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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1333174
異議申立番号 異議2016-700754  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-19 
確定日 2017-07-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5888876号発明「成型冷凍麺塊の製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5888876号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第5888876号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯

特許第5888876号の請求項1?10に係る特許についての出願は,平成23年5月27日に特許出願され,平成28年2月26日にその特許権の設定登録がされたところ,その特許について特許異議申立人大森桂子及び伊達俊二により特許異議の申立てがなされ,同年11月11日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である平成29年1月16日に意見書の提出及び訂正請求がされ,同年2月24日付けで特許異議申立人両名から意見書が提出されたものである。その後,同年3月22日付けで取消理由(決定の予告)が通知されたが,これに対し,特許権者から何らの応答はなかった。


第2 訂正について

1 訂正の内容

平成29年1月16日付けの訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正」という。)は,本件特許の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?10について訂正することを求めるものであって,具体的な訂正事項は以下のとおりである。

(1)訂正事項1

訂正前の請求項1における,「底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、」の後に,
「そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、」を加入する(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)。(請求項1を引用する請求項2,5?10についても同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

訂正前の請求項3における,「底面に窪み状の凸部を有し、これにより収容された麺塊に麺塊重量に対し30?75%の重量の冷凍具材を収容可能な大きさの凹部が成型され、」の後に,
「そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、」を加入する。(請求項3を引用する請求項5?10についても同様に訂正する。)

(3)訂正事項3

訂正前の請求項4における,「底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に溝が成型され、これにより冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部が成型され、」の後に,
「そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、」を加入する。(請求項4を引用する請求項5?10についても同様に訂正する。)

(4)訂正事項4

訂正前の請求項6に「対向する面の面積を」とあるのを,「反対側の面の麺塊の面積を」と訂正する。(請求項6を引用する請求項7?10についても同様に訂正する。)

2 訂正の適否

(1)訂正事項1?3について

訂正事項1?3は,それぞれ訂正前の請求項1,3及び4に記載された「収容された麺塊に」「成型され」る「凹部」に対して,さらに「そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、」との限定事項を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして,請求項1,3及び4を直接又は間接に引用する請求項2,5?10についても,同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

また,本件特許明細書には,「発明を実施するための形態」として「凸部の高さはまた、具材の量にもよるが、麺塊の製造ラインでの割れにくさ、麺の均一充填のしやすさ等の観点からは、最も薄い場所での麺塊の厚みが、40mm以下、好ましくは38mm以下、より好ましくは36mm以下となるようにする。これより厚みがあると、冷凍麺塊を必要の際に、意図した箇所で手作業により分割することが困難になるからである。」(【0033】)と記載されていることから,「凹部」が「冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部」であることを特定した請求項4に関する訂正事項3は,本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。
さらに,本件特許明細書には,上記【0033】の記載に加え,「実施例」として「全体のサイズは173mm×150mm×51mmの容器を準備した。3種類の形状のトレーを試作した。いずれの場合も、具材の収納性を考慮し、凹部がうどん底面の中央に配置されるように設計した。」(【0046】),「トレー(3):底面から、15mm程度の深さで平らな部分を有する窪みを設置した。カーブの角度は(1)と同じ(図1右)」(【0049】),「トレー(3)のような形状であれば、製造可能と考えられたので、この形状において、更なる破損の少ない離脱方法(脱パン方法)の検討を行った。」(【0052】),「具材つきの冷凍うどんを製造した。トレー(3)を用い、製造試験1と同様に、冷凍うどんを製造した。」(【0053】),「冷凍した具材を、冷凍麺塊の中央の凹部に収容し、透明フィルムでラップした。ラップの上につゆをのせ、全体を製品用包装でピロ?包装し、製品とした。」(【0064】)と記載されていることから,「凹部」が「冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部」であることを特定しない請求項1に関する訂正事項1,及び「凹部」が「麺塊重量に対し30?75%の重量の冷凍具材を収容可能な大きさの」「麺塊収容凹部」であることを特定した請求項3に関する訂正事項2も,本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

(2)訂正事項4について

訂正事項4は,訂正前の請求項6に記載された「トレーが、麺塊の凹部が形成される面とは対向する面の面積を210?310cm^(2)/200g(麺塊重量)とするものである」を,「トレーが、麺塊の凹部が形成される面とは反対側の面の麺塊の面積を210?310cm^(2)/200g(麺塊重量)とするものである」とすることで,「麺塊の凹部が形成される面とは対向する面の面積」がトレーと麺塊いずれの面積であるかを明確にしようとするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして,請求項6を直接又は間接に引用する請求項7?10についても,同様に明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

また,本件特許明細書には,「発明を実施するための形態」として「鍋調理に特に適したものとするためには、トレーにおいて、麺塊の凹部が形成される面とは対向する面の面積を210?310cm^(2)/200g(麺塊重量)とし、麺塊の底面積を広く形成するとよい。」(【0034】)と記載されており,この面積の数値限定により「麺塊の底面積を広く形成する」ことを挙げていることから,当該面積が麺塊の面積であることを明確化する訂正事項4は,本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。

3 むすび

よって,本件訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1?10〕について訂正することを認める。


第3 取消理由通知に記載した取消理由1(進歩性)について

1 本件発明

特許第5888876号の請求項1?10に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1?10」という。)は,本件訂正により訂正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項によって特定される,以下のとおりのものである。

【請求項1】
凹部を有する冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを捻って変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。
【請求項2】
凹部が、冷凍具材を収納するための窪み状のものであるか、又は冷凍麺塊を分割するための溝状のものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
冷凍麺塊及び冷凍具材類を含む、冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に窪み状の凸部を有し、これにより収容された麺塊に麺塊重量に対し30?75%の重量の冷凍具材を収容可能な大きさの凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを捻って変形させることにより離脱させ;そして
(4)冷凍具材を準備し、冷凍具材を直に冷凍麺塊凹部に収容し、冷凍具材と冷凍麺塊とを一体とする
工程を含む、製造方法。
【請求項4】
冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に溝が成型され、これにより冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを捻って変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。
【請求項5】
トレーが、ゆで調理済みの麺の水切れを促進するための複数の細溝を有している、請求項1?4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
トレーが、麺塊の凹部が形成される面とは反対側の面の麺塊の面積を210?310cm^(2)/200g(麺塊重量)とするものである、請求項1?5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
鍋による加熱調理用の冷凍麺製品を製造するための、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
麺塊重量が、150?250gである、請求項1?7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
麺が、うどん、そば又はラーメンである、請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(1)が、小麦粉を主体とする100重量部あたりでん粉12?17重量部を含む粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、幅2.9?3.8mm、厚さ2.6?3.4mmの麺とし、麺を95℃以上の水で10?12分間ゆでるものである、請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。

2 刊行物

(1)平成28年11月11日付け取消理由通知において引用した刊行物(以下それぞれ「甲1?12」という。)は次のとおりである。なお,証拠番号は,異議申立人大森桂子による異議申立書に従い,異議申立人伊達俊二による証拠番号を括弧書きで示した。

甲第1号証:特開2004-81163号公報(甲第5号証)
甲第2号証:特開2000-166495号公報(甲第4号証)
甲第3号証:特開平4-154529号公報(甲第3号証)
甲第4号証:特開2010-254375号公報
甲第5号証:登録実用新案第3155263号公報(甲第1号証)
甲第6号証:特開2007-174920号公報
甲第7号証:特開2006-61110号公報
甲第8号証:特開2001-286267号公報
甲第9号証:特開2000-166494号公報
甲第10号証:特開2010-207209号公報(甲第2号証)
甲第11号証:特開昭62-55049号公報(甲第6号証に対応)
甲第12号証:小田聞多,「新訂 めんの本」,改訂版,
株式会社食品産業新聞社,2003年12月25日

(2)甲1発明

ア 甲1には,以下の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様)

(ア)「【0007】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、うどん、そば、中華麺、スパゲッティ等の種々の冷凍麺において、調理の際に1.5食分の大盛りや0.5食分の少量などの量調整を簡便にすることができる冷凍麺であって、従来の分割可能な冷凍麺に比べて、等量に分割することができ、また、分割に際して屑麺の発生を最小限に抑えて商品価値を損なうことがなく、さらに、小さな力で容易に分割することができ、かつ製造工程や輸送工程で分裂することのない冷凍麺を提供することにある。」

(イ)「【0014】
上記本発明において『麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体』とは、1の麺塊を構成する麺線の表面と他の麺塊を構成する麺線の表面とが互いに接触した状態で凍結され、接触面で互いに接着した麺塊同士の連結体をいう。また、本発明で『麺塊』とは、1又は2以上の麺線から構成される一塊りの麺線の集合体をいい、かかる麺塊(集合体)間に橋渡し状態の麺線が実質的に存在する場合は1の麺塊とはいわない。ここで実質的に存在する場合とは、分割予定部を境として麺塊の一方の塊と他方の塊との間に存する橋渡し状態の麺線が分割予定部の連結力を保持している場合をいう。また、本発明において『麺』とは、小麦粉、そば粉、澱粉などを原料とし、加水・混捏後にその粘弾性を利用して線状に成形したものをいい、うどん、そば、そうめん、きしめん、中華麺、スパゲッティ等を具体的に例示することができる。したがって、本発明の冷凍麺においては、面接触の部分、すなわち、麺線同士の表面接触面積を、麺の種類、麺線の太さ等に応じて適宜調節することが好ましい。さらに、麺塊連結体を構成する凍結麺塊の形状や大きさは、製造工程や輸送工程で個々の麺塊に分裂することがない凍結接着面を有する限り特に制限されないが、3個以上の麺塊から構成される場合、1以上の麺塊は2以上の凍結接着面を有することになる。
【0015】
以下、本発明の実施態様について図面を適宜参照しながら説明する。図1は、2個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体からなる本発明の冷凍麺の平面図、図2は、図1に示される本発明の冷凍麺の正面図、図3は、3個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体からなる本発明の冷凍麺の正面図、図4は、凍結用トレーに収容された蒸煮麺塊の均し工程を説明する平面図、図5は、凍結用トレーに収容された蒸煮麺塊の均し工程を説明する縦断面図、図6は、押圧部材によるプレス工程を説明する縦断面図、図7は、分割可能な冷凍麺の製造に用いられる本発明の凍結用トレーの斜視図、図8は、図7に示される本発明の凍結用トレーの平面図、図9は、図7に示される本発明の凍結用トレーの正面図、図10は、凍結用トレーに収容された蒸煮麺塊の均し方法を説明する平面図、図11は、本発明の冷凍麺の段ボール箱への収容方法の説明図をそれぞれ表す。
【0016】
上記本発明の複数個の麺塊1同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体2からなる冷凍麺としては、面接触の部分3の両側面に対向する側面溝4,4を有する冷凍麺が好ましく、ここで『面接触の部分の両側面』とは、面接触の部分を長方形と見立てた場合、長方形の短辺側の両外側面をいう。かかる面接触の部分の両側面に対向する側面溝を有する冷凍麺は、通常、面接触部分3の接触圧が高まった状態で凍結接着されていることから、面接触部分での凍結接着力が大きく、凍結接着後の製造工程や冷凍麺製品の輸送工程で、麺塊連結体が2以上の凍結麺塊1に分裂することが、より一層抑制されるという主たる作用効果を有すると同時に、対向する側面溝4,4はくびれとしての機能をもつことから、面接触部分での分割を容易にするという従たる作用効果を有する。また、本発明の冷凍麺としては、面接触の部分の底面に底面溝5を有する冷凍麺が好ましく、ここで『面接触の部分の底面』とは、面接触の部分を長方形と見立てた場合、長方形の長辺側の片側面をいう。かかる面接触の部分の底面に設けられた底面溝5は、面接触部分での冷凍麺の分割を容易にする、特に分割のきっかけとなるという作用効果を有する。底面溝を有する従来の冷凍麺の場合、橋渡し状態の麺線が存在することから、冷凍麺の分割に際しては、底面溝を有する底部を上にして分割せざるを得ないが、本発明の底面溝を有する冷凍麺の場合、橋渡し状態の麺線が実質的に存在せず、麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着していることから、底面溝を有する底部を上にして分割することもできるが、底面溝のない上部を上にしても容易に分割することができる。
【0017】
そして、上記側面溝4,4と底面溝5とが連続した溝として形成されている冷凍麺が、側面溝と底面溝との作用効果を合わせもつことから特に好ましい。この場合、側面溝の幅及び深さが、底面溝の幅及び深さよりもそれぞれ大きい冷凍麺がより一層好ましい。かかる冷凍麺をも含めて、側面溝を有する冷凍麺は、側面溝の深さが底部から上部へ漸次小さくなるように形成されているものが好ましい。このような本発明の冷凍麺は、基本的にどちらを上にして分割しても、必要とする力は変わらず、また、折れ麺の発生量も変わらず、通常、麺塊同士の接触面に沿って当量に分割される。これに対して、橋渡し状態の麺線が存在する従前の冷凍麺の場合、通常底部の溝(底面溝)上部の橋渡しされた麺線を折取って分割する必要があり、底面溝の方から分割しようとしても、麺線の強度に依存して折れることになるため、底面溝に沿って分割されないおそれがある上に、逆方向の橋渡し麺の方から分割しようとしても、分割することが困難で、かつ、分割面の状態も一定にはならない。」

