• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01M
管理番号 1333082
審判番号 不服2016-17615  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-25 
確定日 2017-10-24 
事件の表示 特願2012-134532「回転機械部品の携帯端末利用検査方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開、特開2013-228352、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月14日(優先権主張 平成24年3月28日)の出願であって、平成28年2月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年4月12日付けで手続補正がされ、同年8月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1-18に係る発明は、以下の引用文献1-4に記載された発明及び引用文献5、6に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1.特許第3864146号公報
2.特許第3858977号公報
3.特開2004-171377号公報
4.特開2003-215228号公報
5.特開2012-27027号公報
6.国際公開第2011/141908号

第3 本願発明
本願請求項1-4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明4」という。)は、平成28年11月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
回転機械部品を検査する方法であって、スマートフォンと、前記回転機械部品の状況を検出しその検出データを前記スマートフォンに入力する専用センサとを用い、
前記専用センサで検出し前記スマートフォンに付与された検出データを、前記スマートフォンに備えられたデータ処理ソフトウェアと、前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータとを用いてデータ処理する過程を含み、
このデータ処理の処理結果を前記スマートフォンの画面に表示させ、
前記データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを同じ可搬の記憶装置に記憶し、
この可搬の記憶装置を前記スマートフォンに接続し、
前記可搬の記憶装置に記憶された前記データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを、前記スマートフォンに入力し、
前記スマートフォンは前記入力された前記データ処理ソフトウェアをインストールし、
前記データ処理をすることは、前記スマートフォンの前記インストールされた前記データ処理ソフトウェアが、前記入力された、前記仕様のデータを用いてデータ処理することを含む、
回転機械部品の携帯端末利用検査方法。
【請求項2】
請求項1において、前記携帯情報端末器に、前記データ処理ソフトウェアでデータ処理された処理結果を記憶し、複数の処理結果を比較する回転機械部品の携帯端末利用検査方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記データ処理による処理結果として数値データを求め、この数値データが、前記型番毎に定められた閾値を超えるか、または閾値以内であっても経時的な処理結果の比較で定められた条件に該当するときは異常であると判断し、その判断結果を前記スマートフォンの画面に表示させる、回転機械部品の携帯端末利用検査方法。
【請求項4】
データ処理ソフトウェア、および前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを記憶した可搬の記憶装置と専用センサを番号で対応させ、可搬の記憶装置を専用センサとセットで-販売する請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の携帯端末利用検査方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した(以下、同じ。)。

「【0035】
一方、PDA17側は、CPU31,メモリ(記憶手段)32,ISAバスインターフェイス(I/F)33等を備えて構成されている。ISAバスI/F33は、PCカード18との間におけるバス制御を行うものである。メモリ32には、オペレーティングシステム(OS)34としてWINDOWS CE(登録商標)がインストールされており、そのOS34上で動作するアプリケーションプログラムとして測定・診断プログラム(診断手段)35も記憶されている。」

