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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B |
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管理番号 | 1333101 |
審判番号 | 不服2016-2375 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-17 |
確定日 | 2017-10-05 |
事件の表示 | 特願2012-100114号「照明装置及びそれを用いた照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月7日出願公開、特開2013-229175号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成24年4月25日の出願であって、平成27年8月17日付けで拒絶理由が通知されたところ、平成27年10月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成27年11月9日付けで拒絶査定がなされた。これに対して平成28年2月17日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたので、当審において、平成29年2月20日付けで拒絶理由を通知したところ、平成29年4月24日に意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1-3に係る発明は、平成28年2月17日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。 「商用電源を整流して直流に変換する整流回路と、 1次巻線の一端側が前記整流回路のプラス側に接続されるトランスと、 前記トランスの前記1次巻線の他端側と前記整流回路のマイナス側との間に接続されるスイッチング素子と、 前記整流回路の出力間に接続されるコンデンサと、 前記トランスの2次巻線に接続される充電回路と、 前記充電回路によって充電される充電要素と、 商用電源の停電時に前記充電要素の出力によって光源を点灯させる非常用点灯回路と、 前記光源と、 前記1次巻線及び前記2次巻線が巻かれるボビンとを備え、 前記トランスの前記1次巻線は、前記一端側を巻き始めとして巻回されており、 前記1次巻線は、第1の1次巻線と第2の1次巻線とに分割されており、 前記第1の1次巻線及び前記第2の1次巻線は、前記ボビンに巻かれた前記2次巻線を挟み込むようにして前記ボビンに巻かれていることを特徴とする照明装置。」 2.刊行物 (1)当審において通知した拒絶の理由に引用された特開2004-127907号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (1a)「【0012】 本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、常用点灯装置、及びスイッチング電源を用いた非常用点灯装置の両方を備えても装置全体が発生する高調波を抑制して所定値以下とする照明装置を提供することにある。」 (1b)「【0040】 (実施形態1) 本実施形態の非常用の照明装置1の構成を図1に示す。商用電源2が停電となった場合にも光源たる蛍光灯Laが点灯する本実施形態の照明装置1は、光源たる蛍光灯Laと、商用電源2の出力によって動作して蛍光灯Laを点灯させる常用点灯装置たる電子式安定器(以下、商用インバータと称す)3と、商用電源2に接続されて、商用電源2の停電時には蛍光灯Laを点灯させる非常用点灯装置たる非常用ユニット4と、蛍光灯Laの接続先を商用インバータ3(白端子側)と非常用ユニット4(黒端子側)とのうちいずれか一方に切り替える切替回路5と、非常用ユニット4を介して蛍光灯Laに点灯電力を供給する蓄電池6と、商用電源2と商用インバータ3との間を導通(オン)・遮断(オフ)するスイッチSW1とから構成される。なお蛍光灯Laは、高周波点灯専用の蛍光灯あるいはコンパクト型蛍光灯であってもよい。 【0041】 非常用ユニット4は、商用電源2に接続されて商用電源2からの入力に含まれる高調波を抑制する高調波抑制手段たる高調波抑制回路12と、整流回路及びスイッチング素子を具備して、高調波抑制回路12を介して入力された商用電源2の出力を整流した電圧に対して、スイッチング素子をオン・オフすることで降圧動作を行う降圧回路13と、降圧回路13の出力を接続されて商用電源2の通電状態を監視する停電検出回路14と、停電検出回路14を介した降圧回路13の出力によって蓄電池6を充電する充電回路15と、蓄電池6の出力によって商用電源2の停電時に蛍光灯Laを点灯させる非常用インバータ16と、蓄電池6と非常用インバータ16との間を導通(オン)・遮断(オフ)するスイッチSW2とを備えている。」 (1c)「【0045】 図2は降圧回路13の構成として、一般的なスイッチング方式の例を示している。降圧回路13は、商用電源2の出力を整流する整流回路DB1と、整流回路DB1の出力端間に接続した平滑コンデンサC1と、平滑コンデンサC1に並列接続したトランスT1の1次巻線T1aとスイッチング素子Q1との直列回路と、トランスT1の2次巻線T1bの一端に直列接続したダイオードD1と、ダイオードD1を介して2次巻線T1bに並列接続した平滑コンデンサC2と、平滑コンデンサC2に並列接続した抵抗R1とフォトカプラのフォトダイオードPD1とシャントレギュレータREG1との直列回路と、抵抗R1とフォトダイオードPD1とに並列接続した抵抗R2と、平滑コンデンサC2に並列接続して接続中点をレギュレータREG1のREF端子に接続した抵抗R3,R4の直列回路と、トランスT1の補助巻線T1cから電源を供給されてスイッチング素子Q1のオン・オフを制御する制御回路K1と、コレクタを補助巻線T1cの一端に接続し、エミッタを制御回路K1の入力に接続して、フォトダイオードPD1の発光によって駆動されるフォトカプラのフォトトランジスタPT1と、1次側と2次側の各低電圧路の間に接続されたコンデンサC3とから構成される。」 (1d)「【0057】 (実施形態3) 図7に示す本実施形態の非常用の照明装置1の降圧回路13の構成は平滑コンデンサC1の容量を小さくして、平滑レベルを低くした点が図2とは異なり、図2と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。また、照明装置1の構成は図1と同様である。 【0058】 図2に示す降圧回路13は平滑コンデンサC1による完全平滑回路を構成しており、高調波性能が悪化する要因は実施形態1で述べたように、平滑コンデンサC1への充電電流が急峻な波形となることである。図2のようなコンデンサインプット型と言われるこの種の電源回路では、平滑コンデンサC1の容量が大きいほど高調波性能は悪化していく傾向がある。したがって、逆に平滑コンデンサC1の容量を小さくしていけば、平滑コンデンサC1への充電電流、すなわち非常用ユニット4の入力電流Iinの波形は緩やかになって高調波性能が改善される。 【0059】 そこで、図7に示す本実施形態の降圧回路13の平滑コンデンサC1の容量は、平滑コンデンサC1の両端電圧、すなわち平滑部電圧Vc1の脈流の谷部の電圧が略0Vになるほど小さな容量としている(図8(a)参照)。ここで、スイッチング素子Q1を流れるスイッチング電流Iqの波形の包絡線が略正弦波になるように(図8(b)参照)、制御回路K1がスイッチング素子Q1のオン・オフを制御することによって、非常用ユニット4の入力電流Iinも略正弦波となり(図8(c)参照)、非常用ユニット4が発生する高調波を大幅に抑制することができる。なお、制御回路K1が実施形態1,2と同様の制御によってスイッチング素子Q1を動作させると、平滑部電圧Vc1が略0Vまで低下した付近で不安定な動作となり、スイッチング素子Q1を流れるスイッチング電流Iqの波形の包絡線が略正弦波にならない場合があるが、その場合は、例えばフォトダイオードPD1とフォトトランジスタPT1が構成するフォトカプラによる出力電圧帰還制御の応答性を遅くする等の手段によって、スイッチング電流Iqを制御してその包絡線を略正弦波にすることができる。このように本実施形態では、上記回路構成で高調波抑制回路12を構成している。」 これらの記載事項(1a)?(1d)及び図面内容を総合し、本願発明1の発明特定事項に倣って整理すると、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。 「商用電源2の出力を整流する整流回路DB1と、 1次巻線T1aと2次巻線T1bを有するトランスT1と、 前記整流回路DB1の出力端間に接続した平滑コンデンサC1に並列接続した前記トランスT1の1次巻線T1aとスイッチング素子Q1との直列回路と、 前記平滑コンデンサC1と、 前記トランスT1を有する降圧回路13の出力によって蓄電池6を充電する充電回路15と、 前記蓄電池6と、 前記蓄電池6の出力によって前記商用電源2の停電時に蛍光灯Laを点灯させる非常用インバータ16と、 前記蛍光灯Laと、 を備える照明装置1。」 3.