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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1333115
審判番号 不服2016-15511  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-18 
確定日 2017-10-05 
事件の表示 特願2014- 12292号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 3日出願公開、特開2015-139469号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年1月27日に出願したものであって,平成27年3月19日付けで拒絶理由が通知され,同年5月20日に意見書及び手続補正書が提出され,同年11月18日付けで拒絶理由が通知(いわゆる「最後の拒絶理由通知」)され,これに対し平成28年1月19日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年7月12日付けで同年1月19日付けの手続補正が却下されると共に拒絶査定がなされ,これに対して,同年10月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成28年10月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年10月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載を含む補正であり,平成27年5月20日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ,以下のとおりである(下線部は補正を示す。)。

(補正前:平成27年5月20日付けの手続補正)
「【請求項1】
始動条件が成立することにより遊技者にと.って有利な特別遊技状態へ移行させるか否かを判定する特別遊技判定手段と,
前記特別遊技判定手段による判定結果に基づいて,所定の演出手段に演出を行わせる演出制御手段と,
前記演出制御手段によって行われる演出に対応する演出音を出力するスピーカーと,
前記スピーカーから出力される演出音の音量レベルを,遊技者による調整操作に基づいて変更する音量調整手段と,
前記特別遊技状態に移行させるか否かの判定において前記特別遊技状態へ移行させると判定された場合に,遊技球が入球不可能な閉状態と遊技球が入球可能な開状態とに作動し得る第1可変入賞装置,及び,遊技球が入球不可能な閉状態と遊技球が入球可能な開状態とに作動し得ると共に入球した遊技球が通過可能な所定通過領域を有する第2可変入賞装置のうちいずれか一方の可変入賞装置を,前記開状態に作動させるラウンド遊技を複数ラウンド有する開放特別遊技を行わせる特別遊技制御手段と,
前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過していないときには,特別遊技状態に移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が第1の確率に設定される低確率遊技状態で遊技を制御する低確率遊技状態制御手段と,
前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過しているときには,特別遊技状態へ移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が前記第1の確率よりも高い第2の確率に設定される高確率遊技状態で遊技を制御する高確率遊技状態制御手段と,
を備え,
前記音量調整手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記スピーカーから出力される演出音の音量レベルを所定レベル以上に変更することを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正:平成28年10月18日付け手続補正)
「【請求項1】
始動条件が成立することにより遊技者にとって有利な特別遊技状態へ移行させるか否かを判定する特別遊技判定手段と,
前記特別遊技判定手段による判定結果に基づいて,所定の演出手段に演出を行わせる演出制御手段と,
前記演出制御手段によって行われる演出に対応する演出音を出力するスピーカーと,
前記スピーカーから出力される演出音の音量レベルを,遊技者による調整操作に基づいて変更する音量調整手段と,
前記特別遊技状態に移行させるか否かの判定において前記特別遊技状態へ移行させると判定された場合に,遊技球が入球不可能な閉状態と遊技球が入球可能な開状態とに作動し得る第1可変入賞装置,及び,遊技球が入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに作動し得ると共に入球した遊技球が通過可能な所定通過領域を有する第2可変入賞装置のうちいずれか一方の可変入賞装置を,前記開状態に作動させるラウンド遊技を複数ラウンド有する開放特別遊技を行わせる特別遊技制御手段と,
前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過していないときには,特別遊技状態に移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が第1の確率に設定される低確率遊技状態で遊技を制御する低確率遊技状態制御手段と,
前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過しているときには,特別遊技状態へ移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が前記第1の確率よりも高い第2の確率に設定される高確率遊技状態で遊技を制御する高確率遊技状態制御手段と,
を備え,
前記演出制御手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する特定演出音を前記スピーカーから出力させ,
前記音量調整手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記スピーカーから出力される前記特定演出音の音量レベルを所定レベル以上に変更することを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
(1)補正事項
本件補正は,補正前の請求項1の「第2可変入賞装置」の「遊技球が入球不可能な閉状態と遊技球が入球可能な開状態」を,実質的に意味の変わらない「遊技球が入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態」に補正し,補正前の請求項1の「演出制御手段」に関して,「前記演出制御手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する特定演出音を前記スピーカーから出力させ」という発明特定事項を追加する補正をすると共に,補正前の請求項1の「音量調整手段」が「音量レベルを所定レベル以上に変更する」「演出音」に関して,「前記特定演出音」であると特定する補正をするものである。

(2)補正の目的等についての検討
上記補正事項は,「演出制御手段」に関して,「前記演出制御手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する特定演出音を前記スピーカーから出力させ」と限定する補正であると共に,「音量調整手段」が「音量レベルを所定レベル以上に変更する」「演出音」に関して,「前記特定演出音」であると限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして,本件補正は,段落【0189】の記載に基づくものであるから,新規事項を追加するものではない。

3 独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か,について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)は,上記「1 本件補正の概要」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである(A?Iは,本願補正発明を分説するために当審で付与した。)。
「【請求項1】
A 始動条件が成立することにより遊技者にとって有利な特別遊技状態へ移行させるか否かを判定する特別遊技判定手段と,
B 前記特別遊技判定手段による判定結果に基づいて,所定の演出手段に演出を行わせる演出制御手段と,
C 前記演出制御手段によって行われる演出に対応する演出音を出力するスピーカーと,
D 前記スピーカーから出力される演出音の音量レベルを,遊技者による調整操作に基づいて変更する音量調整手段と,
E 前記特別遊技状態に移行させるか否かの判定において前記特別遊技状態へ移行させると判定された場合に,遊技球が入球不可能な閉状態と遊技球が入球可能な開状態とに作動し得る第1可変入賞装置,及び,遊技球が入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに作動し得ると共に入球した遊技球が通過可能な所定通過領域を有する第2可変入賞装置のうちいずれか一方の可変入賞装置を,前記開状態に作動させるラウンド遊技を複数ラウンド有する開放特別遊技を行わせる特別遊技制御手段と,
F 前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過していないときには,特別遊技状態に移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が第1の確率に設定される低確率遊技状態で遊技を制御する低確率遊技状態制御手段と,
G 前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過しているときには,特別遊技状態へ移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が前記第1の確率よりも高い第2の確率に設定される高確率遊技状態で遊技を制御する高確率遊技状態制御手段と,
を備え,
H 前記演出制御手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する特定演出音を前記スピーカーから出力させ,
I 前記音量調整手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記スピーカーから出力される前記特定演出音の音量レベルを所定レベル以上に変更することを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物1
原査定の平成27年11月18日付け拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された特開2013-230357号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
始動口と,特定領域を有する第1の大入賞装置と,
特定領域を有さない第2の大入賞装置と,
始動口への入球に起因して抽出された乱数値に基づいて大当り遊技を生起するか否かを判定する当否判定手段と,
該当否判定手段によって大当り遊技を生起するとの判定がなされると,大当り遊技の生起を報知する大当り図柄を,複数種類の図柄群から選択し決定する図柄決定手段と,
該図柄決定手段にて決定された図柄に基づいて,大当り遊技における第1の大入賞装置および第2の大入賞装置の開放態様を決める開放態様決定手段と,
大当り遊技で前記第1の大入賞装置に進入した遊技球が前記特定領域へ入球することにより大当り遊技後に確率変動遊技を付与する確率変動手段と,を備えた遊技機において,
前記図柄群は少なくとも第1の図柄群および第2の図柄群を有し,かつ第1の図柄群と第2の図柄群とでは異なる図柄であるが,類似した図柄で構成され,
前記開放態様決定手段は,前記大当り図柄が前記第1の図柄群に含まれる図柄であることを条件に第1の開放態様を選択し,大当り図柄が前記第2の図柄群に含まれる図柄であることを条件に第2の開放態様を選択するようになし,
前記第1の開放態様と前記第2の開放態様とでは,大当り遊技の実行単位であるラウンドの総数が同じとされ,前記第1の開放態様および前記第の2開放態様の最終ラウンドである第1の特定ラウンドのみで前記第1の大入賞装置を開放するようになし,かつ第1の開放態様における第1の大入賞装置の最大開放時間が第2の開放態様の第1の大入賞装置の最大開放時間よりも長く設定され,
前記第1の大入賞装置は,前記特定領域への遊技球の入球を規制する規制位置と入球を許容する許容位置とに変位可能な振分手段を備え,
該振分手段は,前記第1の特定ラウンドの開始から第1の所定時間が経過することを条件に前記許容位置へと移動し,前記第1の特定ラウンドの終了から第2の所定時間が経過することを条件に前記規制位置へと移動するように構成され,
前記第1の所定時間を,前記第2の開放態様の第1の大入賞装置の最大開放時間よりも前記第2の所定時間以上に長く設定したことを特徴とする遊技機。」

