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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01M
管理番号 1333041
審判番号 不服2016-6867  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-10 
確定日 2017-10-02 
事件の表示 特願2014-216552「漏水検知方法および漏水検知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日出願公開、特開2015- 38506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月11日に出願された特願2012?090602号の一部を、平成26年10月23日に新たに出願したものであって、平成27年7月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月4日付けで拒絶査定されたところ、同年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。その後当審において平成29年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年6月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1?7に係る発明は,平成29年6月22日付け手続補正により補正された請求項1?7に記載された事項により特定される発明である。そのうち,請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「 【請求項6】
振動センサと、タイマー管理機能を有するマイコンと、無線装置とを含む振動センサユニットと、
アンテナを含むアンテナユニットと、
を含み、
前記振動センサユニットを、地中に配置し、
前記アンテナユニットを、マンホール設置箇所以外の地表に配置し、
前記振動センサユニットと前記アンテナユニットとを、ケーブルで接続し、
前記振動センサユニットは、
前記マイコンにより、前記振動センサの稼働時間と、前記振動センサの稼働時間とは異なる時間である前記無線装置の稼働時間とを設定し、設定された前記振動センサの稼働時間であれば、前記振動センサで計測される振動の測定データを収集し、設定された前記無線装置の稼働時間であれば、前記収集した測定データを、地表に設置した前記アンテナユニットを介して、
短距離無線通信により、地上のコントローラユニットにデータ送信することで、データの取り出しを行うことを特徴とする、漏水検知方法に用いる漏水検知装置。」

第3 引用例
1 引用例1
(1)引用例1に記載の事項
平成29年4月21日付け拒絶理由において引用され、本願の原出願の出願前に頒布された引用例1(特開2002-310840号公報)には、以下の記載がある。(以下、下線は当審にて付した。)

(引1a)「【0026】まず、上記漏水検出器10の概略構成を説明すると、図2に示すように、この検出器10は、水道管11の振動音を検出するセンサ12と、測定時間の管理のための時計回路13と、上記センサ12による振動音の測定やその測定結果に基づく漏水の有無の判断等を行う制御回路14と、その判断結果を記憶する記憶回路15と、外部からの検査結果要求信号の受信及び外部への検査結果信号の送信等をアンテナ16を介して行う通信回路17と、これらに給電する電池18とを有する。
【0027】上記制御回路14は、時計回路13によって計測されている時刻を認識し、毎日、例えば深夜1時から4時までの3時間の間、例えば3分間ごとにセンサ12からの信号を入力する。」

(引1b)「【0028】その場合、図3に示すように、センサ12は、水道の使用時及び漏水時に水道管11自体で発生する流水音だけでなく、車両の走行に伴う車両騒音やその他の雑音も検出するが、制御回路14は、上記例の場合、60回行われる全ての測定時に振動音を検出したときには漏水が発生していると判断し、また、1回でも振動音を検出しなかったときは、漏水は発生していないと判断する。そして、その結果を記憶回路15に記憶させる。なお、毎日の検査結果は記憶回路15に更新されて記憶されるようになっており、常に最新の検査結果のみが記憶されている。
【0029】一方、上記車載部30はコンピュータによって構成されており、図4に示すように、該車載部部30の全体を制御する中央処理装置31と、該処理装置31に対する作動の指示やデータ入力等を行うための入力装置32と、作動状況等を表示する表示装置33と、アンテナ34を介して外部と信号の送受信を行う通信装置35と、当該車両20を目的地へ案内するためのナビゲーション装置36とを有する。そして、上記通信装置35は、前述の漏水検出器10、現在地情報を提供するGPSシステム60、及びインターネットシステム40に接続するための無線中継器41との間で信号の送受信を行うようになっている。」