対比 (1)本願発明1と刊行物発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、刊行物発明の「商用電源2」は本願発明1の「商用電源」に相当し、以下同様に、「商用電源2の出力を整流する整流回路DB1」は「商用電源を整流して直流に変換する整流回路」に、「蛍光灯La」は「光源」に、「照明装置1」は「照明装置」に、それぞれ相当する。 (2)刊行物発明の「1次巻線T1a」は、「前記整流回路DB1の出力端間に接続した平滑コンデンサC1に並列接続した前記トランスT1の1次巻線T1aとスイッチング素子Q1との直列回路」を構成するものであり、併せて図7を参照すると、「1次巻線T1a」は、その一端側が整流回路DB1のプラス側に接続されるものと認められる。 したがって、刊行物発明の「1次巻線T1aと2次巻線T1bを有するトランスT1」は、本願発明1の「1次巻線の一端側が前記整流回路のプラス側に接続されるトランス」に相当する。 (3)刊行物発明の「スイッチング素子Q1」は、「前記整流回路DB1の出力端間に接続した平滑コンデンサC1に並列接続した前記トランスT1の1次巻線T1aとスイッチング素子Q1との直列回路」を構成するものであり、併せて図7を参照すると、「スイッチング素子Q1」は、トランスT1の1次巻線T1aの他端側と整流回路DB1のマイナス側との間に接続されるものと認められる。 したがって、刊行物発明の「前記整流回路DB1の出力端間に接続した平滑コンデンサC1に並列接続した前記トランスT1の1次巻線T1aとスイッチング素子Q1との直列回路」を構成する「スイッチング素子Q1」は、本願発明1の「前記トランスの前記1次巻線の他端側と前記整流回路のマイナス側との間に接続されるスイッチング素子」に相当する。 (4)刊行物発明の「前記(前記整流回路DB1の出力端間に接続した)平滑コンデンサC1」は、本願発明1の「前記整流回路の出力間に接続されるコンデンサ」に相当する。 (5)刊行物発明の「充電回路15」は、「前記トランスT1を有する降圧回路13の出力によって蓄電池6を充電する」ものであり、併せて図1、7を参照すると、「充電回路15」は、トランスT1の2次巻線T1bに接続されるものと認められる。 したがって、刊行物発明の「前記トランスT1を有する降圧回路13の出力によって蓄電池6を充電する充電回路15」は、本願発明1の「前記トランスの2次巻線に接続される充電回路」に相当する。 (6)刊行物発明の「蓄電池6」は、充電回路15により充電されるものであるから、本願発明1の「前記充電回路によって充電される充電要素」に相当する。 (7)上記(1)での説示を踏まえると、刊行物発明の「前記蓄電池6の出力によって前記商用電源2の停電時に蛍光灯Laを点灯させる非常用インバータ16」は、本願発明1の「商用電源の停電時に前記充電要素の出力によって光源を点灯させる非常用点灯回路」に相当する。 (8)したがって、両者の一致点および相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「商用電源を整流して直流に変換する整流回路と、 1次巻線の一端側が前記整流回路のプラス側に接続されるトランスと、 前記トランスの前記1次巻線の他端側と前記整流回路のマイナス側との間に接続されるスイッチング素子と、 前記整流回路の出力間に接続されるコンデンサと、 前記トランスの2次巻線に接続される充電回路と、 前記充電回路によって充電される充電要素と、 商用電源の停電時に前記充電要素の出力によって光源を点灯させる非常用点灯回路と、 前記光源と、 を備える照明装置。」 <相違点> 「トランス」に関し、本願発明1は、「前記1次巻線及び前記2次巻線が巻かれるボビンとを備え、」「前記トランスの前記1次巻線は、前記一端側を巻き始めとして巻回されており、前記1次巻線は、第1の1次巻線と第2の1次巻線とに分割されており、前記第1の1次巻線及び前記第2の1次巻線は、前記ボビンに巻かれた前記2次巻線を挟み込むようにして前記ボビンに巻かれている」という構成を有しているのに対し、刊行物発明では、そのように特定されていない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 (1)トランスにおいて、1次巻線と2次巻線の結合を高くして漏れインダクタンスを小さくするという課題を解決するために、1次巻線を、第1の1次巻線と第2の1次巻線とに分割し、前記第1の1次巻線及び前記第2の1次巻線を、ボビンに巻かれた2次巻線を挟み込むようにして前記ボビンに巻くという技術事項は、 例えば、特開昭61-51809号公報(第2頁右上欄10行目から同頁左下欄9行目及び第9、10図等参照)又は特開平5-47571号公報(段落【0012】、【0013】及び図1、2等参照)に記載されるように当業者には周知である。 