(イ)「【0012】
前枠11の上部の左右両側位置にはそれぞれスピーカ112が設置してあり,これらにより遊技音が出力され,遊技の趣向を向上させる。また前枠11には遊技状態に応じて発光する枠側装飾ランプ113のほか,遊技の異常を報知するLED類が設けてある。」

(ウ)「【0031】
サブ統合制御装置42には,音量調節SW,遊技ボタン15やジョグダイヤル16などの操作信号が入力される。
そしてサブ統合制御装置42は,スピーカ112を駆動して音声を出力することや,各種LEDや各種ランプ113の点灯,消灯等を制御する。更に演出図柄制御装置43へキャラクタなどを表示する擬似演出や特図の擬似図柄の表示態様のコマンドを送信する。
【0032】
演出図柄制御装置43は,LCDパネルユニットや付属ユニットと共に演出図柄表示装置21を構成している。演出図柄制御装置43は,サブ統合制御装置42から送られてくるコマンドに応じて演出図柄表示装置21のLCDパネルの表示を制御する。
【0033】
次にパチンコ機1の作動を説明する。
パチンコ機1は,始動ゲート22への入球に起因して普図の当否抽選を行い,普図表示装置28Aの図柄変動を開始する。前記抽選結果が当りであれば,表示装置28Aに当選結果を確定表示して前記普電役物を開放する。これにより第2特図始動口23Bへの入賞が可能となる。
第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入賞があると,これに起因して乱数値が抽出され,該乱数値に基づいて特図の当否判定を行い,特図表示装置27Aおよび演出図柄表示装置21の図柄変動を開始する。判定結果が大当りであれば,大当り図柄を決めて各表示装置21,27Aに大当り図柄を確定表示して大当り遊技(特別遊技)を実行する構成である。尚,演出図柄表示装置21には特図に対応する擬似演出図柄が表示される。
大当り遊技は,第2大入賞装置25を開放し所定の時間または入球数が所定数に達して閉じるまでの動作を1ラウンドとして,所定数のラウンドを継続することを基本遊技としている。そして,大当り遊技中の特定のラウンドにおいて第1大入賞装置24を開放して,該特定ラウンドにおいて第1大入賞装置24のVゾーン240への入球があれば,大当り遊技後の遊技状態を大当りの当選確率が高確率となる確率変動(確変)遊技および普図の当選が高確率となり特図の変動時間が短縮される時間短縮(時短)遊技へと移行する基本構成である。
【0034】
以下,作動の詳細を主制御装置40で実行されるプログラム処理に基づいて説明する。
図6は主制御装置40で実行される「メインルーチン」のフローチャートを示し,「メインルーチン」は本処理(S100?S110,S115)と残余処理(S111)とで構成され,2ms又は4ms周期の割り込み信号に起因して開始され,最初に正常割り込みか否かを判断する(S100)。この判断はRAMの特定アドレスに特定の数値が書き込まれているか否かに基づいて行われ,ここで否定判断(S100:no)なら初期設定(S115)を実行する。前述の正常割り込みか否かを判断するための数値は,この初期設定の一環としてRAMに書き込まれる。
【0035】
正常割り込みなら(S100:yes),初期値乱数更新処理(S101),特図の当否判定用の乱数値である大当り決定用乱数の更新処理(S102),特図の大当り図柄決定用乱数の更新処理(S103),普図の当り判定用乱数の更新処理(S104),特図のリーチに関するリーチ判定用乱数の更新処理(S105),特図の変動パターンに関する変動パターン決定用乱数の更新処理(S106),入賞確認処理(S107),当否判定処理(S108),各出力処理(S109),不正監視処理(S110)を行って,次に割り込み信号が入力されるまでの残余時間内には初期乱数更新処理(S111)をループ処理する。」

(エ)「【0038】
図8ないし図11は「当否判定処理」のフローチャートを示す。図8に示すように「当否判定処理」は,先ず,役物連続作動装置の作動を確認して大当り遊技中であるか否かを確認し(S300),大当り遊技中でなければ(S300:no),特図が変動中であるか否かを確認し(S301),変動中でなければ(S301:no),特図の確定図柄が確定表示中であるか否かを確認する(S302)。尚,特別電動役物が作動中(S300:yes)であれば「特別遊技処理」に移行する。
・・・
【0040】
次にS312の処理で,確変フラグを確認して現在の遊技状態が前記確変遊技状態であるか確認する(確変フラグが「1」であれば確変中)。確変中であれば(S312:yes),確変時の当否判定用テーブルと前記当否判定の対象となる保留記憶の大当り決定用乱数とを対比して大当りか否か当否判定を行う(S313)。
確変中でなければ(S312:no),通常確率(低確率)の当否判定用テーブルと前記大当り決定用乱数とを対比して大当りか否か当否判定を行う(S314)。」