(ウ)「【0019】
前記本発明の分割可能な冷凍麺の製造方法としては、手作りによる製造方法でもよいが、複数の投入口から蒸煮麺塊10をそれぞれ分離した状態で凍結用トレー11に投入し、次いで投入された麺塊を個別的に均した後、押圧部材により上部からプレスして麺塊同士の側面を面接触させ、面接触させた状態で凍結した後、複数個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体を凍結用トレーから分離する製造方法を好適に例示することができるが、図4及び図5に示されるように、凍結用トレーに投入した蒸煮麺塊を、麺塊同士の凍結接着予定面と平行方向に個別的に均す製造方法や、図6に示されるように、個々の麺塊用の押圧部材により上部から個々の麺塊毎にプレスして麺塊同士の側面を面接触させる製造方法が好ましく、特に、凍結用トレーに投入した麺塊を、麺塊同士の凍結接着予定面と平行方向に個別的に均した後、個々の麺塊用の押圧部材により上部から個々の麺塊毎にプレスして麺塊同士の側面を面接触させる製造方法が、好適な凍結接着面を形成しうることから好ましい。
【0020】
本発明の分割可能な冷凍麺の製造方法において用いられる凍結用トレーとしては、複数個の蒸煮麺塊同士の側面を面接触させた状態で凍結させることができるものであれば特に制限されないが、側壁内側に対向する一対(2つの麺塊の連結体の場合)又は複数対(3つ以上の麺塊の連結体の場合)の側壁凸条部が設けられ、かかる側壁凸条部により分画された、麺塊連結体を構成する個々の麺塊の収容スペースが形成されているトレーを用いることで、投入された麺塊同士の接触面が幅方向で制限され、麺種・麺重量を変更した場合でも幅方向の制限により接触面積の変動が少なくなる。すなわち、2つの麺塊同士を接触させた場合、麺塊を平均的に均すとしても、実際には接触面の幅方向両端に非接触又は接触面積の少ない部分が発生しやすく、その結果、凍結後の接着強度がばらつき易くなるが、接触面の幅方向両端を予め制限し、中央部において集中的に接触するように制限しておくと、投入された麺塊同士の接触有効面積が一定となり、接着強度の安定につながるばかりでなく、解凍に際しての分割時に一定の力で分割し易くする上で好ましい。また、凍結用トレーとして、底部内側に、1(2つの麺塊の連結体の場合)又は複数(3つ以上の麺塊の連結体の場合)の底部凸条部が設けられ、かかる底部凸条部により分画された、麺塊連結体を構成する個々の麺塊の収容スペースが形成されているトレーを用いることが、麺塊投入時に投入された麺塊同士の橋渡しを防ぐことができるなど、投入された麺塊の位置決めを強制する上で、また、解凍に際しての分割時に分割し易くする上で好ましい。
【0021】
さらに、図7?9に示されるように、凍結用トレー11として、側壁内側に対向する一対又は複数対の側壁凸条部12と、底部内側に1又は複数の底部凸条部13とが設けられ、前記側壁凸条部と底部凸条部とが連続したU字型凸条部14として形成され、かかるU字型凸条部14により分画された、麺塊連結体を構成する個々の麺塊の収容スペース15が形成されているトレーを用いることが、上記の側壁凸条部と底部凸条部との作用効果を合わせ享受することができるので好ましい。加えて、上記U字型凸条部が、側壁凸条部の幅及び高さが底部凸条部の幅及び高さよりもそれぞれ大きく形成されていると、上記の側壁凸条部と底部凸条部との作用効果、中でも側壁凸条部の作用効果を特に有利に享受することができるのでより好ましい。
【0022】
本発明の凍結用トレーとしては、その開口面積が底部面積よりも大きく形成されているトレーが、凍結した麺塊連結体を凍結用トレーから容易に離型することができるので好ましく、かかるトレーは通常その側壁が4面ともテーパー面16として形成されている。本発明の凍結用トレーに設けられた側壁凸条部として、上記U字型凸条部をも含め、その高さが、底部から上部に向かって漸次低くなるように形成されているトレーを用いると、凍結した麺塊連結体を凍結用トレーから一層容易に離型することができるので好ましい。なお、側壁がテーパー状に形成されていると、側壁面からの相対的な高さは変わらないが、かかる場合も、便宜上、底部から上部に向かって漸次低くなるように形成されているとして、本発明に含まれる。また、凍結用トレーとして、麺塊連結体を構成する個々の麺塊の収容スペースの底部四隅17、好ましくは底部四隅を含め底部周縁18が、R(アール)型に形成されているトレーを用いると、凍結用トレーに投入された蒸煮麺塊が均し工程により収容スペースの隅々まで行き渡り、デッドスペースが生じることなく、麺塊が収容スペースで常に一定の体積を占め、結果的に麺塊同士の接触圧が均質となる。さらに、トレーの材質としては、離型のし易さからして、多少撓めることができるようなフレキシブルな素材が好ましく、かかる素材として例えば、耐寒性ポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。また、かかるトレーの作製法としては特に制限されないが、樹脂シートからプレス成形法により一体的に作製する方法を好適に例示することができる。」

(エ)「【0026】
プレス工程が終了し、麺塊同士が面接触の状態で互いに接着した麺塊は凍結用トレーに収容された状態で常法により凍結される。凍結後、離型工程で、麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体がトレーから離型されるが、離型に際しては、前記のようにトレーの形状や材質が重要なファクターとなるが、その他、離型方法も重要なファクターとなる。離型方法としては、離型し易いようにテーパー形状で、変形しやすいようにフレキシブルな素材からなるトレーに、過度の衝撃を与えることなく離型する方法が好ましく、例えば、凍結後、トレーを反転させ、トレー底部外側に軽い衝撃を与えて離型させた後、専用コンベアでトレーから分離された麺塊連結体を包装工程へ移送する方法を好適に例示することができる。包装工程では、通常、麺塊連結体が個包装され、該個包装体が複数個まとめて包装され、製品化として出荷されることになる。
【0027】
本発明の凍結用トレーとしては、分割可能な冷凍麺の製造に用いられるトレーであって、トレー側壁内側に対向する一対又は複数対の側壁凸条部と、底部内側に1又は複数の底部凸条部とが設けられ、前記側壁凸条部と底部凸条部とが連続したU字型凸条部として形成され、かかるU字型凸条部における側壁凸条部の幅及び高さが底部凸条部の幅及び高さよりもそれぞれ大きく形成されているトレーであれば特に制限されるものではないが、側壁凸条部が、底部から上部へ漸次その高さが低くなるように、かつ、凸条端部方向に漸次その幅が小さくなるように傾斜テーパー状に形成されている冷凍麺用トレーや、U字型凸条部により分画された収容スペースの底部四隅が、R型に形成されている冷凍麺用トレーや、弾性を有する素材で作製されている冷凍麺用トレーが好ましい。本発明の凍結用トレーは、上述のように、分割可能な冷凍麺の製造に好適に用いることができる他、U字型凸条部を備えていることから、該U字型凸条部がリブとしての作用を有し、従来の側壁凸条部を有さず底部凸条部のみを有する凍結用トレーに比べて、強度において優れ、トレーを長期間使用することができるという効果も有する。」

(オ)「【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1(凍結用トレーの検討)
以下の(A)?(D)の凍結用トレーを用いて本発明の分割可能な冷凍麺を作製し、トレーの形状についての予備的実験をした。
(A)従前の橋渡し方式の分割可能な冷凍麺に用いていた凍結用トレーで、開口部内寸が縦約13cm、横約18cm、底部内寸が縦約11cm、横約16cm、深さ約4.5cmの内壁がテーパー形状で、底部幅約2cm、高さ約1.5cmの3角柱状の底部凸条部を備え、底部凸条部により分画された2つの麺塊収容スペースを有するポリプロピレン樹脂製凍結用トレー。
(B)開口部内寸が縦約13cm、横約18cm、底部内寸が縦約11cm、横約16cm、深さ約4.5cmの内壁がテーパー形状で、上部幅約0.5cm、底部幅約1cm、高さ約2cmの側壁凸条部を備え、側壁凸条部により分画された2つの麺塊収容スペースを有し、厚さ0.1cmのポリプロピレン樹脂シートからプレス成形法により一体的に作製した、各収容スペースの底部四隅も含めて底部周縁がR(アール)型に形成されている凍結用トレー。
(C)開口部内寸が縦約13cm、横約18cm、底部内寸が縦約11cm、横約16cm、深さ約4.5cmの内壁がテーパー形状で、上部幅約0.8cm、底部幅約1.5cm、高さ約3cmの側壁凸条部を備え、側壁凸条部により分画された2つの麺塊収容スペースを有し、厚さ0.1cmのポリプロピレン樹脂シートからプレス成形法により一体的に作製した、各収容スペースの底部四隅も含めて底部周縁がR(アール)型に形成されている凍結用トレー。この凍結用トレーは、凍結用トレー(B)の側壁凸条部の凸条部の高さと幅を大きくしたものである。
(D)図7?9に示されるように、開口部内寸が縦約13cm、横約18cm、底部内寸が縦約11cm、横約16cm、深さ約4.5cmの内壁がテーパー形状で、上部幅約0.5cm、底部幅約1cm、高さ約2cmの側壁凸条部及び幅約0.4cm、高さ約0.7cmの底部凸条部からなるU字型凸条部を備え、U字型凸条部により分画された2つの麺塊収容スペースを有し、厚さ0.1cmのポリプロピレン樹脂シートからプレス成形法により一体的に作製した、各収容スペースの底部四隅も含めて底部周縁がR(アール)型に形成されている凍結用トレー。この凍結用トレーは、凍結用トレー(B)に底部凸条部をも設けたものである。
【0029】
実施例2(冷凍麺の実験室規模での製造)
小麦粉900g、タピオカ澱粉100gに、予め水400mlに溶解させた食塩40gを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングしてそぼろ状の生地を得、常法により製麺し、切り歯角10番を使用して、厚み2.0mmの生うどんを得た。その後、充分量の沸騰水中で3分30秒間茹で上げ、直ちに水洗して冷水中で冷却し、麺の太さが約0.5×0.3cmである茹で細うどんを得た。この茹でうどんを100gずつ計量してうどん塊とし、実施例1記載の凍結用トレー(A)?(D)の各収容スペースの中央に投入し、箸を用いて平均的に均した後、各収容スペース内で平均的に均された各茹でうどん塊の上部から、1枚のプレス板でうどんの表面が平らになるまで押し込み、うどん塊同士を面接触させ、次いで面接触したうどん塊同士を凍結用トレー(A)?(D)のそれぞれに収容した状態で、-30℃の冷凍庫内で急速凍結させた。急速凍結後、凍結用トレーを反転させ、2個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体を離型させ、凍結用トレー(A)?(D)を用いた4種類の分割可能な冷凍麺を製造した。その結果、凍結用トレー(D)を用いた冷凍麺は、指先に程良い力を加えただけで分割することができた。凍結用トレー(A)を用いた冷凍麺は、底部凸条部の高さが大きいこともあって、凍結用トレー(D)を用いた場合に比べて凍結接着力が少し小さく、簡単に分割することができた。凍結用トレー(B)を用いた冷凍麺は、高さ方向の接触面が広いこともあって、凍結用トレー(D)を用いた場合に比べて凍結接着力が少し大きく、指先に少し強めの力を加えたとき分割することができた。凍結用トレー(C)を用いた冷凍麺は、凍結用トレー(B)を用いた場合と同様に高さ方向の接触面が広いこともあって、凍結用トレー(B)を用いた場合に比べて凍結接着力が少し弱いものの、指先に少し強めの力を加えたとき分割することができた。以上の予備的実験から、凍結用トレー(D)を用いた場合が、分割性状が最も良好な冷凍麺が得られることが分かった。
【0030】
実施例3(冷凍麺の生産ラインでの製造)
小麦粉158kg、タピオカ澱粉17kgに、予め水75lに溶解させた食塩8kgを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングして団子状の生地を得、常法により製麺し、切り歯角10番を使用して、厚み2.0mmの生うどんを得た。その後、約55gの生うどんを個々の茹でケースに投入し、充分量の沸騰水中で3分30秒間茹で上げ、直ちに水洗して冷水中で冷却し、個々の茹でケースに、約100g、麺の太さが約0.5×0.3cmである茹で細うどんを得た。この茹でうどん塊を、2つの投入口から、実施例1記載の凍結用トレー(D)の各収容スペースの中央に同時に投入した。その際、投入口端部から凍結用トレーの底部までの距離を10cmに設定し、麺塊がトレーの収容スペースからはみ出したり、麺塊同士が橋渡し状態にならないようにした。次いで、以下の均し工程(I)?(IV)の各々について本発明の分割可能な冷凍麺を製造し、均し工程の適否について検討した。
(I)内均し、縦均し、外均しを順次一工程ずつ麺塊毎に行う均し工程。
(II)内均しと縦均しを順次一工程ずつ麺塊毎に行う均し工程。
(III)内均しのみを麺塊毎に行う均し工程。
(IV)縦均しのみを麺塊毎に行う均し工程。
【0031】
上記均し工程(I)?(IV)のいずれかの工程により、各収容スペースの底部四隅も含めた底部周縁にも平均的に行き渡らせるように均された各茹でうどん塊の上部から、個々の麺塊用の押圧部材(分割プレス板)でうどんの表面が平らになるまで押し込み、うどん塊同士を面接触させ、次いで面接触したうどん塊同士を凍結用トレー(D)に収容した状態で、-30℃の冷凍庫内で急速凍結させた。急速凍結後、凍結用トレーを反転させ、2個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体を離型させ、均し工程(I)?(IV)を採用した4種類の分割可能な冷凍麺各3000食を製造した。その結果、製造工程で割れの生じた冷凍麺は見い出すことができなかった。均し工程(I)を採用した冷凍麺は、麺塊同士の接触予定面から遠ざかる方向に均す外均しが工程の最後に行われることから、麺塊同士の凍結接着力が少し弱まり、離型工程において分裂するものも見受けられた。均し工程(II)を採用した冷凍麺は、麺塊同士の接触予定面から近づく方向に均す内均しから麺塊同士の接触予定面と平行方向に均す縦均し工程が行われることから、時には上面中央が少し盛り上がりを見せ、麺塊同士の凍結接着力が少し強まるものもあり、離型工程において分裂することはなく、指先に少し強めの力を加えたとき分割することができた。均し工程(III)を採用した冷凍麺は、麺塊同士の接触予定面から近づく方向に均す内均し工程のみが行われるため、上面中央が少し盛り上がりを見せ、麺塊同士の凍結接着力が強まり、離型工程において分裂することはなかったが、指先にかなり強めの力を加えたとき分割することができた。均し工程(IV)を採用した冷凍麺は、麺塊同士の接触予定面と平行方向に均す縦均しのみが行われることから、安定して良好な麺塊同士の接触面が得られ、麺塊同士の凍結接着力も一定となり、離型工程において分裂することなく、指先に程良い力を加えただけで分割することができた。以上の実験から、均し工程(IV)を採用した場合が、分割性状が最も良好な冷凍麺が得られることが分かった。
【0032】
実施例4(物流実験)
実施例3の均し工程(II)と均し工程(IV)を採用して製造された麺塊2個連結体からなる冷凍麺を個包装後それぞれ袋詰め(5食×8パック)した。図11に示されるように、冷凍麺の長手方向面が縦に垂直になるように段ボール箱に詰めた各400食(タテ詰め;図11a)、及び、冷凍麺の長手方向面が横に垂直になるように段ボール箱に2段に詰めた各200食(ヨコ詰め;図11b)を、通常の配送ルートで輸送した後、梱包を解除したところ、積込み時の衝撃により穴があいている段ボール箱数ケースを含め、割れの発生している冷凍麺は皆無であった。
【0033】
実施例5(麺の種類:太うどん)
実施例3と同様にしてうどん生地を得、常法により製麺し、切り歯角9番を使用して、厚み2.8mmの生うどんを得た。その後、約50gの生うどんを個々の茹でケースに投入し、充分量の沸騰水中で14分間茹で上げ、直ちに水洗して冷水中で冷却し、個々の茹でケースに、約100g、麺の太さが約0.6×0.4cmである茹で太うどんを得た。この茹でうどん塊を、実施例1記載の凍結用トレー(D)の各収容スペースの中央に投入し、均し工程(IV)を採用して、実施例3と同様にして、2個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊2個連結体からなる冷凍麺3000食を製造したところ、指先に程良い力を加えただけで分割することができ、製造工程中で割れの発生がない、分割性状に優れた冷凍麺が得られた。
【0034】
実施例6(麺の種類:中華麺)
中華麺用小麦粉950g、馬鈴薯澱粉50g、卵白粉10gに、予め水410mlに溶解させておいたかんすい(オリエンタル酵母株式会社製)15g及びクチナシ色素(日農化学工業株式会社製)1.5gを加えて、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングしてそぼろ状の生地を得、常法により製麺し、切り歯#20番を使用して、厚み1.5mmのちぢれのある生中華麺を得た。その後、充分量の沸騰水中で1分30秒間茹で上げた後、直ちに水洗して冷水中で冷却し、麺の太さが約0.2×0.2cmの茹で中華麺を得た。この茹で中華麺を100gずつ計量し、凍結用トレー(D)の各収容スペースの中央に投入して縦均しを行い、分割プレス板でトレー開口位置から2.5cm押し込み、個々の中華麺塊同士を面接触させ、その状態で-30℃の冷凍庫内で急速凍結させた。凍結後、凍結用トレーを反転させ、2個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体を離型させ冷凍中華麺を調製したところ、実施例5の茹でうどんと同様に、指先に程良い力を加えただけで分割することができ、分割性状に優れた冷凍中華麺が得られた。
【0035】
実施例7(麺の種類:日本そば)
そばつなぎ用小麦粉650g、そば粉350g、卵白粉10gに水350mlを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングしてそぼろ状の生地を得、常法により製麺し、切り歯#20番を使用して、厚み1.5mmの生そばを得た。その後、充分量の沸騰水中で1分30秒間茹で上げた後、直ちに水洗して冷水中で冷却し、麺の太さが約0.2×0.2cmの茹で日本そばを得た。この茹で日本そばを100gずつ計量し、実施例6と同様に、2個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体を離型させ冷凍日本そばを調製したところ、実施例5の茹でうどんと同様に、指先に程良い力を加えただけで分割することができ、分割性状に優れた冷凍日本そばが得られた。
【0036】
実施例8(麺の種類:スパゲッティ)
デュラムセモリナ100%、直径1.7mmのスパゲッティ500gを充分量の沸騰水中で7分30秒間茹で上げた後、直ちに水洗して冷水中で冷却し、麺の直径が約0.2cmの茹でスパゲッティを得た。この茹でスパゲッティを100gずつ計量し、実施例6と同様に、2個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体を離型させ冷凍スパゲッティを調製したところ、実施例5の茹でうどんと同様に、指先に程良い力を加えただけで分割することができ、分割性状に優れた冷凍スパゲッティが得られた。
【0037】
実施例9(麺の種類:きしめん)
小麦粉900g、タピオカ澱粉100gに、予め水400mlに溶解させた食塩40gを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングしてそぼろ状の生地を得、常法により製麺し、切り歯#4番を使用して、厚み2.4mmの生きしめんを得た。その後、充分量の沸騰水中(pH5.0?6.0)で14分間茹で上げた後、直ちに水洗して冷水中で冷却し、麺の太さが約1.3×0.3cmの茹できしめんを得た。この茹できしめんを100gずつ計量し、実施例6と同様に、2個の麺塊同士が面接触の状態で互いに凍結接着した麺塊連結体を離型させ冷凍きしめんを調製したところ、実施例5の茹でうどんと同様に、指先に程良い力を加えただけで分割することができ、分割性状に優れた冷凍きしめんが得られた。」

