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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1333097
審判番号 不服2015-10604  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-04 
確定日 2017-10-05 
事件の表示 特願2012-521695「バッグインコンテナ組立体、バッグオンコンテナ組立体を形成する方法、バッグインコンテナ組立体を形成する方法、箱ブランクと再密封可能な袋との結合体、及び箱と再密封可能な袋との結合体を形成する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月27日国際公開、WO2011/011283、平成24年12月27日国内公表、特表2012-533487〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件は、平成22年7月16日(パリ条約による優先権主張2009年7月23日、米国)の国際出願であって、平成26年4月23日付けで拒絶理由が通知され、平成26年8月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年1月15日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成27年6月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がなされ、平成28年3月2日付けで当審より拒絶理由が通知され、平成28年7月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年8月31日付けで、再度、当審より拒絶理由が通知され、平成29年1月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「容器部材と、開口端部及び閉塞端部を有し、再密封可能な袋部材とを備え、前記容器部材は、前記容器部材の内部に至る開口を形成するように構成された入口部と、前記入口部とは反対側に位置する閉塞端部とを有するバッグインコンテナ組立体であって、
前記袋部材の開口端部が、前記容器部材の前記入口部の端部及び前記容器部材の前記閉塞端部の双方から離間した位置で、前記容器部材の入口部内の内面の少なくとも1つに固定されることにより、前記容器部材の閉塞端部は、前記再密封可能な袋部材によって覆われない状態にあること
を特徴とするバッグインコンテナ組立体。」

3.当審の判断
(1)当審において平成28年8月31日付けで通知した拒絶の理由のうち、理由2(特許法第29条第2項)の概要は、本件出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された、実願昭63-95649号(実開平2-16748号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

(2)引用文献には、以下の事項が記載されている。
ア.「高ニトリル樹脂からなる筒状容器の一端または両端が可撓性を有し、かつガスバリアー性に優れた筒状フィルムからなる筒状容器において、筒状フィルムの端部にファスナーを有してなることを特徴とする筒状容器。」(実用新案登録請求の範囲請求項1)
イ.「〔産業上の利用分野〕
本考案は、高ニトリル樹脂からなる容器に関する。詳しくは、開封後の保存性も優れた筒状容器に関するものである。」(1頁下から4行?末行)
ウ.「〔従来の技術〕
各種食品の保存性を向上するために、ガスバリアー性に優れた包装材料を用い、脱酸素剤を収納したり、ガス置換をして密封することが行われている。
容器の形状としては、トレー、カップ、ボトルなど様々なものがある。筒状の容器では、脱酸素剤を使用時あるいは包装後の保管、輸送時の温度変化などにより包装内外の圧力差が生じ、容器が変形し、内容物が変形したり商品の意匠性が劣るため、容器の厚みを厚くするとか、リブなどで補強するなどの方法がとられているが、容器の厚みを厚くするとコストが高くなり、またリブをいれた場合には容器にラベルを貼るのが困難となる。この改良法として、容器の一端または両端に可撓性を有する筒状フィルムを設ける考案を本出願人により提案した。(実願昭63-14736号)」(2頁1行?下から4行)
エ.「〔考案が解決しようとする課題〕
しかしながら、開封時に筒状フィルムを切断するため、開封後は容器のガスバリヤー性が失われ内容物の保存性が低下するという問題が未解決であった。
本考案の目的は従来のガスバリヤー性筒状容器が有する欠点のない、開封後も保存性に優れた筒状容器を提供することにある。」(2頁下から3行?3頁5行)
オ.「〔課題を解決するための手段〕
本考案者らは、かかる課題を解決するため鋭意検討し、剛性およびガスバリアー性に優れる高ニトリル樹脂からなる筒状容器の一端または両端の可撓性を有するフィルムにファスナーを付与することにより、これら問題を一気に解決しうることを見出し、遂に本考案を完成した。
すなわち、本考案は、高ニトリル樹脂からなる筒状容器の一端または両端が可撓性を有し、かつガスバリアー性に優れた筒状フィルムからなる筒状容器において、筒状フィルムの端部にファスナーを有してなることを特徴とする筒状容器である。」(3頁6行?下から4行)
カ.「本考案の容器は、上記樹脂を通常の押出成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等により得られたシートを真空成形、圧空成形することにより、あるいはブロー成形、射出成形することにより、更にはシートを必要な大きさに切断してヒートシールなどすることによって得られた筒状の胴部の一端に、例えば金属性の底蓋を巻き締めることにより得られた容器本体と、別途製造された可撓性およびガスバリアー性に優れ、ファスナーを有する筒状フィルムを接着することにより製造される。上記において、筒状とは、円形状のみではなく、種々の形状、例えば三角、四角等を意味するものである。」(5頁3?15行)
キ.「本考案で容器胴部と端部フィルムを接着する方法としては、通常の接着剤、両面粘着テープ、ヒートシール法、高周波シール法などがある。
本考案の容器では、例えば食品などの被包装物および脱酸素剤を収納し、端部のフィルム部を通常のヒートシール法、インパルスシール法などにより封入する。」(6頁12行?下から3行)
ク.「〔実施例〕
以下、本考案の容器の一例を添付図面により説明する。
第1図は、高ニトリル樹脂シートを熱成形して得られた容器胴部1の一端にファスナー部6を有する筒状のフィルム2を接着し、シール部3にて封入した場合の本考案の筒状容器の斜視図である。容器底部には必要に応じて脱酸素剤などを収納するリブ4などを設けてもよい。」(6頁下から2行?7頁7行)
ケ.「〔考案の効果〕
本考案の筒状容器は、開封後も保存性に優れた筒状容器であり、各種の食品などの流通販売に寄与すること大である。」(7頁下から2行?8頁2行)
コ.「4.図面の簡単な説明
第1図、第2図および第3図は、本考案にかかる筒状容器の例を示す斜視図である。
図において、1は容器胴部、2はファスナーを有する筒状のフィルム、3はシール部、4はリブ、5は底蓋、6はファスナー、7は筒状のフィルムである。」(8頁3?9行)
サ.第1図から、容器胴部1の一端の外面にファスナー6を有する筒状のフィルム2が取り付けられていること、容器胴部1の他端にリブ4を設けた容器底部が配置されていること、筒状のフィルム2の一端は容器胴部1の外面に取り付けられ、筒状のフィルム2の他端にはファスナー6が設けられていることが、それぞれ看取できる。

