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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1333155 |
審判番号 | 不服2016-13423 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-09-07 |
確定日 | 2017-10-30 |
事件の表示 | 特願2015-254949「順番管理システム、順番管理装置および順番管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日出願公開、特開2017-117380、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年12月25日に出願された特許出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成28年 3月31日付け:拒絶理由の通知 平成28年 5月27日 :意見書,手続補正書の提出 平成28年 6月22日付け:拒絶査定 平成28年 9月 7日 :審判請求書,手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成28年6月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1?6に係る発明は,引用文献1?6に記載された発明に基づいて,当業者であれば容易になし得たものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2002-342846号公報 2.特開2007-323482号公報 3.特開2008-136720号公報 4.特開2005-258647号公報 5.特開2008-234262号公報 6.特開2003-44943号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。 そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1?5に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1?5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は,平成28年9月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。 【請求項1】 施設においてサービスを受ける順番待ち組の順番待ち状況を管理する順番管理システムであって, 前記順番待ち組に対して順番待ちの状況を知らせるために用いる各順番待ち組の外部用ステータス情報と,前記施設において業務の管理に利用するために用いる各順番待ち組の内部用ステータス情報を保持する記憶部と, 新規の順番待ちの入力,またはステータス情報の更新情報の入力に基づいて,前記外部用ステータス情報および前記内部用ステータス情報を更新するステータス更新部と, 前記順番待ち組への情報提供に利用する第1モードの画面には前記外部用ステータス情報を表示し,前記施設内で管理用に利用する第2モードの画面には前記内部用ステータス情報を表示する表示制御部と,を備え, 前記内部用ステータス情報は,前記サービスに含まれる複数の業務ステップのうち,現在進行中の業務ステップを示す情報と,各順番待ち組に対して実際に前記サービスを提供した際の,各業務ステップに要した作業時間の情報を含み,前記作業時間の情報は,各業務ステップの開始時刻と終了時刻の情報を含み, 前記ステータス情報の更新情報は,更新後の業務ステップを示す情報を含み, 前記ステータス更新部は,前記ステータス情報の更新情報の入力に基づいて,前記現在進行中の業務ステップを,前記更新後の業務ステップに更新すると共に,前記ステータス情報の更新情報を受けた時刻を,更新前の業務ステップの終了時刻および前記更新後の業務ステップの開始時刻として登録する,順番管理システム。 【請求項2】 前記内部用ステータス情報に含まれる,各順番待ち組についての各業務ステップに要した作業時間の情報を用いて,各業務ステップの平均作業時間を算出する,作業時間分析部と, 各業務ステップの前記平均作業時間の情報を表示する表示部と,を備えた請求項1に記載の順番管理システム。 【請求項3】 前記作業時間分析部は, 各順番待ち組についての各業務ステップに要した作業時間の情報の中から,各業務ステップについての最長作業時間と最短作業時間を抽出し, 前記表示部は, 各業務ステップの前記最長作業時間と前記最短作業時間の情報を表示する,請求項2に記載の順番管理システム。 