(カ)「



イ 上記アによれば,甲1には,次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「麺塊連結体からなり,面接触の部分の底面に底面溝5を有する冷凍麺の製造方法であって,
小麦粉,そば粉,澱粉などを原料とし,加水・混捏後にその粘弾性を利用して線状に成形した,厚み(直径)1.5?2.8mmのうどん,そば,きしめん,中華麺,スパゲッティ等の麺とし,充分量の沸騰水中で茹で上げ,
茹で上げた蒸煮麺塊10を,凍結用トレー11の麺塊収容スペース15に投入し,麺塊が凍結用トレー11に収容された状態で常法により凍結する工程であって,このとき凍結用トレー11は,変形しやすいようにフレキシブルな素材からなり,深さ約4.5cmであり,かつ底部内側に高さ約0.7cmの底部凸条部13が設けられ,
凍結後の麺塊連結体を凍結用トレー11から,トレー底部外側に軽い衝撃を与えて離型させる離型工程を含み,
底面溝5は,面接触部分での冷凍麺の分割を容易にする,特に分割のきっかけとなるという作用効果を有し,
麺塊連結体の重量が,200gである,製造方法」

ウ 甲1’発明
上記ア(オ)によれば,甲1には,実施例として,小麦粉やタピオカ澱粉を原料として常法により製麺し,「切り歯角10番を使用して、厚み2.0mmの生うどんを得」て,茹で上げて細うどんとする例(実施例2及び3)と,「切り歯角9番を使用して、厚み2.8mmの生うどんを得」て,茹で上げて太うどんとする例(実施例5)が,それぞれ記載されている(【0029】,【0030】及び【0033】)。そして,甲12に記載された表(下記(13)ア)を参照すると,実施例2及び3は麺生地を製麺して「幅3.0mm,厚み2.0mmの細うどん」としたものであり,実施例5は麺生地を製麺して「幅約3.3mm,厚み2.8mmの太うどん」としたものであると認められる(後者については,切刃番号と溝幅の積がほぼ一定であることを考慮した。)。
また,甲1には,小麦粉とタピオカ澱粉との配合割合として,「小麦粉900g、タピオカ澱粉100g」(実施例2)及び「小麦粉158kg、タピオカ澱粉17kg」(実施例3及び5)が記載されている。粉体100重量部あたりの澱粉量は,それぞれ10重量部,9.7重量部である。

よって,甲1には,次の発明(以下,「甲1’発明」という。)が記載されている。
「麺塊連結体からなり,面接触の部分の底面に底面溝5を有する冷凍麺の製造方法であって,
小麦粉を主体かつ主原料とする100重量部あたりタピオカ澱粉約10重量部を含む粉体を加水・混捏後にその粘弾性を利用して線状に成形した,幅3.0mm,厚み2.0mmの細うどん,又は幅約3.3mm,厚み2.8mmの太うどんとし,充分量の沸騰水中で茹で上げ,
茹で上げた蒸煮麺塊10を,凍結用トレー11の麺塊収容スペース15に投入し,麺塊が凍結用トレー11に収容された状態で常法により凍結する工程であって,このとき凍結用トレー11は,変形しやすいようにフレキシブルな素材からなり,深さ約4.5cmであり,かつ底部内側に高さ約0.7cmの底部凸条部が設けられ,
凍結後の麺塊連結体を凍結用トレー11から,トレー底部外側に軽い衝撃を与えて離型させる離型工程を含み,
底面溝5は,面接触部分での冷凍麺の分割を容易にする,特に分割のきっかけとなるという作用効果を有し,
麺塊連結体の重量が,200gである,製造方法」

(3)甲2発明

ア 甲2には,以下の事項が記載されている。

(ア)「【0007】また、特公平8-22217号公報開示の提案は、個食用の麺分塊をその容器であるトレーに入れたまま冷凍処理により容器と麺分塊との接触面に形成された氷層からなる付着層の破壊を目的としたもので、冷凍処理手段である冷凍室から出た排出コンベアラインの走行路に設けた冷凍麺を含む凍結パンの底面からの水槽等による加熱手段と、加熱後に凍結パンの底面より衝撃を与える衝撃付与手段と、走行路より走行復路への走行路の転向部位に設けた冷凍麺の排出部とより構成したものである。
【0008】上記従来の脱麺処理は、冷凍麺とトレーを含む凍結パンの底面に物理的衝撃力を与えることにより可能にしたもので、衝撃力が過度に陥ればトレーの破壊を招くため、破壊限度内の衝撃力を適当回数繰り返し作用させる必要があるが、衝撃力と繰り返し回数は絶対的のものでなく、脱麺ミスの発生は回避できない問題である。そのため、システムとして安定運転をするためにはトラブルの原因となる脱麺ミスに対する対策が必要である。」

(イ)「【0015】本発明は、上記課題を冷凍麺製造システムとして解決し、ゆで麺の冷水処理後の流れに接続して、トラブルなく高効率で安定運転を可能とした冷凍麺類専用フリーザシステムの提供を目的としたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明の冷凍麺類専用フリーザシステムは、エンドレス搬送チェーンに一定ピッチで設けたゴンドラと該ゴンドラに着脱可能に配設して搬送トレー列を形成するトレーとよりなる搬送体を前記搬送チェーンを介して往復循環搬送路に添い走行させる搬送手段と、該搬送体の往路始端部でトレー上に計量分別した麺分塊を供給する分別計量処理装置と、供給された麺分塊の麺ならし装置と、該装置を経由した麺分塊を冷凍する冷凍装置と、冷凍麺をトレーより分離排出する脱麺処理装置と、該脱麺処理装置より脱麺された冷凍麺の搬送手段の復路終端部でトレーの洗浄水切りをする洗浄・水切り装置とよりなり、前記搬送手段を連続/タクト運転可能とする構成としたことを特徴とする。
【0017】上記構成により、麺生地の切断処理、ゆで処理、冷水冷却処理して一定量の麺玉を製造するゆで麺製造ラインに対し、前記麺分塊の計量分別と搬送トレー列へ充填供給する分別計量処理装置と充填した搬送トレー列の麺分塊の麺ならし装置よりなる冷凍前処理と、麺ならしをした麺分塊を例えば水平多段または単段状に搬送しながら冷凍処理する冷凍装置と、冷凍麺を分離する脱麺処理装置と、更に必要に応じて脱麺ミスしたトレーの処理装置と、空トレーの洗浄水切り装置とを、両サイドのエンドレスチェーンとそれを一定ピッチで連結するゴンドラを含む搬送体を前記エンドレスチェーンを介して往復循環路に添い搬送させる搬送手段とにより、連続/タクト運転可能のシステム構成をして、前記ゆで麺製造ラインとともに一貫製造ラインを形成したものである。なお、上記搬送体は、両サイドのガイドレールを介して凍結ゾーンにおけるジグザグ状水平往復路を含む往路と往路終端部より反転して往路始端部に戻る復路の一対のエンドレスチェーンと、該一対のエンドレスチェーンを一定ピッチで連結するゴンドラと、該ゴンドラに設けた搬送トレー列とより構成したものである。上記エンドレスチェーンとゴンドラとの連結構造により強度的には充分補償された耐久度の高く且つ上下通風可能の簡潔構造を持ち、保守管理も容易である。」

(ウ)「【0027】上記請求項5記載の発明の構成は、ひねり剥離手段を、例えばトレーの四隅みのコーナのうち、底部の対角線上の二つのコーナと、それに対向させて前記対角線と交叉する上面枠の対角線上の二つのコーナとを上下交叉させて押圧してトレーにひねり動作をさせ、次に上下の対角線の向きを変えて交互に押圧ひねり動作するように構成してある。従来の物理的衝撃による場合に比較し容器であるトレーを破壊することなく、充填物であり冷凍麺類のトレーよりの離脱を効率的に行うことができ、且つ、上記ひねり押圧動作は瞬時押圧動作のため、搬送体の連続搬送運動ないしタクト搬送運動の如何に関わらず適用できる。なお、上記ひねり剥離手段は搬送手段の往路終端部に設け、剥離処理後搬送手段は脱落防止用リターンガイドを介して反転し復路走行に入り、復路終端部に設けたトレーの洗浄水切り部までトレーの反転状態を維持する構成にしてある。上記脱落防止リターンガイドを経て反転姿勢のトレーに対し補助剥離手段により剥離を完全に行った後、完全剥離した冷凍麺類は反転中に外部に脱落することなく別途用意した排出部より取り出すことができる。」