(オ)「【0051】
前記S402の処理で第1大入賞装置24の大入賞口が開放中であれば(S402:yes),図13に示すように,S415,S416の処理において第1大入賞装置24の大入賞口に規定入賞数である10個の入賞があったか否かの確認,又は大入賞口の開放時間が終了したか否かを確認して,いずれか確認できれば第1大入賞装置24の大入賞口を閉鎖し(S417),大当りインターバル処理を実行して(S418),リターンする。大当りインターバル処理では,演出図柄制御装置82およびサブ統合制御装置83へ大当りのインターバル演出を開始させるようにコマンドを送信する。」

(カ)「【0059】
図17に示す「確変突入口通過確認処理」は主制御装置40が実行する前記入賞確認処理(S107)のサブルーチンで,Vゾーン241への入球を確認する処理である。先ず,前記確変有効フラグが「0」であるか確認し(S500),フラグが「0」であれば(S500:yes),前記確変突入口有効フラグが「1」でありVゾーン240が有効であることを確認する(S501)。
【0060】
Vゾーン240が有効であれば(S501:yes),Vゾーン240(確変突入口)への入球があるかを確認し(S502),入球があれば(S503:yes),確変有効フラグに「1」をセットして確変遊技に移行することを決定する。
・・・
【0062】
図18(b)および図20に示すように,「開放パターンA」,「開放パターンB」は大当り遊技のラウンドの総数が9ラウンドで,9ラウンド目(最終ラウンド,特許請求の範囲の「第1の特定ラウンド」に相当)に第1大入賞装置24を開放して確変に移行するが否かの決定を行う。尚,「開放パターンA」は第1大入賞装置24の開放時間が28秒と長く,確変の移行を許容する。一方,「開放パターンB」は開放時間が1秒で確変の移行を許容しない。尚,「大当り図柄A」は特許請求の範囲の「第1の図柄群」に相当し,「開放パターンA」は特許請求の範囲の「第1の開放態様」に相当する。一方,「大当り図柄B」は特許請求の範囲の「第2の図柄群」に相当し,「開放パターンB」は「第2の開放態様」に相当する。
【0063】
「開放パターンC」?「開放パターンF」はラウンドの総数が15ラウンドで,9ラウンド目および15ラウンド目(最終ラウンド,特許請求の範囲の「第2の特定ラウンド」に相当)の2回のラウンドにおいて第1大入賞装置24を開放する。尚,「開放パターンC」ではいずれのラウンドでも第1大入賞装置24の開放時間が28秒としてあり,「開放パターンD」,「開放パターンE」では9ラウンド目又は15ラウンド目のいずれか一方の第1大入賞装置24の開放時間が28秒としてあるので確変の移行を許容する構成である。一方,「開放パターンF」はいずれのラウンドにおいても開放時間が1秒で確変の移行を許容しない。尚,「大当り図柄D」は特許請求の範囲の「第3の図柄群」に相当し,「開放パターンD」は特許請求の範囲の「第3の開放態様」に相当する。一方,「大当り図柄F」は特許請求の範囲の「第4の図柄群」に相当し,「開放パターンF」は「第4の開放態様」に相当する。
「大当り図柄C」,「開放パターンC」,「大当り図柄E」,「開放パターンE」は特許請求の範囲には対応していないが,それぞれ「第5の図柄群」,「第5の開放態様」,「第6の図柄群」,「第6の開放態様」である。そして「開放パターンA,B,D,F」と「開放パターンC」間,「開放パターンA,B,C,D,F」と「開放パターンE」間で図柄が類似するように設定されている。
・・・
【0065】
図21に示すように,「開放パターンA,C,E」のいずれかの大当り遊技では9ラウンド目の開始時から演出図柄表示装置21において,第1大入賞装置24のVゾーン240への入球を煽る(促す)「V入球煽り演出A」の表示(図22(a))を実行する。
Vゾーン240への入球が有りこれを確変突入口SWが検出すると,「V入球煽り演出A」を止め,演出図柄表示装置21にVゾーン240への入球に基づいてV入球を示唆する「V入球演出」の表示(図22(c))を実行する。「V入球演出」は「開放パターンA,C,E」の9ラウンド目の終了時に表示を終了する。
尚,「開放パターンC,E」では10ラウンド以降が存在するため,「V入球演出」を継続しても,V入球したことを示唆する別の表示を行ってもよく,10ラウンド以降もV入球の示唆を行うようにすることが望ましい。」

(キ)「【0069】
振分羽根部材(振分羽根役物)241は,9ラウンド目および15ラウンド目の第1大入賞装置24の大入賞口開放開始時から,「開放パターンB,D,F」の開放時間(1秒)以上の第1の所定時間(4秒)経過後に開き作動して,規制位置から許容位置へ移動して実質的にVゾーン240を開放する。これは「開放パターンB,D,F」の9ラウンド目および「開放パターンE,F」の15ラウンド目の開放時間が1秒であるため,その間に第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球することがないように,9ラウンド目,15ラウンド目の開始から4秒後に振分羽根役物241によりV入球可能な状態とする。
・・・
【0072】
図22は前記Vゾーン240への入球に関する演出の表示態様の一例を示す。図22(a)は前記「V入賞煽り演出A,B」の一例を示し,「開放パターンA?F」のいずれにおいても,9ラウンド目の開始時には,演出図柄表示装置21の画面に,9ラウンド目を示すラウンド表示210,メインキャラクタ表示211および「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン241への入球を煽るテロップ表示212を行う。
・・・
【0078】
図24は,「開放パターンD,F」における15ラウンド目の前記Vゾーン入球演出の表示態様の一例を示す。15ラウンド目の開始時,図24(a)に示すように,「ラストチャンス。大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン241への入球を示唆するテロップ表示212を行う。」

(ク)図3(a)(b)では,「V」と記載された部材が240であり,開閉する振分羽根部材が241である点が図示されている。

(ケ)図9には,最後に「特別遊技処理」を行う点が図示されている。
また,図12は,「特別遊技処理」であり,S407において「大入賞口開放処理」を行う点が図示されている。

