本願発明1の「前記耐火壁の一部として突出耐火煉瓦とを備え、前記突出耐火煉瓦が端壁を形成するブラインドホールにおいて前記突出耐火煉瓦が前記温度検出先端を取り囲む」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由によって、引用発明、引用文献1-4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-19は「前記耐火壁の一部として突出耐火煉瓦とを備え、前記突出耐火煉瓦が端壁を形成するブラインドホールにおいて前記突出耐火煉瓦が前記温度検出先端を取り囲む」という構成、又は、それと同様の構成を有するものとなっており、
本願発明1-19は、引用発明、引用文献1-4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-10 
出願番号 特願2015-545070(P2015-545070)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平野 真樹  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
関根 洋之
発明の名称 熱検出システム  
代理人 特許業務法人平和国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