(エ)「【0031】図1に示すように、本発明の冷凍麺類専用フリーザシステムは、麺分塊を収容して搬送する搬送体19(図2参照)の走行路を形成する往路17と復路18とよりなる往復循環路41を、ゆで麺製造ライン50の末端の複数列の麺玉供給コンベア50aに、計量空間10aを介して接続させ、該循環路の往路始端部17dより下流に向け順次、分別計量処理装置10、麺ならし装置11、水平多段冷凍装置12、脱麺処理装置22a、脱麺ミストレー処理装置22bを設け復路終端部18aに洗浄水切り装置24を配設して、冷凍麺の製造システムを構成する。
【0032】上記搬送体19は、図2に見るように、一対のエンドレス搬送チェーン19a、19aと、該搬送チェーン19a、19aにセットボルト21a、21aにより両側より一定ピッチで連結された複数のゴンドラ21と、該ゴンドラに着脱ピン21b、21bにより着脱可能に設けられた複数のトレー20とよりなり、搬送トレー列20aを形成し、前記ゴンドラ21の両サイドに設けた搬送ローラ21c、21cにより走行路に設けた図示しないガイドレールを介して走行可能の構造にしてある。
【0033】上記分別計量装置10は、図1、図3の(A)、(B)、(C)に示すように、麺玉供給コンベア50aと往路始端部17dとの間の計量空間10aに配設され、略一定量の麺玉51を搭載した複数列の麺玉供給コンベア50aの末端に設けられ、送られてきた麺玉を計量して個食用の麺分塊とする計量ホッパ25と、計量された麺分塊を搬送トレー列20aへ投入するシュータ27と、前記計量ホッパ25で計量の結果過不足計量された麺玉を処理するリジェクト部28とより構成する。なお、上記搬送トレー列20aは、前記麺玉供給コンベア50aの麺玉供給列数と同一列数または2倍の列数を規定列数とし、その規定列数に前記過不足計量された麺玉をリジェクト部28で人手による計量補正した麺分塊を受け取る予備列を1列追加する構成としてある。また、前記シュータ27は、前記規定数を麺玉供給列数の2倍とする場合は、図3(C)に見るように左右前後に首振り可能の構造にして、連続搬送運動する搬送トレー列に支障なく麺分塊の充填ができるようにしてある。
【0034】また、上記分別計量装置10は、図1、図4の(A)、(B)、(C)に示すように、計量ホッパ25の下部には麺玉供給列数と同じ数の前後首振り可能(過不足計量麺玉のリジェクト用)の首振りシュータ27aを、又該首振りシュータ27aと搬送トレー列20aとの間に分別供給コンベア26を夫々設け、該分別供給コンベア26に搬送トレー列20aへ麺分塊を投入する搬送トレー列数と同じ数のシュータ27bを設ける構成にしても良い。なお、前記過不足計量麺玉は前記首振りシュータ27aの首振り機構を介して、リジェクト部28に接続するリジェクトシュータ28aに投入するようにし、該リジェクト部28で人手により計量補正をして、前記したように搬送トレー列の規定列数に追加した予備の1列に投入するようにしてある。
【0035】また、上記水平多段冷凍装置12の概略の構成は、図1に側面図が示され図5にはその断面図の1例が示されている。図5に見るように、外部断熱構造を持つ冷凍室13は、上部に設けた冷熱熱交換器14aとファン14bとを備えた冷熱源室14と、冷凍ゾーン15と、還流部16とより構成する。冷凍ゾーン15は、図1に見るように往路凍結ゾーン15a、復路凍結ゾーン15b、往路凍結ゾーン15cの3段構造よりなり、各ゾーンには前記麺分塊を充填した搬送トレー列20aよりなる搬送体の走行路を形成する、水平往路17a、水平復路17b、水平往路17cが順に布設されている。
【0036】そして、前記麺ならし装置11を経た搬送体は水平往路17aを介して冷凍室13内に導入されついで水平復路17bを経て水平往路17cを介して冷凍室13の外部へ導出するジグザグ状3段水平往復搬送路を形成するようにしてある。また、各凍結ゾーンの上部には、前記走行路に直角の冷風噴射ノズル23を設け、前記冷熱源室14よりファン14bを介して送られた冷風を上記ノズル群23を介して冷風を噴流状に各走行路を走行する軌跡面上の搬送体に近接して吹き付け、搬送体に搭載した麺分塊を急速冷凍するようにしてある。なお、吹き付けた冷風は搬送体のゴンドラ21とトレー20の間隙を介して吹き抜け還流部16より冷熱源室14への冷風循環路を形成還流するようにし、且つ還流部16の下部に空トレー列の復路18を設け、空トレーを低温雰囲気の衛生的安全な環境に置き、爾後復路終端部18aで洗浄水切りをするようにしてある。なお、前記水平往路17aにおいては、搬送体のトレー20は開口面を上向きに走行しているため、往路凍結ゾーン15aを通過する間にトレー内の麺分塊は殆ど凍結状態になり、復路凍結ゾーン15bでの反転状態の水平復路17bにおいて前記麺分塊は下方へ脱落することはない。
【0037】また、麺ならし装置11の概略の構成は、図6に示してある。図6の(A)は側面図を示し、(B)は(A)のVIB-VIB視図を示してある。図6の(A)、(B)に示すように、麺ならし装置11は、搬送トレー列の各列毎に設けてあり、前記トレー列を構成する各トレーに充填してある麺分塊を延伸・押圧・はみ出しカットの操作をトレーの搬送中に行う構造としたものである。その概略の構成は、搬送体を構成するゴンドラ21の組付けピッチYと等ピッチで、延伸装置29、押圧装置30、30、とワンピッチ置いて盆型カッタ31を搬送路の往路始端部17d上に設け、延伸装置29と押圧装置30、30には上部に一体構造部32を設けユニット構造とし、取り付け原点Oを基準にして搬送方向Xに対しピッチYに相当する移動距離を搬送速度と同期速度で搬送方向に移動し原点復帰時は瞬時復帰する構造にしてあり、盆型カッタは原点Oより4ピッチだけ下流に固定セットする構造にしてある。
【0038】上記延伸装置29は、昇降運動と拡開運動の2段階運動を可能とする4本の爪29aよりなり、昇降運動により爪の麺分塊への挿入と抜脱を行い、拡開運動は爪の麺分塊への挿入中にカム機構により行うようにしてある。押圧装置30、30は、前記延伸装置により延伸拡開操作の終わった麺分塊の表面を押圧して平坦状にするべく設けたもので昇降運動をする凸面よりなる押圧部30aを備え、ワンピッチ移行する間連続押圧するようにしてある。盆型カッタ31は、トレー20の上面枠と噛み合ってはみ出し麺を切断するカッタ31aを下部に持ち該カッタを昇降させる切断用シリンダ31bとよりなり、延伸・押圧の終了し且つ、定位置に位置したトレーを検出し、はみ出し麺の瞬時切断を可能としたものである。
【0039】上記構成にしてあるので、トレー20が連続搬送運動をする場合は、前記延伸装置29、押圧装置30、30はトレー位置を検出して爪29aの挿入及び押圧部30a、30aの押圧を同時に行うとともに、前記一体構造部32をトレーの搬送速度と同期速度で移動させ、前記拡開動作及び一定時間の押圧終了後は即座に延伸装置の爪29a及び押圧部30aを上昇させるとともに同期運動を停止させ、前記一体構造部32を旧位置に急速復帰させる構成とする。また、盆型カッタ31の上下動は切断位置であるトレーの上面枠を検出すると同時に昇降させる構成とすれば、搬送体の連続運動にも適用できる。また、トレーの搬送をタクト送りをするときは、前記延伸装置、圧延装置、盆型カッタのそれぞれの取り付け位置をタクト停止位置に設定し、タクト送りの周期と前記延伸装置、圧延装置及び盆型カッタの上下動の周期を一致させればタクト送りにも適用可能である。上記構成により、麺ならし装置は搬送体の連続搬送運動、タクト搬送運動を問わず適用可能にしてある。
【0040】図7には、図1に示す往路終端部に設けた脱麺処理装置22a、脱麺ミストレー処理装置22bの詳細取り付け状況を示す図である。該装置群は、往路終端部17fより反転路17gを経由し復路始端部18bに到る搬送路に設けられ、上流側よりひねり剥離部33、補助剥離部38、冷凍麺排出部39とよりなる脱麺処理装置22a、脱麺ミストレー処理装置22bの順に配設されている。水平多段冷凍装置12を経由して凍結状態にある冷凍麺とトレーよりなる冷凍トレーは、往路終端部17fに設けたひねり剥離部33で略剥離状態とし、剥離状態とした冷凍トレーを脱落防止用のリターンガイド17eを持つ反転路17gに導入し復路始端部18bに導入される。導入された冷凍トレーは、補助剥離部38で完全に剥離され、剥離した冷凍麺を冷凍麺排出部39より排出するようにしてある。そして、その後段で脱麺ミスしたトレーが往路始端部へ回送されることを防止する脱麺ミストレー処理装置22bを設ける構成にしてある。
【0041】図8の(A)には上記ひねり剥離部33の概略の構成を示す正面図が示され、図8の(B)は(A)のVIIIB-VIIIB視図である。図の(A)に見るように、搬送体の搬送方向に連続する二組の搬送トレー列を形成するトレー群にわたり設けられたもので、トレーの上面枠部の4隅のうち対角線方向の2コーナを押圧すべく、ジグザグ状に配設した押し板群34a_(1)-34b_(1)、34b_(2)-34a_(2)、…と逆ジグザグ状に配設した押し板群35a_(1)-35b_(1)、35b_(2)-35a_(2)、…を一体構造の上部ホルダー36aと該ホルダーを昇降させる押圧シリンダ36bに設け、上記二組の搬送トレー列を形成するトレー群の下部背面の下部受け板を図8(A)の点線で示すコーナからコーナへ渡り、前記押し板の描くジグザグ線と交叉するジグザグ状に設けた直立斜行板34c_(1)、34c_(2)、…と、同じく逆ジグザグ状に設けた直立斜行板35c_(1)、35c_(2)、…と、を一体構造の下部ホルダー37aと該ホルダーを昇降させる下部シリンダ37bに設け、トレーの下部背面を受ける斜行直立板に交叉する対角線上の二つのコーナを押し板で押圧してトレーにひねり歪みを発生させ、トレーと冷凍麺との間に剥離力を発生させ、且つ交互に方向を異にするひねり歪みを発生させるようにしたため、トレーと冷凍麺との間には殆ど完全に近い剥離を起こす構成にしてある。ひねりの回数は2箇所に設けたひねり装置で左右対称に各1回ずつ行う。ひねり量の調節は上部押し板と斜行直立板の高さ調整により行う。
【0042】なお、上記ひねり剥離部33により殆ど剥離状態となったトレーと冷凍麺は、ともに反転路17gに入り反転状態となり復路18に到るが、反転路17gに添い冷凍麺の排出口39cまではリターンガイド17eが設けてあるため、完全剥離した冷凍麺は途中で脱落することなく排出口39cまで運ばれる。また、不完全剥離のものは補助剥離部38の作動により完全剥離をさせ、剥離した冷凍麺は前記同様排出口39cより下部のリフタ39b上へ落下させ、リフタ39bとシフタ39dの作動により排出コンベア39a上へ送り外部へ排出するようにしてある。」

イ 以上によれば,甲2には,次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「冷凍麺の製造システムを用いた冷凍麺の製造方法であって,
麺生地の切断処理,ゆで処理後,ゆで麺製造ライン50の末端の複数列の麺玉供給コンベア50aの末端に設けられた計量ホッパ25が,送られてきた麺玉を計量して個食用の麺分塊として,計量された麺分塊を搬送トレー列20aへ投入し,搬送トレー列20aを形成する搬送体19のトレー20が開口面を上向きに走行しているため,往路凍結ゾーン15aを通過する間にトレー内の麺分塊が殆ど凍結状態になり,
トレーにひねり歪みを発生させ,トレーと冷凍麺との間に剥離力を発生させ,且つ交互に方向を異にするひねり歪みを発生させるようにしたため,トレーと冷凍麺との間には殆ど完全に近い剥離を起こし,剥離した冷凍麺を外部へ排出する方法」

(4)甲5発明

ア 甲5には,以下の事項が記載されている。

(ア)「【考案が解決しようとする課題】
【0006】
本考案は、具付き冷凍麺の具材、麺塊、外装体が破損することのないよう、また具材、調味料などの別包装を必要としない、具類をそのまま納めた麺塊及びそれを製造するための具付き冷凍麺用成形容器(トレー)を提供することを課題とする。」

(イ)「【0008】
すなわち、本考案は
(1)冷凍麺の中央部に円形の凹部を設け、凹部に冷凍具材を直接収納したことを特徴とする冷凍麺、
(2)冷凍麺の中央部に丸型の凹部を設けるための成形容器であって、成形容器底部中央部分に頭部フラットの円錐台形の凸部を設け、底面及び側面にスリットが形成されていることを特徴とする具付き冷凍麺用成形容器、
に関するものである。
【0009】
本考案は、麺中央部に設ける凹部が方形ではなく円形にすることによって、具材を収納するに当たって、簡便に収納できるとともに、具が凹部よりはみ出ることを避けることができる。
【0010】
また、麺の中央部に具材を包装せずに直接収納してあるので、無駄な包装材料を使用する必要がなく、調理時にも包装材を剥す必要がないため、簡便に調理できるという利点も併せ持っている。
【0011】
更に、本考案は冷凍麺を対象とし、麺・具が一体的に凍結されていることから、保形性を持たせられるので、製造工程中に崩れることがなく、具付き冷凍麺の取扱が容易となるばかりでなく、麺および具の本来の味を楽しむことができる。なお、凍結は急速凍結が好ましい。
【0012】
本考案の製造工程は、次の通りである。
製麺→麺茹で→麺冷却→麺を等分化して成形容器(トレー)に充填→麺凍結→成形容器(トレー)搬送→成形容器(トレー)反転→成形容器(トレー)の底部に衝撃付与→麺取り出し→麺凹部に冷凍具材収納→冷凍保存
【0013】
冷凍麺の中央部に丸型の凹部を設けるための成形容器(トレー)については、具材の大きさにもよるが、トレーの中央凸部は麺の左右への振り分けを容易に行う為に、できるだけフラットで広さも広い方が好ましい。また、底面および側面に、スリットを形成することによって、麺を成形容器に充填した際、水を切る役割を担うことができる。また、成形容器を反転して麺凍結体を取り出す際も容易に行うことができる。
【0014】
本考案において冷凍麺とは、冷凍したそば、うどん等を指している。また、本考案における具材としては、油揚げ、えび天ぷら、かきあげ、かまぼこ、ねぎ、味付け肉等を使用することができる。
【0015】
成形容器は金属製でもプラスチック製でも良いが、麺あるいは具材に臭いが移行するものは避けることが肝要である。」

イ 以上によれば,甲5には,次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。

「凹部を設けた冷凍麺及び冷凍具材を含む,具付き冷凍麺の製造方法であって,
製麺し,麺茹でし,
麺を等分化して中央凸部を有する成形容器(トレー)に充填し,麺凍結し,
成形容器(トレー)の底部に衝撃付与して麺取り出しし,
麺凹部に冷凍具材収納し,冷凍保存する工程を含み,
凹部が,冷凍具材を直接収納するものであり,
麺がそば,うどん等であり,
麺・具が一体的に凍結される方法」

(5)甲3

甲3には,以下の事項が記載されている。

ア「〔産業上の利用分野〕
この発明は、例えば凍結し、または凝結するなどして容器内に固着した品物を容器の搬送中に剥離させる装置及びその方法に関する。
〔従来の技術〕
例えば、食品工場で大量に生産される食品は、生産調整等の理由によって、一旦冷凍容器に入れられ、冷凍されて保存される場合がある。そして、この冷凍された食品は、凍結して容器内に固着してしまうために、次の生産工程へ移行させるためには、食品を容器から剥離させる作業が必要となる。そして、従来、この作業は人力をもって行われ、容器に衝撃を与えたり、または容器を変形させるなどして、食品を剥離させ、取り出すことをしていた。」(1頁右下欄11行?2頁左上欄5行)