【請求項4】 施設においてサービスを受ける順番待ち組の順番待ち状況を管理する順番管理装置であって, 前記順番待ち組に対して順番待ちの状況を知らせるために用いる各順番待ち組の外部用ステータス情報と,前記施設において業務の管理に利用するために用いる各順番待ち組の内部用ステータス情報を保持する記憶部と, 新規の順番待ちの入力,またはステータス情報の更新情報の入力に基づいて,前記外部用ステータス情報および前記内部用ステータス情報を更新するステータス更新部と,を備え, 前記内部用ステータス情報は,前記サービスに含まれる複数の業務ステップのうち,現在進行中の業務ステップを示す情報と,各順番待ち組に対して実際に前記サービスを提供した際の,各業務ステップに要した作業時間の情報を含み,前記作業時間の情報は,各業務ステップの開始時刻と終了時刻の情報を含み, 前記ステータス情報の更新情報は,更新後の業務ステップを示す情報を含み, 前記ステータス更新部は,前記ステータス情報の更新情報の入力に基づいて,前記現在進行中の業務ステップを,前記更新後の業務ステップに更新すると共に,前記ステータス情報の更新情報を受けた時刻を,更新前の業務ステップの終了時刻および前記更新後の業務ステップの開始時刻として登録する,順番管理装置。 【請求項5】 施設においてサービスを受ける順番待ち組の順番待ち状況を管理するコンピュータを, 前記順番待ち組に対して順番待ちの状況を知らせるために用いる各順番待ち組の外部用ステータス情報と,前記施設において業務の管理に利用するために用いる各順番待ち組の内部用ステータス情報を保持する記憶部と, 新規の順番待ちの入力,またはステータス情報の更新情報の入力に基づいて,前記外部用ステータス情報および前記内部用ステータス情報を更新するステータス更新部と,して機能させ, 前記内部用ステータス情報は,前記サービスに含まれる複数の業務ステップのうち,現在進行中の業務ステップを示す情報と,各順番待ち組に対して実際に前記サービスを提供した際の,各業務ステップに要した作業時間の情報を含み,前記作業時間の情報は,各業務ステップの開始時刻と終了時刻の情報を含み, 前記ステータス情報の更新情報は,更新後の業務ステップを示す情報を含み, 前記ステータス更新部は,前記ステータス情報の更新情報の入力に基づいて,前記現在進行中の業務ステップを,前記更新後の業務ステップに更新すると共に,前記ステータス情報の更新情報を受けた時刻を,更新前の業務ステップの終了時刻および前記更新後の業務ステップの開始時刻として登録する,プログラム。 第5 引用文献,引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由において引用された,特開2002-342846号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審において付与した。) (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,例えば,レストラン等の飲食店での顧客の待ち人数等を管理するための待ち客管理装置,待ち客管理システムおよびコンピュータプログラムに関する」 (イ)「【0008】本発明は,全ての情報を再入力する等の煩雑な作業を行うことなく,来店順序に則した順序で顧客を座席に案内することができる待ち客管理システムを得ることを目的とする。 【0009】本発明は,顧客を待たせた時間を正確に把握することができる待ち客管理システムを得ることを目的とする。 【0010】本発明は,煩雑な管理作業を行うことなく,現在の正確な待ち人数を把握することができる待ち客管理システムを得ることを目的とする。」 (ウ)「【0029】 【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態について図1ないし図22を参照して説明する。本実施の形態は,例えば,レストラン等の飲食店で使用されるオーダーエントリーシステムへの適用例を示す。 【0030】図1は,本発明の一実施の形態のオーダーエントリーシステムの全体構成を概略的に示すシステム構成図である。オーダーエントリーシステム1は,店員が個々に携帯する複数のハンディターミナル2,ハンディターミナル2との間でデータを無線通信する無線通信装置を備える待ち客管理装置としてのサーバ3,会計処理部に設置されたECR4,ドリンクカウンタ等に設置されたカスタマチェックプリンタ5,および,複数台の待ち客表示装置6(6a,6b)等により構成されている。サーバ3,ECR4,カスタマチェックプリンタ5,および,待ち客表示装置6(6a,6b)は,有線接続されている。」 (エ)「【0033】次に,サーバ3について図2を参照して説明する。図2は,サーバ3が備える各部の電気的接続を示すブロック図である。サーバ3は,各種のデータ処理を実行するCPU(Central Processing Unit)7,各種制御プログラム等の固定的データを格納するROM(Read Only Memory)8,CPU7のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)9等をバス接続することによって形成されるマイクロコンピュータ(Microcomputer:以下,マイコンという)10を有している。公知の技術であるが,CPU7は時間を計時する計時機能を備えている。