そして、刊行物発明の「トランスT1」においても、このような課題は当然内包しているといえ、刊行物1に接した当業者は容易に認識し得たというべきである。 とするならば、刊行物発明の「トランスT1」において、1次巻線と2次巻線の結合を高くして漏れインダクタンスを小さくできるよう、上記トランスの1次巻線を、第1の1次巻線と第2の1次巻線とに分割し、前記第1の1次巻線及び前記第2の1次巻線を、ボビンに巻かれた2次巻線を挟み込むようにして前記ボビンに巻くという従来周知の技術事項を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。 (2)ここで、スイッチング電源中のトランスの1次巻線と整流回路の出力との接続については、1次巻線の巻き始めを整流回路のプラス側に接続する接続と1次巻線の巻き始めを整流回路のマイナス側に接続する接続が考えられるところ、前者、すなわち、整流回路のプラス側に接続される1次巻線の一端側を1次巻線の巻き始めとする技術事項は従来周知であり、当該技術分野において広く採用されているといえる(この点必要であれば、例えば、特開平6-98539号公報(図1、2の一次巻線18aの●印等参照)又は特開昭59-129571号公報(第1図の主巻線N1の●印等参照。)。 とするならば、刊行物発明の「トランスT1」において、1次巻線を、第1の1次巻線と第2の1次巻線とに分割し、前記第1の1次巻線及び前記第2の1次巻線を、ボビンに巻かれた2次巻線を挟み込むようにして前記ボビンに巻くという従来周知の技術事項を適用する際に、整流回路のプラス側に接続される1次巻線の一端側を1次巻線の巻き始めとすることは、スイッチング電源中のトランスの1次巻線と整流回路の出力との接続に関する上記従来周知の技術事項を参考に、当業者が必要に応じて適宜なし得た構成であるとえいる。 (3)以上(1)(2)より、刊行物発明において、上記相違点に係る本願発明1の構成となすことは、上記従来周知の技術事項に基いて、当業者であれば容易に想到し得たものである。 (4)本願発明1の奏する作用効果、すなわち、1次巻線と2次巻線の結合を高くして漏れインダクタンスを小さくできるとともに、外部に向けて発生する雑音を低減するという作用効果(本願明細書段落【0008】、【0015】、【0032】、参照。)について検討する。 上記(1)に説示のとおり、トランスの1次巻線を、第1の1次巻線と第2の1次巻線とに分割し、前記第1の1次巻線及び前記第2の1次巻線を、ボビンに巻かれた2次巻線を挟み込むようにして前記ボビンに巻くという技術事項により、1次巻線と2次巻線の結合を高くして漏れインダクタンスを小さくできるという作用効果があることは当業者には広く知られるところである。 一方、スイッチング電源中のトランスにおいて、トランス巻線の巻き終わりを電源の電位の安定する側に接続すると、トランス巻線の外側の巻線にシールド材のような作用が生じ、外部に向けて発生する雑音を低減できるという作用効果があることもまた、当業者には広く知られる作用効果である(この点について、必要であれば、例えば、特開平2-65097号公報の第2ページ左上欄第16行-右上欄第3行、実願平3-12249号(実開平4-103628号)のマイクロフィルムの明細書部分段落【0009】、参照。)。 そうだとすれば、本願発明1の奏する作用効果は、刊行物発明、従来周知の技術事項の奏する作用効果およびスイッチング電源中のトランスの電源との接続に関する当業者に広く知られた作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明1は、当業者が、刊行物発明、および、従来周知の技術事項に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-08-04 |
結審通知日 | 2017-08-08 |
審決日 | 2017-08-22 |
出願番号 | 特願2012-100114(P2012-100114) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮崎 光治 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
平田 信勝 尾崎 和寛 |
発明の名称 | 照明装置及びそれを用いた照明器具 |
代理人 | 特許業務法人北斗特許事務所 |
代理人 | 西川 惠清 |
代理人 | 仲石 晴樹 |
代理人 | 坂口 武 |
代理人 | 北出 英敏 |