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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1333046
審判番号 不服2016-15433  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-14 
確定日 2017-10-24 
事件の表示 特願2014-186904「静電容量タッチパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月22日出願公開、特開2015- 15042、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯
本願は、平成21年2月18日(パリ条約による優先権主張 2008年2月18日 台湾)を出願日とする特願2009-34975号の一部を、平成25年2月8日に新たな特許出願として出願した特願2013-23235号の一部を、平成26年9月12日に新たな特許出願として出願したものであって、平成27年10月7日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年2月12日付けで意見書が提出されたが、同年6月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年10月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年6月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1,2,4?11,14?16に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献1?3,5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項12,13に係る発明は、以下の引用文献1?4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
引用文献1.特表2007-533044号公報
引用文献2.特開昭60-75927号公報
引用文献3.登録実用新案第3134925号公報
引用文献4.特開2005-337773号公報
引用文献5.特開2005-173970号公報


第3 本願発明
本願請求項1?16に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明16」という。)は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
一体に形成された静電容量タッチパネルであって、
物理的触覚入力を受ける第1の表面と、第2の表面とを有する単一基板と、
センシング領域を規定するよう、前記単一基板の前記第2の表面の外周部に形成されたマスク層と、
前記物理的触覚入力を検出するセンス回路と、
を含み、
前記センス回路が
第1のセンス回路と、
交差エリアにおいて前記第1のセンス回路と交差する第2のセンス回路と、
前記第1のセンス回路と前記第2のセンス回路とを絶縁する絶縁層と、を備え、
前記絶縁層が前記交差エリアのみに形成され、
前記マスク層、前記第1のセンス回路、前記第2のセンス回路、及び前記絶縁層が前記単一基板の前記第2の表面に一体に形成されている静電容量タッチパネル。
【請求項2】
前記センス回路が前記マスク層に結合されている請求項1に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項3】
一体に形成された静電容量タッチパネルであって、
物理的触覚入力を受ける第1の表面と、第2の表面とを有する単一基板と、
センシング領域を規定するよう、前記単一基板の前記第1の表面の外周部に形成されたマスク層と、
前記物理的触覚入力を検出するセンス回路と、
を含み、
前記センス回路が
第1のセンス回路と、
交差エリアにおいて前記第1のセンス回路と交差する第2のセンス回路と、
前記第1のセンス回路と前記第2のセンス回路とを絶縁する絶縁層と、を備え、
前記絶縁層が前記交差エリアのみに形成され、
前記第1のセンス回路、前記第2のセンス回路、及び前記絶縁層が前記単一基板の前記第2の表面に一体に形成され、
前記マスク層が前記単一基板の前記第1の表面に一体に形成されている静電容量タッチパネル。
【請求項4】
前記第1のセンス回路が前記単一基板の前記第1の表面が受けた物理的触覚入力を検出して、前記物理的触覚入力に応じた第1の軸方向のセンス信号を出力し、
前記第2のセンス回路が前記物理的触覚入力に応じた第2の軸方向のセンス信号を出力する請求項1?3のいずれか1項に記載の静電容量タッチパネル。
【請求項5】
前記絶縁層が透明である請求項1?4のいずれか1項に記載の静電容量タッチパネル。
【請求項6】
前記第1のセンス回路及び前記第2のセンス回路がそれぞれ、
前記物理的触覚入力を検出するためにセンシング領域に対応する領域内に設けられた透明な導電性電極と、
前記領域の外側に形成され、前記マスク層によって覆われたメタルトレースとを備えている請求項1?5のいずれか1項に記載の静電容量タッチパネル。
【請求項7】
前記メタルトレースが前記マスク層の表面に形成されている請求項6に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項8】
前記導電性電極が、前記単一基板の前記第1の表面が受けた前記物理的触覚入力による静電容量効果で生成され、タッチされた位置に対応する容量センス信号を出力する、請求項6、又は7に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項9】
タッチされた位置の座標を検出又は算出するために前記容量センス信号が前記メタルトレースに沿ってプロセッサに転送される、請求項8に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項10】
前記導電性電極が透明導電物質によって形成される、請求項6?9のいずれか1項に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項11】
前記マスク層が、ブラックレジスト物質又は他の不透明なコーティング物質によって形成される、請求項1?10のいずれか1項に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項12】
ノイズ信号を防止するシールド層をさらに備え、
前記シールド層が前記単一基板と前記マスク層との間に配置されている請求項1?11のいずれか1項に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項13】
前記シールド層の幅が前記マスク層と略同じである請求項12に記載の静電容量タッチパネル。
【請求項14】
前記単一基板がガラス物質又はプラスチック物質によって形成されている請求項1?13のいずれか1項に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項15】
前記一体に形成された静電容量タッチパネルは、表示パネル上に直接、配置できる請求項14に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。
【請求項16】
前記センス回路の表面上に一体に形成される保護膜と、
前記保護膜上に配置され、表示パネルと接合する接着層と、
をさらに含む、請求項15のいずれか1項に記載の一体に形成された静電容量タッチパネル。」