「【0042】
次に、本実施例の作用について図5乃至図11を参照して説明する。尚、転がり軸受2の詳細な構造とその異常診断方法の概要については、例えば特開2001-255241などに開示されているのでここでは省略する。また、振動データの測定及び診断の各処理についても、基本的な部分は特願2001-346201に記載されているものと同様である。
【0043】
PDA17において、軸受診断用の測定・診断プログラム35を起動すると、表示入力部19の画面上には、図示はしないがメインメニュー画面が表示される。このメインメニュー画面では、まず、使用する診断データファイル36の設定が行われる。これは、既存のものの中から選択するか、新規作成することにより行われる。続いて、以下の項目が選択可能に表示され、設定された診断データファイル36に対して各項目の処理が実行される。
≪初期設定≫,≪振動検出≫,≪軸受診断≫,≪振動音出力≫
【0044】
尚、以下において診断情報とは、校正情報(原振動信号を校正するための校正用音声信号等)、測定情報(PCカード18内のアンプ40のゲイン設定値,測定場所及び測定日時)、電動機情報(指令周波数,容量及び極数)、及び、識別情報(軸受2のメーカ名及び型式)で構成されているものとする。
【0045】
≪初期設定≫
メインメニュー画面から≪初期設定≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない初期設定画面が表示される。この初期設定画面では、以下の各項目を選択することで、校正情報,測定情報,電動機情報及び識別情報の設定が行われる。
【0046】
[校正情報の設定]
ここでは、原振動信号の振幅を重力加速度に対応付けるための校正に必要な校正用振動信号の設定が行われる。まず、PDA17に、原振動信号の検出時と同一の加速度センサ15及びPCカード18を装備し、PCカード18内のアンプ40のゲインは原振動信号の検出時と同一値に設定する。次に、正確な一定の重力加速度で振動させることが可能な加振器等を用いて、例えば重力加速度1Gから10Gまで1G毎に振動させる。
【0047】
これにより、PCカード18では、各重力加速度における加振器等の振動が検出されてA/D変換が行われ、デジタルの校正用振動信号が出力されて、診断データファイル36に記録される。
【0048】
斯様にして複数の校正用振動信号が記録されると、夫々の重力加速度における校正用振動信号のピークの平均値が検出される。そして、重力加速度と前記平均値との一次比例の近似直線(以下、この近似直線を校正用近似直線と称す)が演算により求められ、診断データファイル36に記録される。
【0049】
[測定情報の設定]
ここでは、PDA17にて検出された原振動信号の振幅を最適化するためにアンプ40のゲイン設定が行われる。まず、電動機1を駆動させ、PDA17にて、軸受2の振動を原振動信号として検出する。このとき、表示入力部19の画面上に原振動信号の波形がリア
ルタイムで表示されるので、作業者は、この波形を見ながら振幅が適正な大きさとなるようにゲインを設定する。設定されたゲインは診断データファイル36に記録される。
また、測定場所及び測定日時の設定が可能であり、設定された測定場所及び測定日時は必要に応じて診断データファイル36に記録される。
【0050】
[電動機情報の設定]
ここでは、電動機1の指令周波数,容量及び極数の設定が行われる。指令周波数は、電動機1を実際に駆動させた時のものを入力する。容量及び極数は、電動機1に付された銘板等に記載されているものを入力する。そして、これらも診断データファイル36に記録される。
【0051】
[識別情報の設定]
ここでは、軸受2の形状データを選択するために識別情報の設定が行われる。これは、電動機1に付された銘板等に記載されている識別情報を入力することで行われ、診断データファイル36に記録される。
【0052】
尚、形状データ等については、PDA17内部のメモリ32に予め記憶されているものでも良く、また、PDA17に接続される図示しないメモリーカード(例えば、SDメモリカード(登録商標)やCF(コンパクト・フラッシュ)カード等)に記憶されているものでも良い。更に、PDA17の図示しない外部通信インターフェイス(例えば、USB,Bluetooth,PHS等)を使用して、例えば外部のサーバなどに配置されているデータベースにアクセスを行ない、メモリ32にダウンロードしても良い。
【0053】
ここで、図5には、測定データファイル36のデータ領域構造を示す。測定データファイル36のデータ領域は、情報チャンク43とウェーブチャンク44とで形成されている。
【0054】
ウェーブチャンク44は音声用のデータを記録するためのデータ領域であり、記録された音声用のデータは、メディア・プレーヤ37により再生させてヘッドフォンジャック46より音声として出力可能である。そして、PDA17は、原振動信号をこのウェーブチャンク44に記録する。一方、情報チャンク43はユーザが任意のデータを記録可能なデータ領域であり、記録されたデータは、メディア・プレーヤ37等では自動的に読み飛ばされる。そして、PDA17は、診断情報をこの情報チャンク43に記録する。
【0055】
≪振動検出≫
メインメニュー画面から≪振動検出≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない振動検出画面が表示され、軸受2の振動検出が行われる。以下、図6のフローチャートを参照しながら振動検出の作用について説明する。
【0056】
先ず、ステップS1では、サンプリング周波数の設定が行われる。設定されるサンプリング周波数は、例えば50kHz及び25kHzである。続くステップS2では、検出開始操作の入力待ち状態となっている。このとき、作業者が、電動機1の軸受2に加速度センサ15が装着され、且つ、駆動装置(図示せず)に設定された指令周波数に基づき電動機1が定常状態で駆動されていることを確認して検出開始操作を行うと、ステップS3に移行する。
【0057】