本実施の形態では,CPU7が備える計時機能によって計時される時間に基づいて各種時間に関する情報を管理する。 【0034】マイコン10には,各種制御プログラムや各種データファイルを格納するHDD(Hard Disk Drive)11が接続されている。各種データファイルとしては,図3に示す待ち客管理ファイル100,図4に示す座席管理ファイル200等がある。 【0035】図3は,待ち客管理ファイル100のファイル構造を示す説明図である。待ち客管理ファイル100は,顧客を識別するための顧客名を記憶する顧客名エリア101,グループ毎の待ち人数である人数を記憶する人数エリア102,顧客を受け付けた時間に関する受付時間情報としての受付時間を記憶する受付時間エリア103等によって構成されるファイル構造を有する。本実施の形態では,顧客名と人数とによって顧客情報が構成されている。また,待ち客管理ファイル100は,識別情報を記憶する識別情報エリア104を有しており,顧客名,人数,受付時間等の各種情報は,識別情報毎に対応づけられて記憶される。 【0036】略 【0037】加えて,待ち客管理ファイル100は,識別情報毎に対応づけられて,顧客を座席に案内した時間に関する案内時間を記憶する案内時間エリア105と,後述する案内待ち時間に応じて適宜チェックされるチェックボックス106を有する。 【0038】HDD11に記憶された待ち客管理ファイル100は,各待ち客表示装置6から出力される各種データに応じて適時更新される。」 (オ)「【0044】図6は,待ち客表示装置6が備える各部の電気的接続を示すブロック図である。待ち客表示装置6は,各種のデータ処理を実行することで各部を集中的に駆動制御するCPU22,各種制御プログラム等の固定的データを格納するROM23,CPU22のワークエリアとして機能するRAM24等をバス接続することによって形成されるマイコン25を有している。 【0045】?【0046】略 【0047】HDD26には,HDD11に記憶されている待ち客管理ファイル100と同様の待ち客管理ファイル100が格納されている。各待ち客表示装置6のHDD11に格納された待ち客管理ファイル100は,タッチパネル21の操作により入力または変更されたデータ,あるいは通信I/F29を介してサーバ3から出力されたデータに基づいて適宜更新される。 【0048】?【0049】略 【0050】加えて,マイコン25には,サーバ3との間でデータの通信を行う通信I/F29がバス接続されている。」 (カ)「【0051】続いて,オーダーエントリーシステム1の各部の制御について説明する。 【0052】まず,待ち合い場所に設置される待ち客表示装置6aでの操作に応じたオーダーエントリーシステム1での各部の制御について,図7ないし図19を参照して説明する。 【0053】<待ち客入力>まず,待ち客の入力に際しての制御について説明する。特に図示しないが,待ち客表示装置6aのCPU22は,待ち客の入力に際して,HDD26に格納された制御プログラムに基づいて以下の処理を実行する。顧客の待ち合い場所に設置された待ち客表示装置6aは,通常,図7に示すような,トップページである画面P1を表示している。画面P1には,案内を待っている顧客に関する待ち客情報50や,現在待っている顧客の総人数である総人数情報51等が表示されている。画面P1を表示している状態で,タッチパネル21の操作により,「お待ち入力」52がタッチされると,図8に示す画面P2を表示する。 【0054】図8に示す画面P2は,顧客名登録ページを示している。画面P2は,画面P1の上に重ねてポップアップ表示するようにしてもよいし,画面P1と入れ替えて表示するようにしてもよい。以下に説明する各種画面についても同様とする。画面P2には,顧客名を入力するためのキーボード53,入力された顧客名を表示する顧客名表示欄54等が表示されている。キーボード53は,顧客名を入力するための文字キー53aや,入力した情報を確定する「OK」キー53b,入力した情報を取消す「キャンセル」キー53c等によって構成されている。必要事項の入力後「OK」キー53bがタッチされると,入力された情報をRAM24の入力情報記憶エリア(図示せず)に一時記憶させ,図9に示す画面P3を表示する。ここでは,例えば,「タカハシ」と入力したものとする。 【0055】画面P3は,人数登録ページを示している。画面P3には,画面P2で入力した顧客名(ここでは,「タカハシ」)に対応する待ち人数を入力するためのテンキー53,入力された待ち人数を表示する待ち人数表示欄55,入力した情報を確定する「OK」キー56,入力した情報を取消す「キャンセル」キー57等が表示されている。 【0056】待ち人数の入力後「OK」キー56がタッチされると,RAM24に記憶されている顧客名に入力された人数情報を対応づけた新規登録データを通信I/F29を介してサーバ3へ向けて出力し,画面P1へ戻る。 【0057】ここで,図10は,サーバ3のHDD11に格納された制御プログラムに基づいてCPU7が実行する新規登録処理について概略的に示すフローチャートである。