本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明3は、本願発明1の「単一基板の第2の表面の外周部に形成されマスク層」を「単一基板の第1の表面の外周部に形成されたマスク層」に置き換えた発明である。
本願発明4-16は、それぞれ本願発明1?3を減縮した発明である。


第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次のア?ウのとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。以下、同様。

「【0052】
図9は、本発明の別の実施形態による透明なマルチポイント・タッチ・スクリーン150を示す平面図である。例えば、一般にタッチ・スクリーン150は、図2や図4のタッチ・スクリーンに相当する。図6?図8に示されているタッチ・スクリーンとは異なり、図9のタッチ・スクリーンは、自己静電容量ではなく相互静電容量のコンセプトを利用する。図示されているように、タッチ・スクリーン150は、空間的に分離されたラインまたはワイヤ152の2つの層のグリッドを含む。ほとんどの場合、それぞれの層の上のライン152は互いに平行である。さらに、別々の層の上のライン152は、別々の平面内にあるが、容量感知ノード154を形成するために交差するように、すなわち交わるように構成されており、それらの容量感知ノード154のそれぞれは、タッチ・スクリーン150の平面内の別々の座標を表す。ノード154は、そのノード154の付近のタッチ・スクリーン150に接触している物体から容量性の入力を受け取るように構成されている。ある物体がノード154に接近すると、その物体は電荷を奪い、それによってノード154における静電容量が影響を受ける。
【0053】
詳細に述べると、別々の層の上のライン152は2つの異なる機能を果たす。ライン152Aの1つのセットが、それらの間を通る電流を駆動し、その一方でライン152Bの第2のセットが、ノード154のそれぞれにおける静電結合を感知する。ほとんどの場合、上の層が駆動ライン152Aとなり、その一方で下の層が感知ライン152Bとなる。駆動ライン152Aは、電源(図示せず)に接続されており、この電源は、駆動ライン152Aのそれぞれを通る電流を別々に駆動する。すなわち、刺激は1つのラインの上で生じるだけであり、その一方で他のすべてのラインが接地される。これらは、同様にラスタ走査へと駆動することもできる。感知ライン152Bは、容量感知回路(図示せず)に接続されており、この容量感知回路は、感知ライン152Bのすべてを継続的に感知する(常に感知する)。
【0054】
駆動されると、駆動ライン152A上の電荷はノード154を通じて交差している感知ライン152Bへ静電結合し、容量感知回路は、感知ライン152Bのすべてを並行して感知する。その後、次の駆動ライン152Aが駆動され、次の駆動ライン152A上の電荷がノード154を通じて、交差している感知ライン152Bへ静電結合し、容量感知回路が感知ライン152Bのすべてを並行して感知する。これは、すべてのライン152Aが駆動されるまで順次行われる。すべてのライン152Aが駆動されると、シーケンスは、再び最初から開始する(継続的に繰り返す)。ほとんどの場合、ライン152Aは、一方の側から反対側へ順次駆動される。」