ステップS3では、PCカード18において設定されたサンプリング周波数で振動信号のA/D変換が行われ、原振動信号が生成される。そして、続くステップS4では、原振動信号がウェーブ形式データに変換され、診断データファイル36のウェーブチャンク44に記録される。
【0058】
≪軸受診断≫
メインメニュー画面から≪軸受診断≫が選択されると、表示入力部19の画面上には図示しない軸受診断画面が表示され、診断データファイル36に記録された原振動信号及び診断情報に基づいて軸受2の診断が行われる。以下、図7のフローチャートを参照しながら診断の作用について説明する。
【0059】
ステップT1では、診断データファイル36から原振動信号及び診断情報が読み出され、続くステップT2では、診断情報内の識別情報に基づいて、例えばメモリ32から診断に必要な形状データの読み出しが行われる。ここで、識別情報の一部が未記録の場合には、診断情報内の電動機情報に対応した選択条件に基づいて形状データが選択される。また、電動機情報の一部が未記録の場合には、表示入力部19の画面上に形状データを入力する画面が表示され、作業者により形状データが入力される。
【0060】
次のステップT3では、軸受2の異常を判定するための重力加速度の値(以下、異常判定用重力加速度と称す)が入力される。続くステップT4では、診断情報内の校正用近似直線データに基づいて原振動信号の1サンプル毎の校正が行われ、校正済振動信号が生成される。校正済振動信号は、作業者の必要に応じて診断データファイル36のウェーブチャンク44に記録可能である。
【0061】
ステップT5では、軸受2の異常の有無を判定するための簡易診断が実行される。この簡易診断の詳細を、図8のフローチャートを参照しながら説明する。先ず、校正済振動信号の全サンプル値を1サンプル毎に比較することで重力加速度のピーク値の検出が行われる(ステップU1)。
【0062】
次に、前記全サンプル値について実効値を演算し(ステップU2)、また、その全サンプル値の絶対値の総和にπ/2を乗じてオーバーオール値を演算する(ステップU3)。更に、前記全サンプル値について標準偏差を求めると(ステップU4)、ステップU1で検出したピーク値をステップU2で演算した実効値で除すことによりクレスト・ファクタ(C.F.:Crest Factor)を演算する(ステップU5)。
【0063】
続いて、全サンプル値について遮断周波数1kHzでハイパスフィルタ処理を行なうと(ステップU6)、そのフィルタ処理後のサンプル値についてステップU1?U5で行なったものと同一の演算を行なう(ステップU7)。即ち、以上に基づく振動成分は、比較的高域において顕著に現われるからである。
【0064】
そして、次のステップU8では異常判定が行なわれる。異常判定は、各ステップU1?U5及びU7で求めた評価値(これらを兆候パラメータと称す)を、夫々の基準によって判定することで行なう。例えば、ステップU1で検出された校正済振動信号のピーク値については、図7のステップT3で入力された異常判定用重力加速度との比較が行われ、前者が後者よりも大きい場合は軸受2に「異常有り」と判定される。そして、図7のステップT6に移行する。
【0065】
ここで、図9には、(a)識別情報(機器情報)と(b)簡易診断による解析結果の一例(表示入力部19における画面表示例)を示す。即ち、(a)に示す機器情報としては、「点検No.」、「部署名」、「建屋No.」、「枠番」、「回転数」、「軸受メーカ」、「軸受型式」、「コメント」などが表示される。また、(b)に示す解析結果としては、例えば、図8のステップU1?U5で演算された兆候パラメータが表示される。
【0066】
ステップT6では、簡易診断の結果により軸受2に「異常無し」と判定された場合はステップT8に移行し、「異常有り」と判定された場合はステップT7に移行して精密診断が行われる。この精密診断の詳細を図10のフローチャートを参照しながら説明する。
【0067】
まず、校正済振動信号(ハイパスフィルタ処理されたもの)について、帯域3kHz?8kHzのバンドパスフィルタ処理を行ない(ステップV0)、続くステップV1では、校正済振動信号の高速フーリエ変換(FFT)処理が行われる。高速フーリエ変換処理は、校正済振動信号の連続した複数点のデータに基づいて行われる。校正済振動信号の周波数成分には、特定の周波数領域で重力加速度の振幅が大きな部分が複数現われる。以下、これらの周波数領域を極大領域と称する。これらの極大領域は、電動機1の実回転速度や、軸受2を構成する部品の特徴周波数、及びこれらの周波数の高調波成分である。
【0068】
続いて、ステップV2では、高速フーリエ変換処理の結果から、電動機1の実回転速度の検出が行われる。具体的には、複数の極大領域の中から、診断情報内の周波数指令の値に最も近い極大領域が検出され、この極大領域の極大値を示す周波数が電動機1の実運転周波数(実回転速度)として検出される。
【0069】
ステップV3では、検出された実回転速度及び図7のステップT2において読み出された形状データに基づいて、軸受2の特徴周波数(パス周波数)が算出される。次のステップV4では、校正済振動信号の高調波ノイズ成分を除去するために校正済振動信号の包絡線処理が行われて、包絡線処理済音声信号が生成される。
【0070】
ステップV5では、包絡線処理済音声信号の高速フーリエ変換処理が行われる。この高速フーリエ変換処理により、低周波領域(例えば10[Hz]?100[Hz]の周波数領域)に接近して現れる特徴周波数を明確に識別することが可能となる。
【0071】
続いて、ステップV6では、軸受2の特徴周波数と、包絡線処理済音声信号の周波数成分との比較が行われる。まず、包絡線処理済音声信号の周波数成分において、夫々の特徴周波数と一致する周波数での重力加速度の値の検出が行われる。次に、検出された重力加速度値の中で、一番大きな値を示す特徴周波数が検出される。そして、検出された特徴周波数に対応する軸受2の部品が異常の主要因として特定される。そして、図7のステップT8に移行する。
【0072】
ステップT8では、簡易診断及び精密診断の診断結果を受けて、この診断結果を表示入力部19へ表示する処理が行われる。また、作業者の必要に応じて、診断結果を診断データファイル36の情報チャンクに記録することも可能である。」