サーバ3は,外部から出力されたデータを受信したと判断するまで待機し(A1のN),外部から出力されたデータを受信したと判断した場合には(A1のY),受信したデータが待ち客表示装置6aから出力された新規登録データであるか否かを判断する(A2)。 【0058】受信したデータが待ち客表示装置6aから出力された新規登録データであると判断した場合には(A2のY),受信した新規登録データに基づいた顧客名,人数に新たな識別情報を対応づけて待ち客管理ファイル100に記憶する(A3)。ここで,「新たな識別情報」とは,待ち客管理ファイル100に記憶されていない識別情報を意味する。 【0059】このとき,CPU7の計時機能を用いて,受付時間新規登録データを記憶した時間をこの顧客の受付時間として取得し,新規に記憶された顧客名に対応づけて受付時間エリア103に記憶する(A4)。ここに,待ち客記憶手段としての機能が実行され,待ち客記憶機能が実現される。これによって,待ち客管理ファイル100が更新される。 【0060】略 【0061】更新後の待ち客管理ファイル100の最新データを各待ち客表示装置6へ向けて出力する(A5)。 【0062】各待ち客表示装置6は,サーバ3から出力された待ち客管理ファイル100の最新データに基づいて待ち客情報50の表示を更新するとともに,各顧客名に対応づけられた人数から総人数を算出し,算出した総人数に基づいて総人数情報51をLCD20に表示させ,画面P1へ戻る。ここに,総人数取得手段および表示手段としての機能の一部が実現され,総人数取得機能および表示機能が実現される。」 (キ)上記(ア)?(カ)によれば,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 待ち客管理装置としてのサーバ3,複数台の待ち客表示装置6(6a,6b)等により構成されるレストラン等の飲食店で使用されるオーダーエントリーシステム1であって(段落【0029】,【0030】,図1), 前記サーバ3は,待ち客管理ファイル100を含む各種データファイルを格納するHDD(Hard Disk Drive)11が接続されているマイクロコンピュータ(Microcomputer:以下,マイコンという)10を有しており,外部から受信したデータが待ち客表示装置6aから出力された新規登録データであると判断した場合には,受信した新規登録データに基づいた顧客名,人数に新たな識別情報を対応づけて待ち客管理ファイル100に記憶するものであり(段落【0033】,【0034】,【0057】,【0058】及び図2,10), 前記待ち客表示装置6aは,顧客の待ち合い場所に設置されており,顧客により入力された顧客名と待ち人数を対応づけた新規登録データをサーバ3へ出力するものであり,サーバ3から出力された待ち客管理ファイル100の最新データに基づいて待ち客情報50の表示を更新するとともに,各顧客名に対応づけられた人数から総人数を算出し,算出した総人数に基づいて総人数情報51をLCD20に表示させるものであり(段落【0052】?【0062】), 前記待ち客管理ファイル100は,各待ち客表示装置6から出力される各種データに応じて適時更新されるものであり,顧客を識別するための顧客名を記憶する顧客名エリア101,グループ毎の待ち人数である人数を記憶する人数エリア102,顧客を受け付けた時間に関する受付時間情報としての受付時間を記憶する受付時間エリア103,識別情報を記憶する識別情報エリア104,顧客を座席に案内した時間に関する案内時間を記憶する案内時間エリア105,案内待ち時間に応じて適宜チェックされるチェックボックス106によって構成されるファイル構造を有し,顧客名,人数,受付時間,案内時間等の各種情報は,識別情報毎に対応づけられて記憶されるものである(段落【0035】,【0037】,【0038】及び図3), オーダーエントリーシステム1。 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由において引用された,特開2007-323482号公報(以下,「引用文献2」という。)の段落【0042】?【0067】には,次の事項が記載されているといえる。 <引用文献2の記載事項> 病院内で,患者の携帯端末にその日の移動計画(受付,診察,会計等)を待ち時間や予定開始時刻と共に表示するシステム。 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された特開2008-136720号公報(以下,引用文献3という。)の段落【0036】?【0038】には,次の事項が記載されているといえる。 <引用文献3の記載事項> 景品交換システムにおいて,景品交換にかかった時間の最長時間や平均時間に基づいて時間帯毎の混雑状況を把握すること。 4.引用文献4について 原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された特開2005-258647号公報(以下,引用文献4という。)の段落【0045】には,次の事項が記載されているといえる。 <引用文献4の記載事項> 整理券発行システムにおいて,過去の窓口での対応所要時間の平均値などを用いて,待ち時間を予測すること。 5.引用文献5について 原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された特開2008-234262号公報(以下,引用文献5という。)の段落【0035】?【0057】には,次の事項が記載されているといえる。 <引用文献5の記載事項> 受付処理状態連絡システムにおいて,顧客から受け付けた金融取引処理の実行中に,1つの事務処理が終了する毎に,顧客の携帯端末に進捗状況を通知すること。 6.引用文献6について 原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用された特開2003-44943号公報(以下,引用文献6という。)の段落【0043】?【0044】,【0056】?【0096】及び図6,7には,次の事項が記載されているといえる。 <引用文献6の記載事項> 飲食店システムにおいて,ゲストの状態(待ち,着席)と着席したゲストのオーダーの状態情報(受付済,配膳完了)を関連付けて管理すること。 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「オーダーエントリーシステム1」は,レストラン等の飲食店等で使用され,来店した顧客の待ち人数等を管理するものであるから,本願発明でいうところの「施設においてサービスを受ける順番待ち組の順番待ち状況を管理する順番管理システム」に相当する。 (イ)引用発明の「待ち客表示装置6a」は,顧客の待ち合い場所に設置され,案内を待っている顧客に関する待ち客情報50や,現在待っている顧客の総人数である総人数情報51等を表示するのであり,これら待ち客情報50等は,待ち合い場所で案内を待っている顧客に対して順番待ち状況を知らせるものであることは明らかである。そして,この待ち客情報50等は,サーバ3から出力された「待ち客管理ファイル100」の最新データに基づいてその表示が更新されることから,当該「待ち客管理ファイル100」は,待ち合い場所で案内を待っている顧客に対して順番待ち状況を知らせるために用いる情報であるといえる。そして,当該「待ち客管理ファイル100」は,1人または1グループの顧客名に対応づけられる識別情報毎に管理され,サーバ3のHDD11に格納されることから,引用発明は,本願発明でいうところの「前記順番待ち組に対して順番待ちの状況を知らせるために用いる各順番待ち組の外部用ステータス情報を保持する記憶部」を備えているといる。 (ウ)引用発明の「サーバ3」は,外部から受信したデータが待ち客表示装置6aから出力された新規登録データであると判断した場合には,受信した新規登録データに基づいた顧客名,人数に新たな識別情報を対応づけて待ち客管理ファイル100に記憶することから,本願発明でいうところの「新規の順番待ちの入力に基づいて,前記外部用ステータス情報を更新するステータス更新部」を備えているといえる。 イ してみると,本願発明1と引用発明とは,次の点で一致する。 <一致点> 施設においてサービスを受ける順番待ち組の順番待ち状況を管理する順番管理システムであって, 前記順番待ち組に対して順番待ちの状況を知らせるために用いる各順番待ち組の外部用ステータス情報を保持する記憶部と, 新規の順番待ちの入力に基づいて,前記外部用ステータス情報を更新するステータス更新部と,を備えた順番管理システム。 ウ そして,次の点で相違する <相違点1> 「記憶部」が,本願発明では,「前記施設において業務の管理に利用するために用いる各順番待ち組の内部用ステータス情報」を保持するのに対して,引用発明では,そのような情報は保持していない点 <相違点2> 「ステータス更新部」が,本願発明では,「ステータス情報の更新情報の入力に基づいて,前記外部用ステータス情報および前記内部用ステータス情報を更新する」のに対して,引用発明では,「ステータス情報の更新情報」を入力することも,当該「ステータス情報の更新情報」に基づいて「内部用ステータス情報」を更新することも,明示されていない点 <相違点3> 本願発明では,「前記順番待ち組への情報提供に利用する第1モードの画面には前記外部用ステータス情報を表示し,前記施設内で管理用に利用する第2モードの画面には前記内部用ステータス情報を表示する表示制御部」を備えているのに対して,引用発明では,そのような構成は備えていない点 <相違点4> 本願発明では,「前記内部用ステータス情報」は,「前記サービスに含まれる複数の業務ステップのうち,現在進行中の業務ステップを示す情報と,各順番待ち組に対して実際に前記サービスを提供した際の,各業務ステップに要した作業時間の情報を含み,前記作業時間の情報は,各業務ステップの開始時刻と終了時刻の情報」を含むのに対して,引用発明では,そのような情報は備えていない点 <相違点5> 本願発明では,「前記ステータス情報の更新情報」は,「更新後の業務ステップを示す情報」を含むのに対して,引用発明では,そのような情報を備えていない点 <相違点6> 「ステータス更新部」が,本願発明では,「前記ステータス情報の更新情報の入力に基づいて,前記現在進行中の業務ステップを,前記更新後の業務ステップに更新すると共に,前記ステータス情報の更新情報を受けた時刻を,更新前の業務ステップの終了時刻および前記更新後の業務ステップの開始時刻として登録する」のに対して,引用発明では,そのような特定はされていない点 (2)相違点についての判断 ア 相違点1,2,4,5について 引用文献1には,座席管理ファイル200により,座席名毎に,「空席」,「案内中」,「在席」,「使用不可」,「会計終了」等の座席状態を管理することが記載されているが(段落【0039】),これら「空席」,「案内中」,「在席」,「使用不可」,「会計終了」は,飲食店に備わる各座席の状態を管理するものであり,座席管理ファイル200に記憶される各座席に着席した顧客(グループ)を識別する識別情報が,待ち客管理ファイル100の識別情報と対応しているとしても(段落【0040】),座席管理ファイル200は,各待ち客の状態を管理するものとはいえないから,引用文献1の「座席管理ファイル200」は,本願発明でいうところの「前記施設において業務の管理に利用するために用いる各順番待ち組の内部用ステータス情報」に該当しない。そうすると,引用文献1には,このような「内部用ステータス情報」を保持・更新することや,作業時間等の情報を含むように限定することについては,記載されていないし示唆もされていないし,原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2?6にも記載されていない。 よって,相違点1,2,4,5に係る構成は,この構成により本願明細書記載の作用効果を奏するものであるから,引用発明及び引用文献2?6の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 相違点3について 引用文献1の「待ち客表示装置6(6a,6b)」は,「前記順番待ち組に対して順番待ちの状況を知らせるために用いる各順番待ち組の外部用ステータス情報」を表示するものの,「内部用ステータス情報」を表示するものではないから,これら2つのステータス情報を異なるモードで画面表示するための制御手段を備えるものではない。そして,このような制御手段は,原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2?6にも記載されていないし,当該手段を採用することの動機付けも存在しないから,相違点3について容易想到とはいえない。 ウ 小括 本願発明は,相違点1?5に係る構成の採用により,利用客の順番待ちの管理に加え,施設側のサービス提供にかかる業務支援も行うことができるとともに,各業務ステップの平均作業時間や,最長作業時間,最短作業時間等を分析して,人員の最適化などに役立てることができることを可能とするものであり,ア及びイにおいて上記したとおり,相違点1?5について容易想到であるとはいえない。 してみると,本願発明は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6の記載事項に基づいて容易に発明することができたものであるとはいえない。 2.本願発明2?5について 本願発明2,3も,1.(2)ア及びイにおいて検討した本願発明1の相違点1?5に係る構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 また,本願発明4,5も,上記相違点1?5に係る構成に対応する構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2?6の記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定について 審判請求時の補正により,本願発明1?5は,本願発明1の相違点1?5に係る構成を備えるものとなっているから,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1?6に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-10-18 |
出願番号 | 特願2015-254949(P2015-254949) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06Q)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山本 雅士、谷川 智秀 |
特許庁審判長 |
金子 幸一 |
特許庁審判官 |
貝塚 涼 石川 正二 |
発明の名称 | 順番管理システム、順番管理装置および順番管理プログラム |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 伊藤 健太郎 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 大貫 敏史 |