「【0085】
図18、図19は、本発明の複数の実施形態による電子デバイス350を示す側面図である。電子デバイス350は、LCDディスプレイ352と、そのLCDディスプレイ352の上に配置されている透明なタッチ・スクリーン354とを含む。タッチ・スクリーン354は、保護シート356と、1つまたは複数の感知層358と、底面のガラス部材360とを含む。この実施形態においては、底面のガラス部材360はLCDディスプレイ352の前面のガラスである。さらに感知層358は、上述のように、自己静電容量または相互静電容量のいずれかに対して構成させることができる。一般に感知層358は、感知層358を感知回路(図示せず)へ結合するための複数の相互接続をタッチ・スクリーンの縁部に含む。例えば感知層358は、タッチ・スクリーン354の側部に取り付けられている1つまたは複数のフレックス回路362を通じて感知回路へ電気的に結合することができる。
【0086】
図示されているように、LCDディスプレイ352とタッチ・スクリーン354は、筐体364内に配置されている。筐体364は、これらのコンポーネントを電子デバイス350内のそれらの組み立てられた位置において覆って支持する役割を果たす。筐体364は、LCDディスプレイ352とタッチ・スクリーン354とを配置するためのスペースと開口部366を提供し、これによって、筐体364を通してディスプレイ・スクリーンを見ることができる。一実施形態においては、図18に示されているように、筐体364は、LCDディスプレイ352とタッチ・スクリーン354の側部を覆うための外面370を含む。あまり詳細には図示されていないが、外面370は、LCDディスプレイ352とタッチ・スクリーン354の全外周のまわりに配置されている。外面370は、相互接続を隠してLCDディスプレイ352とタッチ・スクリーン354のアクティブなエリアのみを視界に残す役割を果たす。
【0087】
別の実施形態においては、図19に示されているように、筐体364は、外面370ではなくマスク372を含み、このマスク372は、筐体364の側部の間に延びるタッチ・スクリーン354の上面のガラス374(当審注:「356」の誤記と認める。)の内側部分に印刷される。この特定の構成によって、マスク372は上面のガラス356内に沈んでいるように見える。マスク372は外面370と同じ機能を果たすが、より洗練されたソリューションである。一実装形態においては、マスク372は高温の黒いポリマーから形成される。図19に示されている実施形態においては、タッチ・スクリーン354は、相互静電容量の感知に基づいており、したがって感知層358は、駆動ライン376と感知ライン378を含む。駆動ライン376は上面のガラス356とマスク372の上に配置されており、感知ライン378は底面のガラス360の上に配置されている。駆動ライン376と感知ライン378はスペーサ380を介して互いに絶縁されている。スペーサ380は例えば光学的に整合する材料を内部に保有するかまたは塗布された透明なプラスチック片とすることができる。」


上記下線部の記載、及び図19によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「高温の黒いポリマーから形成されたマスク層372が内側部分に印刷された上面のガラス356と、
相互静電容量の感知による感知層358が、駆動ライン376と感知ライン378を含み、駆動ライン376は上面のガラス356とマスク376の上に配置され、感知ライン378は底面のガラス360上に配置され、駆動ライン376と感知ライン378はスペーサ380を介して互いに絶縁された、タッチ・スクリーン354と、
LCDディスプレイ352とを含み、
感知層358を感知回路へ結合するための相互接続をタッチ・スクリーン縁部に含み、マスク層は、相互接続を隠してLCDディスプレイ352とタッチ・スクリーン354のアクティブなエリアのみを視界に残す役割を果たす、
電子デバイス。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次のとおりの記載がある。