(3)引用文献の記載事項カによれば、「容器」は「容器本体」と「ファスナー部」を有する「筒状のフィルム」を接着することにより製造されるものであり、「容器本体」は、記載事項クによれば、「容器胴部」と「容器底部」からなる。
また、図示事項サによれば、「容器胴部」の一端の外面に「筒状のフィルム」が取り付けられ、「容器胴部」の他端に「容器底部」が配置され、「筒状のフィルム」の一端は「容器胴部」の外面に取り付けられ、「筒状のフィルム」の他端には「ファスナー」が設けられる。

よって、引用文献には、
「容器本体とファスナーを有する筒状のフィルムを接着することにより製造される容器であって、
容器本体は容器胴部と容器底部からなり、容器胴部の一端の外面に筒状のフィルムが取り付けられ、容器胴部の他端に容器底部が配置されており、
筒状のフィルムの一端は容器胴部の外面に取り付けられ、筒状のフィルムの他端にはファスナーが設けられた、容器。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)本願発明と引用発明とを対比する。
ア.本願発明の「容器部材」は、「容器部材の内部に至る開口を形成するように構成された入口部」と、「入口部とは反対側に位置する閉塞端部とを有」すると特定され、「シリアル等の食品や、他の多くの製品を含む流動性の有形物」(本願明細書段落【0002】)を包装するものである。
一方、引用発明の「容器本体」は、各種食品を包装することを意図するもの(引用文献記載事項ウ)であり、第1図も参照すると、食品等を収容する内部空間を有し、その内部空間に食品等を出し入れするために「容器胴部」の一端に開口を有することは明らかである。また、「容器胴部」の他端は「容器底部」が配置され、「容器本体」の内部空間は閉塞されていることから、引用発明の「筒状の容器胴部と容器底部からなり、容器胴部の一端の外面に筒状のフィルムが取り付けられ、容器胴部の他端に容器底部が配置されて」いる「容器本体」は、本願発明の「容器部材の内部に至る開口を形成するように構成された入口部」と、「入口部とは反対側に位置する閉塞端部とを有」する「容器部材」に相当する。