したがって、上記引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「PDA17において、メモリ32に記憶されている軸受診断用の測定・診断プログラム35を起動すると、表示入力部19の画面上には、メインメニュー画面が表示され、メインメニュー画面では、まず、使用する診断データファイル36の設定が行われ、続いて、≪初期設定≫、≪振動検出≫、≪軸受診断≫、≪振動音出力≫の項目が選択可能に表示され、設定された診断データファイル36に対して各項目の処理が実行され、
メインメニュー画面から≪初期設定≫が選択されると、表示入力部19の画面上には初期設定画面が表示され、初期設定画面では、校正情報,測定情報,電動機情報及び識別情報(軸受2のメーカ名及び型式)の設定が行われ、
軸受2の形状データを選択するために識別情報の設定が行われ、形状データ等については、PDA17に接続されるメモリーカードに記憶されているものでも良く、
メインメニュー画面から≪振動検出≫が選択されると、表示入力部19の画面上には振動検出画面が表示され、軸受2の振動検出が行われ、電動機1の軸受2に加速度センサ15が装着され、PCカード18において設定されたサンプリング周波数で振動信号のA/D変換が行われ、原振動信号が生成され、原振動信号がウェーブ形式データに変換され、診断データファイル36のウェーブチャンク44に記録され、
メインメニュー画面から≪軸受診断≫が選択されると、表示入力部19の画面上には軸受診断画面が表示され、診断データファイル36に記録された原振動信号及び診断情報に基づいて軸受2の診断が行われ、診断データファイル36から原振動信号及び診断情報が読み出され、診断情報内の識別情報に基づいて、診断に必要な形状データの読み出しが行われ、軸受2の異常の有無を判定するための簡易診断が実行され、簡易診断の結果により軸受2に「異常有り」と判定された場合は精密診断が行われ、検出された実回転速度及び形状データに基づいて、軸受2の特徴周波数(パス周波数)が算出され、検出された特徴周波数に対応する軸受2の部品が異常の主要因として特定され、簡易診断及び精密診断の診断結果を受けて、この診断結果を表示入力部19へ表示する処理が行われる、軸受診断方法。」(以下、「引用発明」という。)