「第2図は本発明の一実施例全体構成図であり、図中、10はセンサパネルであり、第3図のセンサパネル断面図に示す様にガラス等の透明基板100上にm本のX側透明導電線路(以下X電極と称す)101a?101mが互いに平行に配設され、更にX電極群101a?101mと交叉する様にn本のY側透明導電線路(以下Y電極と称す)102a?102nが互いに平行に配設されている。X電極群101a?101mとY電極群102a?102nとは互いに絶縁されて設けられている。このセンサパネル10は第3図に示す如くディスプレイ20の画面前面に装着されるが、前述の透明基板100を取り除き、ディスプレイの画面(例えばブラウン管面)に直接X電極群及びY電極群を設けてセンサパネル10とディスプレイを一体化してもよい。11はX側走査回路であり、シフトレジスタで構成され、クロックパルスCLに応じてX電極群101a? 101mを順次走査するもの、12はX側ドライブ回路であり、X側走査回路11の走査に応じてX電極群に電圧を付与して駆動するもの、13はY側走査回路であり、シフトレジスタで構成され、クロックパルスCLに応じてY電極群102a?102nを順次走査するもの、14はY例ドライブ回路であり、Y側走査回路13の走査に応じてY電極群に電圧を付与して駆動するものであり、これらX及びY側走査回路11、13およびX、Y側ドライブ回路12、14によってドライブ回路を構成する。15はX側加算回路であり、各X電極101a?101mに接続される加算抵抗 R1a?R1mと、これら加算抵抗R1a?R1mの出力を加算するオペアンプ15aとで構成されるもの、16はY側加算回路であり、各Y電極102a?102nに接続される加算抵抗R2a?R2nと、これら加算抵抗R2a?R2nの出力を加算するオペアンプ16aとで構成される。17は位置検出回路であり、X及びY側加算回路15、16の出力から指示された座標位置を検出するものである。
次に第2図実施例構成の動作について第4図の各部波形図に基いて説明する。
クロックパルスCLがX及びY側走査回路11、13に入力されると、X側ドライブ回路12から各X電極101a?101mに各々駆動信号X1、X2・・・Xmが順次印加され、同様にY側ドライブ回路14から各Y電極 102a?102nに各々駆動信号Y1、Y2・・・Ymが順次印加される。
センサパネル10に指等が触られていない状態ではX側加算回路15の出力X0は、オペアンプ15aがインバータとして働くため、実線の如く、駆動信号X1、X2・・・Xmの単純和の反転極性をもつ-Vで一定しており、同様にY側加算回路16の出力Y0も実線の如く、駆動信号Y1、Y2・・・Ynの単純和の反転極性をもつ-Vで一定している。
この状態で人の指等がセンサパネル10の所望の位置に触れると、その位置のX電極(例えば101k)とY電極(例えば102l)に指等が触れ、人体の持つ静電容量が付与される。このため、X電極101k及びY電極102lに印加された駆動信号Xk、Ylは波形の立上りがなまった形で各加算抵抗R1k、R2lに伝えられる。このため、加算回路15の出力XOはX電極101kの走査に対応する時間位置txoにおいて点線で示す如く波形歪pxoが生じ、同様に加算回路16の出力YOはY電極102lの走査に対応する時間位置tyoにおいて点線で示す如く波形歪pyoを生ずる。位置検出回路17は出力XO、YOを所定のスライスレベルでスライスし、歪信号pxo、pyoを取り出し、この歪信号pxo、pyoが走査開始時点tsからどの時間位置txo、tyoにあるかを計数し、これによって触れられた電極101k、102lの交点のX座標及びY座標を得る。従って、歪信号pxo、pyoの時間位置txo、tyoを測定することによってセンサパネル10上の指定位置を検出することができる。
第5図は第2図構成のセンサパネル10の詳細図であり、第5図(A)に示す如く透明基板100上にX電極101とY電極102とが透明導電膜(例えばSnO_(2)、In_(2)O_(3))が1000Åオーダのスパッタ等の方法によって形成される。第5図(B)の部分詳細図に示す如く、X電極101とY電極102との交叉位置においては、X電極101とY電極102との間にSiO_(2)等から成る透明絶縁膜103が1000Åオーダのスパッタ等の方法で形成される。これらの導電膜101、102及び絶縁膜103は基板100上に順次スパッタ等の方法で作成される。一方、基板100の裏面には必要に応じシールド・アースを兼ねた透明導体薄膜104がSnO_(2)、In_(2)O_(3)などの透明導電膜によって一面に形成される。」(第3頁右上欄第2行?第4頁右上欄第13行)