(引1c)「【0036】次に、このシステムの動作を説明する。
【0037】まず、図8のフローチャートにより車載部30の動作を説明すると、今、管理地域内を車両20によって巡回中であるものとし、車載部30は、まずステップS1として、通信装置35により管理部50からインターネットシステム40を介して次に向かうべき検査地点へのルートを受信する。そして、ステップS2として、ナビゲーション装置36により、受信したルートを、データベース37、38に記憶している検査地点情報及び地図情報と、GPSシステム60からの現在地情報と共に、表示装置33に表示する。
【0038】このとき、表示装置33には、例えば図9に示すように、検査を終了した地点Aから、次に検査すべき地点Bに至るルートが表示されるので、当該車両20に搭乗している作業者は示されたルートに従って地点Bに向かう。
【0039】次に、ステップS3として、車載部30は当該車両20が次の検査地点Bに所定距離(例えば100m)以内に接近したか否かを判断する。この判断は、上記の地図情報及び検査地点情報とGPSシステム60からの現在地情報とに基づいて行われる。そして、所定距離以内に接近したものと判断すれば、ステップS4で、次の検査地点Bの漏水検出器10に通信装置35を介して起動信号を送信する。
【0040】検査地点Bにおける漏水検出器10は、通信回路17が上記起動信号を受信すると、記憶回路15に記憶している漏水の有無を示す最新の検査結果を読み出し、これを上記通信回路17を介して車載部30に送り返すので、車載部30は、ステップS5として、この漏水検出器10からの検査結果を受信する。」

(引1d) 【図2】




図2(引1d)には、「水道管11」(引1a)に直接センサが設けられている状態が示されている。
また、図2(引1d)には、「水道管11の振動音を検出するセンサ12」(引1a)と「漏水検出器10」(引1a)が、「アンテナ16」につながる「通信回路17」を有していることが図示されている。


これを加味して、上記(引1a)及び(引1c)の下線部を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「 この検出器10は、水道管11の振動音を検出するセンサ12と、測定時間の管理のための時計回路13と、
上記センサ12による振動音の測定やその測定結果に基づく漏水の有無の判断等を行う制御回路14と、
その判断結果を記憶する記憶回路15と、
外部からの検査結果要求信号の受信及び外部への検査結果信号の送信等をアンテナ16を介して行う通信回路17と、これらに給電する電池18とを有し、
上記制御回路14は、時計回路13によって計測されている時刻を認識し、
毎日、例えば深夜1時から4時までの3時間の間、例えば3分間ごとにセンサ12からの信号を入力し、
車載部30は、所定距離以内に接近したものと判断すれば、ステップS4で、次の検査地点Bの漏水検出器10に通信装置35を介して起動信号を送信し、
漏水検出器10は、通信回路17が上記起動信号を受信すると、記憶回路15に記憶している漏水の有無を示す最新の検査結果を読み出し、
これを上記通信回路17を介して車載部30に送り返すので、車載部30は、ステップS5として、この漏水検出器10からの検査結果を受信し、
該車載部30はコンピュータによって構成されており、該車載部部30の全体を制御する中央処理装置31と、該処理装置31に対する作動の指示やデータ入力等を行うための入力装置32と、作動状況等を表示する表示装置33と、アンテナ34を介して外部と信号の送受信を行う通信装置35と、当該車両20を目的地へ案内するためのナビゲーション装置36とを有し、
前記センサ12は、水道管11に直接設けられており、
漏水検出器10は、水道管11の振動音を検出するセンサ12とアンテナ16につながる通信回路17を有している
漏水検出器10。」

2 引用例2に記載の事項
平成29年4月21日付け拒絶理由において引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例2(特開平05-026400号公報)には、以下の記載がある。

(引2a)「【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の管路監視装置は、配水管路の所定間隔おきの配水管に漏水探知センサーを取付けて埋設しておき、さらにその近傍に上記漏水探知センサーの出力を増幅するプリアンプを収納した箱体を地表近くに埋設し、これら箱体の複数からなる一つの群のうちの一つの箱体に自動送信装置を装着して、それぞれのプリアンプの出力を受け、これを電話回線に出力できるように構成し、この電話回線を介して受信した自動送信装置の出力から、基地側に設けた漏水探知装置により配水管路における漏水個所を探知できるようにしたものである。」