イ.また、本願発明の「袋部材」は、「開口端部及び閉塞端部を有し、再密封可能」であると特定される。
本願発明は、従来、「インナーバッグを開封して所望の量の製品を取り出した後、通常インナーバッグの上部を折り畳むことによってインナーバッグを封じ直す。しかしながら、このようなインナーバッグは大抵開封するのが難しく、効果的に封じ直すことがほとんどできない」(本願明細書段落【0002】)、「湿気や酸素の侵入による腐敗からあまり保護されない」(同段落【0005】)ため、「効果的に容器を密封できる容器及び袋の結合体が必要である。また、袋を開封した後に再密封可能な容器及び袋の結合体も必要である」(同段落【0007】)との課題を解決するために成されたものである。また、「袋部材の閉塞端部は、袋部材の閉塞端部を再密封可能な封止手段を含んでいてもよい。封止手段は、ジッパー等の所定の長さの直線状のファスナーであってもよい。」(同段落【0012】)、「袋部材14が再密封可能な場合、容器部材12から品物を何度も取り出せるよう、袋部材14を開いたり再密封したりすることができる。袋部材14が再密封可能な場合、再密封可能な封止部16によって袋部材14を密封し直してもよい。」(同段落【0053】)とされていることからみて、本願発明の「閉塞端部」は、ファスナー等の再密封可能な封止手段が設けられたものを意味すると解される。同様に、「密封」が「湿気や酸素の侵入による腐敗から」保護できる程度に袋を閉じることと解されるから、本願発明の「再密封可能」とは、ファスナー等の封止手段により、「容器部材12から品物を何度も取り出せるよう、袋部材14を開いたり再密封したりすることができ」、閉じる際には「湿気や酸素の侵入による腐敗から」保護できる程度に密封できることと解される。
一方、引用発明の「筒状のフィルム」の「一端は容器胴部の外面に取り付けられ」、「他端にはファスナーが設けられ」る。上記ア.で述べたように、「容器本体」は食品等を収容する内部空間を有し、その内部空間に食品等を出し入れするための開口を「容器胴部」の一端に有するものであるが、「容器胴部の外面に取り付けられ」る「筒状のフィルム」の一端は、第1図からみても、この「容器胴部」の開口と連通して開口していることは明らかである。また、引用発明の「筒状のフィルム」の他端に設けられた「ファスナー」は、引用発明が「開封後も保存性に優れた筒状容器を提供する」(引用文献記載事項エ)ことを目的に成されたものであるから、開封により内容物を取り出すことができ、開封された後に閉じれば、ガスバリヤー性が失われず内容物の保存性が低下することがない程度に袋を閉塞できるものであると解される。
そうすると、引用発明の「筒状のフィルム」の一端は開口され、他端には袋を閉塞するファスナーが設けられているから、引用発明の「一端は容器胴部の外面に取り付けられ」、「他端にはファスナーが設けられ」る「筒状のフィルム」は、本願発明の、「開口端部及び閉塞端部を有し、再密封可能」である「袋部材」に相当するものといえる。

ウ.また、本願発明の「袋部材」の「開口端部」は、「容器部材の入口部内の内面の少なくとも1つに固定される」。これにより、本願発明の「バッグインコンテナ組立体」は、再密封時に収容された製品を「湿気や酸素の侵入による腐敗から」保護することができるものである。
一方、引用発明の「筒状のフィルムの一端」を、「容器胴部の一端の外面」に「接着」して取り付けることにより、引用発明の「容器」は、閉塞時にガスバリヤ-性が失われず内容物を保存することができるものである。
すると、本願発明の「袋部材」の「開口端部」が、「容器部材の入口部内の内面の少なくとも1つに固定される」ことと、引用発明の「筒状のフィルムの一端」を、「容器胴部の一端の外面」に「接着」して取り付けることとは、取り付け位置で相違するものの、袋部材の開口端部が、容器部材の側面に固定されるという限りにおいて一致する。