イ「第1図のように、食品Fが内部に冷凍保存されている冷凍容器Vを、上部の開口部を下に向けて下部ガイドコンベヤ3のコンベヤベルト33R,33Lの上へ置いていく。そして、下部ガイドコンベヤ3が回転することにより、冷凍容器Vは徐々に食品剥離区間S方向へ搬送されて行く。この際、送風ダクト10が、室温の空気を冷凍容器Vに吹き掛け、容器Vの温度を少し上昇させて食品Fの剥離準備を整える。そして、この冷凍容器Vは、所定の位置に至ると上部ガイドコンベヤ2と下部ガイドコンベヤ3との間に挟まれて、搬送路Wに導入される。
第3図のように、冷凍容器Vが搬送路Wの食品剥離区間Sに差し掛かると、冷凍容器Vはガイド面G,Gに沿って変形する。すなわち、区間Sの前半においては、冷凍容器Vの前部は左側が低く、右側が高くなるのに対して、後部は基準高を維持して変形せず、従って、冷凍容器Vはその右側縁が前上がりに変形するのに対して、左側縁は前下がりに変形し、冷凍容器Vはその対角線を対称線として捩じられることになる。
次に冷凍容器Vが、食品剥離区間Sの後半に移動すると、冷凍容器Vの前部はもとの基準高となるが、冷凍容器Vの後部は左側が低く、右側が高くなって、今度は冷凍容器Vの右側縁が後上がりに、左側縁が前上がりに変形することになる。
そして、冷凍容器V内に凍結している食品Fは可撓性を有さないため、冷凍容器Vの変形に追随できなくなり、冷凍容器Vへの固着が解けて剥離する。なお、本実施例の装置1では、上記したように冷凍容器Vを2回捩じり、しかもその捩じり方向は反対方向であり、加えて、本装置1は冷凍容器Vをその対角線を対称線に捩じるために、容器を大きく変形させることができ、もって、食品Fの剥離を確実に行うことができる。
また、食品剥離区間Sで食品Fが完全に剥離しなかった場合でも、上記食品剥離区間Sを通過した冷凍容器Vは、押圧シリンダ8により押圧され、食品Fは完全に剥離する。なお、これら剥離した食品Fは、下部ガイドコンベヤ3のガイドレール34が支持して、冷凍容器Vと一体に搬送路Wの終端まで運ばれる。
なお、冷凍容器Vには多数のスリット64が形成されているために容易に変形し、且つ多数の冷凍容器Vに無理な負荷がかかることはない。」(4頁右下欄11行?5頁右上欄15行)

(6)甲4

甲4には,以下の事項が記載されている。

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍された食品、あるいは焼結体やコンクリート成形体などの内容物を固着している容器から分離する分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍工場などにおいては、凍結して容器に付着している内容物を容器から分離する必要がある。このことを実現するために、容器をベルトコンベアで捻って内容物を容器から分離する装置は開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-154529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される分離装置は、図1に示すように、上下に配設しているベルトコンベア92で容器91を挟んで移送する。この分離装置は、移送する途中に設けた剥離区間93で容器91を捻って、内容物を容器91から分離する。この構造の分離装置は、容器を叩いて内容物を分離する構造に比べて容器の損傷を少なくできる。ただ、この構造の分離装置は、全体の構造が複雑で製造コストが高くなる。また、構造が複雑なために、使用後の洗浄などに手間がかかる欠点もある。さらに、ベルトコンベアを使用するので、コンベアベルトが破損するとこれが内容物に混入する弊害があり、また、ベルトコンベアに付着して洗浄で完全に除去できない異物なども内容物に混入する弊害がある。さらにまた、容器の移送速度を速くして、処理能力を高くすると、コンベアベルトがプーリから外れやすい等の弊害もある。」

イ「【0007】
本発明の請求項1に記載する分離装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
分離装置は、内容物を収納してなる容器1を分離隙間2で挟んで移送する複数組の分離移送部3と、各々の分離移送部3を駆動する駆動機構4とを備えている。分離装置は、複数組の分離移送部3を容器1の移送方向に配設して、容器1を複数組の分離移送部3に移送するように構成している。さらに、分離移送部3は、容器1を移送する分離隙間2の両面に配設してなる一対の回転軸5を備えている。駆動機構4は、一対の回転軸5を互いに反対方向に回転して分離隙間2で容器1を移送させる方向に一対の回転軸5を回転駆動している。さらに、隣接して配設してなる分離移送部3を構成してなる一対の回転軸5は、その両端部を回転中心軸mに対して互いに反対方向に偏心している。分離装置は、隣接する分離移送部3の分離隙間2で移送される容器1の前後を反対に捻る方向に対角を押圧しながら移送して、容器1に付着している内容物を容器1から分離する。
【0008】
以上の分離装置は、極めて簡単な構造として製造コストを著しく低減しながら、容器から内容物を確実に分離できる特徴がある。また、以上の分離装置は、容器の移送速度を速くして、処理能力を高くしながら安定して容器から内容物を分離できる特徴も実現する。さらに、以上の分離装置は、洗浄が簡単で分離される内容物に異物が混入するのを極減できる特徴も実現し、さらにメンテナンスも簡単で、ランニングコストを低減できる特徴も実現する。
【0009】
本発明の分離装置は、複数組の分離移送部3が、可撓性のある容器1Aを捻って内容物を容器1から分離することができる。この分離装置は、可撓性のある容器の前後を反対方向に捻りながら移送するので、内容物を確実に容器から分離できる。さらに、本発明の分離装置は、内容物を凍結物とすることができる。」

(7)甲6

甲6には,以下の事項が記載されている。

「【0016】
本発明では、このように表面を乳化油で被覆した麺類を、冷凍後の麺塊が中央部に凹部を形成するように整形して冷凍する。
上記麺類の整形は、冷凍後の麺塊が略椀形状、略丸型深皿形状または略コップ形状となるように行うことが好ましく、特に略丸型深皿形状となるように行うことが好ましい。
このような形状の麺塊を得るための麺類の整形方法としては、例えば、内底部の中央に隆起部が設けられた容器体を用いる方法が簡単で好ましい。該容器体の隆起部を、所望する形状の麺塊の凹部に対応する形状(例えば略逆椀形状、略円錐台形状、略逆コップ形状または略円柱形状)とし、この容器体に、表面を乳化油で被覆した麺類を、該容器体の隆起部が当該麺類で被覆されるように収納して冷凍することにより、所望形状の麺塊を容易に得ることができる。また、このような容器体を用いて麺類を整形することにより、マイクロウェーブで解凍・調理した際に、麺の中心と外周とで温度ムラが少なく、且つそのまま解凍させるだけで、解凍後の麺がきれいに自然に盛り付けられた状態となる麺塊が容易に得られる等の利点がある。」

(8)甲7

甲7には,以下の事項が記載されている。

ア「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、冷凍麺の製造段階において使用される冷凍麺製造用トレーによって凍結麺自体の形状を変えることにより、麺の冷凍性又は/及び冷凍麺の解凍性を向上させることを可能とした冷凍麺製造用トレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、麺を凍結する凍結工程及び凍結させた冷凍麺を取り出す脱パン工程において使用する冷凍麺製造用トレーにおいて、前記冷凍麺製造用トレーの収納部底面の中央付近に隆起部を形成し、前記隆起部の前記収納部底面からの高さを8mm?40mmの範囲に設定して麺の冷凍効果を高めた構成を採用したのである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、麺を凍結する凍結工程及び凍結させた冷凍麺を取り出す脱パン工程において使用する冷凍麺製造用トレーにおいて、前記冷凍麺製造用トレーの収納部を2つ以上に分割し、その分割された各収納部底面の中央付近にそれぞれ隆起部を形成し、前記隆起部の前記収納部底面からの高さを8mm?40mmの範囲に設定して麺の冷凍効果を高めた構成を採用したのである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記隆起部の前記収納部底面からの高さを8mm?20mmの範囲に設定して麺の冷凍効果及び冷凍麺の解凍効果を高めたのである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3に記載の発明において、前記隆起部周辺の前記収納部底面に複数の水切り小孔を設けたのである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、冷凍麺製造用トレーの収納部底面の中央付近に形成した隆起部の収納部底面からの高さを8mm?40mmの範囲に設定することにより、従来の冷凍麺製造用トレーを用いた場合よりも麺の冷凍効果を高めることができる。また、隆起部の収納部底面からの高さを8mm?20mmの範囲に設定することにより、麺の冷凍効果及び冷凍麺の解凍効果のいずれも高めることができる。さらに、本発明によれば、凍結時間の短縮化が図れるばかりでなく、冷凍麺の製造段階において凍結麺自体の形状を変えることにより冷凍麺を調理する際の容器の形状に依存せず解凍性をも向上させることができるので、冷凍麺の生産性向上と調理容器の製造コスト低減が可能になる。」

イ「【0016】
図1及び図2に示すように、麺を凍結する凍結工程及び凍結させた冷凍麺を取り出す脱パン工程において使用する冷凍麺製造用トレー10の収納部の底面部11の中央付近には、底面部11からの高さHが8mm?40mmの範囲内に設定された隆起部12が形成されている。また、隆起部12の周辺の底面部11には、複数の水切り用小孔13が穿設されている。
【0017】
隆起部12の形状については、図1及び図2に示すように、平面視が縦長の楕円形状であって底面部11から立ち上がる側壁部分を曲線形状に形成したものに限定されるものではなく、底面部11からの高さHを所定の範囲内に設定することができる形状であれば任意のものを採用してもよい。
【0018】
隆起部12の底面部からの高さHは、麺の冷凍性及び冷凍麺の解凍性を向上させるため、8mm?20mmの範囲に設定することが好ましい。
【0019】
また、水切り用小孔13については、凍結させる麺に付着した又は含まれる水分量によっても異なるが、図1に示すように、隆起部12の周辺に沿って複数個設けるのが好ましい。」

(9)甲8

甲8には,以下の事項が記載されている。

「【0039】図7には、図1、図2のプレス成形機構23の概略の構成が示してある。該プレス成形機構23は、底が平らの椀状のプレート板36と図示しないプレス用上下昇降機構とよりなり、前記外向きクロス機構21(又は段付内向きクロス機構21c)、拡開機構22により均一平坦状に形成され且つトレーの隅部を含む外縁部まで拡開されたプレス前のトレー収納麺39bを上より押圧成形させ、冷蔵貯蔵又は低温凍結時に支承なく行なえるようにしたものである。なお、前記プレート板36は、麺種がうどんのときは平坦状に形成して溝無しプレート23aを形成し、麺種がそば、スパゲティー、ラーメンの場合は溝36aをトレー20の山形凸部20aとの対応部位に設け溝付けプレート23bを形成する構成にしてある。
【0040】前記プレス成形機構23と麺を収納するトレー20の底面の山形状凸部20aの形成により、プレス時にトレー中央部位にある麺をトレーの両縁に向け移行させ、麺をトレーの隅々まで均一拡散できる。また前記山形凸部により冷凍麺の背面に凹部が形成され、割れやすくまた茹でやすくさせる効果を持つ。なお、前記トレー20に設けた山形状凸部の高さA、トレーの深さをBとするとき、A、Bとの間には、A>B-Aの関係が成立することが好ましい。」

(10)甲9

甲9には,以下の事項が記載されている。

ア「【0018】麺線製造工程1は生の麺線を製造する工程であり、具体的には、小麦粉等の穀粉に、食塩、かん水、増粘類、グルテン等の麺質改良剤、その他の副原料を添加し、これに水を添加して混練する工程、混練した麺生地を生麺線に成形する工程などの細部工程からなる。この生麺線に成形する工程は、麺生地をシート状に圧延し、これをカッターで線状に切断する方法や、麺生地から直接線状に押し出す方法などがある。この生麺線の種類は、特に限定されるものではなく、例えば蕎麦、うどん、中華麺、スパゲッティ、マカロニなど、いずれの麺類でも可能である。なお、当該麺線製造工程1で製造された生麺線は1食分に分けられ、1食分ごとにコンベアに連結された網状のバケットに充填され、コンベアによって後述するα化工程2や水冷工程3などの各工程に搬送される。なお、一食分に分ける操作は、α化工程2や水冷工程3の後に行ってもよい。
【0019】α化工程2は、茹で処理や蒸し処理などを単独で、または複数組み合わせて行い、上記麺線製造工程1で製造された生麺線をα化させる工程である。」

イ「【0035】[実施例1]上述と同様の麺線製造工程、α化工程、水冷工程、付着工程、充填工程、冷凍工程および離型工程を順に経ることによって、実施例1の冷凍麺(中華麺)を得た。本実施例1の製造方法における麺線製造工程では、小麦粉100重量部に、粉末かん水1.0重量部、澱粉5.0重量部、食塩1.2重量部および水41重量部を混合し、これを真空ミキサーを用いて常圧下で3分間、真空(-760mmHg)下で8分間混練して麺生地を得、この麺生地を圧延ロールで1.3mmの厚さの麺帯とし、該麺帯を切り刃を用いて約1.4mm巾に切り出し、さらに一食毎に裁断して生麺線を得た。また当該α化工程では、得られた生麺線に50秒間、茹で処理を施し、湯切りして、α化した麺線を得た。その後、水冷工程では、15℃の水に30秒間浸漬し、さらに5℃の水に30秒間浸漬して水冷し、水切りした。次の付着工程では、水冷工程を経て表面温度が5℃程度になった麺線を、5℃に調製したエリスリトール(分子量:122.12)の10%水溶液に30秒間浸漬した。充填工程では、15.0cm×10.5cm×4.5cmの大きさのトレー状型枠に充填した。冷凍工程では、麺線を型枠に充填した状態で-35℃の雰囲気下に35分間置いて急速冷凍させた。」

(11)甲10

甲10には,以下の事項が記載されている。

ア「【0016】
本発明の第一の態様である、うどんの製造方法は、少なくとも下記の(ア)?(ウ)の3工程を有する。
工程(ア)は、原料粉と水とを混合して混合物を調製する工程である。
工程(イ)は、該混合物から生麺線を調製する工程である。
工程(ウ)は、該生麺線を茹でることにより茹で麺を調製する工程である。」

イ「【0020】
前記原料粉には、原料粉成分として、小麦粉以外の副素材を含んでいてもよい。
該副素材としては、従来のうどんの原料粉に含まれる副素材を使用することができ、例えば、生澱粉類、加工澱粉類、生澱粉類の油脂コーティング澱粉類等が挙げられる。より具体的には、前記生澱粉類として、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、モチトウモロコシ澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、小麦澱粉等が挙げられ;前記加工澱粉類として、前記生澱粉類をアセチル化、リン酸架橋化、エーテル化、または酸処理したものが挙げられる。
これらの副素材を用いることにより、うどんの食感を微調整することができる。
また、これらの副素材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
前記原料粉に副素材として澱粉を入れる場合、当該原料粉における澱粉の含有割合としては、0?20質量%が好ましく、0?15質量%がさらに好ましい。
上記範囲であることにより、本発明の効果を損なわずに、うどんの食感を微調整することができる。」