(引2b)「【0010】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例の管路監視装置の全体構成を示す模式図である。図1において、11は浄水場や配水事務所などの基地側に設けられた漏水探知器本体、12は漏水探知器本体11に接続された基地側の自動送信装置であり、漏水探知器本体11を電話回線13に接続する。14は配水管路を構成する配水管15のうちの所定間隔おきの配水管15aに取付けられた漏水探知センサーであり、配管時に配水管15,15aとともに埋め戻される。16は漏水探知センサー14の近傍で地面近くに埋設された箱体であり、内部に漏水探知センサー14に接続されてセンサー出力を増幅するプリアンプ17が設けられている。」

3 引用例3に記載の事項
平成29年4月21日付け拒絶理由において引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例3(特開平08-077474号公報)には、以下の記載がある。

(引3a)「【0035】上記構成において、初期の施工不良などによって漏水異常や結露異常が発生し、浴室床下の水分量が増加すると水分検知手段4によって得られる検知出力が増加し、水分量に応じた出力信号が無線通信手段6から送信される。従って、日常的に検査できない浴室床下での結露や漏水による水分異常を、すみやかに検知することができる。さらに出力信号が無線通信手段6によって送信されるので、信号線を住宅内に敷設する必要がなく、任意の場所に検知手段4を設置することができ、浴室の床下ばかりでなく屋根裏や壁内にも設置できることはいうまでもない。また、タイマー手段5を所定の時間間隔で動作させて無線通信手段6から送信するので、送信の際に消費される電力を必要最小限に抑えることができ、電池部7を長期間交換不要にできる。また、表示手段8によって、無線通信手段6から送信された出力信号を屋内に表示するので、屋内の住居者が任意に、表示手段8に表示される出力信号を見ることができ、床下や屋根裏などの構造体での漏水や結露などの状況を推認することができる。また、記憶手段9によって、無線通信手段6から送信される出力信号の時系列データを蓄積できるので、例えば住宅の老朽化にともなって、序々に進行する床下や屋根裏などの構造体での漏水や結露などの径年変化の状況が、蓄積された時系列データを必要時に調べることで検知でき、進行状況の将来的な予測ができる。また、時系列表示手段10によって、記憶手段9に蓄積された出力信号の時系列データを屋内に表示できるので、屋内の住居者が任意に、時系列表示手段10に表示される出力信号の時系列データを見ることができ、床下や屋根裏などの構造体での漏水や結露などの径年変化の状況を認識することができる。また、記憶手段9に蓄積される時系列データは演算手段11で出力信号から水分値及び水分値の変化率に換算され、予め設定された所定の基準値と判定手段12で比較判定され、その結果、異常が発生したと判定された場合には報知手段13としての音声装置14から「漏水注意」等の音声が発せられ、或は点灯装置15によって警告灯が点滅し、或は画面装置16に水分値がグラフ表示されると共に水分値や「異常発生」等の文字が表示されるので、屋内の住居者に確実に報知できる。また、判定手段12において水分値の変化率等から判断して換気が必要と判断された場合には、判定手段12からの運転信号に基づいて換気手段17が作動するので、住宅の老朽化を抑制できる。さらに、報知手段13に接続されたターミナル回線手段18は、公衆回線19を介して外部のサービス会社20に接続されているので、報知手段13からの水分情報をサービス会社20に提供でき、住居者が長期不在などにより認知できない場合でも、迅速に対処できる。」

4 引用例4に記載の事項
平成29年4月21日付け拒絶理由において引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例4(特開平8-53878号公報)には、以下の記載がある。

(引4a)「【請求項1】 地下埋設物の測定信号を発信器を介して接続したアンテナ部材を有し、前記アンテナ部材より地表空間に測定信号電波を放射するようにした地下埋設物の測定用蓋アンテナ。」

(引4b)「【0015】また、本実施例において、地下埋設物は下水道管としたが、上水道管、ガス管、電力ケーブル、通信ケーブルのいずれでもよく、これらの場合、測定事項は漏水、ガス漏れ、漏電、断線等となる。」