エ.さらに、本願発明の「バッグインコンテナ組立体」について、本願明細書に「容器部材と再密封可能であるのが好ましい袋部材とを含む容器を備え、容器部材上に袋部材を配置して、バッグオンコンテナタイプの組立体を形成する。」(段落【0008】)、また、「容器部材内に袋部材を配置して、バッグインコンテナタイプの組立体を形成してもよい。」(段落【0009】)と記載されていることからみて、「バッグインコンテナ組立体」とは、袋部材の配置位置として、容器部材内に配置するタイプのものと解すことができ、本願発明の「バッグインコンテナ組立体」と、引用発明の「容器」とは、食品等を包装する「包装体」という限りにおいて一致する。

オ.すると、本願発明と引用発明とは、「容器部材と、開口端部及び閉塞端部を有し、再密封可能な袋部材とを備え、前記容器部材は、前記容器部材の内部に至る開口を形成するように構成された入口部と、前記入口部とは反対側に位置する閉塞端部とを有し、袋部材の開口端部が、容器部材の側面に固定される、包装体」で一致し、以下の相違点で相違する。
《相違点》
本願発明が、袋部材の開口端部が「容器部材の入口部の端部及び容器部材の閉塞端部の双方から離間した位置で、容器部材の入口部内の内面の少なくとも1つ」に固定されることにより、「容器部材の閉塞端部は、再密封可能な袋部材によって覆われない状態にある」「バッグインコンテナ組立体」であるのに対し、引用発明は、筒状のフィルムの一端が「容器胴部の一端の外面」に取り付けられた「容器」である点。

(5)以下、上記相違点について検討する。
ア.樹脂等からなる袋を容器の内面に取り付けること自体は、周知の技術(例えば、特表2008-529908号公報(平成28年3月2日付けの拒絶理由の引用文献2)、特公昭61-54658号公報、実開平6-12371号公報参照。)である。
そして、樹脂等からなる袋を容器に取り付けるにあたり、容器への取り付け位置として、容器の外面に取り付ける場合(バッグオンコンテナタイプ:引用発明)、内面に取り付ける場合(バッグインコンテナタイプ:本願発明)の二者のいずれを選択するかは、取り付け易さや見映え等を考慮して決められる設計的事項である。
しかも、湿気や酸素の侵入による腐敗からの保護等の容器としての機能において、バッグオンコンテナタイプとバッグインコンテナタイプの間で差違があるとはいえない。実際、本願明細書(【発明の効果】の記載)において、「バッグオンコンテナタイプの組立体またはバッグインコンテナタイプの組立体のいずれにおいても、容器部材と袋部材とを備えた容器は、同じサイズの従来型の容器より大きな製品梱包体積を達成することが可能となる。これにより、パレットの使用量、トラックの使用量、及び製品出荷の際のエネルギー消費量を低減することが可能となる。」(段落【0019】)、「バッグオンコンテナタイプの組立体またはバッグインコンテナタイプの組立体のいずれにおいても、容器部材と袋部材とを備える容器は、年間約1?約2g程度の低さまで湿気の侵入の防護を達成可能にする。」(段落【0020】)とされ、いずれの場合でも、本願の課題を解決することが可能である旨記載されている。
よって、袋を容器に取り付けるにあたり、容器の内面に取り付けることは、適宜、選択し得るものである。

イ.また、樹脂等からなる袋を容器に取り付ける際に、容器の側面のいずれの位置に固定するかについても、その位置は、材料のコストや製品の仕様等を考慮して決められる設計的事項である。
この点につき、請求人は、「袋部材の開口端部が、容器部材の入口部の端部及び容器部材の入口部とは反対側に位置する容器部材の閉塞端部の双方から離間した位置で、容器部材の入口部内の内面の少なくとも1つに固定されるので、容器部材の内面全域を覆うものに比して、少ない量の袋部材及び接合用の材料で容易にバッグインコンテナ組立体を形成することができるという作用効果が得られ」る(平成29年1月10日の意見書(「(1)本願発明の説明」))とする一方、「袋部材の開口端部を容器部材の底部からどの程度離間させるかは、具体的な製品ごとの仕様に応じて定まるものであり、一義的に定まるものではありません。」(同意見書(「(3)本願が特許法第36条第4項第1号、第6項第1項及び第2号に規定する要件を満たしている理由」))とも主張している。このことからみても、容器側面のいずれの位置に固定するかは、コストとともに製品の仕様により決まるものであるといえ、当業者が、それらを比較衡量して、袋の端部を、容器の入口部の端部及び閉塞端部の双方から離間した位置の少なくとも一つを選択して固定することは、適宜成し得るものである。