(コ)図17には,S502(確変突入口に入球?)において,noの場合S503(確変有効フラグ=1)に移行せず,リターンに移行する点が図示されている。

(サ)図18(b)には,
「開放パターンA 連続作動回数1?8回目 第2大入賞口を28秒 連続作動回数9回目 第1大入賞口を28秒」,
「開放パターンB 連続作動回数1?8回目 第2大入賞口を28秒 連続作動回数9回目 第1大入賞口を1秒」,
「開放パターンC 連続作動回数1?8,10?14回目 第2大入賞口を28秒 連続作動回数9,15回目 第1大入賞口を28秒」,
「開放パターンD 連続作動回数1?8,10?14回目 第2大入賞口を28秒 連続作動回数9回目 第1大入賞口を1秒 連続作動回数15回目 第1大入賞口を28秒」,
「開放パターンE 連続作動回数1?8,10?14回目 第2大入賞口を28秒 連続作動回数9回目 第1大入賞口を28秒 連続作動回数15回目 第1大入賞口を1秒」,
「開放パターンF 連続作動回数1?8,10?14回目 第2大入賞口を28秒 連続作動回数9回目 第1大入賞口を1秒 連続作動回数15回目 第1大入賞口を1秒」と記載されている。
また,上記【0062】には「9ラウンド目・・・「開放パターンA」は第1大入賞装置24の開放時間が28秒と長く,確変の移行を許容する・・・「開放パターンB」は開放時間が1秒で確変の移行を許容しない」と記載され,上記【0063】には「9ラウンド目および15ラウンド目・・・「開放パターンC」では・・・第1大入賞装置24の開放時間が28秒としてあり,「開放パターンD」,「開放パターンE」では9ラウンド目又は15ラウンド目のいずれか一方の第1大入賞装置24の開放時間が28秒としてあるので確変の移行を許容する・・・「開放パターンF」はいずれのラウンドにおいても開放時間が1秒で確変の移行を許容しない」と記載されているから,図18(b)及び上記【0062】?【0063】には,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目は,第1大入賞装置24の開放時間が28秒と長く,確変の移行を許容することが記載されているといえる。

上記記載事項(ア)?(キ),上記図示内容(ク)?(コ),上記(サ)の図示内容及び認定事項より,以下の事項が導かれる。
なお,(a)?(i)は,本願補正発明の構成A?Iに対応した事項を示している。

(a)上記【0033】には「第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入賞があると,これに起因して乱数値が抽出され,該乱数値に基づいて特図の当否判定を行い」と記載され,上記【請求項1】には「始動口への入球に起因して抽出された乱数値に基づいて大当り遊技を生起するか否かを判定する当否判定手段と」と記載され,上記【0034】には「主制御装置40で実行される・・・「メインルーチン」は・・・S100?S110,S115・・・とで構成され」と記載され,上記【0035】には「当否判定処理(S108)」と記載されているから,刊行物1には,第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入球に起因して抽出された乱数値に基づいて大当り遊技を生起するか否かの特図の当否判定を行う主制御装置40が記載されているといえる。

(b)上記【0031】には「サブ統合制御装置42は,スピーカ112を駆動して音声を出力する・・・更に演出図柄制御装置43へ・・・演出や特図の・・図柄の表示態様のコマンドを送信する」と記載され,上記【0012】には「スピーカ112・・・により遊技音が出力され」と記載され,上記【0032】には「演出図柄制御装置43は,サブ統合制御装置42から送られてくるコマンドに応じて演出図柄表示装置21の・・・表示を制御する」と記載され,上記【0033】には「演出図柄表示装置21には特図に対応する・・演出図柄が表示される」と記載されているから,刊行物1には,スピーカ112を駆動して遊技音を出力すると共に,演出図柄制御装置43へ演出や特図の図柄の表示態様のコマンドを送信し,演出図柄表示装置21に演出や特図に対応する演出図柄を表示させるサブ統合制御装置42が記載されているといえる。

(c)上記【0031】には「サブ統合制御装置42は,スピーカ112を駆動して音声を出力する」と記載され,上記【0012】には「スピーカ112・・・により遊技音が出力され」と記載されているから,刊行物1には,サブ統合制御装置42によって遊技音を出力するスピーカ112が記載されているといえる。

(d)上記【0012】には「スピーカ112・・・により遊技音が出力され」と記載され,上記【0031】には「サブ統合制御装置42には,音量調節SW・・・の操作信号が入力される。・・・サブ統合制御装置42は,スピーカ112を駆動して音声を出力する」と記載されているから,刊行物1には,遊技音を出力するスピーカ112を駆動するサブ統合制御装置42に操作信号を入力する音量調節SWが記載されているといえる。

(e)上記【0033】には「特図の当否判定を行い,・・・判定結果が大当りであれば,・・・大当り遊技(特別遊技)を実行する・・・大当り遊技は,第2大入賞装置25を開放し所定の時間または入球数が所定数に達して閉じるまでの動作を1ラウンドとして,所定数のラウンドを継続することを基本遊技とし・・・特定のラウンドにおいて第1大入賞装置24を開放して・・・第1大入賞装置24のVゾーン240への入球があれば」と記載され,上記【0069】には「振分羽根部材(振分羽根役物)241は,9ラウンド目および15ラウンド目の第1大入賞装置24の大入賞口開放開始時から,「開放パターンB,D,F」の開放時間(1秒)以上の第1の所定時間(4秒)経過後に開き作動して・・・Vゾーン240を開放する・・・第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球する・・・V入球可能な状態とする」と記載され,上記(サ)で認定したように,図18(b)及び上記【0062】?【0063】には,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目は,第1大入賞装置24の開放時間が28秒と長く,確変の移行を許容することが記載されているといえ,上記【0051】には「第1大入賞装置24の大入賞口が開放中であれば・・・第1大入賞装置24・・・に規定入賞数・・・の入賞があったか・・・又は・・・開放時間が終了したか・・・確認できれば第1大入賞装置24・・・を閉鎖し」と記載されているから,刊行物1には,特図の当否判定を行い,判定結果が大当り遊技(特別遊技)を実行する大当りであれば,第2大入賞装置25を開放し所定の時間または入球数が所定数に達して閉じるまでの動作を1ラウンドとして,所定数のラウンドを継続することを基本遊技とし,特定のラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24を開放し,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目に,第1大入賞装置24の開放開始時から4秒経過後に,第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態とし,第1大入賞装置24に規定入賞数があったか,又は開放時間が終了したか確認できれば第1大入賞装置24を閉鎖する,大当り遊技(特別遊技)を実行する点が記載されているといえる。

また,上記【0034】には「主制御装置40で実行される・・・「メインルーチン」は・・・S100?S110,S115・・・とで構成され」と記載され,上記【0035】には「当否判定処理(S108)」と記載され,上記【0038】には「図8ないし図11は「当否判定処理」のフローチャートを示す。」と記載され,上記図示内容(ケ)で認定したように,図9には,最後に「特別遊技処理」を行う点が図示され,図12は「特別遊技処理」であり,S407において「大入賞口開放処理」を行う点が図示されているから,刊行物1には,主制御装置40が特別遊技を実行する点が記載されているといえる。

以上のことから,刊行物1には,特図の当否判定を行い,判定結果が大当り遊技(特別遊技)を実行する大当りであれば,第2大入賞装置25を開放し所定の時間または入球数が所定数に達して閉じるまでの動作を1ラウンドとして,所定数のラウンドを継続することを基本遊技とし,特定のラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24を開放し,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目に,第1大入賞装置24の開放開始時から4秒経過後に,第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態とし,第1大入賞装置24に規定入賞数があったか,又は開放時間が終了したか確認できれば第1大入賞装置24を閉鎖する,大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40が記載されているといえる。