(引4c)「【0018】なお、本発明の蓋アンテナならびにアンテナ部材は図示の構造に限られるものではなく、測定信号電波を放射する機能をもつものにおいて、その変形は自由であり、また、蓋アンテナはマンホールの蓋、制水弁蓋以外に栓体蓋にも構成できるものである。」

5 引用例5に記載の事項
平成29年4月21日付け拒絶理由において引用され、原出願の出願日前に頒布された引用例5(特開平9-23483号公報)には、以下の記載がある。

(引5a)「【0020】さらに、本発明では、漏水を検知してから自動的にバルブを閉じるなどして管路の流量を調節する。管路とバルブの対応を地域情報DB24に記憶しておき、需要家への影響が少なくなるようバルブを閉じる。また、予めセンサとバルブを対応づけて記憶しておき、漏水を検知したセンサに応じて閉じるバルブを決定してもよい。
【0021】図2に、センサ10の設置例を示す。検知の精度の面からはセンサの数は多いほどよい。そのためには、設置が容易で工事費が安価である方が望ましいが、管路網8は通常道路下に埋設されているため、センサ設置を行うためには多額の工事費用を要する。そこで、比較的安価に設置可能な一例として、消火栓ボックスと電柱を利用した設置例を示す。図のように、センサ10を消火栓46に取付ける。センタへの情報伝達を無線で行うため、アンテナ42を電柱44に取付け、電源もとる。さらに、災害時でも機能を発揮できるように、停電対策として無停電電源装置48を接続しておく。」

第4 対比
本願発明と、引用発明1とを対比する。

1 引用発明1の「水道管11の振動音を検出するセンサ12」は、本願発明の「振動センサ」に相当する。

2 引用発明1の「漏水検出器10は、水道管11の振動音を検出するセンサ12とアンテナ16につながる通信回路17を有している」から、通信回路を含む振動音を検知するユニットと認識でき、本願発明の「無線装置とを含む振動センサユニット」に相当する。
しかしながら、引用発明1の「センサ12は、水道管11に直接設けられている」ものであるが、地中に配置されているとまでは分からないから、本願発明の「前記振動センサユニットを、地中に配置」することとは、「前記振動センサユニットを、漏水が検知できるように配置」する点で共通する。

3 引用発明1の「アンテナ16」は、ユニット化されているか不明であるから、本願発明の「アンテナ21を含むアンテナユニット2」とは、「アンテナ」という点で共通する。
また、引用発明1の「アンテナ」は、どこに設けるか規定が無く、どこに配置してもよいものと認識できるところ、本願発明の「前記アンテナユニットを、マンホール設置箇所以外の地表に配置」することとは、「前記アンテナを、所定の位置に配置する」点で共通する。

4 一般的に出願時において、マイコンが制御回路として代表的であることに照らし、引用発明1の「制御回路14」は、「上記センサ12による振動音の測定やその測定結果に基づく漏水の有無の判断等を行」っているのだから、引用例1に接した当業者であれば、マイコンであると認識するものといえる。よって、引用発明1の「制御回路14」は、本願発明の「マイコン」に相当する。
そして、引用発明1の「制御回路14」は、「時計回路13によって計測されている時刻を認識し、毎日、例えば深夜1時から4時までの3時間の間、例えば3分間ごとにセンサ12からの信号を入力し」ているのだから、「タイマー管理機能を有」しているといえる。
そうすると、引用発明1の「制御回路14」は、本願発明の「タイマー管理機能を有するマイコン」に相当する。

5 引用発明1の「通信回路17」は、本願発明の「無線装置」に相当する。

6 引用発明1の「通信回路17」は、外部への検査結果信号の送信等をアンテナ16を介して行うものであり、「通信回路17」は「漏水検出器10」に含まれているから、引用発明1の「アンテナ16」と、「漏水検出器10」とは何らかの手段で接続されているといえる。そして、引用発明1の「アンテナ16」と「漏水検出器10」の接続と、本願発明の「前記振動センサユニットと前記アンテナとを、ケーブルで接続する」こととは、「前記振動センサユニットと前記アンテナとを、接続する」点で共通する。