ウ「【0025】
工程(ア)において、原料粉、水、および添加剤は、均一に混合された混合物となり、次の工程(イ)において、生麺線に成型される。
【0026】
工程(イ)において、前記混合物を生麺線に成型する方法としては、従来のうどんの製造方法が適用できる。例えば、巾麺帯機のローラーを通すことによって、前記混合物を帯状の麺生地にし、それを切り出し機で麺線状に切り出すことによって、生麺線に成型する方法が好ましいものとして挙げられる。
前記巾麺帯機に混合物を通す方法としては、例えば、ローラーのクリアランスを変更して、複数回通すことが好ましい。
また、巾麺帯機に通した帯状の麺生地を、巻き取り棒に巻き取り、ポリ袋等に包んで密閉した状態で、室温(20℃程度)にて10?60分程度の間静置して、当該麺生地を熟成させることが、うどんの食感を向上させる観点から好ましい。その後、麺生地を再び巾麺帯機に通して、適当な厚さの帯状の麺生地にすることが好ましい。
該帯状の麺生地を切り出し機で麺線状に切り出す方法としては、特に限定されず公知の方法で行うことができる。
当該生麺線の幅としては、1.3?3.8mmが好ましく、1.3?3.0mmがより好ましく、1.6?2.8mmが最も好ましい。この範囲の幅とすることで、適当な茹で時間(5?45分分程度)で、高い茹で歩留まり(350%以上)に茹でることができる。
当該生麺線の厚みとしては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されず、例えば、公知のうどんの厚みと同様に、当該生麺線の幅の約0.85倍にすればよい。
当該成型した生麺線は、打ち粉をして回収することが好ましい。該打ち粉によって、次の工程(ウ)における当該生麺線の取り扱いを容易にすることができる。
【0027】
工程(ウ)では、茹で歩留まりが350%以上となるように当該生麺線を茹でる。
茹で歩留まりが上記値以上であることにより、従来のうどんよりも低カロリーでありながら、従来のうどんのもつ食感(硬さ、粘り脆さ)および色調を維持することができる。
一方、茹で歩留まりが上記値未満であると、うどんの食感としては硬すぎ、好ましい粘りを欠き、その色調も暗いものとなる。」

(12)甲11

甲11には,以下の事項が記載されている。

ア「実施例1
デユラム小麦のセモリナ100重量部(以下単に部と云う)と水28部を混合し、押出機を用いて脱気しながら押出成形して生スパゲツテイを得た。次いで、常法により茹上げ(歩留225%)、冷水で水洗した。この茹スパゲツテイに対して1.5重量%のオリ?ブ油を均一にまぶし、180gずつに小分けした。次いで、これを直径170mm深さ25mmの円筒型紙トレイに入れ、中央部に直径80mm深さ17mmの凹型空洞部(空洞率15%)を形成した。該空洞部に下記配合のものを常法により調理したミ?トソ?ス80gを入れて急速凍結した。凍結後、麺塊表面に10gの水を均一にスプレ?し、再凍結して冷凍茹スパゲツテイを得た。
凍結貯蔵後、該冷凍茹スパゲツテイを耐熱性フ?ドラップで包み電子レンジで解凍復元したところ、得られたスパゲツテイ・ミ?トソ?スは、復元ムラがなく、良好な食感であつた。」(3頁左上欄10行?右上欄15行)

イ「実施例3
実施例1で得られた茹スパゲツテイ180gを直径130mm深さ54mmの円筒型紙トレイに詰め、中央部に直径100mm深さ45mmの凹型空洞部(空洞率50%)を形成せしめ、急速凍結した。これとは別に実施例1と同様の配合のミ?トソ?スを調製し、80gを直径90mmの円型トレイに入れて急速凍結した。前記凹型空洞部にこの凍結したミ?トソ?スを入れ、麺塊表面に10gの水を均一にスプレ?し再凍結して冷凍茹スパゲツテイを得た。
凍結貯蔵後、該冷凍茹スパゲツテイを耐熱性フ?ドラツプで包み電子レンジで解凍復元したところ、得られたスパゲツテイ・ミ?トソ?スは復元ムラがなく、良好な食感であつた。」(3頁右下欄13行?4頁左上欄14行)

(13)甲12

甲12には,以下の事項が記載されている。

ア「

」(67頁)

イ「(2)生麺線の太さと茹で速度
生麺線の太さと茹で上がりの速さの関係を調べるため、各番手の切刃で断面が正方形になるように圧延切り出した生めんの茹で中の水分の増加を調べた結果は、図3-25に示したようなものである。この図から、一定の茹で麺水分に達する茹で時間は、生めんの断面積に比例することがわかる(図3-26)、これは太さ(径)の2乗に比例することで、太さが倍になれば茹で時間は4倍かかることを意味する。」(82頁右欄下から10?1行)

ウ「(3)茹で速度に影響するその他の要因
茹で時間は、茹でによってめんが軟らかくなるに要する時間である。めんが軟らかくなるためには、茹で中の水分増加が速いこと、つまり一定水分に茹で上がる時間が短いこと、及び同一水分に茹で上げたとき、より軟らかいこと、つまり水分増加以外に軟らかくなる要因があることが考えられる。
イ.水分増加を速くする条件
これには1)麺線を細くするほかに、2)小麦粉のタンパク質量が少ない、3)製麺加水量が多い、4)加塩量が多い、5)茹で湯温度が高い、6)茹で湯糊濃度が低い、7)生麺線の密度が小さい等があげられる。
ロ.同じ茹で麺水分で軟らかくする条件
これには1)小麦粉のタンパク質量が少ない、2)小麦粉の澱粉が軟質である、3)加水量が多い、4)加塩量が多い、5)麺線のグルテン配列が弱い、6)食感を軟らかくする澱粉の配合、7)生麺線の熟成等を上げることができる。」(83頁左欄4行?右欄3行)

3 対比・判断

(1)甲1に記載された発明に基づく検討

ア 本件発明1について

(ア)対比
甲1発明の「底面溝5」は本件発明1の「凹部」に相当するから,甲1発明の「麺塊連結体からなり,面接触の部分の底面に底面溝5を有する冷凍麺」は,本件発明1の「凹部を有する冷凍麺塊」に相当する。なお,甲1の【0014】には,「本発明で『麺塊』とは、1又は2以上の麺線から構成される一塊りの麺線の集合体をいい、かかる麺塊(集合体)間に橋渡し状態の麺線が実質的に存在する場合は1の麺塊とはいわない。」(上記2(2)ア(イ))との記載があるものの,当該記載は甲1における用語法を明記したものにすぎないから,甲1発明と本件発明1の間の相当関係の判断には影響しない。
また,甲1の実施例の記載によれば,原料の大半を占める小麦粉、そば粉、澱粉などのうち,小麦粉やそば粉といった穀物粉がタピオカ澱粉,馬鈴薯澱粉といった非穀物粉よりも一桁程度多量に使われることから,甲1発明は穀物粉を主体とする粉体を用いたものといえる。(なお,本件特許明細書【0014】に「『穀物粉』には」「芋・根類(例えば、片栗、くず、タピオカ、馬鈴薯)」「の全部又は一部の粉が含まれる。」と記載されているものの,【0017】には「『でん粉』は、原料、製法、粒度とも特に限定されないが、例えば、小麦、馬鈴薯でん粉、タピオカ、トウモロコシ、カンショ、サゴ等に由来するものを用いることができる。」と記載されているため,タピオカ澱粉や馬鈴薯澱粉は「穀物粉」でなく「でん粉」であると認められる。)そして,甲1発明の「加水・混捏」が本件発明1の「加水ミキシング」に相当することや,通常想定される環境である大気圧下においては「充分量の沸騰水中で茹で上げ」ることが「95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで」ることに含まれることも考え合わせると,甲1発明の「小麦粉、そば粉、澱粉などを原料とし、加水・混捏後にその粘弾性を利用して線状に成形した,厚み(直径)1.5?2.8mmのうどん,そば,きしめん,中華麺,スパゲッティ等の麺とし,充分量の沸騰水中で茹で上げ」ることは,本件発明1の「(1)穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで」ることに相当する。
さらに,甲1発明における底部凸条部13は,麺塊連結体からなる冷凍麺の底面溝5が少なくとも塞がらないようにする役割を果たしているから,その意味において「底部凸条部13」により「底面溝5」が成型されるといい得る。また,上記2(2)ア(ウ)の【0019】及び(カ)を参照すると,甲1発明において,凍結用トレー11の縁を超えるような状態で麺塊を凍結することは想定されていないと理解されるから,底部凸条部13の高さが約0.7cmであり,凍結用トレー11の深さが約4.5cmであることは,それによって成型される冷凍麺の底面溝5における厚さが約38mm以下であることを意味する。
よって,甲1発明の「茹で上げた蒸煮麺塊10を,凍結用トレー11の麺塊収容スペース15に投入し,麺塊が凍結用トレー11に収容された状態で常法により凍結する工程であって,このとき凍結用トレー11は,変形しやすいようにフレキシブルな素材からなり,深さ約4.5cmであり,かつ底部内側に高さ約0.7cmの底部凸条部13が設けられ」ることは,本件発明1の「(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、」「このときトレーは、」「変形可能な材料からなり、かつ」「底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であ」ることと,凹部の厚さが約38mm以下である点を除いて一致する。
また,甲1発明の「凍結後の麺塊連結体を凍結用トレー11から,トレー底部外側に軽い衝撃を与えて離型させる離型工程」は,本件発明1の「(3)冷凍成型された麺塊をトレーから」「離脱させる」「工程」に相当する。

(イ)一致点
したがって,本件発明1と甲1発明とは,以下の点において一致する。

「凹部を有する冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させる
工程を含む、製造方法。」

(ウ)相違点
そして,本件発明1と甲1発明とは,以下の点で相違している。

相違点1-1
冷凍麺塊の凹部の厚さが,本件発明1では36mm以下であるのに対し,甲1発明では約38mm以下である点。

相違点1-2
冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させるに際し,本件発明1は,「トレーを捻って変形させる」のに対し,甲1発明では「トレー底部外側に軽い衝撃を与え」る点。

(エ)判断

A 相違点1-1について
甲1発明において,麺塊成型用トレーの縁よりも低い位置に冷凍麺塊の表面が位置するように,ある程度のクリアランスを設けることは,甲1の図6(上記2(2)ア(カ))等を参照して当業者が容易になし得ることである。また,冷凍麺塊そのものの厚さや,それに形成する凹部の厚さをどの程度にするかは,所望する分割性の程度等に応じて,当業者が適宜決めるべき設計事項でもある。
よって,甲1発明では約38mm以下となる冷凍麺塊の凹部の厚さを,5%程度減らすことにより36mm以下とすることは,当業者にとって容易である。

B 相違点1-2について
甲2発明は,「冷凍麺の製造システムを用いた冷凍麺の製造方法であって,」「トレーにひねり歪みを発生させ,トレーと冷凍麺との間に剥離力を発生させ,且つ交互に方向を異にするひねり歪みを発生させるようにしたため,トレーと冷凍麺との間には殆ど完全に近い剥離を起こし,剥離した冷凍麺を外部へ排出する方法」であるから,冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させるに際し,トレーを捻って変形させるものである。
甲1発明及び甲2発明は,ともに冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させる工程を含む冷凍麺塊の製造方法である点において技術分野が一致する。そして,甲1の「変形しやすいようにフレキシブルな素材からなるトレーに、過度の衝撃を与えることなく離型する方法が好ましく」との記載(上記2(2)ア(エ)の【0026】)及び甲2の「従来の脱麺処理は、冷凍麺とトレーを含む凍結パンの底面に物理的衝撃力を与えることにより可能にしたもので、衝撃力が過度に陥ればトレーの破壊を招く」並びに「ひねり剥離手段を、例えばトレーの四隅みのコーナのうち、底部の対角線上の二つのコーナと、それに対向させて前記対角線と交叉する上面枠の対角線上の二つのコーナとを上下交叉させて押圧してトレーにひねり動作をさせ、次に上下の対角線の向きを変えて交互に押圧ひねり動作するように構成してある。従来の物理的衝撃による場合に比較し容器であるトレーを破壊することなく、充填物であり冷凍麺類のトレーよりの離脱を効率的に行うことができ、且つ、上記ひねり押圧動作は瞬時押圧動作のため、搬送体の連続搬送運動ないしタクト搬送運動の如何に関わらず適用できる。」等の記載(上記2(3)ア(ア)の【0008】及び(ウ)の【0027】)を考慮すれば,甲1発明において,冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させるに際し,トレーの破壊につながりやすい衝撃に代えて,甲2発明のひねり剥離を採用することは,当業者が容易に想到し得たことと認められる。
また,甲3には,冷凍された食品を冷凍容器から剥離させるに際し,冷凍容器を捩って変形させる技術事項が記載されており(上記2(5)),甲4には,冷凍された食品を容器から分離させるに際し,容器を捻って変形させる技術事項が記載されている(上記2(6))。よって,甲1発明と,甲3及び4に記載された技術事項は,いずれも冷凍食品を容器から離脱させる工程を含む点において技術分野が関連している。そして,甲1の「変形しやすいようにフレキシブルな素材からなるトレーに、過度の衝撃を与えることなく離型する方法が好まし」い旨の記載(上記2(2)ア(エ)の【0026】)と,甲3の5頁左上欄17行?右上欄15行の「冷凍容器V内に凍結している食品Fは可撓性を有さないため、冷凍容器Vの変形に追随できなくなり、冷凍容器Vへの固着が解けて剥離する。なお、本実施例の装置1では、上記したように冷凍容器Vを2回捩じり、しかもその捩じり方向は反対方向であり、加えて、本装置1は冷凍容器Vをその対角線を対称線に捩じるために、容器を大きく変形させることができ、もって、食品Fの剥離を確実に行うことができる。」(上記2(5)イ)及び甲4の「この分離装置は、可撓性のある容器の前後を反対方向に捻りながら移送するので、内容物を確実に容器から分離できる。さらに、本発明の分離装置は、内容物を凍結物とすることができる。」(上記2(6)イの【0009】)の記載を考慮すれば,甲1発明において,冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させるに際し,トレーの破壊につながりやすい衝撃に代えて,甲3及び甲4に記載された技術事項である捩り剥離や捻り分離を採用することは,当業者が容易に想到し得たことと認められる。

C 本件発明の奏する効果について
本件発明1の全体構成によって奏される作用効果についてみても,甲1発明,及び甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

D 特許権者の意見について
特許権者は,平成29年1月16日付け意見書において,進歩性に関し,甲各号証の記載について意見を述べているので,これらの点について以下検討する。