(f,g)上記【0033】には「該特定ラウンドにおいて第1大入賞装置24のVゾーン240への入球があれば,大当り遊技後の遊技状態を大当りの当選確率が高確率となる確率変動(確変)遊技・・・へと移行する」と記載され,上記【0069】には「9ラウンド目および15ラウンド目の第1大入賞装置24の大入賞口開放開始」と記載され,上記【0059】には「図17に示す「確変突入口通過確認処理」は主制御装置40が実行する前記入賞確認処理(S107)のサブルーチンで,Vゾーン241への入球を確認する処理である。」と記載され,上記(e)において言及したように「大当り遊技」は「大当り遊技(特別遊技)」であるといえるから,刊行物1には,該特定ラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24のVゾーン240への入球があれば,大当り遊技(特別遊技)後の遊技状態を大当りの当選確率が高確率となる確率変動(確変)の状態へと移行させる主制御装置40[gの構成]が記載されているといえる。

また,既に認定した[gの構成]を参照すると共に,上記【0059】には「図17に示す「確変突入口通過確認処理」は主制御装置40が実行する前記入賞確認処理(S107)のサブルーチンで,Vゾーン241への入球を確認する処理である。先ず,前記確変有効フラグが「0」であるか確認し(S500),フラグが「0」であれば(S500:yes),前記確変突入口有効フラグが「1」でありVゾーン240が有効であることを確認する(S501)。」と記載され,上記【0060】には「Vゾーン240が有効であれば(S501:yes),Vゾーン240(確変突入口)への入球があるかを確認し(S502),入球があれば(S503:yes),確変有効フラグに「1」をセットして確変遊技に移行することを決定する。」と記載され,上記図示内容(コ)で認定したように,図17には,S502(確変突入口に入球?)において,noの場合S503(確変有効フラグ=1)に移行せず,リターンに移行する点が図示され,上記【0040】には「確変中でなければ・・・通常確率(低確率)の・・・大当りか否か当否判定を行う」と記載されているから,刊行物1には,該特定ラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24のVゾーン240への入球がなければ,大当り遊技(特別遊技)後の遊技状態を大当りの当選確率を通常確率(低確率)の状態にする主制御装置40[fの構成]が記載されているといえる。

(h)上記【0072】には「Vゾーン240・・・「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン241への入球を」と記載され,上記【0078】には「Vゾーン241」と記載されており,Vゾーンが240なのか,241なのか不明であるが,上記【0071】には「振分羽根役物241によるVゾーン240」と記載され,上記図示内容(ク)で認定したように,図3(a)(b)では,「V」と記載された部材が240であり,開閉する振分羽根部材が241である点が図示されているから,上記【0072】及び【0078】の「Vゾーン241」は,「Vゾーン240」の誤記であるといえる。

上記(b)において検討したように,「サブ統合制御装置42」は「演出図柄制御装置43へ演出や特図の図柄の表示態様のコマンドを送信し,演出図柄表示装置21に演出や特図に対応する演出図柄を表示させる」といえ,上記(e)において検討したように,「大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40」は「特定のラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24を開放し,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目に,第1大入賞装置24の開放開始時から4秒経過後に,第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態と」するといえ,上記【0072】には「9ラウンド目の開始時には,演出図柄表示装置21の画面に,・・・「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン240(当審注:上述のように「241」は「240」の誤記と認められる。)への入球を煽るテロップ表示212を行う」と記載され,上記【0078】には「15ラウンド目の開始時・・・「・・・大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン240(当審注:上述のように「241」は「240」の誤記と認められる。)への入球を示唆するテロップ表示212を行う」と記載され,上記【0065】には「Vゾーン240への入球が有りこれを確変突入口SWが検出すると,「V入球煽り演出A」を止め」と記載されているから,刊行物1には,サブ統合制御装置42は,大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40により第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態となる,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目のとき,9,15ラウンドの開始時からVゾーン240への入球が有りこれを確変突入口SWが検出するまで,演出図柄表示装置21の画面に「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン240への入球を煽るテロップ表示212を行う点が記載されているといえる。

(i)上記【0033】には「パチンコ機1」と記載されている。

上記記載事項(ア)?(キ),上記図示内容(ク)?(コ),上記(サ)の図示内容及び認定事項及び上記認定事項(a)?(i)から,刊行物1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「a 第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入球に起因して抽出された乱数値に基づいて大当り遊技を生起するか否かの特図の当否判定を行う主制御装置40と,
b スピーカ112を駆動して遊技音を出力すると共に,演出図柄制御装置43へ演出や特図の図柄の表示態様のコマンドを送信し,演出図柄表示装置21に演出や特図に対応する演出図柄を表示させるサブ統合制御装置42と,
c サブ統合制御装置42によって遊技音を出力するスピーカ112と,
d 遊技音を出力するスピーカ112を駆動するサブ統合制御装置42に操作信号を入力する音量調節SWと,
e 特図の当否判定を行い,判定結果が大当り遊技(特別遊技)を実行する大当りであれば,第2大入賞装置25を開放し所定の時間または入球数が所定数に達して閉じるまでの動作を1ラウンドとして,所定数のラウンドを継続することを基本遊技とし,特定のラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24を開放し,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目に,第1大入賞装置24の開放開始時から4秒経過後に,第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態とし,第1大入賞装置24に規定入賞数があったか,又は開放時間が終了したか確認できれば第1大入賞装置24を閉鎖する,大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40と,
f 該特定ラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24のVゾーン240への入球がなければ,大当り遊技(特別遊技)後の遊技状態を大当りの当選確率を通常確率(低確率)の状態にする主制御装置40と,
g 該特定ラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24のVゾーン240への入球があれば,大当り遊技(特別遊技)後の遊技状態を大当りの当選確率が高確率となる確率変動(確変)の状態へと移行させる主制御装置40と,
を備え,
h サブ統合制御装置42は,大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40により第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態となる,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目のとき,9,15ラウンドの開始時からVゾーン240への入球が有りこれを確変突入口SWが検出するまで,演出図柄表示装置21の画面に「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン240への入球を煽るテロップ表示212を行う
i パチンコ機1。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比する。

(a)引用発明1の「第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入球」及び「特図の当否判定を行う主制御装置40」は,それぞれ,本件補正発明の「始動条件」及び「特別遊技判定手段」に相当する。
また,引用発明1の「大当り遊技」は,遊技者にとって有利な状態であることは明らかであるから,本件補正発明の「遊技者にとって有利な特別遊技状態」に相当する。
以上のことから,引用発明1の「第1又は第2特図始動口23A,23Bへの入球に起因して抽出された乱数値に基づいて大当り遊技を生起するか否かの特図の当否判定を行う主制御装置40」は,本件補正発明の「始動条件が成立することにより遊技者にとって有利な特別遊技状態へ移行させるか否かを判定する特別遊技判定手段」に相当する。