2 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、次の事項が記載されている。

「【0021】
また、マイクロプロセッサ制御送信機8が提供され、マイクロプロセッサ制御送信機8は、表示装置又はディスプレイ10、計測器制御機能のためのソフトウェアメニュー、及び、PLCや産業用制御システムに使用されるデータ収集システムなどの外部デバイスと通信するための他の手段を有する。また、マイクロプロセッサ制御送信機8は、ユーザーインターフェース12を有し、それによって、ユーザーは、メニューからオプションを選択し、抵抗値を入力する。用語の送信機8は、本明細書中に記載された機能を実行することができるあらゆる装置にすることができる。特に、マイクロプロセッサ制御送信機8は、コンピュータ、PDA、スマートフォン、又は他の同様なデバイスを含むがこれらに限定されない、センサ4からのデジタル信号を受信することができるあらゆるデバイスにすることができる。ケーブル14は、センサ4とマイクロプロセッサ制御送信機8との間に介在し、それらの通信を容易にする。ケーブル14は、センサ4に接続する第1端部16と、マイクロプロセッサ制御送信機8に接続する第2端部18とを有する。ケーブル14は、センサ4及びマイクロプロセッサ制御送信機8の双方に対するケーブル14の容易な取り外し及び取り付けを可能にするクイックディスコネクト機能を有する。」

3 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。

「A user, intending to perform blood glucose test, separates the two subunits 402 and 404 thereof. Then, a user should attach subunit 402 to his smart phone that was pre-installed with specific application software as mentioned above. In accordance with one variation of the invention, while connecting the two pieces together the glucometer application pops up showing that the system is ready for glucose test. Next, a user uses subunit 404 to prick the skin for blood drawing and attaches the drop of blood to slot 440 of subunit 402 allowing for blood to be suctioned by capillary force into the test strip. After few seconds, test result appears on the smart phone screen. The glucometer application software installed of the smart phone allows the test results to be stored in the smart phone memory and allows displaying trends and history of previous glucose tests, for the evaluation of disease management and data transfer.」(第23頁第7行-第18行)
(当審訳)
「血糖試験を実施しようとする使用者は、その二つのサブユニット402及び404を分離する。次いで、使用者は、サブユニット402を、上述の特定のアプリケーションソフトウエアを事前にインストールされた自らのスマートフォンに取り付けなければならない。本発明の一つのバリエーションに従えば、二つのピースを一緒に接続しながら、グルコメータアプリケーションが飛び出して、システムが糖試験の準備ができたことを示す。次に、使用者は、採血のために皮膚を穿刺するためにサブユニット404を使用し、そして血液の滴をサブユニット402のスロット440に付着させ、血液が毛細管力によって試験ストリップ内に吸引されることを可能にする。数秒後、試験結果がスマートフォンのスクリーン上に現れる。スマートフォンにインストールされたグルコメータアプリケーションソフトウエアによって、試験結果がスマートフォンのメモリ中に保存されることが可能になり、そして、病気の管理の評価及びデータ伝達のために、前の糖試験の傾向及び履歴を表示することが可能になる。」

4 上記2及び3より、計測や試験において、スマートフォンを用いることは、周知技術であると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明における「軸受2」、「診断」は、それぞれ、本願発明1における「回転機械部品」、「検査」に相当する。また、引用発明における「PDA17」は、携帯端末器であるから、本願発明1における「スマートフォン」と、「携帯端末器」である点で共通する。

イ 引用発明において、「加速度センサ15」は「軸受2の振動検出」のために用いられる専用のものであり、検出された「振動信号」は、「A/D変換」され、「原振動信号」として「PDA17」内の「診断データファイル36」に入力されて記録されている。

ウ 引用発明においては、「軸受診断用の測定・診断プログラム35を起動すると、」「メインメニュー画面が表示され、」「メインメニュー画面から≪軸受診断≫が選択されると、表示入力部19の画面上には軸受診断画面が表示され、診断データファイル36に記録された原振動信号及び診断情報に基づいて軸受2の診断が行われ、診断データファイル36から原振動信号及び診断情報が読み出され、診断情報内の識別情報に基づいて、診断に必要な形状データの読み出しが行われ、軸受2の異常の有無を判定するための簡易診断が実行され、簡易診断の結果により軸受2に「異常有り」と判定された場合は精密診断が行われ、検出された実回転速度及び形状データに基づいて、軸受2の特徴周波数(パス周波数)が算出され、検出された特徴周波数に対応する軸受2の部品が異常の主要因として特定され、簡易診断及び精密診断の診断結果を受けて、この診断結果を表示入力部19へ表示する処理が行われる」から、「加速度センサ15」で検出し「PDA17」に付与されたデータである「原振動信号」を、「PDA17」に備えられた「軸受診断用の測定・診断プログラム35」と、「形状データ」とを用いてデータ処理し、データ処理の結果である「診断結果を表示入力部19へ表示」しているといえる。ここで、引用発明において、「識別情報(軸受2のメーカ名及び型式)」の設定が行われて「軸受2の形状データ」が選択されるから、「形状データ」は軸受の型番毎の寸法等の仕様のデータであるといえる。