7 引用発明1の「上記制御回路14は、時計回路13によって計測されている時刻を認識し、毎日、例えば深夜1時から4時までの3時間の間、例えば3分間ごとにセンサ12からの信号を入力」するものであるから、「例えば深夜1時から4時までの3時間の間」は「振動音を検出するセンサ12」が稼働する時間であるといえ、「例えば」とあるから、前記稼働する時間は制御回路により任意に設定できるものといえる。
したがって、引用発明1の「上記制御回路14は、時計回路13によって計測されている時刻を認識し」「例えば深夜1時から4時までの3時間の間、例えば3分間ごとにセンサ12からの信号を入力」するように「振動音を検出するセンサ12」の稼働時間を設定することは、本願発明の「前記マイコンにより、前記振動センサの稼働時間」を「設定」することに相当する。
また、引用発明1の「毎日、例えば深夜1時から4時までの3時間の間、例えば3分間ごとにセンサ12からの信号を入力」することは、本願発明の「設定された前記振動センサの稼働時間であれば、前記振動センサで計測される振動の測定データを収集」することに相当する。

しかしながら、引用発明1は、本願発明の「前記マイコンにより、・・・前記振動センサの稼働時間とは異なる時間である前記無線装置の稼働時間とを設定」する事項を具備していない。

8 引用発明1の「所定距離以内に接近したものと判断すれば」、「記憶回路15に記憶している漏水の有無を示す最新の検査結果を読み出し」「これを」「アンテナ16を介して行う」「上記通信回路17を介して車載部30に送り返す」ことは、データである収集した検査結果を、通信回路のアンテナを介して、所定距離以内、すなわち、短距離に位置する車の車載部に送信するものであるから、本願発明の「前記収集した測定データを、地表に設置した前記アンテナユニットを介して、短距離無線通信により、地上のコントローラユニットにデータ送信することで、データの取り出しを行うこと」とは、引用発明1がアンテナがユニット化されていないことを除けば一致し、「前記収集した測定データを、所定の位置に設置した前記アンテナを介して、短距離無線通信により、地上のコントローラユニットにデータ送信することで、データの取り出しを行うこと」で共通する。
もっとも、上記データ送信条件は、引用発明1が「車載部30は、所定距離以内に接近したものと判断すれば」ということを条件としているのに対して、本願発明では「設定された前記無線装置の稼働時間であれば」ということをデータ送信条件としている点で異なっており、両者は「所定のデータ送信条件であれば」という点で共通する。

9 引用発明1の「車載部30」は、「中央処理装置31と、該処理装置31に対する作動の指示やデータ入力等を行うための入力装置32と、作動状況等を表示する表示装置33と、アンテナ34を介して外部と信号の送受信を行う通信装置35と、当該車両20を目的地へ案内するためのナビゲーション装置36とを有する」から、ユニットといえ、本願発明の「地上のコントローラユニット」に相当する。

10 引用発明1の「漏水検出器10」に含まれる「通信回路17」は、検査結果信号の送信を、アンテナ16を介して行っている。そして、検査結果信号の送信は、車載部30が、所定距離以内に接近したものと判断した場合に行われ、所定距離は100m程度であるから、検査結果の送信は、短距離無線通信で行われているといえる。
そうすると、引用発明1の「漏水検出器10」と、本願発明の「振動センサユニット」とは、「収集した測定データを、アンテナを介して、短距離無線通信により、地上のコントローラユニットにデータ送信することで、データの取り出しを行う」点で共通している。

11 引用発明1の「漏水検出器10」は、漏水を検知する方法に使われるものであるから、本願発明の「漏水検知方法に用いる漏水検知装置」に相当する。

12 以上を総合すると、本願発明と引用発明1とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

(一致点)
「 振動センサと、タイマー管理機能を有するマイコンと、
無線装置とを含む振動センサユニットと、
アンテナと、
を含み、
前記振動センサユニットを、漏水が検知できるように配置し、
前記アンテナを、所定の位置に配置し、
前記振動センサと前記アンテナとを、接続し、
前記振動センサは、
前記マイコンにより、前記振動センサの稼働時間を設定し、
設定された前記振動センサの稼働時間であれば、前記振動センサで計測される振動の測定データを収集し、
前記収集した測定データを、前記アンテナを介して、短距離無線通信により、地上のコントローラユニットにデータ送信することで、データの取り出しを行うことを特徴とする、
漏水検知方法に用いる漏水検知装置。」