(b)引用発明1の「スピーカ112」及び「演出図柄表示装置21」は,本件補正発明の「所定の演出手段」に相当する。
また,引用発明1の「サブ統合制御装置42」は,本件補正発明の「演出制御手段」に相当する。
以上のことから,引用発明1の「スピーカ112を駆動して遊技音を出力すると共に,演出図柄制御装置43へ演出や特図の図柄の表示態様のコマンドを送信し,演出図柄表示装置21に演出や特図に対応する演出図柄を表示させるサブ統合制御装置42」は,本件補正発明の「前記特別遊技判定手段による判定結果に基づいて,所定の演出手段に演出を行わせる演出制御手段」に相当する。

(c)引用発明1の「遊技音」及び「スピーカ112」は,それぞれ,本件補正発明の「演出音」及び「スピーカー」に相当する。
引用発明1の「サブ統合制御装置42」は,上記(b)において言及したように,「スピーカ112を駆動して遊技音を出力する」だけでなく,「演出図柄制御装置43へ演出や特図の図柄の表示態様のコマンドを送信し,演出図柄表示装置21に演出や特図に対応する演出図柄を表示させる」ものであり,遊技機の技術分野において,演出表示に対応する遊技音(演出音)を出力させることは技術常識である。これらのことから,引用発明1の遊技音は,サブ統合制御装置42(演出制御手段)によって演出図柄表示装置21に演出や演出図柄を表示させることに対応する遊技音(演出音)であることは,明らかである。
以上のことから,引用発明1の「サブ統合制御装置42によって遊技音を出力するスピーカ112」は,本件補正発明の「前記演出制御手段によって行われる演出に対応する演出音を出力するスピーカー」に相当する。

(d)引用発明1の「音量調節SW」は,本件補正発明の「音量調整手段」に相当する。
また,引用発明1の「音量調節SW」は,「遊技音を出力するスピーカ112を駆動するサブ統合制御装置42に操作信号を入力する」ものであり,この「操作信号」は,スピーカ112から出力される遊技音の音量調整に関する操作信号であることは明らかである。
しかしながら,引用発明1の「音量調節SW」は,調整操作に基づいて音量が変更されることは明らかであるが,調整操作を行うのが遊技者であるか不明である。
以上のことから,引用発明1の「遊技音を出力するスピーカ112を駆動するサブ統合制御装置42に操作信号を入力する音量調節SW」は,本件補正発明と「前記スピーカーから出力される演出音の音量レベルを」,「調整操作に基づいて変更する音量調整手段」である点で共通している。

(e)引用発明1の「第2大入賞装置25」,「Vゾーン240」,「第1大入賞装置24」,「大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40」は,それぞれ,本件補正発明の「第1可変入賞装置」,「所定通過領域」,「第2可変入賞装置」及び「開放特別遊技を行わせる特別遊技制御手段」に相当する。
また,引用発明1の「特図の当否判定を行い,判定結果が大当り遊技(特別遊技)を実行する大当りであれば」は,本件補正発明の「前記特別遊技状態に移行させるか否かの判定において前記特別遊技状態へ移行させると判定された場合に」に相当する。
そして,引用発明1の「第2大入賞装置25」は,閉じた時入球不可能であることは明らかであるから,引用発明1の「開放し所定の時間または入球数が所定数に達して閉じる」「第2大入賞装置25」は,本件補正発明の「遊技球が入球不可能な閉状態と遊技球が入球可能な開状態とに作動し得る第1可変入賞装置」に相当する。
さらに,引用発明1の「第1大入賞装置24」も,閉じた時入球不可能であることは明らかであるから,引用発明1の「開放し,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目に,第1大入賞装置24の開放開始時から4秒経過後に,第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態とし,第1大入賞装置24に規定入賞数があったか,又は開放時間が終了したか確認できれば」「閉鎖する」「第1大入賞装置24」は,本件補正発明の「遊技球が入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに作動し得ると共に入球した遊技球が通過可能な所定通過領域を有する第2可変入賞装置」に相当する。
加えて,引用発明1の「第2大入賞装置25を開放し」「閉じるまでの動作を1ラウンドとして,所定数のラウンドを継続することを基本遊技とし,特定のラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24を開放し」,「閉鎖する,大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40」は,本件補正発明の「第1可変入賞装置,及び」,「第2可変入賞装置のうちいずれか一方の可変入賞装置を,前記開状態に作動させるラウンド遊技を複数ラウンド有する開放特別遊技を行わせる特別遊技制御手段」に相当する。
以上のことから,引用発明1の「特図の当否判定を行い,判定結果が大当り遊技(特別遊技)を実行する大当りであれば,第2大入賞装置25を開放し所定の時間または入球数が所定数に達して閉じるまでの動作を1ラウンドとして,所定数のラウンドを継続することを基本遊技とし,特定のラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24を開放し,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目に,第1大入賞装置24の開放開始時から4秒経過後に,第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態とし,第1大入賞装置24に規定入賞数があったか,又は開放時間が終了したか確認できれば第1大入賞装置24を閉鎖する,大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40」は,本件補正発明の「前記特別遊技状態に移行させるか否かの判定において前記特別遊技状態へ移行させると判定された場合に,遊技球が入球不可能な閉状態と遊技球が入球可能な開状態とに作動し得る第1可変入賞装置,及び,遊技球が入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに作動し得ると共に入球した遊技球が通過可能な所定通過領域を有する第2可変入賞装置のうちいずれか一方の可変入賞装置を,前記開状態に作動させるラウンド遊技を複数ラウンド有する開放特別遊技を行わせる特別遊技制御手段」に相当する。

(f)引用発明1の「大当り遊技(特別遊技)後」は,主制御装置40により大当り遊技(特別遊技)を実行した後であるから,本件補正発明の「前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後」に相当する。
また,引用発明1の「大当りの当選確率」及び「通常確率(低確率)の状態」は,それぞれ,本件補正発明の「特別遊技状態に移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率」及び「第1の確率に設定される低確率遊技状態」に相当する。
以上のことから,引用発明1の「該特定ラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24のVゾーン240への入球がなければ,大当り遊技(特別遊技)後の遊技状態を大当りの当選確率を通常確率(低確率)の状態にする主制御装置40」は,本件補正発明の「前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過していないときには,特別遊技状態に移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が第1の確率に設定される低確率遊技状態で遊技を制御する低確率遊技状態制御手段」に相当する。