下線部の記載によれば、引用文献2には、「ガラス等の透明基板上にm本の透明のX電極を互いに平行に配設し、X電極群と交叉するようにn本の透明のY電極を互いに平行に配設し、X電極群とY電極群との交叉部分に透明絶縁膜を設けたセンサパネル。」という技術的事項が記載されているといえる。

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、次のとおりの記載がある。
「【0009】
第1図は本考案静電容量式タッチパッドのタッチ模様構造の第一実施例平面イメージ図であり、第2図は本考案静電容量式タッチパッドのタッチ模様構造の部分立体図である。本考案は当該基板1の基板表面11にタッチ模様構造12を設けることに関する。当該タッチ模様構造12は第一軸方向導電グループ13、第二軸方向導電グループ14をそれぞれ具備しており、かつ当該第一軸方向導電グループ13は当該第二軸方向導電グループ14に垂直する。第一軸方向導電グループ13と第二軸方向導電グループ14とのあいだは図面で示している垂直対応関係以外、その他垂直しない対応角度で基板1の基板表面11の上に布設することもできる。
【0010】
各々の第一軸方向導電グループ13は複数の第一軸方向導電ユニット131からなり、各々の第一軸方向導電ユニット131は第一軸方向Xに等距離間隔で当該基板1の基板表面11に設けられており、かつ隣接する第一軸方向導電グループ13のあいだと隣接する二つの第一軸方向導電ユニット131のあいだのエリアには第二軸方向導電ユニット配置スペース15がそれぞれ定義されている。
【0011】
当該各々隣接する第一軸方向導電ユニット131のあいだは複数の第一軸方向導電線132より連結され、よって同一の第一軸方向導電グループ13中の各々の第一軸方向導電ユニット131を電気接続する。当該同一の第一軸方向導電グループ13中の各々の第一軸方向導電ユニット131は幾つかの第一軸方向導電線132より直列接続され、信号伝送線16a経由で信号を回路板(図面では表示されていない)の制御回路に伝送する。
【0012】
当該各々の第一軸方向導電線132の導電線表面133には絶縁被覆層17がそれぞれ覆設されている。当該絶縁被覆層17は電気絶縁特性を有する材料から選定しており、かつ透明の絶縁材料(例えば二酸化珪素等の材料)が好ましい。当該各々の第二軸方向導電グループ14は複数の第二軸方向導電ユニット141からなり、各々の第二軸方向導電ユニット141は第二軸方向Yに等距離間隔で当該基板1の基板表面11に設けられており、かつ各々の第二軸方向導電ユニット141は当該第二軸方向導電ユニット配置スペース15に別々に配置されている。
【0013】
当該各々の隣接する第二軸方向導電ユニット141のあいだは第二軸方向導電線142より接続されており、かつ当該第二軸方向導電線142は当該絶縁被覆層17の表面を横断して同一の第二軸方向導電グループ14中の各々の第二軸方向導電ユニット141を接続している。当該同一の第二軸方向導電グループ14中の各々の第二軸方向導電ユニット141は幾つかの第二軸方向導電線142より直列接続され、信号伝送線16b経由で信号を制御回路に伝送する。
【0014】
第3図は第2図中の3-3断面の断面図であり、第4図は第2図中の4-4断面の断面図である。当該第一軸方向導電ユニット131、第一軸方向導電線132、第二軸方向導電ユニット141、第二軸方向導電線142は透明導電材料で製作したものである。当該第一軸方向導電線132と第二軸方向導電線142のあいだに設けられている絶縁被覆層17より、各々の第二軸方向導電グループ14中の各々の隣接する第二軸方向導電ユニット141のあいだの第二軸方向導電線142が対応する第一軸方向導電線132を交差する時お互いに絶縁される目的を達成できる。
【0015】
当該基板1はガラス基板を採用することが可能であり、当該タッチ模様構造12の第一軸方向導電グループ13と第二軸方向導電グループ14及び第一、第二軸方向導電線132、141は透明導電フィルム(例えば酸化インジウムスズITO導電層)を採用している。前述の実施例では各々の第一軸方向導電ユニット131と第二軸方向導電ユニット141の形状が六角形の幾何輪郭形状となっているが、もちろんその他の幾何輪郭形状にデザインして当該基板1の基板表面11上に密布させ、最適化かつ有効なタッチパッド表面を形成させることもできる。」