エ 上記アないしウを踏まえると、引用発明における「メインメニュー画面から≪振動検出≫が選択されると、表示入力部19の画面上には振動検出画面が表示され、軸受2の振動検出が行われ、電動機1の軸受2に加速度センサ15が装着され、PCカード18において設定されたサンプリング周波数で振動信号のA/D変換が行われ、原振動信号が生成され、原振動信号がウェーブ形式データに変換され、診断データファイル36のウェーブチャンク44に記録され、メインメニュー画面から≪軸受診断≫が選択されると、表示入力部19の画面上には軸受診断画面が表示され、診断データファイル36に記録された原振動信号及び診断情報に基づいて軸受2の診断が行われ、診断データファイル36から原振動信号及び診断情報が読み出され、診断情報内の識別情報に基づいて、診断に必要な形状データの読み出しが行われ、軸受2の異常の有無を判定するための簡易診断が実行され、簡易診断の結果により軸受2に「異常有り」と判定された場合は精密診断が行われ、検出された実回転速度及び形状データに基づいて、軸受2の特徴周波数(パス周波数)が算出され、検出された特徴周波数に対応する軸受2の部品が異常の主要因として特定され、簡易診断及び精密診断の診断結果を受けて、この診断結果を表示入力部19へ表示する処理が行われる」ことと、本願発明1における「回転機械部品を検査する方法であって、スマートフォンと、前記回転機械部品の状況を検出しその検出データを前記スマートフォンに入力する専用センサとを用い、前記専用センサで検出し前記スマートフォンに付与された検出データを、前記スマートフォンに備えられたデータ処理ソフトウェアと、前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータとを用いてデータ処理する過程を含み、このデータ処理の処理結果を前記スマートフォンの画面に表示させ」ることとは、「回転機械部品を検査する方法であって、携帯端末器と、前記回転機械部品の状況を検出しその検出データを前記携帯端末器に入力する専用センサとを用い、前記専用センサで検出し前記携帯端末器に付与された検出データを、前記携帯端末器に備えられたデータ処理ソフトウェアと、前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータとを用いてデータ処理する過程を含み、このデータ処理の処理結果を前記携帯端末器の画面に表示させ」る点で共通する。

オ 上記ア及びウを踏まえると、引用発明における「軸受2の形状データを選択するために識別情報の設定が行われ、形状データ等については、PDA17に接続されるメモリーカードに記憶されているものでも良く、」「メインメニュー画面から≪軸受診断≫が選択されると、表示入力部19の画面上には軸受診断画面が表示され、診断データファイル36に記録された原振動信号及び診断情報に基づいて軸受2の診断が行われ、診断データファイル36から原振動信号及び診断情報が読み出され、診断情報内の識別情報に基づいて、診断に必要な形状データの読み出しが行われ、軸受2の異常の有無を判定するための簡易診断が実行され、簡易診断の結果により軸受2に「異常有り」と判定された場合は精密診断が行われ、検出された実回転速度及び形状データに基づいて、軸受2の特徴周波数(パス周波数)が算出され、検出された特徴周波数に対応する軸受2の部品が異常の主要因として特定され、簡易診断及び精密診断の診断結果を受けて、この診断結果を表示入力部19へ表示する処理が行われる」ことと、本願発明1における「前記データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを同じ可搬の記憶装置に記憶し、この可搬の記憶装置を前記スマートフォンに接続し、前記可搬の記憶装置に記憶された前記データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを、前記スマートフォンに入力し、前記スマートフォンは前記入力された前記データ処理ソフトウェアをインストールし、前記データ処理をすることは、前記スマートフォンの前記インストールされた前記データ処理ソフトウェアが、前記入力された、前記仕様のデータを用いてデータ処理することを含む」こととは、「前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを可搬の記憶装置に記憶し、この可搬の記憶装置を前記携帯端末器に接続し、前記可搬の記憶装置に記憶された前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを、前記携帯端末器に入力し、前記データ処理をすることは、前記入力された、前記仕様のデータを用いてデータ処理することを含む」点で共通する。