ウ.したがって、引用発明の筒状のフィルムの容器本体への取り付けにあたり、容器本体の容器胴部内面の両端部から離間した位置で固定して、容器底部が覆われない状態の、バックインコンテナタイプとすることは、当業者が容易に成し得たものである。

エ.請求人は、平成29年1月10日の意見書(「(1)本願発明の説明」)において、上記イ.に記載したように、「請求項1に係る発明のバッグインコンテナ組立体によれば、技術的特徴の1つとして、上述のように、袋部材の開口端部が、容器部材の入口部の端部及び容器部材の入口部とは反対側に位置する容器部材の閉塞端部の双方から離間した位置で、容器部材の入口部内の内面の少なくとも1つに固定されるので、容器部材の内面全域を覆うものに比して、少ない量の袋部材及び接合用の材料で容易にバッグインコンテナ組立体を形成することができるという作用効果が得られます。」と主張している。
しかし、内面全体を覆わなければ少ない量の袋部材及び接合用の材料で済む一方、接合面積が減るため接合強度が減り、袋で内面全体を覆わないことにより湿気や酸素からの保護にも劣ることは明らかであり、コストと発揮される性能とはトレードオフの関係にあるものといえる。
よって、請求人が主張する「袋部材の開口端部が、容器部材の入口部の端部及び容器部材の入口部とは反対側に位置する容器部材の閉塞端部の双方から離間した位置で、容器部材の入口部内の内面の少なくとも1つに固定される」ことによる効果は格別のものではない。

オ.また、請求人は、同じく意見書(「(5)本願発明と引用発明との対比」)において、「引用文献1に開示された筒状容器は、容器胴部(1)の両端がいずれも開口しており、一端が閉塞端部とはなっておりません。即ち、引用文献1は、両端が開放する筒状容器に袋部材を接合した筒状容器を開示するに過ぎません。従って、本願の請求項1に係る発明と引用文献1の筒状容器とは、構成や作用効果が根本的に相違するものであります。」と主張している。
しかし、平成28年8月31日付けの当審の拒絶理由の理由2には、
「引用文献1(第1図)には、容器胴部1の一端にファスナー部6を有する筒状のフィルム2を接着した筒状容器が記載されている。また、フィルム2の容器胴部1の一端への接着箇所を、容器胴部1の外側とするか、内側とするかは、作りやすさや見栄え等を考慮して決定される設計的事項である。」と、引用文献1の「第1図」に係る筒状容器の発明を引用する旨記載している。そして、食品等を収容し、気密にして保存するためにも、「第1図」に係る筒状容器は、一端にはファスナーを有する筒状のフィルムが取り付けられ、他端は容器底部により閉塞されていることは明らかであり、「容器胴部(1)の両端がいずれも開口しており、一端が閉塞端部とはなって」いないということはなく、請求人の主張を採用することはできない。

カ.よって、本願発明により得られる作用効果も、引用発明から、当業者であれば予測し得る範囲のものであって格別なものではなく、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)以上によれば、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-26 
結審通知日 2017-05-10 
審決日 2017-05-23 
出願番号 特願2012-521695(P2012-521695)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸田 耕太郎  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 井上 茂夫
渡邊 豊英
発明の名称 バッグインコンテナ組立体、バッグオンコンテナ組立体を形成する方法、バッグインコンテナ組立体を形成する方法、箱ブランクと再密封可能な袋との結合体、及び箱と再密封可能な袋との結合体を形成する方法  
代理人 相原 史郎  

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