下線部の記載によれば、引用文献3には、「ガラス基板の基板表面に、透明な第一軸方向同電線と、透明な第二軸方向導電線とを設け、第一軸方向導電線のグループと第2軸方向導電線のグループとは、互いに直交し、第一軸方向導電線と第二軸方向導電線との間には、絶縁被覆層を設けた静電容量式タッチパッド。」という技術的事項が記載されているといえる。

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、「静電容量式の検出装置」(発明の名称)について、次のとおりの記載がある。
「【0032】
ここで前記図2の第1の実施の形態に示す検出装置では、前記センシング領域Aに隣接する引回し領域Byに、静電防護手段としてのシールド部材31が設けられている。前記シールド部材31は磁性材料からなる金属板で形成されており、前記延長線Yaを覆うように前記引回し領域Byの表面に固定されている。
【0033】
前記シールド部材31は、少なくとも前記被検出体が接近しやすい前記センシング領域Aの近傍を覆った構成が好ましく、より好ましくは前記Y電極y1,y1,・・・,ynの端部である延長線Yaが、センシング領域Aから外れた位置から前記切換え手段21Yに接続されるまでの間の全長を覆うようにしたものである。なお、さらに優れた効果を期待することができる点では、前記シールド部材31を接地しおくことが好ましい。
【0034】
このように、シールド部材31により延長部Yaを覆うことにより、被検出体が引回し領域に接近したときに、前記被検出体と引回し領域Byに配線されている前記延長線Yaとの間に誘電束が発生することがなく、両者の間に静電容量が形成されるのを防止できる。また、例え前記被検出体と各延長線Yaとの間に静電容量が形成されることがあるとしても、少なくとも前記被検出体の動きに対する静電容量の変化量を低く抑えることができる。」

下線部の記載によれば、引用文献4には、「静電容量式の検出装置のセンシング領域と隣接する引回し領域に、シールド部材を設けることにより、被件検出体と引回し領域に配線された延長線との間に静電容量が形成されるのを防止する。」という技術的事項が記載されているといえる。

5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、次のア,イのとおりの記載がある。

「【0020】
上側透光性基板31の内面側(下側透光性基板32側)の外周部には加飾印刷層41が形成されている。加飾印刷層41は、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により形成された厚みが非常に薄いものである。この加飾印刷層41は、模様、文字、マーク、絵柄、着色等の加飾が施されているものである。この加飾印刷層41の厚みとしては、例えば0.01?100μm程度とされる。
加飾印刷層41を形成する範囲は、下側印刷回路(第1の印刷回路)37と後述の上側印刷回路(第2の印刷回路)38の上方位置であり、このタッチパネル30を上側透光性基板31側(第2の透光性基板の操作面側)から見たときに、下側印刷回路(第1の印刷回路)37と後述の上側印刷回路(第2の印刷回路)がこの加飾印刷41により隠蔽されていて視認(目視確認)できない位置とされる。」