(g)引用発明1の「高確率となる確率変動(確変)の状態」は,「通常確率(低確率)の状態」よりも高確率の状態であるから,本件補正発明の「前記第1の確率よりも高い第2の確率に設定される高確率遊技状態」に相当する。
以上のことから,引用発明1の「該特定ラウンド(9ラウンド目および15ラウンド目)において第1大入賞装置24のVゾーン240への入球があれば,大当り遊技(特別遊技)後の遊技状態を大当りの当選確率が高確率となる確率変動(確変)の状態へと移行させる主制御装置40」は,本件補正発明の「前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過しているときには,特別遊技状態へ移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が前記第1の確率よりも高い第2の確率に設定される高確率遊技状態で遊技を制御する高確率遊技状態制御手段」に相当する。

(h)引用発明1は「第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態となる,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目のとき,9,15ラウンドの開始時からVゾーン240への入球が有りこれを確変突入口SWが検出するまで,演出図柄表示装置21の画面に「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン240への入球を煽るテロップ表示212」が表示されるものであり,上記テロップ表示212の「大入賞口」は,「第1大入賞装置24」であるといえる。また,遊技盤面には多くの釘があるので,特定の狭い位置を狙って遊技球を発射させることはできない。このことから,第1大入賞装置24のVゾーン240へ入球させるとき,遊技者は,第1大入賞装置24のVゾーン240を狙って遊技球を発射させるのではなく,第1大入賞装置24に多くの遊技球を入賞させることによりVゾーン240に遊技球を入賞させようとするといえるので,上記テロップ表示212は,第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射するように報知しているといえる。
また,引用発明1は,上記(e)において言及したように,Vゾーン240へ入球可能となるのは,報知開始後である開放開始時から4秒経過後であるが,引用発明1は,第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態となることを,9,15ラウンドの開始時からVゾーン240への入球が有りこれを確変突入口SWが検出するまで,テロップ表示212により報知するから,報知する期間にVゾーン240へ入球可能となるときが含まれていることは明らかである。
しかしながら,引用発明1は,演出図柄表示装置21の画面に「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等の第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射するテロップ表示212を行うことは記載されているが,テロップ表示212するときに,第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射する遊技音をスピーカ112から出力しているか明記されていない。
以上のことから,引用発明1の「サブ統合制御装置42は,大当り遊技(特別遊技)を実行する主制御装置40により第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態となる,開放パターンA,C,Eの9ラウンド目,及び開放パターンC,Dの15ラウンド目のとき,9,15ラウンドの開始時に,演出図柄表示装置21の画面に「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のVゾーン240への入球を煽るテロップ表示212を行う」ことは,本件補正発明と「前記演出制御手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する」点で共通しているといえる。

(i)引用発明1の「パチンコ機1」は,本件補正発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(i)から,本件補正発明と引用発明1とは,
[一致点]
「A 始動条件が成立することにより遊技者にとって有利な特別遊技状態へ移行させるか否かを判定する特別遊技判定手段と,
B 前記特別遊技判定手段による判定結果に基づいて,所定の演出手段に演出を行わせる演出制御手段と,
C 前記演出制御手段によって行われる演出に対応する演出音を出力するスピーカーと,
D’前記スピーカーから出力される演出音の音量レベルを,調整操作に基づいて変更する音量調整手段と,
E 前記特別遊技状態に移行させるか否かの判定において前記特別遊技状態へ移行させると判定された場合に,遊技球が入球不可能な閉状態と遊技球が入球可能な開状態とに作動し得る第1可変入賞装置,及び,遊技球が入賞不可能な閉状態と遊技球が入賞可能な開状態とに作動し得ると共に入球した遊技球が通過可能な所定通過領域を有する第2可変入賞装置のうちいずれか一方の可変入賞装置を,前記開状態に作動させるラウンド遊技を複数ラウンド有する開放特別遊技を行わせる特別遊技制御手段と,
F 前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過していないときには,特別遊技状態に移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が第1の確率に設定される低確率遊技状態で遊技を制御する低確率遊技状態制御手段と,
G 前記特別遊技制御手段により前記開放特別遊技が行われた後に,当該開放特別遊技中に前記第2可変入賞装置に入球した遊技球が前記所定通過領域を通過しているときには,特別遊技状態へ移行させるか否かの判定において特別遊技状態へ移行させると判定される確率が前記第1の確率よりも高い第2の確率に設定される高確率遊技状態で遊技を制御する高確率遊技状態制御手段と,
を備え,
H’前記演出制御手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する,
I’遊技機。」
である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点1](構成D)
「前記スピーカーから出力される演出音の音量レベルを」,「調整操作に基づいて変更する音量調整手段」に関して,
本件発明は,「遊技者による調整操作に基づいて変更する」のに対して,
引用発明1は,遊技者によるものなのか不明である点。

[相違点2](構成H)
「前記演出制御手段」が,「前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する」手段に関して,
本件発明は,「特定演出音を前記スピーカーから出力させ」るのに対して,
引用発明1は,演出図柄表示装置21の画面に「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等の第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射するように報知するテロップ表示212を行うことは記載されているが,テロップ表示212をするときに,第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射する遊技音をスピーカ112から出力しているか明記されていない点。

[相違点3](構成I)
「前記音量調整手段」に関して,
本件発明は,「前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記スピーカーから出力される前記特定演出音の音量レベルを所定レベル以上に変更する」のに対して,
引用発明1は,スピーカ112を有するが,そのような構成でない点。

(4)判断
ア 相違点1について
遊技機において,スピーカーから出力される演出音の音量を,遊技者による調整操作に基づいて変更することは,平成27年11月18日付けの拒絶理由の通知で文献3とした刊行物2(特開2009-11408号公報。【0044】?【0045】,【0087】,【0162】,【0173】には,スピーカ54,56から出力する演出を実行する音声の音量を,遊技者の音量調節スイッチ58,60の操作により調節するパチンコ機1が記載されている。),平成27年11月18日付けの拒絶理由の通知で文献4とした刊行物3(特開2002-52125号公報。【0017】,【0020】?【0022】には,スピーカー2から発せられる効果音の音量を,遊技者が遊技者用音量調節操作手段12により調節する遊技機1が記載されている。),刊行物4(特開2007-89649号公報。【0045】,【0051】,【0053】,【0094】には,演出用スピーカ610(音響装置)から発せられる音の音量を,遊技者が音量調節ボタン81により調節するパチンコ機10が記載されている。)に記載されているように周知(以下,「周知技術1」という。)である。
引用発明1と周知技術1は共に,遊技機におけるスピーカーから出力される音量を調整する技術に関する発明又は技術であり,技術分野及び機能が共通している。
引用発明1の音量調節SWに,上記周知技術1を適用して,遊技者による調整操作ができるように配置して,上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。