(相違点1) アンテナが、本願発明では、「アンテナユニット」とユニット化されているのに対し、引用発明1は「アンテナ」であり、ユニット化されていない点。

(相違点2) 振動センサユニットの配置が、本願発明では地中に配置しているのに対して、引用発明では、水道管11に直接設けられているものの、地中に埋設されているとまでは分からない点。

(相違点3) アンテナを配置する所定の位置が、本願発明では「マンホール設置箇所以外の地表」であるのに対し、引用発明1は、配置位置が特定されていない点。

(相違点4) 前記振動センサユニットと前記アンテナユニットの接続が、本願発明では「ケーブル」で接続されているのに対して、引用発明1では特定されていない点。

(相違点5) 無線装置が、本願発明では、前記マイコンにより、前記振動センサの稼働時間とは異なる時間に稼働時間が設定され、設定された前記無線装置の稼働時間であれば、前記収集した測定データをデータ送信するのに対し、引用発明1は、稼働時間が設定されておらず、検査結果信号の送信は、車載部30からの起動信号に応じて行われている点。

第5 判断
1 相違点1について
アンテナに様々な機能部品を付加してユニット化することは、常套手段であって、引用発明1の「アンテナ」をユニット化することは、単なる設計的事項に過ぎない。

2 相違点2について
引用発明1の「前記センサ12は、水道管11に直接設けられ」ているものの、地中に埋設されているとまで引用例1に記載されていない。
しかしながら、水道管が、地下に埋設されているという術常識に照らせば、水道管と共にセンサ12も埋設されていると当業者が思うことは明らかであって、実質的に相違点といえない。
仮に、相違点であるとしても、例えば引用例2に「管路監視装置は、配水管路の所定間隔おきの配水管に漏水探知センサーを取付けて埋設しておき、さらにその近傍に上記漏水探知センサーの出力を増幅するプリアンプを収納した箱体を地表近くに埋設し」(引2a)と記載され、「配水管15aに取付けられた漏水探知センサーであり、配管時に配水管15,15aとともに埋め戻される。」と記載されてもいるように、漏水検知のセンサを地下に埋設することは周知の技術事項である。
そうすると、相違点2は、実質的に相違点といえないか、仮に相違点であるとしても、引用発明1において、引用例2に記載のような周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たことといえる。

3 相違点3について
漏水検知において、マンホール設置箇所以外の地表にアンテナユニットを設置することは、引用例4ないし5に見られるように周知技術である。

そうすると、引用発明1において、上記周知技術のようにアンテナを配置する位置として、マンホール設置箇所以外の地表とすることで、相違点3に記した本願発明のごとく構成することは、容易に発明できたものである。

4 相違点4について
引用発明1において、「アンテナ」と「水道管11の振動音を検出するセンサ12」を有する「漏水検出器10」とは、何らかの電気的な接続を必要とすることは自明なことであって、ケーブルによる接続は常套手段であることから、相違点4は、引用発明1において、単なる電気的接続手段の選択に過ぎない。