「【0028】
なお、上記の実施形態の液晶表示装置においては、図1に示すようなタッチパネル30が液晶表示ユニット20の前面に備えられた場合について説明したが、タッチパネルとしては、図2に示すようなタッチパネル30a又は図3に示すようなタッチパネル30bであってもよい。
図2に示すタッチパネル30aが図1に示すタッチパネル30と異なるところは、第2の透光性基板31の外面側の外周部に第1と第2の印刷回路37、38を隠蔽する加飾印刷シート41aが形成され、第2の透光性基板31の内面側の外周部に第2の透明導電膜33と接続された第2の印刷回路37が形成されている点である。
加飾印刷シート41aは、平面視矩形枠状のシート状フィルム44aにスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により模様、文字、マーク、絵柄等の加飾印刷層44bが形成されたものであり、厚みが非常に薄いものである。さらに加飾印刷層44bの下面側に粘着層(図示略)が形成されている。この加飾印刷シート41aの厚みとしては、例えば0.015mm?0.3mm程度とされる。
【0029】
第2の透光性基板31の外面に設ける前の加飾印刷シート41aは、上記粘着層側の面が支持シートに貼着されており、この支持シートを剥離後に上記粘着層側の面を第2の透光性基板31の外面に貼り付けることで、第2の透光性基板の外面に加飾印刷シート41aを形成することができる。
この加飾印刷シート41aは第2の透光性基板31の外面側に形成されているので、第2の透光性基板31の内面側には図1のタッチパネル30で設けていたようなオーバーコート層42は形成されていない。
また加飾印刷シート41aは、上記のように厚みが薄いものであるので、上記第2の透光性基板31の外面とこの加飾印刷シート41aとの段差も殆どできないため、図2のタッチパネル30aは、タブレットの外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプと比べて薄型とすることできる。
【0030】
図3に示すタッチパネル30bが図1に示すタッチパネル30と異なるところは、第2の透光性基板31の外面側の外周部に第1と第2の印刷回路37、38を隠蔽する加飾印刷シート41bが形成され、第2の透光性基板31の内面側の外周部に第2の透明導電膜33と接続された第2の印刷回路37が形成されている点である。
加飾印刷シート41bは、平面視矩形のシート状フィルム44a’の外周部ににスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により模様、文字、マーク、絵柄等の加飾印刷層44bが平面視矩形枠状に形成されたものであり、厚みが非常に薄いものである。これらシート状フィルム44a’と加飾印刷層44bの下面側に粘着層44cが形成されている。この加飾印刷シート41bが図2の加飾印刷シート41bと特に異なる点は、シート状フィルムの形状が平面視矩形状であることと、粘着層44cがシート状フィルム44a’の下面と加飾印刷層44bの下面を覆うように形成されている点である。よって、粘着層44cは、透明性に優れ、貼り付け時の気泡除去性が良いものが望ましい。
この加飾印刷シート41bの厚みとしては、例えば0.015mm?0.3mm程度とされる。」

下線部の記載によれば、引用文献5には、「タッチパネルにおいて、透光性基板の内面側に透明導電膜と、該透明導電膜と接続された印刷回路とを設け、透光性基板の外面側の外周部に印刷回路を隠蔽する加飾印刷シートを形成する。」という技術的事項が記載されているといえる。


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明の「タッチスクリーン354」は、相互静電容量の感知によるものであるから、引用発明の「タッチスクリーン354」と「上面のガラス356」と「底面のガラス360」とで構成されるものは、本願発明1と同様に、「静電容量タッチパネル」であるといえる。

引用発明の「上面のガラス356」の上面は、指等が接触する面であるから、引用発明の「上面のガラス356」と本願発明1の「物理的触覚入力を受ける第1の表面と、第2の表面とを有する単一基板」とは、「物理的触覚入力を受ける第1の表面と、第2の表面とを有する基板」である点で共通する。

引用発明の「マスク層372」は、「上面のガラス356」の内側部分に印刷され、「タッチ・スクリーン」の縁部に配置された「相互接続を隠してLCDディスプレイ352とタッチ・スクリーン354のアクティブなエリアのみを視界に残す役割を果たす」から、引用発明の「マスク層372」と本願発明1の「センシング領域を規定するよう、前記単一基板の前記第2の表面の外周部に形成されたマスク層」とは、「センシング領域を規定するよう、前記基板の前記第2の表面の外周部に形成されたマスク層」である点で共通する。