(A)特許権者は,「甲第1号証は、複数個の麺塊同士が面接触の状態で互いに連結接着した麺塊連結体からなる冷凍麺、及びその製造方法に関する。本件訂正発明の窪みや溝を有するように成型された冷凍麺塊、即ち、一部に薄い部分を有し、割れや破損のしやすさが問題となっていた冷凍麺塊を対象とする本件訂正発明とは、そもそも対象が異なる。」と述べている(意見書11頁下から6?2行:なお,「連結接着」は「凍結接着」の誤記と思われる。)。
しかし,本件特許明細書において,「麺塊」に関して格別の定義はなされておらず,【0002】に「冷凍麺塊は、冷凍時に成型することができ、麺塊の形状を様々としうるので、用途や使い勝手に合わせて多様な形状の冷凍麺塊が製造されている。冷凍麺塊には、例えば、調味料や具材を収納するための窪みを有するものや、麺塊を分割することができるように分割のための溝が形成されているものがある。」と記載されているところ,甲1発明の「麺塊連結体からなる冷凍麺」も,「麺塊を分割することができるように分割のための溝が形成され」ているから,本件発明1の対象に含まれるものであって,「そもそも対象が異なる」とはいえない。

(B)特許権者は,甲1の【0026】の記載を挙げて,「甲第1号証には、軽く衝撃を与えること以外には、脱パン工程について一切示唆を与えるような記載はない、即ち、トレーにフレキシブルな素材を使用するとしても、脱パンのためにトレーを捻って変形させる、という本件訂正発明の技術的思想の動機付け、示唆を与えるような記載が全くないのである。よって、当業者が甲第1号証を参照したとしても、脱パン工程を変更しよう、まして捻りによりトレーを変形することによって冷凍麺をトレーから離脱しよう、捻りに関する他の文献を参照しよう、とは考えない。」と述べている(同12頁16?22行)。
しかし,甲1の【0026】の当該記載は,「例えば、」「好適に例示することができる。」という表現を見ても,「凍結後、トレーを反転させ、トレー底部外側に軽い衝撃を与えて離型させた後、専用コンベアでトレーから分離された麺塊連結体を包装工程へ移送する方法」を,「離型し易いようにテーパー形状で、変形しやすいようにフレキシブルな素材からなるトレーに、過度の衝撃を与えることなく離型する方法」の一例として挙げたに留まるのであって,衝撃に代わる他の離型方法の可能性を排除しているとまではいえない。甲2発明は,衝撃に代わる,より好ましい離型方法としてひねり剥離を提案したものであるから,これを甲1発明に適用することの動機付けに欠けるところはない。

(C)特許権者は,甲3及び甲4について,「凹部の存在により薄い部分が存在し、脆く破損しやすく冷凍麺を対象とすることについて、全く記載も示唆もない」旨指摘し,さらに甲4について,「凹部の存在により薄い部分が存在し、脆く破損しやすく冷凍麺の問題については甲第4号証の分離装置が利用できる可能性について、全く示唆も動機付けもない点に留意すべきである。」と述べて,取消理由1の論理付けは「後知恵であり不適切である」と主張している(同13頁20?30行,15頁9?14行)。
しかし,凹部の存在により薄い部分が存在する冷凍麺は,甲1発明がすでに前提としており,それが脆く破損しやすいことも,甲1の【0020】の「接触面の幅方向両端を予め制限し、中央部において集中的に接触するように制限しておくと、投入された麺塊同士の接触有効面積が一定となり、接着強度の安定につながるばかりでなく、解凍に際しての分割時に一定の力で分割し易くする上で好ましい。」(上記2(2)ア(ウ))等の記載から読み取れる。甲1発明と甲3及び甲4に記載された技術事項は,冷凍食品を容器から離脱させるという共通の課題を解決するものであり,脆く破損しやすい冷凍麺に対して甲3や甲4に記載された捩り剥離や捻り分離を適用できない事情はないから,脆く破損しやすい冷凍麺を対象とするか否かにかかわらず,甲1発明で与える衝撃に代えて甲3,甲4に記載された捩り剥離,捻り分離を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
なお,甲3の「冷凍容器V内に凍結している食品Fは可撓性を有さないため、冷凍容器Vの変形に追随できなくなり、冷凍容器Vへの固着が解けて剥離する」旨の記載(上記2(5)イ)や,甲4の「分離装置は、隣接する分離移送部3の分離隙間2で移送される容器1の前後を反対に捻る方向に対角を押圧しながら移送して、容器1に付着している内容物を容器1から分離する」旨の記載(上記2(6)イの【0007】)を参照すれば,捩り剥離,捻り分離が冷凍食品に与える負荷は衝撃等の他の方法よりも小さいと当業者は予測するから,それを甲1発明に対して適用することを試みる積極的な動機付けが存在するともいえる。

(D)特許権者は,甲4について,【0010】,【0037】,【0056】の記載を挙げて,「当業者は冷凍食品についても非可撓性の容器を使用することを考える。一方、冷凍食品について、可撓性の容器の使用を特に意識した記載はない。」等と述べている(同13頁下から3行?15頁3行)。しかし,甲4の「冷凍工場などにおいては、凍結して容器に付着している内容物を容器から分離する必要がある。このことを実現するために、容器をベルトコンベアで捻って内容物を容器から分離する装置は開発されている。」(上記2(6)アの【0002】),「本発明の分離装置は、複数組の分離移送部3が、可撓性のある容器1Aを捻って内容物を容器1から分離することができる。この分離装置は、可撓性のある容器の前後を反対方向に捻りながら移送するので、内容物を確実に容器から分離できる。さらに、本発明の分離装置は、内容物を凍結物とすることができる。」(上記2(6)イの【0009】)なる記載を見れば,そのような議論が成り立たないことは明らかである。

E まとめ
したがって,本件発明1は,甲1発明,及び甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明4について

(ア)対比
以下,上記ア(ア)も踏まえつつ,本件発明4と甲1発明を対比する。
甲1発明の「底面溝5」は本件発明4の「溝」に相当し,甲1発明の「麺塊連結体からなり,面接触の部分の底面に底面溝5を有する冷凍麺」は,本件発明4の「冷凍麺製品」に相当する。
また,甲1発明は穀物粉を主原料とする粉体を用いたものといえるから,甲1発明の「小麦粉、そば粉、澱粉などを原料とし、加水・混捏後にその粘弾性を利用して線状に成形した,厚み(直径)1.5?2.8mmのうどん,そば,きしめん,中華麺,スパゲッティ等の麺とし,充分量の沸騰水中で茹で上げ」ることは,本件発明4の「(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで」ることに相当する。
さらに,甲1発明の「茹で上げた蒸煮麺塊10を,凍結用トレー11の麺塊収容スペース15に投入し,麺塊が凍結用トレー11に収容された状態で常法により凍結する工程であって,このとき凍結用トレー11は,変形しやすいようにフレキシブルな素材からなり,深さ約4.5cmであり,かつ底部内側に高さ約0.7cmの底部凸条部13が設けられ」ることと,「底面溝は,面接触部分での冷凍麺の分割を容易にする,特に分割のきっかけとなるという作用効果を有する」ことは,本件発明4の「(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、」「このときトレーは、」「変形可能な材料からなり、かつ」「底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に溝が成型され、これにより冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であ」ることと,凹部の厚さが約38mm以下である点を除いて一致する。
また,甲1発明の「凍結後の麺塊連結体を凍結用トレー11から,トレー底部外側に軽い衝撃を与えて離型させる離型工程」は,本件発明4の「(3)冷凍成型された麺塊をトレーから」「離脱させる」「工程」に相当する。

(イ)一致点
したがって,本件発明4と甲1発明とは,以下の点において一致する。
「冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に溝が成型され、これにより冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させる
工程を含む、製造方法。」

(ウ)相違点
そして,本件発明4と甲1発明とは,上記相違点1-1及び1-2と同様の相違点において相違している。

(エ)判断
上記ア(エ)と同様の理由により,本件発明4は,甲1発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明2について

甲1発明の「底面溝5は,面接触部分での冷凍麺の分割を容易にする,特に分割のきっかけとなるという作用効果を有する」ことは,本件発明2の「凹部が」「冷凍麺塊を分割するための溝状のものである」ことに相当する。
そうすると,本件発明2と甲1発明とは,上記相違点1-1及び1-2と同様の相違点において相違し,上記ア(エ)と同様の理由により,本件発明2は,甲1発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明5について

冷凍麺塊の製造方法において,ゆで調理済みの麺の一定量を収容し冷凍成型する麺塊成形用トレーに,ゆで調理済みの麺の水切れを促進するための複数の孔を設けることは,例えば甲5の【0013】(上記2(4)ア(イ))及び甲7の【0016】(上記2(8))に見られるように,周知の技術事項であった。そのような孔を細溝とすることも設計事項にすぎない。
よって,本件発明5は,甲1発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明6について

凹部を有する冷凍麺塊の製造方法において,麺塊成形用トレーとして,麺塊の凹部が形成される面とは反対側の面の麺塊の面積をどの程度にするものを用いるかは,想定される調理の方法等を勘案して,当業者が適宜決めるべき設計事項にすぎない。麺塊の重量と麺塊の体積が概ね比例関係にあるという技術常識を考慮すれば,麺塊の面積と重量の比は,麺塊の厚みに対応するから,例えば麺塊の厚みを一定の範囲内に収めるために,麺塊の面積/重量を特定の範囲に限定することも,当業者が普通になし得たことにすぎない。
甲11の実施例1(上記2(12))のものを見ても,本件発明6の数値限定が通常想定されるものと大きく異なる値であるとも認められず,臨界的意義も認められないから,本件発明6は,甲1発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 本件発明7?9について

1?数人分(数十?数百g程度)の冷凍麺塊の加熱調理を,鍋によって行なうことは,家庭等において消費者が一般的に行なうことであり,鍋による加熱調理用の冷凍麺製品を製造することも,周知の技術事項にすぎない。甲1発明では,「重量が,200g」の「麺塊連結体からな」る「冷凍麺」を製造しているが,これを鍋による加熱調理用の冷凍麺製品の製造するためのものにすることは,当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
よって,本件発明7?9は,甲1発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

キ 本件発明10について

(ア)一致点
上記ア(ア)及びイ(ア)も踏まえつつ,本件発明10と甲1’発明とを対比すると,両者は,以下の点において一致する。

「凹部を有する冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)小麦粉を主体かつ主原料としでん粉を含む粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に溝である凹部が成型され、これにより冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させる
工程を含む、製造方法。」

(イ)相違点
そして,本件発明10と甲1’発明とは,上記相違点1-1及び1-2と同様の相違点において相違するほか,以下の相違点で相違している。

相違点1-3
本件発明10は,「粉体」が「小麦粉を主体とする100重量部あたりでん粉12?17重量部を含む粉体」であるのに対し,甲1’発明は「小麦粉を主体」「とする100重量部あたりタピオカ澱粉約10重量部を含む粉体」である点。

相違点1-4
工程(1)で麺を「ゆで調理上有効な時間ゆで」ることについて,本件発明10は「10?12分間ゆでるものである」のに対し,甲1’発明にはそのような特定がない点。

(エ)判断
相違点1-1及び1-2に対応する相違点については,上記ア(エ)を参照のこと。甲1’発明に対して,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項を適用することは,甲1発明に,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項を適用することと同様,当業者が容易になし得たことである。
甲1’発明においては,穀物粉である小麦粉を主体かつ主原料とする粉体が,副原料としてタピオカ澱粉を含んでいるが,製麺において,穀物粉に配合するでん粉の割合は,求める食感や栄養素等を考慮して適宜調製する事項にすぎない。よって,甲1’発明において,タピオカ澱粉を他の澱粉で代替することや,澱粉の配合割合を粉体100重量部あたり12?17重量部として,相違点1-3に係る本件発明10の構成とすることは,当業者が適宜なし得る設計事項である。(甲10の「前記原料粉に副素材として澱粉を入れる場合、当該原料粉における澱粉の含有割合としては、0?20質量%が好ましく、0?15質量%がさらに好ましい。」(上記2(11)イの【0021】)及び甲12の「食感を軟らかくする澱粉の配合」(上記(13)ウ)等参照。)
そして,ゆで時間については,生麺の幅・厚みのほか,小麦粉のタンパク質量や加塩量,澱粉の配合量等によって適切な時間が異なることが知られており(上記(13)ウ),甲1には,実施例5の「太うどん」について「充分の沸騰水中で14分間茹で上げ」ることが記載されている(上記2(2)ア(オ)の【0033】)。そうすると,甲1’発明における「ゆで調理上有効な時間」として10?12分間も十分想定できる値であるから,相違点1-4に係る本件発明10の構成は,甲1’発明から当業者が容易に想到し得たものである。
よって,本件発明10は,甲1’発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

ク 小括
上記ア?キのとおり,本件発明1,2,4?10に係る発明は,本件特許出願前に当業者が甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を有しない。

(2)甲2発明に基づく検討

ア 本件発明1について

(ア)対比
甲2発明の「冷凍麺」及び「麺分塊」は,本件発明1の「冷凍麺塊」及び「麺塊」に相当する。また,甲2発明の「麺生地の切断処理」は,麺生地を製麺して麺とする工程と認められ,甲2発明の「送られてきた麺玉を計量して個食用の麺分塊とし」たもの,すなわち「計量された麺分塊」は,本件発明1の「ゆで調理済みの麺の一定量」に相当する。
同様にして,甲2発明の「搬送トレー列20a」を構成する「トレー20」,「トレー内の麺分塊が殆ど凍結状態にな」ること,「トレーにひねり歪みを発生させ」られること,及び「トレーにひねり歪みを発生させ,トレーと冷凍麺との間に剥離力を発生させ,且つ交互に方向を異にするひねり歪みを発生させるようにしたため,トレーと冷凍麺との間には殆ど完全に近い剥離を起こ」すことは,本件発明1の「麺塊成型用トレー」,「冷凍成型する」こと,「トレー」が「変形可能な材料からな」ること,及び「冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを捻って変形させることにより離脱させる」ことに,それぞれ相当する。

(イ)一致点
したがって,本件発明1と甲2発明とは,以下の点において一致する。

「冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)麺生地を製麺し、麺とし、麺をゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを捻って変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。」

(ウ)相違点
そして,本件発明1と甲2発明とは,以下の点で相違している。

相違点2-1
工程(1)において,本件発明1は,「穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで」るのに対し,甲2発明にはそのような特定がない点。

相違点2-2
冷凍麺塊が,本件発明1では,「凹部を有する冷凍麺塊」であって,トレーが「底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であ」るのに対し,甲2発明にはそのような特定がない点。