5 相違点5について
引用例3には、「タイマー手段5を所定の時間間隔で動作させて無線通信手段6から送信するので、送信の際に消費される電力を必要最小限に抑えることができ、電池部7を長期間交換不要にできる。」と記載されており(上記(引3a)参照)、この記載から「無線通信手段6」は、「タイマー手段5」により、動作させる「時間間隔」、即ち、「稼働時間」が設定されている点が記載されているといえる。
引用発明1は、「漏水検出器10は、通信回路17が上記起動信号を受信する」ことにより、「最新の検査結果を読み出し、これを上記通信回路17を介して車載部30に送り返す」ものである。そうすると、「漏水検出器10」の「通信回路17」は、「起動信号」を受信しなくてはいけないから、少なくとも受信機能は起動していなければならないことは明らかで有る。そして、「通信回路17」の受信機能が起動していることにより、消費電力が発生することは自明であり、「漏水検出器10」は、「電池18」で給電されるものであるから、引用発明1には、「漏水検出器10」の消費電力を低く抑えなければならないという自明の課題があるといえる。
また、(引1b)の記載より、「センサ12」は、「車両の走行に伴う車両騒音やその他の雑音も検出する」と、引用例1には、車両騒音が検出結果に影響する旨の記載が認められる。
そうすると、引用発明1の「漏水検出器10」の消費電力を低く抑えるために、引用発明1の制御回路14が有するタイマー機能の制御対象として、引用例3に記載された無線通信手段の稼働時間を制御する点を適用する程度のことは、当業者が容易に想到できたに過ぎないことであり、その際に、車両騒音が検出結果に影響することを考慮して、センサの稼働していない時間を選択する程度のことは、当業者において常套手段に過ぎないことであるといえる。

6 本願発明の効果について
本願発明の効果は、引用例1?3の記載及び当該技術分野において周知の事項に基づいて、当業者が容易に予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。

7 小括
上記1?6より、本願発明は、引用発明1、引用例2及び3に記載された発明及び当該技術分野において周知の技術事項より、当業者が容易に想到できたに過ぎないものである。

第6 請求人の主張について
請求人は、平成29年6月22日付けで意見書において、
『引用例1の【0039】等には、車両20に搭載された車載部30が、次の検査地点Bから所定距離以内に接近したものと判断すれば、次の検査地点Bの漏水検出器10に通信装置35を介して起動信号を送信する旨が記載されており、貴合議体が認定されたとおり、引用発明1において、検査結果信号の送信は、車載部30からの起動信号に応じて行われます。
ここで、引用発明1においては、検査結果信号の送信タイミングは、車両20に搭載された車載部30が次の検査地点Bから所定距離以内に接近したときに既に制御されており、そのタイミングのみに限定されています。
よって、引用発明1においては、引用例3に記載された無線通信手段の稼働時間の制御を、全く必要としません。
このため、引用発明1の制御回路14が有するタイマー機能の制御対象として、引用例3に記載された無線通信手段の稼働時間を制御する点を適用する動機づけはありません。
また、引用例3に記載の住宅用水分監視装置では、浴室の床下等に設置された水分検知手段4と、屋内の表示手段8との間の、常にデータの送受信が可能な一定距離での通信となるため、無線通信手段6の稼働時間を制御して、電池部7の消耗を抑える必要があります。
一方、引用発明1では、前述のとおり、検査結果信号の送信タイミングは、車両20に搭載された車載部30が検査地点に接近したときに限られるので、電池18の消耗を抑える必要がありません。
この点からも、引用発明1の制御回路14が有するタイマー機能の制御対象として、引用例3に記載された無線通信手段の稼働時間を制御する点を適用する動機づけはありません。』
と主張している。しかしながら、上記第5の5で検討したとおり、引用発明1の「通信回路17」は、起動信号を受信するために、少なくとも受信機能は起動していなければならず、「通信回路17」の受信機能が起動していることにより消費電力が発生することとは明らかである。そうすると、該消費電力を低く抑えるために、引用発明1の制御回路14が有するタイマー機能の制御対象として、引用例3に記載された無線通信手段の稼働時間を制御する点を適用する動機づけがあるといえる。

第7 結語
以上のとおり,本願発明は,引用発明1、引用例2及び3に記載された発明及び当該技術分野において周知の技術事項より、当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-31 
結審通知日 2017-08-01 
審決日 2017-08-22 
出願番号 特願2014-216552(P2014-216552)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 秀直  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 松岡 智也
福島 浩司
発明の名称 漏水検知方法および漏水検知装置  
代理人 中山 ゆみ  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 伊佐治 創  
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