引用発明の「駆動ライン376」と「感知ライン378」とは、交差するものであり、それぞれ、本願発明1の「第1のセンス回路」と「第2のセンス回路」とに相当する。
そして、引用発明の「駆動ライン376と感知ライン378を含み、駆動ライン376は上面のガラス356とマスク376の上に配置され、感知ライン378は底面のガラス360上に配置され、駆動ライン376と感知ライン378はスペーサ380を介して互いに絶縁された」「感知層358」は、本願発明1の「前記物理的触覚入力を検出するセンス回路」であって、「前記センス回路が、第1のセンス回路と、交差エリアにおいて前記第1のセンス回路と交差する第2のセンス回路と、前記第1のセンス回路と前記第2のセンス回路とを絶縁する絶縁層と、を備え」る構成に相当するものといえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
[一致点]
「静電容量タッチパネルであって、
物理的触覚入力を受ける第1の表面と、第2の表面とを有する基板と、
センシング領域を規定するよう、前記基板の前記第2の表面の外周部に形成されたマスク層と、
前記物理的触覚入力を検出するセンス回路と、
を含み、
前記センス回路が
第1のセンス回路と、
交差エリアにおいて前記第1のセンス回路と交差する第2のセンス回路と、
前記第1のセンス回路と前記第2のセンス回路とを絶縁する絶縁層と、を備える、
静電容量タッチパネル。」

[相違点]
(相違点1)
「絶縁層」が、本願発明1では、第1のセンス回路と第2のセンス回路との交差エリアのみに形成されるのに対し、引用発明では、交差エリアのみに形成されるとは特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1では、「基板」が、「物理的触覚入力を受ける第1の表面と、第2の表面とを有する単一基板」であり、「前記マスク層、前記第1のセンス回路、前記第2のセンス回路、及び前記絶縁層が前記単一基板の前記第2の表面に一体に形成され」るのに対し、引用発明では、「前記マスク層、前記第1のセンス回路」は、「上面のガラス」に形成され、「第2のセンス回路」は、「底面のガラス」に形成され、「絶縁層」は、「第1のセンス回路」と「第2のセンス回路」との間を絶縁するスペーサとして形成される点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1,2について検討する。
「第4 引用文献、引用発明等」の「2 引用文献2について」、「3 引用文献3について」に記載のとおり、引用文献2には、「ガラス等の透明基板上にm本の透明のX電極を互いに平行に配設し、X電極群と交叉するようにn本の透明のY電極を互いに平行に配設し、X電極群とY電極群との交叉部分に透明絶縁膜を設けたセンサパネル。」という技術的事項が記載され、引用文献3には、「ガラス基板の基板表面に、透明な第一軸方向同電線と、透明な第二軸方向導電線とを設け、第一軸方向導電線のグループと第2軸方向導電線のグループとは、互いに直交し、第一軸方向導電線と第二軸方向導電線との間には、絶縁被覆層を設けた静電容量式タッチパッド。」という技術的事項が記載されているように、単一の基板に第1のセンス回路、第2のセンス回路とを形成し、交差部分のみに絶縁層を設けることは、本願優先日前に周知技術であったといえる。
しかしながら、物理的触覚入力を受ける単一の基板の第2の表面に、第1のセンス回路、第2のセンス回路、絶縁層、マスク層を一体に形成することは、引用文献1?5のいずれにも、記載も示唆もされておらず、引用発明における「底面のガラス360」に形成された「第2のセンス回路」と、スペーサとして形成された「絶縁層」とを、「上面のガラス356」側に一体に形成するという構成を採用する動機付けもないから、当業者といえども、引用発明及び引用文献2?5に記載された技術的事項から、相違点2に係る本願発明1の「前記マスク層、前記第1のセンス回路、前記第2のセンス回路、及び前記絶縁層が前記単一基板の前記第2の表面に一体に形成」するという構成を容易に想到し得たものとすることはできない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明1の「前記マスク層、前記第1のセンス回路、前記第2のセンス回路、及び前記絶縁層が前記単一基板の前記第2の表面に一体に形成」すると同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明3について
本願発明3は、本願発明1の「前記マスク層、前記第1のセンス回路、前記第2のセンス回路、及び前記絶縁層が前記単一基板の前記第2の表面に一体に形成」すると同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明4?16について
本願発明4?16は、それぞれ本願発明1?3を減縮した発明であり、本願発明1の「前記マスク層、前記第1のセンス回路、前記第2のセンス回路、及び前記絶縁層が前記単一基板の前記第2の表面に一体に形成」すると同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?16は、当業者が引用発明及び引用文献2?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-10 
出願番号 特願2014-186904(P2014-186904)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 山澤 宏
新川 圭二
発明の名称 静電容量タッチパネル  
代理人 家入 健  

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