(エ)判断

A 相違点2-1について
穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し,厚さ1.3?3.6mmの麺とし,麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆでることは,例えば甲1の実施例(上記2(2)ア(オ)),甲9(上記2(10)),甲10(上記2(11)ウ)に記載されているように,周知の技術事項にすぎない。

B 相違点2-2について
冷凍麺塊の製造方法において,底面に凸部を有するトレーにより,収容された麺塊に凹部を成型することは,例えば甲1(上記2(2)ア(ウ)),甲5(上記2(4)ア(イ)),甲6(上記2(7)),甲7(上記2(8))及び甲8(上記2(9))に記載されているように,周知の技術事項にすぎない。冷凍麺塊そのものの厚さや,それに形成する凹部の厚さをどの程度にするかは,当業者が適宜決めるべき設計事項である。

C 本件発明の奏する効果について
本件発明1の全体構成によって奏される作用効果についてみても,甲2発明及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

D 特許権者の意見について
特許権者は,平成29年1月16日付け意見書において,進歩性に関し,甲2の記載について意見を述べているので,これらの点について以下検討する。

(A)特許権者は,甲2について,「請求項5に『脱麺処理装置』が特定されているが、」「トレーは反転すること、そして、反転したトレー底面を押圧することが、必須工程として特定されている。」と述べている(意見書13頁7?13行)が,トレー反転後トレー底面中央を押圧するのは「補助剥離手段」であるから必須のものとはいえないし,そもそも本件発明1においてこの種の工程の存在は排除されていないから,進歩性の判断に影響を及ぼすものではない。

(B)特許権者は,甲2の【0027】の記載を挙げて,「破壊しないように留意しているのは『トレー』であることを明記している。トレーについて記載しているにもかかわらず、冷凍麺塊についての記載がないことから、冷凍麺塊は少なくともトレーよりも丈夫で破損しにくいものを対象としていると解するのが妥当である。」と述べている(同13頁14?19行)。
しかし,冷凍麺に限らず食品製造の分野において,食品自体の破損に比べ,異物混入につながるトレーの破損が格段に大きな問題であることは,技術常識である。かかる事情を考慮すれば,甲2の上記記載は,特にトレーの破損に着目したものにすぎないといえるから,丈夫な形状の冷凍麺塊しか甲2発明の対象とならないとはいえない。

E まとめ
したがって,本件発明1は,甲2発明及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2?4について
冷凍麺塊の製造方法において,冷凍麺塊に凹部を成型し,冷凍具材を収容するための窪み又は冷凍麺塊を分割するための溝とすることは,例えば甲5(上記2(4)ア(イ)),甲11(上記2(12)),甲1(上記2(2)ア(イ))及び甲8(上記2(9))に記載されているように,周知の技術事項である。そして,麺塊重量と冷凍具材の重量の比をどの程度にするかは,当業者が適宜決めるべき設計事項にすぎない。
よって,本件発明2?4は,甲2発明及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明5?9について
上記(1)エ?カを参照のこと。麺塊重量を150?250g程度とすることは,設計事項にすぎない。
よって,本件発明5?9は,甲2発明及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明10について
上記(1)キ(エ)を参照のこと。製麺において,穀物粉を主体又は主原料とする粉体に,副原料としてでん粉を含めることは,周知の技術事項にすぎない。
よって,本件発明10は,甲2発明及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 小括
上記ア?エのとおり,本件発明1?10に係る発明は,本件特許出願前に当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を有しない。

(3)甲5発明に基づく検討

ア 本件発明1について

(ア)対比
本件発明1と,甲5発明とを対比すると,甲5発明の「凹部を設けた冷凍麺」は,本件発明1の「凹部を有する冷凍麺塊」に相当し,「凹部を設けた冷凍麺」「を含む,具付き冷凍麺の製造方法」は,「凹部を設けた冷凍麺」の製造方法を含んでいる。また,甲5発明の「製麺」は,麺生地を製麺して麺とする工程と認められ,甲5発明の「麺茹でし」「麺を等分化」したものは,本件発明1の「ゆで調理済みの麺の一定量」に相当する。
同様にして,甲5発明の「成形容器(トレー)」,「に充填」,「麺凍結」,及び「麺取り出しし」は,本件発明1の「麺塊成型用トレー」,「内に収納」,「冷凍成型」,及び「冷凍成型された麺塊をトレーから」「離脱させる」に,それぞれ相当する。
さらに,甲5発明における「中央凸部」は,「成形容器(トレー)」の底部中央部分に設けられ,冷凍麺の中央部に凹部を設けるものである(上記2(4)ア(イ)の【0008】)から,「成形容器(トレー)」が「中央凸部を有する」ことは,本件発明1の「トレー」が「底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され」ることに相当する。

(イ)一致点
したがって,本件発明1と甲5発明とは,以下の点において一致する。

「凹部を有する冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)麺生地を製麺し、麺とし、麺をゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、
このときトレーは、底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させる
工程を含む、製造方法。」

(ウ)相違点
そして,本件発明1と甲5発明とは,以下の点で相違している。

相違点5-1
工程(1)において,本件発明1は,「穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで」るのに対し,甲5発明にはそのような特定がない点。

相違点5-2
冷凍麺塊の凹部の厚さが,本件発明1では36mm以下であるのに対し,甲5発明にはそのような特定がない点。

相違点5-3
冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させるに際し,本件発明1は,「トレーを捻って変形させる」のに対し,甲5発明は「成形容器(トレー)の底部に衝撃付与」する点。

(エ)判断

A 相違点5-1について
上記(2)ア(エ)Aを参照のこと。

B 相違点5-2について
冷凍麺塊そのものの厚さや,形成する凹部の厚さをどの程度にするかは,当業者が適宜決めるべき設計事項である。例えば甲11には,深さ25mm又は25mmのトレー内に収容して冷凍成型した冷凍麺塊の凹部が深さ17mm又は20mmである例が記載されており(上記2(12)),このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mmより十分小さい。
よって,甲5発明において,冷凍麺塊の凹部の厚さを36mm以下にすることも,当業者が容易になし得たことである。

C 相違点5-3について
上記(1)ア(エ)Bを参照のこと。

D 本件発明の奏する効果について
本件発明1の全体構成によって奏される作用効果についてみても,甲5発明,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

E 特許権者の意見について
特許権者は,平成29年1月16日付け意見書において,甲5について,「麺の離脱のため、トレーの底部に『衝撃』を付与することを必須要件としていることが明白である。」「一部に薄い部分を有し、割れや破損のしやすさが問題となっていた冷凍麺塊の問題について記載がない。」「脱パン工程にトレー底部に衝撃付与以外の手段を用いようと考える動機付けが得られない。」等と述べている(意見書12頁23行?13頁1行)。
しかし,甲5全体を参照しても,ことさら麺の離脱に焦点を合わせた記述は見られず,衝撃を付与する離脱が必須と考える理由はないから,甲5発明は衝撃以外の方法による離脱を排除するものではない。そして,凹部の存在により薄い部分が存在する冷凍麺は,甲5に記載されており,凹部が存在しない冷凍麺と比べて脆く破損しやすいことは当業者にとって明らかである。
甲5発明と,甲2発明及び甲3並びに甲4に記載された技術事項は,冷凍食品を容器から離脱させるという共通の課題を解決するものであり,脆く破損しやすい冷凍麺に対してこのような捩り剥離や捻り分離を適用できない事情は格別存在しないから,脆く破損しやすい冷凍麺を対象とするか否かにかかわらず,甲5発明の衝撃に代えて甲2?4に記載された捩り剥離,捻り分離を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
なお,甲3の「冷凍容器V内に凍結している食品Fは可撓性を有さないため、冷凍容器Vの変形に追随できなくなり、冷凍容器Vへの固着が解けて剥離する」旨の記載(上記2(5)イ)や,甲4の「分離装置は、隣接する分離移送部3の分離隙間2で移送される容器1の前後を反対に捻る方向に対角を押圧しながら移送して、容器1に付着している内容物を容器1から分離する」旨の記載(上記2(6)イの【0007】)を参照すれば,捩り剥離,捻り分離が冷凍食品に与える負荷は衝撃等の他の方法よりも小さいと当業者は予測するから,それを甲5発明に対して適用することを試みる積極的な動機付けが存在するともいえる。

F まとめ
したがって,本件発明1は,甲5発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 本件発明2について
甲5発明における「麺凹部」は,冷凍具材を収納するためのものである(上記2(4)ア(イ)の【0008】)から,本件発明2の「冷凍具材を収納するための窪み状のものである」「凹部」に相当する。
そうすると,本件発明2と甲5発明とは,上記相違点5-1乃至5-3と同様の相違点において相違するのみであるから,上記ア(エ)と同様の理由により,本件発明2は,甲5発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 本件発明3について

(ア)対比
以下,上記ア(ア)も踏まえつつ,本件発明3と甲5発明を対比する。
本件発明3と,甲5発明とを対比すると,甲5発明の「凹部を設けた冷凍麺及び冷凍具材を含む,具付き冷凍麺」は,本件発明3の「冷凍麺塊及び冷凍具材類を含む、冷凍麺製品」に相当する。
また,甲5発明における「中央凸部」は,本件発明3の「窪み状の凸部」に相当し,冷凍麺に冷凍具材を直接収納するための凹部を設けるものである(上記2(4)ア(イ)の【0008】)から,「成形容器(トレー)」が「中央凸部を有する」ことは,本件発明3の「トレー」が「底面に窪み状の凸部を有し、これにより収容された麺塊に」「冷凍具材を収容可能な大きさの凹部が成型され」ることに相当し,甲5発明の「麺凹部に冷凍具材収納し,冷凍保存する」は,本件発明3の「冷凍具材を準備し、冷凍具材を直に冷凍麺塊凹部に収容し、冷凍具材と冷凍麺塊とを一体とする」に相当する。

(イ)一致点
したがって,本件発明3と甲5発明とは,以下の点において一致する。

「冷凍麺塊及び冷凍具材類を含む、冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)麺生地を製麺し、麺とし、麺をゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって
このときトレーは、底面に窪み状の凸部を有し、これにより収容された麺塊に冷凍具材を収容可能な大きさの凹部が成型され、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから離脱させ;そして
(4)冷凍具材を準備し、冷凍具材を直に冷凍麺塊凹部に収容し、冷凍具材と冷凍麺塊とを一体とする
工程を含む、製造方法。」

(ウ)相違点
そして,本件発明3と甲5発明とは,上記相違点5-1乃至5-3と同様の相違点において相違するほか,以下の点において相違している。

相違点5-4
麺塊に成型される凹部の大きさが,本件発明1では,「麺塊重量に対し30?75%の重量の冷凍具材を収容可能な大きさ」であるのに対し,甲5発明にはそのような特定がない点。

(エ)判断
相違点5-1乃至5-3に対応する相違点については,上記ア(エ)を参照のこと。
相違点5-4について判断すると,麺塊重量と冷凍具材の重量の比をどの程度にするかは,当業者が適宜決めるべき設計事項にすぎない。
よって,本件発明3は,甲5発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 本件発明5?9について
上記(1)エ?カを参照のこと。麺塊重量を150?250g程度とすることは,設計事項にすぎない。
よって,本件発明5?9は,甲5発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

オ 本件発明10について
上記(1)キ(エ)を参照のこと。
本件発明10は,甲5発明と,甲2発明又は甲3若しくは甲4に記載された技術事項,及び周知の技術事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

カ 小括
上記ア?オのとおり,本件発明1?3,5?10に係る発明は,本件特許出願前に当業者が甲5発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから,進歩性を有しない。


第4 取消理由通知に記載した取消理由2(明確性)及び3(実施可能要件)について

本件発明6の「トレーが、麺塊の凹部が形成される面とは反対側の面の麺塊の面積を210?310cm^(2)/200g(麺塊重量)とするものである」なる記載は,「面積」が「麺塊」の面積であり,かつ「麺塊の凹部が形成される面とは反対側の面」の面積であることが明確である。よって,取消理由2及び3は解消している。


第5 むすび

以上のとおり,本件発明1?10は,本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基いて,本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1?10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,同法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。

よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)穀物粉を主体とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって、
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを捻って変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。
【請求項2】
凹部が、冷凍具材を収納するための窪み状のものであるか、又は冷凍麺塊を分割するための溝状のものである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
冷凍麺塊及び冷凍具材類を含む、冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に窪み状の凸部を有し、これにより収容された麺塊に麺塊重量に対し30?75%の重量の冷凍具材を収容可能な大きさの凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを捻って変形させることにより離脱させ;そして
(4)冷凍具材を準備し、冷凍具材を直に冷凍麺塊凹部に収容し、冷凍具材と冷凍麺塊とを一体とする
工程を含む、製造方法。
【請求項4】
冷凍麺製品の製造方法であって:
(1)穀物粉を主原料とする粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、厚さ1.3?3.6mmの麺とし、麺を95℃以上の水でゆで調理上有効な時間ゆで;
(2)ゆで調理済みの麺の一定量を、麺塊成型用トレー内に収容し、冷凍成型する工程であって
このときトレーは、
変形可能な材料からなり、かつ
底面に凸部を有し、これにより収容された麺塊に溝が成型され、これにより冷凍麺塊としたときに麺塊を容易に分割可能とする溝状凹部が成型され、そして、このとき冷凍麺塊の凹部の厚さは36mm以下であり、
(3)冷凍成型された麺塊をトレーから、トレーを捻って変形させることにより離脱させる
工程を含む、製造方法。
【請求項5】
トレーが、ゆで調理済みの麺の水切れを促進するための複数の細溝を有している、請求項1?4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
トレーが、麺塊の凹部が形成される面とは反対側の面の麺塊の面積を210?310cm^(2)/200g(麺塊重量)とするものである、請求項1?5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
鍋による加熱調理用の冷凍麺製品を製造するための、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
麺塊重量が、150?250gである、請求項1?7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
麺が、うどん、そば又はラーメンである、請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(1)が、小麦粉を主体とする100重量部あたりでん粉12?17重量部を含む粉体を加水ミキシングして得た麺生地を製麺し、幅2.9?3.8mm、厚さ2.6?3.4mmの麺とし、麺を95℃以上の水で10?12分間ゆでるものである、請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-06-19 
出願番号 特願2011-119681(P2011-119681)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (A23L)
P 1 651・ 537- ZAA (A23L)
P 1 651・ 536- ZAA (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 荒木 英則  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
窪田 治彦
登録日 2016-02-26 
登録番号 特許第5888876号(P5888876)
権利者 テーブルマーク株式会社
発明の名称 成型冷凍麺塊の製造方法  
代理人 廣瀬 しのぶ  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 泉谷 玲子  
代理人 山本 修  
代理人 廣瀬 しのぶ  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小林 泰  

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