カ 引用発明における「軸受診断方法」は、携帯端末であるPDAを利用しているから、下記の相違点を除いて、本願発明1における「回転機械部品の携帯端末利用検査方法」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「回転機械部品を検査する方法であって、携帯端末器と、前記回転機械部品の状況を検出しその検出データを前記携帯端末器に入力する専用センサとを用い、
前記専用センサで検出し前記携帯端末器に付与された検出データを、前記携帯端末器に備えられたデータ処理ソフトウェアと、前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータとを用いてデータ処理する過程を含み、
このデータ処理の処理結果を前記携帯端末器の画面に表示させ、
前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを可搬の記憶装置に記憶し、
この可搬の記憶装置を前記携帯端末器に接続し、
前記可搬の記憶装置に記憶された前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを、前記携帯端末器に入力し、
前記データ処理をすることは、前記入力された、前記仕様のデータを用いてデータ処理することを含む、
回転機械部品の携帯端末利用検査方法。」

(相違点1)
本願発明1は「スマートフォン」を用いるのに対し、引用発明は「PDA」を用いる点。

(相違点2)
本願発明1においては、「前記データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを同じ可搬の記憶装置に記憶し、」「前記可搬の記憶装置に記憶された前記データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを、前記スマートフォンに入力し、」「前記スマートフォンは前記入力された前記データ処理ソフトウェアをインストールし、」「前記データ処理をすることは、前記スマートフォンの前記インストールされた前記データ処理ソフトウェアが、前記入力された、前記仕様のデータを用いてデータ処理することを含む」のに対し、引用発明においては、「形状データ等」が記憶されている「PDA17に接続されるメモリーカード」に「軸受診断用の測定・診断プログラム」が記憶されておらず、「PDA17に接続されるメモリーカード」から「PDA17」に「軸受診断用の測定・診断プログラム」が入力・インストールされず、「PDA17に接続されるメモリーカード」に記憶され、「PDA17」に入力・インストールされた「軸受診断用の測定・診断プログラム」でデータ処理していない点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点1及び相違点2についてまとめて検討する。
引用文献2-6のいずれにも、回転機械部品を検査する方法として、「スマートフォン」を用い、「データ処理ソフトウェアおよび回転機械部品の型番毎の仕様のデータを同じ可搬の記憶装置に記憶し、この可搬の記憶装置を携帯端末器に接続し、可搬の記憶装置に記憶されたデータ処理ソフトウェアおよび回転機械部品の型番毎の仕様のデータを、携帯端末器に入力し、携帯端末器は入力されたデータ処理ソフトウェアをインストールし、インストールされたデータ処理ソフトウェアが、入力された、仕様のデータを用いてデータ処理する」ことは記載されていない。
よって、主に個人利用やビジネス用途向けに電話・通信機能を組み込んだことを特徴とするスマートフォンを、回転機械物品の検査に用いようと着想し、さらに、データ処理ソフトウェアや仕様データの入力を、該電話・通信機能を利用せずに、敢えて可搬の記憶装置を用いて行い、さらに、データ処理ソフトウェア及び仕様データを、同じ可搬の記憶装置に記憶することによって、検査に際して行う、データ処理ソフトウェア及び仕様データの入力の手間を省いて、上記相違点1及び相違点2に係る本願発明の構成とすることは、引用文献2-6に記載された事項及び引用文献5,6に記載された周知技術から、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-4に記載された発明及び引用文献5、6に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-4について
請求項2-4は、直接又は間接的に請求項1を引用するから、本願発明2-4も、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1-4に記載された発明及び引用文献5、6に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-4は「前記データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを同じ可搬の記憶装置に記憶し、この可搬の記憶装置を前記スマートフォンに接続し、前記可搬の記憶装置に記憶された前記データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを、前記スマートフォンに入力し、前記スマートフォンは前記入力された前記データ処理ソフトウェアをインストールし、前記データ処理をすることは、前記スマートフォンの前記インストールされた前記データ処理ソフトウェアが、前記入力された、前記仕様のデータを用いてデータ処理することを含む」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に記載された発明及び引用文献5、6に記載された周知技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-10 
出願番号 特願2012-134532(P2012-134532)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 萩田 裕介  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
関根 洋之
発明の名称 回転機械部品の携帯端末利用検査方法  
代理人 杉本 修司  
代理人 野田 雅士  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