イ 相違点2について
遊技機において,表示装置による演出に合わせて,演出音をスピーカーから出力することは,上記刊行物2(【0087】?【0088】,【0093】?【0096】,【0106】,【0145】,【0151】,図5,9,11には,パチンコ機1において,液晶表示器42による演出に合わせてスピーカ54,56を用いた音声出力による演出で「リーチ!」,「おおあたり!」等の音声を出力をする点が記載されている。),上記刊行物4(【0051】,【0173】?【0174】,【0195】,【0197】には,サブ制御装置262では,装飾図柄表示装置42の装飾図柄の変動表示に応じた演出用スピーカ610の鳴動制御を行い,大当たり中の各ラウンドの演出用スピーカ610(音響)及び装飾図柄表示装置42の画面表示を制御する開放中コマンドにより,可変入賞装置が稼動中は,装飾図柄表示装置42の画像を表示させ,かつ演出用スピーカ610から音響を出力させる[表示装置による演出に合わせて,演出音をスピーカーから出力する]パチンコ機10が記載されている。)に記載されているように周知(以下,「周知技術2」という。)である。
引用発明1と周知技術2は共に,遊技機おける演出表示に関する発明又は技術であり,技術分野が共通している。
引用発明1の遊技音を出力するスピーカ112に,上記周知技術2を適用して,第1大入賞装置24(第2可変入賞装置)に入球した遊技球がVゾーン240(所定通過領域)へ入球可能な状態のときに,「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等の第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射する遊技音を出力する構成にして,上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。

ウ 相違点3について
遊技機の技術分野において,大当たりが確変になるかならないかということが,遊技者にとって重要な関心事であることは,技術常識である。
また,引用発明1において,大当たり中の第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態となるとき,「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等の第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射する遊技音を出力することは,遊技球を大量に獲得可能となる大当たりに当選しやすい遊技状態である,確変になるチャンスを逃したくない遊技者にとって,重要な関心事であるといえる。

遊技機において,スピーカーから出力される遊技者にとって重要な遊技球の獲得に関する特定演出音の音量レベルを,所定レベル以上にすることは,上記刊行物2(【0012】,【0015】,【0044】?【0045】,【0087】,【0156】?【0157】,図12(A)には,演出を実行する音声の音量を,音量調節スイッチ58,60により調節するパチンコ機1において,音量段階を設定したにも関わらず,遊技者の利益に関係する内容の音声[「リーチ!」等]を既定の音量段階「大」で出力させるパチンコ機1が記載されている。),平成27年11月18日付けの拒絶理由の通知で文献2とした刊行物5(特開2003-284819号公報。【0008】,【0012】,【0014】,【0016】,図3,5,7(A)には,音量調節スイッチSW6により効果音の音量を調節できるパチンコ遊技機において,音量調節スイッチSW6の操作に拘わらず,スピーカ10から発生する演出上重要な効果音S4[リーチ効果音],S5[大当り確定効果音]を最大再生音量に固定するパチンコ遊技機が記載されている。),上記刊行物4(【0045】,【0204】,【0206】,図30,31には,第1?4の音量系統は遊技者により調節できるが,第5の音量系統である大当たり中の演出を制御するエラーコマンド及び特別演出コマンド(開放中コマンド等)は最大音量の音量値「8」に固定したパチンコ機10が記載されている。)に記載されているように周知(以下,「周知技術3」という。)である。
引用発明1と周知技術3は共に,遊技者にとって重要な遊技球の獲得に関することを報知する発明又は技術であり,技術分野が共通している。
引用発明1の音量調節SWを遊技者による操作により調整可能とすることは,上記相違点1において検討したとおり,当業者が容易になし得たものである。また,引用発明1において,Vゾーン240への入球を煽るテロップ表示212を行うときに,「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等の第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射する遊技音を出力する構成とすることは,上記相違点2において検討したとおり,当業者が容易になし得たものである。そして,Vゾーン240への入球を煽るテロップ表示212を行うときの,「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等の第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射する遊技音を,上記周知技術3を適用して,遊技者が調整した音量に関わらず,所定レベル以上の音量を出力するようにして,上記相違点3に係る本件発明の構成とすることは,当業者が適宜なし得たことである。

また,本件補正発明の作用効果も,引用発明1,周知技術1?3から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本件補正発明は,引用発明1,周知技術1?3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求人の主張について
請求人は審判請求書第7頁第4?14行において,
「本願発明は,遊技者に対して直截に第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する特定演出音を出力するのであり,しかも,特定演出音を所定レベル以上で出力するよう音量レベルを変更することから,特定演出音を遊技者に確実に聴取させ,第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射させることが可能となるのである。これに対して,引用発明1乃至4によると,Vゾーンへの入球を煽る演出が行われ,かかる演出の演出音が所定レベル以上で出力されるのであるが,Vゾーンを備える第1大入賞装置24へ向けて遊技球を発射するよう報知する演出音が出力されるわけではない。そうすると,遊技者は,Vゾーンへの入球に関する演出が行われていることを認識することは可能かもしれないが,第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射することを確実に認識できるというわけではない。」と主張している。

しかしながら,上記(3)(h)において既に検討したように,引用発明1の第1大入賞装置24に入球した遊技球がVゾーン240へ入球可能な状態となるときの「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等のテロップ表示212の「大入賞口」は,「第1大入賞装置24」であり,遊技盤面には多くの釘があるので,特定の狭い位置を狙って遊技球を発射させることはできず,遊技者は,第1大入賞装置24に多くの遊技球を入賞させることによりVゾーン240に遊技球を入賞させようとするので,上記テロップ表示212は,第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射するように報知しているといえる。このことからから,遊技者は,第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射することを確実に認識できるといえる。また,上記(4)「ウ 相違点3について」において既に検討したように,「大入賞口が閉鎖する前にVにいれろ」等の第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射する遊技音を,上記周知技術3を適用することにより,遊技者が調整した音量に関わらず,所定レベル以上の音量を出力するようにすると,第1大入賞装置24に向けて遊技球を発射することを確実に認識できるようになるといえる。そして,上記(4)において既に検討したように,本件補正発明は,引用発明1,周知技術1?3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求人の主張を採用することはできない。

(6)まとめ
したがって,本件補正発明は,特許法第29条第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1に係る発明は,平成28年10月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

1 刊行物1
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物1の記載事項及び引用発明1の認定については,上記「第2[理由]3(2)(2-1)」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は,上記「第2[理由]1」で検討した本件補正発明から,実質的な変更とならない特定事項を除き,「演出制御手段」に関して,「前記演出制御手段は,前記特別遊技制御手段により前記第2可変入賞装置に入球する遊技球が前記所定通過領域を通過可能となるときに,前記第2可変入賞装置に向けて遊技球を発射するよう報知する特定演出音を前記スピーカーから出力させ」との限定を削除したものである。
そうすると,本願発明と引用発明1の相違点は,上記「第2[理由]2(3)」の[相違点2]の構成を削除したものであるから,本願発明は,引用発明1,周知技術1,3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-19 
結審通知日 2017-07-25 
審決日 2017-08-21 
出願番号 特願2014-12292(P2014-12292)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 瀬津 太朗
金田 理香
発明の名称 遊技機  
代理人 高垣 泰志  

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